特許第6876023号(P6876023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876023ホーニング加工制御装置、ホーニング加工システムおよびホーニング加工制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876023
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ホーニング加工制御装置、ホーニング加工システムおよびホーニング加工制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/24 20060101AFI20210517BHJP
   B24B 33/06 20060101ALI20210517BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B23Q15/24
   B24B33/06
   G05B19/404 K
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-180885(P2018-180885)
(22)【出願日】2018年9月26日
(65)【公開番号】特開2020-49584(P2020-49584A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】山岡 洋斗
(72)【発明者】
【氏名】東 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 好孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 修
(72)【発明者】
【氏名】桑原 圭佑
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−244457(JP,A)
【文献】 特開昭60−131160(JP,A)
【文献】 特開2005−007505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/24
B24B 33/06
G05B 19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーニングツールが取り付けられた回転主軸を回転させながら被加工物の加工孔の中心軸方向に往復させることにより前記加工孔の内面をホーニング加工するホーニング加工装置へ前記ホーニングツールの前記中心軸方向における移動範囲を示す制御パラメータを出力することにより前記ホーニング加工装置を制御するホーニング加工制御装置であって、
前記加工孔の前記中心軸方向における3箇所での孔径を計測して得られる3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における一端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第1円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における他端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第2円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における両端側の2つの孔径計測値の差分から第3円筒度を算出する円筒度算出部と、
前記第1円筒度と前記第1円筒度の目標値である第1目標円筒度との差分量に第1係数を乗じて得られる第1補正量と、前記第2円筒度と前記第2円筒度の目標値である第2目標円筒度との差分量に第2係数を乗じて得られる第2補正量と、前記第3円筒度と前記第3円筒度の目標値である第3目標円筒度との差分量に第3係数を乗じて得られる第3補正量と、を算出する補正量算出部と、
前記第1補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記一端側の端の第1位置を決定するとともに、前記第2補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記他端側の端の第2位置を決定する移動範囲決定部と、
前記移動範囲決定部により決定された前記第1位置および前記第2位置を含む前記制御パラメータを前記ホーニング加工装置へ出力する出力部と、を備える、
ホーニング加工制御装置。
【請求項2】
予め設定された数のホーニング加工後の前記被加工物それぞれについて、前記第1補正量の前記第1円筒度への寄与分に相当する第1仮想円筒度と前記第2補正量の前記第2円筒度への寄与分に相当する第2仮想円筒度と前記第3補正量の前記第3円筒度への寄与分に相当する第3仮想円筒度とを推定する仮想円筒度推定部と、
前記仮想円筒度推定部により予め設定された数のホーニング加工後の前記被加工物それぞれについて推定された前記第1仮想円筒度と前記第1補正量に基づいて、前記第1係数を、前記第2仮想円筒度と前記第2補正量に基づいて前記第2係数を、前記第3仮想円筒度と前記第3補正量に基づいて前記第3係数を更新する係数更新部と、を更に備える、
請求項1に記載のホーニング加工制御装置。
【請求項3】
前記仮想円筒度推定部は、予め設定された数のホーニング加工後の前記被加工物それぞれについての前記第1補正量と前記第1円筒度とに基づいて、下記式(1)および式(3)における係数bを算出し、予め設定された数のホーニング加工後の前記被加工物それぞれについての前記第2補正量と前記第2円筒度とに基づいて、下記式(2)および式(3)における係数bを算出し、算出した係数b、bと下記式(1)乃至(3)とを用いて、前記第1仮想円筒度、前記第2仮想円筒度および前記第3仮想円筒度算出する、
請求項2に記載のホーニング加工制御装置。
【数1】
【数2】
【数3】
式(1)乃至(3)において、u1(i)は、前記第1補正量を示し、u1(i)は、前記第2補正量を示し、u1(i)は、前記第3補正量を示し、yUU(i)は、前記第1仮想円筒度を示し、yLL(i)は、前記第2仮想円筒度を示し、yAA(i)は、前記第3仮想円筒度を示し、iは、前記被加工物の識別番号を示す。
【請求項4】
前記仮想円筒度推定部は、予め設定された数のホーニング加工後の前記被加工物それぞれについての前記第1補正量の総和と前記第3補正量の総和との和に対する前記第1補正量の総和の比率を前記第1仮想円筒度と推定するとともに、予め設定された数のホーニング加工後の前記被加工物それぞれについての前記第2補正量の総和と前記第3補正量の総和との和に対する前記第2補正量の総和の比率を前記第2仮想円筒度と推定する、
請求項2に記載のホーニング加工制御装置。
【請求項5】
前記第1補正量と前記第1仮想円筒度とを用いて求めた第1評価値と、前記第2補正量と前記第2仮想円筒度とを用いて求めた第2評価値と、を算出する評価値算出部を更に備え、
前記係数更新部は、前記評価値算出部により算出された前記第1評価値および前記第2評価値の大きさに基づいて、前記第1係数、前記第2係数および前記第3係数を更新する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のホーニング加工制御装置。
【請求項6】
前記係数更新部は、前記第1評価値および前記第2評価値が予め設定された基準評価値よりも大きい場合、前記第1係数、前記第2係数および前記第3係数それぞれを更新した場合における更新前後の前記第1係数、前記第2係数および前記第3係数それぞれの変化率に基づいて、前記第1係数、前記第2係数および前記第3係数を更新する、
請求項5に記載のホーニング加工制御装置。
【請求項7】
ホーニング加工の繰り返し回数の増加に伴い、前記第1係数、前記第2係数および前記第3係数が漸減するように前記第1係数、前記第2係数および前記第3係数を更新する係数更新部を更に備える、
請求項1に記載のホーニング加工制御装置。
【請求項8】
ホーニングツールが取り付けられた回転主軸を回転させながら被加工物の加工孔の中心軸方向に往復させることにより前記加工孔の内面をホーニング加工するホーニング加工装置と、
前記ホーニングツールの前記中心軸方向における移動範囲を示す制御パラメータを前記ホーニング加工装置へ出力することにより、前記ホーニング加工装置を制御するホーニング加工制御装置と、を備え、
前記ホーニング加工制御装置は、
前記加工孔の前記中心軸方向における3箇所での孔径を計測して得られる3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における一端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第1円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における他端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第2円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における両端側の2つの孔径計測値の差分から第3円筒度を算出する円筒度算出部と、
前記第1円筒度と前記第1円筒度の目標値である第1目標円筒度との差分量に第1係数を乗じて得られる第1補正量と、前記第2円筒度と前記第2円筒度の目標値である第2目標円筒度との差分量に第2係数を乗じて得られる第2補正量と、前記第3円筒度と前記第3円筒度の目標値である第3目標円筒度との差分量に第3係数を乗じて得られる第3補正量と、を算出する補正量算出部と、
前記第1補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記一端側の端の第1位置を決定するとともに、前記第2補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記他端側の端の第2位置を決定する移動範囲決定部と、
前記移動範囲決定部により決定された前記第1位置および前記第2位置を含む前記制御パラメータを前記ホーニング加工装置へ出力する出力部と、を有する、
ホーニング加工システム。
【請求項9】
ホーニングツールが取り付けられた回転主軸を回転させながら被加工物の加工孔の中心軸方向に往復させることにより前記加工孔の内面をホーニング加工するホーニング加工装置へ前記ホーニングツールの前記中心軸方向における移動範囲を示す制御パラメータを出力することにより前記ホーニング加工装置を制御するホーニング加工制御方法であって、
前記加工孔の前記中心軸方向における3箇所での孔径を計測して得られる3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における一端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第1円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における他端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第2円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における両端側の2つの孔径計測値の差分から第3円筒度を算出するステップと、
前記第1円筒度と前記第1円筒度の目標値である第1目標円筒度との差分量に第1係数を乗じて得られる第1補正量と、前記第2円筒度と前記第2円筒度の目標値である第2目標円筒度との差分量に第2係数を乗じて得られる第2補正量と、前記第3円筒度と前記第3円筒度の目標値である第3目標円筒度との差分量に第3係数を乗じて得られる第3補正量と、を算出するステップと、
前記第1補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記一端側の端の第1位置を決定するとともに、前記第2補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記他端側の端の第2位置を決定するステップと、
決定された前記第1位置および前記第2位置を含む前記制御パラメータを前記ホーニング加工装置へ出力するステップと、を含む、
ホーニング加工制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング加工制御装置、ホーニング加工システムおよびホーニング加工制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物のホーニング加工において、ホーニング加工後の被加工物における内周面の円筒度を高めることが要請されている。これに対して、砥石が設けられたホーンヘッドと、ホーンヘッドに連結され、ホーンヘッドを往復移動させるためのレシプロシリンダ装置と、被加工物のボア計測定用のエアノズルと、を備えるホーニング制御システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このホーニング制御システムでは、被加工物の3箇所におけるボア径を、エアノズルからの測定信号により測定する。そして、ホーニング制御システムは、被加工物の3箇所におけるボア径の測定値の差分値に予め設定された定数を乗じて得られる補正量だけホーンヘッドの往復移動の範囲を随時変化させることにより、被加工物の円筒度を維持しながらホーニング加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−131160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載したホーニング制御システムでは、前述の定数が被加工物のボア形状に適した値に設定されていない場合、被加工物の円筒度を十分に高めることができない虞がある。また、ホーニング加工を繰り返すことによりホーンヘッドに設けられた砥石が摩耗すると、砥石の状態が前述の定数に適合した状態から外れてしまい、被加工物の円筒度が低下してしまう虞もある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、被加工物の円筒度を高めることができるホーニング加工制御装置、ホーニング加工システムおよびホーニング加工制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るホーニング加工制御装置は、
ホーニングツールが取り付けられた回転主軸を回転させながら被加工物の加工孔の中心軸方向に往復させることにより前記加工孔の内面をホーニング加工するホーニング加工装置へ前記ホーニングツールの前記中心軸方向における移動範囲を示す制御パラメータを出力することにより前記ホーニング加工装置を制御するホーニング加工制御装置であって、
前記加工孔の前記中心軸方向における3箇所での孔径を計測して得られる3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における一端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第1円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における他端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第2円筒度を算出し、前記3つの孔径計測値のうちの前記中心軸方向における両端側の2つの孔径計測値の差分から第3円筒度を算出する円筒度算出部と、
前記第1円筒度と前記第1円筒度の目標値である第1目標円筒度との差分量に第1係数を乗じて得られる第1補正量と、前記第2円筒度と前記第2円筒度の目標値である第2目標円筒度との差分量に第2係数を乗じて得られる第2補正量と、前記第3円筒度と前記第3円筒度の目標値である第3目標円筒度との差分量に第3係数を乗じて得られる第3補正量と、を算出する補正量算出部と、
前記第1補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記一端側の端の第1位置を決定するとともに、前記第2補正量と前記第3補正量との和に基づいて、前記移動範囲における前記他端側の端の第2位置を決定する移動範囲決定部と、
前記移動範囲決定部により決定された前記第1位置および前記第2位置を含む前記制御パラメータを前記ホーニング加工装置へ出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補正量算出部が、第1補正量と第2補正量と第3補正量とを算出し、移動範囲決定部が、第1補正量と第3補正量との和に基づいて、ホーニングツールの移動範囲の一端側の端の第1位置を決定するとともに、第2補正量と第3補正量との和に基づいて、前述の移動範囲の他端側の端の第2位置を決定する。これにより、ホーニングツールの移動範囲が第1補正量と第2補正量と第3補正量に基づいて適切な範囲に決定されるので、ホーニング加工後の被加工物の加工孔の円筒度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るホーニング加工システムの概略図である。
図2】(A)は実施の形態に係るホーニング加工装置の動作説明図であり、(B)は実施の形態に係る計測ユニットによる被加工物の加工孔の孔径を計測する位置を示す被加工物の断面図である。
図3】実施の形態に係るホーニング加工制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態に係るホーニング加工制御装置の動作を説明するための制御ブロック図であり、(A)は実際の制御ブロック図であり、(B)は仮想円筒度の概念を導入した場合の制御ブロック図である。
図5】実施の形態に係るホーニング加工制御装置が実行するホーニング加工制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係るホーニング加工制御装置が実行する係数・評価値算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施の形態に係るホーニング加工制御装置が実行するホーニング加工制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態に係るホーニング加工制御装置が実行するフィルタ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】変形例に係るホーニング加工制御装置の構成を示すブロック図である。
図10】変形例に係るホーニング加工制御装置が実行するホーニング加工制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るホーニング加工制御装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るホーニング加工制御装置は、ホーニング加工装置へホーニングツールの被加工物の加工孔の中心軸方向における移動範囲を示す制御パラメータを出力することにより、ホーニング加工装置を制御する。ここで、ホーニング加工装置は、ホーニングツールが取り付けられた回転主軸を回転させながら被加工物の加工孔の中心軸方向に往復させることにより加工孔の内面をホーニング加工する。ホーニング加工制御装置は、円筒度算出部と補正量算出部と移動範囲決定部と出力部とを備える。円筒度算出部は、予め設定された数のホーニング加工後の被加工物それぞれについて、加工孔の中心軸方向における3箇所での孔径を計測して得られる3つの孔径計測値から、第1円筒度、第2円筒度および第3円筒度を算出する。ここで、円筒度算出部は、3つの孔径計測値のうちの中心軸方向における一端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第1円筒度を算出する。また、円筒度算出部は、3つの孔径計測値のうちの中心軸方向における他端側と中央部の2箇所の孔径計測値の差分から第2円筒度を算出する。更に、円筒度算出部は、3つの孔径計測値のうちの中心軸方向における両端側の2箇所の孔径計測値の差分から第3円筒度を算出する。補正量算出部は、予め設定された数のホーニング加工後の被加工物それぞれについて、第1補正量と第2補正量と第3補正量とを算出する。ここで、第1補正量は、第1円筒度と第1円筒度の目標値である第1目標円筒度との差分量に第1係数を乗じて得られる量である。また、第2補正量は、第2円筒度と第2円筒度の目標値である第2目標円筒度との差分量に第2係数を乗じて得られる量である。更に、第3補正量は、第3円筒度と第3円筒度の目標値である第3目標円筒度との差分量に第3係数を乗じて得られる量である。移動範囲決定部は、第1補正量と第3補正量との和に基づいて、移動範囲における加工孔の一端側の端の第1位置を決定するとともに、第2補正量と第3補正量との和に基づいて、移動範囲における加工孔の他端側の端の第2位置を決定する。出力部は、移動範囲決定部により決定された第1位置および第2位置を含む制御パラメータをホーニング加工装置へ出力する。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係るホーニング加工システムは、被加工物Wの加工孔Whの内面Waをホーニング加工するためのものであり、ホーニング加工装置2と、加工孔Whの孔径を計測する計測装置3と、ホーニング加工制御装置1と、を備える。ホーニング加工装置2は、回転主軸22と、回転主軸22の先端部に連結されたホーニングツール21と、回転主軸22を駆動する駆動部29と、を備える。ホーニングツール21の先端部には、砥石23が設けられている。図1では、被加工物Wが、その加工孔Whの中心軸J2と回転主軸22の中心軸J1とが一致する姿勢で配置されている。駆動部29は、図1の矢印AR0に示すように、回転主軸22をその中心軸J1周りに回転させながら、図1の矢印AR1に示すように、中心軸J1方向へ往復移動させる。これにより、駆動部29は、回転主軸22に連結されたホーニングツール21を回転させながら、加工孔Whの中心軸J2方向へ往復移動させて加工孔Whの内面Waをホーニング加工する。ここで、駆動部29は、例えば図2(A)に示すように、加工孔Whに対する砥石23の中心部の中心軸J2方向の相対的な位置Posが第1位置PosUと第2位置PosLとの間の範囲で経時的に変化するようにホーニングツール21を往復移動させる。ここで、駆動部29は、第1位置PosUと第2位置PosLとを、ホーニング加工制御装置1から入力される制御パラメータに含まれる第1位置PosU、第2位置PosLを示す情報に基づいて設定する。また、ホーニング加工装置2は、1つの被加工物Wのホーニング加工が完了する毎にホーニング加工が完了したことを通知する加工完了通知信号をホーニング加工制御装置1へ出力する。ホーニング加工装置2でのホーニング加工が完了した被加工物Wは、計測装置3へ搬送される(図1の矢印AR10参照)。このとき、ホーニング加工装置2は、被加工物Wを識別する被加工物識別情報を計測装置3へ出力する。
【0011】
図1に戻って、計測装置3は、エアマイクロメータ32と、エアマイクロメータ32を駆動する駆動部39と、を備える。エアマイクロメータ32の先端部には、ノズル31が設けられている。駆動部39は、図1の矢印AR2に示すように、エアマイクロメータ32を被加工物Wの加工孔Whの内側へ挿入した状態でノズル31から気体を吐出させることにより加工孔Whの孔径を計測する。ここで、駆動部39は、ノズル31と加工孔Whの内面Waとの間の隙間の大きさを示す計測信号に基づいて孔径を計測する。また、駆動部39は、図1の矢印AR2に示すように、エアマイクロメータ32を加工孔Whの中心軸J2方向へ移動させることにより加工孔Wh内の中心軸J2における複数箇所での孔径を計測する。駆動部39は、例えば図2(B)に示すように、加工孔Whにおける3箇所PosA、PosB、PosCでの孔径を計測する。そして、駆動部39は、加工孔Whにおける3箇所PosA、PosB、PosCでの孔径の計測が完了すると、孔径計測値を示す計測値情報をホーニング加工制御装置1へ出力する。また、計測装置3は、計測値情報とともに、ホーニング加工装置2から入力された被加工物識別情報をホーニング加工制御装置1へ出力する。
【0012】
ホーニング加工制御装置1は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、入力部104と、インタフェース106と、各部を接続するバス109と、を有する。主記憶部102は、例えばRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリであり、CPU101の作業領域として使用される。補助記憶部103は、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリであり、制御部100の各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。入力部104は、キーボード、タッチパネル等とバス109に接続するためのインタフェースとを有する。入力部104は、ユーザがキーボードまたはタッチパネルを操作することにより入力した各種操作情報を受け付けると、受け付けた各種操作情報をCPU101へ出力する。インタフェース106は、ホーニング加工装置2の駆動部29および計測装置3の駆動部39に接続されており、CPU101から入力される制御パラメータを制御信号に変換して、ホーニング加工装置2の駆動部29へ出力する。また、インタフェース106は、CPU101から入力される後述の計測値要求情報を計測値要求信号に変換して、計測装置3の駆動部39へ出力する。また、インタフェース106は、計測装置3の駆動部39から入力される孔径計測情報をCPU101へ出力する。
【0013】
CPU101は、補助記憶部103が記憶する前述のプログラムを主記憶部102に読み出して実行することにより、計測値取得部111、円筒度算出部112、補正量算出部113、移動範囲決定部114、出力部115、仮想円筒度推定部116、係数更新部117、評価値算出部118および加工繰り返し回数監視部119として機能する。補助記憶部103は、計測装置3から取得した孔径計測値を示す計測値情報を記憶する計測値記憶部131と、ホーニング加工装置2の駆動部29へ出力する制御パラメータを記憶するパラメータ記憶部132と、を有する。計測値記憶部は、計測値情報を、対応する被加工物Wに付与された被加工物識別情報と対応づけて記憶する。パラメータ記憶部132は、被加工物Wの加工孔Whに対する砥石23の中心部の移動範囲Mを規定する第1位置PosU、第2位置PosLを示す情報を含む制御パラメータを記憶する。また、パラメータ記憶部132は、ホーニング加工装置2の砥石23交換直後における、加工孔Whに対する砥石23の中心部の移動範囲Mを規定する第1位置PosU、第2位置PosLの初期位置を示す情報を含む初期制御パラメータも記憶する。
【0014】
また、補助記憶部103は、被加工物Wの加工孔Whの中心軸J2方向における3箇所での孔径を計測して得られる3つの孔径計測値から算出される第1円筒度、第2円筒度および第3円筒度それぞれの目標値である第1目標円筒度、第2目標円筒度および第3目標円筒度を示す情報を記憶する目標値記憶部133を有する。ここで、第1円筒度は、例えば前述の位置PosAと位置PosBの2箇所の孔径計測値の差分に相当する。また、第2円筒度は、例えば前述の位置PosBと位置PosCの2箇所の孔径計測値の差分に相当する。更に、第3円筒度は、例えば前述の位置PosAと位置PosCの2箇所の孔径計測値の差分に相当する。そして、第1目標円筒度、第2目標円筒度および第3目標円筒度は、例えば「0」に設定される。
【0015】
更に、補助記憶部103は、ホーニングツール21の移動範囲を決定する第1補正量、第2補正量および第3補正量を第1円筒度、第2円筒度および第3円筒度から算出するのに用いる係数情報を記憶する係数記憶部134を有する。ここで、第1補正量は、第1円筒度と第1目標円筒度との差分量に第1係数を乗じて得られる。また、第2補正量は、第2円筒度と第2目標円筒度との差分量に第2係数を乗じて得られる。更に、第3補正量は、第3円筒度と第3目標円筒度との差分量に第3係数を乗じて得られる。そして、係数情報は、これら第1係数、第2係数および第3係数を示す情報である。また、補助記憶部103は、ホーニング加工装置2による被加工物Wのホーニング加工の繰り返し回数を示す加工繰り返し回数情報を記憶する繰り返し回数記憶部135を有する。加工繰り返し回数情報が示すカウント値は、ホーニング加工装置2の砥石23が交換され、後述するホーニング加工制御処理が実行される毎に「0」に初期化される。
【0016】
更に、補助記憶部103は、第1円筒度と第2円筒度と第3円筒度とを示す情報を、対応する被加工物識別情報と加工繰り返し回数情報と対応づけて記憶する円筒度記憶部136を有する。また、補助記憶部103は、第1補正量と第2補正量と第3補正量とを示す情報を、対応する被加工物識別情報と加工繰り返し回数情報と対応づけて記憶する補正量記憶部137を有する。更に、補助記憶部103は、第1係数、第2係数および第3係数を更新する際の被加工物Wのホーニング加工の繰り返し回数に対する基準回数を示す情報と、第1補正量、第2補正量および第3補正量に対する基準範囲を示す情報と、を記憶する基準記憶部138を有する。
【0017】
計測値取得部111は、計測装置3の駆動部39から出力される計測値情報を取得する。計測値取得部111は、取得した計測値情報を計測値記憶部131に記憶させる。
【0018】
円筒度算出部112は、第1円筒度、第2円筒度および第3円筒度を算出する。円筒度算出部112は、例えば、前述の位置PosAと位置PosBの2箇所の孔径計測値の差分から第1円筒度を算出し、前述の位置PosBと位置PosCの2箇所の孔径計測値の差分から第2円筒度を算出する。そして、円筒度算出部112は、前述の位置PosAと位置PosCの2箇所の孔径計測値の差分から第3円筒度を算出する。
【0019】
補正量算出部113は、係数記憶部134が記憶する係数情報を取得し、第1円筒度と第1目標円筒度との差分量に係数情報が示す第1係数を乗じて第1補正量を算出し、第2円筒度と第2目標円筒度との差分量に係数情報が示す第2係数を乗じて第2補正量を算出する。また、補正量算出部113は、第3円筒度と第3目標円筒度との差分量に係数情報が示す第3係数を乗じて第3補正量を算出する。
【0020】
移動範囲決定部114は、第1補正量と第3補正量との和に基づいて、ホーニングツール21の移動範囲Mにおける一端側の端の第1位置PosUを決定するとともに、第2補正量と第3補正量との和に基づいて、移動範囲Mにおける他端側の端の第2位置PosLを決定する。即ち、移動範囲決定部114は、ホーニング加工装置2について、図4(A)に示すような制御モデルが成立するものとして、第1位置PosU、第2位置PosLを決定する。なお、図4(A)において、r、r、rは、それぞれ第1目標円筒度、第3目標円筒度、第2目標円筒度であり、y、y、yは、それぞれ第1円筒度、第3円筒度、第2円筒度である。また、e、e、eは、それぞれ、第1目標円筒度rUと第1円筒度yとの差分量、第3目標円筒度rと第3円筒度yとの差分量、第2目標円筒度rと第2円筒度yとの差分量に相当する。また、C、C、Cは、補正量算出部113により実現される制御器である。具体的には、制御器Cは、差分量eと第1係数kとの積に相当する第1補正量u1を算出し、制御器Cは、差分量eと第3係数kとの積に相当する第3補正量u1を算出する。また、制御器Cは、差分量eと第2係数kとの積に相当する第2補正量u1を算出する。u2、u2は、それぞれ第1位置PosUの調整量、第2位置PosLの調整量に相当する。なお、d、dは、外乱成分である。移動範囲決定部114は、図4(A)に示すように、第1補正量u1と第3補正量u1との和を第1位置PosUの調整量u2として第1位置PosUを決定し、第2補正量u1と第3補正量u1との和を第2位置PosLの調整量u2として第2位置PosLを決定する。
【0021】
図3に戻って、出力部115は、移動範囲決定部114により決定された第1位置PosUおよび第2位置PosLを含む制御パラメータをホーニング加工装置2の駆動部29へ出力する。また、出力部115は、ホーニング加工装置2の砥石23が交換され、後述のホーニング加工制御処理が開始される場合、パラメータ記憶部132から初期制御パラメータを取得し、取得した初期制御パラメータをホーニング加工装置2へ出力する
【0022】
仮想円筒度推定部116は、予め設定された数のホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについて、第1補正量の第1円筒度への寄与分に相当する第1仮想円筒度と第2補正量の第2円筒度への寄与分に相当する第2仮想円筒度とを推定する。また、仮想円筒度推定部116は、予め設定された数のホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについて、第3補正量の第3円筒度への寄与分に相当する第3仮想円筒度も推定する。仮想円筒度推定部116は、図4(A)に示す制御モデルを図4(B)に示す制御モデルに変換したときの第1仮想円筒度yUU、第2仮想円筒度yLLおよび第3仮想円筒度yAAを推定する。ここで、仮想円筒度推定部116は、下記式(1)および(3)における係数bを、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについての、第1補正量u1と第1円筒度yとに基づいて算出する。また、仮想円筒度推定部116は、下記式(2)および(3)における係数bを、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについての、第2補正量u1と第2円筒度yとに基づいて算出する。
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、iは、ホーニング加工後の被加工物Wの識別番号を示す。また、ホーニングツール21の砥石23の交換直後に加工した被加工物Wに識別番号「1」が付与され、その後、被加工物Wの加工回数に伴い1ずつインクリメントされた識別番号が付与されるものとする。
【0023】
具体的には、仮想円筒度推定部116は、下記式(4)および(5)の関係式を用いて係数b、bを算出する。
【数4】
【数5】
【0024】
そして、仮想円筒度推定部116は、式(1)乃至(3)において、算出した係数b、bを用いて第1仮想円筒度yUU(n)、第2仮想円筒度yLL(n)および第3仮想円筒度yAA(n)を算出する。ここで、仮想円筒度推定部116は、式(1)乃至(3)において、第1仮想円筒度yUU(1)を第1円筒度y(1)とし、第2仮想円筒度yLL(1)を第2円筒度y(1)とし、第3仮想円筒度yAA(1)を第3円筒度y(1)とする。
【0025】
評価値算出部118は、第1補正量u1と第1仮想円筒度yUUを用いて求めた第1評価値と、第2補正量u1と第2仮想円筒度yLL(n)とを用いて求めた第2評価値と、を算出する。
【0026】
係数更新部117は、仮想円筒度推定部116により予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについて推定された第1仮想円筒度yUU(n)と第2仮想円筒度yLL(n)と第3仮想円筒度yAA(n)とに基づいて、前述の第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新する。また、係数更新部117は、評価値算出部118により算出された第1評価値および第2評価値の大きさに基づいて、前述の第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新する。更に、係数更新部117は、第1評価値および第2評価値が予め設定された基準評価値よりも大きい場合、前述の第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新した場合における更新前後の第1係数k、第2係数kおよび第3係数kの変化率に基づいて、第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新する。
【0027】
加工繰り返し回数監視部119は、ホーニング加工装置2での被加工物Wのホーニング加工の繰り返し回数を監視する。加工繰り返し回数監視部119は、ホーニング加工装置2の砥石23が交換された直後から計測装置3から被加工物識別情報が入力される毎に、加工繰り返し回数を示す繰り返し回数カウント値を1ずつインクリメントすることにより加工繰り返し回数をカウントする。
【0028】
次に、本実施の形態に係るホーニング加工制御装置1が実行するホーニング加工制御処理について図5乃至図8を参照しながら説明する。このホーニング加工制御処理は、ユーザがホーニング加工装置2の砥石23を交換した後、入力部104を介してホーニング加工制御処理を開始させるための操作を行ったことを契機として開始される。
【0029】
まず、図5に示すように、出力部115は、パラメータ記憶部132から初期制御パラメータを取得し、取得した初期制御パラメータをホーニング加工装置2へ出力する(ステップS1)。ここで、初期制御パラメータは、前述のように、ホーニング加工装置2の砥石23交換直後における加工孔Whに対する砥石23の中心部の移動範囲Mを規定する第1位置PosU、第2位置PosLの初期位置を示す情報を含む。そして、ホーニング加工装置2は、ホーニング加工制御装置1から入力される初期制御パラメータに基づいて、被加工物Wのホーニング加工を実行する。ホーニング加工装置2での被加工物Wのホーニング加工が完了すると、被加工物Wが計測装置3へ搬送される。
【0030】
次に、計測値取得部111が、計測装置3から出力される、加工孔Whにおける3箇所PosA、PosB、PosCでの孔径の計測値を示す計測値情報を取得し、加工繰り返し回数監視部119が、計測装置3から出力される被加工物識別情報を取得する(ステップS2)。計測値取得部111は、取得した計測値情報を、被加工物識別情報に対応づけて計測値記憶部131に記憶させる。続いて、加工繰り返し回数監視部119は、繰り返し回数記憶部135が記憶する加工繰り返し回数情報が示すカウント値nを1だけインクリメントする(ステップS3)。
【0031】
その後、円筒度算出部112は、前述の第1円筒度y、第2円筒度yおよび第3円筒度yを算出する(ステップS4)。円筒度算出部112は、算出した第1円筒度y、第2円筒度yおよび第3円筒度yを示す情報を、加工回数繰り返し情報が示すカウント値と被加工物識別情報と対応づけて円筒度記憶部136に記憶させる。
【0032】
次に、補正量算出部113は、第1補正量u1、第2補正量u1および第3補正量u1を算出する(ステップS5)。ここで、補正量算出部113は、係数記憶部134が記憶する係数情報を取得し、円筒度算出部112が算出した第1円筒度yと第1目標円筒度rとの差分量eに係数情報が示す第1係数kを乗じて第1補正量u1を算出する。また、補正量算出部113は、円筒度算出部112が算出した第2円筒度yと第2目標円筒度rとの差分量eに係数情報が示す第2係数kを乗じて第2補正量u1を算出する。また、補正量算出部113は、円筒度算出部112が算出した第3円筒度yと第3目標円筒度rとの差分量eに係数情報が示す第3係数kを乗じて第3補正量u1を算出する。
【0033】
続いて、移動範囲決定部114は、第1補正量u1と第3補正量u1との和を第1位置PosUの調整量u2とし、調整量u2に基づいて、ホーニングツール21の移動範囲Mにおける一端側の端の第1位置PosUを決定する。また、移動範囲決定部114は、第2補正量u1と第3補正量u1との和をPosLの調整量u2とし、調整量u2Lに基づいて、移動範囲Mにおける他端側の端の第2位置PosLを決定する。但し、第1位置PosUおよび第2位置PosLは、ホーニング盤の機構制約範囲内に制限される。本制限により無効化された調整量をLIMu2およびLIMu2とする。(ステップS6)。
【0034】
その後、出力部115は、移動範囲決定部114により決定された第1位置PosUおよび第2位置PosLを含む制御パラメータをホーニング加工装置2の駆動部29へ出力する(ステップS7)。ここで、ホーニング加工装置2は、ホーニング加工制御装置1から入力される制御パラメータに基づいて、被加工物Wのホーニング加工を実行する。ホーニング加工装置2での被加工物Wのホーニング加工が完了すると、被加工物Wが計測装置3へ搬送される。
【0035】
次に、計測値取得部111および加工繰り返し回数監視部119は、基準記憶部138から基準回数Nを示す情報を取得し、カウント値nが予め設定された基準回数N未満であるか否かを判定する(ステップS8)。計測値取得部111および加工繰り返し回数監視部119は、カウント値nが基準回数N未満であると判定すると(ステップS8:Yes)、再びステップS2の処理を実行する。
【0036】
一方、計測値取得部111および加工繰り返し回数監視部119は、カウント値nが基準回数N以上であると判定したとする(ステップS8:No)。この場合、仮想円筒度推定部116は、円筒度記憶部136から既にホーニング加工が行われたN個の被加工物Wそれぞれについての第1円筒度y、第2円筒度yおよび第3円筒度yを示す情報を取得し、前述の式(1)乃至(3)における係数b、bを算出する(ステップS9)。ここで、仮想円筒度推定部116は、前述の式(4)および(5)の関係式を用いて係数b、bを算出する。
【0037】
続いて、仮想円筒度推定部116は、前述の式(1)乃至(3)と算出した係数b、bとを用いて第1仮想円筒度yUU、第2仮想円筒度yLLおよび第3仮想円筒度yAAを算出する(ステップS10)。
【0038】
その後、係数更新部117は、基準記憶部138から基準範囲を示す情報を取得し、直近にホーニング加工が行われた被加工物Wについての第1補正量u1が基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS11)。より具体的には、ステップS6にて無効化された第1位置PosUの調整量LIMu2の総和が基準範囲内か否かを確認する。係数更新部117により第1補正量u1が基準範囲外であると判定されると(ステップS11:No)、そのまま後述のステップ13の処理が実行される。一方、係数更新部117が、第1補正量u1が基準範囲内であると判別すると(ステップS11:Yes)、第1係数kと第1係数kに対応する評価値Jとを算出する係数・評価値算出処理が実行される。
【0039】
ここで、第1係数kと第1係数kに対する評価値Jとを算出する係数・評価値算出処理について、図6を参照しながら詳細に説明する。まず、係数更新部117は、主記憶部102において計算パラメータTd_y(l)、Td_u(l)、X(l)、Y(l)を記憶する領域を生成し、計算パラメータTd_y(0)に仮想円筒度y(1)を格納する(ステップS101)。ここで、「仮想円筒度y(l)」とは、第1仮想円筒度yUU、第2仮想円筒度yLL、第3仮想円筒度yAAのいずれかに相当する。また、インデックス「l」は、0以上の整数であり、加工繰り返し回数情報が示すカウント値を反映している。従って、仮想円筒度y(l)は、加工繰り返し回数「l」に対応する円筒度を示す。次に、係数更新部117は、計算パラメータTd_u(1)に補正量u1(1)を格納する(ステップS102)。ここで、「補正量u1(l)」とは、第1補正量u1、第2補正量u1、第3補正量u1のいずれかに相当する。そして、補正量u1(l)は、加工繰り返し回数「l」に対応する補正量を示す。
【0040】
続いて、係数更新部117は、インデックス「l」を「2」に設定する(ステップS103)。その後、係数更新部117は、下記式(6)で表される関係式を用いて計算パラメータTd_y(l−1)を算出する(ステップS104)。
【数6】
【0041】
次に、係数更新部117は、仮想円筒度y(l)から計算パラメータTd_y(l−1)を差し引いて得られる値を計算パラメータY(l)に格納する(ステップS105)。続いて、係数更新部117は、下記式(7)で表される関係式を用いて計算パラメータTd_y(l−1)を算出する(ステップS106)。
【数7】
【0042】
その後、係数更新部117は、計算パラメータTd_u[l]を計算パラメータX[l]に格納する(ステップS107)。次に、係数更新部117は、インデックス「l」を「1」だけインクリメントする(ステップS108)。その後、係数更新部117は、インデックス「l」が基準回数「N」に「1」を加えた数「N+1」未満であるか否かを判定する(ステップS109)。係数更新部117は、インデックス「l」が数「N+1」未満であると判定すると(ステップS109:Yes)、再びステップS104の処理を実行する。
【0043】
一方、係数更新部117は、インデックス「l」が数「N+1」未満であると判定すると(ステップS109:No)、下記式(8)で表される関係式を用いて係数kを算出する(ステップS110)。ここで、「係数k」とは、第1係数k、第2係数kまたは第3係数kに相当する。
【数8】
なお、式(8)において、「m」は正の整数であり、加工繰り返し回数情報が示すカウント値を反映した値に相当する。
【0044】
次に、評価値算出部118は、下記式(9)で表される関係式を用いて評価値Jを算出し(ステップS110)、係数・評価値算出処理が終了する。ここで、「評価値J」とは、第1係数k、に対応する評価値J、第2係数kに対応する評価値J、または、第3係数kに対応する評価値Jに相当する。これらの評価値J、J、Jは、それぞれ、前述の第1補正量u1と第1仮想円筒度yUU、前述の第2補正量u1と第2仮想円筒度yLL、および、前述の第3補正量u1と第3仮想円筒度yAAとを用いて求めた値である。
【数9】
なお、式(9)において、「m」は正の整数であり、加工繰り返し回数情報が示すカウント値に相当する。
【0045】
ステップS12の係数・評価値算出処理が実行されることにより、第1係数kおよび第1係数kに対応する評価値Jが算出された後、係数更新部117は、図7に示すように、基準記憶部138から基準範囲を示す情報を取得し、直近にホーニング加工が行われた被加工物Wについての第2補正量u1が基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS13)。係数更新部117により第2補正量u1が基準範囲外であると判定されると(ステップS13:No)、そのまま後述のステップ15の処理が実行される。一方、係数更新部117が、第2補正量u1が基準範囲内であると判別すると(ステップS13:Yes)、第2係数kと第2係数kに対応する評価値Jとを算出する係数・評価値算出処理が実行される(ステップS14)。
【0046】
続いて、係数更新部117は、基準記憶部138から基準範囲を示す情報を取得し、直近にホーニング加工が行われた被加工物Wについての第2補正量u1が基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS13)。係数更新部117により第2補正量u1が基準範囲外であると判定されると(ステップS13:No)、そのまま後述のステップ15の処理が実行される。一方、係数更新部117が第2補正量u1が基準範囲内であると判定すると(ステップS13:Yes)、第2係数kと第2係数kに対応する評価値Jとを算出する係数・評価値算出処理が実行される(ステップS14)。
【0047】
その後、係数更新部117は、基準記憶部138から基準範囲を示す情報を取得し、直近にホーニング加工が行われた被加工物Wについての第3補正量u1が基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS15)。係数更新部117により第3補正量u1が基準範囲外であると判定されると(ステップS15:No)、そのまま後述のステップ17の処理が実行される。一方、係数更新部117が第3補正量u1が基準範囲内であると判定すると(ステップS15:Yes)、第3係数kと第3係数kに対応する評価値Jとを算出する係数・評価値算出処理が実行される(ステップS16)。
【0048】
次に、係数更新部117は、算出された評価値J、J、Jに基づいて、更新後の第1係数k、第2係数k、第3係数kそれぞれを決定するフィルタ処理を実行する(ステップS17)。
【0049】
ここで、フィルタ処理について、図8を参照しながら詳細に説明する。まず、係数更新部117は、評価値Jが予め設定された基準評価値Jth未満であるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、「評価値J」は、前述の評価値J、J、Jのいずれかに相当する。また、基準評価値Jthは、例えば「0.01」に設定される。係数更新部117は、評価値Jが基準評価値Jth以上であると判定すると(ステップS201:No)、採用する係数kを係数・評価値算出処理で算出された新たな係数k(new)に決定し(ステップS202)、後述のステップS208の処理が実行される。ここで、係数kは、第1係数k、第2係数k、または第3係数kに相当する。また、係数k(new)は、係数・評価値算出処理で算出された新たな第1係数k、第2係数k、または第3係数kに相当する。
【0050】
一方、係数更新部117が、評価値Jが基準評価値Jth未満であると判定したとする(ステップS201:Yes)。この場合、係数更新部117は、係数・評価値算出処理で算出された新たな係数k(new)が既に採用されている係数k(old)と予め設定された係数Co1との積よりも大きいか否かを判定する(ステップS203)。ここで、係数Co1は、例えば「1.2」に設定される。また、係数k(old)は、既に採用されている第1係数k、第2係数k、または第3係数kに相当する。係数更新部117が、新たな係数k(new)が係数k(old)と係数Co1との積よりも大きいと判定したとする(ステップS203:Yes)。この場合、係数更新部117は、採用する係数kを係数k(old)と係数Co1との積に相当する値に決定し(ステップS204)、後述のステップS208の処理が実行される。
【0051】
一方、係数更新部117が、新たな係数k(new)が係数k(old)と係数Co1との積以下であると判定したとする(ステップS203:No)。この場合、係数更新部117は、係数・評価値算出処理で算出された新たな係数k(new)が既に採用されている係数k(old)と予め設定された係数Co2との積よりも小さいか否かを判定する(ステップS205)。ここで、係数Co2は、例えば「0.8」に設定される。係数更新部117が、新たな係数k(new)が係数k(old)と係数Co2との積よりも小さいと判定したとする(ステップS205:Yes)。この場合、係数更新部117は、採用する係数kを係数k(old)と係数Co2との積に相当する値に決定し(ステップS206)、後述のステップS208の処理が実行される。一方、係数更新部117が、新たな係数k(new)が係数k(old)と係数Co2との積よりも小さいと判定したとする(ステップS205:Yes)。この場合、係数更新部117は、採用する係数kを係数k(old)に決定する(ステップS207)。
【0052】
次に、係数更新部117は、新たに採用する第1係数k、第2係数k、第3係数kの全てを決定したか否かを判定する(ステップS208)。係数更新部117は、第1係数k、第2係数k、第3係数kの中に新たに採用する係数を決定していないものがあると判定すると(ステップS208:No)、その係数についてステップS202乃至S207の一連の処理を実行する。一方、係数更新部117は、新たに採用する第1係数kU、第2係数kL、第3係数kAの全てを決定したと判定すると(ステップS208:Yes)、フィルタ処理を終了する。
【0053】
このように、係数更新部117は、フィルタ処理を実行することにより、評価値J、Jの大きさに基づいて、第1係数kおよび第2係数kを更新する。そして、係数更新部117は、評価値J、Jが予め設定された基準評価値Jthよりも大きい場合、第1係数kおよび第2係数kそれぞれを更新した場合における更新前後の第1係数kおよび第2係数kの変化率に基づいて、第1係数kおよび第2係数kを更新する。具体的には、係数更新部117は、第1係数k、第2係数kおよび第3係数kそれぞれを更新した場合における更新前後の第1係数k、第2係数kおよび第3係数kの変化率が係数Co1以下且つ係数Co2以上である場合、第1係数kおよび第2係数kを新たに算出された第1係数kおよび第2係数kに更新する。
【0054】
図6に戻って、ステップS17のフィルタ処理が実行されることにより、新たに採用する第1係数k、第2係数k、第3係数kが決定されると、係数更新部117は、砥石30が交換された後、係数記憶部134が記憶する第1係数k、第2係数k、第3係数kを、新たに採用することに決定された第1係数k、第2係数k、第3係数kで更新する(ステップS18)。
【0055】
続いて、加工繰り返し回数監視部119は、繰り返し回数記憶部135が記憶する加工繰り返し回数情報が示すカウント値nを「0」に設定する(ステップS19)。その後、再びステップS1の処理が実行される。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態にホーニング加工制御装置1では、補正量算出部113が、第1補正量u1と第2補正量u1と第3補正量u1とを算出する。そして、移動範囲決定部114が、第1補正量u1と第3補正量u1との和に基づいて、第1位置PosUを決定するとともに、第2補正量u1と第3補正量u1との和に基づいて、第2位置PosLを決定する。これにより、ホーニングツール21の砥石23の中央部CPの移動範囲Mが第1補正量u1と第2補正量u1と第3補正量u1とに基づいて適切な範囲に決定されるので、ホーニング加工後の被加工物Wの加工孔Whの円筒度を高めることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係るホーニング加工制御装置1では、仮想円筒度推定部116が、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについて、第1仮想円筒度yUUと第2仮想円筒度yLLとを推定する。そして、係数更新部117が、仮想円筒度推定部116によりホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについて推定された第1仮想円筒度yUUと第2仮想円筒度yLLとに基づいて、第1係数k、および第2係数kを更新する。これにより、第1係数kおよび第2係数kが、第1仮想円筒度yUUと第2仮想円筒度yLLに応じて適切に更新される。従って、第1仮想円筒度yUUまたは第2仮想円筒度yLLの変動に応じてホーニングツール21の第1位置PosUと第2位置PosLとを適切な位置に設定することができる。
【0058】
更に、本実施の形態に係る仮想円筒度推定部116は、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについての第1補正量u1と第1円筒度yとに基づいて第1仮想円筒度yUUを推定する。また、仮想円筒度推定部116は、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについての第2補正量u1と第2円筒度yとに基づいて第2仮想円筒度yLLを推定する。これにより、仮想円筒度推定部116は、第1仮想円筒度yUUを、第1補正量u1の第1円筒度yへの寄与分を適切に反映した値として算出し、第2仮想円筒度yLLを、第2補正量u1の第2円筒度yへの寄与分を適切に反映した値として算出することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係るホーニング加工制御装置1では、評価値算出部118が、第1補正量u1と第1仮想円筒度yUUとを用いて求めた評価値Jと、第2補正量u1と第2仮想円筒度yLLとを用いて求めた評価値Jと、を算出する。そして、係数更新部117は、評価値算出部118により算出された評価値J、Jの大きさに基づいて、第1係数kおよび第2係数kを更新する。また、係数更新部117は、評価値J、Jが予め設定された基準評価値Jthよりも大きい場合、第1係数kおよび第2係数kそれぞれを更新した場合における更新前後の第1係数kおよび第2係数kの変化率に基づいて、第1係数kおよび第2係数kを更新する。これにより、第1係数kおよび第2係数kが必要以上に大きく変化させる形で更新されることが抑制されるので、第1補正量u1および第2補正量u1を適切な量で維持することができるという利点がある。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、仮想円筒度推定部116が、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについての第1補正量u1の総和と第3補正量u1の総和との和に対する第1補正量u1の総和の比率を第1仮想円筒度yUUと推定してもよい。また、仮想円筒度推定部116が、予め設定された数Nのホーニング加工後の被加工物Wそれぞれについての第2補正量u1の総和と第3補正量u1の総和との和に対する第2補正量u1の総和の比率を第2仮想円筒度yLLと推定してもよい。
【0061】
具体的には、仮想円筒度推定部116は、下記式(10)および(11)に示す関係式を用いて、第1仮想円筒度yUUおよび第2仮想円筒度yLLを推定するようにすればよい。
【数10】
【数11】
【0062】
本構成によれば、第1仮想円筒度yUUおよび第2仮想円筒度yLLを算出する際の処理負荷が軽減されるという利点がある。
【0063】
実施の形態では、係数更新部117が、第1仮想円筒度yUU、第2仮想円筒度yLLおよび第3仮想円筒度yAAと評価値J、J、Jとを用いて、第1係数k、第2係数k、および第3係数kを更新する例について説明した。但し、これに限らず、例えば係数更新部が、ホーニング加工の繰り返し回数の増加に伴い、第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを漸減させるように第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新するものであってもよい。
【0064】
例えば図9に示すように、本変形例に係るホーニング加工制御装置2001では、CPU101は、補助記憶部103が記憶する前述のプログラムを主記憶部102に読み出して実行することにより、計測値取得部111、円筒度算出部112、補正量算出部113、移動範囲決定部114、出力部115、係数更新部2117および加工繰り返し回数監視部119として機能する。なお、図9において実施の形態と同様の構成については図3と同一の符号を付している。また、補助記憶部103は、計測値記憶部131とパラメータ記憶部132と目標値記憶部133と係数記憶部134と繰り返し回数記憶部135と円筒度記憶部136と補正量記憶部137の他に、第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新する際に使用する関係式情報を記憶する関係式記憶部2138を有する。ここで、関係式情報は、例えば下記式(12)で表される関係式を示す情報である。
【数12】
ここで、係数k(s)は、第1係数k、第2係数k、または第3係数kに相当する。インデックス「s」はホーニング加工の繰り返し回数に相当する。Nは、前述の基準回数である。
【0065】
そして、係数更新部2117は、式(12)で表される関係式を用いて第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを算出し、算出した第1係数k、第2係数kおよび第3係数kで係数記憶部134が記憶する第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新する。
【0066】
ここで、本変形例に係るホーニング加工制御装置2001が実行するホーニング加工制御処理について図10を参照しながら説明する。このホーニング加工制御処理は、実施の形態と同様に、ユーザがホーニング加工装置2の砥石23を交換した後、入力部104を介してホーニング加工制御処理を開始させるための操作を行ったことを契機として開始される。まず、ステップS301乃至S308の処理が実行される。このステップS301乃至S308の処理は、実施の形態において図5を用いて説明したステップS1乃至S8の処理と同様である。ステップS308において、計測値取得部111および加工繰り返し回数監視部119が、カウント値nが基準回数N以上であると判定したとする(ステップS308:No)。この場合、係数更新部2117は、式(12)で表される関係式を用いて第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを算出する(ステップS309)。次に、係数更新部2117は、算出した第1係数k、第2係数kおよび第3係数kで係数記憶部134が記憶する第1係数k、第2係数kおよび第3係数kを更新する(ステップS310)。その後、再びステップS301の処理が実行される。
【0067】
本構成によれば、実施の形態1に係る仮想円筒度推定部116、評価値算出部118が不要となるので、ホーニング加工制御装置2001の構成を簡素化できる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、少量多品種のワークについてホーニング加工を実施するホーニング加工装置に装着されるホーニングツールとして好適である。
【符号の説明】
【0070】
1:ホーニング加工制御装置、2:ホーニング加工装置、3:計測装置、21:ホーニングツール、22:回転主軸、23:砥石、29,39:駆動部、31:ノズル、32:エアマイクロメータ、101:CPU、102:主記憶部、103:補助記憶部、104:入力部、106:インタフェース、109:バス、111:計測値取得部、112:円筒度算出部、113:補正量算出部、114:移動範囲決定部、115:出力部、116:仮想円筒度推定部、117,2117:係数更新部、118:評価値算出部、119:加工繰り返し回数監視部、131:計測値記憶部、132:パラメータ記憶部、133:目標値記憶部、134:係数記憶部、135:繰り返し回数記憶部、136:円筒度記憶部、137:補正量記憶部、138:基準記憶部、2138:関係式記憶部、C,C,C:制御器、CP:中央部、e,e,e:差分量、J1,J2:中心軸、J,J,J,J:評価値、k:第1係数、k:第2係数、k:第3係数、LIMu2,LIMu2:調整量、M:移動範囲、N:基準回数、PosA,PosB,PosC:位置、PosU:第1位置、PosL:第2位置、r:第3目標円筒度、r:第2目標円筒度、r:第1目標円筒度、u1:第3補正量、u1:第2補正量、u1:第1補正量、W:被加工物、Wa:内面、Wh:加工孔、y:第3円筒度、y:第2円筒度、y:第1円筒度、yAA:第3仮想円筒度、yLL:第2仮想円筒度、yUU:第1仮想円筒度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10