(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る端子付電線を示す斜視図である。
 
【
図2】前記端子付電線の端子金具を示す平面図である。
 
【
図3】前記端子金具の電気接続領域における断面を示す断面図である。
 
【
図4】前記端子金具の中間領域における断面を示す断面図である。
 
【
図5】前記端子金具の圧着領域における断面を示す断面図である。
 
【
図6】前記端子金具の基材部を構成する銅母材を示す断面図である。
 
【
図7】前記銅母材の表面にニッケル下地層が形成された様子を示す断面図である。
 
【
図8】前記ニッケル下地層の表面に銅中間層が形成された様子を示す断面図である。
 
【
図9】前記銅中間層の表面のうち第1領域に錫リフロー層が形成された様子を示す断面図である。
 
【
図10】前記銅中間層の表面のうち第2領域に錫無光沢層が形成された様子を示す断面図である。
 
【
図11】本発明の第2実施形態に係る端子付電線の端子金具の電気接続領域における断面を示す断面図である。
 
【
図12】前記端子金具の中間領域における断面を示す断面図である。
 
【
図13】前記端子金具の圧着領域における断面を示す断面図である。
 
【
図14】本発明の第3実施形態に係る端子付電線の端子金具の電気接続領域における断面を示す断面図である。
 
【
図15】前記端子金具の圧着領域における断面を示す断面図である。
 
【
図16】本発明の第4実施形態に係る端子付電線の端子金具の電気接続領域における断面を示す断面図である。
 
【
図17】前記端子金具の中間領域における断面を示す断面図である。
 
【
図18】前記端子金具の圧着領域における断面を示す断面図である。
 
【
図19】本発明の変形例に係る端子付電線の端子金具を示す断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。尚、第2〜4実施形態においては、第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材及び同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
 
【0010】
[第1実施形態]
  本実施形態の端子付電線1は、
図1に示すように、被覆電線2と、端子金具3と、を備え、例えば車両において配索されるワイヤハーネスを構成する。
 
【0011】
  被覆電線2は、導体部21と、導体部21を覆う絶縁被覆22と、を備える。導体部21は例えばアルミニウムやアルミニウム合金によって構成されている。尚、導体部21は、複数の細線が撚り合わされた撚り線であってもよいし、一本の導線によって構成されていてもよい。被覆電線2の端部において、絶縁被覆22が除去されることにより、導体部21が露出している。
 
【0012】
  端子金具3は、先端側から順に、箱状部31と、導体接続部32と、被覆接続部33と、を有する。端子金具3は、
図2に示すような板状部材4を屈曲させることで組み立てられ、導体接続部32および被覆接続部33によって被覆電線2に接続されるようになっている。
 
【0013】
  板状部材4は、被覆電線2の長手方向に沿って延びるとともに被覆電線2が載置される底板部41と、底板部41を挟むように形成された一対の壁部42A、42Bと、底板部41の先端側に連続する帯板状の接触片43と、底板部41を挟むように形成された一対の導体圧着片(バレル)44A、44Bと、底板部41を挟むように形成された一対の被覆圧着片(バレル)45A、45Bと、を一体に有する。
 
【0014】
  一対の壁部42A、42Bが屈曲されることにより、底板部41とともに四角筒状の箱状部31が形成される。箱状部31は先端側において開口し、接触片43が開口近傍において屈曲されて四角筒の内側に向かって延びている。相手方端子が開口から箱状部31の内側に挿入され、接触片43が変形することで所定の挿入圧が得られるようになっている。箱状部31のうち相手方端子と接触する部分が電気接続部311となる。
 
【0015】
  一対の導体圧着片44A、44Bは、底板部41から立設するように屈曲された後、導体部21に加締められて圧着される。即ち、一対の導体圧着片44A、44Bと底板部41とによって導体接続部32が形成される。
 
【0016】
  一対の被覆圧着片45A、45Bは、底板部41から立設するように屈曲された後、絶縁被覆22に加締められて圧着される。即ち、一対の被覆圧着片45A、45Bと底板部41とによって被覆接続部33が形成される。
 
【0017】
  板状部材4において、電気接続部311に対応した領域が電気接続領域A1となり、導体接続部32および被覆接続部33に対応した領域が圧着領域A2となり、電気接続領域A1と圧着領域A2とによって挟まれた領域が中間領域A3となる。即ち、電気接続領域A1には電気接続部311が含まれており、圧着領域A2には一対の導体圧着片44A、44Bが含まれている。尚、中間領域A3には、箱状部31のうち相手方端子と接触しない部分、及び、壁部42A、42Bと導体圧着片44A、44Bとの間の部分が含まれている。
 
【0018】
  端子金具3は、
図3〜5に示すように、銅製の基材部34の表面に対し、ニッケル層(下地層)35と銅層(中間層)36と錫メッキ層37とがこの順で積層されることで構成されている。尚、図示の例では、端子金具3のうち被覆電線2が配置される面にのみ各層35〜37が形成されているが、両面にこれらの層が形成されていてもよい。
 
【0019】
  銅層36と錫メッキ層37とが熱等によって反応することにより、これらの間に銅と錫の合金部30が形成される。合金部30は、例えば、底板部41の板厚方向を突出方向とし、先端側に向かうにしたがって面内方向寸法が小さくなるような突起形状を有している。
 
【0020】
  図3は、電気接続領域A1における底板部41の断面を示しており、
図4は、中間領域A3における底板部41の断面を示しており、
図5は、圧着領域A2における底板部41の断面を示している。ニッケル層35および銅層36は、全ての領域A1〜A3において略一定の厚さを有している。
 
【0021】
  錫メッキ層37は、電気接続領域A1よりも圧着領域A2において厚く形成されている。尚、錫メッキ層37は、電気接続領域A1および圧着領域A2のそれぞれにおいて略一定の厚さを有しており、中間領域A3においては、電気接続領域A1から圧着領域A2に向かうにしたがって厚くなるように形成されている。
 
【0022】
  電気接続領域A1における錫メッキ層37の厚さは1μm以下であることが好ましく、圧着領域A2における錫メッキ層37の厚さは3μm以上であることが好ましい。尚、中間領域A3における厚さは例えば1〜3μmであればよい。このように、圧着領域A2における錫メッキ層37の厚さが、電気接続領域A1における錫メッキ層37の厚さの3倍以上となっていることが好ましい。
 
【0023】
  電気接続領域A1および中間領域A3において、合金部30が錫メッキ層37を貫通して露出している。一方、圧着領域A2において合金部30は露出していない(即ち錫メッキ層37によって覆われている)。
 
【0024】
  ニッケル層35の厚さは、領域A1〜A3のいずれにおいても略一定であり、例えば0.2μmである。銅層36の厚さは、領域A1〜A3のいずれにおいても略一定であり、例えば0.4μmである。尚、各層の厚さは多少の誤差(例えば±0.02μmを含んでいてもよい)
 
【0025】
  ここで、基材部34の表面にニッケル層35と銅層36と錫メッキ層37とを形成する方法について説明する。まず、
図6に示すような銅母材34A(基材部34に対応)の表面に、
図7に示すように下地処理によってニッケル下地層35A(ニッケル層35に対応)を形成する。さらに、
図8に示すように、下地処理によってニッケル下地層35Aの表面に銅中間層36A(銅層36に対応)を形成する。尚、
図6における左右両側は、板状部材4の端面に相当する。
 
【0026】
  次に、
図9に示すように、錫リフロー処理によって銅中間層36Aの表面のうち第1領域A4に錫リフロー層37A(錫メッキ層37に対応)を形成する。さらに、
図10に示すように、錫無光沢処理によって銅中間層36Aの表面のうち第2領域A5に錫無光沢層37B(錫メッキ層37に対応)を形成する。
 
【0027】
  第1領域A4は、上記の電気接続領域A1を含むものであり、即ち、電気接続部311を含む領域である。第2領域A5は、上記の圧着領域A2を含むものであり、即ち、一対の導体圧着片44A、44Bを含む領域である。尚、中間領域A3は、第1領域A4と第2領域A5とに跨っている。このように、電気接続領域A1を含む第1領域A4においては錫リフロー処理によって錫リフロー層37Aを形成するとともに、圧着領域A2を含む第2領域A5においては錫無光沢処理によって錫無光沢層37Bを形成することにより、錫メッキ層37を、電気接続領域A1よりも圧着領域A2において厚く形成することができる。
 
【0028】
  尚、後述する第2〜4実施形態においては、ニッケル下地層35Aおよび銅中間層36Aを形成する工程は適宜に省略されればよく、銅母材34A、ニッケル下地層35Aおよび銅中間層36A(ニッケル下地層35Aおよび銅中間層36Aをまとめて「下地層」という)のうち適宜なものの表面に錫リフロー層37Aおよび錫無光沢層37Bを形成すればよい。
 
【0029】
  このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、相手方端子と接触する電気接続領域A1よりも、導体圧着片44A、44Bを含む圧着領域A2において錫メッキ層37が厚く形成されていることで、圧着領域A2における錫メッキ層37の下地である合金部30と導体部21とが直接接触しにくく、ガルバニック腐食を抑制することができる。また、電気接続領域A1において、錫メッキ層37を形成することによる影響を小さくし、相手方端子との接続時の特性の変化を抑制することができる。
 
【0030】
  また、圧着領域A2における錫メッキ層37の厚さが、電気接続領域A1における錫メッキ層37の厚さの3倍以上であれば、ガルバニック腐食をさらに抑制するとともに、相手方端子との接続時の特性の変化をさらに抑制することができる。
 
【0031】
  また、圧着領域A2における錫メッキ層37の厚さが3μm以上であり、且つ、電気接続領域A1における錫メッキ層37の厚さが1μm以下であれば、ガルバニック腐食をさらに抑制するとともに、相手方端子との接続時の特性の変化をさらに抑制することができる。
 
【0032】
[第2実施形態]
  本実施形態の端子付電線は、被覆電線2と、
図11〜13に示すような端子金具3Bと、を備える。端子金具3Bは、前記第1実施形態の端子金具3と同様に、箱状部31と、導体接続部32と、被覆接続部33と、を有している。端子金具3Bは、ニッケル層35が省略されている点で前記第1実施形態の端子金具3とは異なっている。
 
【0033】
  即ち、端子金具3Bは、基材部34の表面に対し、銅層(下地層)36と錫メッキ層37とがこの順で積層されることで構成されている。
図11は、電気接続領域A1における底板部41の断面を示しており、
図12は、中間領域A3における底板部41の断面を示しており、
図13は、圧着領域A2における底板部41の断面を示している。
 
【0034】
  端子金具3Bにおける銅層36および錫メッキ層37の厚さは、前記第1実施形態と同等である。また、端子金具3Bには、前記第1実施形態の端子金具3と同様に、合金部30が形成されている。
 
【0035】
  このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、電気接続領域A1よりも圧着領域A2において錫メッキ層37が厚く形成されていることで、圧着領域A2における錫メッキ層37の下地である合金部30と導体部21とが直接接触しにくく、ガルバニック腐食を抑制することができる。また、電気接続領域A1において、錫メッキ層37を形成することによる影響を小さくし、相手方端子との接続時の特性の変化を抑制することができる。
 
【0036】
[第3実施形態]
  本実施形態の端子付電線は、被覆電線2と、
図14、15に示すような端子金具3Cと、を備える。端子金具3Cは、前記第1実施形態の端子金具3と同様に、箱状部31と、導体接続部32と、被覆接続部33と、を有している。端子金具3Cは、銅層36が省略されている点で前記第1実施形態の端子金具3とは異なっている。
 
【0037】
  即ち、端子金具3Cは、基材部34の表面に対し、ニッケル層(下地層)35と錫メッキ層37とがこの順で積層されることで構成されている。
図14は、電気接続領域A1における底板部41の断面を示しており、
図15は、圧着領域A2における底板部41の断面を示している。
 
【0038】
  端子金具3Cにおけるニッケル層35および錫メッキ層37の厚さは、前記第1実施形態と同等である。また、端子金具3Cには銅層が形成されていないことから、前記第1実施形態の端子金具3とは異なり、合金部30が形成されない。
 
【0039】
  導体圧着片44A、44Bが導体部21に圧着される際、圧着領域A2における錫メッキ層37が多少削れることがある。このとき、圧着領域A2において錫メッキ層37が厚く形成されていることで、下地であるニッケル層35が露出しにくくなっている。
 
【0040】
  このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、電気接続領域A1よりも圧着領域A2において錫メッキ層37が厚く形成されていることで、圧着領域A2における錫メッキ層37の下地であるニッケル層35と導体部21とが直接接触しにくく、ガルバニック腐食を抑制することができる。また、電気接続領域A1において、錫メッキ層37を形成することによる影響を小さくし、相手方端子との接続時の特性の変化を抑制することができる。
 
【0041】
[第4実施形態]
  本実施形態の端子付電線は、被覆電線2と、
図16〜18に示すような端子金具3Dと、を備える。端子金具3Dは、前記第1実施形態の端子金具3と同様に、箱状部31と、導体接続部32と、被覆接続部33と、を有している。端子金具3Dは、ニッケル層35および銅層36が省略されている点で前記第1実施形態の端子金具3とは異なっている。
 
【0042】
  即ち、端子金具3Dは、基材部34の表面に対し、錫メッキ層37が直接積層されることで構成されている。
図16は、電気接続領域A1における底板部41の断面を示しており、
図17は、中間領域A3における底板部41の断面を示しており、
図18は、圧着領域A2における底板部41の断面を示している。
 
【0043】
  端子金具3Dにおける錫メッキ層37の厚さは、前記第1実施形態と同等である。また、端子金具3Dには、前記第1実施形態の端子金具3と同様に、合金部30が形成されている。
 
【0044】
  このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、電気接続領域A1よりも圧着領域A2において錫メッキ層37が厚く形成されていることで、圧着領域A2における錫メッキ層37の下地である合金部30と導体部21とが直接接触しにくく、ガルバニック腐食を抑制することができる。また、電気接続領域A1において、錫メッキ層37を形成することによる影響を小さくし、相手方端子との接続時の特性の変化を抑制することができる。
 
【0045】
  なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
 
【0046】
  例えば、前記第1実施形態では、電気接続領域A1における錫メッキ層37の厚さが1μm以下であることが好ましく、圧着領域A2における錫メッキ層37の厚さが3μm以上であることが好ましく、圧着領域A2における錫メッキ層37の厚さが、電気接続領域A1における錫メッキ層37の厚さの3倍以上であることが好ましいとしたが、これらの寸法は適宜に設定されればよい。
 
【0047】
  即ち、例えば錫メッキ層37の下地が露出しにくい場合には、圧着領域A2における厚さが3μm未満であってもよいし、例えば錫メッキ層37を形成することによって相手方端子との接続時の特性が変化しにくい場合には、電気接続領域A1における厚さが1μmよりも大きくてもよい。
 
【0048】
  また、前記実施形態では、圧着領域A2における錫メッキ層37が、下地が露出しないような厚さを有しているものとしたが、下地が多少露出してもよい。このような場合であっても、電気接続領域A1よりも圧着領域A2において錫メッキ層37を厚くすることで、下地の露出面積を小さくすることができ、ガルバニック腐食を抑制することができる。
 
【0049】
  また、前記実施形態では、基材部34の片面(表面)および側面にのみ錫メッキ層37が形成されているものとしたが、
図19に示すように、基材部34の裏表両面および側面が錫メッキ層37によって覆われる構成としてもよい。尚、
図19では電気接続領域A1のみを示しているが、領域A2、A3においても同様の構成であればよい。また、裏面側のニッケル層35および銅層36は適宜省略されていてもよい。さらに、第2〜4実施形態のようにニッケル層35や銅層36が省略された構成においても、基材部34の裏面に錫メッキ層37を設けてもよい。
 
【0050】
  その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。