(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薄層の積層体で被覆されている透明基材を有している材料であって、前記積層体が、前記基材から出発して、銀に基づく3層の機能性金属層、及び4層の誘電体被覆が交互になったものを逐次的に有しており、銀に基づく前記3層の機能性金属層が、前記基材から出発して、第1、第2及び第3機能性金属層として表され、前記機能性金属層の厚みが、前記基材から出発して、前記基材からの距離に応じて増加し、前記4層の誘電体被覆が、前記基材から出発して、第1誘電体被覆M1,第2誘電体被覆M2,第3誘電体被覆M3及び第4誘電体被覆M4として表され、前記誘電体被覆が、それぞれ、少なくとも1層の誘電体層を有しており、そのようにして、前記機能性金属層が、それぞれ、2層の誘電体被覆の間に配置されるようになっており、下記であることを特徴とする、材料:
− 前記誘電体被覆M1,M2、M3及びM4が、それぞれ、光学的厚みTo1,To2,To3及びTo4を有しており,
− 前記誘電体被覆が、それぞれ、少なくとも1層の高屈折率誘電体層を含んでおり、その屈折率が、少なくとも2.15であり、かつ、その光学的厚みが、20nmよりも大きく、
− 1層の同一の誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、関係する誘電体被覆に従って、Tohi1,Tohi2,Tohi3又はTohi4と表され、
− 前記誘電体被覆が、それぞれ、以下の関係を満たしており:
Tohi1/To1>0.30、
Tohi2/To2>0.30、
Tohi3/To3>0.30、
Tohi4/To4>0.30
前記誘電体被覆が、以下の特徴を満たしており:
− 前記第1誘電体被覆M1の前記光学的厚みが、60nm〜140nm、
− 前記第2誘電体被覆M2の前記光学的厚みが、120nm〜180nm、
− 前記第3誘電体被覆M3の前記光学的厚みが、140nm〜200nm、
− 前記第4誘電体被覆M4の前記光学的厚みが、50nm〜120nm、
かつ、ここで、
− 前記第1機能性金属層の厚みが、6nm超12nm未満であり、
− 前記第2機能性金属層の厚みが、11nm超20nm未満であり、
− 前記第3機能性金属層の厚みが、15nm超22nm未満であり、
− 前記3層の機能性金属層が、下記の特徴を満たす:
− 前記第2機能性金属層の厚みの、前記第1機能性金属層の厚みに対する比が、1.20以上2.00以下であり、かつ/又は
− 前記第3機能性金属層の厚みの、前記第2機能性金属層の厚みに対する比が、1.20以上1.80以下間である。
機能性金属層に接触して配置され、チタン、ニッケル、クロム及びニオブから選ばれる1又は複数の元素の、金属層、金属窒化物層、金属酸化物層、及び金属酸窒化物層から選ばれるブロッキング層を、前記積層体が、追加的に、少なくとも1層有していることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
前記誘電体被覆M1,M2,M3及びM4が、それぞれ、光学的厚みTo1,To2,To3及びTo4を有しており、以下の関係:To4<To1<To2<To3を満たしていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料。
外部から来る入射光が、前記第1誘電体被覆を通過し、その後に、前記第1機能性金属層を通過するように、前記積層体が、前記グレージングにおいて配置されていることを特徴とする、請求項11に記載のグレージング。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本記載の続きの部分で示される好ましい特徴は、本発明に係る方法に適用することができ、かつ、必要に応じて、生産物にも、すなわち本材料又は本材料を有しているグレージングにも適用することができる。
【0016】
本記載において現れるすべての光特性は、建築産業用ガラスにおいて使用されるグレージングの光及び太陽光特性の決定に関する、欧州規格EN410で記述されている原理及び方法に従って取得される。
【0017】
慣用的に、屈折率は、550nmの波長で計測される。光透過率LT及び光反射LR要素は、視野2°で、D65光源下で計測される。
【0018】
別段の指示がない限り、光学的特徴及び熱的特徴に関するすべての値及び値の範囲は、薄層の積層体を保持している通常のソーダ石灰ガラスタイプの6mmの基材、90%の割合のアルゴン及び10%の割合の空気で充填された16mmの層間空間、並びに4mmの厚みの被覆されていない別のソーダ石灰ガラスタイプの基材、からなる二重グレージングに関して、与えられる。被覆された基材は、薄層の積層体がグレージングの第2面上にあるように配置される。外部反射Rext.は、積層体を有している基材の側から観察され、一方で、積層体を有していない基材の側から観察される反射は、内部反射として表現される。積層体を有していない、通常のソーダ石灰ガラスタイプの基材の光透過率(LT)は、89%よりも大きく、好ましくは90%よりも大きい。
【0019】
別段の指示がない限り、本文書で触れられていて他の情報がない厚みは、現実の、又は幾何学的な、物理的厚みであり、Tpと表現され、かつ、ナノメートルで表現される(かつ、光学的厚みではない)。光学的厚みToは、対象となっている層の物理的厚みと、550nmの波長におけるその屈折率との積として定義される:To=n*Tp。屈折率は無次元の値なので、光学的厚みの単位は、物理的厚みに関して選択される単位であるとみなすことができる。
【0020】
誘電体被覆が複数の誘電体層を含む場合には、誘電体被覆の光学的厚みは、誘電体被覆に含まれている異なる誘電体層の光学的厚みの合計に対応する。
【0021】
本記載を通じて、本発明に係る基材は、水平に配置されているとみなされる。薄層の積層体は、基材の上に積層される。用語「上」及び「下」並びに「下方」及び「上方」の意味は、この方向との関連で考えられることとなる。特に明記されないかぎり、「上」及び「下」という表現は、2層の層及び/又は2層の被覆が、互いに接触して配置されていることを必ずしも意味しない。ある層が別の層又は被覆と「接触して」堆積されると特定される場合には、これは、これら2層の層の間(又は層と被覆の間)には、1層又は複数の層が挿入されえない、ということを意味する。
【0022】
本発明の意味の範囲内で、機能性層又は誘電体被覆についての「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」という表示は、積層体を保持している基材から出発して定義され、かつ、同じ機能を有する層又は被覆に関して定義される。例えば、基材に最も近い機能性層が、第1機能性層であり、基材から遠ざかって移動して次の層が、第2機能性層、などとなる。
【0023】
本発明は、また、本発明に係る材料を有しているグレージングにも関する。慣用的には、グレージングの面は、建物の外側から出発して表現され、かつ、基材が備え付けられた客室又は屋内の外部から内部に向かって、基材の面に番号をふることによって表される。これが意味することは、入射太陽光は、番号が増加する順番で、複数の面を通過するということである。
【0024】
好ましくは、積層体は、磁場アシストカソードスパッタリング(マグネトロン法)によって積層される。この有利な実施態様によると、積層体のすべての層が、磁場アシストカソードスパッタリングによって積層される。
【0025】
本発明は、また、本発明に係る材料を得るための方法にも関し、この方法では、積層体の層が、マグネトロンカソードスパッタリングによって積層される。
【0026】
銀に基づく機能性金属層は、機能性層の重量に対して、少なくとも95.0重量%の、好ましくは少なくとも96.5重量%の、さらには少なくとも98.0重量%の銀を含有している。好ましくは、銀に基づく機能性金属層は、銀に基づく機能性金属層の重量に対して、1.0重量%未満の銀以外の金属を含有している。
【0027】
基材から出発して機能性金属層の厚みが増加するという特徴は、第3機能性金属層の厚みが、第2機能性金属層の厚みよりも大きいということを意味し、かつ、第2機能性金属層の厚みが、第1機能性金属層の厚みよりも大きいということを意味する。連続する2層の機能性層の間での厚みの増加は、より好ましくなる順番で、2nmよりも大きく、3nmよりも大きく、4nmよりも大きい。
【0028】
本発明の有利な実施態様によると、機能性金属層が、以下の条件のうちの1又は複数を満たす:
− 3層の機能性金属層が、基材から出発して定義される第1、第2及び第3機能性金属層に対応する、
− 第1機能性金属層の厚みに対する、第2金属層の厚みの比が、より好ましくなる順番で、1.10と2.00の間、1.20と1.80の間、1.40と1.60の間であり、これらの値を含む、かつ/又は、
− 第2機能性金属層の厚みに対する、第3金属層の厚みの比が、より好ましくなる順番で、1.10と1.80の間、1.15と1.60の間、1.20と1.40の間であり、これらの値を含む、かつ/又は、
− 第1機能性金属層の厚みが、より好ましくなる順番で、6nmと12nmの間、7nmと11nmの間、8nmと10nmの間であり、かつ/又は、
− 第2機能性金属層の厚みが、より好ましくなる順番で、11nmと20nmの間、12nmと18nmの間、13nmと15nmの間であり、かつ/又は、
− 第3機能性金属層の厚みが、より好ましくなる順番で、15nmと22nmの間、16nmと20nmの間、17nmと19nmの間であり、かつ/又は、
− 機能性金属層の厚みの合計が、30nmと50nmの間であり、これらの値を含んでおり、好ましくは、35nmと45nmの間である。
【0029】
機能性金属層に関するこれらの厚みの範囲は、二重グレージングでの少なくとも65%の光透過率、低光反射及び低ソーラーファクターに関して、最も良好な結果が得られる範囲である。このようにして、高い選択性、及びニュートラル色が得られる。
【0030】
積層体は、追加的に、機能性層と接触して配置される、少なくとも1層のブロッキング層を有していることができる。
【0031】
ブロッキング層の役割は、慣用的に、上方反射防止被覆の堆積の間における、かつ、アニーリング、曲げ加工及び/又は強化タイプの可能的な高温加熱処理の間における、起こり得る損傷から機能性層を保護することである。
【0032】
ブロッキング層は、チタン、ニッケル、クロム及びニオブから選ばれる1又は複数の元素の、金属に基づく又は金属合金に基づく金属層、金属窒化物層、金属酸化物層、及び金属酸窒化物層から選ばれ、例えばTi,TiN,TiOx,Nb,NbN,Ni,NiN,Cr,CrN,NiCr又はNiCrNである。これらのブロッキング層が金属、窒化物、若しくは酸窒化物の形態で堆積される場合には、これらの層は、それらの厚み及びそれらを囲む層の性質に応じて、例えば、次に続く層を堆積する時に、又は下方に存在する層との接触における酸化によって、部分的又は完全な酸化を受けることができる。
【0033】
本発明の有利な実施態様によると、1又は複数のブロッキング層が、以下の条件のうちの1又は複数を満たす:
− 各機能性金属層が、ブロッキング下方層及びブロッキング上方層から選択される少なくとも1層のブロッキング層と接触している、かつ/又は
− 各機能性金属層が、ブロッキング上方層と接触している、かつ/又は
− 各ブロッキング層の厚みが、少なくとも0.1nmであり、好ましくは0.5nmと2.0nmの間である、かつ/又は
− 機能性層と接触しているすべてのブロッキング層の合計の厚みが、0.5nmと5nmの間であり、これらの値を含んでおり、好ましくは、1nmと3nmの間であり、又はさらには1nmと2nmの間である。
【0034】
本発明によると、誘電体被覆は、それぞれ、少なくとも1層の高屈折率誘電体層を有している。高屈折率層は、屈折率が少なくとも2.15であるような層を意味するものと理解される。
【0035】
本発明に係る高屈折率層は、以下から選ばれてよい:
− 酸化チタンTiO
2の層(500での屈折率が、2.45)、
− 酸化マグネシウムMnOの層(550nmでの屈折率が、2.16)、
− 酸化タングステンWO
3の層(550nmでの屈折率が、2.15)、
− 酸化ニオブNb
2O
5の層(550nmでの屈折率が、2.30)、
− 酸化ビスマスBi
2O
3の層(550nmでの屈折率が、2.60)、
− 窒化ジルコニウムZr
3N
4の層(550nmでの屈折率が、2.55)
− 窒化ケイ素ジルコニウムの層(550nmでの屈折率が、2.20と2.25の間)。
【0036】
本発明に係る高屈折率層が示す屈折率は、より好ましくなる順番で、2.60以下、2.50以下、2.40以下、2.35以下、2.30以下である。
【0037】
誘電体被覆は、性質が異なる又は同一の、1又は複数の高屈折率層を有していることができる。好ましくは、高屈折率層は、窒化ケイ素ジルコニウム(zirconium silicon nitride)の層である。
【0038】
一の実施態様によると、少なくとも1層の誘電体被覆が、20nmを超える光学的厚みを有する酸化チタンに基づく高屈折率誘電体層を有していない。一の実施態様によれば、いずれの誘電体被覆も、20nmを超える光学的厚みを有する、酸化チタンに基づく高屈折率誘電体層を有していない。
【0039】
本発明の有利な実施態様によれば、誘電体被覆の高屈折率誘電体層が、厚みの観点において、以下の条件のうちの1又は複数を満たす:
− 1層の同じ誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、関係する誘電体被覆に応じて、Tohi1、Tohi2,Tohi3又はTohi4と表される、
− 第1誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi1/To1>0.30、Tohi1/To1>0.40、Tohi1/To1>0.50、Tohi1/To1>0.60、Tohi1/To1>0.70、Tohi1/To1>0.80、Tohi1/To1>0.85を満たす、かつ/又は、
− 第1誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi1/To1<0.95,Tohi1/To1<0.90を満たす、かつ/又は、
− 第2誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi2/To2>0.30,Tohi2/To2>0.40,Tohi2/To2>0.50,Tohi2/To2>0.60,Tohi2/To2>0.70,Tohi2/To2>0.80,Tohi2/To2>0.85、を満たす、かつ/又は、
− 第2誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi2/To2<0.95,Tohi2/To2<0.90、を満たす、
− 第3誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi3/To3>0.30,Tohi3/To3>0.40,Tohi3/To3>0.50,Tohi3/To3>0.60,Tohi3/To3>0.70,Tohi3/To3>0.80,Tohi3/To3>0.85、を満たす、かつ/又は、
− 第3誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi3/To3<0.95,Tohi3/To3<0.90、を満たす、
− 第4誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi4/To4>0.30,Tohi4/To4>0.40,Tohi4/To4>0.50,Tohi4/To4>0.60,Tohi4/To4>0.70,Tohi4/To4>0.80,Tohi4/To4>0.85、を満たす、かつ/又は、
− 第4誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、より好ましくなる順番で、以下の関係、Tohi4/To4<0.95,Tohi4/To4<0.90、を満たす。
【0040】
本発明の有利な実施態様によれば、誘電体被覆の高屈折率誘電体層が、以下の条件のうちの1又は複数を満たす:
− 少なくとも1層の誘電体被覆が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率誘電体層を有している、
− 少なくとも2層の誘電体被覆が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率誘電体層を有している、
− 少なくとも3層の誘電体被覆が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率誘電体層を有している、
− 誘電体被覆それぞれが、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率誘電体層を有している。
【0041】
高屈折率誘電体層が窒化ケイ素ジルコニウムに基づいている場合には、それは、より好ましくなる順番で、以下を含有している:
− 高屈折率層中のケイ素及びジルコニウムの総重量に対して、30重量%と70重量%の間、40重量%と60重量%の間、45重量%と55重量%の間のケイ素、
− 高屈折率層中のケイ素及びジルコニウムの総重量に対して、30重量%と70重量%の間、40重量%と60重量%の間、45重量%と55重量%の間のジルコニウム。
【0042】
高屈折率誘電体層が窒化ケイ素ジルコニウムに基づいている場合には、より好ましくなる順番で、以下を含有している:
− 高屈折率層中のケイ素及びジルコニウムに対して、50at%と95at%の間、60at%と90at%の間、75at%と85at%の間のケイ素、
− 高屈折率層中のケイ素及びジルコニウムに対して、5at%と50at%の間、10at%と40at%の間、15at%と25at%の間のジルコニウム。
【0043】
ケイ素及びジルコニウム層は、ケイ素及びジルコニウム金属ターゲットから堆積されうる。
【0044】
例えば、ケイ素及びジルコニウムに基づくターゲットの伝導率を増加させるために、例えばアルミニウムなどの、別の元素を提供することもできる。したがって、金属ターゲットは、追加的に、アルミニウムを含むことができ、その場合には、アルミニウムが、高屈折率層内に存在することとなる。
【0045】
高屈折率誘電体層が追加的にアルミニウムを含有する場合には、高屈折率誘電体層は、高屈折率層中におけるアルミニウム、ケイ素及びジルコニウムの総重量に対して、より好ましくなる順番で、1重量%と10重量%の間の、2重量%と8重量%の間の、3重量%と6重量%の間のアルミニウムを含有している。
【0046】
この場合には、所望の屈折率を得るためには、高屈折率層中のケイ素、ジルコニウム及びアルミニウムの総重量に対して、重量での割合を、以下の範囲内で選択することが好ましい:
− 40%と60%の間であって、これらの値が含まれる範囲の、ケイ素、
− 40%と60%の間であって、これらの値が含まれる範囲の、ジルコニウム、
− 1%と10%の間であって、これらの値が含まれる範囲の、アルミニウム。
【0047】
本発明の有利な実施態様によると、誘電体被覆が、厚みの観点で、以下の条件のうちの1又は複数を満たす:
− 誘電体被覆それぞれが、少なくとも1層の高屈折率誘電体層を有しており、その屈折率は、2.15よりも大きく、かつ、その光学的厚みは、20nmよりも大きい、
− 誘電体被覆M1,M2,M3及びM4が、それぞれ、光学的厚みTo1,To2,To3及びTo4を有しており、以下の関係を満たしている:To4<To1<To2<To3、
− 第1誘電体被覆M1の光学的厚みが、より好ましくなる順で、60nm〜140nm、80nm〜120nm、90nm〜100nmである、かつ/又は
− 第1誘電体被覆M1の物理的厚みが、より好ましくなる順で、30nm〜60nm、35nm〜55nm、35nm〜45nmである、かつ/又は
− 第2誘電体被覆M2の光学的厚みが、より好ましくなる順で、120nm〜180nm、130nm〜170nm、140nm〜160nmである、かつ/又は
− 第2誘電体被覆M2の物理的厚みが、より好ましくなる順で、50nm〜100nm、60nm〜80nm、65nm〜75nm、である、かつ/又は
− 第3誘電体被覆M3の光学的厚みが、より好ましくなる順で、140nm〜200nm、150nm〜180nm、160nm〜170nmである、かつ/又は
− 第3誘電体被覆M3の物理的厚みが、より好ましくなる順で、50nm〜100nm、65nm〜95nm、70nm〜80nmである、かつ/又は
− 第4誘電体被覆M4の光学的厚みが、より好ましくなる順で、50nm〜120nm、60nm〜100nm、70nm〜90nmである、かつ/又は
− 第4誘電体被覆M4の物理的厚みが、より好ましくなる順で、20nm〜50nm、25nm〜45nm、30nm〜40nmである。
【0048】
本発明の有利な実施態様によると、誘電体被覆は、以下の条件のうちの1又は複数を満たす:
− 少なくとも1層の誘電体被覆が、追加的に、少なくとも一層の誘電体層を有しており、誘電体層の屈折率が、2.15未満である、
− 少なくとも2層の誘電体被覆が、追加的に、少なくとも一層の誘電体層を有しており、誘電体層の屈折率が、2.15未満である、
− 少なくとも3層の誘電体被覆が、追加的に、少なくとも一層の誘電体層を有しており、誘電体層の屈折率が、2.15未満である、
− 誘電体被覆が、それぞれ、追加的に、少なくとも一層の誘電体層を有しており、誘電体層の屈折率が、2.15未満である、
− 屈折率が2.15未満である誘電体層は、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、スズ、若しくは亜鉛から選択される1若しくは複数の元素の酸化物若しくは窒化物に基づいていてよい、かつ/又は
− 少なくとも1層の誘電体被覆が、バリア機能を有する少なくとも1層の誘電体層を有している、かつ/又は
− 各誘電体被覆が、バリア機能を有する少なくとも1層の誘電体層を有している、かつ/又は
− バリア機能を有する誘電体層が、好ましくは、2.15未満の屈折率を有している、かつ/又は、
− バリア機能を有する誘電体層が、SiO
2及びAl
2O
3などの酸化物、窒化ケイ素Si
3N
4及びAlN、並びに酸窒化物SiO
xN
y及びAlO
xN
yから選択される、ケイ素及び/若しくはアルミニウムの化合物に基づいている、かつ/又は
− バリア機能を有する誘電体層が、例えばアルミニウム、ハフニウム及びジルコニウムなどの少なくとも1種の他の元素を随意に含有している、ケイ素及び/若しくはアルミニウムの化合物に基づいている、かつ/又は
− 少なくとも1層の誘電体被覆が、安定化機能を有する少なくとも1層の誘電体層を有している、かつ/又は
− 誘電体被覆それぞれが、安定化機能を有する少なくとも1層の誘電体層を有している、かつ/又は
− 安定化機能を有する誘電体層が、好ましくは、2.15未満の屈折率を有している、かつ/又は
− 安定化機能を有する誘電体層が、好ましくは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム若しくはこれらのうちの少なくとも2種の混合物から選ばれる酸化物に基づいている、
− 安定化機能を有する誘電体層が、随意にアルミニウムなどの少なくとも1種の他の元素を用いてドープされている、結晶性酸化物に好ましくは基づいており、特には酸化亜鉛に基づいており、かつ/又は
− 各機能性層が、誘電体被覆の上にあり、誘電体被覆の上方層が、好ましくは酸化亜鉛に基づく、安定化機能を有する誘電体層であり、かつ/若しくは、各機能性層が、誘電体被覆の下にあり、誘電体被覆の下方層が、好ましくは酸化亜鉛に基づく、安定化機能を有する誘電体層である、
− 機能性金属層の下に位置する少なくとも1層の誘電体被覆が、平滑化機能を有する少なくとも1層の誘電体層を含んでいる、かつ/又は、
− 機能性金属層の下に位置する各誘電体被覆が、平滑化機能を有する少なくとも1層の誘電体層を含んでいる、かつ/又は、
− 平滑化機能を有する誘電体層が、好ましくは、Sn,Zn,In,及びGaから選択される少なくとも2種の金属の混合酸化物に基づいている、
− 平滑化機能を有する誘電体層が、好ましくは、随意にドープされる、亜鉛及びスズの混合酸化物である、
− 平滑化層を有している誘電体層が、好ましくは、2.15未満の屈折率を有している。
【0049】
好ましくは、各誘電体被覆は、1又は複数の誘電体層のみからなる。したがって、好ましくは、吸収層は、誘電体被覆には存在せず、それによって、光透過率を減少させない。
【0050】
本発明の積層体は、バリア機能を有する誘電体層を有してよい。バリア機能を有する誘電体層は、周囲大気又は透明基材に由来する酸素及び水が、高温で機能性層の方向へ拡散することに対するバリアを形成することができる材料でできている層、を意味するものと理解される。バリア機能を有する誘電体層の構成材料は、したがって、それらの光学的な特性の変更を引き起こしうる、高温での化学的な又は構造的な改変を受けてはならない。バリア機能を有する層又は複数の層は、好ましくは、また、それらが、機能性層の構成材料に対するバリアを形成することができる材料でできているように選択される。このようにして、バリア機能を有する誘電体層があることによって、積層体は、過剰に大きな光学的変化なく、アニーリング、強化又は曲げ加工タイプの加熱処理を受けることができる。
【0051】
本発明の積層体は、安定化機能を有する誘電体層を含んでよい。本発明の意味の範囲内で、「安定化」は、層の性質が選択され、それによって、機能性層とこの層との間の接触面が安定化することを意味する。この安定化によって、機能性層を取り囲む層への機能性層の接着を強化する結果となり、実際に、機能性層の構成材料が移動することに対抗することとなる。
【0052】
安定化機能を有する誘電体層又は複数の誘電体層は、機能性層と直接接触してよく、又はブロッキング層によって離されていてよい。
【0053】
好ましくは、機能性層の下に位置する各誘電体被覆の最後の誘電体層が、安定化機能を有する誘電体層である。これはなぜならば、例えば酸化亜鉛に基づく、安定化機能を有する層が機能性層の下にあることが有利だからあり、この層によって、銀に基づく機能性層の接着及び結晶化が促進され、かつ高温でのその質及びその安定性が向上するからである。
【0054】
機能性層の上に、例えば酸化亜鉛に基づく、安定化機能を有する層が存在することもまた、有利であり、そうすることによって、機能性層の接着が増強され、かつ、基材とは反対側の積層体の側における拡散に対して、最適に対抗する。
【0055】
したがって、安定化機能を有する誘電体層又は複数の誘電体層が、少なくとも1層の機能性層若しくは各機能性層の上及び/又は下に、それらと直接接触して、又はブロッキング層によって離されて、存在してよい。
【0056】
有利には、バリア機能を有する各誘電体層は、安定化機能を有する少なくとも1層の誘電体層によって、機能性層から離されている。
【0057】
安定化機能を有するこの誘電体層は、少なくとも4nmの厚みを有してよく、特には、4nmと10nmの間、さらには8〜10nmの厚みを有してよい。
【0058】
薄層の積層体は、随意の、平滑化層を含んでいてよい。平滑化層は、好ましい結晶方位に沿って安定化層の成長を促進し、それによって、エピタキシャル現象によって銀層の結晶化を促進する機能を有する層、を意味するものと理解される。平滑化層は、安定化層の下に、好ましくは接触して、存在する。
【0059】
混合酸化物に基づく平滑化層は、「非結晶性」として記述されうるが、これの意味は、平滑化層は、完全にアモルファスであってよく又は部分的にアモルファスであってよく、したがって部分的に結晶性であってよいが、しかしながら、その全厚みにわたって完全に結晶性であることはあり得ない、ということである。平滑化層は、混合酸化物(混合酸化物は、少なくとも2種の元素の酸化物である)に基づいているので、金属の性質を有することはあり得ない。
【0060】
平滑化層の屈折率は、好ましくは2.15未満である。さらには、平滑化層は、好ましくは、0.1nmと30nmとの間の厚みを示し、より好ましくは0.2nmと10nmの間の厚みを示す。
【0061】
薄層の積層体は、随意の、保護層を有してよい。保護層は、好ましくは、積層体の最後の層であり、すなわち、積層体で被覆された基材から最も離れたところにある層である。これらの上方保護層は、第4誘電体被覆に含まれていると考えることができる。一般に、これらの層は、2nmと10nmの間の厚みを有し、好ましくは2nmと5nmの間の厚みを有する。この保護層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛及び/又はスズの層から選択されてよく、この又はこれらの金属は、金属、酸化物又は窒化物の形態である。
【0062】
保護層は、例えば、酸化チタンの層、スズ亜鉛酸化物の層、又はチタンジルコニウム酸化物の層から選ぶことができる。
【0063】
特に有利な実施態様は、積層体で被覆された基材に関しており、積層体が、透明基材から出発して定義され、以下を含んでいる:
− 少なくとも1層の高屈折率層、随意の、バリア機能を有する層、安定化機能を有する誘電体層、を有している第1誘電体被覆、
− 随意の、ブロッキング層、
− 第1機能性層、
− 随意の、ブロッキング層、
− 安定化機能を有する少なくとも1層の下方誘電体層、随意の、バリア機能を有する誘電体層、高屈折率誘電体層、随意の、平滑化機能を有する層、安定化機能を有する上方誘電体層、を有している第2誘電体被覆、
− 随意の、ブロッキング層、
− 第2機能性層、
− 随意の、ブロッキング層、
− 安定化機能を有する少なくとも1層の下方誘電体層、随意の、バリア機能を有する誘電体層、高屈折率誘電体層、随意の、平滑化機能を有する層、安定化機能を有する上方誘電体層、を有している第3誘電体被覆、
− 随意の、ブロッキング層、
− 第3機能性層、
− 随意の、ブロッキング層、
− 安定化機能を有する少なくとも1層の誘電体層、随意の、バリア機能を有する層、高屈折率誘電体層、及び随意の保護層、を有している第4誘電体被覆。
【0064】
本発明に係る透明基材は、好ましくは、剛性無機材料製であり、例えばガラス製であり、又は、ポリマーに基づいている(若しくはポリマー製の)有機材料製である。
【0065】
本発明に係る透明有機基材は、剛性若しくは可撓性であって、ポリマー製であってもよい。本発明によれば適しているポリマーの例としては、特には以下が挙げられる:
− ポリエチレン
− ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンナフタレート(PEN);
− ポリアクリレート、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA);
− ポリカーボネート;
− ポリウレタン;
− ポリアミド;
− ポリイミド;
− フルオロポリマー、例えば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)コポリマーなどの、フルオロエステル;
− 光架橋性及び/又は光重合性樹脂、例えば、チオレン(thiolene)、ポリウレタン、ウレタンアクリレート、又はポリエステルアクリレート樹脂;並びに
− ポリチオウレタン。
【0066】
基材は、好ましくは、ガラス板又はガラスセラミック板である。
【0067】
基材は、好ましくは透明であり、無色であり(その場合には、基材は、透明ガラス若しくは超透明ガラスである)又は着色されており、例えば青色、灰色若しくはブロンズ色に着色されている。ガラスは、好ましくは、ソーダ石灰シリカタイプであるが、しかしながら、ホウケイ酸又はアルミノホウケイ酸タイプのガラスであってもよい。
【0068】
基材は、有利には、1以上の寸法が、1m以上、特にはさらには2m以上、さらには3m以上である。基材の厚みは、一般には、0.5mmと19mmの間で変化し、好ましくは、0.7mmと9mmの間で変化し、特には2mmと8mmの間で変化し、特にはさらには4mmと6mmの間で変化する。基材は、平坦であってよく、又は曲げられていてよく、特にはさらには可撓性であってよい。
【0069】
材料は、すなわち積層体で被覆された基材は、高温加熱処理を受けてよく、例えばレーザー若しくはフレームアニーリング(火炎アニーリング)などのフラッシュアニーリングによるものなどのアニーリング、強化及び/又は曲げ加工などを受けてよい。加熱処理の温度は400℃よりも大きく、好ましくは450℃よりも大きく、さらには500℃よりも大きい。積層体で被覆された基材は、したがって、曲げられていてよく、かつ/又は強化されていてよい。
【0070】
積層体は、好ましくは、外部から来る入射光が、第1誘電体被覆を通過して、その後に、第1機能性金属層を通過するように、グレージング内に配置される。積層体は、グレージングの外側壁を規定する基材の面上ではなく、この基材の内側面上に堆積される。積層体は、したがって、有利には、第2面上に配置され、通常のように、グレージングの第1面が、グレージングの最外面である。
【0071】
本発明のグレージングは、単層グレージング、積層グレージング、又は複層のグレージングの形態であってよく、特には二重グレージング又は三重グレージングであってよい。本発明のグレージングは、好ましくは、複層グレージングである。複層グレージングは、少なくとも1個の透明基材、及び少なくとも1個の第2透明基材を有しており、これらは、平行であって、かつ、ガスで充填された空洞によって分離されており、これらのうちの少なくとも1個の基材が、薄層の積層体で被覆されている。本発明に係る材料は、強化断熱(enhanced thermal insulation、ETI)を有する二重グレージングにおいて用いられる場合に、非常に特に適している。
【0072】
単層グレージング又は複層グレージングの場合には、積層体は、好ましくは、第2面上に堆積される。すなわち、積層体は、グレージングの外側壁を規定する基材上にあり、より特定的には、この基材の内側面上にある。
【0073】
単層グレージングは、2つの面を有している;第1面は、建物の外側にあり、したがって、グレージングの外側壁を構成しており、かつ、第2面は、建物の内側にあり、したがって、グレージングの内側壁を構成している。
【0074】
二重グレージングは、4つの面を有している;第1面は、建物の外側にあり、したがって、グレージングの外側壁を構成しており、かつ、第4面は、建物の内側にあり、したがって、グレージングの内側壁を構成しており、第2面及び第3面は、二重グレージングの内部にある。
【0075】
同様に、三重グレージングは、6つの面を有している;第1面は、建物の外側にあり(グレージングの外側壁であり)、第6面は、建物の内側にあり(グレージングの内側壁であり)、かつ第2面〜第5面は、三重グレージングの内側にある。
【0076】
積層グレージングは、第1基材/1又は複数のシート/第2基材タイプの構造を1以上有している。薄層の積層体は、基材のうちの1個の、少なくとも1つの面の面上に配置される。積層体は、好ましくはポリマーのシートであるシートとは接触せずに、第2基材の面上にあってもよい。この実施態様は、積層グレージングが、第3基材を有する二重グレージングに備え付けられる場合に、有利である。
【0077】
単層グレージングとして使用され、又は二重グレージングタイプの複層グレージングにおいて使用される、本発明に係るグレージングは、外部反射で、青色若しくは青〜緑(主要な波長の値がおよそ470〜500ナノメートルである)の範囲内の、ニュートラルで、好ましく、かつ落ち着いた色を呈している。さらには、この視覚的外観は、グレージングが観察される(垂直入射の及び角度のある)入射角に係わらず、実際的に不変を保つ。このことが意味するのは、色又は外観における均一性が実質的に欠如しているとの印象を、観察者が抱くことはないということである。
【0078】
「青〜緑の範囲の色」は、本発明の意味の範囲内で、L
*a
*b
*色計測系において、a
*が−10.0と0.0の間であり、好ましくは−5.0と0.0の間であり、かつ、b
*が−10.0と0.0の間であり、好ましくは−5.0と0.0の間であることを意味するものと理解されるべきである。
【0079】
有利な実施態様によると、第2面上に配置された積層体を有している二重グレージングの形態での、本発明のグレージングによって、特には、以下の性能の成績を達成することが可能である:
− 34.0%以下の、好ましくは33.5%以下の、特にはさらには33.0%以下の、ソーラーファクターg、及び/又は、
− より好ましくなる順で、65%を超える、67%を超える、68%を超える、69%を超える、好ましくは65%と75%の間の、特にはさらには67%と71%の間の光透過率、及び/又は、
− より好ましくなる順で、少なくとも2.0の、少なくとも2.05の、少なくとも2.1の高選択性、及び/又は、
− 20%以下の、好ましくは15%以下の、外側面での光反射、及び/又は、
− 20%以下の、好ましくは15%以下の、内側面上での光反射、及び/又は、
− 外部反射におけるニュートラル色。
【0080】
本発明の有利な詳細及び特徴は、添付の図面を用いて説明される、以下の非制限的な例示によって表されるであろう。
【0081】
様々な構成要素間での比率は、順守されてはおらず、これによって、図の理解を容易にしている。
【0082】
図1は、3層の機能性金属層40、80、120を有する積層体構造を図解しており、この構造は、透明ガラス基材10の上に堆積されている。各機能性層40,80,120は、以下のようにして、2層の誘電体被覆20,60,100、140の間に配置されている:
− 第1機能性層40は、基材から出発して、誘電体被覆20、60の間に配置されている、
− 第2機能性層80は、誘電体被覆60、100の間に配置されている、
− 第3機能性層120は、誘電体被覆100、140の間に配置されている。
【0083】
これらの誘電体被覆20,60,100,140は、それぞれ、少なくとも1層の誘電体層24,25,26、28;62,63、64,66、68;102,103、104,106,108;142,144を有している。
【0084】
積層体は、また、以下を有していてよい:
− 機能性層と接触して配置される、ブロッキング下方層30,70及び110(図示されていない)、50,90及び130、
− 機能性層と接触して配置される、ブロッキング上方層50,90及び130、
− 保護層(図示されていない)。
【実施例】
【0085】
[I.基材の調製:積層体、積層条件及び加熱処理]
以下で定義される、薄層の積層体は、6mmの厚みを有する透明なソーダ石灰ガラス製の基材上に堆積される。
【0086】
本発明に係る材料及び比較材料は、以下の「カラーボックス」基準において定義される基準を満たす色を有している。光学的特徴は、以下において計測される:
− 積層体が第2面上に配置されている(グレージングの第1面は、通常の通り、グレージングの最外面である)、6/16/4構造:6mmガラス/90%アルゴンで充填された16mmの層間空間/4mmのガラス、の二重グレージングの形態の材料上、
− 6mm基材を有しており、かつ、積層体が第2面上に配置されている、単一のグレージングの形態の材料上。
【0087】
【表1】
【0088】
二重グレージングに関して:
− a
*T及びb
*Tは、2°観察者でD65光源に従って計測され、かつグレージングに垂直方向で計測される、L
*a
*b
*系での、透過の色a
*及びb
*を示している;
− Rextは、以下を示している:最外面である第1面の側で、2°観察者でD65光源に従って計測される、%での、可視領域での、光反射;
− a
*Rext及びb*Rextは、最外面の側で、2°観察者でD65光源に従って計測され、かつグレージングに垂直な方向でそのように計測される、L
*a
*b
*系での、反射の色a
*及びb
*を示している;
− Rintは、内側面である第4面の側で、2°観察者でD65光源に従って計測される、%での、可視領域での、光反射を示している;
− a
*Rint及びb
*Rintは、内側面の側で、2°観察者でD65光源に従って計測され、グレージングに垂直な方向でそのように計測される、L
*a
*b
*系での、反射の色a
*及びb
*を示している。
【0089】
斜めでの測色値a
*g60°及びb
*g60°を、単一のグレージングにおいて、60°の入射下で計測する。これによって、斜めでの色のニュートラル性が説明される。
【0090】
本発明の例においては:
− 機能性層は、銀(Ag)層であり、
− ブロッキング層は、酸化チタン層であり、
− 高屈折率層は、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく層及び酸化チタン層から選択され、
− バリア層は、アルミニウムでドープされた窒化ケイ素(Si
3N
4:Al)に基づいており、
− 安定化層は、酸化亜鉛(ZnO)製であり、
− 平滑化層は、亜鉛及びスズの混合酸化物(SnZnOx)に基づいている。
【0091】
窒化ケイ素ジルコニウム層は、ケイ素、ジルコニウム及びアルミニウムを含有している金属ターゲットから堆積される。
【0092】
スパッタリング(「マグネトロンカソード」スパッタリング)によって堆積された層の、堆積のための条件を、表2にまとめる。
【0093】
【表2】
【0094】
表3では、積層体に含まれている各層又は各被覆の、材料及び(別段の指示がない限り)ナノメートルでの物理的厚みを、積層体を保持している基材(表の底にある最後の行)に対するそれらの位置に応じて一覧表にしている。「参照」番号は、
図1の符号に対応する。
【0095】
機能性層40,80,120の下の誘電体被覆20,60,100それぞれは、結晶性酸化亜鉛に基づく最終安定化層28,68,108を有しており、これら安定化層は、そのすぐ上に堆積される機能性層40,80,120と接触している。
【0096】
機能性層40,80,120の上の誘電体被覆60,100,140それぞれは、結晶性酸化亜鉛に基づく一次安定化層62,102、142を有しており、これら安定化層は、そのすぐ上に堆積される機能性層40,80,120と接触している。
【0097】
誘電体被覆20,60,100,140それぞれは、窒化ケイ素ジルコニウム又は酸化チタンに基づく、高屈折率誘電体層24,64,104,144を有している。
【0098】
誘電体被覆20,60,100,140は、ここではSi
3N
4として知られる、アルミニウムでドープされた窒化ケイ素に基づく、バリア機能を有する誘電体層25,63,103,143を有していてよい。
【0099】
誘電体被覆20,60、100は、追加的に、亜鉛及びスズの混合酸化物に基づく平滑化層26,66、106を有していてよい。
【0100】
機能性金属層40,80,120それぞれは、ブロッキング層50,90及び130の下で接触して存在している。
【0101】
【表3】
【0102】
機能性層及び誘電体被覆の厚みに関する特徴を、表4にまとめる。
【0103】
【表4】
【0104】
[II.「太陽光制御」性能の成績]
上述する通りにグレージングが二重グレージングの一部を形成している場合に得られる、エネルギー性能の成績を、表5において一覧表にする。
【0105】
【表5】
【0106】
第1実施態様(実施例1)では、各誘電体被覆M1〜M4が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率層を有している。
【0107】
第2実施態様(実施例2)では、各誘電体被覆M1〜M4が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率層を有しており、かつ、この高屈折率層を含んでいる誘電体被覆の光学的厚みに対する、この高屈折率層の光学的厚みの比は、0.5よりも大きく、好ましくは0.8よりも大きい。最良の性能の成績が、この例において得られる。
【0108】
第3実施態様(実施例3)では、誘電体被覆M1及びM4が、TiO
2に基づく高屈折率層を有しており、かつ、誘電体被覆M2及びM3が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率層を有している。性能の成績は、すべての誘電体被覆がSiZrNに基づく場合よりは不利であるが、比較例1及び2に関して得られる性能の成績よりは、良好である。
【0109】
比較例1では、誘電体被覆M1〜M4のいずれも、20nmを超える光学的厚みを有する高屈折率層を有していない。
【0110】
比較例2では、誘電体被覆M1及びM4が、20nmを超える光学的厚みを有する高屈折率層を有しておらず、かつ、誘電体被覆M2及びM3が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率層を有していない。性能の成績は、誘電体被覆それぞれが高屈折率層を有している、本発明の材料に関して得られる性能の成績よりも劣っている。
【0111】
種々の例で得られる性能の成績を、
図2にまとめる。点の散らばりが示されており、それによって、基準カラーボックスにおける色を保持しつつ、実施例1及び実施例2のタイプの材料で到達可能な性能の成績の範囲が示されている。すなわち、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率層を各誘電体被覆に有している材料で到達可能な性能の成績の範囲が示されている。
【0112】
本発明によれば、約70%の光透過率、高選択性、低光反射率、及び低ソーラーファクターを示す、3層の機能性金属層を有する積層体を有しているグレージングを作り出すことが可能となる。本発明に係るグレージングは、34%以下のソーラーファクター及び2.00を超える選択性を、同時に示す。これらのグレージングは、追加的に、少なくとも15%未満の外部反射を示す。
【0113】
本発明に係る例は、すべて、透過において、好ましくかつ落ち着いた着色を有しており、好ましくは、青又は青〜緑の範囲の着色を有している。
【0114】
したがって、提供される解決策によって、以下の性能の成績を達成することが可能となる:
− 約70%の光透過率、
− 約33%のソーラーファクター、
− 外側面における低反射率、及び
− ニュートラルな美的品質。
本開示に含まれる態様は、下記のとおりである。
〈態様1〉
薄層の積層体で被覆されている透明基材を有している材料であって、前記積層体が、前記基材から出発して、銀に基づく3層の機能性金属層、及び4層の誘電体被覆が交互になったものを逐次的に有しており、銀に基づく前記3層の機能性金属層が、前記基材から出発して、第1、第2及び第3機能性層として表され、前記機能性金属層の厚みが、前記基材から出発して、前記基材からの距離に応じて増加し、前記4層の誘電体被覆が、前記基材から出発して、M1,M2,M3及びM4として表され、前記誘電体被覆が、それぞれ、少なくとも1層の誘電体層を有しており、そのようにして、前記機能性金属層が、それぞれ、2層の誘電体被覆の間に配置されるようになっており、下記であることを特徴とする、材料:
− 前記誘電体被覆M1,M2、M3及びM4が、それぞれ、光学的厚みTo1,To2,To3及びTo4を有しており,
− 前記誘電体被覆が、それぞれ、少なくとも1層の高屈折率誘電体層を含んでおり、その屈折率が、少なくとも2.15であり、かつ、その光学的厚みが、20nmよりも大きく、
− 1層の同一の誘電体被覆のすべての高屈折率誘電体層の光学的厚みの合計が、関係する誘電体被覆に従って、Tohi1,Tohi2,Tohi3又はTohi4と表され、
− 前記誘電体被覆が、それぞれ、以下の関係を満たしている:
Tohi1/To1>0.30、
Tohi2/To2>0.30、
Tohi3/To3>0.30、
Tohi4/To4>0.30。
〈態様2〉
前記3層の機能性金属層が、下記の特徴を満たすことを特徴とする、態様1に記載の材料:
− 前記第1機能性金属層の厚みに対する前記第2金属層の厚みの比が、1.10と2.00の間であり、これらの値を含んでおり、かつ/又は、
− 前記第2機能性金属層の厚みに対する前記第3金属層の厚みの比が、1.10と1.80の間であり、これらの値を含んでいる。
〈態様3〉
機能性層に接触して配置され、チタン、ニッケル、クロム及びニオブから選ばれる1又は複数の元素の、金属層、金属窒化物層、金属酸化物層、及び金属酸窒化物層から選ばれ、例えばTi,TiN,TiO2,Nb,NbN,Ni,NiN,Cr,CrN,NiCr又はNiCrN層であるブロッキング層を、前記積層体が、追加的に、少なくとも1層有していることを特徴とする、態様1又は2に記載の材料。
〈態様4〉
前記誘電体被覆M1,M2,M3及びM4が、それぞれ、光学的厚みTo1,To2,To3及びTo4を有しており、以下の関係:To4<To1<To2<To3を満たしていることを特徴とする、態様1〜3のいずれか一項に記載の材料。
〈態様5〉
前記高屈折率層が、2.35以下の屈折率を示すことを特徴とする、態様1〜4のいずれか一項に記載の材料。
〈態様6〉
前記誘電体被覆それぞれが、以下の関係を満たすことを特徴とする、態様1〜5のいずれか一項に記載の材料:
Tohi1/To1>0.80、
Tohi2/To2>0.80、
Tohi3/To3>0.80、
Tohi4/To4>0.80。
〈態様7〉
少なくとも2層の前記誘電体被覆が、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率誘電体層を有していることを特徴とする、態様1〜6のいずれか一項に記載の材料。
〈態様8〉
前記誘電体被覆が、それぞれ、窒化ケイ素ジルコニウムに基づく高屈折率誘電体層を有していることを特徴とする、態様1〜7のいずれか一項に記載の材料。
〈態様9〉
前記誘電体被覆が、以下の特徴を満たすことを特徴とする、態様1〜8のいずれか一項に記載の材料:
− 前記第1誘電体被覆M1の前記光学的厚みが、60nm〜140nm、
− 前記第2誘電体被覆M2の前記光学的厚みが、120nm〜180nm、
− 前記第3誘電体被覆M3の前記光学的厚みが、140nm〜200nm、
− 前記第4誘電体被覆M4の前記光学的厚みが、50nm〜120nm。
〈態様10〉
前記誘電体被覆が、それぞれ、追加的に、2.15未満の屈折率を有している少なくとも1層の誘電体層を有していることを特徴とする、態様1〜9のいずれか一項に記載の材料。
〈態様11〉
前記材料が、積層体を有しており、積層体が、前記透明基材から出発して規定され、以下を有していることを特徴とする、態様1〜10のいずれか一項に記載の材料:
− 少なくとも1層の高屈折率層、随意の、バリア機能を有する層、安定化機能を有する誘電体層、を有している第1誘電体被覆、
− 随意の、ブロッキング層、
− 第1機能性層、
− 随意の、ブロッキング層、
− 安定化機能を有する少なくとも1層の下方誘電体層、随意の、バリア機能を有する1層の誘電体層、高屈折率誘電体層、随意の、平滑化機能を有する層、安定化機能を有する上方誘電体層、を有している第2誘電体被覆
− 随意の、ブロッキング層、
− 第2機能性層、
− 随意の、ブロッキング層、
− 安定化機能を有する少なくとも1層の下方誘電体層、随意の、バリア機能を有する誘電体層、高屈折率誘電体層、随意の、平滑化機能を有する層、安定化機能を有する上方誘電体層、を有している第3誘電体被覆、
− 随意の、ブロッキング層、
− 第3機能性層、
− 随意の、ブロッキング層、
− 安定化機能を有する少なくとも1層の誘電体層、随意の、バリア機能を有する層、高屈折率誘電体層、及び随意の保護層、を有している第4誘電体被覆。
〈態様12〉
前記積層体の前記層が、マグネトロンカソードスパッタリングによって堆積される、態様1〜11のいずれか一項に記載の材料を取得するための方法。
〈態様13〉
態様1〜11のいずれか一項に記載の材料を少なくとも1個有しているグレージング。
〈態様14〉
外部から来る入射光が、前記第1誘電体被覆を通過し、その後に、前記第1機能性金属層を通過するように、前記積層体が、前記グレージングにおいて配置されていることを特徴とする、態様13に記載のグレージング。
〈態様15〉
複層グレージングの形態であり、特には、二重グレージング又は三重グレージングの形態であることを特徴とする、態様13又は14に記載のグレージング。