特許第6876041号(P6876041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876041溶射層で被覆されるよう意図された構成部品をマスキングする方法
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  • 特許6876041-溶射層で被覆されるよう意図された構成部品をマスキングする方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876041
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】溶射層で被覆されるよう意図された構成部品をマスキングする方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/01 20160101AFI20210517BHJP
【FI】
   C23C4/01
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-523461(P2018-523461)
(86)(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公表番号】特表2018-537583(P2018-537583A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016077167
(87)【国際公開番号】WO2017081098
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年10月17日
(31)【優先権主張番号】15194293.5
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515135572
【氏名又は名称】エリコン メテコ アクチェンゲゼルシャフト、ヴォーレン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミクラ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ガステル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルバーガー、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シュテックリ、マルティン
【審査官】 大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−111666(JP,A)
【文献】 米国特許第05786028(US,A)
【文献】 Automatisches Maskieren von Oberflachen,Automatisches Maskieren von Oberflachen,2015年
【文献】 Abdecken schnell und auf den Millimeter genau,Abdecken schnell und auf den Millimeter genau,2015年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶射によって構成部品を被覆する方法であって、
前記構成部品の表面全体は被覆されず、
被覆しない表面の部分は、被覆の前にマスキングによって覆われ、
この覆いは、少なくとも臨界的マスク境界に隣接する第1領域でペーストプロセスによって、すなわち少なくとも1つのノズルから分配されるペーストによって作られ、
前記ペーストは硬化性ペーストであり、硬化は、光誘起される、方法において、
前記マスキングが、部分マスキングステップと、補完マスキングステップとを含み、
前記補完マスキングステップは、少なくとも複数の前記第1領域のうちの1つで実行され、
前記補完マスキングステップは、
前記構成部品に第1のシールビードを塗布するステップと、
二重シールビードが形成されるように、前記第1のシールビード上に少なくとも部分的に第2のシールビードを塗布するステップと
を含み、
前記二重シールビードは、前記臨界的マスク境界の方向に向けられた前記二重シールビードの側で測定される、前記構成部品の表面と前記二重シールビードの表面の接線とで囲まれた少なくとも90°の接触角(α)で塗布され、前記第2のシールビードは、強化されたオーバーハングを形成し、
前記部分マスキングステップは、前記第1領域から離れた第2領域で実行され、前記部分マスキングをする方法が、ペーストプロセスではない
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記光誘起される硬化は紫外線によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶射(thermal spraying)により被覆される構成部品(コンポーネント)の表面の一部分をマスキングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶射は、例えば粉末形態の材料が連続的に溶融される被覆(コーティング)プロセスである。得られた溶滴が、被覆される表面上に投射され、それにより平坦な溶滴が表面上に蓄積する。このようにして形成された層は、例えば被覆されていない構成部品よりもより硬く、より脆いが、より多孔質である被覆をもたらす。
【0003】
どのような可溶性材料でも噴霧できること、またほぼ全ての構成部品材料およびほぼ全ての構成部品幾何形状が被覆できることは注目に値する。この方法で達成できる自動化の程度は、達成可能な層の再現性および品質と同様に非常に高い。
【0004】
しかし多くの場合、構成部品の表面全体が被覆されるべきではない。それゆえ被覆されない表面の部分は遮蔽すなわちマスキングされなければならない。残念ながら、マスキングにおいて達成される自動化の程度はこれまでのところ非常に低い。多くの場合、構成部品は未だ手動でマスキングされる。
【0005】
一方で、例えばJP3158451またはUS6645299に記載されるように、オーバーレイ・マスクが使用されている。他方で、接着テープで作られた接着マスクが使用されており、これは、被覆しない表面の部分に直接貼り付けられる。
【0006】
WO2010/031370A1は、溶射に関連する一般的なマスキング方法の概要を示している。例えばUS4464430に記載されるように、塗料のマスキングまたは結合剤含有混合物のマスキングを保護領域に塗布する可能性の言及もある。しかしそこでのマスキングは、溶射により被覆しない表面の部分を浸漬浴中に浸漬することによるディップコーティングによって行われる。言うまでもなく、この方法は非常に少ない幾何形状に限定される。
【0007】
WO2010/031370A1にマスキングそれ自体が記載されており、これは、わずかに小さいサイズの弾性材料で作られる。記載されている材料の中には、例えばエラストマーもある。マスキングを構成部品に塗布すると、そのマスキングはその小さいサイズのせいで構成部品に非常に密着する。このタイプのマスキングは、構成部品が全周囲をマスキングされなければならないときに特に功を奏する。
【0008】
上述した全ての方法は、少なくとも2つの欠点を有する。すなわち、一方で、それらは自動化することができず、あるいはたとえできたとしても多大な技術的努力を要する。他方で、多くの場合、それらは応用例(application)において所望の緻密性(精度)を可能にしない。すなわち、多くの応用例において、被膜する表面の部分から被膜しない部分への移行部を定義する線は、極めて緻密に、そして何より再現可能に保たれなければならない。そのような線は、以下、臨界的マスク境界(critical mask boundary)と称する。あまり精度を要求しない線を定義する移行部も存在し得ることが明らかである。これらは以下、非臨界的マスク境界(uncritical mask boundary)と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】JP3158451
【特許文献2】US6645299
【特許文献3】WO2010/031370A1
【特許文献4】US4464430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明は、要求される高い精度で臨界的マスク境界を位置決めすることを可能にする、大部分が自動化されたマスキング方法を特定するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、マスキングは、ノズルにより分配されるペーストによって、少なくとも臨界的マスク境界に沿って実現される。本明細書で使用する「ペースト」という用語は、構成部品の表面上で溶解することなく、任意の輪郭プロファイルを有するシールビード(sealing bead)の形態で表面に塗布することができるような高い粘性を有する液体材料を意味する。本発明によれば、ペーストは硬化性である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】接触角がα>90°となるように2つの重なり合うシールビード3が構成部品1に塗布された状況を示す図である(図の左縁に見ることができる)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
粘性(粘度)は精度に大きく影響し、またそれにより、幾何学的特性(遮蔽の生成)を有するシールビードを製造することができる。このため、本発明の好ましい実施形態によれば、ペーストおよび/またはマスキングされる構成部品は、所定の調整された環境(冷却された環境)下で処理および塗布される。
【0014】
例えば硬化は、ペーストに含まれる溶媒の蒸発によって行うことができる。しかし、好ましい実施形態によれば、硬化は少なくとも部分的に架橋によって、特に好ましくは光誘起架橋によって実現される。
【0015】
特に好ましい実施形態によれば、UV(紫外線)硬化ペーストが使用される。これはとりわけ、ペーストが、構成部品に塗布された直後に硬化する必要があるので利点となる。溶射の際、特にそれがプラズマプロセスである場合、構成部品はプラズマプロセスのために強い紫外線に曝され、結果としてさらに硬化し、理想的には完全に硬化する。ペーストのみがすぐに硬化されねばならないという事実のために、あまり高価でないUV源を使用すること、および/またはUV照射時間を短縮することができる。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、マスキングは2つのステップで実行される。マスキングされる領域はしたがって、従来技術から既に知られている方法の1つを使用してマスキングされるが、臨界的マスク境界の領域には、相応に既知の手段によるマスキングは提供されない。それゆえこれは部分マスキングであり、臨界的マスク境界の周辺の領域は空白のままである。臨界的マスク境界の周辺の領域はその後、上述の方法によってこの実施形態にしたがってマスキングされ、すなわちマスキングペーストが少なくとも1つのノズルによってこれらの領域に塗布され、それによりマスキングが完了する。その際、部分マスキングと補完マスキングとの間でマスキングされていない領域が形成されないことを確実にするため、マスキングが完了したときに部分マスキングとの重なり合いがあるように考慮することが有利である。
【0017】
この方法では、ペーストプロセスによって多くの時間がかかる比較的大きな領域のマスキングが、位置的に比較的不正確な方法によって迅速に塗布されることができ、そして臨界的マスク境界の臨界的な縁部領域がペーストプロセスを使用して非常に緻密に塗布されることができることが特に有利である。不正確な方法は、比較的容易に自動化することができる。ペーストプロセスの自動化もまた可能である。ペーストプロセスでは、ペースト分配の際、マスキングするマスク境界に近い領域に対してノズル出口の位置を移動させる必要がある。この場合、ノズルまたは構成部品をロボットに取り付けることができる。好ましくは、構成部品は、マスキングしようとする構成部品が小さい場合にロボットアームに取り付けられるであろう。なぜならこの場合、通常はホースによって実現されるペーストリザーバへのノズルの接続が、いかなる移動にも曝されないからである。しかし、より移動が難しいより大きな構成部品の場合、ノズルをロボットアームに取り付けることが有利であり得る。より一般的には、構成部品の位置決めおよび/または方向付けのための手段、および/または少なくとも1つのノズルの位置決めおよび/または方向付けのための手段が設けられてもよい。
【0018】
空間でのロボット制御された移動のおかげで、自由形式の経路を移動することができる。
【0019】
既に上述したように、臨界的マスク境界は正確なシールビードによって描かれる。非臨界的マスク境界は少なくとも2つのカテゴリに分割することができ、すなわちそれは例えば単純なカバー(覆い)の塗布である。しかし、場合によって、カバーがアンダーカット(逃げ溝部)に取り付けられず、あるいは分配プロセスを制限する可能性がある。この理由のために、好ましい実施形態によれば、第2のディスペンサにおいて低粘性ペースト材料が使用される。それは低粘性のせいで融合し、それゆえ広い領域に塗布され得る。最初に、正確なシールビードが配置される。
【0020】
既に説明したように、臨界的マスク境界の領域における正確なマスキングは多くの応用例に不可欠である。しかし、本発明者らは、しばしば、マスキングを除去した後これらの領域において、マスキングが非常に正確に適用されたにもかかわらず、溶射によって塗布された層が残っていなかったことを発見した。この観察から、徐々に増加させるのではなく、高い急峻性(傾き)を有するように臨界マスク境界に沿ってマスキングを実現するよう試みるアイデアが生まれた。これは、溶射された層が、塗布する領域から塗布しない領域までの移行部で臨界的マスク境界を延ばす連続層として実現されると、溶射された層の成分が、被覆を除去するときにマスク境界を超えて取り去られるという仮定に基づく。
【0021】
そのような連続層を回避するために、ペーストはそれゆえ、少なくとも90°の接触角が形成されるように、マスキングする構成部品の材料に適合されることが好ましい。そして、マスクの厚さは臨界的マスク境界で連続的には増加せず、しかしオーバーハングしていない壁であっても、少なくとも垂直を形成している。その結果、溶射された層は臨界的マスク境界で実質的に中断される。マスキングが除去されるとき、層のいかなる部分も臨界的マスク境界を越えて取り去られない。接触角が90°を超えると、シェーディング効果(遮蔽効果)が増大し、臨界的マスク境界の至る所での溶射層の分離に寄与する。このシェーディング効果をさらに高めるために、本方法の特に好ましい実施形態では、第2のシールビードが第1のシールビードの上に配置される。この第2のシールビードは、強化されたオーバーハングが実現され、それによりシェーディング効果が強化されるように塗布される。
【0022】
ここで、ペーストを塗布したときに接触角が形成され、また接触角は、ペーストが硬化したかどうかにかかわらず、プロセス全体の間、実質的に変化しないので、接触角は液体と固体の間の境界での接触角に類似したものと定義される。この角度は以下において、構成部品とシールビードの間の境界での、構成部品の表面と、シールビードの表面の接線または二重シールビードの表面の接線とによって囲まれた接触角度として定義される。
【0023】
図1は、接触角がα>90°となるように2つ重なり合うシールビード3が構成部品1に塗布された、対応する状況を示す(図の左縁に見ることができる)。接触角α<90°は最適ではない。なぜなら、層5の層分離の問題を引き起こす可能性があるからである(図の右縁に見ることができる)。
図1