(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4駆動レベルの電圧は、前記閾電圧以下の大きさの負電圧であり、前記第2駆動レベルの電圧は、前記第2駆動レベルの電圧と前記第4駆動レベルの電圧との差が前記最大駆動電圧に等しくなるような正電圧である、
請求項5に記載のデバイス。
前記スイッチング配置は、トランジスタ、例えば、薄膜トランジスタ、例えば、ポリシリコントランジスタ、アモルファスシリコントランジスタ、又は半導体酸化物トランジスタを有する、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載のデバイス。
電気活性高分子アクチュエータの行及び列のアクティブマトリクスアレイを有し、各電気活性高分子アクチュエータが、各電気活性高分子アクチュエータと関連するスイッチング配置を有し、該スイッチング配置が、各々のデータラインへ接続される入力部と、各々のアドレッシングラインへ接続されるゲートと、前記関連する電気活性高分子アクチュエータの第1端子へ接続される出力部とを有し、各電気活性高分子アクチュエータの第2端子が制御ラインへ接続されるデバイスを作動させる方法であって、
当該方法は、
関連する制御ラインにおいて供給される第3駆動レベルを用いて、全ての前記電気活性高分子アクチュエータを非作動状態に設定することと、
関連するデータラインで第1駆動レベルを、及び関連する制御ラインで第4駆動レベルを供給することによって、全ての前記電気活性高分子アクチュエータを第1状態へ駆動することと、
前記電気活性高分子アクチュエータが前記第1状態に達する前に、関連するデータラインで第2駆動レベルを印加することによって、選択された電気活性高分子アクチュエータを第2状態へ駆動することと
を有する、方法。
前記第4駆動レベルの電圧は、前記閾電圧以下の大きさの負電圧であり、前記第2駆動レベルの電圧は、前記第2駆動レベルの電圧と前記第4駆動レベルの電圧との差が前記最大駆動電圧に等しくなるような正電圧である、
請求項14に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
電気活性高分子(EAP)は、電気的に応答する材料の分野内の新興の材料の種類である。EAPは、センサ又はアクチュエータとして働くことができ、容易に様々な形状に製造され得、多種多様なシステムへの容易な組み込みを可能にする。
【0003】
材料は、過去10年間で著しく改善した作動応力及びひずみのような特性を伴って開発されてきた。テクノロジーリスクは、製品開発にとって許容できるレベルまで減らされ、それにより、EAPは、商業的及び技術的にますます関心が持たれるようになっている。EAPの利点には、低い電力、小さいフォームファクタ、フレキシビリティ、ノイズのない動作、正確さ、高い分解能の可能性、速い応答時間、及び周期的な作動がある。
【0004】
EAP材料の改善された性能及び特定の利点は、新しい応用への適用性を生み出す。
【0005】
EAPデバイスは、電気作動に基づき、構成要素又は機構の微量の動きが望まれるところの如何なる応用においても使用され得る。同様に、テクノロジーは、小さな動きを検知するために使用され得る。
【0006】
EAPの使用は、共通のアクチュエータと比べて、小さい容量又は薄いフォームファクタにおける相対的に大きい変形及び力の組み合わせにより、以前は不可能であった機能を可能にし、あるいは、共通のセンサ/アクチュエータ・ソリューションに対して大きな利点を提供する。EAPはまた、ノイズのない動作、正確な電子制御、速い応答、及び0〜20kHzといった広範な可能な作動周波数を与える。
【0007】
電気活性高分子を使用するデバイスは、電界駆動及びイオン駆動される材料に細分され得る。
【0008】
電界駆動されるEAPの例は、誘電エラストマー、電歪高分子(electrostrictive polymers)(例えば、PVDFに基づくリラクサー高分子又はポリウレタン)、及び液晶エラストマー(liquid crystal elastomers)(LCE)である。
【0009】
イオン駆動されるEAPの例は、共役高分子、カーボンナノチューブ(CNT)ポリマー複合体、及びイオン交換ポリマーメタル複合体(Ionic Polymer Metal Composites)(IPMC)である。
【0010】
電界駆動されるEAPは、直接的な電気機械結合を通じて電界によって作動され、一方、イオンEAPのための作動メカニズムは、イオンの拡散を伴う。いずれの分類も複数のファミリーメンバーを有し、夫々がそれらの各々の利点及び欠点を有している。
【0011】
図1及び
図2は、EAPデバイスのための2つのとり得る動作モードを示す。
【0012】
デバイスは電気活性高分子層14を有する。電界活性高分子層14は、その層の両側にある電極10、12に挟まれている。
【0013】
図1は、クランプされていないデバイスを示す。電圧は、電気活性高分子層に、図示されるように、全ての方向において広げさせるために使用される。
【0014】
図2は、広がりが一方向においてのみ起こるように設計されているデバイスを示す。デバイスは、キャリア層16によって支持されている。電圧は、電気活性高分子層に、曲げさせる又はたまわせるために使用される。
【0015】
この動きの性質は、例えば、作動されるときに広がるアクティブ層と、パッシブキャリア層との間の相互作用から生じる。図示されるように、軸の周りの非対称な湾曲を得るよう、分子配向(フィルムストレッチング)が、例えば、適用されてよく、一方向における動きを強いる。
【0016】
一方向における広がりは、電気活性高分子における非対称性の結果として起こり得るか、あるいは、それは、キャリア層の特性における非対称性、又はそれら両方の組み合わせの結果として起こり得る。
【0017】
特定の応用では、アクチュエータのアレイは、例えば、測位システム及び被制御トポロジ表面において、有用であり得る。しかし、アクチュエータの駆動電圧が相当に高いということで、各アクチュエータをそれ自体のドライバICにより個別に駆動することは、直ちに高価になる。
【0018】
パッシブマトリクスアレイは、行(n行)及び列(m列)の接続のみを使用するアレイ駆動システムの簡単な実施である。最大で(n×m)個のアクチュエータをアドレッシングするには(n+m)個のドライバしか必要とされないということで、これは、はるかに費用効率的なアプローチであり、そして、追加の配線の費用及び空間も節約する。
【0019】
理想的に、パッシブマトリクスデバイスでは、夫々の個々のアクチュエータは、隣接するアクチュエータに影響を及ぼさずに、その最大電圧まで作動されるべきである。しかし、従来のEAPアクチュエータのアレイ(如何なる電圧閾値挙動も有さない。)では、隣接するアクチュエータへのいくらかのクロストークが存在する。1つのアクチュエータを作動させるために電圧が印加されるとき、その周りのアクチュエータも電圧を受け、部分的に作動しうる。これは、多くの応用にとって好ましくない効果である。
【0020】
この状況は、例えば、米国特許第8552846号(特許文献1)において記載されている。この特許文献は、閾電圧又は双安定なしのEAPのパッシブマトリクス駆動を開示している。開示されているアプローチでは、3:1の最良の作動コントラスト比が達成される(すなわち、“非作動”のアクチュエータは最大作動の33%を示す。)。これは、印加される圧力がV
2に対応するので、圧力レベルに対して9:1のコントラスト比を与える。このアプローチはまた、2段階駆動でしか働かない。
【0021】
従って、パッシブマトリクスアドレッシング方式によれば、各アクチュエータを残りのアクチュエータから独立して個別にアドレッシングすることは、正攻法でない。
【0022】
電気活性高分子アクチュエータのアレイをアドレッシングするためのアクティブマトリクスの使用は、例えば、電子点字応用のために、考えられてきた。アクティブマトリクスアプローチは、行導体及び列導体の交差点で、夫々の電気活性高分子アクチュエータにおいてスイッチングデバイスを設けることを伴う。このようにして、アレイ内の各アクチュエータは、望まれる場合に、個別に作動され得る。アクティブマトリクスアドレッシング方式は、同時に作動されるアレイ内のアクチュエータの如何なるランダムなパターンも有することが可能であることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、各電気活性高分子アクチュエータがスイッチング配置を有する電気活性高分子アクチュエータのアクティブマトリクスアレイを提供する。
【0044】
アクチュエータは、機械的作動を提供する電気活性高分子構造体を有し、それにより、該構造体は、非作動状態と、電気活性高分子構造への電気駆動信号の印加によって到達可能な少なくとも1つの作動状態(非作動状態とは異なる。)とを定義する。そのため、電気活性高分子構造体はEAP材料を有する。そのような材料は、構造体への電気駆動信号の形で供給され得る電気信号が加わると、機械的変形を誘発し又は可能にすることができる。アクチュエータ又は構造体は、駆動信号をEAP材料へ供給する電極配置を有することができる。電極構造は、直接に、又は間に中間層を有して、EAP材料に取り付けられ得る。
【0045】
各ユニットのEAP材料層は、電極構造の電極間に挟まれてよい。代替的に、電極は、EAP材料の同じ側にあることができる。いずれの場合にも、電極は、間に如何なる(パッシブ)層もなしで直接に、又は間に追加の(パッシブ)層を有して間接に、EAP材料へ物理的に取り付けられ得る。しかし、これは、常にそうである必要はない。リラクサー又は恒久的な圧電性若しくは強誘電性EAPについて、直接接触は不要である。後者の場合に、電極は、それらの電極が電界をEAPに供給することができる限りEAPの近くにあれば十分であり、電気活性高分子構造体はその作動機能を有する。電極は、それらがEAP材料層の変形に従うように伸縮可能であってよい。
【0046】
電気駆動信号は、使用されるEAPに応じて、電圧信号又は電流信号であることができる(以下参照。)。
【0047】
スイッチング配置
34は、各々のデータライン
32へ接続される入力部と、関連する電気活性高分子アクチュエータ
36の第1端子へ接続される出力部とを有する。各電気活性高分子アクチュエータ
36の第2端子は制御ライン
(図11のカウンタ電極110)へ接続される。ドライバは、データライン
32への印加のための第1及び第2駆動レベルと、制御ラインへの印加のための第3及び第4駆動レベルとを少なくとも有する駆動信号を供給する。
【0048】
共通電極駆動(すなわち、制御ライン駆動)が使用されて、低いトランジスタ制御電圧が、電気活性高分子アクチュエータにかかるより大きい電圧を切り替えるために使用されることを可能にする。
【0049】
図3は、電気活性高分子アクチュエータのアレイにおいて使用される一般的なアクティブマトリクス回路を示す。アレイは、行導体30及び列導体32を有して行及び列において配置される。複数の行及び列が存在し、それにより、最低限でも、2×2アレイが存在する。多くの行及び列、例えば、数十又は数百の行及び/又は列が存在してよい。
【0050】
図3で見られるような回路は、行導体及び列導体の各交差点にある(すなわち、クロスオーバする)。回路は、そのゲートが行導体30へ接続され且つそのソースが列導体32へ接続されている、電界効果薄膜トランジスタのようなトランジスタ34を有する。トランジスタは、行導体30における選択パルスによってオンされ、それは、次いで、列導体32にある電圧を電気活性高分子アクチュエータ36へ及び保持キャパシタ38へ結合する。
【0051】
図3に示されるアクティブ駆動回路によって夫々が駆動されるm×n個の電気活性高分子アクチュエータのアレイが存在する。m個の行導体(アドレッシングライン)及びn個の列導体(データライン)が存在する。ここで、n≧2且つm≧2、例えば、n≧4若しくはn≧10若しくはn≧50及び/又はm≧4若しくはm≧10若しくはm≧50である。電気活性高分子アクチュエータ36の第1電極は駆動電極である。電気活性高分子アクチュエータ36の第2電極は、基準電圧Vrefへ接続される。基準電圧Vrefは、アレイ内の多くの又は全ての電気活性高分子アクチュエータに共通であってよい。電気活性高分子アクチュエータ36と並列な保持キャパシタ38は任意であり、その機能は、電気活性高分子アクチュエータ36に印加される電圧を保つのを助けることである。
【0052】
回路の動作は、選択されたトランジスタ34のゲートがアドレッシングされて、TFTが導通状態にされる場合にのみ、データ電圧を電気活性高分子アクチュエータ36の駆動電極へ移動させることである。アドレッシングが完了した後、トランジスタ34は絶縁状態になり、電圧は、それが漏れ出すまで、又は電気活性高分子アクチュエータ36が再びアドレッシングされるまで、電気活性高分子アクチュエータ36で保たれる。斯様に、回路はサンプル・アンド・ホールド回路として動作し、これによって、(任意の)保持キャパシタ38は、電気活性高分子アクチュエータへ印加された電圧を保つのを助ける。
【0053】
アドレッシングの後、電気活性高分子アクチュエータ36は、データ電極と基準電極との間に存在する駆動電圧(Vdr)に応じて、新たな作動状態へと変形する。作動は、アドレッシングの周期(通常は1msecよりもずっと短い。)よりも相当に長くかかり得る点に留意されたい。種々のレベルの作動が、異なる駆動電圧を印加することによって実現され得る。
【0054】
アレイをアドレッシングすることは、
図4に示されるように進む。
図4は、基準電極がVref=0Vに設定されている4×4アレイの例を示す。開始点(図示せず。)は、全ての電気活性高分子アクチュエータが放電され、従って、それらの非作動状態にあることである。白丸は、作動されていないアクチュエータに相当し、黒丸は、作動されているアクチュエータである。
【0055】
全ての行は、非選択電圧(Vns:典型的なTFTで通常は10V)により最初にアドレッシングされる。この状況で、データは電気活性高分子アクチュエータへ転送され得ない。
【0056】
最初の行が、次いで、選択電圧(Vsel:典型的なTFTで通常は+30V)によりアドレッシングされる。これは
図4Aに示されている。残りの行は選択されない(Vns)。2つの列が駆動電圧Vdrにより駆動され、残り2つの列は0Vにより駆動され、それらの電圧は、各々の電気活性高分子アクチュエータの第1電極に移される。この状況で、2つの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差はVdrであり、その行にあるそれら2つの電気活性高分子アクチュエータは作動モードにある(作動は、アドレッシングが終了した後にいくらか時間を要し得る。)。残り2つの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差は0Vであり、これによって、その行にあるそれら2つの電気活性高分子アクチュエータは非作動モードのままである。
【0057】
2番目の行が、次いで、
図4Bに示されるように、選択電圧(Vsel)によりアドレッシングされる。残りの行は選択されない(Vns)。先と同じく、2つの列は駆動電圧Vdrにより駆動され、2つの列は0Vにより駆動され、それらの電圧は、各々の電気活性高分子アクチュエータの第1電極に移される。この状況で、2つの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差はVdrであり、その行にあるそれら2つの電気活性高分子アクチュエータは作動モードにある(作動は、アドレッシングが終了した後にいくらか時間を要し得る。)。残り2つの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差は0Vであり、これによって、その行にあるそれら2つの電気活性高分子アクチュエータは非作動モードのままである。
【0058】
最初の行を選択解除することによって、アドレッシングのサンプル・アンド・ホールドの性質は、その最初の行にある電気活性高分子アクチュエータが(特に、保持キャパシタが含まれる場合に)それらの電圧を保ち、それらの作動の状態にとどまる(又は、未だ達していない場合にはその状態へ進む)ことを確かにする。
【0059】
3番目の行が、次いで、
図4Cに示されるように、選択電圧(Vsel)によりアドレッシングされる。残りの行は選択されない(Vns)。このとき、3つの列が駆動電圧Vdrにより駆動され、1つの列が0Vにより駆動され、それらの電圧は、各々の電気活性高分子アクチュエータの第1電極に移される。この状況で、3つの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差はVdrであり、その行にあるそれら3つの電気活性高分子アクチュエータは作動モードにある(作動は、アドレッシングが終了した後にいくらか時間を要し得る。)。残りの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差は0Vであり、これによって、この電気活性高分子アクチュエータは非作動モードのままである。2番目の行を選択解除することによって、アドレッシングのサンプル・アンド・ホールドの性質は、先と同じく、この行にある電気活性高分子アクチュエータがそれらの電圧を保つことを確かにする。
【0060】
4番目の行が、次いで、
図4Dに示されるように、選択電圧(Vsel)によりアドレッシングされる。残りの行は選択されない(Vns)。ただ1つの列が駆動電圧Vdrにより駆動され、残り3つの列は0Vにより駆動される。ただ1つの電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧差はVdrである。
【0061】
アドレッシング相の終わりに、全ての行が選択解除され得(Vns)、電圧が列から除去され得、これによって、電気活性高分子アクチュエータは、それらの電圧が漏れ出るまで、作動のそれらの状態にとどまる。電圧が漏れ出た時点で、アレイは、上述されたように再アドレッシングされてよい。
【0062】
同時に複数行の電気活性高分子アクチュエータをアドレッシングすることが可能であり、これによって、アドレッシングは、より一層速く進む。これは、同時に1つよりも多い行の電気活性高分子アクチュエータへアドレッシング電圧を印加することによって達成される。これは、同じパターンのデータが適用されるべき場合に可能である。
【0063】
上記の例では、2レベルデータドライバしか考えられていない(0V及びVdr)。これは、最も安価なドライバICをもたらす。しかし、更なる例では、電気活性高分子アクチュエータを部分的にも作動させることが好ましいことがある。これを可能にするよう、最大Vdrまでの複数のデータ電圧を伴うデータドライバが使用されてよい。
【0064】
更に、上記の例では、1つの極性の電圧が電気活性高分子アクチュエータへ印加されるが、更なる実施形態では、規則的なインターバルで電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧の極性を反転させることが好ましいことがある。これによって、電気活性高分子アクチュエータの性能は、反転が使用されない場合ほど悪くない。これは、一例として、アドレッシングの更なる期間において基準電極での電圧を変化させ、然るべく駆動電圧を適応させることによって、達成され得る。
【0065】
上述された基本的なアクティブマトリクスアドレッシング方式は、電気活性高分子アクチュエータを駆動するために使用されるのと同じ電圧に耐えることができるようトランジスタに要求する。
【0066】
本発明は、電気活性高分子アクチュエータの駆動電圧よりも低い電圧で動作する、低電圧ポリシリコントランジスタのようなスイッチングデバイスの使用に関する。
【0067】
ヒーターによって必要とされるよりも低い電圧で動作するトランジスタ制御スイッチを使用する高電圧加熱技術が知られている。
【0068】
図5は、60Vヒーターのための駆動回路の第1の例を示す。
図5Aは、オフされているヒーターを示し、
図5Bは、オンされているヒーターを示す。
【0069】
回路において使用されるトランジスタは20VのTFTであり、これは、例えば、低温ポリシリコン(Low Temperature PolySilicon)(LTPS)TFTの電圧限界である。
【0070】
回路は、高電圧60VラインVddoutへ接続されたプルアップ抵抗50と、3つのn形トランジスタN1乃至N3を直列に有するプルダウン回路とを有する。一番下のトランジスタN1は、0Vと20Vとの間で切り替わる制御電圧を印加されている。2番目のトランジスタN2は、一定のバイアス電圧を印加されている。バイアス回路52は、トランジスタN3へ印加される電圧を制御し、それは、2つのp形トランジスタP1及びP2を含む。第1のp形トランジスタP1は、第2及び第3のn形トランジスタN2、N3のゲートの間にあり、そのゲートをトランジスタN2、N3の間のノードへ接続されている。P1が閉じられるとき、バイアス電圧が両方のトランジスタN2、N3のゲートへ印加されるので、それらはいずれも閉じられる。第2のp形トランジスタP2は、第3のn形トランジスタN3のゲート及びソースの間にあり、そのゲートをn形トランジスタN2のゲートへ接続されている。P2が閉じられるとき、トランジスタN3のソース−ドレイン間電圧はないので、トランジスタN3は開いている。
【0071】
図5Aは、入力制御電圧がハイ(20V)であるときの回路内の電圧を示す。この場合に、P1はオンされ、P2はオフされる。これは、N1〜N3の全てが20Vのゲート電圧を有し、出力電圧は、N1とN2との間及びN2とN3との間にあるように、接地(0V)にプルダウンされる。
【0072】
図5Bは、入力制御電圧がロー(0V)に切り替えられた後の回路内の電圧を示す。この場合に、N1はオフし、出力電圧はハイに引っ張られる。N1がオフされている結果として接地への接続がないので、回路は全体として開回路として機能する。プルアップ抵抗50及びその接続がないと、出力は浮いている。
【0073】
次に、N2とN3との間のノードがハイに引っ張られる。これは、P1をオフさせ、P2をオンさせる。対称性から、N2とN3との間の定常状態電圧は40Vで安定し、N2とN1との間の定常状態電圧は20Vで安定する。その場合に、トランジスタN1乃至N3を流れる漏れ電流は全て等しい。
【0074】
図6は、80Vヒーターのための駆動回路の例を示す。プルダウン回路は、4つのn形トランジスタN1乃至N4を直列に有し、バイアス回路54は、トランジスタN3及びN4に印加される電圧を制御し、そして、それは、4つのp形トランジスタP1乃至P4を含む。バイアス回路54は、上下に積み重ねられた2つの
図5のバイアス回路52を有する。先と同じく、全てのn形トランジスタが、出力をローに引っ張るようにオンされるか、あるいは、一番下のトランジスタがオフされ、電圧降下は各n形トランジスタの両端で共有される。
【0075】
図6Aは、入力制御電圧がハイ(20V)である場合の回路内の電圧を示し、
図6Bは、入力制御電圧がロー(0V)に切り替えられた後の回路内の電圧を示す。
【0076】
それらの回路を加熱のために使用する場合に、高電圧は、抵抗の両端で下げられる。そして、抵抗は、通常そうであるように、その高電圧を維持することができると考えられる。しかし、電気活性高分子デバイスについて、デバイスは容量性等価回路を有する。
【0077】
その場合に、アプローチは、
図7の回路を使用することであってよい。この回路では、負荷はEAPアクチュエータであり、このときプルアップ抵抗に追加される。
【0078】
図7に示されるような回路の問題は、プルダウン回路がオン状態にあるとき、すなわち、EAPアクチュエータの一方又は両方の端子が0Vにプルダウンされるとき、静的な電力消費が存在することである。また、回路は、駆動信号の保持を有さない。
【0079】
保持の問題は、
図8に示されるように、容易に解決される。
【0080】
アドレッシングトランジスタ80が設けられる。これは、例えば、列ライン上にあるデータ電圧Vdataが、局所の保持キャパシタ82に印加されることを可能にする。アドレッシングトランジスタ80のゲートは、アドレッシングライン81へ結合される。アドレッシングライン81へは、アドレッシング電圧Vaddrが供給される。アドレッシングラインは、例えば、行導体である。
【0081】
電気活性高分子アクチュエータは、低電圧アドレッシング方式により、この例では80Vにある電源と0Vとの間で駆動され得る。ここで、Vaddr(例えば、0から20Vの範囲をとる。)は、マトリクスアレイの標準の行アドレス信号であり、Vdataも、例えば、0から20Vの範囲をとる。
【0082】
静的な電力消費の問題は残り、回路は、電気活性高分子デバイスの両端で2つの電圧レベルを達成することしかできない。
【0083】
本発明は、それらの問題のうちの1つ以上を解決する回路アプローチを提供する。そのうちの第1の例は
図9に示される。
【0084】
回路は、
図8に示されるような第1回路90と、
図8に示されるような第2回路92とを有するが、電気活性高分子アクチュエータ36の一方の端子(第1端子と定義される。)へ接続する共通のプルアップ抵抗50を共有している。よって、回路全体は、2つの行アドレッシングライン94、96と、2つの列データライン98、100とを有する。
【0085】
第1回路90の出力部は、電気活性高分子アクチュエータ36の一方の側へ接続され、第2回路92の出力部は、電気活性高分子アクチュエータ36の他方の側へ接続される。このようにして、駆動回路全体は、電気活性高分子アクチュエータ36の両側へのアクセスを有し、結果として、静的な電力消費の問題を解決することが可能になる。
【0086】
低電圧信号Vaddr1、2及びVdata1、2によりアドレッシングすることによって、2つのレベルにより駆動することは、静的な電力消費なしで可能になる。
【0087】
Vdata1及びVdata2にハイを供給することによって(各々の行アドレス信号がオンであるとき)、電気活性高分子アクチュエータ36の両側は接地へ結合される。Vdata2は、次いで、ロー値へ駆動され得る(一方、Vaddr2は依然としてオンである。)。0Vが電気活性高分子アクチュエータ36の両端に残るが、第2端子は浮いており、それにより、電気活性高分子アクチュエータ36自体には電流が流れることができない。
【0088】
その上Vdata1をローとすることは(一方、Vaddr1は依然としてオンである。)、電気活性高分子アクチュエータ36を流れる電流フローを止めるだけでなく、電源からの電流消費を防ぐ。電気活性高分子アクチュエータ36は0Vを保持しているが、電気活性高分子アクチュエータ36には電流が流れず、それは(両方の端子において)ハイ供給に浮上する。
【0089】
アクチュエータの両端で高電圧を達成するためには、第1回路90のみが高インピーダンス状態へ切り替えられる必要があり、一方、ロー(すなわち、ゼロ)電圧がアクチュエータの両端で保たれるためには、両方の回路90、92が高インピーダンス状態に保たれる点に留意されたい。従って、アクチュエータで高電圧を達成するようVaddr1及びVaddr2をアドレッシングするとき、Vdata1はハイで起動し、アドレス期間内にローへ移るべきである。低電圧については、Vdata1及びVdata2の両方がハイで起動し、アドレス期間内にロー値へ移る。
【0090】
高電圧により電気活性高分子アクチュエータをアドレッシングするよう、変形された駆動方式が提供される。
【0091】
各々の行アドレス信号がオンであるときにVdata1をローに(それにより、回路90は開回路である。)及びVdata2をハイに(それにより、回路92は電気活性高分子アクチュエータのその端子を接地している。)設定することは、駆動電圧Vddout(例えば、80V)が電気活性高分子アクチュエータの両端で供給されるようにする。
【0092】
それらの電圧は、次いで、アドレス信号がローになった後に引き込まれる電流なしで80Vが保持されるよう保たれ得る。
【0093】
回路92は、次いで、開回路状態へ駆動され得る。これは、一方の端子が浮いているので、アクチュエータを流れる電流フローを阻止する。これは、やはり、静的な電力消費を防ぐ。
【0094】
図10は、
図9の回路に対する変形例を示す。この例で、夫々の回路90、92は、各自のプルアップデバイス50、100を有し、それにより、電気活性高分子アクチュエータ36の各端子へ接続された1つのプルアップデバイスが存在する。
【0095】
これは、3レベル駆動方式が達成されることを可能にする。
【0096】
一例として、電圧レベル80V、0V及び−80Vが、電気活性高分子アクチュエータの両端で供給され得る。
【0097】
この回路配置は、従って、高電圧反転駆動方式を提供するために使用されてよい。そのような反転駆動は、作動の振幅を改善するとともに、長期の使用に伴う作動のドリフトを減らすことが以前より知られている。
【0098】
アドレッシングは、次の方法で進むことができる。
【0099】
(i)+80Vへ駆動すること
Vaddr1、2はハイに駆動され、Vdata1はハイであり(回路90は接地される。)、Vdata2はローである(回路92は開回路である。)。よって、電気活性高分子アクチュエータは80Vに充電される(すなわち、第2回路92へ接続された端子は、第1回路90へ接続された端子よりも高い電圧にある。)。次いで、Vaddr1、2はローになる。キャパシタ82は同じ電圧を保持する。
【0100】
(ii)0Vへ駆動すること
Vaddr1、2はハイに駆動される。Vdata1、2は、最初はハイであり、それにより、両方の回路が接地されている。それらは、次いでローにされ、それにより、電気活性高分子アクチュエータの両端子は同じ電圧にあるが、静的な電力消費はない。これは、電気活性高分子アクチュエータの端子が電源電圧に浮上するからである。Vaddr1、2は、次いでローになる。
【0101】
回路90及び92の動作のタイミングは同期される。
【0102】
(iii)−80Vへ駆動すること
Vaddr1、2はハイに駆動される。Vdata1はローであり(回路90は開回路である。)、Vdata2はハイである(回路92は接地される。)。よって、電気活性高分子アクチュエータは−80Vに充電される(すなわち、第2回路92へ接続された端子は、第1回路90へ接続された端子よりも低い電圧にある。)。次いで、Vaddr1、2はローになる。キャパシタ82は同じ電圧を保持する。
【0103】
図10において80Vで示されている2つの供給電圧が異なるレベル(夫々が80V又はそれ未満)に充電される場合には、電気活性高分子アクチュエータの両端の電圧の種々の組が得られる。例えば、80V及び60Vの供給は、電気活性高分子アクチュエータで80V、0V及び−60Vを達成する。
【0104】
上記のアプローチは、限られた数の駆動レベルを実現する。しかし、中間作動レベルは、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)(PWM)方式を適用することによって得られる。PWMアプローチは、例えば、いくつかのタイプのデバイスが、特に、定常状態を保つために、役立ち得る。
【0105】
上記の例は、一連のプルダウントランジスタを使用して、低電圧トランジスタが使用されることを可能にする。他のアプローチは、カウンタ電極駆動を使用することである。
【0106】
図11は、行導体30、列導体32、トランジスタ34及び電気活性高分子アクチュエータ36を有する基本のアクティブマトリクススイッチング回路を示す。電気活性高分子アクチュエータ36の一方の端子は、トランジスタ34へ接続され、他方は、共通のカウンタ電極110へ接続される。カウンタ電極110には、カウンタ電極電圧Vceが印加される。保持キャパシタ38がやはり設けられてよい。トランジスタ34は、薄膜トランジスタであってよく、それは、ポリシリコン又はアモルファスシリコンであってよい。
【0107】
カウンタ電極110は、電気活性高分子アクチュエータのサブセット、例えば、アドレッシング行にある全ての電気活性高分子アクチュエータ、に共通であってよく、あるいは、それは、アレイ内の全ての電気活性高分子アクチュエータに共通であってよい。そのようなアクティブマトリクス回路の従来の駆動は、駆動電圧を約40Vに制限する。
【0108】
アクティブマトリクスアレイのための高駆動電圧法は、カウンタ電極接続及びデータドライバの両方からアレイを駆動することによって達成され得る。このようにして、高駆動電圧は、高電圧を駆動電極に持ち込まずに、アレイ内の選択された電気活性高分子アクチュエータへ供給され得る。これは、高電圧がカウンタ電極にのみ存在するので、アドレッシングトランジスタ34が高電圧を印加されないことを確かにする。結果として、それは、漏れたり、経年劣化したり、又は機能しなくなったりすることが全くない。
【0109】
カウンタ電極110は、データドライバから駆動電圧を印加する前に、異なる(第2の)非ゼロ電圧に設定されてよい。このようにして、電気活性高分子アクチュエータにかかるより高い電圧は、所与の電圧のデータドライバにより達成され得る。
【0110】
特に、作動電圧は、カウンタ電極電圧よりも小さい駆動電圧に等しい。この場合に、それは、電気活性高分子アクチュエータが、第2のカウンタ電極電圧と少なくとも同じくらいの高さである閾電圧を有して、全ての電気活性高分子アクチュエータが作動されることを回避するようにする場合に有利である。閾電圧を実装する方法は、以下で説明される。
【0111】
図11の回路の使用の第1の例では、電気活性高分子アクチュエータは、30Vの閾電圧及び60Vの作動電圧を有すると仮定される。これは、アクティブマトリクスアドレッシングの正常範囲を越える。閾電圧は作動レベルを表し、それを下回ると、閾値を上回る作動と比較して、大幅に低減された作動となる。高電圧駆動は、電気活性高分子アクチュエータが最初の非作動状態にあるとして、次のように進む。
【0112】
アレイ内の全てのデータドライバは基準電圧、例えば、0Vに設定される。
【0113】
カウンタ電極電圧Vceはこの時点で0Vである。全てのアドレッシングトランジスタ34は、次いで、アドレッシング(導通)状態へと駆動される。例えば、それらのゲート電極は40Vにある。これは、夫々の電気活性高分子アクチュエータの駆動電極での電圧が、列導体32に存在するデータドライバ電圧への接続によって、0Vのままであることを確かにする。
【0114】
全ての電気活性高分子アクチュエータに印加されるカウンタ電極電圧Vce(例えば、+60V)は、共通のカウンタ電極110に駆動される。この電圧が印加されるとき、カウンタ電極110が印加電圧に達して、電気活性高分子アクチュエータに60Vがかかるまで、電流がキャパシタンスを充電するようにデバイス内に流れる。この時点で、緩やかな応答速度により、全ての電気活性高分子アクチュエータは同じ、物理的に非作動の状態にあり、一方、電気活性高分子アクチュエータでの電荷は、作動状態と一致する。結果として、全ての電気活性高分子アクチュエータは、それらがアドレッシング相において非作動にされない限り、作動し始める。
【0115】
このアドレッシング相において、全てのアドレッシングトランジスタ34は、最初に、非アドレッシング(絶縁)状態へと駆動される。例えば、それらのゲートは−5Vにある。
【0116】
次いで、データが、通常の方法で(一度に一列のアドレッシングトランジスタをアドレッシングすることによって)一度に一列ずつアレイに印加される。この場合に、作動データは0Vである。これは、ポジションを切り替えるべきである電気活性高分子アクチュエータにそうさせる。電気活性高分子アクチュエータに0Vを印加することによって、電気活性高分子アクチュエータに60Vがかかる。30Vのデータ電圧は、代わりに、デバイスの両端で+30Vの電圧をもたらす。これは閾値を下回り、電気活性高分子アクチュエータは、作動しない(アドレッシングが直ちに実行される場合)か、あるいは、非作動状態へ戻る(アドレッシング前に遅延がある場合)。
【0117】
このようにして、電気活性高分子アクチュエータは、全てがそれらの作動状態へ電気的に駆動される。この状態は、アドレッシングの後で保たれ、あるいは、それは、アクチュエータが物理的に応答する時間を有する前に入れ換えられる。
【0118】
この例では、データライン電圧は、0Vである第1駆動レベルと、30Vである第2駆動レベルとを有する。
【0119】
共通電極電圧は、0Vである第3駆動レベルと、60Vである第4駆動レベルとを有する。より一般的に、第4駆動レベルの電圧は、第2駆動レベルの電圧よりも大きい。
【0120】
第4駆動レベルの電圧(60V)は最大駆動電圧であり、それにより、それが印加される場合に、アクチュエータはその最大作動状態へ電気的に駆動される(データ電圧がゼロであるとき)。第2駆動レベルの電圧と第4駆動レベルの電圧との間の差(この例では、60V−30V=30V)は、閾電圧以下であり、それにより、データ電圧が第2駆動レベル(30V)に設定される場合に、アドレッシング解除(de-addressing)となる。
【0121】
アドレッシングトランジスタは、カウンタ電極電圧が切り替わる期間中に導通状態にされる。さもなければ、駆動電極での電圧もカウンタ電極電圧へ切り替わり(電流が流れることができない。)、アドレッシングトランジスタはダメージを受ける。
【0122】
共通電極電圧は、高レベルのままであることができる。デバイス全体をオフするために、全てのデータラインは、トランジスタをオフするよう0Vへ駆動されてよく、次いで、共通電極電圧は、制御された方法で0Vに下げられ得る。
【0123】
第2の実施では、電気活性高分子アクチュエータは、60Vの閾電圧と、アクティブマトリクスアドレッシングの正常範囲を越える90Vの作動電圧とを有すると仮定される。高電圧駆動は、電気活性高分子アクチュエータが最初の非作動状態にあるとして、次のように進む。
【0124】
アレイ内の全てのデータドライバは基準電圧、例えば、0Vに設定される。
【0125】
カウンタ電極電圧Vceはこの時点で0Vである。全てのアドレッシングトランジスタ34はアドレッシング(導通)状態へと駆動される。例えば、それらのゲート電極は40Vにある。これは、駆動電極での電圧が0Vのままであることを確かにする。
【0126】
全ての電気活性高分子アクチュエータに印加されるカウンタ電極電圧Vce(−60V)は、共通のカウンタ電極110に駆動される。この電圧が印加されるとき、カウンタ電極110が印加電圧に達する(電気活性高分子アクチュエータに60Vがかかる)まで、電流がデバイスキャパシタンスを充電するようにデバイス内に流れる。この時点で、全ての電気活性高分子アクチュエータは同じ(すなわち、非作動)状態にあり、この作動状態と一体する電荷が電気活性高分子アクチュエータにある。
【0127】
全てのアドレッシングトランジスタ34は、次いで、非アドレッシング(絶縁)状態へと駆動される。例えば、それらのゲートは−5Vにある。
【0128】
データは、通常の方法で(一度に一列のアドレッシングトランジスタをアドレッシングすることによって)一度に一列ずつアレイに印加される。この場合に、作動データは30Vである。これは、ポジションを切り替えるべきである電気活性高分子アクチュエータにそうさせる(デバイスには90Vがかかる。)。0Vのデータ電圧は、デバイスの両端で60Vの電圧をもたらす。これは閾値を下回り、デバイスは作動しない。
【0129】
この方法は、最初の駆動が非作動状態へであって、行ごとのアドレッシングが電気活性高分子アクチュエータをアドレッシングされた状態へ切り替える点で、最初の方法とは異なっている。
【0130】
この例では、データライン電圧は、0Vである第1駆動レベルと、30Vである第2駆動レベルとを有する。
【0131】
第4駆動レベルの電圧(−60V)は、閾電圧(この例では60V)以下の大きさの負電圧であり、第2駆動レベルの電圧は、第2駆動レベルの電圧と第4駆動レベルの電圧との間の差が最大駆動電圧に等しくなるような正電圧である(30V−(−60V)=90V)。第4駆動レベルだけでは、アクチュエータを作動させるのに不十分である。
【0132】
アドレッシングトランジスタは、先と同じく、カウンタ電極電圧が切り替わる期間中に導通している。さもなければ、駆動電極での電圧もカウンタ電極電圧へ切り替わり(電流が流れることができない。)、アドレッシングトランジスタはダメージを受ける。
【0133】
回路の動作は、選択されたTFTのゲートがアドレッシングされて、TFTが導通状態にされる場合にのみ、データ電圧を電気活性高分子アクチュエータの駆動電極へ移動させることである。アドレッシングが完了した後、TFTは絶縁状態になり、電圧は、それが漏れ出すまで、又はデバイスが再びアドレッシングされるまで、デバイスで保たれる。斯様に、回路はサンプル・アンド・ホールド回路として動作し、これによって、(任意の)保持キャパシタは、デバイスへ印加された電圧を保つのを助ける。
【0134】
アドレッシングの後、デバイスは、データ電極と基準電極との間に存在する駆動電圧(Vdr)に応じて、新たな作動状態へと変形する。作動は、アドレッシングの周期(通常は1msecよりもずっと短い。)よりも相当に長くかかる。種々のレベルの作動が、異なる駆動電圧を印加することによって実現され得る。
【0135】
上記の説明から明らかなように、いくつかの設計は、デバイスの閾値挙動を使用してよい。電気活性高分子アクチュエータは、閾値挙動を本質的には示さない。所望の閾値挙動を備えた構造を作るいくつかの方法がこれより説明される。
【0136】
人工的に作り出された閾値は、機械的な効果若しくは電気的な(駆動信号)効果又はそれらの組み合わせのいずれかを用いて、この閾値に至るまで、好ましからざる作動を回避するよう与えられ得る。
【0137】
機械的な閾値効果は、例えば、ジオメトリ、機械的クランピング、又は表面“粘性”を用いて実装されてよい。電気的な閾値効果は、例えば、静電気引力又は電気的破壊挙動を用いて実装されてよい。それらの効果の組み合わせも、電圧閾値を効率的に実装するために使用されてよい。
【0138】
この閾値は、特定の駆動レベルが達成されるまで物理的な作動が遅延される点で、遅延であると見なされてよい。
【0139】
図12は、機械構造を用いて遅延を実装する、幾何学的影響に基づく第1の例を示す。
【0140】
デバイスは、チェンバ122内で電気活性高分子層120を有する。チェンバは、電気活性高分子層120の上に浮かんだふた124を有する。ふたは周縁に載せられている。これは、ふたがEAP層の上に浮かんでいることを意味する。第1の範囲の印加駆動信号による電気活性高分子層の駆動は、電気活性高分子層をふたの方へ隆起させる。(第1の範囲内の最大駆動信号で)接触した後に、更なる作動は、下側の絵で示されているように、ふたを上昇させる。このようにして、ふたの下にある空隙内でのみ電気活性高分子層の動きを引き起こす入力駆動信号の範囲がある。この範囲内の最大駆動信号が達成されるとき、接触が起こる。これは、デバイス全体の閾電圧に対応する。この駆動信号を上回ると、第2の範囲における更なる駆動が、ふたの持ち上げの進行を提供する。これは、デバイスの機械出力に対応する。
【0141】
このようにして、部分的に作動された素子はふたを移動させないが、完全に作動されたアクチュエータは移動を引き起こす。なお、不利な条件は、作動された表面の有限な完全なる変位である。
【0142】
図13に示されるように、遅延の効果は、閾値V
Tが達成されるまで変位が起こらないように変位曲線を下げることである。これは、最大変位を下げる効果を有する。
【0143】
アクチュエータは、それがリテーナーシステム、例えば、スナップシステムを用いて作動のための閾電圧を生じさせるようクランピングされる場合に、より大きい変位を提供することができる。この閾電圧は、その場合に、リテーナー機能に打ち勝つための必要な力に対応する。
【0144】
図14は、ふた124が移動する前に通らなければならないスナップフックの形で保定メカニズム140を備える例を示す。スナップフックは、ふたがフックを通過することができる前に、閾力がふたへ加えられることを要求する。対応する変位対電圧特性(プロット142)及び力対電圧特性(プロット144)が示されている。
【0145】
スナップ通過後、アクチュエータは、更なる印加電圧によりその変位を増し続ける。電圧が取り除かれる場合に、システムはその最初のフラットな状態に戻る。スナップフックは、ふたの下方向における自由な通過を可能にしてよく、あるいは、デバイスは、追加の印加力によってリセットされる必要があってよい。
【0146】
更なる機械的実施形態では、閾電圧は、定義された“粘性(stickiness)”を電気活性高分子構造(すなわち、高分子層及びそれ自体の基板)と支持構造との間に加えることによって、もたらされ得る。粘性は、電気活性高分子層の力がシステムの粘性に勝るまで、電気活性高分子層にかかる電圧を増大させることによってのみ圧倒され得る。
【0147】
粘性は、
表面の化学修飾(接着剤のような特性を適用すること)、
表面どうしの間に流体を導入すること(毛管力を使用すること)、
表面の機械的/位相的な加工、例えば、“ベルクロ(登録商標)”のような構造、
によって実装され得る。
【0148】
上記の例は、機械的な構造に基づく遅延メカニズムを使用する。これは、例えば、デバイスの出力を定義する。代替案は、
図15に示されるように、静電効果に基づく。
【0149】
アクチュエータは、電気活性高分子構造の下にある表面上に追加の電極150を備える。電気活性高分子層120の一方の電極と表面上にある余分の電極150との間の静電気引力は、曲げを制約する制限力を生じさせる。
【0150】
静電気力が曲げ力に圧倒される場合に、アクチュエータはたわむ。これは、静電気力が電極間の距離間隔(d)の二乗の関数であるということで、静電気力を急激に低減する。如何なる曲げもdを増大させ、静電気力は低減され、更なる曲げ及び静電気力の更なる低減をもたらし、そして閾値は圧倒される。
【0151】
グラフは、対応する変位対電圧特性(プロット152)、力対電圧特性(プロット154)、及び静電気力対電圧特性(プロット156)を示す。
【0152】
このシステムの利点は、静電気力がほとんど瞬間的であり、且つ、電気活性高分子層の力は応答するのがゆっくりである点である。これは、より低い電圧でアクチュエータを堅固にクランピングされたままとするために有利である。動的作用は、電気活性高分子層と基板との間にあるキャパシタンスの差を利用することによって実現され得る。この構成では、静電気力は、電圧が印加されると直ぐにEAPデバイスを拘束するよう働く。電気活性高分子アクチュエータは、しかし、その最大力に至るまで、ステップ電圧入力からゆっくりと盛り上がる。これは、遅延された閾値効果を引き起こすことができる。このようにして、ステップ電圧が印加される場合に、静電気力は、作動力が静電気力閾値に打ち勝ち、持ち上がって変位を与えるまで、最初にデバイスを縛り付ける。
【0153】
閾値は、このようにして、部分的にアクチュエータのジオメトリによって、且つ、部分的に作動の速度によって、決定される。
【0154】
閾値を設けるための遅延メカニズムの他の可能な実施は、電気活性高分子層への印加駆動信号の適用を制御する閾電圧又はブレークオーバー電圧を実装する電気部品を有する。
【0155】
図16は、DIAC(ダイオードACスイッチ)として示された電気的な閾又はブレークオーバー素子160と電気活性高分子層120が電気的に直列に接続されている例を示す。他の閾素子、例えば、ショットキーダイオード、シリコン制御整流器又は他のサイリスタが、使用されてよい。この素子は、例えば、基板スタックの部分としての有機半導体(p−n−p−nシーケンスにおける。)として、電気活性高分子構造の部分であってよい。代替的に、アレイ内のより大きいアクチュエータについて、素子は、各アクチュエータと直列に接続された表面実装デバイスであることができる。
【0156】
ブレークオーバー又は閾電圧を下回る印加電圧については、電圧降下が閾又はブレークオーバー素子にわたって起こるとして、誘発される変形はない。より大きい印加電圧については、電気活性高分子層は変形する。
【0157】
遅延メカニズムのための他の可能な実施は、第2の電気活性高分子構造を有する。第2の電気活性高分子構造は、デバイスへの印加駆動信号を受信する電極を有する。所定の量による第2の電気活性高分子構造の変形があると、印加駆動信号は(メインの)電気活性高分子構造へ結合される。
【0158】
図17は、デバイス全体がメインアクチュエータ170及び補助アクチュエータ172を有する例を示す。補助アクチュエータは、メインアクチュエータよりも小さく、それは、非耐力デバイスである制御部分を画定する。
【0159】
2つの順次的なアクチュエータの使用は、閾値が実装されることを可能にする。補助アクチュエータは機械スイッチとして動き、一方、メインアクチュエータは機能アクチュエータである。
図17A及び
図17Bにおいて電圧V=0及びV=V1について示されるように、電圧が閾電圧を下回るとき、スイッチはオフである。
【0160】
閾電圧、例えば、
図17Cに示されるV=V2以上で、スイッチはオンであり、機能アクチュエータは、即座に完全にその電圧まで給電される。
【0161】
2つのアクチュエータどうしの接触は、それらの駆動電極の接触を提供する。それにより、補助アクチュエータは、メインアクチュエータへの駆動電圧の印加を遅延させる。
【0162】
図18は、メインアクチュエータについての変位関数を示し、それから、変位関数の突然のカットオフが存在することが分かる。
【0163】
順次的な順序付けは、異なるアクチュエータ構成及びスイッチングアクチュエータジオメトリによりいくつかの異なる方法で構成され得る。接触は、アクチュエータジオメトリに応じて、電気活性高分子構造の電極によって、又は基板の裏側に作られた追加の接触パッドによって、なされ得る。
【0164】
上述されたように、遅延機能を実装する他の方法は、粘着特性を導入することによる。
【0165】
図19は、電気活性高分子層120の広がりが面内であるよう制約されるところの実施を示す。
【0166】
この設計は、独立の(free standing)デバイス(
図1を参照)に基づいてよい。例えば、2つの層は、1つの側で固定され、さもなければ、全ての方向において自由に広がり得る。
【0167】
層は基板192に対して設けられ、それらの間には摩擦抵抗が存在する。摩擦抵抗は、摩擦力が圧倒されるまで、相対的な滑り運動に抵抗する。
【0168】
このようにして、摩擦は、遅延メカニズムとして機能し、閾値を決定する。
【0169】
摩擦に打ち勝つようにデバイスを駆動するために、ac駆動方式が使用されてよい。例えば、コントローラ194は、dc駆動信号に加えられる高周波acリップルを適用して、アクチュエータが1つのポジションから次のポジションへ動く場合に相対的な滑りを可能にするために使用される。次のポジションはまた、摩擦による印加電圧の除去によって保持され得、それにより、双安定効果が得られる。
【0170】
図19において電圧時間プロファイルで示されるように、デバイスの駆動は、ほんの小さなdcオフセットを有してac電圧から開始する。電気活性高分子は、正及び負の電圧について対称的に作動する。それにより、非作動状態の周囲で振動を引き起こす。これは、摩擦の低減をもたらし、滑らかな作動運動のために電気活性高分子層を準備する。作動運動は、駆動電圧が増大すると直ぐに起こる。
【0171】
電気活性高分子層は、次いで、グラフに表されている次の期間の間変形し続ける。このとき、変形の間にアクティブな振動が存在する(立ち上がるdc電圧レベルに重畳されたac成分によって引き起こされる。)。
【0172】
最後に、本質的に一定のdcレベルにac信号が重畳される短い期間の後、電気活性高分子層がその最終の状態に達する際に電気活性高分子層の動きにおいて何らかの遅延を許すよう、電圧が除去され、残留摩擦が十分である場合に第2の定常状態が保たれるようにする。その後に、デバイスは、摩擦に打ち勝ち、デバイスをその元の状態に戻すよう、ほんの小さなac信号を印加することによってリセットされ得る。従って、デバイスは、リセット可能性を伴った複数の任意の安定状態を有する。この実施形態では、ac信号の振幅をゆっくりと低減して、デバイスがその最も安定した(最大摩擦)状態に落ち着くことを可能にすることが有利であり得る。
【0173】
上記の様々な例は、本質的に、閾値関数を有するアクチュエータデバイスを提供する。
【0174】
上記の回路は、トランジスタの使用に基づく。アモルファスシリコンTFTのMOSFET特性は、デバイスが同じスイッチングTFTを通じて高電圧及び低電圧の両方へ駆動されることを可能にし、一方で、これが当てはまらないダイオードのような他の安価な能動素子が存在する。
【0175】
原則として、行及び列の交点にある直列なダイオードを通じてEAPデバイスをアドレッシングすることが可能である。しかし、ダイオードは一方向にしか導通しないということで、各デバイスの作動状態の縮小はEAPデバイスの自己放電機能に依存する。これは、アレイのピクセルの長期の望まれないオン時間をもたらす。
【0176】
図20は、ダイオードを使用するスイッチング配置を示す。第1ダイオード200は、第1アドレッシングライン202と、電気活性高分子アクチュエータ36の第1端子との間にある。第2ダイオード204は、電気活性高分子アクチュエータ36の第1端子と、第2アドレッシングライン206との間にある。よって、ダイオード200、202は、同じ極性を有して、2つのアドレッシングライン202、206の間で直列である。電気活性高分子アクチュエータ36の第2端子は、選択ライン208へ接続される。第1及び第2アドレッシングライン202、206は列導体を有し、選択ライン208は行導体を有する。
【0177】
このようにして、第1アドレッシングラインと電気活性高分子アクチュエータの第1端子との間の第1のダイオード、及び電気活性高分子アクチュエータの第1端子と第2アドレッシングラインとの間の第2ダイオードが存在し、電気活性高分子アクチュエータの第2端子は選択ラインへ接続されている。この配置は2つのダイオードを使用し、一方はアドレッシング用であり、他方はアドレッシング解除用である。
【0178】
第1ダイオード200は、第1アドレッシングライン202から電気活性高分子アクチュエータ36を充電するアドレッシングダイオードである。第2ダイオード204は、電気活性高分子アクチュエータ36を第2アドレッシングラインへ放電する(すなわち、それを低電圧へ駆動する)アドレッシング解除ダイオードである。
【0179】
オン時間を制限するために、適用要件に応じて必要とされ得るように、この回路は、電気活性高分子アクチュエータの能動的な非作動又はアドレッシング解除を提供する。それは、電気活性高分子アクチュエータ(及び存在する場合には、その保持キャパシタ)の急速な放電を可能にする。
【0180】
アドレッシング方式は、4×4マトリクスを示す
図21を参照して説明されるように、対応するアドレッシング解除方式によって拡張される。
【0181】
夫々の交点で、
図20の回路が設けられる。このとき、2m個の列及びn個の行があるように、アクチュエータの各列ごとに2つの列導体202、206が存在する。
【0182】
夫々のサイクルの間、行は順にアドレッシングされる。1つの行がアドレッシングされているとき、その行にある電気活性高分子アクチュエータは、アドレッシングされるか、又は能動的にアドレッシング解除される。
【0183】
図21は、最初の行が選択されるアドレッシングサイクルの2つの部分を示す。
【0184】
図21Aは、最初の行にある全ての電気活性高分子アクチュエータが作動されていることを示す。
【0185】
アドレッシングの間、第2列導体206はハイ(Vh)に保持され、それにより、アクチュエータは放電することができない。選択されている列の第1列導体202もハイ(Vh)にされて、それらの列にある電気活性高分子アクチュエータを充電する。
図21Aの例では、4つ全てのアクチュエータがアドレッシングされる。
【0186】
図21Bに示されるアドレッシング解除の間、第1データ列202はロー(Vl)に保持され、それにより、アドレッシングラインの電圧と組み合わせて、第1ダイオード200は導通していない。選択されている列の第2ダイオード204は、選択されている第2列導体206に印加されている低放電電圧(Vd)の結果として導通している。残りの第2列導体は高電圧(Vh)を印加されており、それにより、ダイオード204は導通しない。
【0187】
選択されている行の行導体は選択電圧(Vsel)を印加されており、残りの行は非選択電圧(Vns)を印加されている。後述されるように、別の非選択電圧が、充電及び放電の段階の間使用される。アドレッシング解除行がアクティブにされ、且つ、対応する第2データ列206が非作動電圧(Vd)へ切り替えられる場合にのみ、交点でのアクチュエータは非アクティブにされる(放電される)。行電圧Vdのみでは、低い非選択電圧Vnsが行導体に印加されるときに、ダイオード204に順方向バイアスをかけるのに不十分である。
【0188】
アドレッシング及びアドレッシング解除の動作は順次的である。それらは、2つの列導体の間の短絡をもたらすということで、同時であることができない。
【0189】
一例として、200Vの作動電圧について、駆動シーケンスの段階に応じて、次の電圧レベルが可能である:Vh=100V,Vl=−100V,Vd=−100V及びVns=+100V又は−100V。
【0190】
1つの可能なシーケンスは、次の通りである:
1.充電
アドレッシングされるべき行のアドレスライン208はVsel=−100Vへ駆動される。データライン202はVh=100Vへ駆動され、データライン206はVh=100Vへ駆動される。その行にあるアクチュエータは200Vに充電される。選択されていない行のアドレスラインはVns=100Vにある。
2.放電
選択されていない行のアドレスライン208はVns=−100Vへ駆動される。データライン202はVl=−100Vへ駆動される。よって、全てのダイオードは非導通であり、それらの両端に0Vがかかるか、あるいは、200Vの逆バイアスがかかる。放電されるべきアクチュエータのデータライン206はVd=−100Vへ駆動される。そのような行にあるアクチュエータは、次いで、ダイオード204を通じて放電される。残りのアクチュエータのいずれも影響を及ぼされない。
【0191】
図22は、スイッチング配置が単一の列導体31と行導体30との間で電気活性高分子アクチュエータ36と直列にMIM(metal-insulator-metal)(金属−絶縁体−金属)ダイオード220を有するところの他の例を示す。MIMダイオードは、低電圧で遮断領域を有して、両方の導通方向でダイオード特性を示す。
【0192】
図23は、データライン234と電気活性高分子アクチュエータ36の第1端子との間で直列に第1及び第2トランジスタ230、232を有するスイッチング配置の他の例を示す。第1トランジスタ230は、第1の列アドレッシングライン32によって切り替えられ、第2トランジスタ232は、第2の、直交する行アドレッシングライン30によって切り替えられる。電気活性高分子アクチュエータ36の第2端子は、基準電圧Vrefへ接続される。保持キャパシタ38は、やはり先と同じく、電気活性高分子アクチュエータと並列に示されている。スイッチング配置は、このようにして、データラインと電気活性高分子アクチュエータの第1端子との間で直列な第1及び第2トランジスタを有する。2つのトランジスタの使用は、自動リフレッシング方式が実装されることを可能にする。これは、データによりアレイをアドレッシングし直すことなしに、作動状態が保持されることを可能にする。
【0193】
ドライバ配置は、第1及び第2の駆動レベルを第1及び第2のアドレッシングラインへ供給するために、且つ、データをデータラインへ供給するために、使用される。
【0194】
電気活性高分子アクチュエータをアドレッシングするために、両方のトランジスタが同時にアドレッシングされる必要がある。そのような回路は、例えば、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)(RAM)において実装されるような、自動リフレッシング方式を可能にする。
【0195】
上記の全ての例で、ドライバは、2レベル信号(0V及びVdr)の形でデータ信号を適用してよい。これは、上述されたように最も安価なドライバICをもたらす。なお、代替の実施形態では、アクチュエータを部分的にも作動させることが好まれ得る。これを可能にするよう、最大でVdrに至る複数のデータ電圧を有するデータドライバが使用されてよく、あるいは、PWM駆動方式が使用されてよい。
【0196】
そのようなアクティブマトリクスアドレッシング方式の全てで、いくつかの行の電気活性高分子アクチュエータを同時にアドレッシングすることが望まれ得る。これによって、アドレッシングはより一層速く進む。これは、1つよりも多い行の電気活性高分子アクチュエータへ同時にアドレッシング電圧を印加することによって達成される。
【0197】
同じく上述されたように、規則的なインターバルで電気活性高分子アクチュエータにかかる電圧の極性を反転させることが好まれ得る。これによって、デバイスの性能は、反転が使用されない場合よりも劣化しない。これは、一例として、アドレッシングの更なる期間において基準電極での電圧を変化させて、然るべく駆動電圧を適応させることによって、達成され得る。
【0198】
電極配置は、電界駆動型デバイスについて、上述されたように、電気活性高分子の対面において電極を有してよい。それらは、EAP層の厚さを制御する横電界を供給する。これは、翻って、層の面内でEAP層の広がり又は収縮を引き起こす。
【0199】
電極配置は、代わりに、電気活性高分子層の一方の面において一対のコーム電極を有してよい。これは、面内で層の次元を直接に制御するために、面内電界を供給する。
【0200】
EAP層に適した材料が知られている。電気活性高分子には、下位分類:圧電性高分子、電気機械高分子、リラクサー強誘電性ポリマー、電歪高分子、誘電エラストマー、液晶エラストマー、共役高分子、イオン交換ポリマーメタル複合体、イオン性ゲル、及び高分子ゲルがあるが、これらに限られない。
【0201】
下位分類の電歪高分子には:
ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン(trifluoroethylene)(PVDF−TrFE)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン−クロロフルオロエチレン(chlorofluoroethylene)(PVDF−TrFE−CFE)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン(chlorotrifluoroethylene)(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)(PVFE−HEP)、ポリウレタン又はそれらの混合物
があるが、これらに限られない。
【0202】
下位分類の誘電エラストマーには、
アクリレーツ(acrylates)、ポリウレタン、シリコーン
があるが、これらに限られない。
【0203】
下位分類の共役高分子には、
ポリピロール、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(ethylenedioxythiophene)、ポリ(p−フェニレン硫化物)、ポリアニリン
があるが、これらに限られない。
【0204】
追加のパッシブ層が、印加される電界に応じて、EAP層の挙動に作用するために設けられてよい。
【0205】
EAP層は、電極の間に挟まれてよい。電極は、それらがEAP材料層の変形に従うように伸縮自在であってよい。電極に適した材料も知られており、例えば、金、銅若しくはアルミニウムのような金属薄膜、又はカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ポリアニリン(ply-aniline)(PANI)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸塩)(PEDOT:PSS)のような有機導体から成るグループから選択されてよい。例えば、アルミニウムコーティングを用いて、金属化ポリエチレンテレフタラート(PET)のような、金属化ポリエステルフィルム(metallized polyester film)も、使用されてよい。
【0206】
異なる層のための材料は、例えば、異なる層の弾性係数(ヤング係数)を考慮しながら、選択される。
【0207】
追加のポリマー層のような、上述された層に対する追加の層は、デバイスの電気的又は機械的挙動を適応させるために使用されてよい。
【0208】
EAPデバイスは、電界駆動型デバイス又はイオンデバイスであってよい。イオンデバイスは、イオン性高分子−金属複合体(IPMC)又は共役高分子に基づいてよい。イオン性高分子−金属複合体(IPMC)は、電圧又は電界が印加された状態で人工筋肉挙動を表す合成複合体ナノ材料である。
【0209】
IPMCは、表面が科学的にめっきされるか、あるいは、プラチナ若しくは金又は炭素系電極のような導体により物理的にコーティングされているナフィオン(Nafion)又はフレミオン(Flemion)のようなイオン性高分子から構成される。電圧が印加された状態で、一片のIPMCにかかる電圧によるイオンマイグレーション又は再配分は、曲げ変形を生じさせる。ポリマーは、溶媒膨潤されたイオン交換高分子膜である。電界は、水とともにカソード側への陽イオン移動を引き起こす。これは、親水性クラスタの再編と、ポリマー拡張とをもたらす。カソード領域でのひずみは、残りのポリマーマトリクスで応力をもたらして、アノード方向に曲がることを生じさせる。印加電圧を反転させることは、曲げを反転させる。
【0210】
平板電極が非対称構成において配置される場合に、印加電圧は、ねじれ(twisting)、横転(rolling)、ねじれ(torsioning)、旋回(turning)、及び非対称な曲げ変形のような、全ての種類の変形を引き起こすことができる。
【0211】
デバイスは単一のアクチュエータとして使用されてよく、あるいは、例えば、2D又は3Dの輪郭の制御を提供するよう、デバイスのライン又はアレイが存在してよい。
【0212】
本発明は、アクチュエータのパッシブマトリクスアレイが対象である例を含め、多くのEAP応用において適用され得る。
【0213】
多くの応用において、製品の主たる機能は、人間の組織の(局所的な)操作、又は組織接触インターフェイスの作動に依存する。そのような応用では、EAPアクチュエータは、主として、小さなフォームファクタ、フレキシビリティ及び高いエネルギ密度のために、独自の利点を提供する。よって、EAPは、柔らかい3D成形された及び/又は小型の製品及びインターフェイスに容易に組み込まれ得る。そのような応用の例は、
皮膚を引っ張るため又はしわを減らすために一定の又は周期的な応力を皮膚に適用するEAPに基づく皮膚パッチの形をとる皮膚作動デバイスのような皮膚化粧治療;
顔の赤い印を減らすか又は防止する皮膚への交番性の標準圧を供給するためにEAPに基づくアクティブクッション又はシールを有する患者インターフェイスマスクを備えた呼吸デバイス;
適応シェービングヘッドを備えた電気シェーバー。皮膚接触面の高さは、接近と刺激との間のバランスに作用するためにEAPアクチュエータを用いて調整され得る;
特に歯の間の空間においてスプレーの届く範囲を改善するために動的なノズルアクチュエータを備えたエアフロスのような口内洗浄デバイス。代替的に、歯ブラシは、アクティブにされた房を設けられてよい;
ユーザインターフェイスに又はその近くに組み込まれるEAPトランスデューサのアレイを介して局所触覚フィードバックを供給するコンシューマエレクトロニクスデバイス又はタッチパネル;
蛇行性血管において容易なナビゲーションを可能にする可動型の先端を備えたカテーテル
である。
【0214】
EAPから恩恵を受ける他のカテゴリーの関連用途は、照明の改良に関する。レンズ、反射面、グレーチング、などのような光学要素は、EAPアクチュエータを用いた形状又は位置適応によって適応可能である。ここで、EAPアクチュエータの利点は、例えば、より低い電力消費である。
【0215】
開示されている実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求されている発明を実施することにおいて当業者によって理解され達成され得る。特許請求の範囲において、語“有する(comprising)”は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞“1つの(a又はan)”は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項で挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0216】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、適用範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。