特許第6876053号(P6876053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876053微細で均一なメッキ組織を有するメッキ鋼板およびメッキ鋼板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876053
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】微細で均一なメッキ組織を有するメッキ鋼板およびメッキ鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20210517BHJP
   C23C 2/26 20060101ALI20210517BHJP
   C23C 2/22 20060101ALI20210517BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C23C2/06
   C23C2/26
   C23C2/22
   C23C2/40
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-532720(P2018-532720)
(86)(22)【出願日】2016年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-538446(P2018-538446A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】KR2016015164
(87)【国際公開番号】WO2017111530
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年8月20日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0186313
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0157102
(32)【優先日】2016年11月24日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ス ヨン
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−082511(JP,A)
【文献】 特開平07−224366(JP,A)
【文献】 特開2003−147500(JP,A)
【文献】 特開2004−068075(JP,A)
【文献】 特開2001−329354(JP,A)
【文献】 特表2015−531817(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0159253(US,A1)
【文献】 特開2002−317233(JP,A)
【文献】 特開平10−306357(JP,A)
【文献】 特開2007−284718(JP,A)
【文献】 特開平08−118469(JP,A)
【文献】 特開2017−104987(JP,A)
【文献】 特開昭60−194054(JP,A)
【文献】 特開2015−151625(JP,A)
【文献】 実開昭56−057267(JP,U)
【文献】 特開平04−235264(JP,A)
【文献】 特開平10−226865(JP,A)
【文献】 米国特許第06235410(US,B1)
【文献】 特表2014−501334(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0075235(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0132442(KR,A)
【文献】 特表2018−538448(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0371598(US,A1)
【文献】 特表2018−507321(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0100831(US,A1)
【文献】 特表2018−532889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板をメッキするメッキ段階と、鋼板のメッキ付着量を調節する調節段階と、鋼板を冷却する冷却段階とを含み、
前記冷却段階は、鋼板表面のメッキ層に接触する冷却体で鋼板に冷気を加えて鋼板を冷却する段階と、前記冷却体に液体窒素や液体ヘリウムを供給して冷却体を冷却する段階とを含む、メッキ鋼板の製造方法。
【請求項2】
前記調節段階は、鋼板表面のメッキ層に接触するナイフでメッキ付着量を一次調節する段階と、前記ナイフに液体窒素や液体ヘリウムを供給してナイフを冷却する段階とを含む、請求項1に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記調節段階は、鋼板表面のメッキ層に密着するチルロールでメッキ付着量を二次制御し鋼板を冷却する段階と、前記チルロールに液体窒素や液体ヘリウムを供給してチルロールを冷却する段階とをさらに含む、請求項2に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項4】
鋼板をメッキするメッキ段階と、鋼板のメッキ付着量を調節する調節段階と、鋼板を冷却する冷却段階とを含み、
前記調節段階は、鋼板表面のメッキ層に接触するナイフでメッキ付着量を一次調節する段階と、前記ナイフに液体窒素や液体ヘリウムを供給してナイフを冷却する段階とを含む、メッキ鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記調節段階は、鋼板表面のメッキ層に密着するチルロールでメッキ付着量を二次制御し鋼板を冷却する段階と、前記チルロールに液体窒素や液体ヘリウムを供給してチルロールを冷却する段階とをさらに含む、請求項4に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記調節段階は、鋼板に対するナイフまたはチルロールの接触荷重を検出する段階と、検出された接触荷重に応じて鋼板に対するナイフまたはチルロールの加圧力を制御する段階とをさらに含む、請求項3または5に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記冷却段階は、鋼板に対する冷却体の接触荷重を検出する段階と、検出された接触荷重に応じて鋼板に対する冷却体の加圧力を制御する段階とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記調節段階と冷却段階は、鋼板の移動方向に沿って鋼板のメッキ層の厚さを次第に低減する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記調節段階または冷却段階で使用された液体窒素または液体ヘリウムによる排出ガスを、熱処理炉内の還元ガスまたは冷却工程の雰囲気維持用ガスとして使用する段階をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記調節段階において、ナイフのチップ部は、−250〜5℃の温度に維持される、請求項2〜5のいずれか1項に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記調節段階において、チルロールは、−250〜5℃の温度に維持される、請求項3または5に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記冷却段階において、冷却体は、−250〜5℃の温度に維持される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記メッキ鋼板は、20℃/sec以上の冷却速度で急冷される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記メッキ鋼板は、20℃/sec以上の冷却速度で250℃以下の温度まで急冷される、請求項12に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記冷却段階において、冷却体表面に形成されたパターンをメッキ層に転写して、メッキ層表面にパターンを形成する段階をさらに含む、請求項12に記載のメッキ鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ鋼板に関し、より詳細には、急速冷却により製造され、微細で均一なメッキ組織を有する優れた品質のメッキ鋼板およびメッキ鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋼板の表面に亜鉛系の金属や金属合金をメッキすることによって耐食性を付与する技術が幅広く行われている。メッキ鋼板は、優れた耐食性に基づいて一般の建築材料を含めて、美麗な表面管理が求められる家電製品、自動車、造船などの外板材まで、ますますその使用範囲が拡大している状態である。
【0003】
溶融亜鉛メッキ設備(CGL;Continuous Galvanizing Line)は、鋼板表面に溶融亜鉛を付着させてメッキ鋼板を生産する設備である。溶融亜鉛メッキ設備において、鋼板は、メッキポット内に配置されたシンクロール(sink roll)を経て、溶融亜鉛が収容されたメッキポットに入れられてメッキが行われる。
【0004】
溶融亜鉛が付着した鋼板は、シンクロールを経て方向が切り替えられてメッキポットの上部に出る。亜鉛メッキポットから引き出された鋼板は、その後、鋼板表面でメッキ付着量を調節する工程を経た後、メッキ層を冷却する工程を経てメッキ鋼板に製造される。
【0005】
最近、多様なメーカーでメッキ鋼板を量産している状態で、製品競争力をより高められるように、より高品質のメッキ鋼板の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メッキ組織が微細で均一な優れた品質のメッキ鋼板およびメッキ鋼板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本実施形態のメッキ鋼板は、鋼板上に溶融メッキ後、接触式加圧冷却で形成されたZn系メッキ層を含み、前記Zn系メッキ層は、平均粒度5μm以下のZn単相組織を含むことができる。
【0008】
前記メッキ層のスパングルの大きさは、300〜500μmであってもよい。
【0009】
前記メッキ層は、Mg成分をさらに含み、前記メッキ層内にMgZn2相を含むことができる。
【0010】
前記MgZn2相の(112)/(201)の比率が0.6以上で形成される。
【0011】
前記メッキ層は、Al成分をさらに含むZn−Al−Mg合金メッキ層であってもよい。
【0012】
本実施形態のZn単相の分率は、15〜40面積%であってもよい。
【0013】
本実施形態のメッキ層内のZn単相の分布がメッキ層の厚さ方向に対して均一でありうる。
【0014】
本実施形態のメッキ鋼板は、メッキ層内のZn単相の分布度B/Aが0.5〜1.0の条件で形成される。ここで、Aは、メッキ層の厚さ方向に対する全Zn単相の分率であり、Bは、メッキ層の外側表層部でのZn単相の分率である。
【0015】
本実施形態のメッキ層は、厚さが5〜50μmであってもよい。
【0016】
本実施形態のメッキ層は、表面に接触式加圧冷却パターンを有することができる。
【0017】
前記接触式加圧冷却パターンは、製織された布状、網状、または不規則に線の絡まった形状であってもよい。
【0018】
本実施形態のメッキ層表面のパターンは、鋼板表面のメッキ層に加圧密着して冷気を加える冷却ベルトの表面パターンが転写されて形成される。
【0019】
本実施形態のメッキ鋼板の製造方法は、鋼板をメッキするメッキ段階;鋼板のメッキ付着量を調節する調節段階;および鋼板を20℃/sec以上の冷却速度で急冷する冷却段階を経て製造される。
【0020】
本実施形態のメッキ鋼板の製造方法は、鋼板をメッキするメッキ段階;鋼板のメッキ付着量を調節する調節段階;および鋼板表面のメッキ層に接触する冷却体で鋼板に冷気を加えて鋼板を冷却する段階と、前記冷却体に液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給して冷却体を冷却する段階とを含むことで、鋼板を急冷する冷却段階を経て製造される。
【0021】
本実施形態のメッキ鋼板の製造方法は、鋼板をメッキするメッキ段階;鋼板表面のメッキ層に接触するナイフでメッキ付着量を一次調節する段階と、前記ナイフに液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給してナイフを冷却する段階とを含むことで、鋼板のメッキ付着量を調節する調節段階;および鋼板を冷却する冷却段階を経て製造される。
【0022】
前記調節段階は、鋼板表面のメッキ層に接触するナイフでメッキ付着量を一次調節する段階と、前記ナイフに液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給してナイフを冷却する段階とを含むことができる。
【0023】
前記調節段階は、鋼板表面のメッキ層に密着するチルロールでメッキ付着量を二次制御し鋼板を冷却する段階と、前記チルロールに液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給してチルロールを冷却する段階とをさらに含んでもよい。
【0024】
前記調節段階において、ナイフのチップ部は、−250〜5℃の温度に維持される。
【0025】
前記調節段階において、チルロールは、−250〜5℃の温度に維持される。
【0026】
前記冷却段階において、冷却体は、−250〜5℃の温度に維持される。
【0027】
前記メッキ鋼板は、20℃/sec以上の冷却速度で250℃以下の温度まで急冷されて製造される。
【0028】
前記調節段階または冷却段階で使用された液体窒素による排出ガスを、高炉内の還元ガスまたは冷却工程の雰囲気維持用ガスとして使用する段階をさらに含んでもよい。
【0029】
前記冷却段階において、冷却体表面に形成されたパターンをメッキ層に転写してメッキ層表面にパターンを形成する段階をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したような、本実施形態に係るメッキ鋼板は、表面欠陥がほとんどなく、単相組織が5μm以下に微細化され均一なメッキ組織を有する。
【0031】
また、本実施形態のメッキ鋼板は、メッキ付着量がより精密に制御されてメッキ付着量の偏差やメッキ層の組織偏差が極めて少ない。
【0032】
これにより、本実施形態のメッキ鋼板は、表面欠陥が少なく、耐食性や耐亀裂性などにおいて非常に優れた品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施例による溶融亜鉛メッキ装置を示す概略図である。
図2】本実施例による溶融亜鉛メッキ装置のナイフ構造を示す概略図である。
図3】本実施例による溶融亜鉛メッキ装置のナイフに対する他の実施例を示す概略図である。
図4】本実施例によるナイフの鋼板に対する接触荷重制御構造を示す概略図である。
図5】本実施例によるナイフのチップ部構造および鋼板に対する配置構造の多様な実施例を示す概略図である。
図6】本実施例による溶融亜鉛メッキ装置のチルロールの構造を示す概略図である。
図7】本実施例による溶融亜鉛メッキ装置の冷却部構造を示す概略図である。
図8】本実施例による溶融亜鉛メッキ装置の冷却部構造を示す概略図である。
図9】本実施例により製造されたメッキ鋼板の表面メッキ層組織を従来と比較して示す電子顕微鏡写真である。
図10】本実施例により製造されたメッキ鋼板の表面メッキ層組織を従来と比較して示す電子顕微鏡写真である。
図11】比較例に対して冷却速度を高めた場合のメッキ層の断面組織を示す電子顕微鏡写真である。
図12】本実施例により製造されたメッキ鋼板のメッキ層特性を従来と比較して示す図表である。
図13】本実施例による図12の比較例と実施例に対するメッキ層の結晶構造の変化をX−ray回折試験器を用いて示す図である。
図14】本実施例による図11の比較例と実施例に対するメッキ層の断面組織を示す電子顕微鏡写真である。
図15】本実施例による図11の比較例と実施例に対するメッキ層の断面組織を示す電子顕微鏡写真である。
図16】本実施例によるメッキ鋼板に対する耐食性実験の結果を従来と比較して示す図である。
図17】本実施例によりメッキ層表面にパターンが形成されたメッキ鋼板を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を説明する。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に理解できるように、後述する実施例は本発明の概念と範囲を逸脱しない限度内で多様な形態に変形可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0035】
図面は概略的であり縮尺に合わせて示されていないことを明らかにする。図面にある部分の相対的な寸法および比率は、図面における明確性および便宜のためにその大きさにおいて誇張または減少して示されており、任意の寸法は単に例示的なものであり、限定的なものではない。
【0036】
[メッキ鋼板製造装置]
以下、本実施例によるメッキ鋼板を製造するための製造装置を説明する。
【0037】
本実施例は、メッキ装置として、鋼板表面に亜鉛系金属や金属合金をメッキする溶融亜鉛メッキ装置を例として説明する。本メッキ装置は、亜鉛系金属や金属合金のメッキに限定されず、多様な金属に対する溶融メッキ装置のすべてに適用可能である。
【0038】
図1は、本実施例による溶融亜鉛メッキ装置を概略的に示している。
【0039】
図1に示されるように、本実施例のメッキ装置は、鋼板Pを溶融メッキするメッキ浴槽10と、鋼板の進行方向に沿って前記メッキ浴槽10の後段で鋼板の一面または両面に配置され、鋼板のメッキ付着量を制御するワイピング部と、鋼板の進行方向に沿って前記ワイピング部の後段で鋼板の一面または両面に配置され、鋼板を冷却させるための冷却部とを含む。
【0040】
メッキ浴槽10に案内された鋼板Pは、メッキ浴槽10内に配置されたシンクロール(sink roll)12を通りながら溶融金属に入れられて溶融メッキ工程が進行する。鋼板Pは、シンクロール12によって進行方向が切り替えられてメッキ浴槽10の上部に移動する。メッキ浴槽10内の溶融金属によって表面がメッキされた鋼板Pは、メッキ浴槽10の上部に引き出される。鋼板は、進行方向に沿って順次に配置されたワイピング部および冷却部を経てメッキ鋼板に製造される。冷却部を経て急冷された鋼板は、テンションロール14を経て工程が進行する。
【0041】
本実施例において、前記ワイピング部は、鋼板表面に付着したメッキ層に直接接触してメッキ付着量を調節する構造になっている。
【0042】
このために、前記ワイピング部は、鋼板P表面のメッキ層に接触してメッキ付着量を制御するナイフ20と、前記ナイフ20に液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給してナイフ20を冷却する冷媒供給部50とを含むことができる。
【0043】
ナイフ20をメッキ層に直接接触することによって、メッキ浴面の酸化物の混入を防止し、より容易に鋼板のメッキ付着量を制御することができる。前記冷媒供給部50は、ナイフ20を極低温液体で冷却させることによって、ナイフ20の温度を下げて、ナイフ20が高温のメッキ層に直接接触する状態でもメッキ溶液がナイフ20に融着するのを防止することができる。
【0044】
また、本実施例において、前記冷却部は、鋼板表面のメッキ層に直接接触して鋼板を冷却する構造になっている。
【0045】
このために、前記冷却部は、鋼板表面のメッキ層に密着してメッキ層を冷却する少なくとも1つ以上の冷却体60と、前記冷却体60に液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給して冷却体60を冷却する冷媒供給部50とを含むことができる。
【0046】
冷却体60をメッキ層に直接接触して鋼板のメッキ層を冷却させることによって、冷却能力を極大化してより速やかに鋼板のメッキ層を急冷させることができる。前記冷却部は、冷却体60を極低温液体で冷却させることによって、冷却体60の温度を下げて、冷却体60が高温のメッキ層に直接接触する状態でもメッキ溶液が冷却体60に融着することを防止することができる。
【0047】
前記冷媒供給部50は、ナイフ20または冷却体60に極低温液体を供給するためのもので、例えば、極低温液体が収容されたタンクと、極低温液体が移送される供給ラインと、供給ライン上に設けられる供給ポンプとを含むことができる。前記冷媒供給部50は、極低温液体を供給できる構造であればすべて適用可能であり、多様に変形可能である。
【0048】
前記冷媒供給部50で使用される極低温液体は、液体窒素、液体ヘリウムのほか、液体アルゴンなど多様な液体が用いられる。液体窒素を用いる場合、より経済性を高めることができる。
【0049】
このように、極低温液体を用いて冷却されたナイフ20と冷却体60が鋼板Pに直接接触して鋼板のメッキ量を制御し急冷させることによって、本実施例によりメッキ鋼板のメッキ付着量を精密制御することができ、メッキ鋼板の冷却速度を20℃/sec以上に高めることができる。したがって、鋼板冷却のための設備ラインの長さを画期的に短縮し、製品の生産速度を高めることができる。
【0050】
前記冷媒供給部50を介してナイフ20または冷却体60に供給された極低温液体は、ナイフ20または冷却体60を通りながらメッキ層と熱交換されて気体化される。ナイフ20または冷却体60から排出されるガスは、適切なろ過装置を経て製鉄工程の熱処理炉(furnace)内の還元ガス、または冷却工程での非酸化性雰囲気維持のためのガスとして用いて再利用される。
【0051】
図2は、本実施例によるナイフの具体的な構造を例示している。
【0052】
本実施例において、前記ナイフ20は、鋼板の両面に対向配置され、鋼板Pの両面に対してメッキ液の付着量を調節する。鋼板Pの両面に配置されるナイフ20は、同一の構造からなり、以下の説明は鋼板の一面に対するナイフ20のみを例として説明する。
【0053】
図2に示されるように、前記ナイフ20は、鋼板Pの幅方向に延び、内部には極低温液体が循環するボディ22と、前記ボディ22の先端に設けられ、鋼板のメッキ層に接するチップ部24とを含むことで、鋼板表面のメッキ付着量を一次的に制御する構造であってもよい。
【0054】
前記ボディ22と前記チップ部24は、液体窒素の使用による極低温環境で長時間安定的に使用可能に、極低温耐久性に優れた金属(metal)、セラミック(ceramic)、またはセラミックコーティングされた金属材などで製造される。
【0055】
前記ボディ22は、内部に極低温液体が通るように流路26が形成される。前記ボディ22に連結された冷媒供給部50は、流路26を通して極低温液体を循環供給する。前記流路26は、ボディ22の先端に設けられたチップ部24を十分に冷却できるようにチップ部24の位置した先端まで延長形成され、チップ部24に極低温液体が接触できるようにする。
【0056】
本実施例において、前記チップ部24は、ボディ22に対して着脱可能に設けられる。
【0057】
前記チップ部24は、高温のメッキ層と接触し続けて摩耗する。これにより、消耗性のチップ部24を取り替え可能な部品にして、摩耗時、ボディ22からチップ部24だけを取り替えてナイフ20を使用し続けることができる。前記チップ部24は、より精密なメッキ付着量制御のために、先端へいくほど尖って形成された構造であってもよい。
【0058】
前記ボディ22に供給された極低温液体は、流路26に沿って循環しながらチップ部24を冷却させて、チップ部24を低温状態に維持させる。これにより、チップ部24は、メッキ層に接した状態でメッキ溶液がチップ部24に付着するのを防止しつつ、一次的にメッキ付着層をより正確に制御することができる。
【0059】
図3は、ナイフの他の実施例を例示している。図3の実施例によるナイフは、チップ部の異常時に直ちに交換して使用できるように、複数のチップ部を備えた構造になっている。
【0060】
このために、本実施例のナイフ21は、鋼板の幅方向に延び、回転可能に設けられ、内部には極低温液体が循環する回転体23と、前記回転体23の外周面に円周方向に沿って間隔をおいて設けられ、鋼板P表面のメッキ層に接してメッキ付着量を制御するチップ部24と、前記回転体23に連結されて回転体23を回転させて、一側のチップ部24を鋼板表面に向けて配置させる回転駆動部とを含むことができる。
【0061】
これにより、チップ部24の摩耗といった異常の発生時、回転体23を回転させて、使用中のチップ部24を鋼板から離隔させ、大気中にある他のチップ部24を鋼板側に移動させることによって、直ちにチップ部24を取り替えて用いることができる。前記チップ部24は、図3に示されるように、4つが回転体23の外周面に沿って90度の角度で配置される。これにより、回転体23が90度の角度で回転して、各チップ部24を鋼板表面側に移動させることができる。前記チップ部24の設置個数は、多様に変形可能である。
【0062】
本実施例において、前記回転体23は、円筒形状からなってもよい。前記回転体23は、円筒形状に限定されず、例えば、回転軸の外周面に沿って前述したボディ22が角度をおいて連続的に配置された構造であってもよい。前記回転体23の両先端は、設備上に別途の支持台(図示せず)に回転可能に支持される。
【0063】
前記回転体23も、液体窒素の使用による極低温環境で長時間安定的に使用可能に、極低温耐久性に優れた金属(metal)、セラミック(ceramic)、またはセラミックコーティングされた金属材などで製造される。
【0064】
前記回転体23は、内部に極低温液体が通るように流路(図示せず)が形成される。回転体23の内部に形成される流路は、回転体23の回転軸の両先端を介して冷媒供給部50と連結される。冷媒供給部50から供給された極低温液体は、前記回転体23の先端を通して回転体23内部の流路に循環供給される。前記流路は、回転体23の外周面に設けられたチップ部24を十分に冷却できるように、チップ部24が位置した表面に延長形成され、チップ部24に極低温液体が接触できるようにする。
【0065】
前記回転体23の表面に軸方向に沿ってチップ部24が設けられる。前記チップ部24は、回転体23の表面に着脱可能に設けられる。
【0066】
前記回転駆動部は、回転体23を設定された角度だけ回転させる構造であればすべて適用可能である。図3に示されるように、例えば、前記回転駆動部は、回転体23と駆動ベルト25で連結されて動力を伝達するステップモータ27を含むことができる。これにより、ステップモータ27が一定量回転駆動されると、駆動ベルト25を介して回転体23に動力が伝達され、回転体23がチップ部24の配置間隔だけ回転する。回転体23の回転により回転体23の表面に設けられ、大気中にあった新たなチップ部24が鋼板側に移動して鋼板表面のメッキ層に接触する。そして、回転体23の回転により磨耗し、または、異常のあるチップ部24は、鋼板表面から外側に離隔して待機位置に移動する。摩耗したチップ部24は、待機位置で取り替えまたは表面研磨作業により処理される。
【0067】
このように、本実施例の場合、回転体23を所定角度で回転させることで簡単にチップ部24を取り替えることによって、チップ部24の取り替えによる時間を低減し、連続的に作業を進行させることができる。
【0068】
本実施例において、前記ナイフ20、21は、内部に極低温液体を循環させて、チップ部24を−250〜5℃に冷却させることができる。前記チップ部24の温度が5℃より高くなると、高温のメッキ溶液がチップ部24に付着する問題が発生する。前記チップ部24の温度が−250℃より低い場合には、前記チップ部24の低温脆性破壊の問題が発生する。
【0069】
また、前記ナイフ20、21は、鋼板に対して移動して、チップ部24によるメッキ付着量を精密に調節する。
【0070】
図4に示されるように、前記ナイフ20によるメッキ付着量の精密制御のために、前記ワイピング部は、前記ナイフ20に備えられ、鋼板Pに対するチップ部24の接触荷重を検出するロードセンサ30と、前記ロードセンサ30の検出信号により鋼板に対してナイフ20を移動して、鋼板に対するチップ部24の加圧力を制御する制御部32とをさらに含んでもよい。
【0071】
前記ナイフ20が鋼板のメッキ層により近づき、または、メッキ層から外側に離隔することによって、チップ部24と鋼板Pとの間隔が変化して鋼板のメッキ付着量が調節される。
【0072】
チップ部24と鋼板Pとの間の間隔は、ロードセンサ30によって検出されたチップ部の接触荷重により確認することができる。チップ部24と鋼板Pとの間の間隔が狭くなると、チップ部24が鋼板のメッキ層に深く入ってメッキ溶液との接触量が多くなるにつれて接触荷重が大きくなり、逆に、チップ部24が鋼板Pから離隔すると、メッキ溶液との接触量が減少するにつれて接触荷重が小さくなる。
【0073】
前記制御部32は、ロードセンサ30の検出値を演算して、一次的に設定されたメッキ付着量に合わせて鋼板Pに対してナイフ20を移動させて、メッキ付着量を制御する。
【0074】
鋼板に対する前記ナイフ20の移動は、例えば、ナイフ20に結合された駆動シリンダなどの駆動部34によって行われる。前記駆動部34は、駆動シリンダやモータなど多様な動力源が用いられ、ナイフ20を鋼板に対して直線移動させられる構造であればすべて適用可能である。
【0075】
また、前記制御部32は、ロードセンサ30の測定値の変化を検知して、装置異常の有無を確認できる。装置異常の判別時、ナイフ20からチップ部24を取り替えるなどの必要な措置を直ちに取ることができる。
【0076】
図5は、鋼板に対するナイフのチップ部の形態および鋼板に対するチップ部の配置構造を例示している。
【0077】
本実施例において、前記ナイフ20、21に設けられるチップ部24は、直線形態であるか、中間が折れてV字状をなす構造など多様な構造に形成される。前記チップ部24が設けられるナイフのボディ22または回転体23も、チップ部24の形態と同一の構造からなってもよい。例えば、前記チップ部24がV字状からなる場合、チップ部24が設けられるナイフ20のボディ22も、先端部はチップ部24と同じ形態のV字状からなってもよい。
【0078】
図5に示されるように、前記チップ部24は、鋼板Pに幅方向に対して平行に配置される。また、前記チップ部24は、鋼板の幅方向に対して傾斜して配置される。
【0079】
また、前記チップ部24がV字状に折れた構造の場合、折れた部分が鋼板の移動方向を向き、または、鋼板の移動方向に反対方向を向くように、逆V字状またはV字状に配置される。
【0080】
鋼板Pに対してメッキ層と接するチップ部24の配置を多様にすることで、メッキ層とチップ部24との接触荷重を低減してより円滑にメッキ層の付着量を調節することができる。
【0081】
図1図6に示されるように、前記ワイピング部は、鋼板の進行方向に沿って前記ナイフ20の後段に配置され、鋼板のメッキ付着量をより精密に制御し鋼板のメッキ層を急冷させるチルロール40をさらに含んでもよい。
【0082】
前記チルロール(chill roll)40は、鋼板の幅方向に配置され、メッキ層に加圧密着するロール構造物である。前記チルロール40の両先端は、設備上に別途の支持台(図示せず)に回転可能に支持される。前記チルロール40は、自由に回転可能な構造で鋼板の移動により共に回転し、または、別途の駆動源に連結されて設定された速度で回転する構造であってもよい。
【0083】
本実施例において、前記チルロール40は、表面粗さが平均0.1〜3μmであってもよい。
【0084】
前記チルロール40の表面粗さが3μmより高くなると、劣る表面品質による不均一な後処理問題が発生する。前記チルロール40の表面粗さが0.1μmより低い場合には、化成処理のような後処理特性が低下する問題が発生する。
【0085】
前記チルロール40は、内部に極低温液体が循環して低温に冷却される構造になっている。前記チルロール40は、液体窒素の使用による極低温環境で長時間安定的に使用可能に、極低温耐久性に優れた金属(metal)、セラミック(ceramic)、またはセラミックコーティングされた金属材などで製造される。
【0086】
図6に示されるように、前記チルロール40の内部には、極低温液体が通るように流路が形成される。チルロール40の内部に形成される流路は、チルロール40の回転軸の両先端を介して冷媒供給部(図1の50参照)と連結される。冷媒供給部50から供給された極低温液体は、前記チルロール40の先端を介してチルロール40内部の流路に循環供給される。チルロール40の内部に供給された極低温液体によって、チルロール40表面は低温の冷却状態を維持する。これにより、チルロール40は、鋼板Pのメッキ層に接した状態で、メッキ溶液がチルロール40表面に付着するのを防止し、メッキ層を急速冷却させることができる。
【0087】
したがって、前記チルロール40は、鋼板P表面のメッキ層に密着して一次的にナイフ20を経た鋼板Pのメッキ付着量を二次的に精密制御する。これとともに、前記チルロール40は、メッキ層に接して直接的な熱交換によりメッキ層を急速冷却させることができる。
【0088】
本実施例において、前記チルロール40は、内部に極低温液体を循環させて、温度を−250〜5℃に冷却させることができる。前記チルロール40の温度が5℃より高くなると、メッキ鋼板の冷却性能および表面品質の改善効率が低下する問題が発生する。前記チルロール40の温度が−250℃より低い場合には、前記チルロール40の低温脆性破壊の問題が発生する。
【0089】
このように、本実施例のメッキ装置は、鋼板のメッキ層に接する低温のナイフ20とチルロール40によりメッキ付着量をより精密に制御することができる。また、低温に冷却されたチルロール40がメッキ層を加圧して急速冷却させることによって、メッキ層の組織を微細化させ、幅方向へのメッキ付着量の偏差を効果的に低減する。
【0090】
チルロール40がメッキ層に接触してより速い時間内にメッキ溶液を凝固させることによって、前記メッキ装置は、鋼板を20℃/secの冷却速度で急冷させることができる。それだけでなく、前記チルロール40は、所定の圧力下でメッキ層を加圧しながら冷却が進行するので、難メッキ性鋼種に対してもメッキ性能を改善することができる。
【0091】
また、本実施例の場合、メッキ浴槽10のシンクロール12とチルロール40とが連動して鋼板Pを支持している状態になって、鋼板が接触式ナイフ20を通る過程で幅方向に曲がる反曲現象が全く発生しない。つまり、鋼板の移動方向に沿ってナイフ20の前段と後段で鋼板はそれぞれシンクロール12とチルロール40を通る。これにより、鋼板Pは、シンクロール12とチルロール40によって平らに伸ばされた状態で反曲現象の発生なくナイフ20を通る。
【0092】
鋼板が反曲する場合、幅方向へのメッキ付着量の偏差が発生し、側面の過剰メッキによるクシ状欠陥などのメッキ表面欠陥が発生する。従来の構造の場合、このような鋼板の反曲現象によるメッキ表面欠陥が頻繁に発生するが、本実施例の場合、鋼板の反曲発生を防止することによって、幅方向のメッキ付着量およびメッキ層の組織偏差がほとんどないメッキ鋼板の製造が可能である。
【0093】
本実施例のワイピング部は、前記チルロール40によるメッキ付着量の精密制御のために、ナイフと同様に、前記チルロール40に備えられ、鋼板に対するチルロール40の接触荷重を検出するロードセンサ30と、前記ロードセンサの検出信号により駆動部34を作動して鋼板に対してチルロール40を移動して、鋼板に対するチルロール40の加圧力を制御する制御部32とをさらに含んでもよい。
【0094】
前記チルロール40が鋼板Pのメッキ層に近づき、または、メッキ層から外側に離隔することによって、チルロール40と鋼板との間隔が変化して鋼板のメッキ付着量が精密に調節される。
【0095】
チルロール40に対するロードセンサと制御部の構造は、前述したナイフ20に対するロードセンサ30と制御部32および駆動部34の構造と同一であるので、同一の符号を用い、その構造と作用は、ナイフ20に対するロードセンサ30と制御部32の説明を参照し、以下、詳細な説明は省略する。これにより、前記制御部32は、ロードセンサ30の検出値を演算して、鋼板に対してチルロール40を移動させてメッキ層を加圧することによって、メッキ付着量をより精密に制御することができる。また、チルロールによってメッキ層が加圧されながら20℃/sec以上の冷却速度で急冷されることによって、幅方向のメッキ付着量の偏差を最小化しながらより微細な組織のメッキ層を得ることができる。
【0096】
また、前記ワイピング部は、チルロール40の表面が汚染された場合に備えて、チルロール40表面の汚染物を除去する構造になっている。このために、図7に示されるように、前記ワイピング部は、チルロール40に接してチルロール40表面に付着した汚染物を除去するためのスクレーパ44をさらに含んでもよい。前記スクレーパ44は、チルロール40の軸方向に延びてチルロール40表面に接触するように設けられる。これにより、前記チルロール40が回転しながら、チルロール40表面に付着した汚染物がスクレーパ44にかかってチルロール40表面から除去される。
【0097】
前記ワイピング部を経てメッキ付着量が精密調節され急冷が行われた鋼板は、ワイピング部の後段に配置された冷却部を経て設定温度以下に急速冷却される。また、本実施例において、鋼板は、冷却部を経てメッキ層の厚さが精密に制御される。
【0098】
図7図8は、本実施例による冷却部の構造を例示している。
【0099】
前記冷却部は、鋼板表面のメッキ層に密着してメッキ層を冷却する少なくとも1つ以上の冷却体60と、前記冷却体60に液体窒素や液体ヘリウムを含む極低温液体を供給して冷却体60を冷却する冷媒供給部50とを含むことができる。
【0100】
本実施例において、前記冷却体60は、鋼板の幅方向に延び、内部には極低温液体が循環し、鋼板P表面のメッキ層に加圧されて冷気を加える冷却ロール62を含むことができる。前記冷却ロール62は、複数個が鋼板の進行方向に沿って間隔をおいて多段に配置された構造であってもよい。
【0101】
前記冷却ロール62は、前記チルロール40と同様に、鋼板の幅方向に配置されるロール構造物である。前記冷却ロール62の両先端は、設備上に別途の支持台(図示せず)に回転可能に支持される。前記冷却ロール62は、自由に回転可能な構造で鋼板の移動により共に回転し、または、別途の駆動源に連結されて設定された速度で回転する構造であってもよい。
【0102】
前記冷却ロール62は、内部に極低温液体が循環して低温に冷却される構造になっている。
【0103】
チルロール40と同様に、前記冷却ロール62の内部には、極低温液体が通るように流路64が形成される。冷却ロール62の内部に形成される流路64は、冷却ロール62の回転軸の両先端を介して冷媒供給部(図1の50参照)と連結される。冷媒供給部50から供給された極低温液体は、前記冷却ロール62の先端を介して冷却ロール62内部の流路64に循環供給される。冷却ロール62の内部に供給された極低温液体によって冷却ロール62表面は低温の冷却状態を維持する。
【0104】
また、前記冷却体60は、少なくとも2つの冷却ロール62の間に巻かれて設けられ、鋼板P表面のメッキ層に加圧密着して冷気を加える冷却ベルト66をさらに含んでもよい。この構造の場合、冷却ロール62でない冷却ベルト66が鋼板のメッキ層に直接接するようになる。
【0105】
前記冷却ロール62と前記冷却ベルト66は、液体窒素の使用による極低温環境で長時間安定的に使用可能に、極低温耐久性に優れたステンレスなどの金属(metal)、セラミック(ceramic)、またはセラミックコーティングされた金属材などで製造される。
【0106】
本実施例において、前記鋼板表面に接する冷却ロール62または冷却ベルト66は、表面粗さが平均0.1〜3μmであってもよい。前記冷却ロール62または冷却ベルト66の表面粗さが3μmより高くなると、劣る表面品質による不均一な後処理問題が発生し、表面粗さが0.1μmより低い場合には、化成処理のような後処理特性が低下する問題が発生する。
【0107】
本実施例において、2つの冷却ロール62に冷却ベルト66が巻かれて1つの冷却体60をなし、このような冷却体60の1つまたは複数個が鋼板の進行方向に沿って間隔をおいて配置された構造になっている。各冷却体60の設置間隔や個数などは、設備や工程条件に応じて多様に変形可能である。
【0108】
各冷却体60は、同一の構造からなってもよいし、以下、一側の冷却体に対する構造を例として説明する。
【0109】
離隔した2つの冷却ロール62の間に冷却ベルト66が巻かれて設けられ、冷却ベルト66は、鋼板表面のメッキ層に面接触する。前記冷却ベルト66は、例えば、鋼板に接した状態で冷却ロール62の回転駆動によって鋼板の移動速度に合わせて回転できる。鋼板の移動速度に合わせて冷却ベルト66が回転することによって、鋼板と冷却ベルト66との間の摩擦を最小化し、摩擦によるメッキ層の損傷を防止することができる。
【0110】
冷却ロール62は、外側に備えられた冷却ベルト66を低温に冷却させる。冷却ベルト66は、冷却ロール62によって低温に冷却された状態でメッキ層に面接触していて、メッキ層を急速冷却させることができる。つまり、前記冷却ベルト66は、2つの冷却ロール62の間で鋼板表面のメッキ層に面接触している。これにより、鋼板のメッキ層に対する冷却面積は、冷却ベルト66による接触面積だけ大きくなる。したがって、本実施例の冷却部は、冷却ベルト66によって鋼板のメッキ層に対する冷却面積を増加させて冷却速度を高めることができる。
【0111】
本実施例において、前記冷却ロール62は、内部に極低温液体を循環させて、メッキ層と接する冷却ベルト66の温度を−250〜5℃に冷却させることができる。前記冷却ベルト66の温度が5℃より高くなると、メッキ鋼板の冷却性能および表面品質の改善効率が低下する問題が発生する。前記冷却ベルト66の温度が−250℃より低い場合には、前記冷却ベルト66の低温脆性破壊の問題が発生する。
【0112】
このように、冷却ロール62に設けられた冷却ベルト66がメッキ層に接触してより速い時間内にメッキ溶液を凝固させることによって、本実施例のメッキ装置は、冷却部を介して鋼板を20℃/secの冷却速度で250℃以下の温度まで急冷させることができる。
【0113】
前記冷却部は、ユニットを構成する2つの冷却ロール62の間の間隔を調節して、冷却ベルト66をピンと張るように緊張させることができる。冷却ベルト66が緊張してピンと張って展開されることによって、鋼板表面のメッキ層と冷却ベルト66との接触が円滑に行われ、メッキ層をより均等に冷却させることができる。
【0114】
図8に示されるように、このために、前記冷却部は、冷却ベルト66が巻かれた2つの冷却ロール62の間に冷却ロール62の間を伸縮させる駆動シリンダ68が設けられる。前記駆動シリンダ68は、制御部32の信号により駆動されて冷却ロール62の間を広げるようになる。冷却ロール62の間が広げられることによって、冷却ベルト66がピンと張って展開される。
【0115】
また、前記冷却ロール62は、鋼板のメッキ層に対する加圧力を精密に調節することができる。このために、前記冷却ロール62は、図示しないが、チルロール40と同様に、ロードセンサと、制御部と、駆動部とを備えることができる。冷却ロールの加圧力調節構造は、前述したチルロール40に対するロードセンサ30と制御部32および駆動部34の構造と同一であるので、その構造と作用に関する詳細な説明は省略する。これにより、冷却ロールは、鋼板に設定された圧力で加圧密着して鋼板のメッキ層の厚さを精密に制御する。
【0116】
前記冷却ロール62が鋼板のメッキ層に近づき、または、メッキ層から外側に離隔することによって、冷却ロール62に巻かれた冷却ベルト66と鋼板との間隔が変化して鋼板のメッキ層に対する加圧力が調節される。このように、前記冷却部は、ロードセンサの検出値を演算して、鋼板に対して冷却ロール62を移動させて冷却ベルト66によるメッキ層の加圧力を精密に調節することによって、メッキ層の厚さを精密に制御することができる。
【0117】
ここで、前記冷却ロール62の移動による冷却ベルト66の加圧力は、鋼板の移動方向に沿って配置された複数の冷却体60それぞれに対して同一または異なっていてもよい。つまり、鋼板の移動方向に沿って配置された各冷却体60は、同一の加圧力で鋼板に密着できる。あるいは、前記各冷却体60は、鋼板の移動方向に沿って次第に加圧力を高めて鋼板に密着できる。したがって、鋼板は、各冷却体60を通りながら次第に高い加圧力を受けてメッキ層の厚さを次第に低減することができる。
【0118】
これにより、前記鋼板の移動方向に沿って前記ナイフ20から冷却ロール62へいくにつれて次第に鋼板のメッキ層を加圧して、メッキ層の厚さをより精密に制御することができる。
【0119】
また、前記冷却部は、所定の圧力下でメッキ層を加圧しながらメッキ層を急冷させることによって、難メッキ性鋼種に対してもメッキ性能を改善することができる。
【0120】
このように、本実施例のメッキ装置は、極低温液体によって冷却された冷却ベルトをメッキ層に密着させて冷却させることによって、従来と比較してメッキ層を急速冷却させることができる。メッキ鋼板の冷却は、製品の表面品質に直接的な影響を及ぼす。もし、未凝固メッキ層が汚染されたガスまたは設備の後段のロールに接触する場合、直接的な表面欠陥発生の原因になるため、メッキ層は設備の後段に進入する前に完全に凝固しなければならない。従来の構造の場合、ガスや水冷方式を利用することによって、熱容量が低くなり冷却能力が低下し、これにより、メッキ鋼板を一定の温度以下に冷却させてメッキ層を完全に凝固させるためには、非常に長い多段階の冷却ラインを必要としていた。したがって、従来は、冷却ラインが非常に複雑で設備規模が膨大で設備を効果的に管理しにくいために表面欠陥の発生が頻繁であった。特に、Znメッキ溶液にAl、Mgが多量添加された合金メッキ鋼板のようにメッキ層の凝固開始温度と凝固完了温度との差が大きい場合には、従来のガスを用いた方式では十分な冷却効果を得にくい。これにより、メッキ層の冷却がうまく行われず、強酸化性金属のAl、Mg含有の粗大で弱いメッキ層組織が生成され、このような領域で黒点、黒変のようなメッキ層表面欠陥が発生し、メッキ層のクラック発生および耐食性低下の問題を誘発する。
【0121】
これに対し、本実施例の場合、鋼板のメッキ層に直接冷却ベルト66が接触して極低温液体を用いてメッキ層を冷却させることによって、冷却効率をより高めることができる。これにより、メッキ層の冷却にかかる時間を大きく短縮させることができる。したがって、本実施例によりメッキ鋼板の冷却速度が20℃/sec以上に高くなって冷却部の設備ラインをより低減することができる。また、鋼板にガスが直接的に接触せず表面欠陥の発生を最小化することができ、より小さくて均一なメッキ組織を得て、高品質のメッキ鋼板の製造が可能である。さらに、冷却用ガスを用いず、環境に有害な粉塵の発生を防止することができる。
【0122】
また、本実施例において、前記冷却ベルトは、メッキ鋼板のメッキ層を加圧して冷却する過程でメッキ層にパターンを刻印して形成する構造であってもよい。ここで、パターンとは、繰り返される模様や柄を意味することができる。
【0123】
メッキ鋼板のメッキ層は、冷却のためにメッキ層と接触している冷却ベルトの表面形状に影響を受けるので、冷却ベルトに多様なパターンを形成させて転写させる構造によりメッキ層表面を加工することができる。このために、前記冷却ベルトは、表面にメッキ層に転写されるパターンが形成される。これにより、冷却ベルトがメッキ層に加圧密着してメッキ層を冷却する過程で、冷却ベルト表面に形成されたパターンがメッキ層に押されて転写されながら、メッキ層に冷却ベルトのパターンと同じ形態のパターンが形成される。
【0124】
このように、メッキ鋼板のメッキ層に冷却ベルトを接触させて急速冷却させることによって、別途のパターン形成のための装置を経ることなくメッキ層にパターンを容易に形成することができる。
【0125】
[メッキ鋼板製造工程]
以下、本実施例によるメッキ鋼板を製造するための工程について説明する。
【0126】
本実施例によりメッキ浴槽を経て溶融亜鉛がメッキされた鋼板は、メッキ浴槽の上部に移動して、鋼板のメッキ付着量を調節する工程と鋼板を冷却する工程を経てメッキ鋼板に製造される。
【0127】
鋼板のメッキ付着量を調節するために、メッキ浴槽から出た鋼板は、一次的に鋼板表面のメッキ層に接触する低温のナイフによって一次的にメッキ付着量が制御される。そして、ナイフの後段で鋼板表面のメッキ層に接触する低温のチルロールによって二次的にメッキ付着量が制御される。
【0128】
前記ナイフとチルロールによるメッキ付着量の調節は、鋼板に対するナイフとチルロールとの接触荷重を検出し、検出された接触荷重に応じて鋼板に対してナイフとチルロールを移動させて加圧力を制御することによって、精密に調節することができる。
【0129】
前記ナイフとチルロールは、内部に液体窒素などの極低温液体が供給されて低温に冷却される。ナイフに供給された極低温液体によって、ナイフに設けられたチップ部は5℃以下の温度に冷却される。これにより、チップ部がメッキ層に接触してメッキ付着量を調節する状態で、メッキ溶液が低温に冷却されたチップ部に融着しない。したがって、ナイフは、チップ部を物理的にメッキ層に接触した状態でメッキ層のメッキ付着量を正確に制御することができる。このようにメッキ浴槽から出た鋼板は、ナイフによって一次的にメッキ層のメッキ付着量が制御される。
【0130】
チルロールは、一次的にナイフによって付着量が制御された鋼板のメッキ層に接触してメッキ層を物理的に加圧することによって、メッキ付着量を二次的により精密に制御する。
【0131】
チルロールも、内部に供給された極低温液体によって低温に冷却されていて、メッキ層に接触するチルロールの表面は5℃以下に冷却される。これにより、チルロールがメッキ層に密着して加圧する状態でメッキ溶液がチルロール表面に付着しない。したがって、チルロールをメッキ層に加圧してメッキ層のメッキ付着量を精密に制御することができる。
【0132】
チルロールによって鋼板が加圧されてメッキ付着量が制御される過程で、低温のチルロールによって鋼板のメッキ層が急速に冷却される。チルロールは、言及したように、極低温液体によって冷却された状態でチルロールと接触しているメッキ層がチルロールと熱交換されながら急速に冷却される。このように、チルロールがメッキ層と接してメッキ層を冷却させることによって、前記メッキ鋼板は、20℃/sec以上の冷却速度で急冷できる。
【0133】
チルロールを通りながら急速冷却された鋼板は、チルロールの後段に配置された冷却区間を通りながら設定温度以下に急冷される。
【0134】
冷却区間には、冷却体として冷却ロールと冷却ベルトとを含んで構成されたユニット複数個が連続的に配置され、各ユニットの冷却ベルトが鋼板表面のメッキ層に加圧密着している。
【0135】
冷却ロールは、チルロールのように、内部に液体窒素などの極低温液体が供給されて低温に冷却される。冷却ロールの冷気は、冷却ベルトを介してメッキ層に加えられてメッキ層を急冷させる。
【0136】
冷却ベルトは、極低温液体によって低温に冷却されて冷却ベルトがメッキ層に加圧された状態でメッキ層が冷却ベルトに付着しない。
【0137】
前記冷却ベルトは、鋼板のメッキ層を適正圧力で加圧した状態でメッキ層を冷却させる。鋼板に対する冷却ベルトの加圧力の調節は、鋼板に対する冷却ベルトの接触荷重を検出し、検出された接触荷重に応じて鋼板に対して冷却ベルトを移動させて加圧力を精密に制御することができる。
【0138】
これにより、チルロールを経たメッキ鋼板は、冷却区間を通りながら冷却ベルトによって冷却されて、20℃/sec以上の冷却速度で250℃以下の温度まで急冷できる。
【0139】
ここで、前記冷却ベルトによる鋼板のメッキ層の冷却過程で、メッキ鋼板のメッキ層表面にパターンを形成することができる。
【0140】
冷却ベルトがメッキ層を加圧して冷却しながら、冷却ベルト表面に形成されたパターンがメッキ層を押して加圧する。これにより、冷却ベルト表面に形成されたパターンがそのままメッキ層に転写されて、メッキ層表面に冷却ベルト表面に形成されたパターンと同じ形態のパターンが形成される。
【0141】
このように、簡単にメッキ層を冷却する過程でメッキ鋼板表面に所望する形態のパターンを形成することができる。
【0142】
メッキ付着量の調節過程とメッキ層の冷却過程を経てチルロールと冷却ベルトがメッキ層を直接接して加圧することによって、鋼板の移動方向に沿って鋼板のメッキ層の厚さを次第に低減し、鋼板のメッキ層の厚さをより精密に制御することができる。
【0143】
また、チルロールと冷却ベルトによる圧力下でメッキ層の冷却が進行するので、難メッキ性鋼種のメッキ性を改善することができる。
【0144】
メッキ付着量の調節過程とメッキ層の冷却過程で液体窒素が気体化され、この過程で発生した排出ガスは、ろ過過程を経た後、熱処理炉(Furnace)内の還元ガスまたはメッキ鋼板冷却工程の雰囲気維持用ガスとして再利用することができる。
【0145】
前記のように急速冷却されて製造された本実施例のメッキ鋼板は、より小さくて均一なメッキ組織を形成し、耐食性と耐亀裂性において優れた品質を得ることができる。
【0146】
以下、本実施例によるメッキ鋼板についてより具体的に説明する。
【0147】
本実施例のメッキ鋼板は、鋼板上にZnを含むメッキ層を形成し、前記メッキ層内のZn単相の平均粒度は、5μm以下であってもよい。
【0148】
本実施例において、前記メッキ層内のZn単相の平均粒度は、0を超えて10μm以下であってもよいし、より好ましくは0を超えて5μm以下であってもよい。
【0149】
このように、メッキ層内のZn単相の平均粒度を5μm以下に結晶粒を微細に形成することによって、耐亀裂性を高めることができる。
【0150】
本実施例のメッキ鋼板は、メッキ層内のZn単相の分率が15〜40面積%であってもよい。
【0151】
Zn単相の分率が15面積%より小さい場合には、二元工程の組織が粗大化される可能性が高まって品質が低下し、40面積%を超える場合には、鋼板のメッキ特性向上の効果はそれ以上現れない。
【0152】
Zn単相は、メッキ層内で均一な分布で形成される。
【0153】
本実施例のメッキ鋼板は、前記メッキ層のスパングルの大きさが500μm以下であってもよい。好ましくは、前記メッキ層のスパングルの大きさは、0を超えて300μm以下であってもよい。
【0154】
スパングルの大きさが500μmより大きい場合には、結晶粒が粗大になってメッキ層にクラックが発生する問題が現れる。
【0155】
本実施例のメッキ鋼板は、鋼板上にZn、Mgを含むメッキ層を形成し、前記メッキ層内にMgZn2相の(112)/(201)の比率が0.6以上であってもよい。
【0156】
メッキ層内のMgZn2相の(112)/(201)の比率が0.6より小さい場合には、弱い(201)相の分率が高くてメッキ層内部の亀裂発生の恐れが高く、加工後、耐食性の確保に悪影響を及ぼす問題がある。
【0157】
前記メッキ鋼板は、Zn−Al−Mgメッキ層が形成されたメッキ鋼板であってもよい。
【0158】
このために、前記本実施例のメッキ鋼板は、熱処理された鋼板を0.1〜7重量%のMg、1〜9重量%のAl、残部がZnのメッキ浴を経てメッキされる。メッキ鋼板は、前記メッキ浴を経て、30〜400g/mのメッキ付着量でメッキされる。
【0159】
前記メッキ鋼板は、熱延鋼板または冷延鋼板を素地鋼板として用いることができる。
【0160】
本実施例のメッキ層の厚さは、5〜50μmであってもよい。
【0161】
また、本実施例のメッキ鋼板は、メッキ層内のZn単相の分布がメッキ層の厚さ方向に沿って全体で均一でありうる。
【0162】
従来の場合、冷却速度が速いほど、メッキ層表面でのZn単相の分布比率が増加する傾向を示す。これに対し、本実施例のメッキ鋼板は、メッキ層が急速冷却されることによって、メッキ層の厚さ方向に沿って鋼板との界面から外側表面まで全体的にZn単相が均一な分布をなす。
【0163】
本実施例のメッキ鋼板は、メッキ層の厚さ方向に対するZn単相の分布度のB/Aが0.5〜1.0の値で形成される。ここで、Aは、メッキ層の厚さ方向に対する全Zn単相の分率であり、Bは、メッキ層の外側表層部でのZn単相の分率である。また、表層部は、メッキ層の厚さ方向に沿ってメッキ層の外表面でメッキ層全体厚さの約1/2の地点以内の領域を意味することができる。
【0164】
B/Aの値が0.5より小さい場合には、全体に対して表層部でZn単相の分布が過度に少なくて全体的に不均一な分布をなすことを意味し、B/Aの値が1.0を超える場合には、逆に全体に対して表層部でZn単相の分布が過度に多くて、同じく全体的に不均一な分布をなすことを意味する。このように、B/Aの値が前記範囲を外れて不均一な分布をなす場合、メッキ層の耐亀裂性が低下する問題が発生する。
【0165】
本実施例のメッキ鋼板は、メッキ層表面に形成された一定の形態の接触式加圧冷却パターンを有する。
【0166】
前記パターンは、メッキ鋼板のメッキ層を急速冷却するためにメッキ層に加圧密着して冷気を加える冷却ベルトの表面パターンが転写されて形成される。
【0167】
[実験例1]
一般のGIメッキと、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Mg(マグネシウム)を活用したメッキ(以下、PosMACメッキという)に対して、従来の冷却方式と本実施例による冷却方式でメッキ層を形成してメッキ鋼板を製造し、組織を比較した。
【0168】
ここで、一般のGIメッキ鋼板とは、亜鉛を含むメッキ液でメッキ層を形成した鋼板であり、PosMACメッキは、マグネシウム、アルミニウム、および亜鉛を含むメッキ液でメッキ層を形成した鋼板で、例えば、Alが1〜4重量%、Mgが1〜4重量%、残りがZnであり、不純物が0.1重量%以下で含まれているメッキ液でメッキされ、Zn−Al−Mgメッキ層を形成したメッキ鋼板であってもよい。
【0169】
図9において、実施例は、本発明により20℃/sec以上の冷却速度で急冷して製造されたGIメッキ鋼板とPosMACメッキ鋼板に対するメッキ層のメッキ組織を示しており、比較例は、従来のガスによる冷却方式により10℃/sec以下の冷却速度で徐冷して製造されたGIメッキ鋼板とPosMACメッキ鋼板に対するメッキ層のメッキ組織を示している。
【0170】
図9に示すように、一般のGIメッキ鋼板において、比較例の場合、スパングルの大きさが800〜2,000μmと粗大であるのに対し、実施例の場合、メッキ組織が微細化されて、スパングルの大きさが300〜500μmと結晶粒が非常に微細であることを確認できる。
【0171】
また、PosMACメッキ鋼板の場合にも、実施例の場合、比較例と比較して、メッキ層のZn単相およびMgZn2組織が微細化されたことを確認できる。
【0172】
図10は、PosMACメッキ鋼板に対してメッキ層の断面組織を示している。比較例は、従来の冷却方式により製造された鋼板のメッキ層を示しており、実施例は、本発明により急冷されて製造された鋼板のメッキ層を示している。図10に示すように、実施例の場合、比較例と比較して、メッキ層のZn単相およびMgZn2組織が微細化されたことを確認できる。
【0173】
これにより、本実施例のように、急冷工程によりメッキ鋼板を製造する場合、メッキ層の組織をより微細化することができる。
【0174】
Zn単相の平均粒度と分率も、比較例と比較して、実施例の場合、微細で偏差なく均一に分布して現れることが分かる。Zn単相の分率は、図10のように、光学顕微鏡を用いて観察されたメッキ層の断面組織写真を、イメージアナライザ(Image Analyzer)によりZn単相の面分率を計算して確認した。Zn単相の面積分率は、メッキ層全体の面積を細分し、これを平均して測定した。
【0175】
比較例の場合、Zn単相の平均粒度が粗大でZn単相の分率値が低くなり、位置ごとに偏差が大きいことを確認できる。これに対し、本実施例の場合、メッキ層内のZn単相の平均粒度が5μm以下と微細であり、Zn単相の分率も比較例とは異なって高い値を示し、偏差なく均一に分布していることを確認できる。
【0176】
【表1】
【0177】
前記表1は、図10に示す本実施例のメッキ鋼板に対するメッキ層の厚さ方向に対するZn単相の分布度のB/A値を示している。図10で、左側から右側方向にそれぞれの写真を組織1、組織2、組織3とする。表層部は、メッキ層の厚さ方向に沿ってメッキ層表面からほぼメッキ層の厚さの1/2の地点までの領域に設定して、当該面積でのZn単相の分率であるB値を求めた。
【0178】
表1のように、本実施例によるメッキ鋼板は、冷却速度を高めることによって、B/Aの値が0.5以上1.0以下の値を有し、メッキ層の厚さ方向全体で均等に分布することを確認できる。
【0179】
これに対し、図10の比較例の場合、粗大なZn単相が不均一に生成され、冷却速度を高めると、冷却速度が速ければ速いほど、メッキ層表面でのZn単相の分布比率が増加する傾向を示す。
【0180】
図11は、比較例に対して冷却速度を高めて冷却した場合のメッキ層の断面組織を示している。
【0181】
図11において、実験は、メッキ鋼板に対して従来のガスによる冷却方式を適用して冷却を行い、冷却速度を異ならせて製造した後、メッキ層の断面組織を検査して行われた。
【0182】
図11に示すように、従来のメッキ鋼板の場合、冷却速度が増加するほど、メッキ層の表層部に存在するZn単相の面積が増加することを確認できる。塩水噴霧実験の結果、冷却速度が遅い場合、耐食性がより良好であることが明らかになったが、これは、耐食性に弱いメッキ層のZn相がメッキ層の表面層に少なく存在するためと推定される。
【0183】
このように、比較例の場合、従来のガスによる冷却方式により冷却が行われることによって、冷却速度を高めるとしても、本実施例のように、メッキ層の厚さ方向に沿って鋼板との界面から外側表面まで全体的にZn単相が均一な分布を形成することが難しい。
【0184】
[実験例2]
PosMACメッキ鋼板に対して従来のガスによる徐冷方式で製造した比較例と、本発明により急冷して製造された実施例に対してメッキ層の特性を比較した。
【0185】
図12は、多様な条件で比較例と実施例に対するメッキ層の特性を示す図表であり、図13は、図12の各比較例と実施例に対するメッキ層の結晶構造の変化をX−ray回折試験器を用いて示すものである。また、図14図15は、それぞれ比較例と実施例に対するメッキ層の断面組織を示している。
【0186】
比較例と実施例は、すべて同一成分のメッキ層を有する1.5mmの厚さのメッキ鋼板であり、単に、実施例は、本発明により20℃/sec以上の冷却速度で急冷して製造され、比較例は、従来のガスによる冷却方式により10℃/sec以下の冷却速度で徐冷して製造されたものである。
【0187】
図12に示すように、比較例の場合、メッキ層内のクラックや凹みどの欠陥が頻繁に発生するのに対し、実施例の場合、メッキ層の欠陥が全く発生しなかった。ここで、メッキ層の欠陥は、図12に示されるように、クラック(crack)または凹み部分を意味し、メッキ欠陥の発生頻度は、メッキ層の長さ約10mm以内の領域で発生したクラックまたは凹みの発生回数を意味する。
【0188】
図12図15に示されるように、比較例の場合、メッキ層の組織は、Zn単相の面積分率は低いものの、粒度が5μm以上と粗大であり、メッキ欠陥の発生頻度がメッキ量の増加に伴って増加することが明らかになった。また、Zn単相の分率が低く、微細組織の位置ごとの偏差が大きく現れることが分かる。
【0189】
これに対し、本実施例により製造されるメッキ鋼板の場合、メッキ層組織内のZn単相の平均粒度は3μm以下、バッチ方式の実験であることを考慮した時、5μm以下と結晶粒を微細に形成することができ、MgZn2組織が微細でメッキ層内のクラックや凹みなどの欠陥がないことが分かる。また、比較例とは異なり、Zn単相の分率が高く、位置ごとの偏差がなく均一なメッキ組織を示すことが分かる。
【0190】
このように、比較例の場合、メッキ層の断面組織内のZn単相の平均粒度が非常に大きいのに対し、実施例の場合、メッキ層の断面組織内のZn単相の平均粒度が5μm以下の大きさで非常に微細で均一に形成されることを確認できる。したがって、本実施例によるメッキ鋼板は、メッキ層のZn単相の平均粒度が5μm以下と微細であり、メッキ層の厚さ方向全体で均一に形成して耐亀裂性に優れたメッキ鋼材であることが分かる。
【0191】
また、比較例の場合、メッキ層の冷却効果が低下して弱く粗大なMgZn2の(201)相を多く発生させる。これにより、比較例の場合、すべて弱い(201)相の分率が高くなり、MgZn2相の(112)/(201)の比率が0.4以下と低くなった。このようなメッキ層組織は、メッキ層内部に亀裂(Crack)が発生する恐れが高く、加工後、耐食性の確保に悪影響を及ぼす。
【0192】
これに対し、実施例の場合、急速冷却されて製造され、MgZn2組織が微細であり、MgZn2相の(112)/(201)の比率が0.7以上となった。バッチ方式の実験であることを考慮する時、本実施例の場合、MgZn2相の(112)/(201)の比率が0.6以上5以下と増加することが分かる。
【0193】
したがって、新たな急速冷却工程を適用することによって、メッキ層組織を微細化させ、メッキ層の亀裂発生を抑制させ、メッキ層内のMgZn2相の(112)/(201)の比率を0.6以上に高めて、優れたメッキ層組織を得ることができた。
【0194】
前記図15に示すように、本実施例のメッキ鋼板は、冷却速度を高めることによって、メッキ層内のZn単相の分布がメッキ層の厚さ方向に沿って全体で均一である。
【0195】
しかし、前述したように、比較例の場合、冷却速度を高めると、冷却速度が速ければ速いほど、メッキ層表面でのZn単相の分布比率が増加する傾向を示す。
【0196】
[実験例3]
図16は、PosMACメッキ鋼板に対して、従来のガスによる徐冷方式で製造した比較例と、本発明により急冷して製造された実施例に対する耐食性実験の結果を示している。
【0197】
図16は、比較例と実施例に対して塩水噴霧試験(SST)実施後、800時間経過後を示している。図16に示されるように、比較例と比較して、実施例の場合、耐食性に優れていることを確認できる。
【0198】
[実験例4]
図17は、メッキ層表面に形成された一定の形態の接触式加圧冷却パターンを有する多様な実施例のメッキ鋼板を示している。
【0199】
図17に、前記メッキ鋼板のメッキ層に形成されるパターンの多様な例示が示されている。図17に例示されるように、前記パターンは、製織された布状、網のような多角形状、不規則的な閉曲線形状など多様に形成される。メッキ層に対するパターンはこれに限定されず、多様に変形可能である。
【0200】
本実験では、メッキ鋼板の製造過程でメッキ鋼板を急速冷却させる冷却ベルトの表面に予めパターンを形成し、この冷却ベルトをメッキ鋼板に加圧接触させて冷却させることによって、メッキ層に接触式加圧冷却パターンを形成した。
【0201】
実験の結果、図17に示すように、メッキ鋼板のメッキ層に冷却ベルトに形成されているパターンが転写されて、所望する形態のパターンを形成したメッキ鋼板を製造できることを確認した。
【0202】
以上説明したように、本発明の例示的な実施例が図示および説明されたが、多様な変形と他の実施例が本分野における熟練した技術者によって行われるであろう。このような変形と他の実施例は、添付した請求の範囲にすべて考慮されて含まれて、本発明の真の趣旨および範囲を逸脱しない。
【符号の説明】
【0203】
10:メッキ浴槽
12:シンクロール
20、21:ナイフ
22:ボディ
23:回転体
24:チップ部
25:駆動ベルト
26、42、64:流路
27:ステップモータ
30:ロードセンサ
32:制御部
34:駆動部
40:チルロール
50:冷媒供給部
60:冷却体
62:冷却ロール
66:冷却ベルト
68:駆動シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17