(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
α鎖及び/又はβ可変ドメインのフレームワーク領域、CDR1、CDR2及び/又はCDR3の配列が非天然変異を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のライブラリ。
請求項1〜14のいずれか1項に記載のライブラリから得られる、TRAV12-2遺伝子産物を含むTCR α鎖可変ドメインとTRBV遺伝子産物を含むTCR β鎖可変ドメインとを含んでなる単離された非天然T細胞レセプター(TCR)。
i) TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズするプライマーを用いて、異なるTRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;
ii) TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズするプライマーを用いて、単一のTRBVで異なるβ鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;
iii) TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸を発現ベクターにクローニングし;
iv) TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸を同じ又は異なるベクターにクローニングし;そして
v) ベクターを粒子において発現させることにより、前記プライマーがハイブリダイズする核酸がコードするα鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインを含んでなるTCRから本質的になるライブラリを作製する
ことを含んでなり、工程(i)及び工程(ii)の核酸の少なくともCDR3配列が天然レパートリのものである、複数の異なるTCRをディスプレイする粒子のライブラリを製造する方法。
ペプチド抗原を用いて、請求項1〜14のいずれか1項に記載のライブラリをスクリーニングすることを含んでなる、ペプチド抗原に特異的に結合するT細胞レセプターを取得する方法。
【技術分野】
【0001】
発明の要旨
本発明は、
TRAV12-2遺伝子産物であるα鎖可変ドメインを含むα鎖と、単一のTRBV遺伝子の遺伝子産物であるβ鎖可変ドメインを含むβ鎖とを含んでなるT細胞レセプター(TCR)(ただし、TRAV12-2が天然レパートリからのものである場合、β鎖可変ドメインは天然レパートリからのTRBV6遺伝子産物を含まない)から本質的になる複数の異なるTCRをディスプレイする粒子のライブラリに関する。
【0002】
背景
T細胞レセプター(TCR)は、T細胞による特異的な主要組織適合性複合体(MHC)制限ペプチド抗原の認識を媒介し、免疫系の細胞性因子(cellular arm)の機能化に必須である。ヒトにおいては、MHC分子はヒト白血球抗原(HLA)としても知られ、本明細書においては両用語を同義に用いる。用語「ペプチド抗原」、「ペプチド-MHC」及び「ペプチド-HLA」とは、TRCに認識される抗原をいう。TCRは膜結合型でのみ存在し、このため、TCRは単離が歴史的に非常に困難である。ほとんどのTCRは、2つのジスルフィド連結ポリペプチド鎖α鎖及びβ鎖から構成される。
【0003】
TCRは、本明細書において国際免疫遺伝学(International Immunogenetics;IMGT)のTCR命名法を用いて説明され、TCR配列についてのIMGT公開データーベースに関連する。天然型α-βへテロ二量体TCRはα鎖及びβ鎖を有する。広義には、各鎖は、可変領域、連結領域及び定常領域を含んでなり、β鎖は、通常、可変領域と連結領域との間に短い多様性領域をも含有するが、この多様性領域は連結領域の一部と見なされることが多い。各可変領域は、フレームワーク配列に埋め込まれた3つの超可変CDR(相補性決定領域)を含んでなり、CDR3は抗原認識の主要なメディエータであると考えられている。フレームワーク配列、CDR1配列及びCDR2配列並びに部分的に規定されるCDR3配列により区別される幾つかのタイプのα鎖可変(Vα)領域及び幾つかのタイプのβ鎖可変(Vβ)領域が存在する。VαタイプはIMGT命名法では独特なTRAV番号で指称される。よって、「TRAV12-2」は、独特なフレームワーク配列、CDR1配列及びCDR2配列並びに(TCR間で保存されるアミノ酸配列により部分的に規定されるが、TCR間で変化するアミノ酸配列も含む)CDR3配列を有するTCR Vα領域を規定する。同様に、「TRBV9」は、独特なフレームワーク配列、CDR1及びCDR2配列並びに部分的に規定されるCDR3配列を有するTCR Vβ領域を規定する。α遺伝子座内に54のα可変遺伝子が存在し、そのうちの44遺伝子が機能的であり、β遺伝子座内に67のβ可変遺伝子が存在し、そのうちの42遺伝子が機能的であることが知られている(Scaviner D.及びLefranc M.P. (2000) Exp Clin Immunogenet, 17(2), 83-96;Folch G.及びLefranc M.P. (2000) Exp Clin Immunogenet, (2000) 17(1), 42-54;T cell Receptor Factsbook, (2001) LeFranc and LeFranc, Academic Press, ISBN 0-12-441352-8)。当業者に知られているように、機能性の定義は変わり得る。よって、明確化のために、一貫して、(2015年8月17日のアクセス時の)IMGTウェブサイト(www.imgt.org)に見出される国際免疫遺伝学のTCR命名法を参照する。
【0004】
同様に、TCRの連結領域は独特なIMGT TRAJ及びTRBJ命名法により規定され、定常領域はIMGT TRAC及びTRBC命名法により規定される(Scaviner D.及びLefranc M.P. (2000) Exp Clin Immunogenet, 17(2), 97-106;Folch G.及びLefranc M.P. (2000) Exp Clin Immunogenet, 17(2), 107-14;T cell Receptor Factsbook, (2001) LeFranc and LeFranc, Academic Press, ISBN 0-12-441352-8)。
β鎖多様性領域は、IMGT命名法では略号TRBDで指称され、上記のとおり、TRBD/TRBJ連鎖領域は合わせて連結領域と見なされることが多い。
【0005】
TCR α鎖及びβ鎖をコードする遺伝子プールは、異なる染色体上に位置し、別々のV、(D)、J及びC遺伝子セグメント(これらはT細胞発生の間に再配置により一緒になる)を含有する。このことが、54のTCR α可変遺伝子と61のαJ遺伝子との間又は67のβ可変遺伝子と2つのβD遺伝子と13のβJ遺伝子との間で生じる多くの可能な組換え事象に起因するT細胞α鎖及びβ鎖の非常に高い多様性を導く。組換えプロセスは正確でなく、CDR3領域内に更なる多様性を導入する。各α及びβ可変遺伝子は、対立遺伝子多形(allelic variant)(IMGT命名法においてそれぞれTRAVxx
*01及び
*02又はTRBVx-x
*01及び
*02と指称される)も含んでなり得、よってバリエーションの量が更に増える。同様に、TRBJ配列の幾つかは2つの既知のバリエーションを有する。なお、限定詞「*」なしは、該当配列には1つの対立遺伝子しか知られていないことを意味する。組換え及び胸腺選択から生じるヒトTCRの天然レパートリは、約10
6の独特なβ鎖配列を含むと見積もられるが、これはCDR3の多様性から決定されており(Arstila,T.P.ら(1999) Science,286(5441),958-61)、更に高い可能性がある(Robins,H.S.ら(2009) Blood,114(9),4099-4107)。各β鎖は少なくとも25の異なるα鎖と対合すると見積もられ、よって更なる多様性を生じる(Arstila,T.P.ら(1999) Science,286(5441),958-61)。
【0006】
したがって、本明細書及び特許請求の範囲において、用語「TCR α可変ドメイン」とは、TRAV及びTRAJ領域;TRAV領域のみ;又はTRAV及びTRAJ領域の一部の連鎖をいい、用語「TCR α定常ドメイン」とは、細胞外TRAC領域又はC末端短縮型若しくは全長型のTRAC配列をいう。同様に、用語「TCR β可変ドメイン」とは、TRBV及びTRBD/TRBJ領域;TRBV及びTRBD領域のみ;TRBV及びTRBJ領域のみ;又はTRBV並びにTRBD及び/又はTRBJ領域の一部の連鎖をいい、用語「TCR β定常ドメイン」とは、細胞外TRBC領域又はC末端短縮型若しくは全長型のTRBC配列をいう。
IMGT命名法により規定される独特な配列は、広く知られており、TCR分野の当業者に利用可能である。例えば、それらはIMGTの公開データベースに見出すことができる。「T cell Receptor Factsbook」(2001) LeFranc and LeFranc,Academic Press,ISBN 0-12-441352-8もまた、IMGT命名法により規定される配列を開示しているが、公開日及びその後のタイムラグのため、その情報は、時に、IMGTデータベースを参照して確認する必要がある。
【0007】
例えばTCR又はその可溶性アナログを開発して、有望な治療薬の基礎を提供することが可能となるように、特定の抗原に特異的に結合するα鎖及びβ鎖配列から本質的になるTCRを同定することは長く望まれていた。同定したTCRが認識する抗原は、疾患、例えばガン、ウイルス感染、炎症性疾患、自己免疫疾患、寄生虫感染及び細菌感染と関連し得る。したがって、そのような治療薬は前記疾患の治療に使用することができる。
更に、一旦TCRが同定され、その配列が決定されれば、必要に応じて、親和性又は半減期の増大を生じる変異(例えばWO2012/013913に記載のもの)を導入することができる。
【0008】
伝統的に、疾患関連抗原(例えばガン、ウイルス、自己免疫、炎症性、寄生虫又は細菌の抗原)に特異的に結合するTCRを同定する試みは、ボランティアドナーから採取した血液サンプルの使用に限られてきた。このようなサンプルが、疾患関連抗原に結合するTCR及び対応するT細胞を同定するために用いられる。このアプローチは、一般に、少なくとも20のドナーに合理的な成功期待を有することを求める。このプロセスは長時間及び労力を要し、抗原結合性TCRを同定できる保証もない。機能的TCRが同定されも、抗原に対する親和性が弱く、特異性が低く及び/又はインビトロで正確にフォールディングしないことが多い。スクリーニング可能であるT細胞の多様性は、ドナー内でのT細胞の多様性に制限される。幾つかの疾患関連抗原(ガン抗原の大部分を含む)は、自己抗原である;胸腺選択が自己抗原を認識するTCRの除去に働くので、疾患関連抗原に特異的なTCRは、ドナーの天然レパートリに存在せず、さもなければ、抗原に対する親和性が弱い可能性がある。
【0009】
抗原結合特異性を有する新たなTCRの単離用のライブラリを設計する試みは、数年間続いている。TCRライブラリの創製は匹敵する抗体ライブラリより遥かに困難である。なぜならば、TCR鎖は安定性が低く、正確にディスプレイしないことが多いからである。TCRライブラリの構築に関係している複雑性は膨大である。(天然レパートリに見出される)CDR3長のバリエーションは保持することが好ましい。ライブラリの相当な割合が、一般に、停止コドンを喪失し、フレームシフトが起き、フォールディングに問題があり、簡単にはHLA複合体に結合し得ないTCR鎖組合せである。膨大な数の可変α及びβ遺伝子並びにJ及びD遺伝子を考慮すれば、一緒になって抗原性ペプチドに必要な特異性で結合するTCRを形成する、フォールディングする機能的α鎖及びβ鎖を作製し、同定できる蓋然性は極めて低い。
【0010】
ライブラリ構築に際して幾つかの試みがなされている。本明細書に記載する第1のものは、合成TCRライブラリに基づく;すなわち、ライブラリ中のTCRは、ランダム変異誘発を利用してインビトロで導入された変異を、代表的にはCDR内に含有する。したがって、このライブラリに含まれる個々のTCR鎖のいずれかの配列は、天然レパートリに見出されるものに相当しない可能性がある。ライブラリ全体は、或る特定の変異が合成ライブラリに存在することのみに起因して天然レパートリに相当しないこととなる。以前に開示された合成ライブラリにおいては、ライブラリの全てのTCRが同じα及びβフレームワーク配列を、ランダムに創製されたCDR配列と共に含むように、1つの既知TCRのα鎖及びβ鎖のCDR領域にランダム変異が導入された。更なる分析により、このライブラリでは抗原特異的TCRの同定に成功しないことが証明された。具体的には、TCR鎖の大部分が種々の理由から非機能的であることが判明した:多くの場合、配列は短縮化されたか、又はフレームシフトを含んでいた。他の場合では、全長TCR鎖が同定されたが、それらは正確にフォールディングできなかった;最終的に、このライブラリから単離したTCRは、更なる試験で、抗原に特異的に結合することができなかった。この合成ライブラリにおける非天然の多様性は、ライブラリが成功しない理由の1つであり得ると考えられる。非天然変異の導入は、正しいTCR機能に干渉する可能性がある。更に、CDR3に導入した多様性は、天然TCRレパートリと比較して制限されている可能性がある。天然レパートリ中のCDR3配列長が実証しているように、T細胞でのTCR組立ての間にCDR3配列の膨大な多様性が生じる。特定位置での変異をライブラリの基礎とすることにより、CDR3配列の多様性は、特にCDR3配列長に関して、非常に限定的である可能性がある。最後に、非天然TCR配列はインビボで起こる胸腺選択プロセスに付されない。
【0011】
理論に拘束されることは望まないが、これら理由は、特異的結合性TCRが同定されることが望まれる(下記のとおりの)ライブラリを構築する試みが成功しなかった訳の説明に幾らか助けになる。
WO2005/116646は、既知の(天然)TCRに基づくライブラリを記載する。ここで、6つのCDRは個々に又は組合せで変異されている、すなわち、ライブラリの全てのTCRは非天然であるが、天然に同定されたTCRフレームワーク領域に基づいている。更に、WO 2005/114215はそのようなライブラリから得られる生成物に関する。このライブラリは、(当初のTCRが結合する抗原に加えて)他の幾つかの抗原を用いてスクリーニングされた。しかし、その結果、TCRを生成し得る全長TCR配列が唯1つ単離された。更なる実験で、このTCRは交差反応性であることが判明した。
よって、インビトロ変異TCRに基づくライブラリは構築されているが、有用であるに十分な抗原結合特異性を有する新たなTCRの単離は可能になっていない。
(下記のとおり)天然に誘導されたα鎖及びβ鎖をランダムに混合した全体的に天然のレパートリに基づくライブラリも構築されたが、抗原に特異的に結合するTCRの同定に成功していない。
【0012】
具体的には、WO2005/116074は、各々がその表面に、天然型TCR α可変ドメイン配列又は天然型TCR β可変ドメイン配列を含んでなるポリペプチドをディスプレイする核タンパク質のライブラリを記載する。この刊行物に記載されたライブラリは、幾つかのα鎖及びβ鎖から構築された;43のVαクラス遺伝子及び37のVβクラス遺伝子が、該ライブラリの創製に用いられたmRNAプールから増幅された。この刊行物では、3回のファージディスプレイにより、試験したペプチドに結合するクローンが単離されたことが述べられている。これらクローンは、ELISAスクリーニングの間に強力なELISAシグナルで決定されるように同定されたと記載されている。しかし、強力なELISAシグナルは、これらクローンを代替のペプチド-HLAに対する結合について試験したときにも観察された;したがって、このTCRクローンはペプチドに特異的ではなかった。更なる分析により、このライブラリは、TCRを生成し得ないTCR鎖及び正確にフォールディングできないTCRを高い割合で含むという、合成ライブラリに関して上述したものと同様の問題が示された。よって、この刊行物に記載されたライブラリは、新たな抗原結合性TCRの同定に有用ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、α鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインを含んでなる機能的TCRのより確実性のある同定を可能にするTCRライブラリであって、有用なTCRを同定するために種々のペプチド抗原を用いてスクリーニングされ得るライブラリの必要性が存在している。同定したTCRは、天然の親和性で使用することができるか、又は、例えばファージディスプレイ成熟において、親和性を増大させるために使用し得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、第1の観点において、TRAV12-2遺伝子産物であるα鎖可変ドメインを含むα鎖と、単一のTRBV遺伝子の遺伝子産物であるβ鎖可変ドメインを含むβ鎖とを含んでなるT細胞レセプター(TCR)(ただし、TRAV12-2が天然レパートリからのものである場合、β鎖可変ドメインは天然レパートリからのTRBV6遺伝子産物を含まない)から本質的になる複数の異なるTCRをディスプレイするライブラリを提供する。可変ドメインは上記のとおりである。すなわち、可変ドメインはそれぞれ、完全な又は部分的なTRAJ又はTRBD及び/若しくはTRBJ領域も含んでよい。
【0015】
単一のTRBV遺伝子は下記のうちの1つであり得る:
【表1-1】
【表1-2】
【0016】
α及び/又はβ可変ドメインのCDR3配列は、天然レパートリから得てもよい。或いは、α及び/又はβ可変ドメインのCDR3配列は人工的に設計されたものであってもよく、非天然変異を含んでいてもよい。フレームワーク、CDR1及び/又はCDR2は、非天然変異を含んでいてもよい。
α鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインは、単一ポリペプチド鎖としてディスプレイされてもよい。
TCRは粒子上にディスプレイされる。TCRは、α鎖定常領域とβ鎖定常領域との間に非天然型ジスルフィド結合を含んでいてもよい。このような非天然型ジスルフィド結合は、例えばWO 03/020763に記載されている。或いは、粒子上にディスプレイされるTCRは、α鎖定常領域とβ鎖定常領域との間に天然型ジスルフィド結合を含んでいてもよい。
【0017】
各α鎖及び各β鎖は、(好ましくは異種性である)二量体化ドメインを含んでなってもよい。このような異種性ドメインは、当該分野において公知のように、ロイシンジッパー、5H3ドメイン若しくは疎水性プロリンリッチカウンタードメイン又はその他の類似する様式であってもよい。
ライブラリを形成する粒子はファージ粒子であってもよい。
或いは、ライブラリはリボソームのライブラリであってもよい。或いは、ライブラリは酵母ディスプレイライブラリであり得、よって粒子は酵母細胞であってもよい。粒子は哺乳動物細胞であってもよい。ライブラリは、ペプチド抗原を用いるスクリーニングに適切であり得る。このようなペプチド抗原は、HLA、例えば、HLA-A、B又はC、例えばHLA-A2を含み得る。
【0018】
本発明の1つの更なる観点は、本発明の第1の観点のライブラリから得られる、TRAV12-2遺伝子産物を含むTCR α鎖可変ドメインと、単一のTRBV遺伝子の遺伝子産物であるβ鎖可変ドメインを含むTCR β鎖可変ドメインとを含んでなる単離されたT細胞レセプター(TCR)を提供する。TCRは可溶性であってもよく、細胞での発現に適切であってもよい。本発明は、前記TCRのα鎖可変ドメイン及び/又はβ鎖可変ドメインをコードする核酸もまた包含する。
1つの更なる観点として、本発明は、ペプチド抗原に特異的に結合するTCRを同定するための第1の観点のライブラリの使用を提供する。ペプチド抗原は、それが結合するTCRについて本発明のライブラリをスクリーニングするために使用され得る。ペプチド抗原は、HLA-A(例えば、HLA-A、B、C、G又はE)又は非古典的HLA(例えばCD1)を含んでいてもよい。ペプチド抗原はHLA-A2を含んでいてもよい。
【0019】
1つの更なる観点は、ペプチド抗原を用いて、第1の観点のライブラリをスクリーニングすることを含んでなり、a) 標的としてペプチド抗原を用いて、ライブラリをパニングし;b) 工程a)を1回又は2回以上繰返し;c) 工程a)又はb)で同定したファージクローンをスクリーニングし;そしてd) ペプチド抗原に特異的に結合するTCRを同定する ことを含んでなる、ペプチド抗原に特異的に結合するTCRを取得する方法を提供する。ペプチド抗原は、HLA-A、B、C、G若しくはE、又は非古典的HLA(例えばCD1)を含んでいてもよい。ペプチド抗原はHLA-A2を含んでいてもよい。
【0020】
1つの更なる観点において、本発明は、i) 異なるTRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;ii) 単一のTRBV遺伝子の異なるTRBV β鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;iii) TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸を発現ベクターにクローニングし;iv) TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸を同じ又は異なるベクターにクローニングし;そしてv) ベクターを粒子において発現させることにより、前記核酸がコードするα鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインを含んでなるTCRから本質的になるライブラリを作製する ことを含んでなる、複数の異なるTCRをディスプレイする粒子のライブラリを製造する方法に関する。
【0021】
i) TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズするプライマーを用いて、異なるTRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;ii) TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズするプライマーを用いて、単一のTRBV遺伝子の異なるTRBV β鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;iii) TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸を発現ベクターにクローニングし;iv) TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸を同じ又は異なるベクターにクローニングし;そしてv) ベクターを粒子において発現させることにより、前記プライマーがハイブリダイズする核酸がコードするα鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインを含んでなるTCRから本質的になるライブラリを作製する ことを含んでなる、複数の異なるTCRをディスプレイする粒子のライブラリを製造する本発明の更なる方法が提供される。
【0022】
単一のTRBV遺伝子は下記のうちの1つであり得る:
【表2-1】
【表2-2】
【0023】
フォワードプライマーは、TRAV12-2遺伝子座又は選択されたTRBV遺伝子座にハイブリダイズするように設計されてもよい。リバースプライマーは、それぞれα又はβ定常領域に少なくとも部分的にハイブリダイズし、得られるPCR産物が可変領域、連結領域領域及び定常領域の少なくとも一部までを含むように設計されてもよい。転写、翻訳又は翻訳後事象は、短縮化、又は連結及び/若しくは定常領域(β鎖配列の場合には多様性領域を含む)の幾らか若しくは全ての欠失を生じてもよい。
【0024】
TRAV12-2又はTRBVをコードする、工程(i)及び/又は工程(ii)の複数の核酸の各核酸の全て又は一部は、合成により得られてもよく、及び/又は人工的に設計されてもよい。
フレームワーク領域、CDR1、CDR2及び/又はCDR3の全て又は一部は、合成により得られてもよく、及び/又は人工的に設計されてもよい。工程(i)及び工程(ii)の核酸のうち少なくともCDR3配列は、人工的に設計されてもよく、又は天然レパートリからのものであってもよい。
工程(i)及び工程(ii)の核酸配列は、天然レパートリから得られてもよく、又は部分的若しくは完全に人工的に設計されてもよい。
【0025】
幾つかの例において、工程iii)の前に、非天然変異を核酸配列に導入してもよい。変異は、工程i)及び/若しくはii)の後又は工程iii)及び/若しくはiv)の後に導入してもよい。
本発明のライブラリを製造する方法のいずれにおいても、TCR α鎖可変ドメイン及びTCR β鎖可変ドメインは、好ましくは、同じベクターから発現される。すなわち、α鎖及びβ鎖可変ドメインの各々をコードする核酸は、同じベクターにクローニングされる。α鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインは単一ポリペプチドとして又は別個のポリペプチドとして発現され得る。
【0026】
本発明は、1つの更なる観点として、ペプチド抗原を用いて、本発明の第1又は第2の観点のライブラリをスクリーニングすることを含んでなる、ペプチド抗原に特異的に結合するT細胞レセプターを取得する方法を提供する。ペプチド抗原は、HLA-A、B、C、G若しくはE、又は非古典的HLA(例えばCD1)を含んでいてもよい。ペプチド抗原はHLA-A2を含んでいてもよい。
本発明に従うTCRをその表面にディスプレイする粒子もまた本発明の範囲に含まれる。
【0027】
本発明のライブラリは天然に存在しない。なぜならば、本発明のライブラリは、天然に存在せず、しかも本明細書で使用される意味での「単離された」と考えられるものでもないTCRを含むからである;したがって、本発明のTCRも同様に、天然に存在せず、しかも本明細書で使用される意味での「単離された」と考えられるものでもないので、特許に値する主題である。同様に、本発明の細胞及び粒子も特許に値する主題である。なぜならば、本発明のTCRをその表面にディスプレイするか又は発現することにより、当該細胞又は粒子は、天然に存在せず、しかも本明細書で使用される意味での「単離された」と考えられるものでもないからである。
【0028】
本開示、特に特許請求の範囲及び/又はパラグラフにおいて、「含んでなる」や「含む」などのような用語は、その用語が通常有する意味を有することができ、例えば、前記用語は「含有する」や「包含する」ことも意味することができること;及び「から本質的になる」などのような用語はそれらに一般に帰せられる意味を有することができ、例えば、明示されていない要素を許容するが、先行技術に見出されるか又は本発明の基本的な若しくは新規な特徴に影響を及ぼす要素は排除する。
これらの及び他の実施形態は、以下の説明において開示されるか、又は以下の説明から自明であり、以下の説明に包含される。
【0029】
図面の簡単な説明
以下の詳細な説明は、例示としてのものであり、記載の特定の実施形態のみに本発明を制限することを意図するものではない。以下の詳細な説明は、添付図面との組合せで十分に理解され得る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明によれば、
TRAV12-2遺伝子産物であるα鎖可変ドメインを含むα鎖と、単一のTRBV遺伝子の遺伝子産物であるβ鎖可変ドメインを含むβ鎖とを含んでなるT細胞レセプター(TCR)(ただし、TRAV12-2が天然レパートリからのものである場合、β鎖可変ドメインは天然レパートリからのTRBV6遺伝子産物を含まない)から本質的になる複数の異なるTCRをディスプレイするライブラリが提供される。
【0032】
単一のTRBV遺伝子は下記表に列挙された既知のTRBV遺伝子の1つであってもよい。
【表3-1】
【表3-2】
【0033】
具体的には、TRBV遺伝子は、TRBV5、TRBV7、TRBV11-1、TRBV11-3、TRBV14、TRBV20-1、TRBV27又はTRBV30であり得る。
好ましくは、TRBV遺伝子は機能的であり得る。
「から本質的になる」とは、ライブラリ中の多数のTCRがTRAV12-2及び特定のTRBVを含んでなるが、少数のTCRは、ライブラリ作製時のプライマーの非特異的ハイブリダイゼーション又はα若しくはβ可変領域遺伝子中の遺伝子間で相同性が高い領域に起因して異なるα鎖又はβ鎖可変ドメインを含んでもよいことを意味する。多数は下記のとおりの量として規定し得る。
【0034】
複数のTCRは、その80%が、TRAV12-2遺伝子産物を含むα鎖可変ドメインとTRBV遺伝子産物を含むβ鎖可変ドメインとを含んでなるTCRからなってもよい。複数のTCRは、その85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%が、TRAV12-2遺伝子産物を含むα鎖可変ドメインと特定のTRBV遺伝子産物を含むβ鎖可変ドメインとを含んでなるTCRからなってもよい。
複数のTCRは、残る20%以下が、TRBV β鎖可変ドメイン遺伝子産物と対合した異なるα鎖可変ドメイン遺伝子産物と、TRAV12-2可変ドメイン遺伝子産物と対合した異なるβ鎖可変ドメイン遺伝子産物とを含んでなってもよいし、又は異なるTRBV遺伝子産物と対合した異なるTRAV遺伝子産物を含んでなってもよい。
【0035】
したがって、本発明のライブラリは、各々が下記のα鎖及びβ鎖V、J(D)及びC遺伝子を利用する複数のTCRを含有してもよい。
α鎖 - TRAV12-2/TRAJxx/TRAC;及び
β鎖 - TRBVyy/TRBDx/TRBJxx/TRBC1、TRBC2又はC1及びC2のキメラ
ここで、xxは、それぞれ61のαJ遺伝子又は13のβJ遺伝子のいずれかであり、Dxは2つのβD遺伝子のいずれかを表し、yyはTRBV遺伝子のいずれか1つである。
上記のとおり、J、D又はC領域は各々、完全に若しくは部分的に存在してもよいし、又は存在しなくてもよい。
好ましくは、V、D,J及びC遺伝子はヒトのものである。
【0036】
遺伝子産物とは、示した遺伝子の核酸配列によりコードされるポリペプチド(翻訳後修飾を含んでいてもよい)を意味する。当業者に公知のように、各TCR α鎖又はβ鎖可変ドメイン遺伝子は、上記のようにCDR3領域にバリエーションを含む。このことは、TRAV12-2又は特定のTRBVの遺伝子産物もまた大きく変化することを意味する。
【0037】
α鎖及び/又はβ鎖配列は、天然レパートリから取得されてもよい。「天然レパートリからの」とは、複数のTCR内の少なくともCDR3配列が、例えば、配列長及びアミノ酸組成に関して、天然レパートリのものと直接対応することを意味する。この場合、α鎖及びβ鎖可変ドメインは、ヒトドナーから増幅されたDNA配列から発現されてもよい。換言すれば、ライブラリのTCRのα及び/又はβ CDR3ドメインの多様性は、インビボでのT細胞発生の間に天然に生じたものである。更に、このことは、ライブラリ中の全てのα鎖及びβ鎖の配列が胸腺選択の間に選択されたものであることを意味する。ライブラリ創製の間に起こるα鎖及びβ鎖のランダムな組合せは、インビボ(すなわちドナー)に元々存在するものに匹敵する代替のαβ鎖組合せレパートリをもたらし得る。DNA配列は、例えばドナーのmRNAからcDNAを作製することにより、間接的に取得してもよい。その後、cDNA配列をテンプレートとして用いてDNA配列を作製し、該DNA配列から複数の異なるTCRを作製してもよい。
【0038】
或いは、α鎖及び/又はβ鎖配列は、人工的に設計されてもよい。「人工的に設計」とは、複数のTCR内のCDR3配列の多様性が天然レパートリに対応していなくてもよいことを意味する。この場合、配列は、例えば、CDR3配列内の規定位置に組み込まれた縮重オリゴヌクレオチド(例えば、NNK、NNN又はNNS)を使用するDNA合成を用いて又は下記のような非天然変異の導入により、作製してもよい。好ましくは、ライブラリ内での人工的に設計されたCDR3配列の多様性は、例えば配列長及びアミノ酸組成のバリエーションに関して、天然レパートリのものに類似するように設計される。好ましくは、ライブラリ内での人工的に設計されたCDR3配列の総合的な多様性は、天然レパートリから得られるものより大きい。
【0039】
したがって、「人工的に設計」とは、配列が、天然レパートリからのTRAV12-2遺伝子産物又は天然レパートリからの特定のTRBV遺伝子産物のアミノ酸配列と同じか又は類似する(すなわち、90%配列同一性を有する)ことを意味する。配列は、天然レパートリに見出されるいずれかのTRAV12-2又はTRBV遺伝子産物の配列に対して100%同一でなくてもよい。配列は、例として、そして当業者に公知のように、コドン使用頻度、フォールディング能力、安定性、切断部位の除去、グリコシル化若しくはアミド化又は他の翻訳後修飾部位の除去/付加について最適化されていてもよい。このような修飾は、アミノ酸置換、付加又は欠失であってもよく、すなわち、1又は2以上の非天然変異を導入することであってもよく、このことは「人工的に設計」の定義に含まれる。置換は、当業者が理解するように、保存的アミノ酸置換又は非保存的アミノ酸置換であり得る。代表的には、この修飾は、TRAV12-2及び/又はTRBV遺伝子産物のフレームワーク領域内で生じる。
【0040】
非天然変異は、当該分野において公知である任意の方法により導入されてもよい。非天然変異はランダムに生成してもよいし、具体的に規定されてもよいし、その両方であってもよい。例えば、ランダムに生成する変異は、天然型アミノ酸コーディング配列が他の全て天然に存在するアミノ酸のコーディング配列で置換される部位飽和変異誘発を用いて規定位置に導入されてもよい;このことにより、規定位置での更なるライブラリ多様性が創出される。この方法には、興味対象のDNAを、プライマーとして縮重合成オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅により置換することが含まれてもよい。好ましくは、このような変異は、α鎖及び/又はβ鎖可変ドメインのCDR領域内でなされる。択一的又は追加的に、規定の変異(挿入及び欠失を含む)が、例えば市販キット(例えば、Stratagene社のQuik Change Site Directed Mutagensis Kit)を用いて或る特定の位置に導入されてもよい。
【0041】
ライブラリは、α鎖可変ドメイン又はβ鎖可変ドメインの10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%が非天然変異を含んでなるTCRをディスプレイしてもよい。
本発明のライブラリは、好ましくは、αβ TCR鎖の組合せをディスプレイする少なくとも1×10
8粒子を含んでなる。
ライブラリはファージ粒子のライブラリであってもよい。ファージディスプレイはWO 2004/044004に記載されている。
或いは、ライブラリはリボソームのライブラリである。リボソームディスプレイは当該分野において公知である。粒子は、完全なリボソーム複合体であってもよいし、その部分であってもよい。
【0042】
酵母ディスプレイシステムを用いてもよく、このことはライブラリが酵母細胞のライブラリであってもよいことを意味する。
TCRライブラリの創製に適切な更なるディスプレイ法は、哺乳動物細胞ディスプレイである。このシステムはレトロウイルスベクターを利用して、TCR α鎖及びβ鎖をTCRネガティブT細胞ハイブリドーマに導入する。この方法はChervinら(2008) J Immunol Methods,339,175-84;及びKesselsら(2000) Proc Natl Acad Sci U S A,97,14578-83)に更に記載されている。
記載されているようなヘテロ二量体又は単鎖TCRをディスプレイすることができる任意の粒子ライブラリが本発明に包含される。
【0043】
単鎖TCRは、次のタイプのαβ TCRポリペプチドを含む:Vα-L-Vβ、Vβ-L-Vα、Vα-Cα-L-Vβ、Vα-L-Vβ-Cβ又はVα-Cα-L-Vβ-Cβ(これらは、場合により、逆方向の並びであってもよい;式中、Vα及びVβはそれぞれTCR α及びβ可変領域であり、Cα及びCβはそれぞれTCR α及びβ定常領域であり、Lはリンカー配列である)。単鎖TCRは、WO2004/033685;WO98/39482;WO01/62908;Weidanzら(1998) J Immunol Methods 221(1-2): 59-76;Hooら(1992) Proc Natl Acad Sci U S A 89(10): 4759-4763;Schodin (1996) Mol Immunol 33(9): 819-829に更に説明されている。
【0044】
α鎖及び/又はβ鎖定常ドメインは、天然型/天然に存在するTRAC/TRBC配列に比して短縮されていてもよい。加えて、存在する場合、TRAC/TRBCは改変を含有してもよい。α鎖細胞外配列は、天然型/天然に存在するTRACに対して、TRACのアミノ酸T48(IMGT番号付けによる)がC48で置換される改変を含んでいてもよい。同様に、β鎖細胞外配列は、天然型/天然に存在するTRBC1又はTRBC2に対して、TRBC1又はTRBC2のS57(IMGT番号付けによる)がC57で、C75がA75で、N89がD89で置換される改変を含んでいてもよい。天然型α鎖及びβ鎖細胞外配列に対するこれらシステイン置換によって、リフォールディングした可溶性TCR、すなわち細胞外α鎖及びβ鎖のリフォールディングにより形成されたTCRを安定化する非天然型鎖間ジスルフィド結合の形成が可能になる。この非天然型ジスルフィド結合により、正確にフォールディングしたTCRのファージ上でのディスプレイが容易となる(Li,Y.ら,Nat Biotechnol 2005:23(3),349-54)。加えて、安定なジスルフィド結合可溶性TCRの使用により、結合親和性及び結合半減期のより簡便な評価が可能になる。代替の置換はWO03/020763に記載されている。或いは、α及びβ定常ドメインは、天然に見出されるものに相当するジスルフィド結合により連結されていてもよい。
【0045】
ヘテロ二量体TCRを更に又は択一的に安定化するために、各α鎖及び各β鎖は、天然型TCR鎖配列に対して異種であり得る二量体化ドメインを含んでなってもよい。
具体的には、二量体化ドメインはロイシンジッパーであってもよい。この用語は、特異的な様式で互いに相互作用してヘテロ二量体を形成する螺旋状ペプチド対を記述する。各ジッパーペプチドの一方の側に沿って相補的な疎水性残基が存在することから、相互作用が生じる。このペプチドの性質は、ヘテロ二量体の形成がホモダイマーの螺旋の形成より非常に好ましいというものである。ロイシンジッパーは、合成であっても、天然に存在するものであってもよく、例えばWO99/60120に記載されているものであってもよい。代替の二量体化ドメインとしては、ジスルフィド架橋形成性エレメントが挙げられる。或いは、二量体化ドメインは、シグナル伝達に関与するタンパク質に見られるタンパク質-タンパク質相互作用を担う疎水性/プロリンリッチカウンタードメイン及びSH3ドメインにより提供されてもよい(Schlessinger(Schlessinger,J.,Curr Opin Genet Dev.1994 Feb;4(1):25-30)により概説されている)。シグナル伝達カスケードに関与するタンパク質に見出される他の天然のタンパク質-タンパク質相互作用は、翻訳後改変アミノ酸とその改変残基を特異的に認識するタンパク質モジュールとの間の結合に基づく。この翻訳後修飾アミノ酸及びタンパク質モジュールが、本発明に従うライブラリのTCR鎖の二量体ドメインを形成してもよい。
【0046】
理論に拘束されることはないが、本発明のライブラリのサイズ(すなわち、本発明のライブラリで表されるα鎖及びβ鎖可変ドメイン遺伝子の数が完全な(又はほぼ完全な)レパートリと比較して減少していること)が、本発明のライブラリから特異的な機能性TCRを同定できる1つの可能性のある理由であると考えられる。以前に記載された、より大きな「天然」ライブラリでは、或る特定のα鎖は或る特定のβ鎖と対合せず、このためライブラリのほとんどが非機能的である可能性がある。或る特定の鎖タイプはファージ表面で正確にフォールディングしない可能性もある。各α鎖が「理想的な」β鎖と対合するに十分な頻度で発現せずディスプレイもされず(逆もいえ)、このためα鎖及びβ鎖を含んでなる特異的な機能性TCRを同定できる確率が低い可能性もある。本発明者らは、TRAV12-2鎖が、任意の単一β鎖と対合させた場合、有用なTCRをルーチンで同定することができるライブラリの作製に特に適切であることを見出した。
【0047】
1つの更なる観点として、本発明は、本発明の第1の観点に従うライブラリから単離された、TRAV12-2遺伝子産物を含むTCR α鎖可変ドメインとTRBV遺伝子産物を含むTCR β鎖可変ドメインとを含んでなる単離されたT細胞レセプター(TCR)を提供する。
「単離(した又はされた)」とは、TCRがその天然環境から取り出されていること、すなわち、インビボでT細胞上に天然にディスプレイされているTCRではないことを意味する。
【0048】
TCRはペプチド抗原に特異的に結合してもよい。本発明のライブラリから取得したTCRは、例えばELISA又はBiaCore(これらに限定されない)で測定する場合、強い親和性及び高い特異性でペプチド抗原に結合してもよい。TCRは、結合親和性及び/又は半減期が増大するように、更なる親和性成熟を経て取得してもよい。TCRは可溶性であってもよい。すなわち、TCRは、例えばWO 03/020763に記載のように、膜貫通ドメインから切断されていてもよい。TCRは上記のように非天然型ジスルフィド結合を含有していてもよい。TCRは、蛍光標識、放射性標識、酵素、核酸プローブ及び造影剤を含む(これらに限定されない)検出可能な標識に、又は免疫モジュレータ、放射活性化合物、酵素(例えばパーフォリン)若しくは化学療法剤(例えばシスプラチン)(WO2010/133828)を含む(これらに限定されない)治療剤に融合されてもよい。TCRは、細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは免疫細胞、更により好ましくはT細胞の表面に非天然に発現されてもよい。
【0049】
結合親和性(平衡定数K
Dに反比例する)及び結合半減期(T1/2と表される)は、任意の適切な方法により測定することができる。TCRの親和性が2倍になればK
Dは1/2になることが理解される。T1/2はln2/解離速度(k
off)として算出する。よって、T1/2が2倍になればk
offは1/2になる。TCRのK
D値及びk
off値は、通常、可溶形態のTCR、すなわち疎水性膜貫通ドメイン残基を除去するように短縮された形態のTCRについて測定する。したがって、所与のTCRは、その可溶形態がペプチド抗原に関して結合親和性及び/又は結合半減期を有するという要件を満たす場合には、該要件を満たすと理解すべきである。好ましくは、所与のTCRの結合親和性又は結合半減期は、同じアッセイプロトコルを用いて規定温度で数回測定して、結果の平均をとる。より好ましくは、結合親和性又は結合半減期は、温度25℃で表面プラズモン共鳴により測定する。好ましい方法を実施例6に示す。
【0050】
本発明の目的のためには、上記のとおり、TCRは、少なくとも1つのTCR α可変ドメイン及び少なくとも1つのTCR β可変ドメインを有する部分である。一般に、TCRは、TCR α可変ドメイン及びTCR β可変ドメインの両方を含んでなる。TCRは、αβへテロ二量体であってもよいし、単鎖形式であってもよい。単鎖形式とは、単一ポリペプチドが、例えばWO 2004/033685に記載されるように、α鎖及びβ鎖の両方を含有することを意味する。
単鎖TCRは、次のタイプのαβ TCRポリペプチドを含む:Vα-L-Vβ、Vβ-L-Vα、Vα-Cα-L-Vβ、Vα-L-Vβ-Cβ又はVα-Cα-L-Vβ-Cβ(これらは、場合により、逆方向の並びであってもよい;式中、Vα及びVβはそれぞれTCR α及びβ可変領域であり、Cα及びCβはそれぞれTCR α及びβ定常領域であり、Lはリンカー配列である)。或いは、TCRは、一対のC末端二量体化ペプチド(例えばロイシンジッパー)によりTCR β鎖細胞外ドメインと二量体化したTCR α鎖細胞外ドメインを含んでなってもよい。このようなTCRはWO 99/60120に記載されている。養子療法における使用のためには、αβへテロ二量体TCRは、例えば、細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインの両方を有する全長鎖として、細胞(例えばT細胞)にトランスフェクトされてもよい。所望であれば、それぞれの定常ドメインの残基同士間に導入されたジスルフィド結合が存在してもよい(例えばWO 2006/000830を参照)。或いは、α及びβ定常ドメインは、天然に見出されるものに相当するジスルフィド結合により連結されていてもよい。
【0051】
本発明のTCRのα鎖可変ドメイン及び/又はβ鎖可変ドメインをコードする核酸も本発明に含まれる。α鎖及びβ鎖は、別個の核酸から発現してもよいし、1つの核酸分子から発現してもよい。同じ核酸分子から発現する場合、α鎖及びβ鎖は独立のポリペプチドとして発現してもよく、単鎖として発現してもよい。
核酸は、TRAV12-2配列及び/又はTRBV核酸配列を含んでなる。核酸はまた、TRAJ配列及び/又はTRBD/TRBJ配列を含んでなってもよい。核酸はまた、TRAC及び/又はTRBC1若しくはTRBC2核酸配列、或いはそれらの部分配列を含んでなってもよい。
【0052】
本発明の1つの更なる観点において、ペプチド抗原に特異的に結合するTCRを同定するための、第1又は第2の観点のライブラリの使用が提供される。上記のとおり、ペプチド抗原に特異的に結合するTCRは、種々の理由で望ましい。
本発明の1つの更なる観点は、本発明の第1の観点に従うライブラリを製造する方法を提供する。この方法は、i)異なるTRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;ii)特定のTRBV遺伝子の異なるTRBV β鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;iii)TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸を発現ベクターにクローニングし;iv)TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸を同一又は異なるベクターにクローニングし;そしてv)ベクターを粒子において発現させることにより、前記核酸がコードするα鎖及びβ鎖可変ドメインを含んでなるTCRから本質的になるライブラリを創製することを含んでなる。
【0053】
核酸は、その全体又は部分が、ドナー血液から得られたmRNAを用いるPCRにより取得されてもよい。或いは、核酸は、その全体又は部分が、例えば固相DNA合成(例えばLife Technologiesが商業的に行っているもの)を利用する、合成手段により取得されてもよい。i)及びii)の核酸は、ドナーのT細胞レパートリのmRNAから作製したヌクレオチド配列 トランスcDNAをコピー/増幅することにより取得してもよい。異なるTRAV12-2 α鎖又はTRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸のみが、取得される核酸であり得る。すなわち、工程i)は、異なるTRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸のみを取得することを含んでなってもよく、工程ii)は、特定のTRBV遺伝子の異なるTRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸のみを取得することを含んでなってもよい。創製したライブラリは、α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインとを含んでなるTCRから本質的になるライブラリであって、α鎖可変ドメインがTRAV12-2遺伝子産物を含んでなり、β鎖可変ドメインが特定のTRBV遺伝子産物を含んでなる、ライブラリであり得る。
【0054】
本発明はまた、i)TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズするプライマーを用いて、異なるTRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;ii)TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズするプライマーを用いて、単一のTRBV遺伝子の異なるTRBV β鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を取得し;iii)TRAV12-2 α鎖可変ドメインをコードする核酸を発現ベクターにクローニングし;iv)TRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸を同じ又は異なるベクターにクローニングし;そしてv)ベクターを粒子において発現させることにより、前記プライマーがハイブリダイズする核酸がコードするα鎖及びβ鎖可変ドメインを含んでなるTCRから本質的になるライブラリを作製することを含んでなる、複数の異なるTCRをディスプレイする粒子のライブラリを製造する方法を提供する。
【0055】
単一のTRBV遺伝子は、下記に列挙する既知のTRBV遺伝子の1つであってもよい:
【表4-1】
【表4-2】
【0056】
具体的には、TRBV遺伝子は、TRBV5、TRBV7、TRBV11-1、TRBV11-3、TRBV14、TRBV20-1、TRBV27又はTRBV30であり得る。
2つの一本鎖配列は、当該2つの配列間に100%の配列同一性がない場合であっても、ハイブリダイゼーション反応が起こる条件並びにハイブリダイズする核酸配列の組成及び長さに依存して、互いにハイブリダイズする。
【0057】
一般に、ハイブリダイゼーション温度及びハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(例えばMg
2+濃度)によりハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが決まる。高ストリンジェンシー(例えば、高いハイブリダイゼーション温度及びハイブリダイゼーション緩衝液中の低い塩)は、高度に類似する核酸配列同士の間のハイブリダイゼーションのみを可能とする一方、低ストリンジェンシー(例えば、より低い温度及びより高い塩)は、類似性が低い配列同士のハイブリダイゼーションを可能にする。或る特定の程度のストリンジェンシーを得るためのハイブリダイゼーション条件に関する計算は、当業者が容易に実施することができ、Sambrookら,(1989) Molecular Cloning,第二版,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY(9章及び11章)に記載されている。当業者は、感度及び特異性の試験結果に従ってハイブリダイゼーション条件を最適化することができる。
【0058】
下記は、本発明における使用のためのハイブリダイゼーション条件の例示的なセットである:
非常に高いストリンジェンシー(少なくとも90%同一性を有する配列を検出)
ハイブリダイゼーション: 5×SSC、65℃にて16時間
2回の洗浄: 各々、2×SSC、室温(RT)にて15分間
2回の洗浄: 各々、0.5×SSC、65℃にて20分間
高ストリンジェンシー(少なくとも80%同一性を有する配列を検出)
ハイブリダイゼーション: 5×〜6×SSC、65℃〜70℃にて16〜20時間
2回の洗浄: 各々、2×SSC、RTにて5〜20分間
2回の洗浄: 各々、1×SSC、55℃〜70℃にて30分間
低ストリンジェンシー(少なくとも50%同一性を有する配列を検出)
ハイブリダイゼーション: 6×SSC、RT〜55℃にて16〜20時間
少なくとも2回の洗浄: 各々、2×〜3×SSC、RT〜55℃にて20〜30分間
【0059】
本明細書に開示したプライマーは、低ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー及び非常に高いストリンジェンシー条件下で、TRAV12-2 α鎖可変ドメイン又はTRBV β鎖可変ドメインをコードする核酸にハイブリダイズすることができる。
プライマーは、α鎖及びβ鎖可変ドメインをコードする配列に、高ストリンジェンシーで結合してもよい。しかし、プライマーは、TRAV12-2及び/又はTRVBに高い相同性を有する他の幾つかの遺伝子座に結合してもよい。
工程i)及びii)の核酸は、天然レパートリからのものであってもよい。或いは、核酸は、人工的に設計されていてもよい。工程iii)の前又は工程iii)の後に、α又はβ可変ドメインに非天然変異を導入してもよい。すなわち、核酸配列は、ベクターへのクローニング前に非天然変異が導入されていてもよい。或いは、非天然変異は、iii)及び/又はiv)のクローニング工程の後に導入してもよい。
【0060】
TRAV12-2又はTRBVをコードする核酸の各々の全て又は一部は、合成により得られてもよく、及び/又は人工的に設計されてもよい。具体的には、可変ドメイン、フレームワーク領域、CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、部分的に又は全体的に、合成により得られてもよく、及び/又は人工的に設計されてもよい。
「合成により」とは、化学的に(すなわち、PCRその他の生物学的技法以外の方法により)合成された配列を意味する。合成α鎖又はβ鎖配列の全て又は一部は、化学合成されていてもよい。
【0061】
TRAV12-2可変ドメインは、予め準備したcDNAライブラリ(これ自体はドナーmRNAから誘導)から、興味対象の遺伝子座に特異的に結合するように設計したフォワードプライマーを用いて増幅してもよい。リバースプライマーは、TCR α定常領域(少なくとも一部)に特異的に結合し、その結果、得られるPCR産物がTRAV12-2核酸配列、連結領域の幾らか若しくは全て又は連結領域なしで及び定常領域の少なくとも一部を含有するように設計されてもよい。このようなプライマー設計により、多種多様なα鎖可変ドメインCDR3領域を確実に捕捉することができ、本発明のライブラリに多数の独特なTCR α鎖配列が現れることとなる。或いは、CDR3領域は、例えばCDR3のいずれかの側のフレームワーク配列に特異的に結合するプライマーを用いて、独立に増幅してもよい。得られるPCR産物は、CDR3を有しないTRAV12-2配列に繋ぎ合わせてもよい。
同様に、TRBV可変ドメインは、興味対象の遺伝子座に特異的に結合するように設計したフォワードプライマーを用いて、入手可能なcDNAライブラリから増幅してもよい。リバースプライマーは、TCR β定常領域に特異的に結合し、その結果、得られるPCR産物が或る特定のTRBV核酸配列、連結領域(D及びJ遺伝子座を含む)の幾らか若しくは全て又は連結領域なしで及び定常領域の少なくとも一部を含有するように設計されてもよい。このようなプライマー設計により、多種多様なβ鎖可変ドメインCDR3領域を確実に捕捉することができ、本発明のライブラリに多数の独特なTCR β鎖配列が現れることとなる。或いは、CDR3領域は、例えばCDR3のいずれかの側のフレームワーク配列に特異的に結合するプライマーを用いて、独立に増幅してもよい。得られるPCR産物は、CDR3を有しないTRBV配列に繋ぎ合わせてもよい。
【0062】
mRNAは少なくとも1つのドナーから取得される。「少なくとも1つのドナーから」とは、α鎖又はβ鎖可変ドメインの全て又は一部のポリペプチド配列が、mRNAを取得したドナーのT細胞に天然に生じるものと実質的に同じであることを意味する。好ましくは、ドナーはヒトである。ドナーの組織型は既知であってもよい。ドナーはHLA-A2ポジティブであってもよい。
必要なライゲーション配列又は組換え配列がベクター及びプライマー配列に存在することを前提として、得られるPCR産物は、完全な定常遺伝子配列を含有する場合、ファージベクターに直接ライゲートしてもよい。或いは、α及びβ PCR産物は、完全なTCR鎖配列を取得するために、α定常ドメイン遺伝子配列及びβ定常ドメイン遺伝子配列をそれぞれ含有する配列と繋ぎ合わせてもよい。ファージライブラリの多様性を増大させるために、α鎖とβ鎖とをランダムに繋ぎ合わせてもよい。その後、完全配列を、1つのオープンリーディングフレームとして発現するようファージベクターにクローニングしてもよい。本発明のライブラリの作製に適切なクローニングストラテジの一例を
図1に示す。或いは、他の粒子ディスプレイ形式を、本発明のライブラリの作製に用いてもよい。このような方法は当業者に公知であり、リボソーム粒子又は酵母細胞でのディスプレイを含んでもよい(ただし、これらに限定されない)。
【0063】
これらのディスプレイ法は、2つの広義のカテゴリー、インビトロディスプレイ及びインビボディスプレイに分類される。
全てのインビボディスプレイ法は、複製可能な粒子(例えばプラスミド又はファージレプリコン)の遺伝子核酸中に又は該遺伝子核酸と共に通常はコードされるライブラリが、タンパク質又はポリペプチドの発現を可能とするように細胞に形質転換される工程に基づく(Pluckthun(2001) Adv Protein Chem 55 367-403)。タンパク質又はポリペプチドのインビボディスプレイに適切であることが証明されている幾つかのレプリコン/宿主系が存在する。これらには以下のものが含まれる:
ファージ/細菌細胞
プラスミド/CHO細胞
酵母2μmプラスミドをベースとするベクター/酵母細胞
バキュロウイルス/昆虫細胞
プラスミド/細菌細胞
レトロウイルスベクター/哺乳動物細胞。
【0064】
インビボディスプレイ法は、細胞表面タンパク質又はポリペプチドに融合した興味対象のタンパク質又はポリペプチドからなる融合タンパク質をコードするプラスミドが宿主細胞に導入される細胞表面ディスプレイ法を含む。この融合タンパク質の発現は、興味対象のタンパク質又はポリペプチドの細胞表面でのディスプレイに至る。その後、これら興味対象のタンパク質又はポリペプチドをディスプレイする細胞を選択プロセス(例えばFACS)に付すことができ、選択した1又は2以上の細胞から得たプラスミドを単離及び配列決定することができる。細胞表面ディスプレイ系は、哺乳動物細胞(Higuschi(1997) J Immunol.Methods 202 193-204)、酵母細胞(Shusta(1999) J Mol Biol 292 949-956)及び細菌細胞(Sameulson(2002) J.Biotechnol 96 (2) 129-154)について考案されている。酵母細胞表面での単鎖TCRのディスプレイは当該分野において公知である(WO01/48145)。
種々のインビボディスプレイ技法について多くの総説が公表されている(例えば、Hudson(2002) Expert Opin Biol Ther(2001) 1(5) 845-55及びSchmitz(2000) 21(Supp A) S106-S112))。
【0065】
インビトロディスプレイ法は、mRNAのライブラリを多様な数々のタンパク質又はポリペプチドのバリアントに翻訳するためのリボソームの使用に基づく。生成したタンパク質又はポリペプチドとこれら分子をコードするmRNAとの間の連結は、2つの方法の一方により維持される。従来のリボソームディスプレイは、短い(代表的には40〜100アミノ酸)リンカー配列とディスプレイされるべきタンパク質又はポリペプチドとをコードするmRNA配列を利用する。リンカー配列は、ディスプレイされるタンパク質又はポリペプチドが、リボソームによる立体障害を受けることなくリフォールディングするに十分な空間を許容する。mRNA配列は「停止」コドンを欠いており、このことにより確実に、発現タンパク質又はポリペプチド及びRNAがリボソーム粒子に付着したままになる。関連するmRNAディスプレイ法は、興味対象のタンパク質又はポリペプチドをコードするmRNA配列及びピューロマイシン部分を保有するDNAリンカーの調製に基づく。リボソームがmRNA/DNA接合部に達するや否や、翻訳は停止し、ピューロマイシンがリボソームと共有結合を形成する。これら2つの関連するインビトロディスプレイ法の総説については、Amstutz(2001) Curr Opin Biotechnol 12 400-405を参照。
【0066】
特に好ましいのは、バクテリオファージ粒子がその表面タンパク質に融合した異種ペプチド又はポリペプチドを発現することができる能力に基づくファージディスプレイ技法である(Smith(1985) Science 217 1315-1317)。手順は全く一般的であり、ポリペプチド単量体のディスプレイについて当該分野で十分に理解されている。二量体タンパク質(例えばヘテロ二量体TCR)のディスプレイもまた、当該分野において十分に確立されている(WO04/044004)。
単量体及び二量体ディスプレイの両方に適用される2つの主な手順が存在する:
第1(方法A)は、ベクター(ファージミド)に、バクテリオファージコートタンパク質をコードするDNA(例えば、タンパク質P3又はP8をコードするDNA)に融合した異種ペプチド又はポリペプチドをコードするDNAを挿入することによる。次に、異種ペプチド又はポリペプチドをディスプレイするファージ粒子の発現は、そのファージミドで細菌細胞をトランスフェクトし、次いで該形質転換細胞に「ヘルパーファージ」を感染させることにより行なう。ヘルパーファージは、ファージミドがコードしないが、機能的なファージ粒子を作製するために必要であるファージタンパク質の供給源として作用する。
【0067】
第2(方法B)は、異種ペプチド又はポリペプチドをコードするDNAを、バクテリオファージコートタンパク質をコードするDNAに融合した完全なファージゲノムに挿入することによる。次に、異種ペプチド又はポリペプチドをディスプレイするファージ粒子の発現は、そのファージゲノムを細菌細胞に感染させることにより行なう。この方法は、「単一工程」プロセスであるという、第1の方法を超える利点を有する。しかし、得られるファージ粒子へのパッケージングに成功可能な異種DNA配列のサイズは、減少する。M13、T7及びλがこの方法に適切なファージの例である。
方法Bの変形には、ディスプレイされる異種ペプチドをコードするファージゲノムのDNAに、ヌクレオチド結合性ドメインをコードするDNA配列を付加し、更に、ファージゲノムに、対応するヌクレオチド結合性部位を付加することが含まれる。このことにより、異種ペプチドがファージゲノムに直接付着するようになる。その後、このペプチド/ゲノム複合体は、異種ペプチドをディスプレイするファージ粒子にパッケージングされる。この方法は、WO99/11785に十分に記載されている。
【0068】
次に、ファージ粒子を回収し、異種ペプチド又はポリペプチドの結合特性を調べるために使用することができる。一旦単離すると、ファージミドDNA又はファージDNAは、ペプチド又はポリペプチドをディスプレイするファージ粒子から回収することができ、このDNAは、PCRにより複製することができる。PCR産物は、所定のファージ粒子によりディスプレイされる異種ペプチド又はポリペプチドを配列決定するために使用することができる。
単鎖抗体及びそのフラグメントのファージディスプレイは、これらポリペプチドの結合特性を調べる慣用手段となっている。ファージディスプレイ技法及びバクテリオファージの生物学を総説する利用可能な多くの本が存在する(例えばPhage Display - A Laboratory Manual,Barbasら(2001) Cold Spring Harbour Laboratory Pressを参照)。
【0069】
第3のファージディスプレイ法(方法C)は、所望位置にシステイン残基を有する異種ポリペプチドを、ファージミド又はファージゲノムにより可溶形態で発現させ、これもまた表面に露出した位置にシステイン残基を有する改変ファージ表面タンパク質と、該2つのシステイン間のジスルフィド連結の形成により結合することが可能であるという事実に基づく。WO01/05950は、単鎖抗体由来ペプチドの発現についてこの代替連結法の使用を詳述している。
上記のとおり、本発明のαβヘテロ二量体TCRは、導入した(非天然型)ジスルフィド結合を定常ドメイン同士間に有していてもよい。このことは、本発明のライブラリを製造する方法の間に、増幅核酸配列を改変定常遺伝子配列に繋ぎ合わせることにより達成することができる。このような配列としては、TRACのThr48及びTRBC1又はTRBC2のSer57(IMGTの番号付けによる)がシステイン残基で置換されており、該システインがライブラリのTCRのTRAC定常ドメイン配列とTRBC1又はTRBC2定常ドメイン配列との間にジスルフィド結合を形成していることを除き、TRAC定常ドメイン配列及びTRBC1又はTRBC2定常ドメイン配列を有するものを挙げてもよい。
【0070】
本発明のαβヘテロ二量体TCRは、以前の段落で言及した導入鎖間結合を伴って又は伴わずに、TRAC定常ドメイン配列及びTRBC1又はTRBC2定常ドメイン配列を有していてもよく、TCRのTRAC定常ドメイン配列及びTRBC1又はTRBC2定常ドメイン配列は、TRACのエキソン2のCys4とTRBC1又はTRBC2のエキソン2のCys2との間で天然型ジスルフィド結合により連結していてもよい。
或いは、TCR α鎖可変ドメイン及びTCR β鎖可変ドメインは単鎖ポリペプチドとして発現してもよい。このような形態は、変異アミノ酸残基同士間に非天然型ジスルフィド結合を含んでいてもよい。
【0071】
本発明はまた、本発明の第1の観点に従うライブラリをペプチド抗原でスクリーニングすることを含んでなる、ペプチド抗原に特異的に結合するT細胞レセプターを取得する方法を提供する。
スクリーニングは、下記のような1又は2以上の工程を含んでいてもよい。
a)ペプチド抗原を標的として用いてライブラリをパニングする工程
b)工程a)を1回又は2回以上繰り返す工程
c)工程a)又はb)で同定したファージクローンをスクリーニングする工程
d)ペプチド抗原に特異的に結合するTCRを同定する工程。
工程(b)に従えば、工程(a)は1回、2回、3回、4回、5回又は6回繰り返してもよい。工程(a)は10回まで繰り返してもよい。工程(a)は20回まで繰り返してもよい。
【0072】
パニングとは、ファージクローンを抗原と接触させ、結合ファージクローンを非結合ファージクローンから分離することを意味する。これには、抗原を固相支持体(例えば、試験管、磁性ビーズ、カラムマトリクス又はBiaCoreセンサチップ)に不動態化することが含まれてもよい。抗原付着は、非特異的吸着により行われても、又は特異的付着タグ(例えば、ビオチン化抗原及びストレプトアビジン被覆表面)を用いることにより行われてもよい。代替法としては、インタクトな細胞でのパニングを挙げてもよい(Hoogenboom,H.R.ら(1998) Immunotechnology,4(1),1-20)。結合しないファージクローン(すなわち、抗原に結合するTCRをディスプレイしないファージ)を洗い流す。次に、結合ファージクローンを以下により溶出してもよい:TCR β鎖と遺伝子IIIとの間のプロテアーゼ部位での酵素的切断(例えばトリプシン);極端なpH;又は過剰な抗原との競合。これらファージクローンを採取して、更なる回のパニング又はスクリーニング実験により、最適な結合特性を有するクローンを同定するために用いてもよい。
【0073】
スクリーニングは、例えば、被覆抗原又はインタクトな細胞を用いるELISAベースの方法により実施されてもよく、96ウェル形式であってもよい;細胞全体を用いる場合、スクリーニングはフローサイトメトリを用いて行なってもよい。結合親和性及び動力学についてのスクリーニングは、表面プラズモン共鳴を用いて(例えばBiaCore装置で)行なってもよいし、又は水晶振動子微量天秤(quartz crystal microbalance)を用いて行なってもよい。スクリーニング法はPande,J.ら(2010) Biotechnol Adv 28(6):849-58に記載されている。当業者に公知であるように、このタイプの生体分子相互作用のスクリーニングに更に適切な方法が利用可能であり、これには次のものが含まれる:ForteBIO社のOctetシステム、これはBioLayer Interferometry(BLI)を利用して生体分子の相互作用をリアルタイムで測定し、親和性及び動力学に関する情報を提供する;増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)(例えばAlphaScreen
TM)、このアッセイでは、有望な相互作用分子は、近接したときに特定の蛍光特性を有する「ドナー」及び「アクセプター」ビーズに付着する;シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay)、このアッセイでは、相互作用は近接した分子間のβ粒子の転移により評価される;例えばWO 2004/044004に記載されているような他界面光学アッセイ。
【0074】
特異性は、同定したTCRを、ライブラリのスクリーニングに用いたペプチド抗原以外のペプチドへの結合について試験することにより測定してもよい。他のペプチドへの結合が起これば、TCRは非特異的であると考え得る。特異性は上記方法を用いて評価してもよい。
ペプチド抗原は既知の抗原(例えば、Bridgeman,J.S.ら(2012) Immunology,135(1),9-18に記載されているもの)であってもよい。本発明のライブラリをスクリーニングする方法を、新規ペプチド抗原と共に用いて特異的結合性TCRを同定してもよい。この特異的結合性TCRは治療分野において有用であると証明される可能性がある。
【0075】
本発明の最後の観点の1つは、本発明に従うTCR、すなわち、本発明の第1又は第2の観点のライブラリから取得した、TRAV12-2遺伝子産物を含むTCR α鎖可変ドメインとTRBV遺伝子産物を含むTCR β鎖可変ドメインとを含んでなる単離T細胞レセプター(TCR)であって、ペプチド抗原に特異的に結合するTCRをその表面にディスプレイする単離細胞を提供する。細胞はT細胞であってもよい。細胞はヒト、マウス又は他の動物の細胞であってもよい。
本発明のTCRをコードするDNA又はRNAでのT細胞のトランスフェクションに適切な幾つかの方法が存在する(例えば、Robbinsら(2008) J.Immunol.180:6116-6131)を参照)。本発明のTCRを発現するT細胞は、疾患、例えばガン、ウイルス感染、自己免疫疾患、炎症性疾患、寄生虫感染及び細菌感染の養子療法ベースの治療における使用に適切である。当業者に公知であるように、養子療法を実施することができる幾つかの適切な方法が存在する(例えば、Rosenbergら(2008) Nat Rev Cancer 8 (4):299-308を参照)。
【0076】
養子療法における使用のために、本発明はまた、単一オープンリーディングフレーム又は2つの別個のオープンリーディングフレームに本発明のTCRをコードする核酸を含んでなるTCR発現ベクターを保有する細胞を包含する。本発明のTCRのα鎖をコードする核酸を含んでなる第1の発現ベクター及び本発明のTCRのβ鎖をコードする核酸を含んでなる第2の発現ベクターを保有する細胞もまた、本発明の範囲に包含される。或いは、1つのベクターが本発明のTCRのα鎖及びβ鎖の両方を発現してもよい。
養子療法における使用を意図する本発明のTCRは、トランスフェクトT細胞により発現されときにグリコシル化してもよい。周知であるように、トランスフェクトTCRのグリコシル化パターンは、トランスフェクト遺伝子の変異により改変され得る(Kuball Jら(2009),J Exp Med 206(2):463-475)。
【0077】
患者への投与には、本発明のTCRでトランスフェクトされたT細胞は、医薬組成物におて、医薬的に許容され得るキャリアと共に提供され得る。本発明に従う細胞は、通常、医薬的に許容され得るキャリアを通常含む滅菌医薬組成物の一部として供給される。この医薬組成物は、(患者への望ましい投与方法に依存して)任意の適切な形態であってもよい。医薬組成物は、単位剤形(一般に密封容器で提供される)で提供されてもよく、キットの一部として提供されてもよい。このようなキットは、(必須ではないが)通常、使用指示書を含む。キットは、複数の単位剤形を含んでもよい。適切な組成物及び投与方法は当業者に公知である(例えば、臨床試験番号NCI-07-C-0175及びNCI-07-C-0174を有する、Johnsonら,Blood (114):535-46(2009)を参照)。
医薬組成物は、任意の適切な経路、例えば非経口経路(皮下、筋肉内、静脈内又は腹腔内経路を含む)、吸入経路又は経口経路による投与に適合していてもよい。このような組成物は、薬学分野において公知の任意の方法により、例えば活性成分をキャリア又は賦形剤と滅菌条件下で混合することにより、製造してもよい。
【0078】
本発明の物質の投薬量は、治療すべき疾患又は異常(例えば、ガン、ウイルス感染、自己免疫疾患、炎症性疾患、細菌感染又は寄生虫感染)、治療すべき個体の年齢及び状態などに依存して広範囲に変化することがある。例えば、ImmTAC薬剤(抗CD3ドメインに融合した可溶性TCR)についての適切な用量範囲は、25ng/kg〜50μg/kgの間であってもよい。最終的には医師が使用すべき適切な投薬量を決定する。
本発明のTCRはまた、造影化合物(imaging compound)、例えば、診断目的に適切な標識で標識してもよい。このような標識された高親和性TCRは、CD1−抗原複合体、細菌性スーパー抗原及びMHC−ペプチド/スーパー抗原複合体から選択されるTCRリガンドを検出する方法で有用であり、この方法は、TCRリガンドを、このTCRリガンドに特異的である高親和性TCR(又は多量体高親和性TCR複合体)と接触させること;及びTCRリガンドへの結合を検出することを含む。(例えばビオチン化へテロ二量体を使用して生成された)四量体高親和性TCR複合体では、蛍光ストレプトアビジン(市販品として入手可能)を、検出可能な標識を提供するために使用することができる。蛍光標識した四量体は、例えば高親和性TCRが特異的であるペプチド抗原を保有する抗原提示細胞を検出するために、FACS分析における使用に適切である。
【0079】
本発明の高親和性TCR(又はその多価複合体)は、択一的に又は追加的に、例えば細胞殺傷に使用する毒性部分又は免疫刺激物質(例えばインターロイキン又はサイトカイン)であり得る治療薬剤と結合(例えば、共有結合又は他の結合)をしていてもよい。本発明の多価高親和性TCR複合体は、非多量体の野生型又は高親和性のT細胞レセプターへテロ二量体と比較して、TCRリガンドに関して亢進した結合能力を有してもよい。よって、本発明に従う多価高親和性TCR複合体は、特定の抗原を提示する細胞のインビトロ又はインビボでの追跡又は標的に特に有用であり、またそのような用途を有する更なる多価高親和性TCR複合体の製造用中間体としても有用である。したがって、高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体は、インビボでの使用のための薬学的に受容可能な製剤で提供されてもよい。
本発明の高親和性TCRは、可溶性の二重特異性薬剤の製造に使用してもよい。1つの好適な実施形態において、これらはImmTAC薬剤である。ImmTAC薬剤は、抗CD3特異的抗体フラグメントにリンカーを介して融合した可溶性TCRを含んでなる。このような薬剤の製造方法を含む更なる詳細はWO10/133828に記載されている。
【0080】
本発明の各観点の好ましい又は随意選択の特徴は、他の観点の各々について記載したとおりである(ただし必要な変更は加える)。したがって、本発明及びその利点は詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲に記載されたとおりの本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において種々の変更、置換及び改変をなし得ることを理解すべきである。
本発明は下記の実施例において更に説明されるが、当該実施例は例示目的で提供され、如何なる様式でも本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0081】
実施例
実施例1
TCRファージディスプレイライブラリの構築用cDNAの作製
末梢血リンパ球(PBL)からのmRNAの単離
HLAタイプが既知であるボランティアドナーから取得したPBLからRNAを抽出した。RNA抽出はTRI試薬(Sigma,Cat.No.T9424)を製造業者が推奨するプロトコルに従って用いて行った。続いて、μMACS
TM mRNA単離キット(Miltenyi,Cat.No.130-075-101)を製造業者の指示通りに用いてmRNAを単離した。
mRNAからのcDNAの作製
SMARTScribe
TM逆転写酵素(Clontech,639536)を製造業者の推奨プロトコルに従って用いてmRNAからcDNAを合成した。S.N.A.P.ゲル精製キット(Invitrogen,45-0078)を用いてcDNAを更に精製した。
【0082】
実施例2
ファージライブラリの構築
ライブラリ構築の概要を
図1に示し、対応するプライマー配列を
図2に詳述する。TCR鎖を、TRAV又はTRBV特異的フォワードプライマーとTRAC領域内(プライマーYOL237)又はTRBC領域内(プライマーYOL 240)でアニールするリバースプライマーとを用いるPCRにより精製cDNAから増幅した。プライマーセットはヒトTCR鎖の既知配列を参照して設計した(T Cell Receptor Facts Book,Lefranc and Lefranc,Publ.Academic Press 2001)。得られたPCR産物は、全長可変ドメイン配列及び短縮化定常ドメインを含んでなっていた(
図1中A及びBで示す)。TRAC及びTRBC2ドメインの残りのC末端セクション(非天然型システイン残基を含有する)を、別のクローニングベクターから、TRACについてはプライマーYOL236及びYOL238を、TRBC2についてはプライマーYOL239及びYOL22を用いるPCRにより増幅した(
図1中C及びDで示す)。次いで、精製したA/C及びB/Dフラグメントを、別々の反応においてオーバーラップするプライマー領域(それぞれYOL237/YOL236及びYOL240/YOL239)を介して繋ぎ合わせた。得られたA-C及びB-Dフラグメントをゲル精製し、TRAV特異的フォワードプライマーとYOL22リバースプライマーとを用いるオーバーラップPCRにより繋ぎ合わせた(TRBVプライマー領域及びYOL238プライマー領域がオーバーラップ配列を提供する)。この最後の繋合せ反応は、α鎖とβ鎖との間でのランダムな組換えを生じる。フラグメントを、適切なファージミドベクター(pIM672と呼ぶ)にライゲートした。pIM672は以前に記載されたpEX922ベクターに基づくものである(WO2005116074を参照)。次いで、pIM672を用いて、形質転換効率が高いエレクトロコンピテントな(electro-competent)TG1 E.coli細胞を形質転換させた。培養物を、2xTYEag(EzMix,Sigma,Cat.No.Y2627+100μg/mlアンピシリン及び2%グルコース)寒天プレートに一晩30℃にてプレーティングし、得られた細胞ローン(cell lawn)を、100μg/mlのアンピシリン、20%グリセロール及び2%グルコースを含有する少量の2xTYag培地に掻き取った。ライブラリのグリセロールストックを−80℃で保存した。
【0083】
実施例3
ライブラリの増殖及びパニング
ファージ粒子の増殖
ライブラリの多様性をカバーするに十分な、ファージライブラリのグリセロールストックのアリコートを用いて、2xYTag培地に0.05の初期OD600で接種した。次いで、培養物を約0.5のOD600までインキュベートした。次いで、ヘルパーファージを約20:1のファージ対E.coliの感染比で添加した。次いで、倒置させることにより培養物を混合し、37℃にて30分間インキュベートした。培養物を遠心分離し、ペレットを2xYTak(グルコースなしで50μg/mlカナマイシンが添加されている以外は2xYTagと同じ)に再懸濁し、続いて26℃にて16時間、振盪しながらインキュベートした。
ファージ粒子の単離
培養物をプールし、遠心分離し、上清を回収し、0.45μmで濾過した。溶出物を7ml PEG/NaCl(20%PEG-8000(Sigma Cat.No.5413)、2.5M NaCl)と混合し、氷上で30分間インキュベートした。次いで、このサンプルをペレット化し、上清を廃棄した。ペレットを、PBS(Dulbeccos Sigma Cat.No.D8537 - Mgなし、Caなし)中10mlに再懸濁し、再度遠心分離した。得られた上清を回収し、5ml PEG/NaClと混合し、氷上で30分間貯蔵した。遠心分離後、ペレットを3mlのPBS中に再懸濁し、再度遠心分離し、上清を回収した。Nanodropスペクトロホトメータを用いてファージ濃度の推定値を測定した。ファージ数/ml = OD260×(22.14×10
10)。
【0084】
パニング
精製したファージ粒子を、3% MPBS緩衝液(ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズと予めインキュベートし、次いで15mM EDTAで処理し、続いて広範な透析に付し、最後に0.22μmで濾過したPBS(Dulbeccos Sigma Cat.No.D8537 - Mgなし、Caなし)+3%粉ミルク)と混合し、室温にて1時間インキュベートした。次いで、10%(v/v)Tween-20を添加し、更に100nM又は1μMのビオチン化ペプチド-HLAを添加した。サンプルを室温で60分間混合した。3% MPBS緩衝液中で予めブロックしたストレプトアビジン被覆常磁性ビーズを添加し、室温で7分間インキュベートすることによりファージ-ビオチン化HLA複合体をレスキューした。捕捉後、磁気濃縮装置(Dynal)を用いてビーズを単離し、3% MPBS(EDTA処理なし)で3回、PBS-0.1%Tweenで2回洗浄した。ファージ粒子を、0.5ml TBSC(10mM Tris,pH7.4,137mM NaCl,1mM CaCl
2及び0.1mg/mlトリプシン)中、室温にて25分間、37℃にて5分間、穏やかに旋回させながら溶出させた。
【0085】
溶出したファージ粒子を用いて初期対数増殖期のTG1 E.coli細胞に感染させた。培養物を37℃にて30分間インキュベートし、その後YTEag(1LのMQ-水中10gのトリプトン、5gの酵母抽出物、8gのNaCl、15gのBacto-Agar+100μg/mlアンピシリン及び2%グルコース)に1μl、0.1μl及び0.01μlの系列希釈で塗布した。残る培養物を濃縮し、これもまたYTEagに塗布した。プレートを30℃にて16時間インキュベートした。翌日、プレートのコロニーを2xTYagに加え、ドライアイスで凍結させ、次回のパニングまで−80℃で貯蔵した。各選択からのコロニーをPCRにより分析して、全長挿入物について検証した。
3回目の選択後、コロニーを寒天プレートから掻き取り、96ウェルCellstar細胞培養プレート中の滅菌2xTYagへの1クローン/ウェルでの接種に用いた。プレートを振盪させながら26℃にて16時間インキュベートした。次いで、これら培養物を用いて96ウェルプレート中の新鮮2xTYag培地に接種し、振盪させながら37℃にて30分間OD600 = 0.5までインキュベートした。次いで、ヘルパーファージを各ウェルに20:1のファージ-E .coli感染比で加え、プレートを振盪させずに37℃にて30分間インキュベートした。ペレットを遠心分離により回収し、2xYTakに再懸濁した。プレートを振盪させながら26℃にて16時間インキュベートした。次いで、細胞をペレット化し、ELISAスクリーニング用に上清を回収した。
【0086】
実施例4
ELISAスクリーニングによる、抗原特異的TCRを保有するファージ粒子の検出
所与のペプチド-HLA複合体に結合したファージクローンをELISAスクリーニングにより同定し、その後、代替のペプチド-HLA複合体のパネルに対する特異性について試験した。ELISプレートはビオチン化ペプチド-HLAを用いて調製した。検出は、抗Fd抗体(Sigma,Cat.No.B7786)を用い、続いてモノクローナル抗ウサギIgGペルオキシダーゼ接合体(γ鎖特異的クローンRG96)(Sigma,Cat.No.A1949)を用いて行った。結合抗体は、KPL labs TMB Microwellペルオキシダーゼ基質系(Cat.No.50-76-00)を用いて検出した。ウェルにおける青色の出現により、ファージクローンが同族ペプチド-HLAに結合したことが示された一方、代替のペプチド-HLA複合体を含むウェルにおいて発色がないことにより、結合がないこと、したがって同族抗原への結合が特異的であることが示された。
【0087】
実施例5
TRAV12-2遺伝子産物と単一のTRBV遺伝子産物とを含むライブラリの構築及びパニング
TRAV12-2遺伝子産物と下記のTRBV遺伝子産物とを含むライブラリを構築した;
・ TRBV5
・ TRBV7
・ TRBV11-1
・ TRBV11-3
・ TRBV14
・ TRBV20-1
・ TRBV27
・ TRBV30
【0088】
ライブラリは、実施例1及び2に記載した方法に従い、次の点を除き、
図2のプライマー配列を参照して作製した。
TRBV5ライブラリについては、TRAV12-2フラグメントは、次のフォワードプライマーを用いて増幅した:gcccagccggccatggcccagaaggaggtggagcagaattc (配列番号16)。
TRBV7ライブラリについては、α定常ドメイン及びTRBV領域の第1の部分(
図1、それぞれ、フラグメントC及びフラグメントBの第1の部分)を、クローニングベクターから、YOL236(
図2)及び次のリバースプライマー:gggcagccctgatttgtcttgttgggcttcataattgaa (配列番号17)を用いて、単一フラグメントとして増幅した。得られたフラグメントは、α定常ドメインの全体及びCDR2までのTRBVの配列をコードするものであった。CDR3領域を含むTRBVの残る部分(Bフラグメントの第2の部分)は、cDNAから、次のフォワードプライマー:cagggcccagagtttctgacttacttcaattat (配列番号18)及びYOL240リバースプライマー(
図2)を用いて増幅した。得られたBフラグメントは、TRBV7-6及びTRBV7-7の両方を含んでいた。次いで、2つのフラグメントを、実施例1に記載したように、重複するプライマー領域を介して、A及びDフラグメントと共に繋ぎ合わせた。
【0089】
TRBV11-1ライブラリについては、TRBVフラグメント(
図1中フラグメントBと呼ぶ)は、2工程で作製した。第1工程では、TRBV11-1のフレームワーク、CDR1及びCDR2配列を、cDNAから、次のプライマー:TRBV特異的フォワードプライマー gaagctgaagttgcccagtcc (配列番号19)及びTRBVリバースプライマー gtctactcctttgagcctctctgc (配列番号20)を用いて増幅した。両プライマーとも、酵素分解が低減するように3'末端でPTO修飾した(PTO修飾とは、オリゴヌクレオチドのホスフェート骨格に(非橋架け酸素がイオウ原子に置換している)ホスホロチオエート結合を含ませることをいう)。第2工程では、CDR3領域を、cDNAから、次のフォワードプライマー gcagagaggctcaaaggagtagac (配列番号21)(これは3'末端でPTO修飾されたものであった)及びYOL240リバースプライマー(
図2に示されるもの)を用いて増幅した。2つのフラグメントを、実施例1に記載したように、重複するプライマー領域を介して一緒に繋ぎ合わせて、単一のTRBVフラグメント(フラグメントB)を作製し、次いで、このフラグメントを他のフラグメントと繋ぎ合わせた。
【0090】
TRBV20-1ライブラリについては、α定常ドメイン及びTRBV領域の第1の部分(
図1、それぞれ、フラグメントC及びフラグメントBの第1の部分)を、単一フラグメントとして、クローニングベクターから、YOL236(
図2)及び次のリバースプライマー:agttgtggcctgaaagtccagggaacggcactcgat (配列番号22)を用いて増幅した。したがって、得られたフラグメントは、α定常ドメイン全体及びCDR1までのTRBV20-1の配列をコードするものであった。CDR3領域を含むTRBVの残る部分(Bフラグメントの第2の部分)を、cDNAから、次のフォワードプライマー:atcgagtgccgttccctggactttcaggccacaact (配列番号23)及びYOL240リバースプライマー(
図2)を用いて増幅した。次いで、2つのフラグメントを、実施例1に記載したように、重複するプライマー領域を介して、A及びDフラグメントと共に繋ぎ合わせた。
各ライブラリを、実施例3に従って、ペプチド-HLA複合体を用いてパニングし、ELISAスクリーニングを実施例4に記載したように行った。
図3〜10は、本発明のライブラリから得たTCRについての代表的な特異性ELISAを示す。これらデータから、本発明のライブラリは抗原特異的TCRの単離に有用であることが確証される。
ELISAポジティブファージクローンからのTCRのDNA配列は、当業者に公知の方法を用いるシークエンシングにより取得した。
【0091】
実施例6
ライブラリから取得したTCRのBiacore分析
方法
ライブラリから単離したTCRの抗原親和性は、BIAcore 3000装置を用いる表面プラズモン共鳴により測定し、平衡解離定数(KD)に関して報告した。ファージクローンから得たTCR配列を用い、Boulterら,Protein Eng,2003,16:707-711に記載の方法により可溶性形態のTCRを作製した。特異的な及びコントロールのビオチン化pMHC単量体を、Garbocziら,Proc Natl Acad Sci U S A 1992,89:3429-3433及びO'Callaghanら,Anal Biochem 1999,266:9-15に記載のように作製し、ストレプトアビジンをカップリングしたCM-5センサチップに不動態化した。全ての測定は、0.005% Tween(Sigma)を補充したPBS緩衝液(Sigma)中25℃にて一定流速で行った。親和性の測定のため、可溶性TCRの系列希釈物を、不動態化pMHC上に流し、平衡時の応答値を各濃度について測定した。タンパク質濃度に対する特異的平衡結合をプロットし、続いて1:1の相互作用を前提としてLangmuirの結合方程式に最小二乗法でフィッティングすることにより、平衡解離定数(KD)を決定した。
図11は、本発明のライブラリから取得したTCRについての代表的なBiacoreデータを提供する。