(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876059
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】原子燃料棒の支持格子の組立て冶具および原子燃料棒の支持格子の組立て方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/34 20060101AFI20210517BHJP
G21C 3/348 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
G21C3/34 200
G21C3/348 100
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-535835(P2018-535835)
(86)(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公表番号】特表2019-505787(P2019-505787A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】US2017014809
(87)【国際公開番号】WO2017142687
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】15/045,892
(32)【優先日】2016年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ペトロスキー、ライマン、ジェイ
【審査官】
関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−077383(JP,A)
【文献】
特開昭59−060397(JP,A)
【文献】
特開平03−289592(JP,A)
【文献】
特開平03−259795(JP,A)
【文献】
特開平10−090480(JP,A)
【文献】
米国特許第05398264(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C3/00−3/334
3/338−3/344
3/356−3/64
21/00−21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、高さの約半分の切り欠き長さを有する複数のスロット(6)と、当該スロットの隣かまたは間にあるタブ(7)とを有する複数のストラップ(2、4)から成る原子燃料棒の支持格子(10)の組立て冶具(20、20’、200)であって、当該冶具は、
当該支持格子のストラップを挿嵌するように構成された複数の挿嵌部(38、39)および複数のセル(24)を有する支持板(32、320)と、
当該支持板に対して移動可能な作動板(30、300)と、
当該作動板に取り付けられ、当該作動板の当該支持板に対する動きに基づいて当該複数の挿嵌部に挿嵌された当該ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成された複数のカム機構体(22)とから成り、
当該カム機構体は当該支持板のセルに1つ置きに配置されていることを特徴とする組立て冶具。
【請求項2】
前記ストラップのタブの間にスロットが形成され、前記カム機構体が前記ストラップのタブを1つ置きにたわませると前記スロットがV字状になることを特徴とする、請求項1の組立て冶具(20、20’、200)。
【請求項3】
前記挿嵌部は前記支持板に形成された溝(38)である、請求項1の組立て冶具(20、200)。
【請求項4】
前記挿嵌部は前記支持板の表面から延びる棒状体(39)である、請求項1の組立て冶具(20’)。
【請求項5】
前記カム機構体は、前記作動板の前記支持板に対する動きに基づき、前記ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成されている、請求項1の組立て冶具(20、20’)。
【請求項6】
請求項5の組立て冶具(20、20’)であって、前記カム機構体はそれぞれ、
前記作動板に取り付けられ、前記作動板から実質的に垂直方向に延びる複数のカム棒(34)と、
前記支持板に取り付けられ、前記複数の挿嵌部に挿嵌されたストラップのタブをたわませるか、または、たわみをなくする動きをするように構成された複数のレバー部材(40)とを含み、
前記支持板は、各々が前記複数のカム棒のうちの1本を貫通させるように構成された複数の開口(37)を有し、
当該レバー部材は、前記作動板の前記支持板に対する動きに基づいて、前記複数の挿嵌部に挿嵌されたストラップのタブをたわませるか、または、たわみをなくする動きをするように構成されていることを特徴とする組立て冶具。
【請求項7】
前記レバー部材は、前記作動板の前記支持板に近づくか、または、前記支持板から離れる方向への動きに基づいて、前記複数の挿嵌部に挿嵌されたストラップをたわませるか、または、たわみをなくする動きをするように構成されていることを特徴とする、請求項6の組立て冶具(20、20’)。
【請求項8】
前記作動板は第1の作動板(300)および第2の作動板(310)から成り、当該第1の作動板および当該第2の作動板は相対移動するように構成されており、前記カム機構体は、当該第1の作動板の当該第2の作動板に対する動きに基づいて前記ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成されていることを特徴とする、請求項1の組立て冶具(200’)。
【請求項9】
請求項8の組立て冶具(200)であって、前記カム機構体は、
前記第1の作動板に取り付けられ、前記第1の作動板から実質的に垂直方向に延びる複数の第1のカム棒(400)と、
前記第2の作動板に取り付けられ、前記第2の作動板から実質的に垂直方向に延びる複数の第2のカム棒(420)とから成り、
前記支持板は、各々が一対の当該第1および第2のカム棒を貫通させるように構成された複数の開口(360)を有し、
当該第1および第2のカム棒は、前記第1の作動板の前記第2の作動板に対する動きに基づいて、互いに近づくように、または、離れるように構成されていることを特徴とする組立て冶具。
【請求項10】
前記第1および第2のカム棒にはそれぞれ突出部(400、410)が形成されており、当該突出部は前記第1および第2のカム棒が互いに離れる方向に動くと、前記ストラップのタブに当接して当該タブをたわませるように構成されていることを特徴とする、請求項9の組立て冶具(200)。
【請求項11】
各々が、高さの約半分の切り欠き長さを有する複数のスロット(6)と、当該スロットの隣かまたは間にあるタブ(7)とを有する複数の上部ストラップ(4)および複数の下部ストラップ(4)から成る原子燃料棒の支持格子(10)の組立て冶具(20、20’、200)であって、当該組立て冶具は、
当該支持格子の上部ストラップを挿嵌するように構成された複数の棒状体(39)および複数の上部セル(24)を有する上部支持板(32)と、
当該上部支持板に対して移動可能な上部作動板(30)と、
当該上部作動板に取り付けられ、当該上部作動板の当該上部支持板に対する動きに基づいて当該複数の棒状体に挿嵌された当該上部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成された複数の上部カム機構体(22)とから成る冶具の上部(20’)を含み、
当該上部カム機構体は当該上部支持板の上部セルに1つ置きに配置されており、
当該組立て冶具はまた、
当該支持格子の下部ストラップを挿嵌するように構成された複数の溝(38)および複数の下部セル(24)を有する下部支持板(32、320)と、
当該下部支持板に対して移動可能な下部作動板(30、300)と、
当該下部作動板に取り付けられ、当該下部作動板の当該下部支持板に対する動きに基づいて当該複数の溝に挿嵌された当該下部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成された複数の下部カム機構体(22)とから成る冶具の下部(20)を含み、
当該下部カム機構体は当該下部支持板の下部セルに1つ置きに配置されており、
当該冶具の上部は当該冶具の下部を反転させた構成であることを特徴とする組立て冶具。
【請求項12】
前記上部カム機構体は、前記下部カム機構体が前記下部ストラップのタブをたわませる方向とは反対の方向に前記上部ストラップのタブをたわませるように構成されていることを特徴とする、請求項11の組立て冶具(20、20’、200)。
【請求項13】
前記冶具の上部と前記冶具の下部とを対向させると、前記上部カム機構体は前記冶具の下部の空の下部セルに対向し、前記下部カム機構体は前記冶具の上部の空の上部セルに対向することを特徴とする、請求項11の組立て冶具(20、20’、200)。
【請求項14】
前記上部カム機構体は、前記上部支持板(32)に対する前記上部作動板(30)の動きに基づいて前記上部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成されており、前記下部カム機構体は、前記下部支持板(32)に対する前記下部作動板(30)の動きに基づいて前記下部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成されていることを特徴とする、請求項11の組立て冶具(20、20’)。
【請求項15】
前記上部作動板は第1の上部作動板(300)および第2の上部作動板(310)を有し、前記下部作動板は第1の下部作動板(300)および第2の下部作動板(310)を有し、当該第1の上部作動板は当該第2の上部作動板に対して動くように構成され、当該第1の下部作動板は当該第2の下部作動板に対して動くように構成され、前記上部カム機構体は当該第2の上部作動板に対する当該第1の上部作動板の動きに基づいて前記上部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成され、前記下部カム機構体は当該第2の下部作動板に対する当該第1の下部作動板の動きに基づいて前記下部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成されていることを特徴とする、請求項11の組立て冶具(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して原子燃料棒の支持格子に関し、具体的には、原子燃料棒の支持格子の組立て冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷式原子炉の多くは、炉心が多数の細長い燃料集合体から構成されている。加圧水型原子炉(PWR)の燃料集合体は通常、その長さに沿って軸方向に離隔配置され、複数の長尺シンブル管に固着された複数の支持格子が複数の燃料棒を規則的に配列して保持する構成である。シンブル管は通常、制御棒または炉内計装体を受容する。燃料集合体の両端部にある上部および下部ノズルは、燃料棒端部の上方または下方へ延びるシンブル管の端部に固定される。
【0003】
関連技術分野で知られるように、支持格子は、原子炉の炉心内において燃料棒を正確な間隔を保ちながら横方向に支持すると共に冷却材の混合を誘起するために使用される。従来型設計の支持格子の1つのタイプに、複数のストラップを相互に差し込むことにより、複数のほぼ正方形のセルがそれぞれ燃料棒を受容する卵箱構造を形成したものがある。シンブル管は、その構成にもよるが、燃料棒を受容するセルと同じサイズのセルか、または、相互に差し込まれたストラップにより画定される比較的大きいシンブル管セルに挿入される。相互に差し込んだストラップは、ストラップを燃料集合体の長さに沿って離隔する位置でシンブル管に固定するにあたり、シンブル管に対する位置決めを可能にする。
【0004】
図1は、従来型設計の支持格子の上部ストラップ2および下部ストラップ4の一部を示す。ストラップ2、4はそれぞれ、複数のスロット6を有する。スロット6は、ストラップ2、4をその高さの約半分の長さだけ切り欠いたものであり、各スロット6の隣にタブ7が形成される。ストラップ2、4は、上部ストラップ2と下部ストラップ4とを直交するように配列し、上部ストラップ2のスロット6を下部ストラップ4の対応するスロット6にはめ込むことによって組み立てる。
図1は1つの上部ストラップ2および1つの下部ストラップ4の一部を示すが、従来型の支持格子の典型的構成は、12〜16組の上部および下部ストラップ2、4から成る。上部および下部ストラップ2、4は、それらの最上部から或る角度で延伸する混合翼9を含むことがある。
【0005】
組み立てられた従来型支持格子10の一部を
図2に例示し、この支持格子10を備えた燃料集合体40の立面図を
図3に示す。混合翼9は、
図2、3には図示しない。燃料集合体40は、加圧水型原子炉に使用するタイプであり、基本構成として、燃料集合体を炉心領域の下部炉心板(図示せず)の上に支持するための最下方の構造物である下部ノズル42と、下部ノズル42から縦方向上方に延びる多数の案内シンブルまたはシンブル管44とを含む。燃料集合体40はさらに複数の支持格子10を含む。支持格子10は、案内シンブル44に沿って軸方向に離隔し、当該案内シンブル44に支持される。燃料集合体40はまた、支持格子10により規則的に横方向に離隔して配列され支持された複数の細長い燃料棒36を含む。燃料集合体40はまた、その中心部に計装管46を、さらに案内シンブル44の上端部に取り付けられた最上方の構造物である上部ノズル48を有する。このような部品の配置構成により、燃料集合体40は、部品の全体構成を損なうことなく容易に取り扱うことができる一体型ユニットを形成する。
【0006】
上述したように、燃料集合体40の燃料棒36は、燃料集合体の長さに沿って離隔した支持格子10により、互いに離隔した配列で支持される。各燃料棒36は原子燃料ペレット50を含んでおり、燃料棒36の両端部は、燃料棒を気密封止するためにそれぞれ上部端栓52および下部端栓54により密封されている。一般に、ペレットを燃料棒36内で隙間なく積み重ねた状態に保つために、プレナムばね56が上部端栓52とペレット50の間に設けられている。核分裂性物質より成る燃料ペレット50は、PWRの核反応エネルギーを発生させる元である。炉心で発生する熱を抽出して有用な仕事を発生させるために、水や、ホウ素含有水などの液体減速材/冷却材が炉心内で燃料集合体を上向きに貫流するように圧送される。
【0007】
核分裂プロセスを制御するために、多数の制御棒58が、一部の燃料集合体40の所定位置にある案内シンブル44内を往復移動可能である。具体的には、上部ノズル48に関連して設けられ、複数の鉤またはアーム64が内部にねじ溝のある円筒形部材62から放射状に延びる棒クラスタ制御機構60が、すべて公知の態様で、制御棒58を案内シンブル44内で垂直に移動させ、燃料集合体40内の核分裂プロセスの制御を可能にする。
【0008】
支持格子10を組み立てるには、多数の上部および下部ストラップ2、4を嵌合させる必要がある。しかし、上部および下部ストラップ2、4の対応するスロット6は寸法公差が小さいので、ストラップ2、4の位置や向きを正しく調整して嵌合させるのは容易でない。特に、ストラップ2、4の嵌合を自動化して、複数組のストラップ2、4を同時に嵌合させるのは難しい。そのため、支持格子10の組立ては労働集約的で、ミスが生じやすく、コストがかさむ工程である。したがって、従来型支持格子10などの支持格子をより効率的に組み立てることが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
上記および他の目的は、本発明の一実施態様に基づいて、各々が、高さの約半分の切り欠き長さを有する複数のスロットと、当該スロットの隣かまたは間にあるタブとを有する複数のストラップから成る原子燃料棒の支持格子の組立て冶具により達成される。当該組立て冶具は、作動板と、当該支持格子のストラップを挿嵌するように構成された複数の挿嵌部および複数のセルを有する支持板と、当該複数の挿嵌部に挿嵌された当該ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成された複数のカム機構体とから成る。当該カム機構体は当該支持板のセルに1つ置きに配置されている。
【0010】
上記および他の目的は、本発明の別の実施態様に基づいて、各々が、高さの約半分の切り欠き長さを有する複数のスロットと、当該スロットの隣かまたは間にあるタブとを有する複数の上部ストラップおよび複数の下部ストラップから成る原子燃料棒の支持格子の組立て冶具により達成される。当該組立て冶具は、冶具の上部と下部とから成る。冶具の上部は、上部作動板と、支持格子の上部ストラップを挿嵌するように構成された複数の棒状体および複数の上部セルを有する上部支持板と、当該複数の棒状体に挿嵌された当該上部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成された複数の上部カム機構体とから成る。当該上部カム機構体は当該上部支持板の上部セルに1つ置きに配置されている。冶具の下部は、下部作動板と、支持格子の下部ストラップを挿嵌するように構成された複数の溝および複数の下部セルを有する下部支持板と、当該複数の溝に挿嵌された当該下部ストラップのタブを1つ置きにたわませる動きをするように構成された複数の下部カム機構体とから成る。当該下部カム機構体は当該下部支持板の下部セルに1つ置きに配置されており、当該冶具の上部は当該冶具の下部を反転させた構成である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0012】
【
図1】上部ストラップおよび下部ストラップの一部を示す等角図である。
【0013】
【
図2】組み立てられた支持格子の一部の等角図である。
【0014】
【
図3】図示を明瞭にするために部品を破断して垂直方向に短縮した、
図2の支持格子を用いる燃料集合体の部分破断立面図である。
【0015】
【
図4A】本発明の一実施態様に基づく冶具の下部の一部を示す等角図である。
【0016】
【
図4B】本発明の一実施態様に基づく冶具の上部の一部を示す等角図である。
【0017】
【
図5A】本発明の一実施態様に基づく冶具の下部の上面図である。
【0018】
【
図5B】本発明の一実施態様に基づく冶具の上部の下面図である。
【0019】
【
図6】本発明の実施態様に基づく冶具によって上部ストラップに生じるたわみを示す等角図である。
【0020】
【
図7】本発明の一実施態様に基づく冶具の下部の一部を示す断面図である。
【0021】
【
図8】本発明の別の実施態様に基づく冶具の下部の一部を示す断面図である。
【0022】
【
図9】
図8の冶具の下部の作動板を示す等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図4Aは、本発明の一実施態様に基づく冶具の下部20の一部を示す等角図である。
図2、3に示す支持格子10のような原子燃料棒の支持格子の組立てを補助するために、冶具の下部20を、類似する冶具の上部20’(
図4Bを参照)と共に使用することができる。冶具の下部20と上部20’を合わせて、一つの冶具と見なす。
【0024】
冶具の下部20は、支持格子10の下部ストラップ4を挿嵌して保持するように構成されている。冶具の下部20は、下部ストラップ4に当接して当該下部ストラップ4のタブ7を1つ置きにたわませるように構成された複数のカム機構体22を含む。冶具の下部20は複数のセル24から成る支持板32を含み、カム機構体22がセル24に1つ置きに配置されている。支持板32には、当該支持板32に形成された溝38のような、下部ストラップ4を挿嵌するように構成された挿嵌部がある。冶具の下部20はまた、作動板30を含む。作動板30、支持板32およびカム機構体22は、
図7に関連してさらに詳説する。
【0025】
本発明をさらに明瞭に説明するために、サイズのみを限定した冶具の下部20を
図4Aに示す。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、冶具の下部20に任意の数のセル24およびカム機構体22を設けることが可能なことがわかるであろう。また特に、冶具の下部20に
図4Aに示すよりも多数のセル24およびカム機構体22を形成することは、通常の技量を有する当業者が想到できるであろう。
【0026】
図4Bは、本発明の一実施態様に基づく冶具の上部20’の一部を示す。冶具の上部20’は、下部20と同様に、複数のセル24に分割され、カム機構体22がセル24に1つ置きに配置されている。しかし、冶具の上部20’の支持板32に含まれる挿嵌部は、下部ストラップ4を挿嵌する溝38ではなく、セル24の角に配置され、支持板32の表面から突出する棒状体39である。上部ストラップ2の最上部は、混合翼9が妨げになるため、冶具の下部20の溝38のような挿嵌部では挿嵌不可である。一方、棒状体39は、支持板32の表面から突出するため、混合翼9を支持板32の表面に当接させずに、上部ストラップ2を挿嵌することができる。このように、棒状体39が、冶具の上部20’への上部ストラップ2の挿嵌を可能にする。
【0027】
図5Aは冶具の下部20の上面図、
図5Bは冶具の上部20’の下面図である。冶具の下部20と上部20’はよく似ており、共にカム機構体22とセル24とを有する。さらに、冶具の上部20’は下部20と同様に、挿嵌される上部ストラップ2のタブ7を1つ置きにたわませるように構成されている。ただし、
図5A、5Bに示すように、冶具の上部20’は下部20を反転させた構成である。このため、冶具の下部20および上部20’のカム機構体22は、互いに反対の方向を向いている。さらに、冶具の上部20’の1つのカム機構体22は冶具の下部20の1つの空のセル24と対向関係にあり、冶具の下部20の1つのカム機構体22は冶具の上部20’の1つの空のセル24と対向関係にある。また、冶具の下部20のカム機構体22が下部ストラップ4のタブ7をたわませる方向は、冶具の上部20’のカム機構体22が上部ストラップ2のタブ7をたわませる方向とは異なる。例えば、
図5A、5Bに示す冶具の下部20および冶具の上部20’の方向については、冶具の下部20のカム機構体22が下部ストラップ2のタブ7を左方または右方へたわませるのに対して、冶具の上部20’のカム機構体22は上部ストラップ2のタブ7を上方または下方へたわませる。
【0028】
図6は上部ストラップ2および下部ストラップ4の一部を示す等角図であり、それらのタブ7はすでに、冶具の上部20’および下部20のカム機構体22の作用によりたわんだ状態にある。
図6に示すように、各ストラップ2、4の隣接するタブ7同士は互いに反対方向にたわんでいる。カム機構体22がタブ7をたわませると、V字状のスロット6が形成される。
図6に示すように、上部および下部ストラップ2、4のタブ7がたわんでスロット6がV字状になると、上部ストラップ2と下部ストラップ4とは、その間に多少のずれがあっても、互いに嵌合することができる。一方、
図1に示すように、上部および下部ストラップ2、4のタブ7にたわみがない場合、上部ストラップ2と下部ストラップ4の間にずれがあると互いに嵌合することができない。
【0029】
冶具の下部20および上部20’のカム機構体22はさらに、上部および下部ストラップ2、4のタブ7をたわませたり、たわみをなくして
図1の元の形状に戻したりするように調整可能である。例えば、カム機構体22により上部および下部ストラップ2、4のタブ7をたわませて、上部ストラップ2と下部ストラップ4とを嵌合させた後、カム機構体22によるたわみをなくして、冶具の下部20および上部20’を上部および下部ストラップ2、4から取り外すことができる。その結果、
図2に示す支持格子10が得られる。ただし、冶具の下部20および上部20’を支持格子10の組立てに使用すると、多数のストラップを同時に互いに嵌合させることが可能になり、上部および下部ストラップ2、4の間の多少のずれは許容される。
【0030】
図7は、本発明の一実施態様に基づく冶具の下部20の一部を断面図で示す。冶具の下部20は、作動板30および支持板32を含む。作動板30には、当該作動板30から実質的に垂直方向に延びる複数のカム棒34が取り付けられている。支持板32には複数の開口37があり、各々の開口を対応するカム棒34が貫通する。
【0031】
支持板32には、複数対のレバー部材40が、蝶番43により蝶着されている。蝶番43は、開口37の中で支持板32に取り付けられている。カム棒34にはそれぞれ、レバー部材40と相互作用する一対の突出部45があり、その相互作用によって、レバー部材40は外方に開いて下部ストラップ4のタブ7をたわませるか、内方に閉じて下部ストラップ4のタブ7のたわみを解消する。
【0032】
さらに詳述すると、作動板30は、支持板32に近づくように、または支持板32から遠ざかるように移動できる。この動作により、カム棒34およびカム棒34の突出部45がレバー部材40に対して移動する。
図7の位置では、カム棒34の突出部45はレバー部材40の下部に当接するため、レバー部材40を内方に閉じる方向に回転させるから、下部ストラップ4のタブ7をたわませることはない。作動板30が支持板32に向かって上方に移動すると、カム棒34の突出部45は上方へ移動して、レバー部材40の下部と当接しなくなる。このため、レバー部材40の下部の内方への回転が可能となり、それにより、レバー部材40の上部が外方に動いて下部ストラップ4のタブ7をたわませる。したがって、作動板30を支持板32に対して移動させてレバー部材40を制御すると、下部ストラップ4のタブ7をたわませたり、たわみをなくしたりすることができる。1本のカム棒34と一対のレバー部材40とで、
図4A、4Bに示すカム機構体22の1つが形成される。カム機構体22は随意的に、
図4A、4Bに示すようなカバーを含むようにしてもよい。
【0033】
冶具の下部20にはさらに、溝38が形成されている。溝38は、下部ストラップ4を挿嵌するように構成したものである。したがって、支持格子10に含まれるすべての下部ストラップ4を、冶具の下部20の溝38に挿嵌することができる。冶具の上部20’は、上部ストラップ2を挿嵌するように構成された同様の溝38を含む。したがって、支持格子10のすべてのストラップ2、4を冶具の下部20および上部20’の溝38に挿嵌し、それらのストラップを同時に嵌合させることができる。
【0034】
図7を参照して冶具の下部20を説明したが、冶具の上部20’も同様の構成要素から成り、冶具の下部20と同様のはたらきをする。冶具の上部20と下部20’の違いは、
図4Bに関して前述したように、冶具の上部20’が、上部ストラップ2の挿嵌部として、溝38ではなく棒状体39を含むことである。したがって、本開示を簡略化するために冶具の上部20’についての別途の説明を省略するが、カム棒34および一対のレバー部材40が、
図4Bの冶具の上部20’について示す各々のカム機構体22の構成要素になり得ることを、通常の技量を有する当業者は想到できるであろう。
【0035】
図8は、本発明の別の一実施態様に基づく冶具の下部200の一部を断面図で示す。
図8は断面のみを示すが、冶具の下部200は、
図4、5Aに示す冶具の下部と同様の配置構成である。すなわち、冶具の下部200は複数のセル24から成る支持板320を含み、カム機構体22がセル24に1つ置きに配置されている。しかし、
図8の冶具の下部200のカム機構体22は、
図4、5Aに示す冶具の下部20のようにカム棒34とレバー部材40とから成るのではなく、第1のカム棒340と第2のカム棒350とを含む。
【0036】
冶具の下部200は、第1の作動板300、第2の作動板310および支持板320から成る。第1の作動板300には、第1の作動板300から実質的に垂直方向に延びる複数の第1のカム棒340が取り付けられている。第2の作動板310には、第2の作動板310から実質的に垂直方向に延びる複数の第2のカム棒350が取り付けられている。支持板320は複数の開口360を有し、各々の開口を対応する一対の第1および第2のカム棒340、350が貫通する。
【0037】
第1の作動板300と第2の作動板310は、
図9に詳しく示すように、相対的に動くように構成されている。第1および第2のカム棒340、350は、第1のおよび第2の作動板300、310と共に動くので、第1および第2の作動板300、310の動きによって第1のカム棒340と第2のカム棒350とは互いに近づいたり離れたりする。この第1および第2のカム棒340、350の動きを利用して下部ストラップ4のタブ7をたわませるように、第1および第2のカム棒340、350を動かすことができる。第1および第2のカム棒340、350に形成された突出部400、410は、下部ストラップ4のタブをたわませる第1および第2のカム棒340、350のはたらきを補助する。同様に、第1および第2のカム棒340、350の動きを利用して、下部ストラップ4のタブ7をたわませる第1および第2のカム棒340、350の動きを停止することができる。さらに詳説すると、第1および第2の作動板300、310を動かすことにより、第1および第2のカム棒340、350を互いに近づけて下部ストラップ4のタブ7に当接しないようにすることができる。
【0038】
冶具の下部200にはさらに、溝380が形成されている。この溝380は、下部ストラップ4を挿嵌するように構成したものである。したがって、支持格子10に含まれるすべての下部ストラップ4を、冶具の下部200の溝380に挿嵌することができる。
【0039】
図8、9を参照して冶具の下部200を説明したが、これに対応する冶具の上部については、冶具の下部200の溝380の代わりに
図4Bに示すような棒状体39を使用できることを、通常の技量を有する当業者は想到できるであろう。したがって、本開示を簡略化するために、
図8、9の冶具の下部200に対応する冶具の上部についての別途の説明を省略するが、本発明の範囲から逸脱することなく、溝380ではなく棒状体39を有する冶具の上部を形成し、冶具の下部200と共に使用することは、通常の技量を有する当業者なら想到できるであろう。
【0040】
本願で説明するように、
図2に示す支持格子10のような原子燃料棒の支持格子の組立てを補助するために、さまざまな冶具を使用することができる。本願で説明するさまざまな冶具を用いることにより、支持格子10の上部および下部ストラップ2、4を同時に嵌合させることができる。また、さまざまな冶具により上部および下部ストラップ2、4のタブ7をたわませて、スロット6をV字状にすることにより、上部ストラップ2と下部ストラップ4とを、両者の間に多少のずれがあっても、嵌合させることができる。したがって、本願で説明する冶具は、原子燃料棒の支持格子の組立てに係わる従来の労力、費用およびミスを減らす。
【0041】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。