特許第6876068号(P6876068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876068飽和ピクセルの検出方法、検出デバイス、カラー補正デバイス、電子デバイス及び記憶媒体
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  • 特許6876068-飽和ピクセルの検出方法、検出デバイス、カラー補正デバイス、電子デバイス及び記憶媒体 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876068
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】飽和ピクセルの検出方法、検出デバイス、カラー補正デバイス、電子デバイス及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04N 9/64 20060101AFI20210517BHJP
   H04N 9/04 20060101ALI20210517BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20210517BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20210517BHJP
【FI】
   H04N9/64 Z
   H04N9/04 B
   G06T1/00 510
   G06T7/90 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-551371(P2018-551371)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公表番号】特表2019-513335(P2019-513335A)
(43)【公表日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2017057222
(87)【国際公開番号】WO2017167700
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2020年3月17日
(31)【優先権主張番号】16305372.1
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518338149
【氏名又は名称】インターデジタル ヴイシー ホールディングス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】ポーリ,タニア フォテイニ
(72)【発明者】
【氏名】アベベ,メキデス
(72)【発明者】
【氏名】ララビ,チェイカー
(72)【発明者】
【氏名】ケルヴェ,ジョナタン
【審査官】 西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−062920(JP,A)
【文献】 特開2015−092301(JP,A)
【文献】 特開2015−092643(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108493(WO,A1)
【文献】 特開2006−333313(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/117454(WO,A1)
【文献】 特開2010−161557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 9/64
G06T 1/00
G06T 7/90
H04N 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像における飽和したピクセルの検出方法であって、前記ピクセルのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、前記検出方法は、ピクセルを検出するステップを含み、当該ピクセルのカラーは、カラー・チャネルのうち前記カラー・チャネルの飽和閾値を上回るものに対応する少なくとも1つのカラー座標を有し、
前記カラー・チャネルの飽和閾値は、前記画像の推定されたイルミナントを表現するカラー座標にそれぞれ等しく
前記推定されたイルミナントは前記画像の白色点に対応し、前記白色点は前記画像のシーンの中で白色として観察者に感知される色である、検出方法。
【請求項2】
スケーリングされたカラー座標が飽和値の一定のレンジ内に含まれるように、前記推定されたイルミナントを表現するカラー座標を、スケーリングされたカラー座標へスケーリングすることにより、前記カラー・チャネルの飽和閾値が取得される、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
スケーリングが色相を変化させずに実行されるように、前記推定されたイルミナントを表現するカラー座標を、スケーリングされたカラー座標へスケーリングすることにより、前記カラー・チャネルの飽和閾値が取得される、請求項1に記載の検出方法。
【請求項4】
スケーリングが前記推定されたイルミナントを表現するカラー座標間で一定の比率を維持するように、前記推定されたイルミナントを表現するカラー座標を、スケーリングされたカラー座標へスケーリングすることにより、前記カラー・チャネルの飽和閾値が取得される、請求項1に記載の検出方法。
【請求項5】
少なくとも1つのプロセッサを有し、画像における飽和したピクセルの検出のための検出デバイスであって、前記ピクセルのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、前記少なくとも1つのプロセッサは:
前記画像の推定されたイルミナントを表現するカラー座標を取得し、前記推定されたイルミナントは前記画像の白色点に対応し、前記白色点は前記画像のシーンの中で白色として観察者に感知される色であり、
前記推定されたイルミナントを表現するカラー座標にそれぞれ等しい前記カラー・チャネルに対する飽和閾値を取得し;
ピクセルを検出する;
ように構成され、当該ピクセルのカラーは、前記カラー・チャネルのうち前記カラー・チャネルの飽和閾値を上回るものに対応する少なくとも1つのカラー座標を有する、検出デバイス。
【請求項6】
カラー座標をスケーリングされたカラー座標へスケーリングすることは、スケーリングされたカラー座標が飽和値の一定のレンジ内に含まれるように実行される、請求項に記載の検出デバイス。
【請求項7】
前記カラーが異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現される、画像のカラーを補正するカラー補正デバイスであって、請求項又はに記載の飽和したピクセルの検出のための検出デバイスを有する、カラー補正デバイス。
【請求項8】
請求項に記載のカラー補正デバイスを組み込む電子デバイス。
【請求項9】
通信デバイス、ゲーム・デバイス、タブレット、ラップトップ、静止画像カメラ、ビデオ・カメラ、エンコード・チップ、静止画像サーバー、及びビデオ・サーバーから成る群から選択される請求項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
請求項1ないしのうち何れか一項に記載の前記検出方法を実行するようにディジタル・コンピュータを構成するプログラムを包含するコンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像の中で過剰に露出した又は飽和した領域を検出する分野に関連する。そのような検出はカラー補正前に特に使用され、例えば、より高いダイナミック・レンジへの変換のため又は画像復元のために使用される。
【背景技術】
【0002】
標準的な低ダイナミック・レンジ・カメラでワイド・ダイナミック・レンジのシーンをキャプチャーすると、飽和した又は過剰に露出した画像(saturated or over-exposed images)をもたらす結果となり得る。多くの画像又はビデオ・コンテンツは一般に低い又はスタンダードのダイナミック・レンジ(SDR)でコード化されるので、それらは一般に飽和及び/又は過剰露出した領域を含む。これらの場合に、より広い色域、より大きなダイナミック・レンジ、より大きな解像度の画像又はビデオ・コンテンツを表現することが可能なディスプレイ・デバイスが、今や利用可能になり始めている。従って、そのようなSDRコンテンツを表示する場合に、そのようなディスプレイ・デバイスの全ての能力を活用できるようになるには、これらSDRコンテンツの飽和又は過剰露出した領域における欠落した詳細事項及び情報を復元するために、一般に、これらのコンテンツに色補正が適用されるべきである。
【0003】
そのような色補正の第1ステップは、一般に、これらの過剰に露出した領域の識別を含む。例えば、画像のカラーが或るカラー座標で表現されるSDR画像であってその色座標の各々は異なるカラー・チャネルを表現し且つ8ビットでコード化されているSDR画像において、これらのカラー座標のうち255より高い全ての値は、一般に、255以下の値にクリップされる。通常、235が、8ビット画像における飽和カラー及び関連するピクセルを検出する共通の固定飽和閾値であるように想定される。235というそのような値の理由の1つは、この値より大きいと、そのSDR画像をキャプチャーしたカメラのセンサの応答が線形ではないかもしれないからである。コンテンツの過剰露出領域において欠落した詳細事項を復元するために使用される多くの通常の色補正方法では、過剰露出領域の識別は、これらの異なるカラー・チャネルの少なくとも1つにおける固定された飽和閾値を超えていることに基づいている。これらの異なるカラー・チャネルは、例えば、通常のR、G、Bチャネルである。そのような飽和閾値の下で、画像のカラーが飽和閾値より高い値の少なくとも1つのチャネルを有する全ての画像ピクセルは、過剰に露出したものと考えられ、この画像についての飽和した又は過剰に露出した領域を形成する。
【0004】
しかしながら、過剰に露出した領域を検出するためにそのような固定飽和閾値を利用することは問題となり得る。典型的なカメラ・センサでは、隣接するエレメントは、一般に、赤、緑、青の別々に着色されたフィルタによりカバーされ、これらのフィルタはそのカメラにより届けられる画像データのR,G,Bチャネルにそれぞれ対応する。従って、カメラ・センサの様々なエレメントは同じ量の光を常には受けないかもしれないし、それらのエレメントは各自の最大キャパシティに常に同時には到達せず、その結果、カメラにより届けられる画像データの赤、緑、青チャネルで異なる挙動をもたらすかもしれない。これは、特に、シーンの光が白色でない場合である。従って、RGB画像のこれら3つの全てのカラー・チャネルに固定飽和閾値を利用することは、過剰露出領域の劣った検出を招き、また不正確な以後の色補正を招いてしまうかもしれない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は上記の欠点を回避することである。
【0006】
この目的のため、本発明の対象は、画像における飽和したピクセルの検出方法であり、ピクセルのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、本方法は、ピクセルを検出するステップを含み、当該ピクセルのカラーは、カラー・チャネルのうち、カラー・チャネルの飽和閾値を上回るものに対応する少なくとも1つのカラー座標を有し、カラー・チャネルの飽和閾値は、画像のイルミナント(an illuminant)を表現するカラー座標にそれぞれ依存する。
【0007】
有利なことに、本発明は、特にシーンのイルミナントの提供を考慮しているので、飽和ピクセルの不適切な検出を抑制する。
【0008】
第1変形例において、複数のカラー・チャネルの複数の飽和閾値は、イルミナントを表現する複数のカラー座標にそれぞれ等しい。
【0009】
第2の好ましい変形例において、スケーリングされたカラー座標が飽和値の一定のレンジ内に含まれるように、イルミナントを表現するカラー座標を、スケーリングされたカラー座標へスケーリングすることにより、カラー・チャネルの飽和閾値が取得される。
【0010】
スケーリングは、色相を変化させずに実行されてもよいし、或いはイルミナント(ILL)を表現するカラー座標(rw,gw,bw)の間で一定の比率を維持する。
【0011】
本発明の対象は、画像における飽和したピクセルを検出する検出モジュールでもあり、ピクセルのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、本モジュールは少なくとも1つのプロセッサを有し、プロセッサは:
−画像のイルミナントを表現するカラー座標を推定し;
−イルミナントを表現するカラー座標にそれぞれ依存してカラー・チャネルに対する飽和閾値を取得し;
−ピクセルを検出する;
ように構成され、当該ピクセルのカラーは、カラー・チャネルのうち、カラー・チャネルの飽和閾値を上回るものに対応する少なくとも1つのカラー座標を有する。
【0012】
本発明の対象は、画像のカラーを補正するカラー補正デバイスでもあり、そのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、本デバイスは飽和ピクセルを検出する上記のようなモジュールを有する。ここで、カラー補正デバイスは、画像のカラーを変更するように構成される任意のデバイスを意味し、その変更はダイナミック・レンジの変更を含む。そのようなカラーの変更は、例えば、画像の復元、より高いダイナミック・レンジへの変換に関して実行されることが可能であり、特にこの画像の飽和領域で欠落した詳細を復元するステップの前に実行されることが可能である。
【0013】
本発明の対象は、上述したような画像中の飽和ピクセルの検出方法を実行するようにディジタル・コンピュータを構成するプログラムを含むコンピュータ読み取り可能な媒体でもある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、図1を参照しながら非限定的な例として与えられる以下の説明により更に明確に理解される。
図1図1は本発明による飽和ピクセルの検出方法の好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による飽和ピクセルの検出方法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、特定用途プロセッサ、又はそれらの組み合わせ、特に、画像中の飽和ピクセルの検出モジュールを形成するソフトウェア及びハードウェアの組み合わせの様々な形式で実現され得ることが、理解されるべきである。更に、ソフトウェアは、プログラム保存ユニットに実際に組み込まれるアプリケーション・プログラムとして実現されてもよい。アプリケーション・プログラムは、適切な任意のアーキテクチャを有するコンピュータにアップロードされてもよいし、コンピュータにより実行されてもよい。好ましくは、コンピュータは、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、入/出力(I/O)インターフェースのようなハードウェアを有するプラットフォームで実施される。プラットフォームは、オペレーティング・システム及びマイクロ命令コードを含んでもよい。本願で説明される様々なプロセス及びファンクションは、マイクロ命令コードの一部、アプリケーション・プログラムの一部、或いはそれらの何らかの組み合わせであってもよく、それらはCPUにより実行されてよい。更に、ディスプレイ・ユニット及び追加的なデータ保存ユニットのような他の様々なペリフェラル・ユニットがコンピュータ・プラットフォームに接続されてよい。
【0016】
画像中の飽和ピクセルの検出モジュールは、特に、カラー補正デバイスの一部分であるとすることが可能である。そのようなカラー補正デバイスは、特に、画像の復元のため、或いはより高いダイナミック・レンジへの画像の変換のために構成されてもよい。例示的及び非限定的な実施形態により、そのようなカラー補正デバイスは、モバイル・デバイス、通信デバイス;ゲーム・デバイス;タブレット(又はタブレット・コンピュータ);ラップトップ;静止画像カメラ;ビデオ・カメラ;エンコード・チップ;静止画像サーバー・及びビデオ・サーバー(例えば、ブロードキャスト・サーバー、ビデオ・オン・デマンド・サーバー、又はウェブ・サーバー)に包含されてよい。
【0017】
図1に示される様々なエレメントの機能は、専用のハードウェアだけでなく、適切なソフトウェアに関連するソフトウェアを実行することが可能なハードウェアを利用することによって提供されてもよい。
【0018】
シーンの画像の飽和ピクセルを検出する方法の主要な実施形態についての説明が以下に与えられており、その画像のカラーは一群のRGBカラー値により所与の色空間の中で表現され、これらのカラー値の各々は異なるカラー・チャネルに対応する。
【0019】
図1に示されるように、本方法の第1ステップは、画像の白色点(a white point)に対応するそのシーンのイルミナントILLのカラーの推定である。白色点は、たとえそれが色彩測定で実際には白色でなかったとしても、シーンの中で白色として観察者に感知されるカラーである。好ましくは、このイルミナントは、シーンの支配的なイルミナントであり、そのカラーは一群のRGBカラー値(即ち、rw,gw,bw)により表現される。このカラーを推定するために、各々のカラー成分の最大値を取得することが可能であり、即ち:画像の全ピクセルのうちの最大赤色値rmax、最大緑色値gmax、及び最大青色値bmaxを取得する。そのような推定は、シーンが、全ての赤色光を反射するオブジェクトを含み、全ての緑色光を反射するオブジェクトを含み、及び全ての青色光を反射するオブジェクトを含むことを意味する。従って、rw=rmax,gw=gmax,bw=bmaxである。イルミナントのそのような推定に関し、次の文献で説明されているようないわゆる色恒常性アルゴリズム(color constancy algorithms)を利用することも知られている:Arjan Gijsenij, Theo Gevers, and Joost van De Weijer, in Computational color constancy: Survey and experiments, IEEE Transactions on Image Processing, 20(9):2475−2489, 2011。例えば以下の色恒常性方法が試みられている:最大RGB法(maxRGB)、グレイ・ワールド法(Gray world)、グレイ・エッジ法(Gray edge)、濃淡レベル法(Shades of gray)、及びベイジアン法(Bayesian method)。
【0020】
この第1ステップの実施例として、より具体的には、次の文献に記載されている方法を利用することが可能である:Jun-yan Huo, Yi-lin Chang, Jing Wang, and Xiao-xia Wei described in the article entitled “Robust automatic white balance algorithm using gray color points in images”, in Consumer Electronics, IEEE Transactions on, 52(2):541−546, 2006。そのような方法は、以下のサブ・ステップを含む:
・RGB色空間において画像のカラーを表現するRiGiBiカラー座標を、CIELab色空間において同色を表現するLiaibiカラー座標に変換する。
【0021】
・画像Iのうち数式1(Eq.1)を満たす全てのピクセルiを選択し、選択されたものは集合Ωを形成する。この集合は、過剰飽和してはおらず及び白っぽい領域を表現する傾向が強いピクセルを含む。
【0022】
【数1】
ここで、ai,bi,LiはCIELab色空間でピクセルiのカラーを表現するものであり、提案される実施例ではt=0.3である。
【0023】
・数式(Eq.2)に示されるようなΩに属する全ピクセルの平均RGB値として、RGB色空間で白色点のカラーを表現するカラー座標rw,gw,bwを算出する。
【0024】
【数2】
ここで、Wrgbは成分としてrw,gw,bwを有するベクトルである。
【0025】
第1ステップの変形実施例として、飽和した(又はクリップされる)カラー値thrを有するピクセルは、平均RGB値を算出する際に考慮されない。そのような除外は、既に飽和に到達しているカラーを有するピクセルは、画像の白色点を適切には表現しない傾向があり、従って計算に含められるべきでないことを意味する。それを達成するため、数式(Eq.1)は次のように記載されることが可能である。
【0026】
【数3】

こうして、thr未満のカラー値Iiを有するピクセルiのみが、数式2の平均RGB値の算出に含められ、この場合において、飽和閾値thrを上回る任意のカラーはクリップされるであろう。この変形例では、以下のような高及び低の閾値を有しない。即ち、thrはまさに飽和閾値である。固定された範囲内でthrとして同じ値に設定されることが可能である。
【0027】
画像中の飽和ピクセルを検出する第1変形例において、推定されたイルミナントのカラー座標rw,gw,bwは、飽和ピクセルの検出のためのR,G,Bカラー・チャネルに関する閾値thr,thg,thbとしてそれぞれ維持される。thr=rw,thg=gw,thb=bwである場合、それは、r,g,bカラー座標を有する画像のカラーは、r>thr及び/又はg>thg及び/又はb>thbである場合に飽和したものとして考察されることを意味する。
【0028】
しかしながら、SDR画像から推定されるようなイルミナントのカラーを表現するカラー座標rw,gw,bwは、非常に多くの場合、過剰露出又は飽和の検出のための飽和閾値として直接的に使用されるには低すぎる値を有する。実際、非常に低い飽和閾値を利用することは、何らかの適切な露出のピクセルの誤検出を招く可能性がある。そのような理由で、図1に示される画像の飽和ピクセル検出の第2変形例が好ましく、その場合、飽和閾値thr,thg,thbは、イルミナントのカラーwrgbの推定されたカラー座標rw,gw,bwを、より高い値にスケーリングすることにより取得され;好ましくは、このスケーリングは、RGB色空間におけるイルミナントのカラー座標間で一定の比率を維持する:それは、例えば、thr/thg=rw/gw 及びthg/thb=gw/bw であることを意味する。そのようなスケーリングは、検出方法の第2ステップとして想定される。
【0029】
このスケーリングの一例として、推定されたイルミナントのカラー座標rw,gw,bwを、固定されたレンジ内[thl,thr]にシフトすることにより、閾値thr,thg,thbはそれぞれR,G,Bカラー・チャネルについて取得され、この場合において、thl及びthrは、可能性のある過剰露出閾値の強度/ルミナンスの下限及び上限である。値thl及びthrは特にユーザーにより設定される。RGBカラー値が8ビットにわたってエンコードされる状況で実行される以下の実施例では、thl=175及びthr=235である。
【0030】
min(Wrgb)がイルミナントのカラー座標rw,gw,bwの中の最小座標であり、max(Wrgb)がカラー座標rw,gw,bwの中の最大座標である場合、座標としてthr,thg,thbを有する閾値ベクトルthは、次のように定義される:
【0031】
【数4】

数式(Eq.3)及び(Eq.4)はそれぞれthlより小さい又はthrより大きいベクトルthのエレメントのみに影響する。従って、これらの数式は独立である。
【0032】
例えば、min(Wrgb)=rw、即ち赤の値であることが判明している場合、数式(Eq.3)は次のようになる:
【0033】
【数5】

上記の第2及び第3行では、thlからrwを減算している点に留意を要し、その理由はrwがWrgbの最小エレメントであることが判明しているからである。何れのエレメントについてもrw,gw,bw≧thlである場合、このエレメントは不変のまま残る。
【0034】
同様に、数式(Eq.4)に関し、max(Wrgb)=gw、即ち緑の値であることが判明している場合、数式(Eq.4)は、実際、次のようになる
【0035】
【数6】

再び、何れのエレメントについてもrw,gw,bw≦thrである場合、このエレメントは不変のまま残る。
【0036】
数式3は、飽和カラーの検出に使用される閾値thr,thg,thbは、イルミナントの全てのカラー座標rw,gw,bwについての同じ変換[thl-min(Wrgb)]により取得されることを、意味する。
【0037】
数式4は、飽和カラーの検出に使用される閾値thr,thg,thbは、1より大きな相似比(a homothery ratio)「thr/max(Wrgb)」を利用して、イルミナントの全てのカラー座標rw,gw,bwの同じ相似比によって取得されることを、意味する。
【0038】
図1に示される第3ステップでは、画像中の飽和ピクセルが、r>thr及び/又はg>thg及び/又はb>thbであるように、r,g,bカラー座標により表現されるカラーを有するものとして識別される。これらの飽和ピクセルは、画像の飽和領域を形成する。
【0039】
上記のスケーリングの変形例において、このスケーリングは、上記のデバイス依存RGB色空間で完全に実行されるのではなく、知覚的に一様な色空間(a perceptually-uniform color space)(「LCh色空間」と言及される)で部分的に実行される。
【0040】
この変形例の第1サブ・ステップでは、このイルミナントの緑成分gwが次式のようにthrにスケーリングされるように、中間閾値ベクトルth’が、イルミナントのカラーWrgbをスケーリングすることにより算出される。
【0041】
【数7】

緑成分は好ましくはこのスケーリング・サブ・ステップに関して選択され、その理由は、赤及び青の成分とは異なり、画像のルミナンスに対して最大の寄与を有するからである。しかしながら、このスケーリングに関してイルミナントの赤又は青の成分を利用することも可能である。
【0042】
中間閾値ベクトルth’のうちの任意のカラー成分th’r,th’g,th’bが、最大ビット値(ここでは、255)を超える場合、RGB色空間において閾値カラーを表現するこれらのカラー成分th’r,th’g,th’bを、LCh色空間において同色を表現するカラー成分th’L,th’C,th’hに色変換した後、クロマ成分th’Cは、縮小された値th”C=k.th’Cにスケーリングされ、それにより、カラー成分th’L,th”C,th’hのRGB色空間における変換により生じる何れのカラー成分th”r,th”g,th”bも、最大ビット値255を超えず、この場合において、kは1に可能な限り近い又は1より小さい。そのようなkの値は反復法により発見されることが可能である。最終的な閾値カラーth”は、カラー成分th”r,th”g,th”bによりRGB色空間内で表現されるカラーである。
【0043】
上記のクロマ・スケーリングは色相(hue)を変化させずに実行されるので、スケーリングのこの変形例は、有利なことに、画像のイルミネーション・ポイントの色相が変更されないことを保証し、従って、有利なことに、画像の飽和ピクセルを検出した後に、飽和した/クリップされたエリアの補正で意図しない如何なる色相変化も回避される。イルミネーション・ポイントは、「CIE LCh色空間」におけるクロマ成分をスケーリングすることにより、調整されるので、より小さくなり又は非飽和になり、有利なことにその色相を保つ。
【0044】
シーンの画像中の飽和ピクセルを検出する上述の方法及びモジュールは、有利なことに、飽和ピクセルについての不適切な検出を抑制し、特にその理由は、この検出がシーンのイルミナントの効果を考慮しているからである。
【0045】
本発明の例示の実施形態は添付図面を参照しながら説明されてきたが、本発明はこれらの詳細な実施形態に限定されないこと、並びに様々な変形及び修正が本発明から逸脱することなく当該技術分野の当業者により施されてもよいことが、理解されるべきである。そのような全ての変形及び修正は、添付の特許請求の範囲内に包含される。即ち保護が請求される本願発明は、当業者に明らかであるように、本願で説明された特定の具体例及び好ましい実施形態からの変形例を包含する。
【0046】
幾つかの具体的な実施形態は個別的に説明され保護が請求されるかもしれないが、本願で説明され保護が請求される実施形態の様々な特徴は組み合わせて使用されてもよいことが理解される。
以下、本願により教示される手段を例示的に列挙する。
(付記1)
画像における飽和したピクセルの検出方法であって、前記ピクセルのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、前記検出方法は、ピクセルを検出するステップを含み、当該ピクセルのカラーは、カラー・チャネルのうち前記カラー・チャネルの飽和閾値を上回るものに対応する少なくとも1つのカラー座標を有し、前記カラー・チャネルの飽和閾値は、前記画像のイルミナントを表現するカラー座標にそれぞれ依存する、検出方法。
(付記2)
前記カラー・チャネルの飽和閾値は、前記イルミナントを表現するカラー座標にそれぞれ等しい、付記1に記載の検出方法。
(付記3)
スケーリングされたカラー座標が飽和値の一定のレンジ内に含まれるように、前記イルミナントを表現するカラー座標を、スケーリングされたカラー座標へスケーリングすることにより、前記カラー・チャネルの飽和閾値が取得される、付記1に記載の検出方法。
(付記4)
スケーリングが色相を変化させずに実行されるように、前記イルミナントを表現するカラー座標をスケーリングすることにより、前記カラー・チャネルの飽和閾値が取得される、付記1に記載の検出方法。
(付記5)
スケーリングが前記イルミナントを表現するカラー座標間で一定の比率を維持するように、前記イルミナントを表現するカラー座標を、スケーリングされたカラー座標へスケーリングすることにより、前記カラー・チャネルの飽和閾値が取得される、付記1に記載の検出方法。
(付記6)
少なくとも1つのプロセッサを有し、画像における飽和したピクセルの検出モジュールであって、前記ピクセルのカラーは異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現され、前記少なくとも1つのプロセッサは:
前記画像のイルミナントを表現するカラー座標を推定し;
前記イルミナントを表現するカラー座標にそれぞれ依存して前記カラー・チャネルに対する飽和閾値を取得し;
ピクセルを検出する;
ように構成され、当該ピクセルのカラーは、前記カラー・チャネルのうち前記カラー・チャネルの飽和閾値を上回るものに対応する少なくとも1つのカラー座標を有する、検出モジュール。
(付記7)
カラー座標をスケーリングされたカラー座標へスケーリングすることは、スケーリングされたカラー座標が飽和値の一定のレンジ内に含まれるように実行される、付記6に記載の検出モジュール。
(付記8)
前記カラーが異なるカラー・チャネルに対応するカラー座標により表現される、画像のカラーを補正するカラー補正デバイスであって、付記6又は7に記載の飽和したピクセルの検出モジュールを有する、カラー補正デバイス。
(付記9)
付記8に記載のカラー補正デバイスを組み込む電子デバイス。
(付記10)
通信デバイス、ゲーム・デバイス、タブレット、ラップトップ、静止画像カメラ、ビデオ・カメラ、エンコード・チップ、静止画像サーバー、及びビデオ・サーバーから成る群から選択される付記9に記載の電子デバイス。
(付記11)
付記1ないし5のうち何れか一項に記載の検出方法を実行するようにディジタル・コンピュータを構成するプログラムを包含するコンピュータ読み取り可能な媒体。
図1