(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876077
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】蒸気発生器具のためのプラグ及びディスペンサ
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20200101AFI20210517BHJP
A24B 7/00 20060101ALI20210517BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20210517BHJP
A24B 15/16 20200101ALI20210517BHJP
【FI】
A24F47/00
A24B7/00
A24F40/20
A24B15/16
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-13621(P2019-13621)
(22)【出願日】2019年1月29日
(62)【分割の表示】特願2016-511094(P2016-511094)の分割
【原出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2019-92514(P2019-92514A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年1月30日
(31)【優先権主張番号】13166240.5
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】JT INTERNATIONAL S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】100169100
【弁理士】
【氏名又は名称】辰川 肇
(72)【発明者】
【氏名】イルマス,ウゴルハン
(72)【発明者】
【氏名】スズキ,トシフミ
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー,バリー
(72)【発明者】
【氏名】ガロバノバ,タチアナ
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−505874(JP,A)
【文献】
特表2007−507231(JP,A)
【文献】
特開2000−224978(JP,A)
【文献】
特開平05−184675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24B 7/00
A24B 15/16
A24F 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器具のためのプラグであって、
揮発性材料と少なくとも20wt%の保湿剤とを含む揮発性製品
を備え、
前記プラグは、蒸気発生器具にプラグを挿入するためのディスペンサ内に収容されており、
前記揮発性材料は、植物繊維を含み、
前記植物繊維は、0.85から0.60mm、0.60から0.40mm及び0.40から0.25mmの3つの範囲の粒径を有する、
プラグ。
【請求項2】
前記揮発性製品は、20から60wt%の保湿剤を含む、
請求項1に記載のプラグ。
【請求項3】
前記揮発性製品は、50wt%の保湿剤を含む、
請求項1に記載のプラグ。
【請求項4】
前記保湿剤は、プロピレングリコール又はグリセロールの少なくとも一方を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のプラグ。
【請求項5】
前記植物繊維は、5wt%以下の含水量を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のプラグ。
【請求項6】
前記植物繊維は、1から5wt%の含水量を有する、
請求項5に記載のプラグ。
【請求項7】
前記植物繊維は、4wt%の含水量を有する、
請求項5に記載のプラグ。
【請求項8】
前記植物繊維は、タバコを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のプラグ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のプラグを蒸気発生器具に挿入するためのディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器具に用いられる、揮発性材料及び揮発性材料収容カプセル
等に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコのような揮発性材料を燃焼させることなく加熱し、吸入蒸気を発生させる器具が普及しつつある。これらの器具は通常、ガス又は電気を用いる熱源と、揮発性材料のプラグ、又は蒸気発生物を収容する使い捨てカプセルを受容するチャンバとを備えている。使用時には、このプラグ又はカプセルを器具に挿入し、熱源で加熱して吸入蒸気を発生させる。この種の器具の一例が、PCT国際公開第2009/079641号に記載されている。
【0003】
この種の器具が普及しつつあるのは、タバコのような植物材料を燃焼させることなく、揮発性材料を喫煙する行為に極めて近い体験をユーザにもたらすことができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT国際公開第2009/079641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の器具は、蒸気の発生レベルが一定でなく、個々のカプセルの使用可能時間がばらついていることが多く、このことがユーザに提供される風味の不安定さに繋がっているため、必ずしも消費者に好評ではない。上記の材料は加熱されるものであって、燃焼されるものではないので、その香りを維持する揮発性材料の調製方法を実現することは重要である。
【0006】
さらに、味のレベルの高低のいずれか、及び/又は味の持続時間の長短を自在に調節できる揮発性材料に対する要望もある。
【0007】
本発明は、これらの課題の少なくとも一部を解決し得る揮発性材料
を含むプラグ及びそのプラグを蒸気発生器具に挿入するためのディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の側面によれば、本発明は、蒸気発生器具のためのプラグであって、揮発性材料と少なくとも20wt%の保湿剤とを含む揮発性製品を備え、蒸気発生器具にプラグを挿入するためのディスペンサ内に収容され
ているプラグを提供する。
【0009】
第2の側面によれば、本発明は、
第1の側面に係るプラグを蒸気発生器具に挿入するためのディスペンサを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明にかかるカプセルを有する加熱器具の側断面図である。
【
図2】プラグと本発明にかかるカプセルとを通して見た側断面図である。
【
図3】試験サンプルA、B及びCの第5、10、15及び20パフ(puff(一吹かし))目における総プロピレングリコール(PG)収率を示すグラフである。
【
図4】試験サンプルD、E及びFの第5、10、15及び20パフ目における総PG収率を示すグラフである。
【
図5】試験サンプルG、H及びIの第5、10、15及び20パフ目における総PG収率を示すグラフである。
【
図6】ネガティブコントロールサンプルJの第5、10、15及び20パフ目における総PG収率を示すグラフである
【
図7】試験サンプルA、B及びCの第5、10、15及び20パフ目における総粒子状物質(TPM)収率を示すグラフである。
【
図8】試験サンプルD、E及びFの第5、10、15及び20パフ目における総TPM収率を示すグラフである。
【
図9】試験サンプルG、H及びIの第5、10、15及び20パフ目における総TPM収率を示すグラフである。
【
図10】ネガティブコントロールサンプルJの第5、10、15及び20パフ目における総TPM収率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の側面は、蒸気発生器具に用いて好適な揮発性材料に関し、この材料は、異粒径ブレンドを含み、これにより高刺激性/速達性の粒子を低刺激性/遅達性の粒子と混合させることが可能となる。この異粒径ブレンドにより、前述の蒸気発生器具を用いて吸入された場合にユーザに知覚される風味(flavour)の豊かさと滑らかさが改善されると共に、所望の味(taste)レベルの持続時間が改善する。
【0012】
本発明における「味」なる用語は通常の意味で用いられ、上記の揮発性材料の加熱により発生し吸入された蒸気が、ユーザの口内の味蕾(受容体)と化学的に反応して生ずる化学的感覚を指すものとする。味覚は、5つの基本的な味、即ち甘味、酸味、塩味、苦味、及び旨味に分類される。味と、臭い(嗅覚)及び三叉神経刺激とが相俟って、知覚される風味(flavour)が決まる。「風味」なる用語は、ユーザに知覚される吸入蒸気の感覚的印象を指し、主に、味と臭いとの化学的感覚により決定される。
【0013】
要求される異粒径ブレンドを含む揮発性材料は、本発明の第1の側面にかかる方法により得られ、その方法は植物繊維の粒径を1.5mm未満に減ずる工程を含む。上記植物繊維の粒径は、0.85mm未満に減ずることが好ましい。
【0014】
ここで用いる「揮発性」なる用語は当該技術分野における通常の意味で用いられ、加熱により固体状態又は液体状態から気体状態へと変換され得る材料を指すものとする。
【0015】
ここで用いる「粒径」なる用語は、粒子を篩別する際に該粒子が通過できる最小のメッシュ孔径を決定する粒子の最大径を指すものとする。
【0016】
上記揮発性材料は植物繊維を含み、好ましくはタバコを含む。タバコの好ましい形態としては、葉タバコ、STEM、エキスパンドタバコブレンド(expanded tobacco blend)及び再形成タバコブレンド(reconstituted tobacco blend)が挙げられる。この揮発性材料は着香料のような添加物を含んでもよい。
【0017】
本発明の揮発性材料は、タバコ加熱器具のような蒸気発生器具に用いるのに適している。かかる器具の一例をPCT国際公開第2009/079641号に見ることができる。
【0018】
上記植物繊維の粒径は、該繊維を粉砕、破砕又は裁断することによって、要求される範囲内に減ぜられる。上記繊維は裁断されることが好ましく、その裁断は切削ミルを用いて行われることが好ましい。
【0019】
上記方法は、裁断済みの植物繊維を篩別して粒径の異なる各繊維に分級する工程を更に含むことが好ましい。好ましいメッシュ孔径として0.85、0.60、0.40及び0.25mmが挙げられるが、変更して構わない。裁断済みの繊維を篩別によりその粒径にしたがって分級した後、本発明の方法では少なくとも2つの範囲、好ましくは3つ以上の範囲の裁断済み植物繊維を混合する工程を含むことが好ましい。例えば、0.85〜0.60mmの範囲の粒径を有する繊維を、0.40〜0.25mmの範囲の粒径を有する繊維と混合する。
【0020】
本発明の方法で得られる製品は、0.85〜0.25mmの範囲の粒径を有する一つの範囲の裁断済み植物繊維を含んでもよい。粒径分布の例を表1に示す。
【0022】
通常のタバコ喫煙者のパネルにより揮発性タバコ材の味の豊かさと滑らかさが向上したと判定された異粒径ブレンドの例を表2に示す。
【0024】
好ましい味レベルの提供期間が向上した異粒径ブレンドの例を表3に示す。
【0026】
任意に、裁断済みの上記植物繊維には、少なくとも1種類の保湿剤が添加される。保湿剤は、水分子に対してこれと水素結合をするのに親和性を有する吸湿性物質であり、本品の使用時に可視化された吐出エアロゾル(即ち、蒸気)を発生させるために用いられる。本発明の最終的な揮発性製品に用いて好適な保湿剤としては、プロピレングリコール(別名1、2−プロパンジオール又はプロパン−1、2−ジオール、化学式はC
3H
8O
2又はHO−CH
2−CHOH−CH
3)、及びグリセロール(別名グリセリン、化学式はC
3H
8O
3)が挙げられる。好ましい実施形態において、上記保湿剤はプロピレングリコールである。上記最終的な揮発性製品は少なくとも20wt%の保湿剤を含むことが好ましく、該保湿剤の含有量は20〜60wt%であることが好ましく、約50wt%であることが最も好ましい。
【0027】
本発明の方法は、上記植物繊維を乾燥させて所定の含水量とする工程を含んでもよい。当該乾燥工程は、植物繊維の粒径を減じる工程の前に実施することが、粒径の縮小(即ち、裁断)を容易化する上で好ましい。しかしながら、当該乾燥工程を上記粒径縮小工程の後、又は篩別工程の後に実施することもできる。当該乾燥工程は、当該物質を主に熱伝導によりバッチ式で乾燥させる加熱炉を用いて行うことが好ましい。或いは、回転乾燥機、気流乾燥機、高周波乾燥機を用いて連続式に行うこともできる。
【0028】
ここで、「含水量」なる用語は、タバコ等の植物材料繊維を含む任意の材料(例えば、揮発性材料)中に存在する水分(即ち、水)の量を指す。乾燥させた植物繊維の含水量は約5wt%以下であることが好ましく、約1〜5wt%であることが好ましく、約3〜5wt%であることがより好ましく、約4wt%であることが最も好ましい。
【0029】
当業者は、或る材料の含水量を決定するのに適した方法に精通しているであろうし、材料が変われば異なる方法を適用するであろう。誤解の無いように、タバコのような乾燥植物繊維を含む材料の含水量を決定する方法が次のように説明される。
【0030】
熱源、好ましくはハロゲンランプの温度を105oCに設定し、約2gの乾燥タバコのサンプルを計量のためのチャンバに置き、当該ランプで加熱する。水分の離脱に伴うこのサンプルの重量を、一定値となるまで測定する。当該含水量は、サンプルの初期重量(W
I)からサンプルの乾燥重量(W
D)を減算し、乾燥重量で除し、100を乗ずることで求められる。
【数1】
【0031】
好ましい実施態様において、本発明の上記第1の側面にかかる方法は、下記の各工程を含む。
(i)植物繊維を乾燥して所定の含水量とする工程;
(ii)当該植物繊維を裁断する工程;
(iii)上記裁断工程の後、裁断済みの植物繊維を篩別して粒径の異なる繊維に分級する工程;
(iv)当該植物繊維に少なくとも1種類の保湿剤を添加する工程;及び
(v)乾燥、篩別、裁断を経た植物繊維を当該保湿剤と混合する工程。
【0032】
本発明はまた、上述の方法で得られる揮発性材料にも関連する。得られる材料は、タバコ加熱器具のような蒸気発生器具に用いるのに適している。
【0033】
本発明の他の側面によれば、揮発性材料を加熱することで蒸気を発生させる蒸気発生器具に用いられる植物繊維を含む揮発性材料を製造する方法であって、前記植物繊維の粒径を該繊維の裁断により減じる工程を含む方法が提供される。この方法は更に、上記植物繊維が破砕も粉砕もされないことを特徴とする。
【0034】
上記植物繊維は、シザーを用いて粒径を減ずるホソカワアルピネ社製粉砕機Rotoplex Ro 28/40を用いて裁断されることが好ましい。
【0035】
上記植物繊維を破砕でも粉砕でもなく、裁断することの利点は、香りが材料中に保持され、使用前に逃げないことである。これにより、ユーザへ提供される味と風味が向上することになる。上記植物繊維は粒径1.5mm未満に裁断されることが好ましく、0.85〜0.25mmに粒径が減ぜられることが好ましい。
【0036】
本発明の本側面にかかる方法は、任意に、本発明の第1の側面にかかる方法に関連して上述した各工程の一つ、又は二つ以上を含んでよい。
【0037】
本発明はまた、本方法により得られる揮発性材料にも関する。得られる当該材料は、タバコ加熱器具のような蒸気発生器具に用いるのに適している。
【0038】
本発明のいずれかの方法で得られる当該揮発性材料は、気密パッケージに収容されることが好ましく、これにより本製品の含水量と風味とを時間を経ても保つことができる絶対バリアを提供する。「気密パッケージ」 なる用語は、密閉手段を備えた気体不透過性の容器を指し、本発明においては好ましくはカプセルである。理想的には、揮発性材料を含む上記製品は、該材料に大気中の水分が吸収されないよう、できるだけ速やかに加工・梱包される必要がある。
【0039】
図1に、PCT国際公開第2009/079641号に概説されているタイプのタバコ加熱器具1を示す。この器具は、マウスピース10、本体11、ヒーター12、加熱室13及び燃料源14を備える。また、この器具は、通常、その器具の温度、特に、使用時に当該器具内に置かれるコンテナ20を制御する加熱室内の温度を調節する制御部品群を備える。ここに例示した器具では熱源として可燃燃料を用いているが、上記器具は別のタイプの熱源や電源、例えば電熱器やバッテリーを備えていてもよい。
【0040】
使用時には、カプセル20を上記加熱室13に挿入し、ユーザによる制御下で、上記ヒーター12に燃料タンク14から燃料を供給して該加熱室13を加熱する。このカプセル20は、本発明の方法で得られる揮発性材料のプラグを含む。カプセルの中身が上記ヒーター12で加熱されると、当該コンテナの中身に基づいてエアロゾルが発生し、このエアロゾルがマウスピース10を通じてユーザに吸入される。
【0041】
図2は、本発明の方法で得られる揮発性材料のプラグ25を示す。本例では、上記プラグはカプセル20内に設けられている。このプラグ25は、上記器具1の加熱室13への挿入前にユーザによって開封される包装材に包まれた構成とすることができ、又は、ユーザが直接手で触れないよう、該プラグ25をディスペンサに収納した構成とし、これを用いて該プラグ25を器具1内へ挿入するようにしてもよい。
【0042】
以下、本発明を更に実施例に基づいて説明するが、この実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0043】
本発明者等は、粒径の異なるタバコ繊維を含む揮発性材料を調製することの効果を検討した。喫煙中の各成分(プロピレングリコール(PG)及び総粒子状物質(TPM))の放出量の安定性を、異粒径の植物繊維を含む様々な製品について比較した。
【0044】
試験サンプルは表4にしたがって調製した。
【0045】
【表4】
【0046】
ネガティブコントロールサンプル(サンプルJ)は表5にしたがって調製した。
【0047】
【表5】
【0048】
PGの収率は、フレームイオン化検出器を用いたガスクロマトグラフィ(GC−FID)により分析した。ここで採用した分析法は、ガスクロマトグラフィー法によるシガレット煙濃縮物中のニコチンのガスクロマトグラフ判定に関する標準プロトコルを定めたISO10315に準じている。ISO10315の詳細は、http://www.iso.org/iso/home.htmlに記載されている。この試験プロトコルは、揮発性材料を含む喫煙具から使用時に吐出される蒸気中のPG収率を代表する。具体的には、表6に示すように、第5、10、15及び20パフ目の吐出蒸気中のPG収率を測定した。
【0049】
【表6】
【0050】
定量分析は表7に示した各パラメータにもとづき、n−オクタデカン抽出により行った。
【0051】
【表7】
【0052】
図3〜5のデータは、第5、10、15及び20パフ目において測定された各サンプルA、B、C、D、E及びFの吐出蒸気中のPG収率(mg/ポッド)を示している。これらのグラフより、PG収率はタバコ製品の喫煙が進むにつれて単調に増加していることがわかる。一方、
図6はネガティブコントロール製品(サンプルJ)の同様のデータを示す。このグラフより、第15パフ〜第20パフ間の平坦な直線で示されるように、第15パフ以降は吐出煙中のPG収率の単調増加が停止している様子が明らかである。
【0053】
このデータは、通常タバコ喫煙者らのパネルによる主観的体験を支持しており、本発明の方法で調製された揮発性材料は使用時に各成分の放出が一貫していることを明らかに示している。このことが望ましい味と風味の提供期間の改善に繋がっている。PGは、蒸気中で他の成分のキャリアとして働く主成分の一つなので、上記の主観的体験データを支持するのに選択される客観的指標の一つである。
【0054】
図6に示されるように、当該植物繊維の粒径が本発明の範囲外にある場合、放出成分の収率(ひいては、所望の味と風味の提供)は概ね第15パフ以降で下降し始める。タバコ製品の喫煙時にはおおよそ40パフが取られると仮定すると(20分間において1分当たり2パフの喫煙速度に基づく)、ユーザが知覚する上記ネガティブコントロール製品の品質は、喫煙を通じて半分より手前で低下し始めることになる。
【0055】
図3〜5は、当該植物繊維の粒径が本発明の範囲内にある場合、放出成分の収率(ひいては、所望の味と風味の提供)が長く維持され、ユーザエクスペリエンスが向上することを示している。
【0056】
図7〜9には、
図3〜5に対応して総粒子状物質(TPM)のデータが示される。これらのグラフもまた、当該植物繊維の粒径が本発明の範囲内にある場合に、タバコ製品の喫煙が進むにつれTPM収率(mg/ポッド)が単調増加することを示している。一方、
図10は、ネガティブコントロール製品(サンプルJ)の同様のTPMデータを示している。このグラフより、第15パフ〜第20パフの間の平坦な直線で示されるように、吐出煙中のTPM収率の単調増加が第15パフ以降は停止することが明らかである。
【0057】
このTPMデータも、通常タバコ喫煙者らのパネルによる主観的体験を支持しており、本発明の方法で調製された揮発性材料は各成分の放出が一貫していることを明らかに示しており、このことがタバコ製品の所望の味と風味の提供期間の改善に繋がっている。
【0058】
上述の内容は、次のように特定することもできる。
(1)
揮発性材料を加熱することで蒸気を発生させる蒸気発生器具に用いられる植物繊維を含む揮発性材料を製造する方法であって、前記植物繊維の粒径を1.5mm未満に減ずる工程と、少なくとも2つの範囲の粒径の植物繊維を混合する工程と、を含む方法。
(2)
前記植物繊維の粒径を減ずる工程は、前記植物繊維を裁断する工程を含む、(1)に記載の方法。
(3)
前記裁断工程の後、裁断済みの植物繊維を篩別して粒径の異なる繊維に分級する工程を更に含む、(2)に記載の方法。
(4)
前記植物繊維を乾燥させて含水量を約5wt%以下とする工程を更に含む、(1)から(3)のいずれか一つに記載の方法。
(5)
(i)前記植物繊維を乾燥して含水量を約5wt%以下とする工程;
(ii)前記植物繊維を裁断する工程;
(iii)前記裁断工程の後、裁断済みの植物繊維を篩別して粒径の異なる繊維に分級する工程;
(iv)前記植物繊維に少なくとも1種類の保湿剤を添加する工程;及び
(v)乾燥、篩別、裁断を経た植物繊維を前記保湿剤と混合する工程
を含む、(1)から(4)のいずれか一つに記載の方法。
(6)
前記揮発性材料がタバコを含む、(1)から(5)のいずれか一つに記載の方法。
(7)
揮発性材料を加熱することで蒸気を発生させる蒸気発生器具に用いられる植物繊維を含む揮発性材料を製造する方法であって、前記植物繊維の粒径を前記植物繊維の裁断により減じる工程を含み、前記植物繊維は破砕も粉砕もされないことを特徴とする方法。
(8)
前記植物繊維を粒径1.5mm未満に裁断する、(7)に記載の方法。
(9)
少なくとも2つの範囲の粒径を有する裁断済み植物繊維を混合する工程を更に含む、(8)に記載の方法。
(10)
少なくとも1種類の保湿剤を前記植物繊維に添加する工程を更に含む、(7)から(9)の何れか一つに記載の方法。
(11)
前記植物繊維を含水量約5wt%以下まで乾燥させる初期工程を含む、(7)から(10)のいずれか一つに記載の方法。
(12)
(1)から(6)のいずれか一つに記載の方法、又は(7)から(11)のいずれか一つに記載の方法で得られる、蒸気発生器具に用いられる揮発性材料。
(13)
粒径0.85から0.25mmの植物繊維と、保湿剤とを含む揮発性材料であって、好ましくは前記植物繊維が0.85から0.60mm、0.60〜0.40mm及び0.40〜0.25mmの2つ以上の範囲内の粒径を有する粒子を含む揮発性材料。
(14)
(12)又は(13)に記載の揮発性材料を収容するカプセル。