(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るボイラ装置1の全体構成図である。
図1に示すように、ボイラ装置1は、燃料を燃焼させる火炉2と、火炉2内で発生した燃焼ガスの流路である燃焼ガス通路3と、スートブロワ装置4とを主に備える。火炉2及び燃焼ガス通路3は、ボイラ鉄骨の吊下げロッド及び吊下げビーム(図示省略)から吊り下げられている。なお、以下の説明においては、ボイラ装置1の火炉2側を缶前、燃焼ガス通路3の出口側を缶後という。
【0012】
火炉2は、バーナ(図示省略)で燃料を燃焼させることによって、燃焼ガスを発生させる。火炉2で発生した燃焼ガスは、燃焼ガス通路3を通って缶前から缶後に移動し、ボイラ装置1の外部に排出される。火炉2で燃焼させる燃料は、少なくとも石炭を含む。但し、石炭に加えて、石油、ガス、バイオマス燃料などを含んでもよい。そして、石炭を含む燃料を燃焼させると、灰が発生する。
【0013】
燃焼ガス通路3には、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、一次過熱器6、二次過熱器7、三次過熱器8が設けられている。一次過熱器6、二次過熱器7、三次過熱器8は、蒸気を通過させる配管群(複数の伝熱管の集合体)である。一次過熱器6、二次過熱器7、三次過熱器8を蒸気が通過する過程で燃焼ガスとの間で熱交換が行われ、所定の温度まで過熱された過熱蒸気がタービンに供給される。
【0014】
第1実施形態では、一次過熱器6が所謂「横置き型」であり、二次過熱器7及び三次過熱器8が所謂「吊下げ型」である。そして、二次過熱器7及び三次過熱器8は、燃焼ガスとの接触面積を増加させるために、上下方向に延設された複数の伝熱管を左右方向(
図1の奥行方向)に配列した構成となっている。
【0015】
ここで、燃焼ガスに含まれる灰が伝熱管の表面に付着すると、熱交換効率が低下する。そこで、第1実施形態に係るボイラ装置1では、スートブロワ装置4を用いて、伝熱管の表面に付着した灰を除去する。スートブロワ装置4は、伝熱管に向けて蒸気を噴射する装置であって、例えば、スートブロワチューブと、ノズルと、蒸気供給源とを備える。
【0016】
スートブロワチューブは、伝熱管の延設方向と交差する方向(例えば、左右方向)に延びる蒸気の通路である。スートブロワチューブは、回転(自転)しながら延設方向に進退可能に構成されている。ノズルは、スートブロワチューブの先端に設けられて蒸気を噴射する。蒸気供給源は、スートブロワチューブを通じて所定圧力の蒸気をノズルに供給するものである。なお、スートブロワ装置4の具体的な構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0017】
第1実施形態に係るボイラ装置1には、上記構成のスートブロワ装置4が所定の間隔で複数箇所に設けられている。そのため、スートブロワチューブの移動軌跡の近傍に位置する伝熱管は、ノズルから噴射された高圧の蒸気に晒されるので、エロージョンが発生する可能性がある。
【0018】
そこで、第1実施形態では、
図2〜
図4で示されるプロテクタ10を伝熱管9に外挿することによって、伝熱管9を保護する。
図2はプロテクタ10を分解した状態の断面斜視図、
図3はプロテクタ10を組み立てた状態の断面斜視図、
図4は伝熱管9にプロテクタ10を装着した状態の断面図である。プロテクタ10は、管体11と、第1エンド部材12と、第2エンド部材13とを主に備える。
【0019】
管体11は、直線的に延びる筒形状(より詳細には、円筒形状)の部材であって、例えば、SUS309、SUS310STP等の配管用ステンレス鋼で形成される。
図4に示すように、管体11の内径寸法φ
1は、伝熱管9の外形寸法φ
0より大きく設定されている。管体11の内径寸法φ
1と伝熱管9の外形寸法φ
0との差は、例えば、0.5mm〜1.0mm程度である。そして、管体11の軸方向の両端には、雄ねじ14、15が形成されている。
【0020】
第1エンド部材12は、管体11の一端に取り付けられる筒形状(より詳細には、円筒形状)の部材であって、例えば、鋳鉄で形成される。第1エンド部材12は、例えば、大径筒部16と、内径寸法が大径筒部16より小さい小径筒部17とを、軸方向に隣接させた形状である。
【0021】
大径筒部16の内径寸法は、管体11の外形寸法と略同一である。そして、大径筒部16の内面には、雄ねじ14に螺合する雌ねじ18が形成されている。すなわち、管体11及び第1エンド部材12は、雄ねじ14及び雌ねじ18を螺合させることによって締結され、逆向きに回転させることによって分離する。
【0022】
図4に示すように、小径筒部17の内径寸法φ
2は、伝熱管9の外形寸法φ
0より大きく設定され、管体11の内径寸法φ
1と同等か僅かに小さく設定されるのが望ましい。また、小径筒部17の外面は、大径筒部16の外面から連続する厚肉部19と、厚肉部19より肉厚が薄い薄肉部20とを含む。すなわち、また、薄肉部20の外形寸法は、厚肉部19より小さくなっている。
【0023】
また、第1エンド部材12の内面には、溝(係止部)21が形成されている。溝21は、伝熱管9の外面に突設されたストッパ9a、9bを受け入れるための凹部である。すなわち、溝21は、周方向におけるストッパ9a、9bの間隔(例えば、180°)に合わせて、ストッパ9a、9bと同じ数だけ形成される。
【0024】
溝21は、第1エンド部材12の内面から径方向に凹み、且つ軸方向に延設されている。溝21の一端は、第1エンド部材12の大径筒部16側(すなわち、管体11に接続される側)の端部において開放されている。一方、溝21の他端は、小径筒部17の厚肉部19の位置において、当接壁22によって閉塞されている。そして、
図3に示すように、管体11と第1エンド部材12とを結合させたとき、管体11の先端と当接壁22との間には、ストッパ9a、9bを収容可能な空間が形成される。
【0025】
第2エンド部材13は、管体11の他端に取り付けられる筒形状(より詳細には、円筒形状)の部材であって、例えば、鋳鉄で形成される。第2エンド部材13は、大径筒部23と、内径寸法が大径筒部23より小さい小径筒部24とを、軸方向に隣接させた形状である。
【0026】
大径筒部23の内径寸法は、管体11の外形寸法と略同一である。そして、大径筒部23の内面には、雄ねじ15に螺合する雌ねじ25が形成されている。すなわち、管体11及び第2エンド部材13は、雄ねじ15及び雌ねじ25を螺合させることによって締結され、逆向きに回転させることによって分離する。一方、
図4に示すように、小径筒部24の内径寸法φ
3は、伝熱管9の外形寸法φ
0より大きく設定され、管体11の内径寸法φ
1と同等か僅かに小さく設定されるのが望ましい。
【0027】
次に、伝熱管9にプロテクタ10を装着する手順を説明する。まず、二次過熱器7及び三次過熱器8が納品される際に、伝熱管9の所定位置(すなわち、エロージョン発生の可能性が高い位置)には、予めストッパ9a、9bが取り付けられている。ストッパ9a、9bは、例えば、溶接によって伝熱管9に取り付けられる。なお、ストッパ9a、9bは、伝熱管9と同じ素材(例えば、SUS、合金鋼)で形成されるのが望ましい。
【0028】
また、伝熱管9のプロテクタ10を装着する部分(以下、単に「伝熱管9」と表記する。)は、二次過熱器7及び三次過熱器8から取り外すことができる。一例として、伝熱管9は、二次過熱器7及び三次過熱器8から切断されて、プロテクタ10を装着した後に溶接で再結合されてもよい。他の例として、伝熱管9は、二次過熱器7及び三次過熱器8に対して、着脱可能に構成されていてもよい。
【0029】
まず、伝熱管9の上側(二次過熱器7及び三次過熱器8に取り付けられたときの上側)から、大径筒部16を下にして第1エンド部材12を挿入する。このとき、ストッパ9a、9bは、大径筒部16側の開放された端部から溝21に進入し、当接壁22に当接する。これにより、第1エンド部材12は、当接壁22に当接したストッパ9a、9bによって伝熱管9に係止される。
【0030】
次に、伝熱管9の下側から管体11を挿入する。そして、雄ねじ14及び雌ねじ18を螺合させることによって、管体11と第1エンド部材12とを結合する。次に、伝熱管9の下側から、大径筒部23を上にして第2エンド部材13を挿入する。そして、雄ねじ15及び雌ねじ25を螺合させることによって、管体11と第2エンド部材13とを結合する。
【0031】
第1実施形態によれば、第1エンド部材12、管体11、及び第2エンド部材13を伝熱管9に順番に挿入して、ねじを螺合させるだけで、伝熱管9にプロテクタ10を取り付けることができる。すなわち、特殊な工具や高い技術を必要とせず、短時間で簡単に取り付けることができる。
【0032】
また、第1実施形態によれば、伝熱管9の外面と管体11の内面との間に隙間(空気層)が設けられる。その結果、高温の燃焼ガスに晒される管体11が熱膨張しても、その応力が伝熱管9に伝達されない。その結果、伝熱管9とプロテクタ10との接合部分に剥離や割れが発生することなく、長期間に亘って伝熱管9を保護することができる。
【0033】
なお、第1実施形態では、ストッパ9a、9bを伝熱管9に溶接する例を説明した。しかしながら、ストッパ9a、9bは、伝熱管9と同じ素材(すなわち、熱膨張率が同じ)であり、且つ第1エンド部材12によって覆われているので、従来のように溶接部分の剥離や割れが発生する可能性は低い。
【0034】
また、第1実施形態によれば、第1エンド部材12の管体11から遠い側を小径筒部17としたので、伝熱管9とプロテクタ10との間に、第1エンド部材12の上方から灰が侵入することを抑制できる。また、第2エンド部材13の管体11から遠い側を小径筒部24としたので、伝熱管9とプロテクタ10との間に、第2エンド部材13の下方から灰が侵入することを抑制できる。その結果、二次過熱器7及び三次過熱器8の熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0035】
なお、第1実施形態では、第1エンド部材12に形成した溝21にストッパ9a、9bを挿入することによって、プロテクタ10を伝熱管9に吊り下げる例を説明した。しかしながら、プロテクタ10を伝熱管9に係止する具体的な方法は、前述の例に限定されない。他の例として、第1エンド部材12の先端(小径筒部17側の端部)をストッパ9a、9bに上面に当接させることによって、プロテクタ10を伝熱管9に係止してもよい。
【0036】
この場合、第1実施形態の場合と上下の向きを逆転させた状態で、第1エンド部材12、管体11、第2エンド部材13の順に、伝熱管9の上側から挿入すればよい。これにより、第1エンド部材12の下端がストッパ9a、9bに載置された状態で、伝熱管9に対してプロテクタ10が位置決めされる。この場合、第1エンド部材12の小径筒部17の先端面が係止部として機能する。また、この場合は、溝21を省略することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、第1エンド部材12及び第2エンド部材13に管体11を内挿する例を説明した。これにより、プロテクタ10を全体として小径化することができるので、伝熱管9が密集した場所にも取り付けることが可能となる。
【0038】
但し、管体11、第1エンド部材12、及び第2エンド部材13の位置関係は、前述の例に限定されない。他の例として、第1エンド部材12に管体11が外挿されてもよい。より詳細には、管体11の一端の内面に形成された雌ねじと、第1エンド部材12の外面に形成された雄ねじとを螺合してもよい。管体11及び第2エンド部材13の関係についても同様である。
【0039】
[第2実施形態]
管体11、第1エンド部材12、及び第2エンド部材13を結合するための構成は、ねじの螺合に限定されず、周方向に相対回転させることによって着脱可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。以下、
図5〜
図7を参照して、第2実施形態に係るプロテクタ10Aを説明する。
図5はプロテクタ10Aを分解した状態の斜視図、
図6は係合突起31及び係合壁33の係合が解除された状態を示す図、
図7は係合突起31及び係合壁33が係合された状態を示す図である。
【0040】
なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図1に示すボイラ装置1の構成は、第1実施形態と第2実施形態とで共通する。また、第2実施形態に係るプロテクタ10Aは、雄ねじ14、15及び雌ねじ18、25に代えて、係合突起31、32及び係合壁33、34を設けた点で第1実施形態と相違し、その他の点で第1実施形態と共通する。
【0041】
複数の係合突起31は、管体11の一端の外面において、径方向の外向きに突出している。複数の係合突起32は、管体11の他端の外面において、径方向の外向きに突出している。第2実施形態に係る係合突起31、32は、周方向に間隔(180°)を隔てて2箇所に設けられているが、係合突起31、32の数はこれに限定されない。
【0042】
複数の係合壁33は、第1エンド部材12の大径筒部16の内面において、径方向の内向きに突出している。また、複数の係合壁33は、周方向に離間した位置に設けられている。より詳細には、隣接する係合壁33の間の隙間は、複数の係合突起31と同じピッチ(すなわち、180°)で設けられている。また、隙間の周方向の長さは、係合突起31の周方向の長さより長く設定される。
【0043】
図6に示すように、隣接する係合壁33の間の隙間と、係合突起31との位相を合わせた状態で、第1エンド部材12に対して管体11を挿抜すると、係合突起31は隣接する係合壁33の間の隙間を通過する。すなわち、係合突起31の突出高さは、隣接する係合壁33の間の隙間に対面する位置において、大径筒部16に挿抜可能な高さに設定される。換言すれば、複数の係合突起31の先端を結ぶ仮想円の直径φ
4は、隣接する係合壁33の間の隙間の位置における大径筒部16の内径寸法φ
5より小さい。
【0044】
一方、
図7に示すように、隣接する係合壁33の間の隙間を係合突起31が通過した状態で、管体11及び第1エンド部材12を周方向に相対回転(
図6及び
図7の例では、90°)させると、係合突起31が係合壁33に係止されて、第1エンド部材12から管体11を抜去することができなくなる。すなわち、係合突起31の突出高さは、係合壁33に対面する位置において、大径筒部16に挿抜不能な高さに設定される。換言すれば、複数の係合突起31の先端を結ぶ仮想円の直径φ
4は、複数の係合壁33の先端を結ぶ仮想円の直径φ
6より大きい。
【0045】
複数の係合壁34は、第2エンド部材13の大径筒部23の内面において、径方向の内向きに突出している。係合壁34は、管体11の他端に設けられた係合突起32と係合して、管体11と第2エンド部材13とを結合させる。なお、係合壁34の位置、数、係合突起32との関係は、前述した係合突起31及び係合壁33の説明と共通するので、再度の説明を省略する。
【0046】
第2実施形態によれば、係合突起31、32と係合壁33、34との周方向の位相を変化させるだけで、管体11、第1エンド部材12、及び第2エンド部材13を相互に着脱することができる。その結果、ねじを螺合させる場合と比較して、伝熱管9に対するプロテクタ10の取付作業がさらに簡単になる。