【実施例】
【0053】
実施例1:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαを使用した、ポンペ病処置のための投与計画
本試験の目的の1つは、ポンペ病を有する患者における、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩(AT2220とも称される)及びアルグルコシダーゼαの共投与を含む投与計画の安全性、有効性及び薬物動態を評価することである。
【0054】
本試験の別の目的は、GAA活性に対する様々な用量の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の効果を評価することである。これは、投与から3及び/又は7日後にGAA活性及びタンパク質レベルを測定して、アルグルコシダーゼα単独と、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩と組み合わせたアルグルコシダーゼαとを投与した後の筋肉中のGAA活性を測定することによって評価される。
【0055】
アルグルコシダーゼαの注入の開始前に、WBC(PBMC)GAA活性及びタンパク質レベル、並びに抗−rhGAA抗体価を測定する。GAA酵素活性の血漿、WBC及び筋肉測定の全ては、Con A捕捉を有し及び有さずに行われ、タンパク質レベルはウエスタンブロットにより決定される。
【0056】
試験設計
これは1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαの共投与の安全性及び有効性を評価するための第二相臨床、単一用量、非盲検試験である。この試験は、試験エントリー前に少なくとも1ヶ月、アルグルコシダーゼαの安定用量を受容していた18〜65歳の男性及び女性対象において行われる。およそ16人の対象が登録する。
【0057】
この試験は、アルグルコシダーゼαの注入開始の1時間前に投与された、漸増用量(50、100、250及び600mg)の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の、GAAの薬物動態に対する安全性及び効果を評価するものである。4つの1−デオキシノジリマイシン塩酸塩用量レベルのそれぞれに、4人の対象が登録する。4人の対象からなる各コホートは、アルグルコシダーゼα単独の単一の静脈内注入を受容し、2〜4週間後に、アルグルコシダーゼαの静脈内注入の開始の1時間前に投与される単一の経口用量の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩を受容する。
【0058】
1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の次の用量レベルへの用量増大は、以前の用量レベルグループからの安全性及び耐容性データを再検討した後に進行され得る。再検討された安全性データは、有害事象(注入反応を含む)、臨床検査室試験(クレアチンキナーゼ、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4、12誘導ECG、理学的検査、筋力試験及び生命徴候を含む。
【0059】
各対象は、期間1においてアルグルコシダーゼα単独を静脈内注入として受容し、期間2においてアルグルコシダーゼαの静脈内注入の1時間前に、単一用量の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩を受容する。期間1及び2に投与されるアルグルコシダーゼαの用量は、同一である。
【0060】
各コホートは、4人の対象からなる。対象は、期間2における以下の用量レベルの1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の4つの投与コホートの1つに連続的に登録される。
【0061】
コホート1:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の単一の50mg経口用量;
コホート2:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の単一の100mg経口用量;
コホート3:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の単一の250mg経口用量;
コホート4:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の単一の600mg経口用量。
【0062】
期間1では、対象の次の予定されたアルグルコシダーゼα注入の前に、対象に以下の評価を行う:有害事象評価、併用薬物、理学的検査、体重、生命徴候、12誘導ECG、臨床検査室試験(クレアチン分析、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4及び筋力試験。
【0063】
1日目の朝、対象の現在のアルグルコシダーゼα用量を、注入ポンプを使用して点滴として投与する。注入速度(注入中の任意の速度変化)、注入継続時間及び投与されるアルグルコシダーゼαの用量は、期間1及び2で同一である必要がある。薬物動態分析用の血液サンプルを、アルグルコシダーゼα注入の開始の直前と、アルグルコシダーゼα注入の開始後の24時間に亘って収集する。表2に纏めた時間に、収集した血液サンプルから血漿及びWBC GAA酵素活性及び血漿抗−rhGAA抗体価を決定する。アルグルコシダーゼα注入の終了時、注入後血液サンプルの収集の直後に、12誘導ECGを行う。
【0064】
最後の薬物動態サンプルの収集後、以下の評価を行う:有害事象評価(注入反応を含む)、併用薬物、生命徴候、12誘導ECG、臨床検査室試験(クレアチンキナーゼ、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4及び筋力試験。
【0065】
7日目に、対象に以下の評価を行う:有害事象評価、併用薬物、理学的検査、生命徴候、臨床検査室試験(クレアチンキナーゼ、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4及び筋力試験。GAA酵素活性が決定される筋生検を収集する。血漿及びWBC GAA酵素レベル決定用の血液サンプルも収集する。
【0066】
GAA酵素活性及び1−デオキシノジリマイシン塩酸塩レベルが決定される筋生検も3日目に収集する。
【0067】
期間2では、期間1におけるアルグルコシダーゼα注入の投与からおよそ2週間後、対象の次の予定されたアルグルコシダーゼα注入の前に、対象に以下の評価を行う:有害事象評価、併用薬物、理学的検査、体重、生命徴候、12誘導ECG、臨床検査室試験(クレアチン分析、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4及び筋力試験。
【0068】
1日目の朝、予定されたアルグルコシダーゼα注入の1時間前に、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の経口用量を投与する。対象は、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩投与前の少なくとも2時間と、投与後の少なくとも2時間、絶食する。注入速度(注入中の任意の速度変化)、注入継続時間及び投与されるアルグルコシダーゼαの用量は、期間1及び2で同一である必要がある。
【0069】
1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の投与前と、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の投与から1時間後(即ち、アルグルコシダーゼα注入の開始の直前)及びアルグルコシダーゼα注入の開始後の24時間に亘って、薬物動態分析用の血液サンプルを収集する。表2に纏めた時間において、血漿及びWBC GAA酵素活性、血漿1−デオキシノジリマイシン塩酸塩濃度及び血漿抗−rhGAA抗体価を収集血液サンプルから決定する。アルグルコシダーゼα注入の終了時、注入後血液サンプルの収集の直後に、12誘導ECGを行う。
【0070】
最後の薬物動態サンプルの収集後、以下の評価を行う:有害事象評価(注入反応を含む)、併用薬物、生命徴候、12誘導ECG、臨床検査室試験(クレアチンキナーゼ、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4及び筋力試験。
【0071】
7日目に、対象に以下の評価を行う:有害事象評価、併用薬物、理学的検査、生命徴候、臨床検査室試験(クレアチンキナーゼ、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4及び筋力試験。GAA酵素活性及び1−デオキシノジリマイシン塩酸塩レベルが決定される筋生検を収集する。血漿及びWBC GAA酵素レベル決定用の血液サンプルも収集する。
【0072】
GAA酵素活性及び1−デオキシノジリマイシン塩酸塩レベルが決定される筋生検も3日目に収集する。
【0073】
期間2における1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαの投与の26〜30日後のフォローアップにて、対象に以下の評価を行う:有害事象評価、併用薬物、理学的検査、生命徴候、12誘導ECG、臨床検査室試験(クレアチンキナーゼ、LDH(LDH−5)、アルカリホスファターゼ、AST、ALTを含む)、Hex4、筋力試験及び抗−rhGAA抗体価。
【0074】
評価及び試料収集スケジュール
表1は、期間1及び2に関する評価スケジュールを示す。1−デオキシノジリマイシン塩酸塩とアルグルコシダーゼαとの共投与に関する試料収集時間及び分析物を、表2に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びGAAの血漿薬物動態
血液サンプル中の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の濃度を、有効LC−MS/MSアッセイを用いて血漿中で測定する。Con Aを有し及び有さずに、4−MUGを使用して酵素活性を測定する有効アッセイにより、血漿中のGAA活性を決定する。GAAタンパク質レベルは、抗−ヒトGAA抗体を用いたウエスタンブロットにより測定する。
【0078】
筋肉中のGAA酵素活性及び1−デオキシノジリマイシン塩酸塩レベル
GAA酵素活性を筋生検サンプル内で試験する。一片の筋肉組織を、表1に記載したように除去する。Con Aを有し及び有さずに、4−MUGを使用して酵素活性を測定する有効アッセイにより、筋肉中のGAA活性を決定する。GAAタンパク質レベルは、抗−ヒトGAA抗体を用いたウエスタンブロットにより測定する。期間2にて収集した筋肉サンプル中の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩濃度を、有効LC−MS/MSアッセイを用いて決定する。
【0079】
WBC(PBMC)GAA活
Con Aを有し及び有さずに、4−MUGを使用して酵素活性を測定する有効アッセイにより、血液サンプルにおいてWBC中のGAA活性を決定する。GAAタンパク質レベルは、抗−ヒトGAA抗体を用いたウエスタンブロットにより測定する。
【0080】
抗(Ant)−rhGAA抗体価
血液サンプルを収集し、表2に記載したサンプル中の抗−rhGAA抗体価を測定する。
【0081】
安全性パラメーター
理学的検査所見、生命徴候、ある時間に亘るECG変化、臨床検査室試験(clinical labs)、Hex4及び有害事象における変化を再検討することにより、安全性パラメーターを評価する。
【0082】
生命徴候、体重及び身長
スクリーニング及びチェックインにおいて体温及び呼吸を測定する。安全性を監視するために、投与前、並びにアルグルコシダーゼα(期間1)又は1−デオキシノジリマイシン塩酸塩(期間2)の投与からおよそ1、2、3、4及び6時間後、並びに表1に記載した日に、体温、呼吸、座った血圧及び心拍数を測定する。生命徴候監視の時間が採血と一致した場合、採血が優先し、それに従って生命徴候を調整する。
【0083】
ECG監視
標準的な12誘導ECGによりECG監視を行う。
【0084】
臨床検査室試験
臨床検査室試験用の血液サンプル(血液学、血液生化学検査)及び検尿を表1のスケジュールに従って収集する。
・血液学的試験は、鑑別を伴う総ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球、血小板及び白血球数を含む。
・凝固(スクリーニングのみ)は、INR及びaPTTを含む。
・血液生化学検査は、AST、ALT、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、クレアチニン、クレアチンキナーゼ、尿素、グルコース、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、総タンパク質、アルブミン、重炭酸塩、LDH(LDH−5)、血液尿素窒素、塩化物及びリン酸塩の測定を含む。
・検尿は、色、外観、比重、pH、タンパク質、グルコース、ケトン、血液、白血球エステラーゼ、亜硝酸塩、ビリルビン、ウロビリノーゲン及び沈降物の顕微鏡検査を含む。
【0085】
尿四糖類(Hex4)
Hex4決定用の尿サンプルを、表1に示す時間に収集する。
【0086】
筋力試験(手動握力計)
手動握力計により評価する筋力試験を、スクリーニング、各期間の1日目及び7日目、並びにフォローアップにて行う。近位及び遠位筋肉群を評価する。
【0087】
薬物動態パラメーター
AUC
0−t、AUC
無限大、C
max、t
max、k
el非区画薬物動態パラメーター及び半減期を血漿1−デオキシノジリマイシン塩酸塩濃度及び血漿rhGAA酵素レベルから計算する。薬物動態パラメーターを、記述統計学を用いた処理により纏める。GAA酵素活性単独、又は、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩との投与後に関するAUC
0−t、AUC
無限大比を計算する。Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)を受容している対象に関する薬物動態及び薬力学データを別個に解析する。
【0088】
統計分析
記述統計学(N、平均、標準偏差及び変異係数、標準誤差、中央値、最小値及び最大値)を適宜提供する。GAA酵素活性に対する1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の効果は、下記のように、(対象による)個々のAUC及びC
max比を計算することにより評価される。
【0089】
AUC及びC
max比は、個々の比の平均として表され、また平均に関する90%信頼区間として表される。Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)を受容している対象に関する薬物動態及び薬力学データは、別個に分析される。1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の共投与を有する及び有さない筋肉中GAA活性を比較する。結果を適宜、表及びグラフ形態で表す。試験薬物を投与され、信頼できる薬物動態パラメーターを生成するのに十分なデータを有する全対象は、安全性及び薬物動態分析に含まれる。
【0090】
本開示は、本明細書に記載した特定の実施形態によりその範囲を限定されるべきではない。実際、前述の記載及び付随する図面から、当業者には本明細書に記載したものに加えて、本願の様々な変更が明かとなるであろう。それらの修正は、付随する特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0091】
全ての値は、近似値であり、説明のために提供されることを更に理解するべきである。
【0092】
実施例2:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαを使用した、ポンペ病処置のための投与計画−コホート1及び2
本試験の目的の1つは、ポンペ病を有する患者における、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαの共投与を含む投与計画の安全性、有効性及び薬物動態を評価することであった。
【0093】
本試験の別の目的は、GAA活性に対する、様々な用量の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の効果を評価することであった。これは、アルグルコシダーゼα単独の単一の静脈内注入後、及び、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の単一の漸増経口用量の前投与後の、3日目及び/又は7日目に、骨格筋内のGAA酵素活性及びタンパク質レベルを測定することにより評価された。
【0094】
方法
この試験は、基本的に実施例1に記載した方法に従って行われた。コホート1は、4人の対象を含んでいた。コホート2は、6人の対象を含んでいた。各対象は、アルグルコシダーゼα単独を期間1において静脈内注入として受容し、期間2においてアルグルコシダーゼαの静脈内注入の1時間前に、単一の50mg用量(コホート1)又は100mg(コホート2)の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩を受容した。各対象に関するヌクレオチド及びアミノ酸変化を含む遺伝子型(入手可能な場合)を下記に示す。
【0095】
【0096】
結果:コホート1
血漿rhGAA活性は、酸α−グルコシダーゼ単独と比較して、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及び酸α−グルコシダーゼの共投与で増大する。
【0097】
表3に示すように、ERT単独(期間1)と比較して、酸α−グルコシダーゼを50mgの1−デオキシノジリマイシン塩酸塩と共投与した場合(期間2)、血漿rhGAA活性AUC(曲線下面積)における1.5倍の平均増大が観察された。表3は、コホート1対象の筋生検の、期間1及び2の7日目の間の、rhGAA活性における倍変化も示す。
【0098】
【0099】
ERT単独(期間1)に対する酸α−グルコシダーゼと50mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩との共投与(期間2)の場合、個々の対象の血漿rhGAA活性AUCの増大は、表4〜7に示すように、1.2、1.5、1.5及び1.6倍であった。表4〜7はまた、筋生検の、期間1及び2の7日目の間の、rhGAA活性における倍変化も示す。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
下記の表8は、コホート1の血漿中の、rhGAA活性に関する累積AUCを示す。
【0105】
【0106】
表9は、ウエスタンブロットによる血漿PK概略における総rhGAAタンパク質を示す(コホート1)。
【0107】
【0108】
【0109】
結果:コホート2
血漿rhGAA活性は、酸α−グルコシダーゼ単独と比較して、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及び酸α−グルコシダーゼの共投与で増大する
【0110】
表10Aに示すように、ERT単独(期間1)と比較して、酸α−グルコシダーゼを100mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩と共投与した場合(期間2)、血漿rhGAA活性AUC(曲線下面積)における1.7倍の平均増大が観察された。表10Aは、コホート2対象の筋生検の、期間1及び2の3日目及び7日目の間の、rhGAA活性における倍変化も示す。表10Bは、コホート1及び2の期間2からの、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩に関する血漿PK概略を示す。表10Cは、ウエスタンブロットで測定した、コホート1及び2からの総rhGAAタンパク質濃度を示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
ERT単独(期間1)に対する100mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩との共投与(期間2)の場合、個々の対象の血漿rhGAA活性AUCの増大は、表11〜16に示すように、1.5、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9倍であった。表11〜16は、コホート2対象の筋生検の、期間1及び2の3日目又は7日目の間の、rhGAA活性における倍変化も示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
下記の表17は、コホート2の血漿中の、rhGAA活性に関する累積AUCを示す。
【0122】
【0123】
表18Aは、コホート2対象に関する、期間1及び2の3日目又は7日目に採取した筋生検、並びに、任意選択的なフォローアップにおける生検からのrhGAA活性を示す。
【0124】
【0125】
表18Bは、コホート1及び2の、3又は7日目に採取した個々の筋肉の1−DNJ−HCL(AT2220)濃度を示す。
【0126】
【0127】
結果の概要
50mg及び100mg 1−DNJ−HCl(AT2220)の単一用量は、ポンペ病を有する患者において安全かつ耐容性良好であると見出された。軽度の一過性有害事象(AE’s)のみ報告されており、そのいずれもAT2220に関連したものではなかった(代表的な有害事象を下記に記載する)。重篤なAEの1つは、シタロプラム誘導によるQTc延長であった。QTc延長は、シタロプラム用量低下後に軽減された。概して、尿hex4レベルは、ベースラインから変化せず、又は単一用量のAT2220後に一貫した傾向をいずれも示さなかった(
図7)。加えて、CPKレベルはコホート1及び2においてベースラインから認め得るほど変化しなかった(
図8)。
【0128】
血漿rhGAA活性AUCは、アルグルコシダーゼα単独に対する両方の共投与用量に関して、全患者にて増大した。AUCの増大は、Tmax時点後のrhGAA活性の増大に起因した血漿半減期の延長により主に推進された(表10A、
図2A及び
図4)。血漿rhGAA活性AUCの増大は、組織分布に関するrhGAA取り込みの安定化の増大を示唆している。
【0129】
7日目に4人の全コホート1患者の筋生検を採取し、3日目又は7日目に6人のコホート2患者のうちの3人の各々の筋生検を採取した。コホート2からの3人の患者は、任意選択的な30日目の筋生検を有し、これはそれらの患者のベースラインとして使用された。50mg AT2220の共投与後、コホート1患者のうちの1人が、rhGAA単独に対して筋肉rhGAA活性の40%増大を有し、2人が変化を示さず、1人がrhGAA活性の30%の低下を有した。100mg AT2220の共投与後、3日目に採取した生検から、コホート2患者のうちの2人の患者が、rhGAA単独に対してrhGAA活性の60%及び40%増大を有したが、1人は20%低下した。7日目に採取した生検から、2人が60%及び10%増大し、1人はrhGAA活性に変化を示さなかった。
【0130】
血漿AT2220の薬物動態は、50mg及び100mg用量に関して、試験中のこの時点で評価してほぼ線形であった。用量によりCmax及びAUCのおよそ2倍の増大が観察された(表10B、
図5)。吸収速度(Tmax)は2〜3時間であり、生体利用可能な全薬物が、rhGAAの注入中の早期に吸収されたことを示している。3日目又は7日目の生検からの筋肉AT2220濃度は、8ng/gの定量下限未満又は定量下限付近のいずれかであった(表18B)。
【0131】
ウエスタンブロットによる総血漿rhGAAタンパク質は、AT2220用量関連の増大の観点から、血漿rhGAA活性と同様の傾向に従った(
図6、表10C)。
【0132】
結論
1−DNJ−HClは、現在迄評価して、50mg及び100mg用量レベルの両方で安全かつ耐容性良好であった。
【0133】
血漿rhGAA活性は、50mg及び100mg 1−DNJ−HClの単一用量の後、各々20%から40%へ、及び50%から90%へ増大した。
【0134】
50mg用量レベルでは、4人の患者のうち1人が筋肉中にrhGAA活性の増大を有した;しかしながら、100mg 1−DNJ−HClでは、6人の患者のうち4人が、筋肉中にrhGAA活性の60%迄の増大を有した。
【0135】
血漿1−DNJ−HClは、現在迄評価して、2用量に関してほぼ線形のPKを示した。
【0136】
筋肉中の1−DNJ−HCl濃度は、3又は7日目の生検から、定量下限未満又は定量下限のすぐ上のいずれかであり、1−DNJ−HClは、14日毎の複数投与後に蓄積しない可能性があることを示唆している。
【0137】
血漿総rhGAAタンパク質PKは、rhGAA活性PKと同様の傾向に従った。
【0138】
有害事象
20の有害事象(AE)が報告され、そのうちの1つは重篤であった。代表的な有害事象を、表19及び20に示す。スクリーニング訪問後であるが、投与前に生じた重篤なAE、473から493m秒への補正QTc時間の延長は、重症度が中等度であり、研究者により、試験薬物とは無関係であると考慮された。他の全AEは、重症度が軽度であり、全て試験薬物とは無関係であると考慮され、処置を有することなく解決した。各患者に関する尿ヘキソース四糖A(尿Hex4)及び血清CPKレベルを、
図7及び8に示す。
【0139】
【0140】
【0141】
実施例3:1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαを使用した、ポンペ病処置のための投与計画−コホート3及び4
本試験の目的の1つは、ポンペ病を有する患者における、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及びアルグルコシダーゼαの共投与を含む投与計画の安全性、有効性及び薬物動態を評価することであった。
【0142】
本試験の別の目的は、GAA活性に対する様々な用量の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の効果を評価することであった。これは、アルグルコシダーゼα単独の単一の静脈内注入後、及び、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩の単一の漸増経口用量の前投与後の、3日目及び/又は7日目に、骨格筋内のGAA酵素活性及びタンパク質レベルを測定することにより評価された。
【0143】
方法
この試験は、基本的に実施例1に記載した方法に従って行われた。コホート3は、6人の対象を含んでいた。コホート4は、7人の対象を含んでいた。各対象は、アルグルコシダーゼα単独を期間1において静脈内注入として受容し、期間2においてアルグルコシダーゼαの静脈内注入の1時間前に、単一の250mg用量(コホート3)又は600mg(コホート4)の1−デオキシノジリマイシン塩酸塩を受容した。
【0144】
結果:コホート3
血漿及び筋肉rhGAA活性は、酸α−グルコシダーゼ単独と比較して、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及び酸α−グルコシダーゼの共投与で増大する。
【0145】
表21に示すように、ERT単独(期間1)と比較して、酸α−グルコシダーゼを250mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩と共投与した場合(期間2)、血漿rhGAA活性における2.0倍の平均増大が観察された。
【0146】
【0147】
ERT単独(期間1)に対する、酸α−グルコシダーゼと250mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩との共投与(期間2)の場合、コホート3対象の血漿rhGAA活性の増大は、表22〜35に示されている。これらの表は、ERT単独(期間1)に対する、酸α−グルコシダーゼと250mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩との共投与(期間2)後の筋肉組織内でのrhGAAの増大も示している。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
結果:コホート4
血漿及び筋肉rhGAA活性は、酸α−グルコシダーゼ単独と比較して、1−デオキシノジリマイシン塩酸塩及び酸α−グルコシダーゼの共投与で増大する。
【0163】
ERT単独(期間1)に対する、酸α−グルコシダーゼと600mg 1−デオキシノジリマイシン塩酸塩との共投与(期間2)の場合、コホート4対象の血漿rhGAA活性の増大は、表36〜38に示されている。これらの表は、ERT単独(期間1)に対する、酸α−グルコシダーゼと1−デオキシノジリマイシン塩酸塩600mgとの共投与(期間2)後の筋肉組織内でのrhGAAの増大も示している。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
結果の概要
ポンペ病を有する人々の場合、欠損したGAA酵素は、疾病に罹患した組織内でのグリコーゲンの蓄積をもたらす(主に筋肉)。前臨床的データ(Khanna et al.PLoS ONE(2012)7(7):e40776.doi:10.1371/journal.pone.0040776)は、AT2220とERTとの組み合わせが、ポンペ病のマウスモデルにおいてrhGAA酵素活性を増大させ、グリコーゲン蓄積を低減し、潜在的にERT関連の免疫原性を緩和することを示した。実施例1〜3に記載した本試験では、ポンペ患者へのAT2220の共投与は、ERT単独と比較して、rhGAA酵素活性を増大させ、筋肉組織内へのrhGAA酵素取り込みを向上させた。
【0168】
実施例1〜3に記載した試験は、ポンペ病を有する男性及び女性における、ERT単独に対する、ERT(Myozyme(登録商標)/Lumizyme(登録商標))と共投与したAT2220(50mg(コホート1)、100mg(コホート2)、250mg(コホート3)、又は600mg(コホート4))の4つの増大する経口用量の安全性及びPK効果を評価するための第2相非盲検、多施設試験である。この試験は、少なくとも3ヶ月間、ERTの安定用量及び投与計画上にあった男性及び女性患者を登録した。規則的に予定されたERT注入を全患者に与えた。次のERT注入開始の1時間前に、患者は、AT2220の単一の経口用量を受けた。各注入中、血漿rhGAA活性及びタンパク質レベルを評価した。各患者は、各注入の3又は7日後に筋生検を受けて、シャペロンを有する及び有さない組織GAA酵素活性を測定し、また筋肉中のAT2220のレベルを測定した。
【0169】
安全性:ERTと共投与したAT2220の単一用量は耐容性良好であり、薬物関連の有害事象は報告されなかった。加えて、AT2220は、4つの全コホートにおいて、7日目迄に筋肉からほぼ検出不能なレベル迄排除された。
【0170】
血漿中の組み換えヒトGAA(rhGAA)酵素活性:各注入中及び注入後、24時間血漿薬物動態(PK)を測定した。血漿rhGAA活性は、共投与後、23人の患者のうち23人(100%)にて増大し、増大は用量に関連した。これらのデータは、共投与が、安定化された、組織内への取り込みに有用な、適切に折り畳まれた活性なrhGAA酵素の量を増大させることを示唆する。表39及び
図21は、実施例1〜3に記載したコホート1〜4に関する血漿曲線下面積(AUC)におけるrhGAA酵素活性の概略を示す。
【0171】
【0172】
筋肉中の酵素活性:筋生検を採取して、AT2220を有する及び有さない、筋肉組織内へのGAA酵素取り込みを測定した。コホート1では、4人の全患者が7日目に筋生検を有した。コホート2〜4では、半分の患者が3日目に筋肉生検を採取され、他の半分の患者が7日目に採取された。
【0173】
コホート1では、7日目にGAA酵素活性の一貫した変化は観察されなかった。コホート2、3及び4では、結果はERT単独と比較してAT2220共投与後に筋肉組織内へより大量の酵素が取り込まれることを示す。この効果は最大(600mg)用量のAT2220にて最も顕著であった。表40及び
図22は、実施例1〜3に記載したコホート2〜4に関する3日目の筋肉中のGAA酵素活性の概略を示す。
【0174】
【0175】
3日目にて、評価可能な生検を有する患者における、ERT単独と比較した共投与後の筋肉中のGAA酵素活性は、以下だけ増大した:コホート2(n=3)で25%、コホート3(n=3)で7%及びコホート4(n=2)で133%。7日目にて、筋肉中のGAA酵素活性は、酵素の細胞半減期に基づいて予想した通り、3日目と比較して低かった。しかしながら、評価可能な生検を有する患者において、共投与後、ERT単独と比較して、以下の増大が持続された:コホート2(n=3)で20%、コホート3(n=2)で40%及びコホート4(n=3)で20%。
【0176】
エクスビボで測定したERT関連の免疫原性に対するAT2220の効果:変性凝集したタンパク質は、概して、適切に折り畳まれたタンパク質よりも抗原性であるため、AT2220は、rhGAA酵素の折り畳まれた活性形態を安定化させることによってERT−誘導免疫原性を緩和することができる。最近発行された研究論文は、投与されたERTのおよそ40%が循環抗体により捕捉され得、ERT注入を受けているポンペ患者のおよそ50%に注入関連の反応が生じることを示している(Banati et al.,Muscle Nerve.2011 Nov;44(5):720−6)。50人の健康なドナーの血液に由来するT細胞を使用した初期エクスビボ試験は、AT2220の添加が、Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)の免疫原性を有意に低下させ得ることを示した。この試験は、Antitope Ltd.のEpiScreen(商標)アッセイを使用し、実施例1〜3に記載した試験におけるポンペ患者からのサンプルにて反復されている。
【0177】
実施例4:N−ブチル−DNJ(AT2221)の骨格筋分布及び半減期は、1−DNJ(AT2220)と同様である。
8週齢の野生型C57BL/6マウスに、100mg/kgの1−DNJ又はN−ブチル−DNJの経口用量を投与した。投与の0.5、2、4、24、48、72、96、120、144及び168時間後に血漿及び組織サンプルを採取し、薬物の存在を分析した。血漿中の薬物の濃度を、ng/mlとして表す。組織サンプル中の薬物の濃度を、ng/gとして表す。
【0178】
図23に示すように、N−ブチル−DNJ(AT2221)の骨格筋分布及び半減期は、1−DNJ(AT2220)と同様である。AT2220のCmaxは、120uMであった。AT2221のCmaxは、140uMであった。
【0179】
実施例5:N−ブチル−DNJ(AT2221)及び1−DNJ(AT2220)は、rhGAAの薬物動態に対して同様の効果を有する。
8週齢のGAAKOマウスに、rhGAA(10mg/kg IV)を投与した。経口AT2220又はAT2221(100mg/kg)を、GAA(Myozyme)の30分前に投与した;血漿サンプルをGAAの投与前、投与の0.08、0.25、0.50、0.75、1、2、4、8及び24時間後に採取し、酵素活性を決定した。
【0180】
図24に示すように、AT2220及びAT2221は、rhGAAの循環半減期を少なくとも約2倍増大させた。N−ブチル−DNJ(AT2221)及び1−DNJ(AT2220)は、rhGAAの薬物動態に対して同様の効果を有する。
【0181】
rhGAAをAT2220又はAT2221と伴に又は伴わずに投与されたマウスに関する、GAAのi.v.投与の2、8及び24時間後の、血漿中の組み換えGAAのウエスタンブロットを
図25に示す。
【0182】
実施例6:DNJ又はNB−DNJとrhGAAとの共投与は、グリコーゲン低下に対して同様の効果を有する
12週齢のGAAKOマウスに、20mg/kg i.v.組み換えヒトGAA(Myozyme)を1週間置きに8週間投与した。AT2220又はAT2221(30mg/kg)の経口用量を、rhGAA(Myozyme)の30分前に投与した。rhGAAの最終用量の21日後に組織を収集し、グリコーゲン(GAA基質)のレベルを測定した。
【0183】
図26に示すように、DNJ又はNB−DNJとrhGAAとの共投与は、グリコーゲン低下に対して同様の効果を有する。n=5−マウス/グループ;
*p<0.05対未処置t検定;#p<0.05対Myozyme単独t検定;点線は、野生型グリコーゲンレベルを示す。30mg/kg AT2220又はAT2221の投与後のCmax約40μM;ヒトにおけるおよそ600mgと等価。
【0184】
特許、特許出願、刊行物、製品の説明、及びプロトコルが本願全体を通して引用され、これらの開示全体は、全目的のために参照により本明細書に組み込まれる。