(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の実施形態に係る情報処理装置1のハードウェア構成例について、図面を参照して説明する。以下の説明では、情報処理装置1が主にノートPCである場合を例にするが、これには限られない。情報処理装置1は、デスクトップPC、タブレット端末装置、スマートフォンなど、いずれの形態で実現されてもよい。
【0017】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1のハードウェアの構成例を示す概略ブロック図である。
情報処理装置1は、プロセッサ11、システムメモリ12、ビデオサブシステム13、ディスプレイ14、SoC(System−on−a−chip)21、ROM(Read Only Memory)22、ストレージ23、入出力IF(Interface)24、カードリーダ25、通信モジュール26、オーディオシステム27、EC(Embedded Controller)31、入力部32、センサ33および電源回路34を含んで構成される。他の観点では、情報処理装置1は、主たるコンピュータシステムとコントローラを備える。コンピュータシステムは、プロセッサ11、およびシステムメモリ12を備える。本願では、当該コンピュータシステムを、単にシステムまたは主システムと呼ぶことがある。コントローラは、EC31を備える。
【0018】
プロセッサ11は、プログラム制御により各種の演算処理を行い、情報処理装置1全体の動作を制御する。プロセッサ11は、例えば、1個または2個以上のCPU(Central Processing Unit)からなる。
システムメモリ12は、プロセッサ11が実行するプログラムの読み込み領域、またはプログラムの実行により生成される処理データの書き込み作業領域として利用される書き込み可能メモリである。システムメモリ12は、例えば、1個または2個以上のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップを含んで構成される。実行プログラムには、例えば、OS(Operating System)、周辺機器の動作を制御するためのドライバ、各種サービス/ユーティリティプログラム(以下、ユーティリティ)、アプリケーションプログラム(以下、アプリ)などが含まれる。なお、本願では、プログラムに記述された指令で指示される処理を行うことを、プログラムを実行する、プログラムの実行、などと呼ぶことがある。
【0019】
ビデオサブシステム13は、画像表示に関連する機能を実現するためのサブシステムである。ビデオサブシステム13は、ビデオコントローラを含んで構成される。ビデオコントローラは、プロセッサ11から入力される描画命令で指示される処理を行い、処理により得られる表示データを自部が有するビデオメモリに書き込む。ビデオコントローラは、ビデオメモリから書き込んだ表示データを読み出し、読み出した表示データをディスプレイ14に出力する。
【0020】
ディスプレイ14は、ビデオサブシステム13から入力される表示データに基づく画像を表示する。ディスプレイ14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode Display)などのいずれであってもよい。
【0021】
SoC21は、プロセッサ11と接続され、周辺入出力デバイスを用いた各種のデータの入出力を制御する。SoC21は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、シリアルATA(Advanced Technology Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI−Expressバス、およびLPC(Low Pin Count)バスなどのインタフェースを備え、それらに対応したデバイスを接続することができる。
図1に示す例では、SoC21には、ROM22、ストレージ23、入出力IF24、カードリーダ25、通信モジュール26、およびオーディオシステム27が接続されている。これらのデバイスは、情報処理装置1のサブシステムのサブシステムに相当する。また、SoC21に直接接続されているデバイスを親デバイスとし、他のデバイスが子デバイスとしてSoC21に間接的に接続されてもよい。
【0022】
ROM22は、電気的に書き換え可能とする不揮発性メモリを含んで構成される。ROM22には、例えば、BIOS(Basic Input Output System)、EC31などの動作を制御するためのシステムファームウェアなど、が記憶される。
ストレージ23は、プロセッサ11で実行される各種のプログラムやデータが記憶される。ストレージ23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、などである。
入出力IF24は、他のデバイスと各種のデータを入出力可能に有線または無線で接続可能とするモジュールである。入出力IF24は、例えば、シリアルバス規格の一種であるThunderbolt(登録商標)規格に順じて他のデバイスと接続するためのコネクタを含んで構成される。入出力IF24は、USB(Universal Serial Bus)規格に順じて接続するためのUSBコネクタを備えてもよい。
【0023】
カードリーダ25は、記録媒体であるメモリカードを着脱可能とし、装着されたメモリカードからの各種のデータを読み出すための補助記憶装置である。カードリーダ25は、自部に装着されたメモリカードへの各種のデータの書き込みを行ってもよい。なお、装着されるメモリカードは、カードリーダ25を親デバイスとして、間接的にSoC21に接続される。
通信モジュール26は、ネットワークに有線または無線で接続し、ネットワークに接続された他の機器との間で各種のデータを送受信(通信)する。通信モジュール26は、例えば、WLAN(Wireless Local Area Network)カードである。
オーディオシステム27は、音声データを入出力する。オーディオシステム27は、例えば、自部に入力される音声データに応じた音声を再生するスピーカと自部に到来する音を収音して音声データを取得するマイクロホンを含んで構成される。
【0024】
EC31は、プロセッサ11やSoC21とは独立に情報処理装置1の動作環境を監視(モニタ)し、情報処理装置1の動作状態を制御する。EC31は、電源回路34の動作を監視するための電源管理機能、および各種の入出力端子(図示せず)を備える。EC31には、自部が備える入出力端子を用いて入力部32、センサ33、および電源回路34が接続され、電源回路34の動作を制御する。EC31は、情報処理装置1の動作状態に対応した電源回路34の制御を実行する。EC31は、例えば、独自のプロセッサ、記憶部を含むマイクロコンピュータとして構成される。
【0025】
本実施形態に係るEC31は、システムの消費電力を検出する。EC31は、アクティブ状態からアイドル状態へのシステムの動作状態の遷移を開始した後、システムの消費電力が所定の消費電力の閾値を超えるとき、システムの動作状態をアクティブ状態に復元させる。その後、EC31は、システムの動作状態のアイドル状態への遷移を再開させる。アクティブ状態は、情報処理装置1として期待される動作を実行可能とする通常動作モードである。これに対し、アイドル状態は、アクティブ状態よりも消費電力が少ない低消費電力モードである。アイドル状態では、一部の限定された機能を除き、情報処理装置1としてユーザにより期待される動作を実行しない。
【0026】
入力部32は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた操作信号を生成し、生成した操作信号をEC31に出力する。入力部32は、例えば、キーボード、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイスのいずれか、またはそれらの任意のセットを含む。
【0027】
センサ33は、情報処理装置1の動作環境を検出し、検出した動作環境を示す検出信号をEC31に出力する。センサ33は、例えば、動作環境として、ユーザの接近状態などに応じて変動する物理量を検出するセンサを含む。情報処理装置1が2個の筐体を備える場合には、センサ33は、2個の筐体間の開閉状態に応じて変動する物理量を検出するためのセンサを含んでもよい。以下、2個の筐体を、それぞれ第1筐体61、第2筐体62と呼んで区別する。センサ33は、例えば、赤外線センサ、静電容量センサ、磁気センサ、加速度センサ、応力センサ、などのいずれか、またはそれらの組み合わせでありうる。赤外線センサは、人物の体温に対応する波長の赤外線を検出し、検出した赤外線の強度に応じて人物の接近を検出する。静電容量センサは、人物の接近によるコンデンサの静電容量の増加を検出し、検出した静電容量は、人物の接近の検出に用いられる。磁気センサは、第1筐体61と第2筐体62のいずれか一方の一端に設置され、他方の筐体の一端に設置された永久磁石の磁場を検出する。磁場の大きさにより開閉状態が判定される。加速度センサは、2つの筐体のそれぞれに設置され、それぞれ重力の方向を検出する。検出された2つの重力の方向のなす角度は、第1筐体61と第2筐体62とのなす角度に相当し、この角度は開閉状態の判定に用いられる。応力センサは、第1筐体61と第2筐体62を係合するヒンジ部63に、第1筐体61と第2筐体62の間の角度に応じて生ずる応力を検出する。
【0028】
電源回路34は、EC31の制御に基づいて、情報処理装置1を構成する各デバイスへの電力の供給ならびに供給される電力の調整を行う。電源回路34は、例えば、電源制御回路35、DC/DC(Direct Current/Direct Current)コンバータ36、電圧検出器37および充放電ユニット38を含んで構成される。
情報処理装置1の筐体には、電池ユニット52を着脱可能とする電池格納部(図示せず)が設けられる。情報処理装置1には、電池ユニットの装着を検出するための装着検出ラインが設置されている。EC31は、装着検出ラインを用いて電池ユニット52が電池格納部に装着されたか否かを検出することができる。
【0029】
電源制御回路35は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成される。ASICは、論理回路、トランジスタ、レジスタおよび抵抗などの受動素子を含んで構成される。電源制御回路35は、プロセッサを含まず、基本的な素子だけで構成されるため、消費電力はごくわずかである。電源制御回路35には、電圧検出器37、DC/DCコンバータ36、装着検出ライン(図示せず)および電源ボタン53が接続される。
【0030】
電源制御回路35のレジスタには、例えば、動作状態ごとの電源制御情報が記憶される。電源制御情報は、電力の供給先となるデバイスの情報が含まれてもよい。電源制御情報には、デバイスごとの電圧、電流などの情報が含まれてもよい。電源制御回路35は、SoC21またはEC31から動作状態を示す動作状態情報が入力されるとき、動作状態情報が示す動作状態に対応する電源制御情報をレジスタから読み取り、読み取った電源制御情報をDC/DCコンバータ36に出力する。従って、EC31は、電源制御回路35を用いて動作モードに応じてDC/DCコンバータ36の動作を制御することができる。
【0031】
EC31は、情報処理装置1を構成するコンピュータシステムの動作状態に応じて電源回路34の動作を制御する。動作状態の指標として、例えば、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)に規定されたパワーステートが用いられてもよい。ACPIでは、6段階のパワーステートとしてS0状態〜S5状態が定義されている。S0状態〜S5状態の順に消費電力が少ない状態または深いアイドル状態を示す。深いアイドル状態とは、アクティブ状態への復帰時間が長い状態である。その他、S0状態は、アクティブ状態に相当し、6段階のパワーステートのうち最も消費電力が多い状態である。S1状態〜S5状態は、それぞれアイドル状態に相当し、その順で消費電力が少ない状態または深いスリープ状態を示す。本実施形態に係るシステムは、動作状態としてアクティブ状態に相当するS0状態、アイドル状態の一例であるモダンスタンバイモード、および、より深いアイドル状態の一例であるS4状態のいずれかの状態をとりうる。EC31も、S0状態、モダンスタンバイモード、およびS4状態に対応している。モダンスタンバイモードとは、表示部として機能するディスプレイ14の表示を停止した状態で、S0ix状態と、バックグラウンド処理が実行されるS0状態とを切り替えて使用される動作状態を意味する。S0ix状態は、S0状態よりも消費電力が少なく、かつ、S1状態よりも消費電力が多いアイドル状態の一形態であり、アクティブイベント(後述)の検出に応じて、より深いアイドル状態よりも迅速にS0状態に復帰可能な動作状態を指す。バックグラウンド処理とは、ディスプレイ14の表示を伴わずに裏側(バックグラウンド)で実行される処理を意味する。バックグラウンド処理は、例えば、各種プログラムや設定データの更新など、必ずしもユーザへの実行の通知を要しない処理が該当する。
【0032】
S0状態では、電源回路34は、情報処理装置1に物理的に接続された全てのデバイスに電力を供給する。S0ix状態では、ビデオサブシステム13とディスプレイ14への電力の供給が停止されてもよい。S4状態では、さらにROM22、ストレージ23、カードリーダ25、通信モジュール26、オーディオシステム27、およびシステムメモリ12への電力の供給が停止されてもよい。他方、S4状態では、SoC21、EC31、センサ33および電源制御回路35、AC/DCアダプタ51、電池ユニット52への電力の供給が継続されてもよい。
電源回路34は、各デバイスに供給される電力を消費電力として検出し、検出した消費電力を示す消費電力情報としてEC31に出力する。
【0033】
DC/DCコンバータ36は、電源制御回路35による制御のもとで、AC/DCアダプタ51または電池ユニット52から供給される電力の電圧を情報処理装置1の各デバイスで要求される電圧に変換する。DC/DCコンバータ36は、電源制御回路35から入力される電源制御情報で示される供給先のデバイスに変換した電力を供給する。電源制御情報にデバイスごとの電圧の情報が含まれる場合には、DC/DCコンバータ36は、供給される電力の電圧を電源制御情報で指示される電圧に変換し、対応するデバイスに電圧を変換した電力を供給する。
【0034】
電圧検出器37は、AC/DCアダプタ51から供給される電力の電圧を検出し、検出した電圧が所定の範囲内の電圧であるか否かを判定する。電圧検出器37は、検出した電圧が所定の判定内の電圧であるか否かを示す電圧検出信号を電源制御回路35に出力する。また、電源制御回路35は、電圧検出器37から入力される電圧検出信号をレジスタに記録する。
【0035】
AC/DC(Alternative Current/Direct Current)アダプタ51は、情報処理装置1の筐体の表面に設けられた電源端子に接続可能とする。AC/DCアダプタ51は、情報処理装置1の筐体に組み込まれ、一体化されてもよい。
AC/DCアダプタ51は、一端が商用電源のアウトレットに接続され、他端がDC/DCコンバータ36に接続される。AC/DCアダプタ51は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をDC/DCコンバータ36に供給する。
電池ユニット52は、AC/DCアダプタ51が情報処理装置1に接続されていないとき、自部に蓄積された電力をDC/DCコンバータ36に充放電ユニット38を用いて供給する(放電)。電池ユニット52は、AC/DCアダプタ51から供給される電力を、充放電ユニット38を用いて蓄積する(充電)。
電源ボタン53は、ユーザが電源のオン/オフを操作するために用いられる。電源ボタン53は、操作により情報処理装置1の動作を完全に停止した状態から起動させることができる。
【0036】
電源制御回路35は、電源ボタン53の押下を示す押下信号をレジスタに記録する。EC31は、レジスタを参照し押下信号の有無を判定することもできる。なお、EC31は、電源ボタン53から入力される押下信号を検出してもよい。EC31は、情報処理装置1の動作が停止しているときに押下信号を検出するとき、情報処理装置1のすべてのデバイスを供給先として示す電源制御情報を読み出し、DC/DCコンバータ36に出力する(起動)。EC31は、情報処理装置1(プロセッサ11を含む)の起動を開始した後は、電源制御回路35のレジスタに記録した押下信号を消去する。また、EC31は、情報処理装置1が通常動作モードで動作しているときに、押下信号を検出するとき、情報処理装置1のすべてのデバイスへの電力の供給停止を示す電源制御情報を読み出し、DC/DCコンバータ36に出力する(動作停止)。
【0037】
なお、情報処理装置1が、ノートPCとして構成される場合には、
図2に例示されるように第1筐体61、第2筐体62、およびヒンジ部63を備える。
図1に示すAC/DCアダプタ51以外の、各構成部は、第1筐体61と第2筐体62のいずれか一方に収容されうる。第1筐体61、第2筐体62は、厚みが、幅と奥行よりも小さい平べったい直方体の形状を有する。第1筐体61と第2筐体62のそれぞれの主面の長辺に沿って、ヒンジ部63が係合され、その長辺に平行な回転軸周りに相対的に回動可能とする。従って、第1筐体61と第2筐体62の間の開き角θが可変となる。開き角θは、第1筐体61と第2筐体62の相互に対面する面(以下、内面)間のなす角度である。
図2に示す例では、第1筐体61の内面にキーボードKBが配置され、第2筐体62の内面にディスプレイ14が配置される。この配置のもとでは、第1筐体61が第2筐体62に対して閉じた状態では、ユーザによる使用は期待されない。
【0038】
次に、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は、メインシステム110、制御部120、記憶部155、検出部160、通信部165、操作入力部170、収音部175および表示出力部180を含んで構成される。
図3では、電力供給系をなす電源回路34、AC/DCアダプタ51、電池ユニット52、および電源ボタン53の図示が省略されている。
【0039】
メインシステム110は、情報処理装置1のコンピュータシステムの主要部である。プロセッサ11は、所定のプログラム(例えば、ユーティリティ)を実行してメインシステム110の機能を実現する。メインシステム110は、モード制御部112と、リソース管理部114と、を含んで構成される。
モード制御部112は、メインシステムの動作状態に基づいて動作モードを制御する。リソース管理部114は、プロセッサ11による各種のプログラムの実行を制御し、その実行に用いられるリソースを管理する。
【0040】
制御部120は、情報処理装置1の動作環境や使用状況に基づいて、情報処理装置1の動作を制御する。EC31は、所定のプログラムを実行して、制御部120の機能を実現する。制御部120は、イベント検出部122、電力監視部124およびモード制御部126を含んで構成される。
イベント検出部122は、情報処理装置1の動作環境または使用状況に応じて、プロセッサ11の動作状態を遷移させる契機とするイベントを検出する。かかるイベントには、動作状態をアイドル状態からアクティブ状態に遷移させる契機とするイベント(以下、アクティブイベント)と、動作状態をアクティブ状態からアイドル状態に遷移させる契機とするイベント(以下、アイドルイベント)がある。アクティブイベント、アイドルイベントは、それぞれ動作状態をアイドル状態からアクティブ状態とする遷移条件を満たす事象、動作状態をアクティブ状態からアイドル状態とする遷移条件を満たす事象と捉えることもできる。アクティブイベントとアイドルイベントの例については、後述する。
電力監視部124は、電源回路34から情報処理装置1の各部(主にメインシステム110)に供給される電力を消費電力として監視(モニタ)する。
モード制御部126は、イベント検出部122が検出したイベントと電力監視部124が監視した消費電力のいずれかまたは両者に基づいてメインシステム110の動作を制御する。
【0041】
記憶部155は、システムメモリ12、ROM22、ストレージ23などの記憶媒体の他、カードリーダ25に装着された記憶媒体、SoC21、EC31の記憶媒体を含んで構成される。
検出部160、通信部165、操作入力部170、収音部175、表示出力部180は、それぞれ上記のセンサ33、通信モジュール26、入力部32、オーディオシステム27、ディスプレイ14に相当する。
【0042】
次に、メインシステム110が実行する処理について、より詳細に説明する。
モード制御部112は、情報処理装置1全体の動作モードとしてG0状態、S0ix状態、G1状態およびG3状態の相互間で遷移可能とする。そのうち、G0状態、G1状態およびG3状態が、所定の4段階のグローバルシステムステートのうちの3段階の状態に相当する。G0状態は、パワーステートとしてのS0状態、つまりアクティブ状態に相当する。S0ix状態およびG1状態がアイドル状態に相当する。G1状態は、パワーステートとしてのS4状態に相当する。G3状態は、電源供給系以外の情報処理装置1への電力の供給が停止し、待機電力が発生しないもしくは極めて少ない停止状態である。G3状態は、メカニカルオフステートとも呼ばれる。従って、G0状態よりもG1状態の方がシステムの消費電力が少ない。また、G1状態よりもG3状態の方がG0状態への復帰時間が長くなり、一般的にはシステムの消費電力が少ない。
【0043】
S0ix状態は、S0状態を拡張した動作モードであるが、S0状態よりも消費電力が少ないアイドル状態である。但し、S0ix状態ではシステムメモリ12への給電が維持されるため、S0ix状態では、S3状態よりも迅速に通常動作モードに変更されるが消費電力が多い。また、S0ix状態において、モード制御部112は、所定のアクティブイベントを検出するとき、動作状態をアクティブ状態(S0状態)に切り替える。モード制御部112は、例えば、制御部120またはリソース管理部114からアクティブイベントを示す通知情報が入力されることでアクティブイベントが通知される。例えば、制御部120からの通知情報が示すアクティブイベントには、情報処理装置1に備わる第1筐体61、第2筐体62が開いた状態、操作入力部170からの操作信号の入力、などがある。リソース管理部114からの通知情報が示すアクティブイベントは、S0ix状態で提供される所定の限定された機能(以下、限定機能)を実行して検出される所定の事象、などがある。所定の事象は、例えば、常時接続による新たな電子メールの受信、発話検出による音声コマンドの認識、指紋などのユーザ認証情報の取得によるユーザ認証、など、ユーザによる情報処理装置1の使用意思を推認させる事象がある。
【0044】
より具体的には、電子メールの受信に際し、リソース管理部114は、所定のメールアプリを実行して電子メールを受信する際、通信部165を用いて所定のメールサーバに自装置宛の電子メール受信要求を送信する。リソース管理部114は、メールサーバから電子メール受信要求に対する応答として、自装置宛の新たな電子メールを受信してストレージ23に蓄積する。その後、モード制御部112は、動作状態をアクティブ状態からアイドル状態に変更してもよい。音声コマンドの認識に際し、リソース管理部114は、所定の音声認識アプリを実行して、オーディオシステム27から入力される音声データを待ち受ける。リソース管理部114は、入力される音声データに対して音声認識処理を行い、認識結果として得られる発話情報が予め定めた音声コマンドであるか否かを判定する。リソース管理部114が、発話情報が予め定めた音声コマンドであると判定するとき、モード制御部112は、プロセッサ11の動作状態をS0ix状態からS0状態に変更する。リソース管理部114は、判定した音声コマンドで指示される処理を実行する。ユーザ認証に際し、例えば、所定のユーティリティを実行して検出部160から入力される認証情報と予め登録したユーザの認証情報とを照合し、両者が合致すると判定とき、モード制御部112は、システムの動作状態をS0ix状態からS0状態に変更する。認証情報は、例えば、指紋、虹彩、静脈パターンなどのいずれであってもよいし、検出部160として、認証情報を取得する可能とするデバイス(例えば、指紋センサ、虹彩、静脈パターンを撮影するためのカメラ)が含まれればよい。
【0045】
他方、モード制御部112は、動作状態がS0状態であり、アイドル状態に変更する契機とするアイドルイベントを検出するとき、プロセッサ11の動作状態をアクティブ状態であるS0状態からアイドル状態であるS0ix状態に変更する。モード制御部112は、例えば、制御部120またはリソース管理部114からアイドルイベントを示す通知情報が入力されることでアイドルイベントが通知される。例えば、制御部120からの通知情報が示すアイドルイベントは、情報処理装置1に備わる2個の筐体が閉じた状態、所定の文字入力キー(例えば、ホットキー)の押下、またはOSの設定画面に表示されるスリープメニューの選択、などがある。また、モード制御部112には、リソース管理部114からプロセッサ11の使用率を示す通知情報が所定時間ごとに入力され、プロセッサ11の使用率が所定の使用率(例えば、1〜5%)以下であって、操作入力部170から操作信号が入力されない時間が継続して所定時間(例えば、3〜15分)以上経過する状態をアイドルイベントとして検出してもよい。
【0046】
本実施形態では、モード制御部112は、プロセッサ11の動作状態の変更を開始するとき、動作状態の変更開始を示す動作状態変更開始通知を制御部120に出力してもよい。
モード制御部112は、制御部120からアクティブ状態への遷移(起動)を示すモード遷移指示が入力されるとき、プロセッサ11の動作状態をS0ix状態からS0状態に変更する。このとき、モード制御部112は、情報処理装置1の使用状況としてプロセッサ11の動作状態をアクティブ状態であるS0状態からアイドル状態であるS0ix状態に変化させる遷移条件を解消する使用状況の一例としてアクティブイベントを示す通知情報が制御部120から入力されることがある。
モード制御部112は、制御部120からアイドル状態への遷移(スリープ)を示すモード遷移指示が入力されるとき、プロセッサ11の動作状態をS0状態からS0ix状態に変更する。
【0047】
なお、モード制御部112に情報処理装置1の使用予定期間を示すモード設定情報が予め設定されている場合には、モード制御部112はアイドル状態であるS0ix状態とより深いアイドル状態であるS4状態との相互間の遷移を実行してもよい。より具体的には、その時点の時刻が使用予定期間内から使用予定期間外になるとき、モード制御部112は、プロセッサ11の動作状態をS0ix状態からS4状態に制御する。他方、その時点の時刻が使用予定期間外から使用予定期間内になるとき、モード制御部112は、プロセッサ11の動作状態をS4状態からS0ix状態に制御する。使用予定時間は、曜日ごと、または平日と休日の区別ごとに、情報処理装置1が通常使用される時間帯である。使用予定時間は、所定の設定メニューに従ってユーザの操作に応じて設定可能であってもよいし、動作ログに記録された日ごとの最初の起動時刻と最後の停止時刻に基づいて設定されてもよい。
【0048】
次に、制御部120が実行する処理について、より詳細に説明する。
イベント検出部122は、操作入力部170から入力される操作信号または通信部165から入力される検出信号に基づいて、情報処理装置1の動作モードを制御する契機とする動作環境、使用状況、またはそれらの変化をアクティブイベントまたはアイドルイベントとして検出する。イベント検出部122は、例えば、次の事象をアクティブイベントとして検出する。第1筐体61が第2筐体62に対して開いた状態(即ち、開き角θが所定の開き角(例えば、45°〜90°)以上である状態)、操作入力部170からの操作信号の入力、など。ここで、イベント検出部122は、検出部160から入力される検出信号に基づいて第1筐体61の第2筐体62に対する開閉状態を判定することができる。
【0049】
他方、イベント検出部122は、次の事象をアイドルイベントとして検出する。第1筐体61が第2筐体62に対して閉じた状態(即ち、開き角θが所定の開き角(例えば、45°〜90°)未満となる状態)、所定の文字入力キーの選択(例えば、OSの設定画面からの操作入力部170から入力される操作信号での文字入力キーの指示)、スリープメニューの選択(例えば、OSの設定画面に配置された複数の各種メニューのうち操作入力部170から入力される操作信号でのスリープメニューの指示)、などがある。見方を変えれば、アクティブイベントは、アイドル状態からアクティブ状態への遷移条件を満たす動作状態または使用状況とみなすことができる。アイドルイベントは、アクティブ状態からアイドル状態への遷移条件を満たす動作状態または使用状況とみなすことができる。
イベント検出部122は、検出したイベントを示す通知情報をモード制御部126に出力する。
【0050】
電力監視部124は、電源回路34から入力される消費電力情報が示す消費電力(主にメインシステム110の消費電力)を所定の時間間隔(例えば、1〜15秒)で監視(モニタ)する。電力監視部124は、入力される消費電力情報をモード制御部126に出力する。
【0051】
モード制御部126は、イベント検出部122から入力される通知情報と電力監視部124から入力される消費電力情報の一方または両方に基づいて、メインシステム110の動作状態を制御する。モード制御部126は、メインシステム110のアクティブ状態からアイドル状態への遷移を開始した後、入力される消費電力情報が示す消費電力が所定の再起動判定閾値を超えるとき、メインシステム110の動作状態をアクティブ状態に一旦復元する。
モード制御部126は、例えば、メインシステム110のモード制御部112からアクティブ状態からアイドル状態への変更開始を示す動作状態変更開始通知が入力されるとき、メインシステム110のアクティブ状態からアイドル状態への遷移の開始を検出する。モード制御部126は、例えば、イベント検出部122からの最後のアクティブイベントを示す通知情報の入力後、アイドルイベントを示す通知情報が入力されるとき、アクティブ状態からアイドル状態への遷移を推定してもよい。その場合には、モード制御部112からの動作状態変更開始通知の出力と、モード制御部126における動作状態変更開始通知の待ち受けが省略されてもよい。
【0052】
モード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアクティブ状態に復元する際、アクティブ状態への遷移を示すモード遷移指示をモード制御部112に出力する。
その後、モード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアイドル状態に再度遷移させる。モード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアイドル状態に遷移させる際、アイドル状態への遷移を示すモード遷移指示をモード制御部112に出力する。
【0053】
なお、メインシステム110の動作状態をアクティブ状態に復元する前に、所定のアイドルイベントを示す通知情報が入力されるときアクティブ状態からアイドル状態への遷移を推定する場合がある。その場合には、モード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアクティブ状態に復元する際に、アイドル状態への遷移条件を解消する使用状況を示す通知情報をメインシステム110のモード制御部112に出力してもよい。かかる使用状況は、現実とは異なる仮想的な使用状況でもよく、例えば、2つの筐体が閉じた状態をアイドルイベントとする場合、2つの筐体が開いた状態を示すアクティブイベントのように、最後のアイドルイベントに相反する使用状況でありうる。メインシステム110のモード制御部112は、制御部120のモード制御部126から、このアクティブイベントを示す通知情報が入力される場合、動作状態をアクティブ状態に変更することができる。そのため、制御部120のモード制御部126は、この通知情報を出力する場合には、必ずしもアクティブ状態への遷移を示すモード遷移指示をモード制御部112に出力しなくてもよい。
アイドル状態への遷移条件を解消する使用状況は、例えば、操作入力部170からの操作信号の入力が所定時間以上継続して検出されない場合をアイドルイベントとする場合、操作入力部170からの操作信号の入力であってもよい。この操作信号の入力もアクティブイベントの一例である。メインシステム110のモード制御部112は、制御部120のモード制御部126から、このアクティブイベントを示す通知情報が入力される場合も、動作状態をアクティブ状態に変更することができる。
このように、現実にアイドル状態への遷移条件を解消する使用状況が生じていても、アイドル状態への遷移条件を解消する使用状況をメインシステム110に通知することで、メインシステム110の動作状態のアイドル状態への遷移を阻止し、アクティブ状態への動作状態を確実に変更することができる。
【0054】
次に、アクティブ状態からアイドル状態へのモード遷移の準備に係る処理(以下、モード遷移準備処理)の例について説明する。
図4は、本実施形態に係るモード遷移準備処理の例を示すフローチャートである。
モード制御部112は、自システムの動作状態がアクティブ状態(通常動作モード)であってアクティブイベントが検出されるときに
図4に示す処理を開始する。アクティブ状態は、非コネクテッドスタンバイ段階(No−CS(Connected Standby)phase)とも呼ばれる。
【0055】
(ステップS102)モード制御部112は、通信部165を経由して自装置に接続されている他の装置の有無を確認する(接続確認)。ステップS102の処理は、接続段階(Connection phase)とも呼ばれる。モード制御部112は、接続されている他の装置が存在するとき、ステップS104の処理に進み、接続されている他の装置が存在しないとき、
図3に示す処理を中止する。
(ステップS104)モード制御部112は、所定の限定されたアプリ以外に、OS上のフォアグランドで実行中のアプリの有無を確認する(フォアグランドアプリ実行確認)。ステップS104の処理は、PLM段階(Process Lifetime Manager phase)とも呼ばれる。モード制御部112は、実行中のアプリが存在するとき、ステップS106の処理に進み、実行中のアプリが存在しないとき、
図4に示す処理を中止する。
【0056】
(ステップS106)モード制御部112は、実行中のメンテナンスタスクの有無を確認する(メンテナンスタスク実行確認)。ステップS106の処理は、メンテナンス段階(Maintenance phase)とも呼ばれる。モード制御部112は、実行中のメンテナンスタスクが存在するとき、ステップS108の処理に進み、実行中のメンテナンスタスクの終了を待機し、終了後にステップS108の処理に進む。
(ステップS108)モード制御部112は、アプリによる電力要求の撤回(drop)または所定時間(例えば、3〜15分)経過後に強制的に消費電力を所定の消費量以下に低減する(アクティビティ調整)。ステップS108の処理は、DAM段階(Desktop Activity Moderator phase)とも呼ばれる。その後、モード制御部112は、ステップS110の処理に進む。
【0057】
(ステップS110)モード制御部112は、ビデオサブシステム13およびSoC21を用いて直接ならびに間接的に接続されている各デバイスにアクティブ状態からアイドル状態への遷移を示す通知情報を出力する(低電力通知)。ステップS110の処理は、低電力段階(Low−power phase)とも呼ばれる。
(ステップS112)各デバイスは、モード制御部112からアイドル状態への遷移を示す通知情報を受信する。この通知情報が受信された段階は、弾力性通知段階(Resiliency notification phase)とも呼ばれる。その後、各デバイスは、動作状態を標準の動作状態よりも消費電力がより少ない動作モードに変更、または動作を停止する(低電力モード/停止処理)。アイドル状態において動作が期待されないデバイスは、動作を停止してもよい。かかるデバイスは、例えば、ビデオサブシステム13、ディスプレイ14、ストレージ23、入出力IF24、カードリーダ25などである。S0ix状態において、所定の限定された機能の提供に用いられるデバイスは、その機能の維持もしくはアクティブ状態への復元に要する消費電力にまで低減することができる。かかるデバイスは、例えば、EC31、入力部32、センサ33、通信モジュール26、およびオーディオシステム27などである。他方、メインシステム110の動作状態は、低電力モード(アイドル状態)に遷移し、
図4に示す処理を終了する。モード制御部112は、この段階において、さらに消費電力が低い動作状態(例えば、S4状態)に遷移することができる。この状態は、弾力性段階(Resiliency phase)とも呼ばれる。
【0058】
図4に例示されるモード遷移準備処理は、複数の段階を有し、それらが順次実行される。そのため、ある段階の処理が完了しない場合には、以降の段階の処理に進まず、ひいてはアイドル状態への遷移が完了しない。そのため、情報処理装置1のシステム全体としての消費電力が十分に低減しない。例えば、ステップS112において、あるデバイスの動作が停止しない場合には、メインシステム110もそのデバイスの動作に対応したデバイス管理やリソース管理を行うため、動作状態をアイドル状態に移行することができない。
【0059】
このような事象は、
図5に例示されるように、動作状態をアクティブ状態からアイドル状態に遷移する直前に、入出力IF24に接続されていた他デバイスNDが、入出力IF24から除去されるときに生じることがある。これは、他デバイスNDが入出力IF24から除去された時刻から、モード制御部112に他デバイスNDの除去が通知される通知時刻までの遅延(latency)が一因となる。SoC21は、所定時間ごとに自部に直接または間接的に接続されるデバイスを監視し、新たに接続されたデバイスまたは新たに接続が切断されたデバイスを検出する。SoC21は、接続または切断のイベントと検出したデバイスを示すイベント通知をプロセッサ11に出力する。そのため、他デバイスNDの除去から、他デバイスNDの除去がモード制御部112に通知されるまでに遅延が生ずる。
【0060】
図6に例示されるように遅くともステップS110の処理の開始時刻よりもモード制御部112への他デバイスNDの除去の通知時刻の方が早ければ、ステップS110の処理は、他デバイスNDが存在しないことが認識された状態で実行される。そのため、ステップS110の処理、ひいては
図4の処理が正常に終了する。他方、
図7に例示されるように、ステップS110の処理の開始時刻よりもモード制御部112への他デバイスNDの除去の通知時刻の方が遅ければ、ステップS110の処理は、他デバイスNDが接続されていることを前提に試行される。しかしながら、その時点では、現実には他デバイスNDは接続されていないためステップS110の処理が完了しない。かかる事象は、たとえ、他デバイスNDの除去が動作状態の遷移に係る処理の開始時刻よりも前であっても生じうる。そのため、消費電力が十分に低減しないことがあった。
なお、動作状態の遷移直前のハードウェアの除去の他、アプリの実行終了、無応答(サスペンド)などがステップS108の処理を終了できない要因となり、動作状態の遷移が完了しない事象が発生させうる。
【0061】
これに対し、本実施形態では、動作状態の遷移が開始されても消費電力が再起動判定閾値を超えるとき、モード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアクティブ状態に一旦復元する。そして、モード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアイドル状態に遷移する処理を試行させる。動作状態の遷移に係る処理が停止する原因が新たに発生しなければ、動作状態の遷移が完了する。そのため、消費電力をより確実に低減することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係るモード遷移処理の例について説明する。
図8は、本実施形態に係るメインシステム110の消費電力の例を示す図である。縦軸、横軸は、それぞれ消費電力、時刻を示す。
図8は、メインシステム110の当初の動作状態がアクティブ状態(通常動作モード)であるときに、一連の処理が開始され、一連の処理のステップごとの消費電力の時間変化を例示する。
【0063】
(ステップS202)制御部120のイベント検出部122は、検出部160からの検出信号と操作入力部170からの操作信号の入力を監視する。イベント検出部122は、アイドルイベントとして所定のユーザ操作(例えば、第1筐体61を第2筐体62に対して閉じること)を検出するか否かを判定する。イベント検出部122は、検出したアイドルイベントを示す通知情報をメインシステム110に出力する。メインシステム110のモード制御部112は、メインシステム110の動作状態のアクティブ状態からアイドル状態への遷移に対するモード遷移準備の実行を開始する(低電力モードに遷移開始)。モード遷移準備の進行によりメインシステム110の消費電力が減少する。その後、ステップS204の処理に進む。
【0064】
(ステップS204)制御部120の電力監視部124は、メインシステム110の消費電力をアイドルイベントの検出から所定の第1期間T1監視する。第1期間T1は、モード遷移準備にかかる所要時間以上となればよい。イベント検出部122は、第1期間T1の終了時における消費電力が所定の再起動判定閾値よりも多いか否かを判定する。再起動判定閾値は、メインシステム110の動作状態がアイドル状態であるときの消費電力よりも多く、動作状態がアクティブ状態であるときの消費電力よりも少なければよい。この時点における消費電力が再起動判定閾値よりも多い場合、ステップS206の処理に進む。消費電力が再起動判定閾値以下となる場合、ステップS212の処理に進む。
【0065】
(ステップS206)制御部120のモード制御部126は、メインシステム110の動作状態をアクティブ状態(通常動作モード)に遷移させる。ここで、モード制御部126は、アクティブ状態への遷移を示すモード遷移指示をメインシステム110に出力する。メインシステム110のモード制御部112は、メインシステム110の動作状態をアイドル状態からアクティブ状態(通常動作モード)に遷移する。メインシステム110の消費電力は、アイドル状態への遷移前の状態に増加する。
モード制御部126は、ステップS202において検出したアイドルイベントに相反するアクティブイベントが存在する場合には、そのアクティブイベント(例えば、第1筐体61を第2筐体62に対して開くこと)を示す通知情報をモード制御部112に出力する。その後、ステップS208の処理に進む。
【0066】
(ステップS208)モード制御部126は、さらに所定の第2期間T2待機した後、メインシステム110の動作状態をアイドル状態(低電力モード)に遷移させる。イベント検出部122は、検出したアイドルイベントを示す通知情報をメインシステム110に出力する。メインシステム110のモード制御部112は、メインシステム110の動作状態のアクティブ状態からアイドル状態への遷移に対するモード遷移準備の実行を再開する。モード遷移準備の進行によりメインシステム110の消費電力が減少する。その後、ステップS210の処理に進む。第2期間T2は、メインシステム110の動作状態のアイドル状態からアクティブ状態への遷移に係る処理の所要時間以上となればよい。その後、ステップS210の処理に進む。
【0067】
(ステップS210)制御部120の電力監視部124は、メインシステム110の消費電力をアイドルイベントの検出から再度所定の第1期間T1監視する。イベント検出部122は、第1期間T1の終了時における消費電力が再起動判定閾値よりも多いか否かを判定する。この時点における消費電力が再起動判定閾値よりも多い場合、ステップS206に戻り、ステップS206からステップS210の処理を繰り返してもよい。消費電力が再起動判定閾値以下となる場合、ステップS212の処理に進む。
【0068】
(ステップS212)制御部120の電力監視部124は、メインシステム110の消費電力が再起動判定閾値以下となる状態がさらに第3期間T3(例えば、3〜15分)以上継続するとき、制御部120の動作状態を、標準的な動作状態よりも消費電力が少ない低消費電力状態に変更してもよい。低消費電力状態では、所定の一部の機能(例えば、タイマ、電源ボタン53の押下の検出など)を維持し、その他の機能が停止してもよい。
なお、制御部120の電力監視部124には、ステップS206からステップS210の処理の繰り返し回数の上限が予め設定されてもよい。電力監視部124は、ステップS206からステップS210の処理の繰り返し回数を計数し、計数した繰り返し回数が上限に達するとき、ステップS206からステップS210の処理をさらに繰り返さずに、モード遷移処理を中止してもよい。
【0069】
(変形例)
なお、上記の説明は、制御部120によるメインシステム110の動作状態の制御を主としていたが、これには限られない。制御部120は、消費電力の時系列に基づいて、動作の異常が発生したデバイスを特定するデバイス制御部128(図示せず)をさらに備えてもよい。
そこで、記憶部155には、デバイスごとに異常時における消費電力の時系列(以下、消費電力パターン)を示す消費電力パターンデータを記憶させておく。以下、消費電力パターンデータが示す予め設定された消費電力の時系列を消費電力パターンと呼ぶ。
図9、
図10、
図11は、それぞれ通信モジュール26、入出力IF24、SoC21の異常時における消費電力パターンを例示する。
図9に例示される消費電力は、増加と減少を繰り返すことを示す。かかる現象は、例えば、他の機器との接続が不安定なときに生じがちである。
図10に例示される消費電力は、少ない状態が継続した後、急激に増加し、その後、減少するが、もとの消費電力よりも多い状態が継続することを示す。かかる現象は、例えば、他の機器との接続が中断したときに生じがちである。
図11に例示される消費電力は、多い状態が計測した後、急激に減少し、その後増加するが、もとの消費電力よりも少ない状態が継続することを示す。かかる現象は、例えば、メインシステム110とSoC21との間のデータの入出力における同期がとれなくなるときに生じうる。
【0070】
デバイス制御部128は、電力監視部124から入力される消費電力情報が示す各時刻における消費電力を、最新の時刻までの所定の観測期間内で集約して観測された消費電力の時系列(以下、観測消費電力パターン)を形成する。デバイス制御部128は、消費電力パターンデータが示す消費電力パターンごとに、形成した観測消費電力パターンとの類似度を示す指標を算出し、算出した指標が所定の下限値以上であって最も類似度が高い消費電力パターンを特定する。類似度を示す指標として、例えば、相関係数、ユークリッド距離などが利用可能である。デバイス制御部128は、特定した消費電力パターンに係るデバイスを特定することができる。
【0071】
記憶部155には、デバイスごとに異常の発生を示す案内情報(ガイド)を予め記憶させておき、デバイス制御部128は、特定したデバイスに対応する案内情報を表示出力部180に出力してもよい。案内情報には、その異常の解消または緩和に役立つ対応情報が含まれてもよい。表示出力部180は、そのデバイスに対応する案内情報を提示することができる。案内情報に接したユーザは、デバイスに生じた異常に気付くことができる。ユーザは、対応情報に接することで、異常の解消または緩和のための措置を講ずることができる。
【0072】
デバイス制御部128は、特定したデバイスに対して、発生した異常を解消するために所定の制御を行ってもよい。例えば、デバイス制御部128は、通信モジュール26の異常を特定したとき、通信モジュール26に再起動(リセット)を示す制御信号(以下、再起動信号)を出力する。通信モジュール26は、デバイス制御部128から再起動信号が入力されるとき、自部の動作を停止し、停止を完了した後、起動する。これにより、通信モジュール26を再起動させることができる。
デバイス制御部128は、入出力IF24の異常を特定したとき、電源回路34に入出力IF24への電力供給の一時停止を示す制御信号(以下、電力停止信号)を出力する。電源回路34は、デバイス制御部128から電力停止信号が入力されるとき、入出力IF24への電力供給を停止し、その所定時間(例えば、1〜3秒)後に電力供給を再開する。これにより、入出力IF24を再起動させることができる。
デバイス制御部128は、SoC21の異常を特定したとき、SoC21に対する再起動を示す制御信号(以下、再起動制御信号)をメインシステム110のリソース管理部114に出力する。リソース管理部114は、デバイス制御部128から再起動制御信号が入力されるとき、自部に接続されるデバイスとしてSoC21を再度認識し、SoC21との間で同期処理を行う。この過程で、SoC21が再起動する。再起動の際に、これらのデバイスは所定の初期値を設定し、設定した初期値を用いて動作を再開することで、発生した異常が解消されうる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態に係る情報処理装置1は、アクティブ状態とアイドル状態との間を遷移可能であって、アイドル状態はアクティブ状態よりも消費電力が少ない動作状態であるコンピュータシステム(例えば、メインシステム110)を備える。また、情報処理装置1は、アクティブ状態からアイドル状態への遷移を開始した後、コンピュータシステムの消費電力が所定の消費電力の閾値(例えば、再起動判定閾値)を超えるとき、コンピュータシステムの動作状態をアクティブ状態に復元させ、その後、コンピュータシステムの動作状態をアイドル状態に遷移させるコントローラ(例えば、制御部120)と、を備える。
この構成により、コンピュータシステムの動作状態のアイドル状態への遷移を開始しても、十分に消費電力が低下しない場合には、動作状態をアクティブ状態に一時的に戻したうえで、アイドル状態への遷移が再開する。動作状態をアクティブ状態に戻したときに、アイドル状態への遷移を阻害する原因が解消している場合には、アイドル状態への遷移が完了する。そのため、消費電力がより確実に減少する。
【0074】
また、コンピュータシステムは、コントローラが検出した自装置の使用状況が所定の遷移条件を満たすとき(例えば、アイドルイベントを検出するとき)アクティブ状態からアイドル状態への遷移を開始してもよい。コントローラは、コンピュータシステムの動作状態をアクティブ状態に復元させるとき、遷移条件を解消する使用状況(例えば、アクティブイベント)をコンピュータシステムに通知してもよい。
この構成により、現実には使用状況が所定の遷移条件を満たす場合であっても、コンピュータシステムに、その遷移条件を解消する使用状況を認識させ、遷移条件を認識することによるアイドル状態への遷移を阻止することができるので、アクティブ状態に復元した動作状態を安定化することができる。
【0075】
また、情報処理装置1は、第1筐体、第2筐体、および、第1筐体と第2筐体の位置関係を検出するセンサ(例えば、センサ33)をさらに備えてもよい。アイドル状態への遷移条件は、第1筐体が第2筐体に対して閉じた状態であるとき、コントローラは、コンピュータシステムの動作状態をアクティブ状態に復元させるとき、遷移条件を解消する使用状況として第1筐体が第2筐体に対して開いた状態をコンピュータシステムに通知する。
この構成により、第1筐体が第2筐体に対して閉じたとき、コンピュータシステムの動作をアイドル状態にすることを基調としながら、動作状態を一時的にアクティブ状態に復元させるとき、第1筐体が第2筐体に対して開いた状態をコンピュータシステムに通知させることで、コンピュータシステムのアクティブ状態に復元した動作状態を安定化させることができる。
【0076】
また、情報処理装置1は、自装置に電力を供給する電源回路34を備えてもよい。コントローラは、電源回路からの電力の供給量を消費電力として監視してもよい。
この構成によれば、コントローラはコンピュータシステムとは独立に、その消費電力を監視することで、コンピュータシステムの動作状態の制御における独立性を高めることができる。
【0077】
また、コントローラは、アクティブ状態への復元の開始から所定時間(例えば、第2期間T2)経過後に、アクティブ状態からアイドル状態への遷移を再開させてもよい。
この構成によれば、アイドル状態への遷移の再開を、コンピュータシステムの動作状態のアクティブ状態への遷移が完了した後にすることができる。そのため、アクティブ状態への遷移の完了により、アイドル状態への遷移を阻害していた原因(例えば、処理の遅延、無応答、など)が解消する可能性が高くなるので、より確実にアイドル状態への遷移を成功させ、消費電力の低下を図ることができる。
【0078】
また、コンピュータシステムと協働する1以上の他のデバイス(例えば、ROM22、ストレージ23、入出力IF24、カードリーダ25、通信モジュール26、オーディオシステム27など)が接続されてもよい。コントローラには、デバイスごとに異常時における消費電力の時系列を示す消費電力パターンが予め設定され、消費電力パターンに基づいて、監視した消費電力の時系列に対応するデバイスを特定してもよい。
この構成によれば、コントローラは、異常が発生したデバイスをコンピュータシステムに頼らずに特定することができる。そのため、コンピュータシステムと独立に、異常が発生したデバイスに対して、異常を解消または緩和するための措置を講ずることができる。
【0079】
また、コントローラは、特定したデバイスを再起動させてもよい。
この構成によれば、異常が発生したデバイスを再起動させることで、そのデバイスに生じた異常を解消または緩和することができる。そのため、動作状態のアイドル状態への遷移を阻害していた異常を解消または緩和することで、アイドル状態への遷移をより確実に完了させ、ひいては、より確実に消費電力を低下させることができる。
【0080】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
例えば、ストレージ23、入出力IF24、カードリーダ25、通信モジュール26、オーディオシステム27のうちの一部または全部のデバイスは、省略されてもよいし、着脱可能としてもよい。ディスプレイ14と入力部32は、各種のデータを入出力可能に情報処理装置1のその他の部分と接続されていれば、必ずしも情報処理装置1と一体化されていなくてもよい。
また、第1筐体61は、第2筐体62と着脱可能としてもよい。
情報処理装置1は、ノートPCのように、第1筐体61と第2筐体62を備え、第1筐体61が第2筐体62に対して開閉可能とする構成を有さず、デスクトップPCのように、その他の部材を支持する単一の筐体を備える構成を有してもよい。その場合は、モード制御部112とイベント検出部122は、それぞれ第1筐体61と第2筐体62の開閉状態をアクティブイベントまたはアイドルイベントとして採用しない。