(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を具体的な実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても本発明の範囲内に含まれる。また、実施例における図は、略図であり、図中の位置関係や寸法等に正確さを保証するものではない。本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0010】
≪実施例1≫
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電池モジュールの外観斜視図である。なお、方向の定義は特に断りがない場合には、各図の左下にある上下左右前後のことである。
図2は
図1の電池モジュールの分解外観斜視図である。ただし
図2では一部の構成を省略してある。
【0011】
図1に示す電池モジュール100は、複数の電池セル8を積層させた電池積層体1を、一対の端ホルダ2と一対の板状部材であるエンドプレート3で挟持し、一対のサイドプレート4でこれらを一体化し、中間バスバ5で電池間の電力ラインを、端バスバ6と外部端子ケーブル7で組電池と外部との電力ラインを形成する構成である。
【0012】
図1と
図2を用いて、電池積層体1について説明する。電池積層体1は、複数の単電池8と、複数の中間ホルダ9とを備えている。各単電池は、扁平な直方体形状であって、一対の幅広面を有している。電池積層体を構成する複数の単電池は、隣り合う単電池5の互いの幅広面同士が対向するように積層配置されている。隣接する単電池同士は、電池蓋に設けられた正極端子および負極端子の位置が逆転するように、向きが反転して配置されている。隣り合う各単電池8の正極端子81と負極端子82とは金属製の平板状導電部材である中間バスバ5によって互いに電気的に接続されている。すなわち、本実施の形態に係る電池モジュール100を構成する複数の単電池8は、電気的に直列に接続されている。また、電池積層体1の両端の単電池8の正極端子81もしくは負極端子82には端バスバ6が備えられている。この端バスバ6が外部端子ケーブル7と電気的に接続されて電池モジュールの外に電力を取り出すことができる構造となっている。
【0013】
続いて
図2を用いて電池積層体1を構成する単電池8について説明する。複数の単電池8は、いずれも同様の構造である。単電池8は、電池缶88aと電池蓋88bとからなる角形の電池容器88を備えている。電池缶88aおよび電池蓋88bの材質は、たとえばアルミニウムやアルミニウム合金である。電池缶88aは、二枚の面積の大きい面(幅広面88a1)と二枚の面積の小さい面(狭側面88a2)と一面の底板88a3と開口部を有する矩形箱状とされる。電池蓋88bは、矩形平板状であって、電池缶の開口部を塞ぐようにレーザ溶接されている。つまり、電池蓋88bは、電池缶88aを封止している。電池蓋88bと電池缶88aとからなる角形の電池容器88は、中空の直方体形状とされている。
【0014】
電池蓋88bには、正極端子81および負極端子82が設けられている。電池容器88の内部には、充放電要素が絶縁ケースに覆われた状態で収納されている。充放電要素の正極電極は正極端子81に接続され、充放電要素の負極電極は負極端子82に接続されている。電池蓋88bには、電池容器88内に電解液を注入するための注液孔が穿設されている。注液孔は、電解液注入後に注液栓83によって封止される。電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を用いることができる。電池蓋88bには、ガス排出弁84が設けられている。ガス排出弁84は、プレス加工によって電池蓋88bを部分的に薄肉化することで形成されている。ガス排出弁84は、単電池が過充電等の異常により発熱してガスが発生し、電池容器88内の圧力が上昇して所定圧力に達したときに開裂して、内部からガスを排出することで電池容器88内の圧力を低減させる。
【0015】
図3は、中間ホルダ9と端ホルダ2と電池積層体の端に位置する単電池8とエンドプレート3との位置関係を説明するための部分斜視図である。同図を用いて中間ホルダ9と端ホルダ2とエンドプレート3を説明する。
【0016】
中間ホルダ9は、電池積層体1の前後方向に複数枚積層配置されている。中間ホルダ9の材質は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂であり、たとえば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリカーボネイト(PC)等のエンジニアリングプラスチックやゴム等である。各単電池同士の間に中間ホルダ9が介在しているため、隣り合う単電池8同士の絶縁性が確保されている。中間ホルダ9は、隔離部9A、連結部9Bを有す。隔離部9Aは電池の幅広面88a1に対向し、隣接する二個の電池の幅広面88a1が当接することを防止する。連結部9Bは山部と谷部を有し、隣接する中間ホルダおよび、後述する端ホルダと連結するために使用される。
【0017】
端ホルダ2は、電池積層体の前端に配置される単電池8とエンドプレート3との間、および、後端に配置される単電池8とエンドプレート3との間に配置されている。単電池8とエンドプレート3との間に端ホルダ2が介在しているためエンドプレートと単電池8との絶縁性が確保されている。
【0018】
電池積層体1の末端に配置される端ホルダ2は、隔離部2Aと連結部2Bと固定部2Cを有する。隔離部2Aは単電池8の幅広面とエンドプレート3に対向し、電池の幅広面とエンドプレートが当接することを防止する。連結部2Bは山部と谷部を有し、隣接する中間ホルダと連結するために使用される。
固定部2Cは、端ホルダの隔離部2Aからエンドプレート3側に突き出している。固定部2Cは、端バスバ6と外部端子ケーブル7を締結して、電気的に接続するための部位であり、固定部2Cにはインサートナット10が一体化されている。なお、本実施形態ではインサートナット10を用いる例としたが、インサートボルトが一体化されている構造としてもよい。固定部2Cは、後述するエンドプレート3の収容部3Aに挿入される構成になっており、端バスバ6と外部端子ケーブル7を締結するときに固定部に負荷される回転トルクをエンドプレートに伝えて、固定部2Cの安定性が確保される。
【0019】
隣接する中間ホルダ同士、あるいは中間ホルダと端ホルダとは、各ホルダの連結部を嵌合することで連結される。具体的には、中間ホルダ9の連結部9Bと隣接する中間ホルダの連結部9Bを嵌合することで隣接する中間ホルダ9同士は連結され、中間ホルダ9の連結部9Bと端ホルダ2の連結部2Bとを嵌合することで、中間ホルダ9と端ホルダ2は互いに連結される。
【0020】
エンドプレート3は、矩形平板状とされ、単電池8とほぼ同じ大きさに形成されている。エンドプレート3は、電池積層体1の積層方向の前方および後方のそれぞれに配置され、一対の端ホルダを介して電池積層体1を挟持している。収容部3Aは、エンドプレート3の上面をくぼませたような形状をしており、そのくぼみの一部を端ホルダ2側に開口させている。収容部3Aの形状は固定部2Cとほぼ等しい形状をしており、固定部2Cは収容部3Aに収容される。エンドプレート3は、電池積層体1とは逆方向へ突き出たエンドプレート締結部3Bを有する。エンドプレート締結部3Bは締結穴3Cを有し、この締結穴にボルトを通して、エンドプレート3を電池パックの筐体(不図示)に固定する。このようにエンドプレート3を電池パックの筐体に固定することで、電池モジュール100は底面側で電池パックの筐体に固定されることになる。なお、エンドプレート3の材質は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属である。
【0021】
続いて
図4に本発明の特徴部となるサイドプレート4の形状を示す。サイドプレート4は、電池積層体1の積層方向の左方および右方において、左右対称に配置されている。そのため、
図4では一方側のサイドプレート4を取り出して説明する。サイドプレート4は、一対のエンドプレート3とボルト11によって物理的に接続されている。サイドプレート4は、所定の厚さのステンレス板や鋼板等の金属板を用いて製作される。
【0022】
サイドプレート4は平坦な板形状ではなく、サイドプレートの板厚方向(右方向)へ突き出る凸部4Aを有す。凸部4Aは電池モジュールの長手方向即ち電池の積層方向(前後方向)へ沿ってサイドプレート4の端から端まで形成されている。凸部は様々な方法で形成することができ、例えば
図4に示したサイドプレート4では一枚の板に折り曲げ加工や、絞り加工等を施すことによって凸部4Aが形成されている。サイドプレート4をエンドプレート3に接続するための締結穴4Bは、凸部4Aとボルトとの干渉を避けるために位置が限定され、凸部4Aとサイドプレート端部との間、もしくは凸部4Aの頂上に設けられる。
【0023】
この凸部4Aによって、電池モジュール100の長手方向に垂直な方向(左右方向)への振動に対してサイドプレートの耐振性を向上させることができる。また、凸部4Aを挟む領域には、平板部4Cが形成されており、この平板部によって、凸部を形成することによるサイドプレートの変形を抑制することができる。もしこの平坦部4Cがなく、サイドプレート4を連続する凹凸形状(蛇腹形状)で形成した場合、左右方向への剛性が低くなり、上述するように左右方向の振動に対して弱くなってしまう。本実施例では凸部を挟むように一対の平坦部4Cが設けられているため、左右方向の振動に対して強くなっている。なお、平坦部4Cについては、凸部4Aよりも完全な平坦形状でなくてもよいが、平坦部4Cとする方が様々な方向からの振動に対して強くなるため、より左右方向の振動を抑制するという点で好ましい。
【0024】
続いて電池積層体1と端ホルダ2とエンドプレート3を一体化する方法について記載する。電池積層体1と端ホルダ2とエンドプレート3を一体化するには、電池積層体1の積層方向の前方および後方に端ホルダ2を当接させた状態で、電池積層体1を端ホルダ2ごとエンドプレート3で挟持し、その後、一対のサイドプレート4をエンドプレート3にボルト11でネジ止めする。サイドプレート4がエンドプレート3にボルト11でネジ止めされると、一対のエンドプレートに挟まれた電池積層体と端セルホルダが所定量圧縮された状態で保持される。なお、本実施の形態では、ボルトを用いてサイドプレートをエンドプレートに固定する方法について説明したが、リベットを用いて、あるいは、かしめ、溶接などにより、サイドプレートをエンドプレートに固定してもよい。
【0025】
≪変形例1≫
ここで、本発明のサイドプレートの変形例を、
図5から
図8を用いて説明する。
【0026】
まず
図5に変形例1のサイドプレート12を示す。本変形例が第1の実施例のサイドプレート12と異なる点は、凸部を複数個設けた点である。
【0027】
このように
図5に記載のサイドプレート12には複数の凸部12Aを備える。このように凸部の数を増やすことでサイドプレートの耐震性を向上できる。
【0028】
続いて
図6に変形例2のサイドプレート12を示す。本変形例が第1の実施例のサイドプレート12と異なる点は、凸部を複数個設けた上で、この凸部の外周をすべて平坦部13で囲んだ点である。
【0029】
このように
図6のサイドプレート13は、長手方向に沿って(前後方向に沿って)形成された平板部13Cに加えて、長手方向の両端(前後方向の両端)にも平板部13Dを備える。このようにすることで凸部13Aの周囲は全て平板部で覆われるため、凸部を形成することによるサイドプレートの変形を更に抑制することができる。特に平坦部13Dが凸部13Aを連続して接続するため、実施例1よりも上下方向のねじれに対してより強くなる構造となる。また、平板部13Dを長手方向の両端に備えることでサイドプレート13をエンドプレート3に接続するための締結穴13Bは、位置が限定されず任意の場所に設けることができる。そのため、設計自由度が向上する。
【0030】
続いて
図7に変形例3のサイドプレート14を示す。本変形例が第1の実施例のサイドプレートと異なる点は、凸部がサイドプレート14の上側に配置した点である。
【0031】
このように
図7のサイドプレート14は、電池モジュールの上面に偏った位置に凸部14Aを備える。そのため、下側平坦部14C2よりも幅の狭い上側平坦部14C1が設けられる構造となっている。本実施例の電池モジュール100は底面が電池パックの筐体に固定されているため、電池モジュールに振動が加えられるとき、底面と比較して上面の方が振動しやすい。そのため、
図7のように凸部を上面に偏らせることで、より効率よく耐振性を向上できる。
【0032】
最後に
図8に変形例4のサイドプレート15を示す。本変形例が第1の実施例のサイドプレートと異なる点は、凸部が別部材で作成されている点である。
【0033】
このように
図8のサイドプレート15は平板部15Cに、別部材で作製した凸部15Aを一体化した構成である。凸部15Aの材質は限定的ではなく、金属や樹脂で作製できる。凸部が金属の場合は、例えば溶接で平板部15Cと一体化でき、凸部が樹脂の場合は、例えば接着剤で平板部15Cと一体化できる。凸部を別部材にすることで、凸部を折り曲げ加工や絞り加工で作製するよりも凸部の形状や凸部の位置を自由に設計できる。
以上、本発明について簡単にまとめる。本発明に記載の電池モジュール100は、上面(88b)、下面(88a3)及び側面(88a1、88a2)を有する電池を複数個積層させた電池群(1)と、電池群(1)の側面に対向して配置される一対のサイドプレート(4)と、を備え、サイドプレート(4)は凸部(4A)を有し、凸部(4A)に沿って凸部(4A)の変形を抑制する変形抑制部(4C、12C、13C、14C、15C)を備え、変形抑制部(4C、12C、13C、14C、15C)は凸部(4A)を挟む一対の領域に設けられることを特徴とする。このような構成にすることによって、左右方向の振動抑制効果が向上する。
【0034】
また、本発明に記載の電池モジュール100は、変形抑制部が一例として平板部(4C、12C、13C、14C、15C)となっている。
【0035】
また、本発明に記載の電池モジュール100は、一例として電池の上面から下面に向かう方向に一対の平板部(4C、12C、13C、14C、15C)と凸部が並んでいる。他の例としては電池の前から後に向かう方向に一対の平板部(4C)と凸部が並んでいるような構造もあるが、本実施例のように電池モジュール100は底面が電池パックの筐体に固定されている構造では左右方向の振動抑制がより重要となるので、電池の上面から下面に向かう方向に一対の平板部(4C、12C、13C、14C、15C)と凸部が並んでいる構造の方が好ましい。
【0036】
また、本発明に記載の電池モジュール100は、上面側の平板部(14C1)の幅は、下面側の平板部(14C2)の幅よりも狭い構成となっている。電池モジュール100は底面が電池パックの筐体に固定されているため、電池モジュールに振動が加えられるとき、底面と比較して上面の方が振動しやすい。そのため、このように凸部を上面に偏らせることで、より効率よく耐振性を向上できる。
【0037】
また、本発明に記載の電池モジュール100は、凸部(12A、13A)が複数の凸部からなることを特徴とする。このような構造にすることによって、サイドプレートの剛性が向上して耐振動性が向上する。
【0038】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。本実施の形態では、サイドプレートが凸部を備えることでサイドプレートの剛性を向上することができ、電池モジュールの積層方向に垂直な方向への振動に対して電池モジュールの耐振性を向上できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。