【文献】
Nat Med.,2012年12月 1日,Vol. 18, No. 6,974-979 (page 1-14)
【文献】
Front. Immunol.,2016年 2月11日,Vol. 7, No. 34,p1-14
【文献】
Environ. Sci. Technol.,2010年 3月31日,Vol. 44, No. 9,p3351-3356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不活性化された病原体を含む免疫原性ワクチン組成物を産生するための方法であって、前記方法が、標準的な反応条件下でRNAまたはDNAゲノムを有する病原体を化学的不活性化剤のみと接触させることによって保持される病原体の抗原性および/または免疫原性と比較して、病原体の抗原性および/または免疫原性の保持を増強しながら、前記化学的不活性化剤が前記病原体を非感染性にするのに十分な量で、かつそれに十分な期間にわたって、1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在下で、前記病原体を前記化学的不活性化剤と接触させることを含み、前記無機多原子オキシアニオンが、少なくとも50mMのレベルのリン酸塩(HPO42−)、少なくとも150mMのレベルの硫酸塩(SO42−)、少なくとも0.05mMのレベルのトリメタリン酸塩(P3O93−)、または少なくとも0.05mMのレベルの三リン酸塩(P3O105−)のうちの1つ以上を含み、前記化学的不活性化剤が、過酸化水素、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン(BPL)、バイナリーエチレンイミン(BEI)、または、Cuおよび/またはFeのイオンから選択される遷移金属イオンと組み合わせた過酸化水素を含むフェントン型試薬のうちの1つ以上を含み、ただし、ホルムアルデヒドの場合には、リン酸塩(HPO42−)のレベルが500mM以下である、方法。
前記無機多原子オキシアニオンが、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも750mM、少なくとも1000mM、もしくは少なくとも1500mMのレベルのリン酸ナトリウム(Na2HPO4)、少なくとも500mM、少なくとも750mM、少なくとも1000mM、もしくは少なくとも1500mMのレベルの硫酸ナトリウム(Na2SO4)、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1.5、少なくとも3、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも30、もしくは少なくとも60mMのレベルのトリメタリン酸ナトリウム(Na3P3O9)、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1.5、少なくとも3、少なくとも10、少なくとも15、もしくは少なくとも30mMのレベルの三リン酸ナトリウム(Na5P3O10)、または少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、もしくは少なくとも1500mMのレベルの硫酸マグネシウム(MgSO4)のうちの1つ以上である、請求項2に記載の方法。
病原体特異的抗体、B細胞、もしくはT細胞免疫アッセイ、凝集アッセイ、または他の好適なアッセイを使用して、前記非感染性の病原体の免疫原性を確認することをさらに含み、不活性化された病原体を含む免疫原性ワクチン組成物を産生することが提供される、請求項1に記載の方法。
前記ウイルスが、科:Togaviridae、属:Alphavirus)、科:Flaviviridae、属:Flavivirus)、科:Poxviridae、属Orthopoxvirus、または科:Orthomyxoviridae、属:Influenzavirus由来である、請求項8に記載の方法。
前記ウイルスが、チクングニア熱ウイルス(CHIKV、科:Togaviridae、属:Alphavirus)、デング熱ウイルス血清型1〜4(DENV1〜4)、および黄熱ウイルスYFV)、科:Flaviviridae、属:Flavivirus)、ワクシニアウイルス(VV、科:Poxviridae、属:Orthopoxvirus)、またはインフルエンザウイルス(科:Orthomyxoviridae、属:Influenzavirusである、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0046】
不活性化ワクチンは、医学および獣医学の両方に関するヘルスケアシステムの重要な成分を表すが、不活性化の先行技術プロセスは、標的病原体(例えば、ウイルス性および細菌性)の重要な抗原性エピトープに損傷を与え、ワクチンにおける最適以下の応答およびワクチン効能の低減をもたらす。
【0047】
本発明の特定の態様は、フェントン型化学を伴う開示された二重酸化手法の文脈において含む、高濃度の無機多原子オキシアニオン(例えば、標準的なリン酸緩衝生理食塩水反応条件下で、病原体を化学的不活性化剤(複数可)のみと接触させることによって保持される病原体免疫原性と比較して、病原体免疫原性の保持を増強するのに十分なレベル)を使用する代替的な手法を提供することによってこの問題を回避する。無機多原子オキシアニオンを使用して同様の保護結果が見られ、ここで、化学的不活性化剤は、1つ以上の化学的酸化剤、アルキル化剤、または架橋剤、例えば、過酸化水素、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン(BPL)、エチレンイミン(EI)、またはバイナリーエチレンイミン(BEI)のうちの1つ以上であった。フェントン型酸化反応は、酸化副産物を形成するために過酸化水素(H
2O
2)と組み合わせた酸化還元活性遷移金属(例えば、Cu、Fe、Csなど)の使用を必要とし、微生物不活性化をもたらす。
【0048】
加えて、本開示の方法において、高濃度の無機多原子オキシアニオンも、メチサゾン試薬と相乗して、病原体不活性化の速度をさらに増加しながら、ワクチン産生の目的のための免疫原性のよりさらに改善された保持を含む。
【0049】
本開示の先端フェントン型二重酸化プロセスは、Campylobacter(例えば、C.coliまたはC.jejuni)、Shigella種、およびListeria(例えば、Listeria monocytogenes)を含む3つの例示的な細菌(グラム陽性およびグラム陰性の例の両方であり、全てDNAゲノムを有する)、ならびにワクチン標的として4つの関連しないウイルス科(例えば、チクングニア熱ウイルス(CHIKV、科:Togaviridae、属:Alphavirus)、デング熱ウイルス血清型1〜4(DENV1、DENV2、DENV3、DENV4)および黄熱ウイルス(YFV)、科:Flaviviridae、属:Flavivirus)、ワクシニアウイルス(VV、科:Poxviridae、属:Orthopoxvirus)、ならびにインフルエンザウイルス(科:Orthomyxoviridae、属:InfluenzavirusA))における8個のウイルス(7つのRNAゲノムウイルスおよび1つのDNAゲノムウイルス)を含む、RNAまたはDNAゲノムのいずれかを有する病原体に成功裏に適用され、ここで、単純な(例えば、過酸化水素(H
2O
2)のみ)酸化が最適以下であることが見出された。CHIKV、DENV、およびYFVに関して、感受性中和エピトープで配向されるモノクローナル抗体に基づいて、ウイルス特異的ELISA試験を通してインビトロ抗原性を評価した。ウイルス性タンパク質機能の直接的な測定である、赤血球凝集活性(HA)を通してインフルエンザに関する抗原性を評価した。ワクチン接種後、中和抗体力価(CHIKV、DENV、およびYFV)または赤血球凝集抑制(HAI、インフルエンザ)応答などの、機能的体液免疫アッセイを通してワクチン抗原のインビボ増強を評価した
【0050】
本開示の二重酸化に基づく不活性化条件、および特に高レベルの無機多原子オキシアニオンの使用をさらに含むものが、例えば、H
2O
2のみと比較すると、インビトロ抗原性の維持を増強すると成功裏に実証され、CHIKV、DENV、YFV、およびインフルエンザに関して、二重酸化に基づく不活性化手法は、高い抗原性、ならびに完全なウイルス不活性化を実証した。これらのワクチンをインビボで試験すると、それらは、標準的なH
2O
2に基づく不活性化条件で達成されたのと同等またはそれより優れた抗ウイルス性免疫応答(例えば、免疫原性)、およびいくつかの事例においては、生ウイルスで見られるのと同等またはそれよりも良好な抗ウイルス性免疫応答を提供した。故に、フェントン型化学を使用して行われた二重酸化は、ワクチン接種後、抗原性特性を維持し、免疫応答を増強しながら、ロバストな病原体不活性化を提供した。
【0051】
フェントン型反応
フェントン型化学的反応は概して、(例えば、Barbusinski,K.,Fenton Reaction−Controversy concerning the chemistry.Ecological Chemistry and Engineering,2009.16(3):p.347−358、フェントン型反応物質および反応に関連するその教示に関して、その全体で本明細書に組み込まれる)以下の化学式を使用して記載される。
【数1】
【0052】
等式1において、Mは、H
2O
2と相互作用し得る遷移金属である。この反応は、H
2O
2の分解をもたらし、ヒドロキシルイオン(HO
−)および高度に反応性であるヒドロキシルラジカル(ΗΟ・)の産生をもたらす。FeおよびCuなどのある特定の遷移金属だけが、酸化還元活性があると見なされ、この反応を効率的に促進できることに留意されたい。完全な反応において、金属イオンは、H
2O
2との追加の反応を通して、その元の酸化状態に戻され、金属イオンを真の触媒(Id)にする。例として、Cu
2+との全体の反応は、以下のように書くことができる。
【数2】
【0053】
等式2において、H
2O
2は、Cu
2+をCu
+に低減する低減薬剤として作用する。等式3において、同様に、Cu
+は、H
2O
2を低減し、反応性ヒドロキシルラジカルの産生をもたらし、Cu
2+酸化状態に戻し、触媒作用の後のラウンドを可能にする。記載されるように、フェントン型反応(Id)中に起こる追加の副反応がある場合がある。
【0054】
フェントン型酸化の先行技術の使用は、広範囲にわたる滅菌および病原体除染系としての使用のみであった。
上述の通り、本開示の前の出願者の米国特許第8,124,397号および同第8,716,000号の前のH
2O
2の他に比を見ない殺菌性物質の使用に関する事例と同様に、フェントン型反応は、当該技術分野において、微生物病原体の不活性化/滅菌に関してのみ知られていた(例えば、Sagripanti,J.L.,L.B.Routson,and C.D.Lytle,Virus inactivation by copper or iron ions alone and in the presence of peroxide.Appl Environ Microbiol,1993.59(12):p.4374−6、Nieto−Juarez,J.I.,et al.,Inactivation of MS2 coliphage in Fenton and Fenton−like systems:role of transition metals,hydrogen peroxide and sunlight.Environ Sci Technol,2010.44(9):p.3351−6を参照されたい)。
【0055】
例えば、フェントン型酸化は、強力な抗菌プラットホームとして複数の基によって認識されている。FDA研究者は、まず、医療デバイスの滅菌における使用を具体的に目的とする抗菌手法としてフェントン型反応の組織的研究を詳述した(Sagripanti,J.L.,Metal−based formulations with high microbicidal activity.Appl Environ Microbiol,1992.58(9):p.3157−62)。モデル病原体としてフニンウイルス(ssRNA、属:アレナウイルス)を使用すると、急速な不活性化が観察され、レドックス反応(等式1)における触媒としてFe
3+およびCu
2+の両方は、最適化後の標準的な滅菌手法(2%のグルタルアルデヒド)としても良好に作用した。当時の作者により記述されているように、これらの金属のいずれかの使用が、正常なヒト血清が、比較的多量のFeおよびCuの両方を含有することを考慮すると、医療用には特に優良であった。例えば、正常な対象における総血清Cuレベルは、700〜1500μg/L(11〜24μM)の範囲にあるが(McClatchey,K.D.,Clinical laboratory medicine.2nd ed.2002,Philadelphia:Lippincott Wiliams&Wilkins.xiv,p.452)、Feレベルは、500〜1700μg/L(9〜30μΜ)の範囲にある(Lippincott Williams&Wilkins.,Nursing.Deciphering diagnostic tests.Nursing.2008,Philadelphia,PA:Wolters Kluwer/Lippincott Williams&Wilkins.vii,p.13)。この同じ研究グループは、Cu系フェントン反応をさらに展開し続け、φΧ174バクテリオファージ(ssDNA)、T7バクテリオファージ(dsDNA)、単純ヘルペスウイルス(HSV、dsDNA)、およびφ6バクテリオファージ(dsRNA)などの複数のウイルス性標的に対する抗菌活性を実証した(Sagripanti,J.L.,L.B.Routson,and C.D.Lytle,Virus inactivation by copper or iron ions alone and in the presence of peroxide.Appl Environ Microbiol,1993.59(12):p.4374−6)。H
2O
2/Cu
2+系(0.01%のH
2O
2、16μΜのCu
2+)を使用するHSVを用いた追加の研究により、急速な不活性化が確認され、核酸の直接的な酸化は、ウイルス不活性化を確証することが提示され(Sagripanti,J.L.,et al.,Mechanism of copper−mediated inactivation of herpes simplex virus.Antimicrob Agents Chemother,1997.41(4):p.812−7)、確認研究により、核酸に対するCu
2+の高親和性(Sagripanti,J.L.,P.L.Goering,and A.Lamanna,Interaction of copper with DNA and antagonism by other metals.Toxicol Appl Pharmacol,1991.110(3):p.477−85)および核酸内の鎖切断を誘導するH
2O
2/Cu
2+系の能力が実証された(Toyokuni,S.and J.L.Sagripanti,Association between 8−hydroxy−2’−deoxyguanosine formation and DNA strand breaks mediated by copper and iron,in Free Radic Biol”Med.1996:United States,p.859−64)。いくつかの他のグループも、H
2O
2/Cu
2+系の病原体不活性化の潜在性を実証した。Nieto−Juarezらは、50μΜのH
2O
2(0.00017%)および1μΜのCu
2+を使用してMS2バクテリオファージ(ssRNA)の急速な不活性化を実証し、作者は、排水除染に関してその潜在性を提示した(Nieto−Juarez,J.L,et al.,Inactivation of MS2 coliphage in Fenton and Fenton−like systems:role of transition metals,hydrogen peroxide and sunlight.Environ Sci Technol,2010.44(9):p.3351−6)(Nguyen,T.T.,et al.,Microbial inactivation by cupric ion in combination with H2O2:role of reactive oxidants.Environ Sci Technol、2013.47(23):p.13661−7も参照されたい)。
【0056】
結果的に、これらの先行技術研究は、除染の文脈において厳密であり、H
2O
2/Cu
2+系がモデル病原体を効率的に死滅/滅菌できることで知られていたことを実証するだけである。
【0057】
H
2O
2を用いた単純な酸化は、ある特定の病原体標的でワクチン免疫原性を限定した。
出願者は、以前より、単純な酸化剤としてのH
2O
2の単独使用が、多様なワクチン候補のための好適な不活性化薬剤を提供することを示している(例えば、米国特許第8,124,397号および同第8,716,000号)。
【0058】
しかしながら、H
2O
2のみを用いた酸化の継続的な開発において、不活性化プロセス中、抗原性および免疫原性が低減されたある特定の病原体を用いた事例が偶然にも発生した。例えば、チクングニア熱ウイルス(CHIKV)ワクチン候補の最近の初期段階の開発において、本明細書で呈示されるように、実施例1の作業中、標準的な条件下で3%のH
2O
2を用いた処理が、中和エピトープを破滅し、エンベロープ特異的MAbsを使用するインビトロ効能試験により判断されるように抗原性のほぼ完全な損失をもたらしたことが見出された(
図2A)。H
2O
2で不活性化されたCHIKVで免疫化された動物が、測定可能な中和抗ウイルス性抗体応答を開始できなかったため、測定された抗原性のこの損失は、インビボ免疫原性に対して著しい関係を有した(
図2B)。
【0059】
二重酸化系微生物不活性化がH
2O
2のみでの単純な酸化とは根本的に異なる機構を有することが出願者によって見出され、したがって、先端的な有効なワクチン抗原の開発のための二重酸化系微生物不活性化の潜在的使用は当初は推奨されなかった。
フェントン型反応が病原体を死滅させるためのみに先行技術で使用されており、ワクチンの開発に使用されておらず、その使用も提案されていない一方で、出願者は、それでもなお、実施例2で本明細書に示されるように、ワクチン産生の目的のために微生物病原体を不活性化する潜在性についてかかる反応を試験した。H
2O
2とは対照的に、不活性化手順中の溶液の総タンパク質濃度がH
2O
2/CuCl
2二重酸化不活性化速度に影響を及ぼすことが見出されたため、初期の不活性化データは、驚くべきことであり、予想外であった。タンパク質濃度は、出願者の標準的なH
2O
2手法を使用してウイルス不活性化に影響を及ぼさないことが以前に示された。DENV2について
図1Aおよび1Bに示されるように、二重酸化手法を使用して、タンパク質濃度は、ウイルス不活性化速度に実質的に影響を及ぼし、より高いタンパク質レベルがより遅いウイルス不活性化をもたらした。
【0060】
二重不活性化中の溶液の総タンパク質濃度における予想外の依存性は、出願者の以前の単純な(例えば、H
2O
2のみを用いる)酸化に基づく方法(例えば、米国特許第8,124,397号および同第8,716,000号)におけるようなH
2O
2のみと比較して根本的に異なる機構が関与しており、故に、効果的なワクチン産生のための二重酸化に基づく不活性化手順の効能/使用が全体的に疑わしく、予想不可能であることを示した。
【0061】
異なるタンパク質濃度依存性機構の発見にかかわらず、それでもなお出願者は、フェントン型二重酸化反応が驚くべきことに、微生物病原体を効果的に不活性化し、高度に免疫原性であり効果的なワクチンを提供するために使用され得ることを示すために、本明細書で考察され、以下の実施例に含まれる追加の実験を行った。
【0062】
先端ワクチン抗原の開発における二重酸化に基づく不活性化
フェントン型酸化(例えば、H
2O
2/Cu
2+系)は、当該技術分野において、ワクチンの開発のために使用されていなかったか、または使用を提案されていなかった。根本的に異なる機構が関与していた(すなわち、タンパク質濃度依存性)という出願者の発見にかかわらず、それでもなお出願者は、CHIKVに対するワクチン候補の開発におけるこの系の有用性を探求し、それは、この標的が、標準的なH
2O
2不活性化手法を使用する中和抗体の誘導無しに、乏しい免疫原性を実証していたためである(
図2Aおよび2B)。
【0063】
この系のみの各成分(H
2O
2またはCuCl
2、Cu
2+イオンの源)をまず、適切な抗原性を維持しながら、ウイルスを完全に不活性化するそれらのそれぞれの能力について評価した。抗原性は、特定のウイルス中和エピトープに結合するモノクローナル抗体を使用して、ウイルス表面上の無傷のタンパク質エピトープを測定する能力によって定義される。あるいは、構造抗原性も、インフルエンザウイルスの赤血球凝集活性を測定するために使用されるものなどの、生理学的タンパク質機能/結合アッセイによって定義され得る。CHIKVに結合するモノクローナル抗体に基づく抗原性結果は、実施例3で本明細書に示される。
【0064】
除染試薬(
図3Aおよび3B)のいずれかの濃度の増加が、不活性化の増強をもたらしたが、代わりに中和エピトープの損傷に起因して抗原性は著しく低下した。
【0065】
驚くべきことに、対照的に、結合H
2O
2/CuCl
2系を使用して、完全なウイルス不活性化をもたらすと同時に抗原性を完全に維持した最適な不活性化条件が特定された(
図3C)。
【0066】
CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチン接種は、急速でロバストな中和抗体力価をもたらし、関節炎症性疾患からの完全な保護を実証した。
H
2O
2/CuCl
2で処理したCHIKV候補の免疫原性を評価するために、ワクチン抗原をミョウバンアジュバントとともに配合し、複数回用量レベル(動物当たり10または40μg)でマウスを免疫化するために使用した。実施例4で本明細書に示されるように、CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチン接種は、急速でロバストな中和抗体力価をもたらし(
図4)、関節炎症性疾患からの完全な保護を実証した(
図5)。
【0067】
H
2O
2/CuCl
2系酸化は、不活性化YFVワクチンの開発において成功裏に使用された。
CHIKV、モデルアルファウイルスを用いて実証された有望な結果に基づいて、YFVなどのフラビウイルスに対するこの系の有用性が探求された。
【0068】
実施例5で本明細書に示されるように、予備的分析は、0.002%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2の濃度が、抗原性と急速なウイルス不活性との間の機能的バランスを表したことを提示した(
図6A)。0.10%のH
2O
2および1μMのCuCl
2(完全な不活性化を確実にするため)のさらに最適化された条件を使用して、YFV用のワクチン材料を産生し、成体BALB/cマウスを免疫化するために使用した。ワクチン接種後、全ての動物は、H
2O
2のみを使用して調製されたYFVワクチンで免疫化された動物に関する40未満の中和力価と比較して、240の平均中和力価で測定可能な中和力価を示した(
図6B)。ワクチン接種後の免疫原性におけるこれらの差異は、YFVが3%のH
2O
2で20時間処理されたときに観察される中和エピトープ(すなわち、抗原性)に対する重度の損傷に基づいて予測され得る。
図6Aおよび6Bは、H
2O
2/CuCl
2系酸化が不活性化YFVワクチンの開発において成功裏に使用されたことを示す。
【0069】
H
2O
2/CuCl
2系酸化は、不活性化DENVワクチンの開発において成功裏に使用された。
YFV、別のモデルフラビウイルスを用いて実証された有望な結果に基づいて、デング熱3(DENV3)をH
2O
2/CuCl
2系で試験した。
【0070】
実施例6で本明細書に示されるように、YFVを用いた初期の試験は、0.002%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2濃度が、高い抗原性を維持すると同時に、完全なウイルス不活性化も提供するための最適な手法を表したことを示した(
図7)。これらの予備的なH
2O
2/CuCl
2不活性化条件を使用して、各DENV血清型のワクチンロットを産生し、0.10%の水酸化アルミニウムでアジュバント化された四価のデング熱ワクチン中に配合し、成体アカゲザルを免疫化するために使用した。単一の追加免疫化後、全てのサルが、4つのデング熱ウイルス血清型のうちの3つに関して中和抗体応答の改善およびH
2O
2のみでの不活性化と比較して幾何平均力価の平均8倍の増加を実証したH
2O
2/CuCl
2不活性化手法で血清転換した(NT
50≧10)(
図8)。これらの研究において抗原用量にわずかな差異(1μg/血清型対2μg/血清型)があるため、同じ用量の四価のデング熱ワクチン抗原でワクチン接種されたマウスにおいて実験を繰り返した(
図9)。
【0071】
これらの実験において、H
2O
2/CuCl
2不活性化の二重酸化手法は、4つ全てのデング熱ウイルス血清型に関して3%のH
2O
2よりも免疫原性であり、中和抗体力価においては8倍〜800倍超の増加をもたらした。
【0072】
CuCl
2/H
2O
2系酸化は、インフルエンザウイルスで抗原性の改善を実証した。
2つのウイルス科(TogaviridaeおよびFlaviviridae)にわたって観察された肯定的な結果を考慮して、この新しい不活性化プラットホームを使用して試験するための追加のウイルス科を選択した。
【0073】
実施例7で本明細書に示されるように、標準的な3%のH
2O
2手法、紫外線不活性化、または最適化されたCuCl
2/H
2O
2系(0.002%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2)を使用してインフルエンザAウイルス(Orthomyxoviridae科)の不活性化を試験した。抗原性を評価するために、赤血球凝集活性(HA)滴定アッセイを使用した。インフルエンザウイルスは、赤血球を自然に凝集させ、不活性化中のこの活性の維持は、最終ワクチン産物の免疫原性にとって重要であると見なされる。
図10に示されるように、出願者のCuCl
2/H
2O
2系は、未処理の生抗原に関して観察されるのと同様のHA力価を維持した。比較により、UV不活性化は、HA活性を無視し得るレベルまで低減させた。このHA破壊のインビボ結果は、
図11で見ることができ、CuCl
2/H
2O
2は、ロバストな保護血清抗体赤血球凝集素抑制(HAI)力価を誘導するが、UVで処理された抗原は、マウスにおいて機能的抗体を誘導せず、致死的攻撃からの最小保護を誘導した。
【0074】
複数の遷移金属は、ワクチン抗原開発に対する二重酸化手法で使用され得る。
(CuCl
2の形態の)Cu
2+は、CHIKV、DENV、YFV、およびインフルエンザウイルスに関して記載される二重酸化ワクチン抗原開発研究で試験された初期の金属であった。しかしながら、上述されるように、他の金属も同様の様式で機能に対する潜在性を有する。
【0075】
実施例8で本明細書に示されるように、モデルウイルスとしてDENV3を使用して、CuCl
2(Cu
2+)、FeCl
3(Fe
3+)、またはCsCl(Cs
+)、およびH
2O
2の希釈液からなる不活性化研究を、ワクチン抗原の開発におけるそれらの潜在性について試験した。
【0076】
図12A〜12Cに示されるように、3つ全ての金属は、高レベルの抗原性を維持した条件を提供すると同時に、完全なウイルス不活性化を示した。
【0077】
遷移金属の組み合わせは、二重酸化ワクチン系における相乗効果を実証する。
上記の
図11および実施例8に示されるように、異なる金属は、ウイルスのH
2O
2不活性化を増強するために組み合わせて使用され得る。
【0078】
実施例9で本明細書に示されるように、潜在的な相乗効果を調査するために、DENV3モデルウイルスをH
2O
2(0.01%)の設定量でCuCl
2(Cu
2+)およびFeCl
3(Fe
3+)の組み合わせで活性化した。いくつかのCuCl
2/FeCl
3条件は、良好な抗原性を維持しながら完全な不活性化を提供し、これは、同じ不活性化条件で複数の金属を使用することが実行可能であることを実証する(
図13)。確かに、0.05μΜおよび0.10μΜのCuCl
2濃度で、FeCl
3濃度が増加すると、抗原性が増強し、これは、これら2つの金属との相乗効果を示す。
【0079】
細菌性形態の改善された維持のためのCampylobacterの最適化された不活性化を提供するために二重酸化を使用した。
実施例10で本明細書に示されるように、Campylobacterは、典型的には直径約0.2μmおよび長さ約2〜8μmの小さならせん形状細菌である(
図14A)。
【0080】
標準的な3%のH
2O
2溶液を用いた室温での5時間の不活性化後、細菌に形態が明白に変化するように実質的に損傷を与え、これには、総細胞構造および実質的な集塊の損失が含まれる(
図14B)。
【0081】
しかしながら、0.01%のH
2O
2および2μΜのCuCl
2を使用して二重酸化手法を最適化する際に、出願者は、驚くべきことに、二重酸化が、未処理の対照とは区別不能なままであった微生物での処理期間を通じて優れた細菌性形態を維持しながら、Campylobacter coli(C.coli)を完全に不活性化し得ることを見出した(
図14C)。
【0082】
保持された構造に加えて、不活性化全細胞ワクチンを調製するために必要不可欠なパラメータは、完全な微生物不活性化を確実にすることである。上述される最適な条件を使用して、不活性化速度研究を行った。
図15に示されるように、C.coliは、約15分の減衰率半減期(T
1/2)とともに急速な不活性化を実証した。これらの速度は、全20時間の不活性化期間中の20ログ超の不活性化を示す。パイロット製造ロットにおける細菌性力価(約10
9CFU/mL)に基づいて、このレベルの不活性化は、全体の細菌性構造を依然として維持しながら、製造プロセス中、高い安全マージン(最大1億倍の理論上の過剰不活性化)を提供した(
図14C)。
【0083】
CuCl
2/H
2O
2−C.coliワクチン接種は、アカゲザルにおいて保護免疫を提供した。
実施例11で本明細書に示されるように、出願者は、2つの野外シェルタードハウジング群からの60匹のCuCl
2/H
2O
2−C.coliで免疫化されたアカゲザルにおけるワクチン効能を決定し、次いで、Campylobacter培養により感染が確認された腸の疾患に関して動物を監視した。
【0084】
この研究に関して、(0.01%のH
2O
2および2μΜのCuCl
2を使用して不活性化された)CuCl
2/H
2O
2−C.coliワクチン候補で、動物を筋肉内ワクチン接種し、追加免疫用量を6ヶ月後に投与した。病歴に基づいて、ワクチン接種された群を選択し、Campylobacter感染症の歴史的に高い発生率を有した群を好ましいとした。この手法は、保護効能を評価する上で増加したロバスト性を提供した。全ての成体/若年期(n=59)は、40μgのミョウバンでアジュバント化された用量を受け、2匹の乳児(体重2Kg未満)は、半分の用量(20μg)を受けた。プロトコルに従って、ワクチン接種後の最初の14日間にCampylobacter関連下痢と診断されたいずれの動物も、ワクチン媒介性保護がこの初期期間中に起こる可能性が低いため排除される。ワクチン接種後その日にCampylobacter関連下痢に起因して研究からある成体動物を排除した。血清試料を、一次ワクチン接種後0日目および6ヶ月目に全ての残りのワクチン接種された動物(n=59)から収集し、この時点で、動物は、追加免疫用量のワクチンを受けた。
【0085】
一次ワクチン接種後、出願者は、Campylobacter関連下痢性疾患からの保護に加えて、同じシェルター群(
図16B、P=0.038)内の過去の数年と比較して、または2015年のCampylobacterシーズン中の他のシェルター群(
図16C、P=0.020)と比較して、Campylobacter特異的血清抗体力価(
図16A、P<0.001)の著しい増加を観察した。NHPの健康は毎日監視され、下痢性疾患は、検索可能中央データベースにおいて文書化される。ワクチン接種されたコホート内で下痢発生率を監視し、他の同様のシェルター群においておよそ1,000匹のワクチン接種されていない対照動物と比較した。糞便試料を下痢症状の発現を経験している任意の動物から収集し、C.coli、C.jejuni、およびShigella種について試験したが、それは、これらが動物における下痢に関連付けられる主な腸の病原体を表すためである。
【0086】
一次ワクチン接種後6ヶ月時点の中間分析は、ワクチン接種されていない動物におけるCampylobacter関連下痢の76の症例に対して、ワクチン接種された群におけるC.coliまたはC.jejuni関連下痢の症例を示し、これは、単一のワクチン接種後のCampylobacter培養陽性下痢性疾患(P=0.035)に対する統計的に有意な保護効果を表す。
【0087】
ほぼ全てのヒトワクチンが最適な保護効能のために少なくとも2回分の用量を必要とし、免疫記憶の耐久性が追加免疫ワクチン接種後にしばしば改善されるため、出願者は、保守的な手法に続いて、6ヶ月時点で追加免疫ワクチン接種を施し、次いで、NHPにおける下痢性疾患の発生率を監視し続けた。一次ワクチン接種の250日後、ワクチン接種されていない集団においてより多くのCampylobacter関連の腸疾患の症例が発生し続けた(8.7%または合計92匹の動物に達する)一方で、ワクチン接種されたコホートにおける動物のいずれも(0/59)疾患の徴候を示さず、2つの群間の統計的有意性はP=0.020に増加した。
【0088】
高リン酸塩濃度は、H
2O
2/CuCl
2不活性化中にデング熱ウイルス(DENV)抗原性を維持すると同時に、急速なウイルス不活性化速度を示した。
驚くべきことに、出願者は、高濃度の無機多原子オキシアニオンが、フェントン試薬(複数可)(例えば、過酸化水素および塩化銅の組み合わせ(H
2O
2/CuCl
2))での不活性化中の病原体の抗原性エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0089】
本明細書に示されるように、実施例12では、デング熱ウイルス(DENV)特異的サンドイッチELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を使用して、Na
2HPO
4[pH=7.5]の増加濃度(例えば、25、50、75、100、150、250、500、750、および1500mMのNa
2HPO
4)が、室温で20時間にわたるH
2O
2/CuCl
2条件を使用したウイルス不活性化中の抗原損傷から保護したことを示した。従来の/標準的な条件(Std.、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]を含む)下で、ウイルス上の中和エピトープが不活性化中に実質的に損傷されたが、これらのエピトープは、不活性化が高濃度のNa
2HPO
4(例えば、25、50、75、100、150、250、500、750、および1500mMのNa
2HPO
4)の存在下で行われた場合に損傷から保護された。
【0090】
例示的なELISAの結果が
図17Aに示される。標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]を含む)は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、Na
2HPO
4の増加濃度の存在下で不活性化されたウイルスは、完全なウイルス不活性化をもたらし、ELISAシグナルの増加を示し、天然抗体結合部位の保持の改善および抗原組成の改善を示した。
【0091】
図17Bに示されるように、高リン酸塩濃度の存在下でさえも、ウイルス不活性化速度は急速であり、不活性化ワクチンを調製するためのこの無機多原子オキシアニオン手法の実現可能性を示した。
【0092】
出願者は、pHを7.0〜8.0のpHの範囲に変動させてもウイルス不活性化速度に著しく影響しなかったことも決定した。点線は、検出の限界を示す。
【0093】
高リン酸塩濃度を伴う条件下での不活性化がワクチン免疫原性を改善する
驚くべきことに、出願者は、H
2O
2/CuCl
2で不活性化されたウイルスの免疫原性が高濃度のリン酸塩の存在下での不活性化によって改善されることも見出した。
【0094】
本明細書に示されるように、実施例13では、マウスは、標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義される)下で、または選択された高リン酸塩不活性化条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、150mMのNa
2HPO
4[pH=7.0]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、室温で20時間にわたって、H
2O
2/CuCl
2で不活性化された精製されたDENV4ビリオンで免疫化された。
【0095】
例示的なワクチン研究の結果が
図18に示される。標準的な不活性化技法を使用して調製されたワクチンが群平均NT
50力価=160をもたらした一方で、高リン酸条件下で調製されたDENV4ワクチンは、群平均NT
50力価=747を引き起こし、中和抗体の4.7倍の増加を表す。これらの結果は、高リン酸塩を含有する不活性化条件がインビトロで抗原性の改善を示したことを示し(
図17Aおよび17B)、インビボで実質的に改善されたワクチン媒介性免疫応答も提供する。
【0096】
複数のリン酸塩系無機多原子オキシアニオンが、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中の抗原損傷から保護する
驚くべきことに、出願者は、高濃度の他のリン酸塩系無機多原子オキシアニオンが、H
2O
2/CuCl
2の組み合わせでの不活性化中の病原体の生物学的に関連する中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0097】
本明細書に示されるように、実施例14では、DENV特異的サンドイッチELISAが、実施例12に記載される通りであるが、標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義される)下で、または0.01、0.05、0.1、0.5、1.5、3、10、15、もしくは30mMの三リン酸ナトリウム(Na
5P
3O
10)、または0.01、0.05、0.1、0.5、1.5、3、10、15、30、もしくは60mMのトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)を含む代替的な無機リン酸塩系多原子オキシアニオン源の存在下にて標準的な条件下で不活性化された精製されたDENV4を使用して行われた。H
2O
2/CuCl
2不活性化の20時間後、試料がカタラーゼで処理されて、残留H
2O
2を除去し、次いで、連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限度で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験された。
【0098】
例示的なELISAの結果が
図19に示され、これは、三リン酸ナトリウム(
図19A)およびトリメタリン酸ナトリウム(
図19B)などの他の無機リン酸塩系多原子オキシアニオンがH
2O
2/CuCl
2に基づく不活性化中のウイルスエピトープ損傷から保護したことを示す棒グラフを示す。
【0099】
標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、ウイルスが高濃度の三リン酸ナトリウム(
図19A)またはトリメタリン酸ナトリウム(
図19B)のいずれかの存在下で完全に不活性化されると同時に、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加も示した例がいくつか存在する。
【0100】
硫酸塩は、H
2O
2/CuCl
2不活性化中に抗原性を改善する別の無機多原子オキシアニオンを代表する。
驚くべきことに、出願者は、硫酸塩などの高濃度の非リン酸塩無機多原子オキシアニオンがH
2O
2/CuCl
2での不活性化中の中和エピトープの維持を改善することも見出した。
【0101】
本明細書に示されるように、実施例15では、DENV特異的ELISAは、実施例12に記載される通りであるが、SO
42−多原子オキシアニオン源として硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)または硫酸マグネシウム(MgSO
4)の存在下または不在下で不活性化された精製されたDENV4を使用して行われた。比較のために、不活性化実験も単原子陰イオン源のみとして塩化マグネシウム(MgCl
2)または塩化ナトリウム(NaCl)を用いて行われた。
【0102】
例示的なELISAの結果が
図20A〜20Dに示され、これらは、高濃度の無機多原子オキシアニオン、硫酸塩が、H
2O
2/CuCl
2に基づく不活性化中のウイルスエピトープ損傷から保護することを例示する。精製されたDENV4は、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaClからなる標準的な(Std.)緩衝液条件下で、室温で20時間、H
2O
2/CuCl
2(0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2で不活性化され、DENV特異的ELISAによる抗原性の保持について試験された。これらの標準的な不活性化条件は、(
図20A)硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の増加濃度、(
図20B)硫酸マグネシウム(MgSO
4)の増加濃度のいずれかで補完され、より高い濃度の硫酸塩が抗原性の改善に対応した。対照的に、単原子陰イオン(Cl
−)源として異なる濃度の(
図20C)塩化マグネシウム(MgCl
2)または(
図20D)塩化ナトリウム(NaCl)の添加は、抗原性には保護効果を示さなかった。不活性化後、試料は、残留生ウイルスについて試験された。完全なウイルス不活性化(50PFU/mL未満)を示した試料は、棒上に(−)を有し、残留感染性ウイルスを示した試料は、棒上に(+)で示される。破線は、標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2を含有する110mMのNaCl、室温で20時間)下で観察されたELISAシグナルを示す。
【0103】
したがって、標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、高濃度の硫酸ナトリウム(
図20A)または硫酸マグネシウム(
図20B)のいずれかの存在下で不活性化されたウイルスが完全なウイルス不活性化をもたらすと同時に、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加も示した例がいくつか存在する。塩化マグネシウム(
図20C)または塩化ナトリウム(
図20D)などの単原子陰イオンの増加濃度の存在下で行われた不活性化実験は、保護効果または抗原性の改善を示さない。
【0104】
無機多原子オキシアニオンの組み合わせは、H
2O
2/CuCl
2不活性化中に抗原性を改善した
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンの混合物が、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0105】
本明細書に示されるように、実施例16では、ELISAは、実施例12に記載される通りであるが、リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)およびトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)の多様な組み合わせ、またはリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)および硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の多様な組み合わせの存在下で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行われた。
【0106】
例示的なELISAの結果が
図21Aおよび21Bに示される。
【0107】
具体的に、
図21Aは、異なる形態のリン酸塩(例えば、Na
2HPO
4およびNa
3P
3O
9)を組み合わせて使用して、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中に生物学的に関連する中和エピトープを保護することができることを示す。
【0108】
具体的に、
図21Bは、リン酸塩および硫酸塩を組み合わせて使用して、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中に生物学的に関連する中和エピトープを保護することができることを示す。
【0109】
したがって、標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウム/三リン酸ナトリウム(
図21A)または高濃度のリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム(
図21B)のいずれかの存在下で完全に不活性化されると同時に、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加も示した例がいくつか存在する。
【0110】
無機多原子オキシアニオンが、H
2O
2/CuCl
2不活性化中のチクングニア熱ウイルスの抗原損傷から保護する
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、追加のウイルスモデルを使用してH
2O
2/CuCl
2での不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0111】
本明細書に示されるように、実施例17では、チクングニア熱ウイルス(CHIKV)特異的サンドイッチELISAが行われた。
【0112】
例示的なELISAの結果が
図22に示され、これは、リン酸塩(Na
2HPO
4)およびトリメタリン酸塩などの無機多原子オキシアニオンの添加が、H
2O
2/CuCl
2不活性化中のチクングニア熱ウイルス(CHIKV)抗原性を改善することを示す。
【0113】
したがって、H
2O
2/CuCl
2に基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウム/トリメタリン酸塩の存在下で完全に不活性化されたが、これらの試料は、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0114】
無機多原子オキシアニオンが、ホルムアルデヒドでの不活性化中に起こる抗原損傷から保護する
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンがホルムアルデヒドでの不活性化中の中和エピトープの維持を改善することも見出した。
【0115】
本明細書に示されるように、実施例18では、DENV特異的ELISAは、実施例12に記載される通りであるが、高濃度のリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)または硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の存在下または不在下で、ホルムアルデヒド(CH
2O)で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行われた。
【0116】
例示的なELISAの結果が
図23に示され、これは、リン酸塩(Na
2HPO
4)または硫酸塩(Na
2SO
4)などの無機多原子オキシアニオンの添加が、ホルムアルデヒド系ウイルス不活性化中の抗原損傷から保護することを示す。
【0117】
したがって、標準的なホルムアルデヒドに基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムのいずれかの存在下で完全に不活性化されたが、試料のうちの多くは、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0118】
無機多原子オキシアニオンが、β−プロピオラクトン(BPL)不活性化中の抗原損傷から保護する
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、BPLでの不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0119】
本明細書に示されるように、実施例19では、ELISAは、実施例12に記載される通りであるが、高濃度のNa
2HPO
4またはNa
2SO
4の存在下または不在下で標準的なBPL不活性化手法で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行われた。
【0120】
例示的なELISAの結果が
図24に示され、これは、リン酸塩(Na
2HPO
4)または硫酸塩(Na
2SO
4)などの無機多原子オキシアニオンの添加が、β−プロピオラクトン(BPL)でのウイルス不活性化中に起こる抗原損傷から保護することを示す。
【0121】
したがって、標準的なBPLに基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムのいずれかの存在下で完全に不活性化されたが、試料のうちの多くは、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0122】
無機多原子オキシアニオンが、バイナリーエチレンイミン(BEI)不活性化中の抗原損傷から保護した
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、BEIでの不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0123】
本明細書に示されるように、実施例20では、ELISAは、実施例12に記載される通りであるが、高濃度のNa
2HPO
4の存在下または不在下で典型的な範囲のBEI濃度(Aarthi,et.al.,Biologicals 32(2004)153−156)で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行われた。
【0124】
例示的なELISAの結果が
図25に示され、これは、リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)などの無機多原子オキシアニオンの添加が、バイナリーエチレンイミン(BEI)でのウイルス不活性化中に起こる抗原損傷から保護することを示す。
【0125】
したがって、BEIに基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウムの存在下で完全に不活性化されたが、これらの試料は、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0126】
メチサゾン試薬
上記で詳細に開示および考察されるように、酸化遷移金属(例えば、Cu
2+、Fe
3+など)は、抗原損傷を限定しながら、ウイルス不活性化を増強するために過酸化物系ワクチン開発プラットホームと併せて使用され得る。これは、本明細書に開示されるように高レベルの無機多原子オキシアニオンの使用によってさらに増大される。しかしながら、いくつかの病原体に関して、抗原性劣化がこの先端二重酸化手法を使用するときでも起こり得ることが記述された。ワクチン開発をさらに改善するために、本開示の二重酸化に基づく不活性化手法と相乗的に相互作用して、免疫原性タンパク質抗原に対する損傷をさらに低減しながら不活性化の速度を増加する能力に関して追加の化合物が探索/スクリーニングされた。この探索を通して、メチサゾン(methisazone)(N−メチルイサチンβ−チオセミカルバゾン、CAS 1910−68−5、C
10H
10N
4OS、MWt 234.3 Da、同義語:メチサゾン(metisazone)、マルボラン(Marboran)、マルボラン(Marborane)33T57、M−IBT、1−メチルイサチン3−チオセミカルバジド、N−メチルイサチンβ−チオセミカルバゾン)が出願者により特定された。メチサゾンは、1950年代にWellcome Foundationによって開発された一連の抗ウイルス性薬物のうちの1つである(Thompson RL,et al.,J Immunol.1953;70:229−34;Bauer DJ.,Br J Exp Pathol.1955;36:105−14)。オルソポックスウイルスを用いた小動物効能研究に基づいて、メチサゾンは、市販製品であるMarboran(登録商標)に開発され、ワクシニア合併症の治療、ならびに予防、および痘瘡の処理の両方を含むいくつかの臨床治験で試験された(Bauer DJ.,Ann N Y Acad Sci.1965;130:110−7)。
【0127】
Bauer(Id)に従って、ワクシニア合併症(ワクチニア性湿疹およびワクシニア壊疽)の治療におけるメチサゾンの使用に関する初期の症例レポートは、それが、効果的ではあるが制御を欠き、抗ワクシニア性ガンマグロブリンの付随使用(いくつかの事例において)により、効能を確認することが困難になることを示す。それにもかかわらず、重篤有害事象の欠如は有望である。平均の初期用量は、152mg/kgであり、3.75日間かけて与えられた総平均用量の809mg/kgであった。推定されるヒト対象の70kgの体重に関して、これは、用量当たり約10グラム、および治療経過当たり約60グラムに換算する。Bauerは、ワクシニアワクチン接種前にメチサゾンを予防的に使用し、合併症(Id)を低減したことが報告されたことを記述する。
【0128】
故に、歴史的インビボデータは、メチサゾンが安全であり、微量の本化合物でさえも新しいワクチンおよび製剤において問題にならないことを実証する。
【0129】
メチサゾンに関する最も印象的なデータのいくつかは、インドのマドラスでの大発生中に報告されたように痘瘡の予防に関する(Bauer DJ et al.,Lancet,1963;2:494−6)。メチサゾンを受けた密に接触した者のうち、3/1101(0.27%)のみが軽症の痘瘡(死亡なし)を発症した一方で、78/1126(6.9%)が痘瘡を発症し、12人が死亡した。ワクチン接種されていない対象のみに着目すると、2/102のメチサゾンで処理された対象が痘瘡に罹患(2%)したが、未処理の対照の28/100(28%)が痘瘡に罹患し、11人が死亡した。投与量を、臨床治験を通じて変更し、(1)経口用、食後、1日2回、4日間の1.5グラム(合計12グラム)、(2)経口用、食後、1日2回、4日間の3グラム(合計24グラム)、(3)経口用、12時間周期の3グラムの2回分の用量(合計6グラム)のいずれかで構成された。CuSO
4と組み合わせたメチサゾンは、ウイルスの除染に関して記載されている(Fox MP,et al.,Ann N Y Acad Sci.1977;284:533−43、Logan JC,et al.,J Gen Virol.1975;28:271−83)が、ワクチン産生に関しては記載されておらず、Η
2O
2と併せて使用されていない。
【0130】
フェントン型化学およびメチサゾン試薬
驚くべきことに、出願者は、本明細書に記載されるメチサゾン試薬が、本開示の二重酸化に基づく不活性化手法と相乗的に相互作用して、免疫原性タンパク質抗原に対する損傷をさらに低減しながら不活性化の速度を実質的に増加することを発見した。
【0131】
したがって、追加の態様において、フェントン型化学を伴う本開示の二重酸化方法は、実施例において以下により詳細に記載されるように、二重酸化のみと比較してさらにより効果的な微生物不活性化を提供し、二重酸化のみと比較して免疫原性のさらにより効果的な保持を有するメチサゾン、メチサゾン類似体、またはメチサゾン官能基(複数可)/下部構造(複数可)の使用をさらに含む。
【0132】
本開示の方法におけるメチサゾンに関する作用の正確な様式は明白ではないが、研究は、メチサゾンが、銅と複合化し得、この複合体が、核酸(Mikelens PE,et al.,Biochem Pharmacol.1976;25:821−7)およびタンパク質(Rohde W,et al.,J Inorg Biochem.1979;10:183−94)の両方に結合する能力を有することを示している。機構により束縛されることなく、出願者の結果を説明するために、出願者は、メチサゾン−銅複合体が、病原体全体の核酸に優先的に結合し得、一度結合すると、次いで、H
2O
2は、伝統的なフェントン型反応においてメチサゾン−銅複合体のCu
2+と相互作用して、結合核酸(例えば、核酸集中酸化)に近接して高度に活性なヒドロキシルラジカルを放出し得るという仮説を設けた。次いで、酸化的ラジカルのこの放出は、実質的であるが、局所的な核酸の損傷および病原体の不活性化をもたらし得る。したがって、出願者は、典型的には病原体を不活性化するために必要とされるであろうよりも低量のH
2O
2が使用され得、故に、タンパク質エピトープに対するオフサイト/付随的な損傷を限定し得ると推測をした。加えて、またはあるいは、イサチンβ−チオセミカルバゾン化合物は、核酸に直接的に結合すると示されており(Pakravan&Masoudian,Iran J Pharm Res.2015;14:111−23)、このクラスの化合物のみが、核酸巨大分子を(例えば、挿入、および/または小溝結合によって)開放できる可能性があると提示している。出願者は、これが正しい場合、それが、核酸標的への酸化剤のより優れたアクセスを可能にし、酸化系ウイルス不活性化を増強し得る推測をした。
【0133】
メチサゾンは、単一および二重酸化系ウイルス不活性化の両方の速度を増強した。
実施例21で本明細書に示されるように、出願者は、メチサゾンが、単一および二重酸化系ウイルス不活性化の両方の速度を増強したと決定した。
図26A〜Cに示されるように、メチサゾンの添加が、ワクシニアウイルス(VV、DNAゲノム)、ならびにデング熱ウイルス血清型4(DENV4、RNAゲノム)およびチクングニア熱ウイルス(CHIKV、RNAゲノム)に関して二重酸化に基づく不活性化の速度を実質的に増加することができた。
【0134】
さらに、メチサゾンのみがウイルス不活性化に最小限の影響しか及ぼさなかった(
図26Bおよび26C)が、メチサゾンおよびH
2O
2はともに(銅の不在下でさえも)、ウイルス不活性化に対する相乗的な増強を実証した。したがって、さらなる驚くべき態様は、以下により詳述されるように、H
2O
2のみと比較してより効率的な微生物不活性化を提供し、免疫原性の効果的な保持を有するメチサゾン、メチサゾン類似体、またはメチサゾン官能基(複数可)/下部構造(複数可)の使用をさらに含む過酸化水素(H
2O
2)を伴う効果的な単独酸化方法を提供する。
【0135】
メチサゾンは、二重酸化系細菌性不活性化の速度を増強した。
実施例22で本明細書に示されるように、出願者は、メチサゾンが、二重酸化系細菌性不活性化の速度を増強したと決定した。
【0136】
実施例21の結果をDNAコード細菌に拡張し(
図27A〜C)、ここで、この場合もやはり、メチサゾンの二重酸化手法(例えば、H
2O
2/CuCl
2)への添加が、Campylobacter coli(例示的なグラム陰性菌)、Listeria monocytogenes(例示的なグラム陽性菌)、およびShigella dysenteriae(例示的なグラム陰性菌)に対する不活性化速度を実質的に増強した。
【0137】
メチサゾンは、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持しながら不活性化速度を増強した。
実施例23で本明細書に示されるように、出願者は、メチサゾンが、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持しながら不活性化速度を増強したと決定した。不活性化中の抗原性へのメチサゾンの影響を評価するために、例示的なモデルウイルスCHIKVおよびDENV4を、高濃度H
2O
2(単独酸化系)、二重酸化(本明細書に記載されている)、またはメチサゾンを用いた二重酸化の複数の不活性化手法を用いて処理した。
図28A(チクングニア熱ウイルス(CHIKV))および28B(デング熱ウイルス血清型4(DENV4))のELISAデータによって示されるように、二重酸化手法へのメチサゾンの添加は、不活性化の速度をおよそ10〜20倍増加しながら、中和エピトープに対する損傷を低減することによって抗原性を維持したか、または著しく改善した。
【0138】
メチサゾンの化学的類似体、またはメチサゾン官能基/下部構造、またはそれらの組み合わせは、二重酸化系ウイルス不活性化中の不活性化および抗原性の維持を増強した。
本実施例24で本明細書に示されるように、出願者は、メチサゾンの化学的類似体、またはメチサゾン官能基/下部構造、またはそれらの組み合わせは、二重酸化系ウイルス不活性化中の不活性化および抗原性の維持を増強したと決定した。
【0139】
いくつかの関連化合物を、それらがワクチン開発のための病原体不活性化に同様の増強をもたらしたかを決定するために試験した(
図29A〜C)。例示的なモデルウイルスDENV4で示されるように、イサチンβ−チオセミカルバゾンおよびN−プロピルイサチンβ−チオセミカルバゾンなどのこれらの化合物のいくつかは、二重酸化系においてより優れた抗原性を維持しながら、不活性化の増強された速度を含むメチサゾンと同様の結果を実証した。興味深いことに、チオセミカルバジド部分だけを使用しても、不活性化の増強およびより優れた抗原性が依然として観察されるであろう一方で、イサチンまたはセミカルバジドは、不活性化の速度を増加させそうにないが、それでも不活性化中の酸化的な損傷からのタンパク質抗原の保護を実証する。メチサゾン関連化合物の別々の主な成分(官能基/下部構造)が最適な不活性化を再現するために組み合わせられ得るかを探求するために、イサチン+チオセミカルバジドまたはイサチン+セミカルバジドの混合物を試験した。イサチン+セミカルバジドは、依然として抗原保護を示した一方で、ウイルス不活性化を増強しなかった。対照的に、イサチン+チオセミカルバジドは、急速な不活性化(いずれの成分のみよりも急速)、ならびに大幅に増加した抗原性の両方をもたらした。
【0140】
メチサゾンは、無機多原子オキシアニオンと相乗して、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持した。
本実施例25に示されるように、出願者は、メチサゾンが、無機多原子オキシアニオンと相乗して、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持したと決定した。
【0141】
二重酸化不活性化中の無機多原子オキシアニオンと併せたメチサゾンの使用を調査した。
図30に示されるように、メチサゾンは、無機多原子オキシアニオンと相乗して、単離におけるいずれかの手法によって達成され得るよりも高い抗原性をもたらした。
【0142】
二重酸化系の遷移金属成分と比較して増加レベルのメチサゾンが、二重酸化系の抗原性および不活性化プロファイルを改善した。
実施例26で本明細書に示されるように、驚くべきことに、出願者は、二重酸化系の遷移金属成分と比較して増加レベルのメチサゾンが、二重酸化系の抗原性および不活性化プロファイルを改善したと決定した。これは、上記で考察されるように、メチサゾンが金属イオンを複合/封鎖すると知られているため非常に驚くべきことであり、出願者は、金属イオン(複数可)の触媒的役割に依存するフェントン反応を競合的に阻害するメチサゾンについて憂慮した。
【0143】
二重酸化系におけるメチサゾンおよび遷移金属の相対濃度の影響(
図31)を考察した。遷移金属と比較してメチサゾン濃度が増加することにより、10:1(メチサゾン:遷移金属)の好ましいモル比とともに、保持された抗原性および増加したウイルス不活性化速度の両方において付随する改善が実証されたことを見出した。
【0144】
メチサゾン試薬の使用および/または高レベル(例えば、標準的なリン酸緩衝生理食塩水反応条件下で病原体を化学的不活性化剤(複数可)のみと接触させることによって保持される病原体の免疫原性と比較して、病原体の免疫原性の保持を増強するのに十分なレベル)の1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含むものを含む二重酸化に基づく不活性化方法は、ウイルス性および細菌性病原体を含むが、これらに限定されないRNAまたはDNAゲノムのいずれかを有する病原体に対する先端ワクチンの開発において広い有用性を有する。
上記で考察され、かつ本明細書の実施例で示されるように、メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含むものを含む二重酸化に基づく不活性化方法は、4つの異なるウイルス科内の8個のウイルスだけでなく、3つの例示的な細菌性種(例えば、Campylobacter、グラム陰性菌、ヒト疾患と関係がある少なくとも12の種(C.jejuniおよびC.coliが最も一般的である))、Listeria monocytogenes(例示的なグラム陽性菌)、およびShigella dysenteriae(例示的なグラム陰性菌)にもわたって有用性を有すると示された。
【0145】
さらなる態様に従って、メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含むものを含む二重酸化に基づく不活性化方法は、以下の例示的な微生物を使用するが、これらに限定されない高度に免疫原性のワクチンを産生する上で有用性を有する。
ウイルス。二重酸化を使用して不活性化され得るウイルスの非限定的な例には、以下の科が含まれる:Adenoviridae、Alloherpesviridae、Alphaflexiviridae、Alphaherpesvirinae、Alphatetraviridae、Alvernaviridae、Amalgaviridae、Ampullaviridae、Anelloviridae、Arenaviridae、Arteriviridae、Ascoviridae、Asfarviridae、Astroviridae、Autographivirinae、Avsunviroidae、Baculoviridae、Barnaviridae、Benyviridae、Betaflexiviridae、Betaherpesvirinae、Bicaudaviridae、Bidnaviridae、Birnaviridae、Bornaviridae、Bromoviridae、Bunyaviridae、Caliciviridae、Carmotetraviridae、Caulimoviridae、Chordopoxvirinae、Chrysoviridae、Circoviridae、Clavaviridae、Closteroviridae、Comovirinae、Coronaviridae、Coronavirinae、Corticoviridae、Cystoviridae、Densovirinae、Dicistroviridae、Endornaviridae、Entomopoxvirinae、Eucampyvirinae、Filoviridae、Flaviviridae、Fuselloviridae、Gammaflexiviridae、Gammaherpesvirinae、Geminiviridae、Globuloviridae、Gokushovirinae、Guttaviridae、Hepadnaviridae、Hepeviridae、Herpesviridae、Hypoviridae、Hytrosaviridae、Iflaviridae、Inoviridae、Iridoviridae、Leviviridae、Lipothrixviridae、Luteoviridae、Malacoherpesviridae、Marnaviridae、Marseilleviridae、Megabirnaviridae、Mesoniviridae、Metaviridae、Microviridae、Mimiviridae、Myoviridae、Nanoviridae、Narnaviridae、Nimaviridae、Nodaviridae、Nudiviridae、Nyamiviridae、Ophioviridae、Orthomyxoviridae、Orthoretrovirinae、Papillomaviridae、Paramyxoviridae、Paramyxovirinae、Partitiviridae、Parvoviridae、Parvovirinae、Peduovirinae、Permutotetraviridae、Phycodnaviridae、Picobirnaviridae、Picornaviridae、Picovirinae、Plasmaviridae、Pneumovirinae、Podoviridae、Polydnaviridae、Polyomaviridae、Pospiviroidae、Potyviridae、Poxviridae、Pseudoviridae、Quadriviridae、Reoviridae、Retroviridae、Rhabdoviridae、Roniviridae、Rudiviridae、Secoviridae、Sedoreovirinae、Siphoviridae、Sphaerolipoviridae、Spinareovirinae、Spiraviridae、Spounavirinae、Spumaretrovirinae、Tectiviridae、Tevenvirinae、Togaviridae、Tombusviridae、Torovirinae、Totiviridae、Turriviridae、Tymoviridae、およびVirgaviridae。
【0146】
例示的なウイルス種には、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、風疹ウイルス、東部、西部、およびベネズエラ馬脳炎ウイルス、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、黄熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、ジカウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)を含むレトロウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、伝染性軟属腫、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、シンドビスウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ブタパルボウイルス、ブタサーコウイルス、チクングニア熱ウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌパルボウイルス、イヌアデノウイルス2型、イヌパラインフルエンザウイルス、ならびにイヌコロナウイルスが含まれる。
【0147】
細菌。細菌性病原体も、高度に免疫原性のワクチン組成物を産生するのに使用するためのメチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化を含む二重酸化を使用して不活性化され得る。二重酸化を使用して不活性化され得る細菌の非限定的な例には、以下の科が含まれる:Acanthopleuribacteraceae、Acetobacteraceae、Acholeplasmataceae、Acholeplasmataceae、Acidaminococcaceae、Acidilobaceae、Acidimicrobiaceae、Acidimicrobiaceae、Acidithiobacillaceae、Acidobacteriaceae、Acidothermaceae、Actinomycetaceae、Actinopolysporaceae、Actinospicaceae、Actinosynnemataceae、Aerococcaceae、Aeromonadaceae、Akkermansiaceae、Alcaligenaceae、Alcaligenaceae、Alcanivoracaceae、Algiphilaceae、Alicyclobacillaceae、Alteromonadaceae、Anaerolineaceae、Anaeroplasmataceae、Anaeroplasmataceae、Anaplasmataceae、Aquificaceae、Aquificaceae、Archaeoglobaceae、Armatimonadaceae、Aurantimonadaceae、Bacillaceae、Bacteriovoracaceae、Bacteroidaceae、Bacteroidaceae、Bartonellaceae、Bartonellaceae、Bdellovibrionaceae、Beijerinckiaceae、Beijerinckiaceae、Beutenbergiaceae、Bifidobacteriaceae、Blattabacteriaceae、Bogoriellaceae、Brachyspiraceae、Bradyrhizobiaceae、Bradyrhizobiaceae、Brevibacteriaceae、Brevinemataceae、Brucellaceae、Brucellaceae、Burkholderiaceae、Burkholderiaceae、Caldicoprobacteraceae、Caldilineaceae、Caldisericaceae、Caldisphaeraceae、Campylobacteraceae、Cardiobacteriaceae、Carnobacteriaceae、Caryophanaceae、Catalimonadaceae、Catenulisporaceae、Caulobacteraceae、Caulobacteraceae、Celerinatantimonadaceae、Cellulomonadaceae、Chitinophagaceae、Chlamydiaceae、Chlamydiaceae、Chlorobiaceae、Chlorobiaceae、Chloroflexaceae、Christensenellaceae、Chromatiaceae、Chrysiogenaceae、Chrysiogenaceae、Chthonomonadaceae、Clostridiaceae、Cohaesibacteraceae、Colwelliaceae、Comamonadaceae、Comamonadaceae、Conexibacteraceae、Coriobacteriaceae、Coriobacteriaceae、Corynebacteriaceae、Coxiellaceae、Crenotrichaceae、Cryomorphaceae、Cryptosporangiaceae、Cyclobacteriaceae、Cystobacteraceae、Cytophagaceae、Deferribacteraceae、Deferribacteraceae、Defluviitaleaceae、Dehalococcoidaceae、Deinococcaceae、Demequinaceae、Dermabacteraceae、Dermacoccaceae、Dermatophilaceae、Desulfarculaceae、Desulfobacteraceae、Desulfobulbaceae、Desulfohalobiaceae、Desulfomicrobiaceae、Desulfonatronaceae、Desulfovibrionaceae、Desulfurellaceae、Desulfurobacteriaceae、Desulfurococcaceae、Desulfuromonadaceae、Dictyoglomaceae、Dictyoglomaceae、Dietziaceae、Ectothiorhodospiraceae、Ehrlichiaceae、Elusimicrobiaceae、Enterobacteriaceae、Enterococcaceae、Entomoplasmataceae、Entomoplasmataceae、Erysipelotrichaceae、Erysipelotrichaceae、Erythrobacteraceae、Eubacteriaceae、Euzebyaceae、Ferrimonadaceae、Ferroplasmaceae、Fervidicoccaceae、Fibrobacteraceae、Fimbriimonadaceae、Flammeovirgaceae、Flavobacteriaceae、Flexibacteraceae、Francisellaceae、Frankiaceae、Fusobacteriaceae、Fusobacteriaceae、Gaiellaceae、Gallionellaceae、Gemmatimonadaceae、Geobacteraceae、Geodermatophilaceae、Glycomycetaceae、Gordoniaceae、Gracilibacteraceae、Granulosicoccaceae、Hahellaceae、Halanaerobiaceae、Halobacteriaceae、Halobacteroidaceae、Halomonadaceae、Haloplasmataceae、Halothiobacillaceae、Helicobacteraceae、Heliobacteriaceae、Herpetosiphonaceae、Holophagaceae、Holosporaceae、Holosporaceae、Hydrogenophilaceae、Hydrogenophilales、Hydrogenothermaceae、Hydrogenothermaceae、Hyphomicrobiaceae、Hyphomicrobiaceae、Hyphomonadaceae、Iamiaceae、Idiomarinaceae、Ignavibacteriaceae、Intrasporangiaceae、Jiangellaceae、Jonesiaceae、Kiloniellaceae、Kineosporiaceae、Kofleriaceae、Kordiimonadaceae、Ktedonobacteraceae、Lachnospiraceae、Lactobacillaceae、Legionellaceae、Lentisphaeraceae、Leptospiraceae、Leptospiraceae、Leptotrichiaceae、Leuconostocaceae、Listeriaceae、Litoricolaceae、Magnetococcaceae、Marinilabiliaceae、Methanobacteriaceae、Methanocaldococcaceae、Methanocellaceae、Methanococcaceae、Methanocorpusculaceae、Methanomicrobiaceae、Methanopyraceae、Methanoregulaceae、Methanosaetaceae(illegitimate)、Methanosarcinaceae、Methanospirillaceae、Methanothermaceae、Methermicoccaceae、Methylobacteriaceae、Methylobacteriaceae、Methylococcaceae、Methylocystaceae、Methylocystaceae、Methylophilaceae、Methylophilaceae、Microbacteriaceae、Micrococcaceae、Micromonosporaceae、Microsphaeraceae、Mooreiaceae、Moraxellaceae、Moritellaceae、Mycobacteriaceae、Mycoplasmataceae、Mycoplasmataceae、Myroidaceae、Myxococcaceae、Nakamurellaceae、Nannocystaceae、Natranaerobiaceae、Nautiliaceae、Neisseriaceae、Nevskiaceae、Nitriliruptoraceae、Nitrosomonadaceae、Nitrospinaceae、Nocardiaceae、Nocardioidaceae、Nocardioidaceae、Nocardiopsaceae、Oceanospirillaceae、Oleiphilaceae、Oligosphaeraceae、Opitutaceae、Orbaceae、Oscillochloridaceae、Oscillospiraceae、Oxalobacteraceae、Oxalobacteraceae、Paenibacillaceae、Parachlamydiaceae、Parachlamydiaceae、Parvularculaceae、Pasteurellaceae、Pasteuriaceae、Patulibacteraceae、Peptococcaceae、Peptostreptococcaceae、Peredibacteraceae、Phaselicystidaceae、Phycisphaeraceae、Phyllobacteriaceae、Phyllobacteriaceae、Picrophilaceae、Piscirickettsiaceae、Planctomycetacea、Planctomycetaceae、Planococcaceae、Polyangiaceae、Porphyromonadaceae、Porphyromonadaceae、Prevotellaceae、Prevotellaceae、Promicromonosporaceae、Propionibacteriaceae、Pseudoalteromonadaceae、Pseudomonadaceae、Pseudonocardiaceae、Psychromonadaceae、Puniceicoccaceae、Pyrodictiaceae、Rarobacteraceae、Rhabdochlamydiaceae、Rhizobiaceae、Rhizobiaceae、Rhodobacteraceae、Rhodobacteraceae、Rhodobiaceae、Rhodobiaceae、Rhodocyclaceae、Rhodospirillaceae、Rhodospirillaceae、Rhodothermaceae、Rickettsiaceae
、Rickettsiaceae、Rikenellaceae、Rikenellaceae、Roseiflexaceae、Ruaniaceae、Rubritaleaceae、Rubrobacteraceae、Rubrobacteraceae、Ruminococcaceae、Sandaracinaceae、Sanguibacteraceae、Saprospiraceae、Schleiferiaceae、Segniliparaceae、Serpulinaceae、Shewanellaceae、Simkaniaceae、Simkaniaceae、Sinobacteraceae、Sneathiellaceae、Solimonadaceae、Solirubrobacteraceae、Sphaerobacteraceae、Sphaerobacteraceae、Sphingobacteriaceae、Sphingomonadaceae、Sphingomonadaceae、Spirillaceae、Spirochaetaceae、Spirochetaceae、Spiroplasmataceae、Spiroplasmataceae、Sporichthyaceae、Sporolactobacillaceae、Staphylococcaceae、Streptococcaceae、Streptomycetaceae、Streptosporangiaceae、Succinivibrionaceae、Sulfolobaceae、Sutterellaceae、Synergistaceae、Syntrophaceae、Syntrophobacteraceae、Syntrophomonadaceae、Syntrophorhabdaceae、Thermaceae、Thermithiobacillaceae、Thermoactinomycetaceae、Thermoanaerobacteraceae、Thermoanaerobacteriaceae、Thermococcaceae、Thermodesulfobacteriaceae、Thermodesulfobacteriaceae、Thermodesulfobiaceae、Thermofilaceae、Thermogemmatisporaceae、Thermoleophilaceae、Thermolithobacteraceae、Thermomicrobiaceae、Thermomonosporaceae、Thermoplasmataceae、Thermoproteaceae、Thermosporotrichaceae、Thermotogaceae、Thioalkalispiraceae、Thiotrichaceae、Trueperaceae、Tsukamurellaceae、Turicibacteraceae、Veillonellaceae、Verrucomicrobiaceae、Verrucomicrobiaceae、Vibrionaceae、Victivallaceae、Waddliaceae、Waddliaceae、Williamsiaceae、Xanthobacteraceae、Xanthomonadaceae、Yaniellaceae、Aurantimonadaceae、Cenarchaeaceae,Haliangiaceae、Hydrogenimonaceae、Kordiimonadaceae、Mariprofundaceae、Nitrospiraceae、Parvularculaceae、Procabacteriaceae、Saccharospirillaceae、およびSalinisphaeraceae。
【0148】
例示的な細菌性種には、Campylobacter種、Shigella種、Mycobacterium種、Neisseria種、Brucella種、Borrelia種、Chlamydia種、Listeria monocytogenes、Bordatella pertussis、Clostridium種、Enterococcus種、Escherichia種、Francisella tularensis、Haemophilus influenzae、Helicobacter pylori、Legionella pneumophila、Leptospira interrogans、Streptococcus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Rickettsia rickettsii、Salmonella種、Staphylococcus aureus、およびBacillum anthracisが含まれる。例えば、グラム陽性およびグラム陰性菌が概して包含される。
【0149】
真菌。高度に免疫原性のワクチン組成物は、メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化を含む二重酸化を使用して不活性化された真菌類病原体からも産生され得る。例示的な真菌類病原体には、Aspergillus種、Candida種、Blastomyces種、Coccidioides種、Cryptococcus種、Fusarium種、Histoplasma種、Mucorales種、Pneumocystis種、Trichophyton種、Epidermophyton種、Microsporum種、Sporothrix種、Exserohilum種、およびCladosporium種が含まれる。
【0150】
寄生体。本明細書に開示され、かつメチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化を含む二重酸化方法は、高度に免疫原性のワクチンのための寄生体(例えば、細胞内寄生体)、および特に、原虫寄生体、例えば、Plasmodium falciparumおよび他のPlasmodium種、Leishmania種、Cryptosporidium parvum、Entamoeba histolyticaおよびGiardia lamblia、Trypanosoma種、ならびにToxoplasma、Eimeria、Theileria、およびBabesia種を不活性化するためにも使用され得る。
【0151】
免疫原性組成物
本開示の方法を使用して、不活性化された病原体を含有するワクチンなどの免疫原性組成物も提供される。例えば、本組成物(または、薬品)は、免疫原性組成物が調製された生物学的活性病原体の1つ以上の優勢な抗原性エピトープを保持する、病原体を含有する凍結乾燥された免疫原性組成物(例えば、ワクチン調製物)であり得る。凍結乾燥された組成物は、防腐剤不含であり、かつ一切の不活性化剤が欠如(例えば、H
2O
2などが欠如)した状態で調製され得る。本組成物は、薬学的に許容される希釈液中で凍結乾燥された組成物を再構成することによって調製された液体でもあり得る。任意に、本組成物は、抗原の抗原性効能を増加させる好適なアジュバントを含み得る。
【0152】
メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含むものを含む本開示の二重酸化手法を用いた不活性化は、効果的なワクチンが他の方法(過酸化物のみによる方法を含む)によって産生され得ない病原体に対するワクチンを含むワクチン産生のための改善された方法を提供するだけでなく、UV不活性化、熱不活性化、またはホルムアルデヒドもしくはベータプロピオラクトンを用いた不活性化と比較していくつかの追加の著しい利益も提供する。
【0153】
第1に、メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化を含む、過酸化水素および遷移金属イオン(フェントン型反応)を用いた二重酸化は、免疫原性エピトープを維持するという点で、他のいずれかの方法よりも著しくより良好である。故に、メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化を含む二重酸化不活性化は、免疫学的に重要なエピトープを変性または破滅させる方法を使用して産生されたワクチンよりも、生病原体による後の感染症から保護する可能性がかなり高い、免疫応答を産生するために使用され得るワクチンなどの高度に効果的な免疫原性組成物を産生する。
【0154】
第2に、ホルムアルデヒドまたはベータプロピオラクトンなどの他の化学的不活性化剤とは異なり、本開示の二重酸化方法で使用されるCuおよびFeイオンは、対象においては自然に生じることはないが、非毒性の量での反応中に存在する。さらに、残留遷移金属、および/またはメチサゾン試薬は、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、流濾過(例えば、タンジェント流濾過)、脱塩カラム、血液透析濾過、透析、超遠心分離、スクロース勾配精製、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)などを使用して下流精製によって除去され得る。
【0155】
同様に、任意の残留過酸化水素は、任意の遷移金属除去のための上述されるような後の精製ステップを使用するか、または凍結乾燥を使用するかのいずれかによってワクチン組成物から実質的にまたは完全に除去される。例えば、病原体および過酸化水素および遷移金属イオンを含有する溶液は、滅菌バイアル中に分配され、凍結乾燥され得る。凍結乾燥プロセスの間、過酸化水素は、蒸気の形態で除去され、後には、必要になるまで容易に保管ができる安定した滅菌ワクチン組成物が残る。凍結乾燥により、ワクチン組成物からある程度、ほとんど、またはさらには全ての検出可能な過酸化水素が除去され、所望される場合、実質的に過酸化水素不含のワクチン組成物が産生される。凍結乾燥は、免疫原性エピトープの熱変性が起こる温度以下に維持される限り、当該技術分野において既知の本質的に任意の方法によって行われ得る。故に、凍結乾燥は、過酸化水素/病原体溶液)の予備凍結の後、または予備凍結することなく行われ得る(例えば、周囲温度を約0〜4℃〜約42℃を維持する条件下で、例えば、SPEED−VAC(登録商標)濃縮器を使用して、凍結を上回る周囲温度で)。ヒトまたは動物対象への投与のためのワクチンなどの免疫原性組成物を製造する目的のために、凍結乾燥は典型的には、ワクチンの産生のための現在の良好な製造手順(cGMP)に従って行われる。不活性化および凍結乾燥は、希釈、透析、遠心分離、または精製などのプロセスステップが一切介在することなく達成され得る。病原体/過酸化水素溶液が、凍結乾燥前に清潔な滅菌容器(例えば、バイアル、アンプル、管など)中に分配される(または、分割される)限り、得られたワクチン組成物は滅菌状態になり、投与前の追加の防腐剤の添加は不要である。例えば、ワクチン組成物が単回用量で投与されるべきである場合、凍結乾燥されたワクチン組成物は、薬学的に許容される希釈液中に単に懸濁され(または、溶解され)て、防腐剤不含液体ワクチン組成物を産生する。凍結乾燥されたワクチン組成物が複数回投与(例えば、単一の対象へ複数回連続投与、または複数の対象へ1回以上投与)されることが意図される場合、希釈液は、薬学的に許容される防腐剤を含み得る。
【0156】
所望される場合、遷移金属イオンおよび/または過酸化水素は、上述されるような精製ステップによって除去され得る。例えば、残留H
2O
2および遷移金属(例えば、CuまたはFeのいずれか)は、タンジェント流濾過、透析、脱塩カラム、イオン交換クロマトグラフィー(ウイルスに結合するが残留不活性化成分に結合しない条件下で)、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの1つ以上の精製手法の使用によって除去され得る。
【0157】
あるいは、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO
3)および/またはメタ重亜硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
5)は両方共、H
2O
2を中和するために使用され得る(1molのメタ重亜硫酸塩が2molの重亜硫酸塩に分解し、次いで、H
2O
2と直接反応する)。
Na
2S
2O
5+2H
2O→2NaHSO
3+H
2O (1)
2NaHSO
3+2H
2O
2→2NaHSO
4+2H
2O (2)
【0158】
使用前に、ワクチンは、薬学的に許容される希釈液を使用して再構成されて、従来の投与手段によって送達を容易にし得る。これは、有害量の有毒で発癌性化合物を含有しない滅菌ワクチン組成物の産生を可能にし、それにより、ワクチンの安全性が増加する。
【0159】
加えて、二重酸化不活性化、またはメチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化後、得られたワクチン組成物に防腐剤(チメロサールなど)を添加する必要はない。滅菌組成物は、長期間(例えば、凍結乾燥された状態で)維持され得、これにより、潜在的に有毒な防腐剤の添加が不要になる。故に、本組成物は、実質的にまたは完全に防腐剤不含になるように作製され得る。任意に、防腐剤は、本組成物中に提供され得る。
【0160】
メチサゾン試薬の使用および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含むものを含む二重酸化方法は、ワクチンなどの免疫原性組成物を提供し、故に、不活性化された病原体を含む薬品を調製するための方法を提供する。本方法は、組成物が産生される感染性の病原体の優勢な免疫性エピトープを保持する、免疫学的に活性である非感染性の病原体を含有する組成物を提供する。典型的には、不活性化された病原体は、病原体に対する保護免疫応答を誘発する1つ以上の免疫学的に優性のエピトープを保持する。この方法は、ウイルス、細菌、真菌、および寄生体、例えば、細胞内寄生体(例えば、原虫寄生体)を含むRNAまたはDNAゲノムのいずれかを有する不活性化された病原体を含有する免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を産生するのに好適である。任意に、本組成物は、病原体の1つを超える種または菌株を含有し、例えば、ワクチンの組み合わせは、本方法を使用して産生され得る。本組成物は、複数のウイルス、例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、および風疹ウイルス、ならびに/または本明細書に開示されるような他のウイルスを含み得る。同様に、本組成物は、複数の細菌、例えば、Campylobacter種、Corynebacterium diphtheriae、Bordetella pertussis、およびClostridium tetani、下痢、ジフテリア、百日咳、および破傷風それぞれの起因菌、ならびに/または本明細書に開示されるような他の細菌性を含み得る。本組成物は、異なる分類(科)の生物から選択される複数の病原体も含み得る。
【0161】
二重酸化方法は、病原体を非感染性にするのに十分な期間にわたって、病原体を有効量の二重酸化剤(例えば、フェントン試薬、過酸化水素(H
2O
2)、および遷移金属イオン)もしくは二重酸化剤およびメチサゾン試薬を含有する溶液、および/または_高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在と接触させることを伴う。任意に、病原体は、二重酸化剤と接触される前に精製されるか、または単離される。
【0162】
典型的には、溶液は、少なくとも約0.001%または0.002%の過酸化水素(wt/vol)を含み、最大約0.10%の過酸化水素を含有し得る。典型的には、溶液は、少なくとも1μΜまたは2μΜの遷移金属(例えば、CuCl
2)を含む。最も典型的には、少なくとも0.001%または0.002%の過酸化水素(wt/vol)は、少なくとも1μΜまたは2μΜの遷移金属(例えば、CuCl
2)と組み合わせて使用される。例えば、溶液は、約0.002%の過酸化水素(wt/vol)と、約1μΜまたは2μΜのCuCl
2とを含み得る。さらなる実施形態において、過酸化水素濃度は、上述されるレベルの遷移金属と組み合わせて、0.0001%の低さか、または1.0%の高さになり得る。遷移金属の濃度範囲は、再度、本開示のいずれかのレベルの過酸化水素と合わせて、0.001μΜの低さか、または1000μΜの高さになり得る。メチサゾン試薬を含む反応において、好ましい量のメチサゾン試薬、メチサゾン類似体、またはメチサゾン官能基もしくはメチサゾン官能下部構造を表す化学物質は、本開示のいずれかのレベルの過酸化水素または遷移金属と合わせて、0.01μΜの低さ、または10,000μΜの高さになり得る。
【0163】
二重酸化不活性化の機構が、単純な過酸化水素媒介性酸化の機構とは驚くほどに異なることが見出された(すなわち、タンパク質濃度依存性であることが見出された)が、それでもなお本出願者は、絶対量および/または相対量の過酸化水素(wt/vol)および遷移金属イオン(例えば、CuCl
2)は、広いアレイの病原体に対する免疫原性を保持しながら、不活性化を最適化するために変化し得ることおよび調整され得ることを見出した。出願者は、メチサゾン試薬を使用する反応において変化する2つの変数(過酸化水素濃度および遷移金属濃度)、およびさらには3つの変数を有することにより、単一の薬剤を使用する先行技術の方法を上回る増強された微調整能力が提供されることを見出した。さらに、出願者は、驚くべきことに、2つのフェントン成分(過酸化水素濃度および遷移金属濃度)、ならびにそれらを含む反応におけるメチサゾン試薬、ならびに高レベルの無機多原子オキシアニオンが、相乗的に作用して、単一の薬剤のみの使用では達成し得ない結果を提供することを(実施例で本明細書に示されるように)見出した。加えて、相乗効果を利用するために、遷移金属(例えば、CuCl
2(Cu
2+)と、FeCl
3(Fe
3+)またはCsCl(Cs
+))と、メチサゾン試薬と、無機多原子オキシアニオンとの組み合わせが用いられ得る。例えば、0.05μΜおよび0.10μΜのCuCl
2濃度で、FeCl
3濃度が増加すると、抗原性が増強し、これは、これら2つの金属との相乗効果を示す。これらの微調整および相乗的な態様は、本開示の二重酸化手法に関する広い有用性を支持する。
【0164】
病原体を完全に不活性化するのに十分な時間の長さは、数分〜数時間の間で変化し得る。例えば、病原体は、約1時間〜24時間の範囲内の時間、またはより短い期間にわたって、二重酸化溶液、またはメチサゾン試薬、および/もしくは無機多原子オキシアニオンをさらに含む二重酸化溶液と接触させられ得る。典型的には、二重酸化反応に関して、少なくとも1μΜまたは2μΜの遷移金属(例えば、CuCl
2)と組み合わせて使用される少なくとも0.001%または0.002%の過酸化水素(wt/vol)を使用するとき、約20時間(±2時間)が使用される。概して、病原体を不活性化するのに十分な時間の長さは、特定の病原体および試薬の濃度に応じ、当業者は、本開示の教示に基づいて、試薬の濃度、必要とされる反応時間の長さ、および反応温度を経験的に決定することができるであろう。さらなる実施形態において、過酸化水素濃度は、上述されるレベルの遷移金属と組み合わせて、0.0001%の低さか、または1.0%の高さになり得る。遷移金属の濃度範囲は、再度、本開示のいずれかのレベルの過酸化水素と合わせて、0.001μΜの低さか、または1000μΜの高さになり得る。好ましい濃度のメチサゾン試薬、メチサゾン類似体、またはメチサゾン官能基もしくはメチサゾン官能下部構造を表す化学物質は、本開示のいずれかのレベルの過酸化水素または遷移金属と合わせて、0.01μΜの低さ、または10,000μΜの高さになり得る。
【0165】
病原体不活性化は、凍結温度〜免疫学的に関連するエピトープが変性する温度の任意の温度で行われ得る。最も一般的に、不活性化プロセスは、4℃以上〜約42℃未満で行われる。例えば、室温または約25℃で不活性化を行うことが簡便である。
【0166】
概して、メチサゾン試薬および/または無機多原子オキシアニオンをさらに含むものを含む二重酸化条件は、全体の抗原性構造を依然として維持しながら、製造プロセス中、高い安全マージン(例えば、最大1億倍の理論上の過剰不活性化)を提供すると決定される。
【0167】
次いで、不活性化された病原体は、長時間の(例えば、数ヶ月以上または1年を超える)期間にわたって保管することができる。次いで、不活性化された病原体を含有する溶液は、例えばワクチンとして、病原体に対する免疫応答を誘発する目的のために対象に直接投与され得る。より一般的に、不活性化された病原体を含む溶液は、免疫原性組成物を産生するために上述されるようにさらに処理または凍結乾燥される。
【0168】
したがって、本開示は、本明細書に開示される方法に従って産生された免疫原性(例えば、ワクチン)組成物を提供する。例えば、本組成物(例えば、薬品)は、生物学的活性病原体の1つ以上の優勢な抗原性エピトープを保持する、不活性化された病原体を含む凍結乾燥および/または精製された組成物である。典型的には、本組成物は、実質的にまたは完全に防腐剤または不活性化剤、例えば、過酸化水素、ホルムアルデヒド、もしくはベータプロピオラクトン不含である。別の実施形態において、本組成物は、薬学的に許容される希釈液中で凍結乾燥または精製された組成物を懸濁または溶解する(可溶化する)ことによって産生された液体である。任意に、希釈液は、防腐剤を含有する。任意に、ワクチン組成物は、アジュバントを含む。凍結乾燥された形態において、アジュバントは、例えばアルミニウム(例えば、ミョウバンまたはアルミニウム塩)アジュバントであり得る。凍結乾燥されたワクチン組成物から液体配合物を調製すると、アジュバントは、脂質配合物(例えば、エマルションを形成することができる油)であり得る。不活性化された病原体ゲノムは、RNAまたはDNAを含み得る。
【0169】
不活性化された病原体を含有する組成物を投与することによって対象において免疫応答を誘発するための方法も提供される。
追加の態様に従って、免疫原性組成物を投与することによって病原体に対する免疫応答を誘発する方法が提供される。典型的には、免疫応答は、1つ以上の病原体による感染症を予防または低減する保護免疫応答である。例えば、免疫応答は、(免疫原性を保持しながら)病原体を非感染性にするのに十分な期間にわたって、病原体を、二重酸化試薬(複数可)を含有する溶液と接触させることによって組成物を調製し、本組成物を対象に投与することによって、対象において誘発され得、それにより、対象において病原体に対する免疫応答(例えば、保護免疫応答)を誘発する。いくつかの応用例において、溶液は、二重酸化剤(複数可)を溶液から除去することなく対象に投与される。他の応用例において、本組成物は、本明細書に記載されるように凍結乾燥および/またはそうでない場合は精製され、二重酸化試薬(複数可)のいくつかまたは全て(または、実質的に全て)を除去する。プロセス組成物は、粉末形態で(例えば、分散粉末としてまたはペレットとして、例えば、粉末JECT(登録商標)経皮粉末注射デバイスを使用して)投与され得る。あるいは、凍結乾燥された組成物は、ワクチンを対象に送達するのに好適な任意の方法、例えば、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)の筋肉内、皮内、経皮、皮下もしくは静脈注射、口腔送達、または鼻腔内、または他の粘膜送達を使用して投与するために薬学的に許容される希釈液中で再構成される。
【0170】
用語
別途説明されない限り、全ての専門用語および化学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。molecular biologyにおける一般用語の定義は、Oxford University Press,1994(ISBN 0−19−854287−9)によって出版されているBenjamin Lewin,Genes V、Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN 0−632−02182−9)によって出版されているKendrew,et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology、およびVCH Publishers,Inc.,1995(ISBN 1−56081−569−8)によって出版されているRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Referenceで見ることができる。
【0171】
単称語「a」、「an」、および「the」は、別途文脈が明確に示さない限り複数の対象を含む。同様に、「or」という用語は、別途文脈が明確に示さない限り「and」を含むことが意図される。
【0172】
本明細書に記載されるものと同様であるかまたは同等である方法および材料が、本開示の実践または試験において使用され得るが、好適な方法および材料が以下に記載される。「を含む(comprise)」という用語は、「を含む(include)」を意味する。「例えば(e.g.)」という略語は、ラテン語の「例えば(exempli gratis)」からの派生語であり、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。故に、「例えば」という略語は、「例えば」という用語と同義である。
【0173】
本開示の多様な実施形態の概説を容易にするために、特定の用語の以下の説明が提供される。
「免疫原性組成物」または「ワクチン組成物」または「ワクチン」は、例えば、病原体に対する特定の免疫応答を誘発することができるヒトまたは動物対象への投与に好適な物質の組成物である。このように、免疫原性組成物またはワクチンは、1つ以上の抗原または抗原性エピトープを含む。抗原は、文脈において、単離タンパク質もしくはタンパク質のペプチド断片であり得るか、または病原体に由来する部分的に精製された調製物であり得る。あるいは、抗原は、文脈において、全ての生病原体または不活性化された病原体であり得る。典型的には、免疫原性組成物またはワクチンが生病原体を含むとき、病原体は弱毒化し、つまり、免疫学的に適格性の対象において疾患を引き起こすことができない。他の事例において、免疫原性組成物またはワクチンは、全て不活性化された(または、死滅した)病原体を含む。不活性化された病原体は、免疫学的に適格性の対象の少なくとも一部分において疾患を(不活性化されない場合)反対に引き起こすであろう野生型病原性生物、または弱毒化もしくは変異菌株、または単離病原体のいずれかであり得る。本開示の文脈において、免疫原性および/またはワクチン組成物は、全ての(野生型、弱毒化、または変異)病原体を含有する。
【0174】
「免疫応答」または「インビボ免疫応答」は、免疫系の細胞、例えば、B細胞、T細胞、または単球の刺激に対する応答である。いくつかの事例において、免疫応答は、T細胞の応答、例えば、CD4+応答またはCD8+応答である。あるいは、応答は、B細胞の応答、および特定の抗体の産生における結果である。いくつかの事例において、応答は、特定の抗原に対して特異的(つまり、「抗原特異的応答」)である。抗原が病原体に由来する場合、抗原特異的応答は、「病原体特異的応答」である。「保護免疫応答」は、病原体の有害な機能もしくは活性を阻害するか、病原体による感染症を低減するか、または病原体による感染症に起因する症状(死亡を含む)を低下する免疫応答である。保護免疫応答は、例えば、プラーク減少アッセイもしくはELISA中和化アッセイにおけるウイルス複製もしくはプラーク形成の抑制によって、またはインビボにおけるウイルス攻撃に対する耐性を測定することによって測定され得る。
【0175】
「免疫学的に有効な量」は、対象において免疫応答を誘発するために使用される組成物の量である。ワクチン投与文脈において、所望の結果は典型的には、保護病原体特異的免疫応答である。しかしながら、免疫適格性の対象において病原体に対する保護免疫を得るために、複数回分の投与のワクチン組成物が一般的に必要とされる。故に、本開示の文脈において、免疫学的に有効な量という用語は、前または後の投与と組み合わせて、保護免疫応答を達成するのに寄与する分割用量を包含する。
【0176】
「抗原」は、動物に注射、吸収、またはそうではない場合、導入される組成物を含む、動物における抗体の産生および/またはT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物、物質である。「抗原」という用語は、全ての関連抗原性エピトープを含む。「エピトープ」または「抗原性決定基」という用語は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。
【0177】
「優勢な抗原性エピトープ」は、機能的に著しい宿主免疫応答、例えば、抗体応答またはT細胞応答が作製されるエピトープである。故に、病原体に対する保護免疫応答に関して、優勢な抗原性エピトープは、宿主免疫系によって認識されるときに、病原体によって引き起こされる疾患からの保護をもたらす抗原性部分である。
【0178】
「抗原性」という用語は、例えば、特定のモノクローナル抗体の結合または赤血球凝集アッセイなどの多様なインビトロ測定によって決定されるような免疫原性エピトープ構造(複数可)の相対的な維持を指す。インビボ文脈における「抗原性」は典型的には、「免疫原性」と本明細書で称される。
【0179】
「アジュバント」は、非特異的様式で免疫応答の産生を増強する薬剤である。一般的なアジュバントは、抗原が吸着される鉱物(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)の懸濁液、または抗原溶液が油中で乳化される油中水型エマルション(MF−59、不完全フロイントアジュバント)を含む。多様なアジュバントに関する追加の詳細は、Derek O’Hagan Vaccine Adjuvants:Preparation Methods and Research Protocols(Methods in Molecular Medicine)Humana Press,2000で見ることができる。
【0180】
本明細書で使用されるような「病原体」という用語は、RNAまたはDNAゲノムのいずれかを有する生物を指し、ウイルス(RNAおよびDNAゲノム系の両方)、細菌(DNAゲノム系、グラム陽性およびグラム陰性の両方)、真菌、および寄生体を包含する。特定の好ましい態様において、「病原体」は、RNAまたはDNAゲノムのいずれかを有する生物を指し、ウイルス(RNAおよびDNAゲノム系の両方)、および細菌(DNAゲノム系、グラム陽性およびグラム陰性の両方)を包含する。
【0181】
「病原体全体」という用語は、生物の感染性形態の構成要素の全てまたは実質的に全てを含むウイルス、細菌、真菌、または寄生体などの病原性生物を指す。典型的には、病原体全体は、複製することができる。それでもなお「病原体全体」という用語は、「野生型」病原体という用語とは異なり、「病原体全体」という用語は、病原性生物の野生型、ならびに弱毒化および他の変異形態を包含する。故に、病原体全体は、免疫適格性の宿主において疾患を引き起こすことができないが、それでもなお、感染性病原体の構成要素の全てまたは実質的に全てを含む弱毒化病原体であり得る。同様に、病原体全体は、1つ以上の無傷の(野生型)遺伝子および/またはタンパク質を欠く病原体の変異形態であり得る。病原体ゲノムは、RNAまたはDNAを含み得る。
【0182】
「不活性化された病原体」は、人工的な手段によって疾患を引き起こすことができないようにされている(例えば、非感染性にされている)病原体全体である。典型的には、不活性化された病原体は、「死滅病原体」であり、つまり、複製することができない。病原体は、それが複製することができないまたは疾患を引き起こすのに十分なレベルに複製することができない場合、非感染性である。
【0183】
出願者の方法との関連で本明細書において使用される場合、「免疫原性的に活性であるワクチン」は、本開示の方法によって不活性化された病原体であり、つまり、免疫学的に適格性の対象に導入されると、免疫応答を誘発することができる。本明細書に開示されるように不活性化された病原体を含む免疫原性的に活性であるワクチンへの曝露に応じて産生された免疫応答は、それぞれの感染性病原体の優勢な抗原性エピトープによって産生される免疫応答に対して、好ましくは同一であるか、実質的に同一であるか、またはより優れている。
【0184】
「過酸化水素」(H
2O
2)は、1.78ボルトの標準的な電極電位を有する例示的な好ましい酸化剤である。一貫性の目的のために、本明細書に開示される実施例にあるような溶液中の過酸化水素の割合は、1体積当たりの重量とされる(wt/vol)。例えば、0.01%のH
2O
2は、0.01%wt/volで存在しているH
2O
2を指す。
【0185】
本明細書で使用される場合、「二重酸化剤」は、過酸化水素および少なくとも1つの遷移金属(例えば、CuCl
2(Cu
2+)、FeCl
3(Fe
3+)、またはCsCl(Cs
+))を含むフェントン型二重酸化試薬を指す。
【0186】
「二重酸化剤(複数可)を含む溶液」は、溶媒と二重酸化剤(複数可)との任意の混合物の組み合わせを含む。最も一般的に、本明細書に開示される方法の文脈において、溶媒は、水、例えば、脱イオン水、または緩衝塩水溶液である。典型的には、溶液という用語は、液体相溶液を含む。一貫性の目的のために、溶液中の過酸化水素の割合は、1体積当たりの重量とされる(wt/vol)。
【0187】
「過酸化水素が実質的に不含」という語句は、微量以下(自然に存在するものとして経験的に検出可能な量)が本組成物中に存在することを示す。
【0188】
「凍結乾燥する」という動詞は、真空下で凍結して乾燥することを意味する。このプロセスは、「凍結乾燥」と呼ばれる。いくつかの事例において、乾燥(例えば、脱水)される試料は、乾燥前に凍結される。他の事例において、乾燥される材料は、前の相を変化させることなく乾燥プロセスにかけられる。凍結乾燥のプロセス中、溶媒の蒸発は、試料の凍結をもたらす溶媒/溶質混合物の融解温度以下の温度への試料の冷却をもたらす。溶媒は、昇華によって凍結試料から除去される。凍結乾燥を受ける産物は、「凍結乾燥される」。本開示で使用される場合、凍結乾燥という用語は、具体的には噴霧乾燥および噴霧凍結乾燥を含む、試料を過剰熱に曝露することなく乾燥プロセスを促進する機能的に同等の手順も包含する。
【0189】
本明細書で使用される場合、特定の態様において「メチサゾン」および「メチサゾン類似体」という用語は、以下の式を有する化合物、
【化14】
(式中、R
1が独立して、H、または−OHで任意に置換される低級アルキル(例えば、C1−C4アルキル)であり、例えば、R
1が、H、−CH
3、またはプロピルなどであり、R
2が独立して、H、−OHまたはアリールで任意に置換される低級アルキル(例えば、C1−C2アルキル)であり、Xが独立して、Hまたはハロゲン(例えば、I、Br、Cl、F)である)、およびそれらの薬学的に許容される塩を含む塩を指す。好ましくは、XおよびR
2はHであり、R
1はH(イサチンβ−チオセミカルバゾン)、−CH
3(N−メチル−イサチンβ−チオセミカルバゾン(メチサゾン))、またはプロピル(N−プロピル−イサチンβ−チオセミカルバゾン(thiosemicarbazon))である。好ましくは、メチサゾンが使用される。
【化15】
【0190】
本明細書で使用される場合、特定の態様において「メチサゾン官能基」または「メチサゾン機能的下部構造」という用語は、以下の式を有する化合物、
【化16】
(式中、R
1がH、または−OHで任意に置換される低級アルキル(例えば、C1−C4アルキル)であり、例えば、R
1はH(イサチン)もしくは−CH
3(N−メチル−イサチン)、またはプロピル(N−プロピル−イサチン)などであり、Xが独立して、Hまたはハロゲン(例えば、I、Br、Cl、F)である)、およびその薬学的に許容される塩を含む塩、
【化17】
(式中、R
1がH、または−OHで任意に置換される低級アルキル(例えば、C1−C4アルキル)、例えば、R
1がH(インドール、2,3−ジオン、3−ヒドラゾン)などであり、Xが独立して、Hまたはハロゲン(例えば、I、Br、Cl、F)であり、R
2が独立して、H、−OHまたはアリールで任意に置換される低級アルキル(例えば、C1−C2アルキル)である)、およびその薬学的に許容される塩を含む塩、
【化18】
(式中、R
2およびR
3が独立して、H、−OHまたはアリールで任意に置換される低級アルキル(例えば、C1−C2アルキル)である)、およびそれらの薬学的に許容される塩を含む塩、ならびにそれらの組み合わせを指す。
【0191】
特定の態様において、「メチサゾン官能基」または「メチサゾン官能下部構造」の以下の組み合わせ、
【化19】
(式中、R
1がHまたは低級アルキル(例えば、C1−C4アルキル)であり、例えば、R
1がH(イサチン)もしくは−CH
3(N−メチル−イサチン)、またはプロピル(N−プロピル−イサチン)などである)、およびそれらの薬学的に許容される塩を含む塩が使用される。
【0192】
特定の態様において、「メチサゾン官能基」または「メチサゾン官能下部構造」の以下の組み合わせが使用される。
【化20】
【0193】
当該技術分野において既知の「リン酸緩衝生理食塩水」または「PBS」という語句は、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、およびいくつかの配合物では、塩化カリウムおよびリン酸二水素カリウムを含有する水系塩溶液である。溶液のオスモル濃度およびイオン濃度は、一般に、ヒト身体の(等張)濃度と一致する。典型的なPBS配合物は、10mMのNa2HPO4、1.8mMのKH2PO4、137mMのNaCl、および2.7mMのKClであるが、成分の濃度のいくらかの変化を包含し得る。
【0194】
実施例にあるように本明細書で称される「標準的な反応条件」、「標準的なリン酸緩衝生理食塩水反応条件」、または「標準的なX反応条件」(ここで、Xは、使用される化学的不活性化薬剤である)という語句は、典型的には、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaClを意味し、本明細書に記載されるある量の1つ以上の化学的不活性化剤(複数可)をさらに含む。特定の反応において、「標準的な反応条件」におけるNa
2HPO
4の量は、規定されるようにいくらか変化し得る。
【0195】
「標準的な反応条件下で病原体を化学的不活性化剤のみと接触させることによって保持される免疫原性と比較して病原体の免疫原性の保持を増強する」という語句は、本明細書で使用される場合、特定の化学的不活性化剤を用いて「標準的な反応条件」下で見られる保持された病原体の免疫原性の量と、ある量の本明細書に記載される1つ以上の種類の無機多原子オキシアニオン(複数可)を補充し、かつ/またはある量の本明細書に記載される1つ以上のメチサゾン試薬(複数可)を補充して特定の化学的不活性化剤を用いて「標準的な反応条件」下で見られる保持された病原体の免疫原性の量との間の差異を指す。本明細書に開示される場合、化学的不活性化反応を無機多原子オキシアニオン(複数可)および/またはメチサゾン試薬(複数可)を補充することにより、化学的に不活性化された病原体の抗原性および/または免疫原性の保持が増強される(例えば、インビボ免疫応答が増強される)。
【0196】
「高レベルの無機多原子オキシアニオン」という語句は、本明細書で使用される場合、典型的には、従来使用されるレベル、例えば、従来技術におけるリン酸塩レベルよりも高い(例えば、10〜20mMのリン酸塩よりも高い)レベルを指す。好ましい態様において、「高レベルの無機多原子オキシアニオン」とは、標準的なリン酸緩衝生理食塩水反応条件(標準的な反応条件))下で病原体を化学的不活性化剤(複数可)のみと接触させることによって保持される病原体の抗原性および/または免疫原性と比較して病原体の抗原性および/または免疫原性の保持を増強するのに十分なレベルを指す。本方法において、無機多原子オキシアニオンは、好ましくは、硫酸塩系またはリン酸塩系無機多原子オキシアニオンである。例えば、無機多原子オキシアニオンは、リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)、トリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)、三リン酸ナトリウム(Na
5P
3O
10)、もしくは硫酸マグネシウム(MgSO
4)のうちの1つ以上から選択される多原子オキシアニオンであり得るか、または無機多原子オキシアニオンは、少なくとも15、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも750mM、少なくとも1000mM、および少なくとも1500mMのレベルのリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)、少なくとも5、少なくとも15、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500mM、少なくとも750mM、少なくとも1000mM、および少なくとも1500mMのレベルの硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1.5、少なくとも3、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも30、もしくは少なくとも60mMのレベルのトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1.5、少なくとも3、少なくとも10、少なくとも15、もしくは少なくとも30mMのレベルの三リン酸ナトリウム(Na
5P
3O
10)、または少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、および少なくとも1500mM)のレベルの硫酸マグネシウム(MgSO
4)のうちの1つ以上であり得る。
【0197】
本方法において、リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)、および/または硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)、および/または硫酸マグネシウム(MgSO
4)の濃度の好ましい範囲は、20mM〜1,500mM、20mM〜1,000mM、20mM〜750mM、20mM〜500mM、20mM〜250mM、20mM〜100mM、20mM〜75mM、20mM〜50mM、20mM〜25mMから選択される範囲、ならびにそれらの全ての可能な部分範囲および値である。
【0198】
本方法において、トリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)の濃度の好ましい範囲は、0.05mM〜60mM、0.05mM〜30mM、0.05mM〜15mM、0.05mM〜10mM、0.05mM〜5mM、0.05mM〜3mM、0.05mM〜1.5mM、0.05mM〜1.0mM、0.05mM〜0.5mM、および0.05mM〜0.1mMから選択される範囲、ならびにそれらの全ての可能な部分範囲および値である。
【0199】
本方法において、三リン酸ナトリウム(Na
5P
3O
10)の濃度の好ましい範囲は、0.05mM〜30mM、0.05mM〜15mM、0.05mM〜10mM、0.05mM〜5mM、0.05mM〜3mM、0.05mM〜1.5mM、0.05mM〜1.0mM、0.05mM〜0.5mM、および0.05mM〜0.1mMから選択される範囲、ならびにそれらの全ての可能な部分範囲および値である。
【0200】
本開示の文脈において、「室温」は、約16℃(およそ61°F)〜約25℃(およそ77°F)の温度の範囲内の任意の温度を指す。一般的に、室温は、約20℃〜22℃(68°F〜72°F)である。概して、室温という用語は、追加のエネルギーが試料または周囲温度を冷却(例えば、冷蔵)または加熱するために消費されないことを示すために使用される。
【0201】
「防腐剤」は、化学変化または微生物作用に起因する分解を防止するために組成物に添加される薬剤である。ワクチン産生との関連で、防腐剤は典型的には、微生物(例えば、細菌および真菌)成長を防止するために添加される。ワクチン産生で使用される最も一般的な防腐剤は、チメロサール、水銀含有有機化合物である。故に、「防腐剤不含」という用語は、防腐剤が本組成物に添加されていない(または、存在していない)ことを示す。
【0202】
「精製」(例えば、病原体または病原体を含有する組成物に関して)という用語は、組成物から成分、つまり所望されない存在を除去するプロセスを指す。精製は、相対用語であり、全ての微量の望ましくない成分が本組成物から除去されることを必要としない。ワクチン産生との関連で、精製は、遠心分離、透析、イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー、親和性精製、沈殿、ならびに本明細書に開示される他の方法(例えば、凍結乾燥など)のようなかかるプロセスを含む。かかる精製プロセスは、本明細書に開示されるようにそれぞれの病原体を不活性化するために使用される試薬から不活性化された病原体成分を分離するために使用され得る。例えば、過酸化水素、金属試薬、「メチサゾン」、「メチサゾン類似体」、「メチサゾン官能基」、または「メチサゾン官能下部構造」は、不活性化された病原体成分から分離されて、精製されたワクチン組成物を提供し得る。例えば、残留メチサゾン、メチサゾン類似体、またはメチサゾン官能基もしくはメチサゾン官能下部構造を表す化学物質は、ワクチン抗原調製のために使用されるとき、0.0001〜10mMの範囲にあり得る。最後の配合前にワクチン抗原からこれらの残留成分を除去または分離するために、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、混合様式/多様式クロマトグラフィー、ゲル濾過/サイズ排除クロマトグラフィー、脱塩クロマトグラフィー、タンジェント流濾過/血液透析濾過、密度勾配遠心分離、遠心濾過、透析、ワクチン抗原沈殿、またはワクチン抗原吸着を含むが、これらに限定されない広範な標準的な精製技法が使用され得る。
【0203】
「薬学的に許容される」という形容詞は、対象(例えば、ヒトまたは動物対象)への投与に対して、対象が生理学的に許容可能であることを示す。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)は、ワクチンを含む、治療および/または予防用組成物の薬学的送達に好適な組成物および配合物(希釈液を含む)を記載している。
【0204】
概して、希釈液の性質は、用いられる特定の投与様式に依存するであろう。例えば、非経口配合物は通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール、またはビヒクルなどの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射可能な流体を含む。ある特定の配合物(例えば、固体組成物、例えば、粉末、ピル、タブレット、またはカプセルの形態)において、液体希釈液は用いられない。かかる配合物において、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含む非毒性の固体担体が使用され得る。
【0205】
ワクチン産生で用いられる方法および手順に関する「適正製造規範」または「GMP」という語句は具体的に、アメリカ食品医薬品局(FDA)によって確立された一式の方法、プロトコル、および手順を指す。世界保健機関によって同様の推奨およびガイドラインが普及している。略語「cGMP」は具体的に、FDA(例えば、ワールドワイドウェブのfda.gov/cder/dmpqで利用可能である、21の連邦規則集、パート210および211の下)によって現在承認されているプロトコルおよび手順を示す。経時的に、cGMP遵法手順は変化し得る。本明細書に開示される任意の方法は、FDAによって義務付けられる新しいcGMP要件に従って適合され得る。
【0206】
病原体の不活性化
メチサゾン試薬、および/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含むものを含む二重酸化剤(複数可)を使用して病原体を不活性化するために、当該技術分野において成長させる(例えば、特定の生物を培養する)のに許容可能な任意の手順に従って生病原体を所望の密度(例えば、培養液の飽和密度)まで成長させる。典型的には、細胞性病原体に関して、かかる生物は、後のプロセスにおける負荷に対して、対数増殖相で収集されたものよりも概してより耐性があるため、病原体を固定相に培養することが望ましい。培養液における成長は、分光光度法を使用する培養液の光学密度の測定などの当該技術分野において既知の方法を使用して監視され得る。病原体がウイルスであるとき、成長は、選択されたウイルスのために確立された標準的な方法を使用するウイルスの力価によって監視され得る。例えば、動物ウイルスを成長させるための方法は、例えば、DNA Viruses:A Practical Approach,Alan J.Cann(ed.)Oxford University Press,2000、Robinson and Cranage(eds.)Vaccine Protocols(Methods in Molecular Medicine)Humana Press,2003、およびこれらに引用される参照文献で見ることができる。病原体細菌を培養するための方法も当該技術分野において知られており、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,ed.Sambrook,et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989で見ることができる。マラリアなどの寄生体を培養するための方法も、例えば、Denise Doolan(ed.)Malaria Methods and Protocols(Methods in Molecular Medicine)Humana Press,2002、およびこれらに引用される参照文献など、当該技術分野において知られている。
【0207】
典型的には、病原性生物は、RNAまたはDNAゲノム(例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生体)を有し得、培地から精製され、ここで、それらが成長または培養され、中で複製する病原体の場合、細胞が他の細胞性成分から精製される。例えば、病原体を含む懸濁液の非病原体成分の相対濃度は、病原体の粗調製物と比較して、少なくとも50%、例えば、約70%、もしくは80%の高さ、またはさらに90%、95%以上低下され得る。ウイルスなどの細胞内病原体は、当該技術分野において既知の多様な方法によって、それらが感染する細胞の多様な成分から単離または精製され得る。
【0208】
例えば、ワクチン産生のためのウイルスは典型的には、cGMP手順に従って生物学的および化学的に定義される培養培地を使用して認定される細胞株内で、制御された条件下で成長する。細胞は通常、感染症(MOI)の適切な多重度でウイルスを用いて感染され、細胞は、培養条件下で、ウイルスの複製が高い力価になるのが可能になる十分な期間維持される。次いで、細胞は、(接着細胞の場合、培養液の表面から放出後)遠心分離によって収集され、適切に緩衝された溶液中で再懸濁される。回復を容易にするために、緩衝溶液は典型的には、細胞と比較して低浸透圧性であり、これにより、細胞の膨張が引き起こされる。任意に、細胞懸濁液は、周期的に撹拌されて、より均一な細胞の低浸透圧性溶液への曝露を確実にする。次いで、細胞は、例えば、均質化によって溶解されて、ウイルスを放出する。可溶化液は、遠心分離されて、細胞核などの巨大粒子物質を除去し、上清は、追加の細胞の残屑を除去するために濾過される。次いで、ウイルスは、スクロース密度勾配などの好適な分離培地の上に濾過された上清を重ねることによってさらに精製され得る。任意に、核ペレットは、さらに加工され、ウイルスの収率を増加し得る。核ペレットは、低浸透圧性緩衝液中で再度再懸濁され、均質化される。核可溶化液は、遠心分離され、得られた上清は、分離培地に重ねる前に濾過される。任意に、2つのウイルス懸濁液は、組み合わせられて、およそ等しい体積分離勾配を達成する。次いで、分離培地/ウイルス懸濁液は、超遠心分離によってプロセスされる(例えば、4℃で1〜1.5時間、55,000xgで。ウイルスは、このプロセスによってペレット中に収集される一方で、膜状の細胞残屑が境界面に残る。上清は、(典型的には、吸引によって)除去され、ペレットは、緩衝液中で再懸濁される。次いで、精製されたウイルスは、回復および生存能に関して(例えば、それぞれタンパク質濃度を決定することによっておよびプラークアッセイによって)評価され得る。所望される場合、回復されたウイルスは、凍結され、使用するまで保管され得る。
【0209】
細胞内寄生体(例えば、Plasmodium falciparumおよび他のPlasmodium種、Leishmania(種)、Cryptosporidium parvum、Entamoeba histolytica、およびGiardia lamblia、ならびにToxoplasma、Eimeria、Theileria、およびBabesia種を含む原虫寄生体)などの非ウイルス性病原体を精製するための同様の手順が当該技術分野において知られている。
【0210】
再構成および投与
粉末(例えば、凍結乾燥された粉末)として産生される、ワクチンなどの免疫原性組成物は典型的には、投与のために液体と混合される。このプロセスは、「再構成」として知られており、使用される液体は一般的に、「希釈液」と称される。特にヒト対象への投与の目的のために、希釈液が薬学的に許容される配合物であることが重要である。凍結乾燥された組成物の再構成は典型的には、希釈液の各バイアル用の滅菌シリンジおよび針を使用して行われる。各型およびバッチのための正確な希釈液は、得られた混合物の十分な効能、安全性、および滅菌性を確実にするために使用される。希釈液は具体的に、選択された組成物の送達および効能を最適化するように作られる。一般的な希釈液は、ワクチンの熱安定性を改善するための安定剤、粉末を液体中に溶解するのを補助するための界面活性剤などの薬剤、および再構成された組成物の正確な酸性バランスを確実にするための緩衝液としてかかる添加剤を含む。任意に、希釈液は、防腐剤(例えば、殺菌剤および/または防カビ剤)を含有して、再構成後の滅菌性を維持し得る。防腐剤は典型的には、組成物が複数回の用量の配合物に再構成されるとき(例えば、FDAによって)必要とされる。
【0211】
ワクチンなどの免疫原性組成物の投与(治療方法)
本明細書に開示される免疫原性組成物(ワクチンまたは他の薬品など)を対象に投与して、病原体に対する免疫応答を誘発することができる。最も一般的に、本組成物は、対象がまだ曝露されていない病原性生物に対する予防的免疫応答を誘発するために投与される。例えば、二重酸化で不活性化された病原体を含むワクチン組成物が、局所的または幅広いワクチン接種試みの一環として投与され得る。かかるワクチン組成物の投与によって誘発された免疫応答には、典型的には、中和抗体応答が含まれ、加えて、T細胞応答、例えば、細胞性病原体を標的とする細胞傷害性T細胞応答が含まれ得る。したがって、二重酸化で不活性化された病原体を含有する薬品または薬学的組成物を作製するための方法が本明細書に含まれる。薬学的組成物(薬品)は、二重酸化剤(複数可)を含有する溶液との接触によって、またはメチサゾン試薬をさらに含む二重酸化剤との接触によって、かつ/または高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在下で不活性化された少なくとも1つの病原体を薬学的に許容される担体または賦形剤中に含む。
【0212】
いくつかの事例において、免疫原性組成物は、ウイルス(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス)の組み合わせなどの病原体の組み合わせ、または細菌(例えば、Campylobacter種、Corynebacterium diptheriae、Bordatella pertussis、およびClostridium tetani)の組み合わせ、または異なるクラスの生物から選択される病原体の組み合わせ、例えば、1つ以上のウイルスおよび1つ以上の細菌、1つ以上の細菌および1つ以上の寄生体などを含み得る。
【0213】
本組成物中に含まれる病原体の量は、対象に投与されたときに免疫応答を誘発するのに十分である。例えば、1つ以上の用量で対象に投与された場合、不活性化された病原体を含有するワクチン組成物は、有利に、病原体に対する保護免疫応答を誘発する。ワクチン組成物の用量は、少なくとも約0.1wt/wt%の不活性化された病原体〜約99wt/wt%の不活性化された病原体を含み得、ワクチン組成物のバランスは、薬学的に許容される担体および/または薬学的に許容される希釈液などの薬学的に許容される構成要素で構成される。ワクチン配合物に関するガイドラインは、例えば、米国特許第6,890,542号および同第6,651,655号で見つけることができる。特定の非限定的な一例において、ワクチン組成物(薬品)は、少なくとも約1wt/wt%、例えば、約5wt/wt%、約10wt/wt%、約20wt/wt%、約30wt/wt%、または約50wt/wt%の不活性化された病原体を含む。当業者には明らかであろうように、ワクチン配合物中に存在する病原体の量は、本組成物が液体であるか固体であるかに依存する。固体組成物中の不活性化された病原体の量は、液体組成物中で耐えられる量を上回り得る。あるいは、不活性化された病原体の量は、免疫応答をもたらすのに必要とされる生または不活性化された病原体の同程度の量に関して計算され得る。例えば、約10
6〜約10
12のプラーク形成単位(PFU)の生ウイルスまたは弱毒化ウイルスを形成するためのウイルス粒子中の同等の投与量が、ワクチン組成物の用量中に含まれ得る。同様に、ワクチン組成物は、約10
3〜約10
10の生の生物と同等な量の(例えば、RNAまたはDNAゲノムで)不活性化された病原体、例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生体を含み得る。あるいは、投与量は、タンパク質含有量または濃度に関して提供され得る。例えば、用量は、およそ0.1μg以上、例えば、少なくとも約0.5μgのタンパク質を含み得る。例えば、用量は、約1μgの単離または精製されたウイルスもしくは最大約100μgの他の病原体、またはより多くの選択された病原体を含み得る。感染単位(例えば、PFU)での同等の用量が病原体によって変化し得るが、適切なタンパク質用量は、推定される(例えば、PFUから)か、または経験的に決定され得る。例えば、典型的な調製中、1μgの精製されたワクシニアウイルスは、およそ2×10
6PFUと同等である。同様の変換が、目的とする任意の病原体について決定され得る。
【0214】
典型的には、ワクチン組成物(薬品)の調製は、本質的にピロゲン不含、ならびにヒトまたは動物に有害であり得る任意の他の不純物不含の薬学的組成物の調製を伴う。典型的には、薬学的組成物は、組成物の成分を安定させ、かつ抗原提示細胞によるワクチン抗原の適切なプロセシングおよび提示を可能にするのに適切な塩および緩衝液を含有する。かかる成分は、凍結乾燥形態で供給され得るか、または凍結乾燥形態から投与に好適な液体形態への再構成のために使用される希釈液中に含まれ得る。あるいは、不活性化された病原体が(例えば、粉末またはペレットとして)固体形態での投与のために調製される場合、好適な固体担体が配合物中に含まれる。
【0215】
水性組成物は、典型的には、薬学的に許容される希釈液または水性媒体中に分散した(例えば、溶解または懸濁した)有効量の不活性化された病原体を含む。「薬学的に許容される」という語句は、ヒトまたは動物対象に投与されたときに有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をもたらさない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれる。任意に、薬学的に許容される担体または希釈液は、抗菌性、抗真菌性、または他の防腐剤を含み得る。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。いずれの従来の媒体も薬剤も不活性化された病原体による免疫応答の発生と不適合である場合を除き、免疫原性組成物におけるその使用が企図される。補足の活性成分も本組成物中に組み込まれ得る。例えば、ある特定の薬学的組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの好適な界面活性剤と混合された水性希釈液中に不活性化された病原体を含み得る。分散剤も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中に調製され得る。いくつかの事例において(例えば、液体配合物が望ましいと見なされる場合、または凍結乾燥されたワクチン組成物が単一の容器内で複数回投与のために再構成される場合)、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。
【0216】
薬学的に許容される担体、賦形剤、および希釈液は、当業者に既知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)に記載されており、不活性化された病原体の薬学的送達に好適な組成物および配合物について説明している。
【0217】
概して、担体の性質は、用いられる特定の投与様式に依存するであろう。例えば、非経口配合物は通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール、またはビヒクルなどの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、タブレット、またはカプセル形態)に関して、従来の非毒性の固体担体は、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、微量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有し得る。
【0218】
例えば、薬学的組成物(薬品)は、安定化洗剤、ミセル形成剤、および油のうちの1つ以上を含み得る。好適な安定化洗剤、ミセル形成剤、および油は、米国特許第5,585,103号、米国特許第5,709,860号、米国特許第5,270,202号、および米国特許第5,695,770号に詳述されている。安定化洗剤は、エマルションの成分が安定したエマルションのまま留まることを可能にする任意の洗剤である。かかる洗剤には、ポリソルベート、80(TWEEN80)(ソルビタン−モノ−9−オクタデカノエート−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル、ICI Americas,Wilmington,DEによって製造されたもの)、TWEEN 40(商標)、TWEEN 20(商標)、TWEEN 60(商標)、Zwittergent(商標)3〜12、TEEPOL HB7(商標)、およびSPAN 85(商標)が含まれる。これらの洗剤は、通常、およそ0.05〜0.5%、例えば、約0.2%の量で提供される。ミセル形成剤は、ミセル様構造が形成されるように他の成分と形成されたエマルションを安定させることができる薬剤である。かかる薬剤は、一般に、マクロファージを動員して細胞性応答を増強するために注射部位にいくらかの刺激を引き起こす。かかる薬剤の例としては、例えば、Schmolka,J.Am.Oil.Chem.Soc.54:110,1977、およびHunter et al.,J.Immunol 129:1244,1981に記載されるポリマー界面活性剤、ならびにPLURONIC(商標)L62LF、L101、およびL64、PEG1000、およびTETRONIC(商標)1501、150R1、701、901、1301、および130R1などの薬剤が挙げられる。かかる薬剤の化学構造は、当該技術分野において周知である。一実施形態において、本薬剤は、Hunter and Bennett,J.Immun.133:3167,1984によって定義されるように、0〜2の親水性物質−脂溶性物質バランス(HLB)を有するように選択される。本薬剤は、例えば、0.5〜10%の有効量で、または1.25〜5%の量で提供され得る。
【0219】
本組成物中に含まれる油は、水中油型エマルション中での病原体の保持を促進し、好ましくは、エマルションが室温で形成されるか、またはエマルションの温度が室温に調整された時点で形成されるかのいずれかが起こるように65℃未満の融解温度を有するように選択される。かかる油の例としては、スクアレン、スクアラン、EICOSANE(商標)、テトラテトラコタン、グリセロール、およびピーナッツ油、または他の植物油が挙げられる。特定の非限定的な一例において、油は、1〜10%または2.5〜5%の量で提供される。油は、身体が油を経時的に分解することができ、かつ油の使用時に有害作用が顕著に表れないように、生分解性および生体適合性の両方であるべきである。
【0220】
任意に、薬学的組成物または薬品は、病原体に対する免疫応答を増加するのに好適なアジュバントを含み得る。本明細書で使用される場合、「アジュバント」は、免疫応答の任意の増強剤または促進剤である。「好適な」という用語は、ワクチン接種された対象に有害反応をもたらすことなく、免疫応答を増大するために選択される病原体と組み合わせて使用され得る任意の物質を含むよう意図されている。特定のアジュバントの有効量は、ワクチン接種された対象の免疫応答へのアジュバントの増強効果を最適化するように容易に決定され得る。例えば、好適なアジュバントは、ワクチン配合物との関連で、03%〜5%(例えば、2%)水酸化アルミニウム(または、リン酸アルミニウム)およびMF−59油エマルション(0.5%ポリソルベート80および0.5%トリオレイン酸ソルビタンを含む。スクアレン(5.0%)水性エマルション)は、ワクチンとの関連で有利に利用されている別のアジュバントである。例えば、アジュバントは、Provax(登録商標)(DEC Pharmaceuticals,San Diego,CA)の名称で入手可能な安定化洗剤、ミセル形成剤、および油の混合物であり得る。アジュバントは、CpGモチーフを含む核酸などの免疫刺激核酸でもあり得る。他のアジュバントには、鉱物、水エマルションとの植物油または魚油、不完全フロイントアジュバント、E.coli J5、硫酸デキストラン、硫酸鉄、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、バクトアジュバント、ある特定の合成ポリマー、例えば、Carbopol(BF Goodrich Company,Cleveland,Ohio)、ポリアミノ酸およびアミノ酸コポリマー、サポニン、カラギーナン、REGRESSIN(Vetrepharm,Athens,Ga.)、AVRIDINE(N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−プロパンジアミン)、O−アセチル化基が散在した長鎖多分散ベータ(1,4)結合マンナンポリマー(例えば、ACEMANNAN)、Mycobacterium種の非病原性菌株(例えば、EQUIMUNE,Vetrepharm Research Inc.,Athens Ga.)に由来する高度に精製された除タンパク細胞壁抽出物、モノオレイン酸マンナイト(mannite monooleate)、パラフィン油、およびムラミルジペプチドが含まれる。好適なアジュバントは、当業者によって選択され得る。
【0221】
薬学的組成物(薬品)は、治療または予防レジメン(例えば、ワクチン)での使用のために調製され得、1つ以上の病原体に対する免疫応答を誘発するためにヒトまたは非ヒト対象に投与され得る。例えば、本明細書に記載される組成物は、1つ以上の病原体に対する保護免疫応答を誘発するためにヒト(または、非ヒト)対象に投与され得る。免疫応答を誘発するために、治療的に効果的な(例えば、免疫学的に効果的な)量の不活性化された病原体が、ヒト(または、非ヒト)対象などの対象に投与される。
【0222】
「治療有効量」は、治療されている対象における所望の効果を達成するために使用される組成物の量である。例えば、これは、免疫応答を刺激するか、感染症を防止するか、症状を軽減するか、または病原体の伝染を阻止するのに必要な量であり得る。対象に投与される場合、インビトロ効果を達成するために経験的に決定された標的組織濃度(例えば、抗原提示細胞中)を達成する投与量が一般に使用されるであろう。かかる投与量は、当業者による過度の実験なしで決定され得る。
【0223】
不活性化された病原体を含有するワクチン組成物などの免疫原性組成物は、当業者に既知の任意の手段により、例えば、筋肉内注射、皮下注射、または静脈注射により投与され得るが、口腔、経鼻、および経皮ミュート(mutes)も企図される。一実施形態において、投与は、皮下注射または筋肉内注射によるものである。不活性化された病原体が応答を刺激するのに利用可能である時間を延長するために、ペプチドは、油性注射、微粒子状系、またはインプラントとして提供され得る。微粒子状系は、微粒子、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノカプセル、または同様の粒子であり得る。合成ポリマーベースの微粒子状担体は、制御放出の提供に加えて、免疫応答を増強するためのアジュバントとして作用することが示されている。
【0224】
液体配合物の代替として、本組成物は、固体形態で、例えば、粉末、ペレット、またはタブレットとして投与され得る。例えば、ワクチン組成物は、経皮無針注射デバイス、例えば、ヘリウムによって作動するPOWDERJECT(登録商標)注射デバイスを使用して、粉末として投与され得る。この装置は、ワクチン組成物の粉末配合物、例えば、不活性化された病原体を含有するワクチン組成物の粉末配合物を高速で推進するために加圧ヘリウムガスを使用し、ワクチン粒子が角質層を穿孔して表皮に着地するようになる。
【0225】
ポリマーも制御放出のために使用され得る。制御された薬物送達に使用するための多様な分解性および非分解性ポリマーマトリックスが、当該技術分野において既知である(Langer,Accounts Chem.Res.26:537,1993)。例えば、ブロックコポリマーであるポラキサマー407は、低温で粘性であるが可動性の液体として存在するが、体温で半固体ゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン−2およびウレアーゼの配合および持続送達にとって効果的なビヒクルであることが示されている(Johnston,et al.,Pharm.Res.9:425,1992、およびPec,J.Parent.Sci.Tech.44(2):58,1990)。あるいは、ヒドロキシアパタイトが、タンパク質の制御放出の微小担体として使用されている(Ijntema,et al.,Int.J.Pharm.112:215,1994)。なお別の態様において、リポソームが、脂質でカプセル化された薬物の制御放出、ならびに薬物標的のために使用される(Betageri,et al.,Liposome Drug Delivery Systems,Technomic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,PA,1993)。治療用タンパク質の制御送達のための多数のさらなる系が既知である(例えば、米国特許第5,055,303号、米国特許第5,188,837号、米国特許第4,235,871号、米国特許第4,501,728号、米国特許第4,837,028号、米国特許第4,957,735号、および米国特許第5,019,369号、米国特許第5,055,303号、米国特許第5,514,670号、米国特許第5,413,797号、米国特許第5,268,164号、米国特許第5,004,697号、米国特許第4,902,505号、米国特許第5,506,206号、米国特許第5,271,961号、米国特許第5,254,342号、および米国特許第533096号)。
【0226】
特定の非限定的な例において、不活性化された病原体(例えば、原虫寄生体などの寄生体、または細菌性病原体)が、細胞性免疫応答(例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答)を誘発するために投与される。インビトロおよびインビボの両方での細胞性応答を誘導するためのいくつかの手段が既知である。脂質が、多様な抗原に対するCTL応答のインビボでのプライミングを補助することができる薬剤として特定されている。例えば、米国特許第5,662,907号に記載されているように、パルミチン酸残基は、リジン残基のアルファおよびエプシロンアミノ基に結合し、次いで、linked(例えば、1つ以上の連結残基、例えば、グリシン、グリシン−グリシン、セリン、セリン−セリン等を介して)免疫原性ペプチドまたはタンパク質に連結することができる。次いで、脂質化ペプチドは、ミセル形態で直接注射され得るか、リポソーム中に組み込まれ得るか、またはアジュバント中で乳化され得る。別の例として、E coliリポタンパク質、例えば、トリパルミトイル−S−グリセリルシステインリセリル−セリンが、適切なペプチドに共有結合したときに腫瘍特異的CTLをプライミングするために使用され得る(Deres et al.,Nature 342:561,1989を参照されたい)。さらに、中和抗体の誘導として、適切なエピトープを提示するペプチドにコンジュゲートされる同じ分子でプライミングされてもよく、2つの組成物を組み合わせて、望ましいと見なされる場合、体液性応答および細胞媒介性応答の両方を誘発することができる。
【0227】
対象における免疫応答、例えば、保護免疫応答を誘発するのに十分な投与量の不活性化された病原体が投与される。ウイルス性病原体に関して、投与量は、典型的には、感染性(例えば、毒性または弱毒化)ウイルスの特定力価と同等の生物学的物質の量に基づいて計算される。例えば、約10
6、または約10
7、または約10
8、または約10
9、または約10
10、または約10
11、または約10
12と同等の用量、または1用量当たりより多くの生ウイルスが、対象における免疫応答を誘発するために投与され得る。いくつかの事例において、この用量は、不活性化ワクチンが対象への投与後に数を増加させることができないため、免疫応答を誘発するために利用される生ウイルスの量の過剰量を含む。細胞性病原体、例えば、細菌、真菌、または寄生体の量を計算する場合、その量は、配合物に応じて、生細菌の用量との比較、例えば、約10
3の細胞または生物〜約10
10の生きている生物との比較によって計算され得る。例えば、この用量は、約25mg(例えば、約10mg、または約15mg、または約20mg)、またはさらにより多くの不活性化された病原体に対して1用量につき少なくとも約100ナノグラム(または、200ナノグラム、または500ナノグラム、または1マイクログラム)のタンパク質抗原を含み得る。典型的には、ワクチン組成物は、追加の薬学的に許容される構成要素または成分を含む。したがって、ワクチン組成物は、少なくとも約0.1wt/wt%の不活性化された病原体〜約99wt/wt%の不活性化された病原体を含み得、ワクチン組成物のバランスは、薬学的に許容される構成要素、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体、薬学的に許容される安定剤、および/または薬学的に許容される希釈液で構成される。ワクチン配合物に関するガイドラインは、例えば、米国特許第6,890,542号および同第6,651,655号で見つけることができる。用量は、タンパク質濃度(または、PRJなどの感染単位等価物の感染単)に基づいて計算され得る。最適な投与量は、例えば、マウスおよび非ヒト霊長類での前臨床研究、続いて、第I相臨床治験におけるヒトでの試験において経験的に決定され得る。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に既知であるか、または当業者に明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,1995などの出版物により詳細に記載されている。
【0228】
典型的であって必ずしもではないが、ワクチン組成物は、病原体、例えば、ワクチンへの対象の曝露前に投与される。ワクチン組成物は、本明細書に記載される方法に従って、二重酸化条件を使用して、またはメチサゾン試薬(複数可)および/もしくは高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化条件を使用して、様々な病原体を不活性化することによって調製され得る。例えば、ワクチン組成物は、病原性ウイルスを、二重酸化試薬(複数可)を含有する溶液、またはメチサゾン試薬(複数可)をさらに含む二重酸化試薬(複数可)を含有する溶液で不活性化することによって調製され得る。ワクチン産生のための二重酸化方法によって不活性化され得るウイルスの非限定的な例が、本明細書に開示される。
【0229】
細菌性病原体も、ワクチン組成物での使用のために、二重酸化試薬(複数可)を使用して、またはメチサゾン試薬(複数可)および/もしくは高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化条件を使用して不活性化され得る。ワクチン産生のための二重酸化方法によって不活性化され得る細菌の非限定的な例が、本明細書に開示される。
【0230】
ワクチン組成物は、二重酸化試薬(複数可)を使用して、またはメチサゾン試薬(複数可)および/もしくは高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化条件を使用して、不活性化された菌類病原体からも産生され得る。ワクチン産生のための二重酸化方法によって不活性化され得る真菌性病原体の非限定的な例が、本明細書に開示される。
【0231】
ワクチン組成物は、二重酸化試薬(複数可)を使用して、またはメチサゾン試薬(複数可)および/もしくは高レベルの1つ以上の無機多原子オキシアニオンの存在をさらに含む二重酸化条件を使用して不活性化された寄生性病原体からも産生され得る。ワクチン産生のための二重酸化方法によって不活性化され得る寄生性病原体の非限定的な例が、本明細書に開示される。
【0232】
記載される方法または組成物の正確な詳細が記載される本発明の主旨から逸脱することなく変更または修正され得ることが明らかであろう。以下の実施例は、ある特定の具体的な特徴および/または実施形態を例示するために提供される。これらの実施例は、本発明を記載される具体的な特徴または実施形態に限定するように解釈されるべきではない。以下に引用される参考文献は各々、全ての目的のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0233】
実施例1
(標準的なH
2O
2に基づく不活性化がCHIKVを不活性化することが示されたが、CHIKV特異的中和エピトープを損傷し、ワクチン接種後のインビボでの中和応答を誘導できなかった)
図2は、標準的なH
2O
2に基づく不活性化がCHIKV特異的中和エピトープを破壊し、ワクチン接種後のインビボでの中和応答を誘導できないことを示す。
【0234】
図2Aでは、チクングニア熱ウイルス(CHIKV)試料は、処理を受けない(生CHIKV)か、または標準的な濃度のH
2O
2(3%のH
2O
2CHIKV)で、室温で7時間処理された。処理後、抗原を、E1およびE2構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるCHIKV特異的サンドイッチELISAで試験した。ELISA値を、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。
【0235】
図2Bでは、H
2O
2で処理されたCHIKV(3%のH
2O
2CHIKV)を試験し、0.1%のミョウバンとともに配合された残留生ウイルスに対して陰性であることを見出し、0日目および28日目に成体BALB/cマウス(n=8)を免疫化するために使用した。対照マウス(偽、n=3)を希釈液中のミョウバンで同じスケジュールで免疫化した。最後の免疫化の2週間後、末梢血を収集し、血清に処理し、群毎にプールした。プールした血清を、標準的なCHIKV 50%プラーク減少中和アッセイ(PRNT
50)を使用して試験した。3%のH
2O
2−CHIKV群および偽ワクチン接種群からの試料は血清反応陰性であり、破線で示されるように、PRNT
50力価が10未満であった。比較のために、皮内足蹠経路により生CHIKVで免疫化したC57BL/6マウス群(n=5)(1,000PFUのCHIKV−SL15649)を示し(
図2Bの最左の棒グラフ)、中和力価を感染の36日後に試験した。検出限界(LOD)を破線で示す。
【0236】
実施例2
(出願者により、H
2O
2のみでの単純な酸化と比較して根本的に異なる機構を有する二重酸化系微生物不活性化が見出され、したがって、先端的な有効なワクチン抗原の開発のための二重酸化系微生物不活性化の潜在的な使用は推奨されなかった)
フェントン型反応が病原体を死滅させるためのみに使用されており、ワクチンの開発に使用されておらず、その使用も提案されていない一方で、それでもなお、かかる反応を、ワクチン産生の目的のために微生物病原体を不活性化する潜在性について試験した。H
2O
2とは対照的に、不活性化手順中の溶液の総タンパク質濃度がH
2O
2/CuCl
2二重酸化不活性化速度に影響を及ぼすことが見出されたため、初期の不活性化データは、驚くべきことであり、予想外であった。タンパク質濃度が出願者の標準的なH
2O
2手法を使用してウイルス不活性化に影響を及ぼさないことが以前に示されたため、このH
2O
2/CuCl
2系の結果は予想外であった。しかしながら、DENV2について
図1Aおよび1Bに示されるように、タンパク質濃度は、ウイルス不活性化速度実質的に影響を及ぼし、より高いタンパク質レベルがより遅いウイルス不活性化をもたらした。
【0237】
具体的に、
図1Aおよび1Bは、H
2O
2/CuCl
2二重酸化系を使用するウイルス不活性化の速度がタンパク質濃度依存性である一方で、標準的なH
2O
2系ウイルス不活性化はタンパク質濃度非依存性であることを示す。
図1Aにおいて、精製されたDENV2を、3%のH
2O
2、または
図1Bにおいて、0.01%のH
2O
2および1μMのCuCl
2のいずれかで、室温で処理し、示されるように、総ウイルス性タンパク質の濃度を増加させた。試料を予め特定した時点で除去し、標準的なプラーク形成単位(PFU)アッセイを使用してウイルス力価について評価した。検出限界(LOD)を破線で示す。
【0238】
二重不活性化手順中の溶液の総タンパク質濃度への依存性は予想外であり、H
2O
2のみと比較して根本的に異なる機構が関連しており、故に、出願者の以前の単純な酸化(例えば、H
2O
2のみで)(例えば、米国特許第8,124,397号および同第8,716,000号)に基づく方法を考慮して、効果的なワクチン産生のための二重酸化に基づく不活性化手順の効能/使用が疑わしく、予想不可能であったことを示す。
【0239】
実施例3
(二重酸化フェントン型酸化系を使用して、CHIKV特異的中和エピトープの維持を改善すると同時に、効率的な不活性化を提供した)
図3は、二重酸化フェントン型酸化系の使用が、CHIKV特異的中和エピトープの維持を改善すると同時に、効率的な不活性化を提供することを示す。
【0240】
図3Aにおいて、精製されたCHIKVをH
2O
2のみの増加濃度で処理した。
【0241】
図3B、精製されたCHIKVをCuCl
2のみで処理した。
【0242】
図3Cでは、精製されたCHIKVを、H
2O
2の増加濃度を有するCuCl
2(10μΜ)で処理して、二重酸化フェントン型系を得た。抗原処理を室温で20時間継続させた。
【0243】
処理後、抗原を、E1およびE2構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるCHIKV特異的サンドイッチELISAで試験した。ELISA値を、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。処理後、材料を、標準的なプラーク形成単位(PFU)アッセイを使用して生ウイルスについても試験した。結果として得られたウイルス力価(PFU/mL)を条件毎に示す。除染試薬(
図3Aおよび3B)のいずれの増加濃度も不活性化の増強をもたらしたが、抗原性を著しく低下させた。驚くべきことに、対照的に、組み合わせられたH
2O
2/CuCl
2系を使用して、完全なウイルス不活性化をもたらすと同時に抗原性を完全に維持した最適な不活性化条件が特定された(
図3C)。検出可能な生ウイルス(50PFU/mL未満)を示さなかった成功した条件を星印で示す。10μΜのCuCl
2および0.002%のH
2O
2の最適な条件のみが90%以上の抗原性の保持(破線で示す)を達成すると同時に、検出可能な生ウイルスを示さなかったことに留意されたい。
【0244】
実施例4
(CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチン接種が急速な中和抗体応答を誘導し、CHIKV関連病変から保護した)
H
2O
2/CuCl
2で処理したCHIKV候補の免疫原性を評価するために、ワクチン抗原をミョウバンアジュバントとともに配合し、複数回用量レベル(動物当たり10または40μg)でマウスを免疫化するために使用した。
図4に示されるように、ワクチン接種が、従来のH
2O
2手法とは全く対照的に、急速かつロバストな中和抗体力価をもたらした(
図2)。ワクチン効能の最終試験として、免疫化マウスを野生型CHIKVに曝露し、関節炎症性疾患からの完全な保護を実証した(
図5)。
【0245】
図4は、CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチン接種が急速な中和抗体応答を誘導したことを示す。具体的に、最適化されたCuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチンを10μgまたは40μg用量で0.1%のミョウバンとともに配合し、一次用量を0日目に与え、14日目に追加免疫用量を与えた(矢印で示す)。血清試料を示される時点で収集し、標準的なプラーク減少中和力価アッセイ(PRNT
50)を使用してCHIKV特異的中和活性についてアッセイした。10μg群の中和力価は、動物を21日目にCHIKVに曝露する前の最後の時点であるため、一次ワクチン接種後20日目に終わる。群平均(±SEM)を時点毎に示す。この研究の検出限界(LOD)を破線で示す。未処理のワクチン接種されていない対照も試験し、LOD未満であることを見出した。
【0246】
図5Aおよび5Bは、CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチン接種が急速な中和抗体応答を誘導し、CHIKV関連病変から保護したことを示す。具体的に、CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチンを10μgまたは40μg用量でミョウバンとともに配合し、一次免疫化を0日目に与え、追加免疫用量を成体C57BL/6マウス(n=5/群)または偽ワクチン接種された対照(ミョウバンのみ)に14日目に投与した。マウスの右足蹠を、一次ワクチン接種の32日後(40μg群)または21日後(10μg群)のいずれかで1,000PFUのCHIKV−SL15649(CHIKVの毒性菌株)に曝露した。(
図5A)40μg用量または(
図5B)10μg用量でワクチン接種したマウスにおけるCHIKV関連脚膨張をキャリパーで14日間にわたって測定した。有意差を星印で示す(スチューデントt検定、P<0.05)。
【0247】
CuCl
2/H
2O
2−CHIKVワクチン接種は、急速かつロバストな中和抗体力価(
図4)をもたらし、関節炎症性疾患からの完全な保護を実証した(
図5)。
【0248】
実施例5
(H
2O
2/CuCl
2系酸化を使用して、効果的な不活性化YFVワクチンを開発した)
CHIKV、モデルアルファウイルスを用いて実証された有望な結果に基づいて、YFVなどのフラビウイルスに対するこの系の有用性が探求された。予備的分析は、0.002%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2の濃度が、抗原性と急速なウイルス不活性化との間の機能的バランスを表したことを提示した(
図6A)。
【0249】
0.010%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2(完全な不活性化を確実にするため)のさらに最適化された条件を使用して、YFV用のワクチン材料を産生し、成体BALB/cマウスを免疫化するために使用した。ワクチン接種後、全ての動物は、H
2O
2のみを使用して調製されたYFVワクチンで免疫化された動物に関する40未満の中和力価と比較して、240の平均中和力価で測定可能な中和力価を示した(
図6B)。ワクチン接種後の免疫原性におけるこれらの差異は、YFVを3%のH
2O
2で20時間処理したときに観察される中和エピトープ(すなわち、抗原性)に対する重度の損傷に基づいて予測され得る。
【0250】
図6Aおよび6Bは、H
2O
2/CuCl
2系酸化が、不活性化YFVワクチンの開発において成功裏に使用され、ワクチン接種後の中和エピトープに結合する抗体の保持の増強(抗原性)および免疫原性の改善を実証することを示す。
【0251】
具体的に、
図6Aに示されるように、精製されたYFVを示される条件で、室温で20時間処理した。処理後、抗原を、エンベロープ構造タンパク質に特異的な中和モノクローナル抗体からなるYFV特異的サンドイッチELISAを使用して試験した。ELISA値を、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。処理後、材料を、標準的なプラーク形成単位(PFU)アッセイを使用して生YFVについても試験した。結果として得られたウイルス力価(PFU/mL)を条件毎に示す。検出可能な生ウイルスを示さなかった成功した条件を星印で示す。
【0252】
具体的に、
図6Bに示されるように、標準的なH
2O
2に基づく不活性化YFV(3%のH
2O
2、7時間)でのマウスの免疫化を、最適化されたH
2O
2/CuCl
2条件(0.01%のH
2O
2、1uM CuCl
2、室温で20時間)と比較した。不活性化後、ワクチン調製物を試験し、生ウイルスに対して陰性であることを見出した。各ワクチンを5μg(3%のH
2O
2)または10μg(0.01%のH
2O
2、1μMのCuCl
2)用量でミョウバンとともに配合し、一次免疫化を0日目に与え、追加免疫用量を14日目および25日目に成体BALB/cマウス(n=5/群)に投与した。動物を42日目に中和抗体力価について試験した。検出限界(LOD)を破線で示す。
【0253】
したがって、H
2O
2/CuCl
2系酸化が不活性化YFVワクチンの開発において成功裏に使用され、ワクチン接種後の中和エピトープに結合する抗体の保持の増強(抗原性)および免疫原性の改善を実証する。
【0254】
実施例6
(H
2O
2/CuCl
2系酸化が不活性化DENVワクチンの開発において成功裏に使用された)
YFV、別のモデルフラビウイルスを用いて実証された有望な結果に基づいて、デング熱3(DENV3)をH
2O
2/CuCl
2系で試験した。
【0255】
YFVを用いて、初期の試験は、0.002%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2濃度が、高い抗原性を維持すると同時に、完全なウイルス不活性化も提供するための最適な手法を表したことを示した(
図7)。
【0256】
具体的に、
図7は、二重酸化フェントン型酸化系の使用が、デング熱ウイルス3特異的中和エピトープを維持しながら不活性化の増強を実証したことを示す。精製されたデング熱ウイルス3(DENV3)を示される条件で、室温で20時間処理した。処理後、抗原を、エンベロープ構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるDENV特異的サンドイッチELISAで試験した。ELISA値を、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。処理後、材料を、標準的なプラーク形成単位(PFU)アッセイを使用して生DENV3についても試験した。結果として得られたウイルス力価(PFU/mL)を条件毎に示す。検出可能な生ウイルス(50PFU/mL未満)を示さなかった成功した条件を星印で示す。1μΜのCuCl
2および0.002%のH
2O
2の最適な条件のみが高い抗原性を保持すると同時に、検出可能な生ウイルスを示さなかったことに留意されたい。
【0257】
これらの予備的H
2O
2/CuCl
2不活性化条件を使用して、各DENV血清型のワクチンロットを産生し、0.10%の水酸化アルミニウムでアジュバント化された四価のデング熱ワクチン中に配合し、成体アカゲザルを免疫化するために使用した。単一の追加免疫化後、全てのサルが、4つのデング熱ウイルス血清型のうちの3つに関して中和抗体応答の改善およびH
2O
2のみでの不活性化と比較して幾何平均力価の平均8倍の増加を実証したH
2O
2/CuCl
2不活性化手法で血清転換した(NT
50≧10)(
図8)。
【0258】
具体的に、
図8は、H
2O
2/CuCl
2二重酸化系が、アカゲザルにおける四価のDENVワクチンに対してインビボ免疫原性を増強したことを示す。精製されたDENVを、3%のH
2O
2(7時間、室温)またはH
2O
2/CuCl
2(0.002%のH
2O
2のいずれかおよび1μΜのCuCl
2、20時間、室温)で処理した。完全な不活性化を標準的なプラークアッセイおよび共培養で確認した。ワクチン抗原を等しい濃度(3%のH
2O
2の場合1μg/血清型、またはH
2O
2/CuCl
2の場合2μg/血清型)でブレンドし、0.1%のミョウバンとともに配合した。成体アカゲザル(n=4/群)を0日目および28日目に筋肉内に免疫化し、中和力価(NT
50)を追加免疫化の1ヶ月後に測定した。検出限界(LOD)を破線で示す。
【0259】
これらの研究において抗原用量(1μg/血清型対2μg/血清型)にわずかな差異しかなく、したがって、実験を同じ用量の四価のデング熱ワクチン抗原でワクチン接種されたマウスで繰り返した(
図9)。
【0260】
具体的に、
図9は、H
2O
2/CuCl
2二重酸化系がマウスにおける四価のDENVワクチンに対してインビボ免疫原性を増強することを示す。精製されたDENVを、3%のH
2O
2(7時間、室温)またはH
2O
2/CuCl
2(0.002%のH
2O
2のいずれかおよび1μΜのCuCl
2、20時間、室温)で処理した。完全な不活性化を標準的なプラークアッセイおよび共培養で確認した。ワクチン抗原を等しい濃度(2μg/血清型)でブレンドし、0.1%のミョウバンとともに配合した。成体BALB/cマウス(n=4〜5/群)を0日目、14日目、および28日目に皮下に免疫化し、中和力価(NT
50)を最終免疫化の2週間後に測定した。検出限界(LOD)を破線で示す。
【0261】
これらの実験において、H
2O
2/CuCl
2不活性化の二重酸化手法は、4つ全てのデング熱ウイルス血清型に関して3%のH
2O
2よりも免疫原性であり、中和抗体力価においては8倍〜800倍超の改善をもたらした。
【0262】
実施例7
(CuCl
2/H
2O
2系酸化は、インフルエンザウイルスでの抗原性の改善を実証した)
2つのウイルス科(TogaviridaeおよびFlaviviridae)にわたって観察された肯定的な結果を考慮して、この新しい不活性化プラットホームを使用して試験するための追加のウイルス科を選択した。
【0263】
本実施例に示されるように、インフルエンザAウイルス(Orthomyxoviridae科)を、標準的な3%H
2O
2手法、紫外線不活性化、または最適化されたCuCl
2/H
2O
2系(0.002%のH
2O
2および1μMのCuCl
2)を使用して試験した。抗原性を評価するために、赤血球凝集活性(HA)滴定アッセイを使用した。インフルエンザウイルスは、赤血球を自然に凝集させ、不活性化中のこの活性の維持は、最終ワクチン産物の免疫原性にとって重要であると見なされる。
図10に示されるように、出願者のCuCl
2/H
2O
2系は、未処理の抗原に関して観察されるのと同様のHA力価を維持した。
【0264】
具体的に、
図10は、CuCl
2/H
2O
2系ウイルス不活性化が、H
2O
2のみよりも良好なインフルエンザ赤血球凝集活性を維持したことを示す。精製されたインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)を、H
2O
2(3%、2時間、室温)、CuCl
2/H
2O
2(1μΜのCuCl
2、0.002%のΗ
2O
2、20時間、室温)、紫外線光(UV、10ジュール)、または未処理のまま(生)で不活性化した。不活性化後、抗原調製物を赤血球凝集(HA)活性について直接試験した。抗原調製物を、完全なHA活性を依然として示した最も低い抗原濃度によりスコア化し、この濃度の逆数をグラフ化した。CuCl
2/H
2O
2は、生インフルエンザとは区別不能なレベルでタンパク質機能(すなわち、赤血球凝集活性)を維持した。
【0265】
比較により、UV不活性化は、HA活性を無視し得るレベルまで低減させた。このHA破壊のインビボ結果を
図11で見ることができ、CuCl
2/H
2O
2がロバストな保護血清抗体赤血球凝集素抑制(HAI)力価を誘導することができる一方で、UVで処理された抗原は、マウスにおいて機能的抗体を誘導せず、致死的攻撃からの最小保護を誘導した。
【0266】
具体的に、
図11は、CuCl
2/H
2O
2で不活性化されたインフルエンザがロバストな赤血球凝集抑制力価を誘導し、致死的攻撃から保護したことを示す。精製されたインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)を、H
2O
2(3%、2時間、室温)、CuCl
2/H
2O
2(1μΜのCuCl
2、0.002%のH
2O
2、20時間、室温)、または紫外線光(UV、10ジュール)で不活性化し、完全な不活性化をフォーカス形成アッセイ生存能試験により確認した。不活性化後、抗原調製物をタンパク質含有量によって正規化し、0.10%水酸化アルミニウムとともに配合した。成体雌BALB/cマウスを5μgのワクチンで皮下に免疫化した。
【0267】
図11Aは、動物の血清インフルエンザ特異的赤血球凝集素抑制(HAI)力価をワクチン接種後2ヶ月時点で決定したことを示す。ワクチン接種されていない対照マウスの結果を比較のために示す。アッセイの検出限界(LOD)を破線で示す。
【0268】
図11Bは、免疫化後2ヶ月時点で、マウスを6×10
4EID
50の生インフルエンザ(A/PR/8/34(H1N1)、20LD
50)に鼻腔内曝露し、体重の変化を毎日追跡したことを示す。初期開始重量の75%以下に達したいずれの動物も人道的に安楽死させた。
【0269】
CuCl
2/H
2O
2で不活性化されたウイルスまたはH
2O
2で不活性化されたウイルスでワクチン接種されたマウスは、インフルエンザ曝露後に高度に著しい保護を示した(それぞれ、P=0.0031およびP=0.015)。一方で、UVで不活性化されたウイルスでワクチン接種されたマウスは、著しい保護を示さなかった(P=0.25)。
【0270】
実施例8
(複数の遷移金属をワクチン抗原開発のための二重酸化手法で成功裏に使用した)
(CuCl
2の形態の)Cu
2+は、CHIKV、DENV、YFV、およびインフルエンザウイルスに関して記載される二重酸化ワクチン抗原開発研究で試験された初期の金属であった。しかしながら、上述されるように、出願者は、他の金属も同様の様式で機能する潜在性を有すると決定した。
【0271】
DENV3をモデルウイルスとして使用した本実施例に示されるように、CuCl
2(Cu
2+)、FeCl
3(Fe
3+)、またはCsCl(Cs
+)、およびH
2O
2の希釈液からなる不活性化研究を、ワクチン抗原の開発におけるそれらの潜在性について試験した。
【0272】
図12A〜Cに示されるように、3つ全ての金属が、高レベルの抗原性を維持した条件を提供すると同時に、完全なウイルス不活性化を示した。
【0273】
具体的に、
図12A〜Cは、二重酸化系ウイルス不活性化に関する酸化還元活性金属の比較を示す。精製されたDENV3を、CuCl
2(
図12A)、FeCl
3(
図12 B)、およびCsCl(
図12C)の増加濃度の存在下で、示される広範なH
2O
2濃度で処理した(20時間、室温)。処理後、中和抗体結合部位の維持(すなわち、抗原性)を、DENV外被タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるDENV特異的サンドイッチELISAを使用して測定した。ELISA値を、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。処理後、材料を、標準的なプラーク形成単位(PFU)アッセイを使用して生DENV3についても試験した。検出可能な生ウイルス(50PFU/mL未満)を示さなかった成功した条件を星印で示す(「N.T.」は、試験されていない)。
【0274】
3つ全ての金属が、高レベルの抗原性を維持した条件を提供すると同時に、完全なウイルス不活性化を示した。
【0275】
実施例9
(遷移金属の組み合わせが、二重酸化ワクチン系における相乗効果を実証した)
上記の
図12および実施例8に示されるように、異なる金属を組み合わせて使用して、ウイルスのH
2O
2不活性化を増強することができる。
【0276】
本実施例に示されるように、潜在的な相乗効果を調査するために、DENV3モデルウイルスを、H
2O
2(0.01%)の設定量でCuCl
2(Cu
2+)およびFeCl
3(Fe
3+)の組み合わせで不活性化した。いくつかのCuCl
2/FeCl
3条件は、良好な抗原性を維持しながら完全な不活性化を提供し、これは、同じ不活性化条件で複数の金属を使用することが実行可能であることを実証する(
図13)。確かに、0.05μΜおよび0.10μΜのCuCl
2濃度で、FeCl
3濃度が増加すると、抗原性が増強し、これは、これら2つの金属との相乗効果を示す。
【0277】
具体的に、
図13は、金属の組み合わせが、良好な抗原性を維持しながら完全な不活性化を達成することができることを示す。精製されたDENV3を、H
2O
2(0.01%)および示される範囲のCuCl
2およびFeCl
3濃度で処理した。処理後、抗原を、エンベロープ構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるDENV特異的サンドイッチELISAで試験した。ELISA値を、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。処理後、材料を、標準的なプラーク形成単位(PFU)アッセイを使用して生DENV3についても試験した。検出可能な生ウイルス(50PFU/mL未満)を示さなかった成功した条件を星印で示す。0.05μΜおよび0.10μMのCuCl
2濃度で、FeCl
3濃度が増加すると、抗原性が増強し、これは、これらの2つの金属との相乗効果を示す。
【0278】
実施例10
(細菌性形態の改善された維持のためのCampylobacterの最適化された不活性化を提供するために二重酸化を使用した)
本実施例に示されるように、Campylobacterは、典型的には直径約0.2μmおよび長さ約2〜8μmの小さならせん形状細菌である(
図14A)。
【0279】
標準的な3%のH
2O
2溶液を用いた室温での5時間の不活性化後、細菌に形態が明白に変化するように実質的に損傷を与え、これには、総細胞構造および実質的な集塊の損失が含まれる(
図14B)。しかしながら、0.01%のH
2O
2および2μMのCuCl
2を使用して二重酸化手法の最適化する際に、出願者は、驚くべきことに、二重酸化が、未処理の対照とは区別不能なままであった微生物での処理期間を通じて優れた細菌性形態を維持しながら、細菌を完全に不活性化し得ることを見出した(
図14C)。
【0280】
具体的に、
図14A〜14Cは、細菌性形態の改善された維持のためのCampylobacterの最適化された不活性化を示す。
【0281】
図14Aでは、C.coliを成長させ、精製し、未処理のままにした。
【0282】
図14Bでは、C.coliを成長させ、精製し、高濃度であるが有害な濃度のH
2O
2(3%のH
2O
2、5時間)で不活性化した。
【0283】
図14Cでは、C.coliを成長させ、精製し、2μMのCuCl
2および0.01%のH
2O
2で不活性化した。データは、スライドに適用し、かつグラムサフラニンで染色した各条件からの試料を示す。
【0284】
保持された構造に加えて、不活性化全細胞ワクチンを調製するために必要不可欠なパラメータは、完全な微生物不活性化を確実にすることである。上述される最適な条件を使用して、不活性化速度研究を行った。
図15に示されるように、C.coliは、約15分の減衰率半減期(T
1/2)とともに急速な不活性化を実証した。
【0285】
具体的に、
図15は、最適化されたCuCl
2/H
2O
2式への曝露が、Campylobacterの急速な不活性化をもたらすことを示す。C.coliの精製された調製を、最適化されたCuCl
2/H
2O
2式および緩衝液条件、または偽不活性化(CuCl
2/H
2O
2なし)で処理した。試料を示される時点で取り出し、生存Campylobacterについて試験した。開き記号は、生細菌の不在を示す。破線は、検出限界を示す。これらの速度は、全20時間の不活性化期間中の20ログ超の不活性化を示す。パイロット製造ロット(約10
9CFU/mL)における細菌性力価に基づいて、このレベルの不活性化は、全体の細菌性構造を依然として維持しながら、製造プロセス中、高い安全マージン(最大1億倍の理論上の過剰不活性化)を提供する(
図14C)。
【0286】
実施例11
(二重酸化Campylobacterワクチン接種は、アカゲザルにおいて保護免疫を提供する)
本実施例に示されるように、出願者は、ワクチン接種されていない対照動物と比較した60匹のCuCl
2/H
2O
2−C.coliで免疫化されたアカゲザルにおけるCampylobacter培養により感染が確認された腸疾患率の監視により、ワクチン効能を決定した。
【0287】
この研究に関して、(0.01%のH
2O
2および2μΜのCuCl
2を使用して不活性化された)CuCl
2/H
2O
2−C.coliワクチン候補で、動物を筋肉内ワクチン接種し、追加免疫用量を6ヶ月後に投与した。病歴に基づいて、ワクチン接種された群を選択し、Campylobacter感染症の歴史的に高い発生率を有した群を好ましいとした。この手法は、保護効能を評価する上で増加したロバスト性を提供した。全ての成体/若年期(n=59)は、40μgのミョウバンでアジュバント化された用量を受け、2匹の乳児(体重2Kg未満)は、半分の用量(20μg)を受けた。プロトコルに従って、ワクチン接種の最初の14日間にCampylobacter関連下痢と診断されたいずれの動物も、ワクチン媒介性保護がこの初期期間中に起こる可能性が低いため排除される。ワクチン接種後その日にCampylobacter関連下痢に起因して研究からある成体動物を排除した。血清試料を、一次ワクチン接種後0日目および6ヶ月目に全てのワクチン接種された動物(n=60)から収集し、この時点で、動物は、追加免疫用量のワクチンを受けた。
【0288】
一次ワクチン接種後、我々は、Campylobacter関連下痢性疾患からの保護に加えて、同じシェルター群(
図16B、P=0.038)内の過去の数年と比較して、または2015年のCampylobacterシーズン中の他のシェルター群(
図16C、P=0.020)と比較して、Campylobacter特異的血清抗体力価(
図16A、P<0.001)の著しい増加を観察した。NHPの健康は毎日監視され、下痢性疾患は、検索可能中央データベースにおいて文書化される。ワクチン接種されたコホート内で下痢発生率を監視し、他の同様のシェルター群においておよそ1,000匹のワクチン接種されていない対照動物と比較した。糞便試料を下痢症状の発現を経験している任意の動物から収集し、C.coli、C.jejuni、およびShigella種について試験したが、それは、これらが動物における下痢に関連付けられる主な腸の病原体を表すためである。
【0289】
具体的に、
図16A〜16Cは、二重酸化C.coliが免疫原性であり、RMを自然獲得Campylobacter感染症から保護することを示す。
【0290】
図16Aにおいて、血清試料を、ワクチン接種の直前に、または一次免疫化の6ヶ月後に動物から収集し、最適化された全細胞ELISAを使用して、Campylobacter特異的抗体応答についてアッセイし、全ての血清試料をShigella(グラム陰性腸細菌)に対して予め吸着させて、非特異的結合を低減した。有意性試験を、対応のあるスチューデントt検定を使用して行った。
【0291】
ワクチン接種後、動物を8ヶ月間にわたってC.coli関連下痢について追跡し、同じシェルター内の前年の下痢率と比較し(
図16B)、または2015年に監視した他の同時シェルター(約1,000匹の対照動物)の下痢発生率と比較した(
図16C)。黒色の矢印は、追加免疫ワクチン接種の時点を示す。
【0292】
一次ワクチン接種後6ヶ月時点の中間分析は、ワクチン接種されていない動物におけるCampylobacter関連下痢の76の症例に対して、ワクチン接種された群におけるC.coliまたはC.jejuni関連下痢の症例を示さず、これは、単一のワクチン接種後のCampylobacter培養陽性下痢性疾患(P=0.035)に対する統計的に有意な保護効果を表す。
【0293】
ほぼ全てのヒトワクチンが最適な保護効能のために少なくとも2回分の用量を必要とし、免疫記憶の耐久性が追加免疫ワクチン接種後にしばしば改善されるため、保守的な手法に続いて、6ヶ月時点で追加免疫ワクチン接種を施し、次いで、NHPにおける下痢性疾患の発生率を監視し続けた。一次ワクチン接種の250日後、ワクチン接種されていない集団においてより多くのCampylobacter関連腸疾患の症例が発生し続けた(8.7%または合計92匹の動物に達する)一方で、ワクチン接種されたコホートにおける動物のいずれも(0/60)疾患の徴候を示さず、これらの2つの群間の統計的有意性はP=0.020に増加した。
【0294】
実施例12
(高リン酸塩濃度が、H
2O
2/CuCl
2不活性化中に抗原性を維持すると同時に、急速なウイルス不活性化速度を示した)
本実施例に示されるように、出願者は、驚くべきことに、高濃度の無機多原子オキシアニオンが、フェントン試薬(複数可)(例えば、過酸化水素および塩化銅の組み合わせ(H
2O
2/CuCl
2))での不活性化中の病原体の抗原性エピトープの維持を改善することができることを見出した。
【0295】
本実施例に示されるように、デング熱ウイルス(DENV)特異的サンドイッチELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を行った。DENV特異的ELISAは、ウイルスの表面上の中和エピトープに特異的な2つのDENV特異的モノクローナル抗体(MAb)、15A5および6H6を使用した。MAb15A5を使用してELISAプレートをコーティングし、捕捉抗体としての役目を果たした一方で、ビオチン化MAb6H6を検出抗体として使用した。このサンドイッチELISAを、未処理の精製された生デング熱血清型4(DENV4)ビリオン(菌株:TVP−360)、または標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、8×10
8PFU/mLと同等のウイルスタンパク質濃度=50μg/mLと定義する)下で、H
2O
2/CuCl
2で不活性化されたか、またはNa
2HPO
4[pH=7.5]の増加濃度、例えば、25、50、75、100、150、250、500、750、および1500mMのNa
2HPO
4で、室温で20時間活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。試料を本アッセイの線形範囲に達するように連続希釈し、MAb15A5をコーティングした予めブロックされたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをビオチン化MAb6H6とともに1時間インキュベートした。別の洗浄ラウンド後、プレートをストレプトアビジンポリ−HRP(ThermoFisher Scientific)とともに1時間インキュベートした。最終洗浄ステップ後、比色検出試薬(o−フェニレンジアミン、OPD)、次いで、1M塩酸を添加して、発色現像を停止させ、プレートをELISAプレートリーダーで、490nmで読み取った。生光学密度(O.D.)をブランクウェルからバックグラウンド除去し、未処理の生OD値と比較し、未処理の生ウイルスを100%ELISAシグナルと定義した。標準的な不活性化条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、または選択高リン酸塩不活性化条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、150mMのNa
2HPO
4[pH=7.0]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、ウイルス不活性化の速度を測定して、高Na
2HPO
4条件のウイルス不活性化速度への影響を評価した。H
2O
2/CuCl
2不活性化剤の添加後、少量の一定分量をカタラーゼで処理して残留H
2O
2を除去し、次いで、連続10倍希釈し、不活性化後0.5、1、2、4、および6時間時点で、ベロ細胞上で、プラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。検出限界は、50PFU/mLであった。
【0296】
例示的なELISAの結果を
図17Aに示す。標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、Na
2HPO
4の増加濃度の存在下で不活性化されたウイルスは、完全なウイルス不活性化をもたらし、ELISAシグナルの増加を示し、天然抗体結合部位の保持の改善および抗原組成の改善を示した。
【0297】
具体的に、
図17Aは、例示的なサンドイッチELISAの結果を例示する棒グラフであり、ここで、2つのデング熱ウイルス(DENV)特異的中和モノクローナル抗体(MAb)、15A5および6H6を使用して、異なる濃度のNa
2HPO
4を含む条件下でH
2O
2/CuCl
2での不活性化後にウイルス粒子の保持された抗原性を測定した。等量のDENV血清型4(DENV4)を各事例で使用し、モノクローナルDENV特異的抗体を使用して、不活性化ウイルスが生ウイルスと比較してどの程度良好に認識されるかを決定した。標準的な条件(Std.)下で、ウイルス上の中和エピトープが不活性化中に実質的に損傷されたが、これらのエピトープは、不活性化を高濃度のNa
2HPO
4の存在下で行った場合、損傷から保護された。破線は、標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2を含有する110mMのNaCl、20時間、室温)下で観察されたELISAシグナルを示す。完全なウイルス不活性化(50PFU/mL未満)を示した試料は、棒上に(−)を有し、残留感染性ウイルスを示した試料は、棒上に(+)で示される。
【0298】
図17Bに示されるように、高リン酸塩濃度の存在下でさえも、ウイルス不活性化速度は急速であり、不活性化ワクチンを調製するためのこの無機多原子オキシアニオン手法の実現可能性を示した。
【0299】
具体的に、
図17Bは、ウイルス不活性化の速度が高Na
2HPO
4の存在下または不在下で同様であることを示す線グラフである。標準的な緩衝液条件は、10mMのNaPO
4、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、0.01%のH
2O
2、および1μΜのCuCl
2を含有し、高リン酸条件は、150mMのNaPO
4[pH=7.0]、2%のD−ソルビトール、および10mMのNaCl、0.01%のH
2O
2、および1μΜのCuCl
2を含有した。緩衝液のpHは、pH=7.0〜7.5の範囲であった。出願者は、pHをpH7.0〜8.0の範囲内で変化させてもウイルス不活性化速度に著しく影響しなかったことも決定した。点線は、検出の限界を示す。
【0300】
実施例13
(高リン酸塩濃度を伴う条件下での不活性化がワクチン免疫原性を改善した)
本実施例に示されるように、出願者は、H
2O
2/CuCl
2で不活性化されたウイルスの免疫原性が高濃度のリン酸塩の存在下での不活性化によって改善されることも見出した。
【0301】
本実施例に示されるように、マウスを、標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義される)下で、または選択された高リン酸塩不活性化条件(0.01%のH
2O
2、1μMのCuCl
2、150mMのNa
2HPO
4[pH=7.0]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、室温で20時間にわたって、H
2O
2/CuCl
2で不活性化された精製されたDENV4ビリオンで免疫化した。不活性化後、ウイルスを、Cellufine Sulfateクロマトグラフィーを使用して精製した。各不活性化ロットの少なくとも5%を使用して、共培養試験を、その後の7日成長期間でDENVワクチンを感受性ベロ細胞に接種することによって行ってウイルス拡大(生ウイルスが存在する場合)を可能にし、その後、プラークアッセイ試験を行って、生存ウイルスを数え上げた。各アッセイは、アッセイ性能を監視するために、陽性対照フラスコ(10プラーク形成単位(PFU)のDENV4を添加したもの)および陰性対照フラスコ(培地のみ)を組み込んだ。本手法を使用して、各ロットが生ウイルスに対して陰性であることを見出した。不活性化DENV4を0.10%水酸化アルミニウムとともに配合し、成体BALB/cマウス群(n=3/群)に、0、14、および28日目に、2μgの不活性化ウイルスで腹腔内にワクチン接種した。最終免疫化後の14日目に、血清を収集し、DENV4に対する中和抗体力価について試験した。中和抗体力価を、以前の記述(Liu,L.,et.al.,Clin Vaccine Immunol.2012 Jan;19(1):73−8)と同様の96ウェルマイクロ中和試験を使用して測定した。96ウェルプレートの各ウェルに1.5×10
4ベロ細胞を播種し、細胞がおよそ90%コンフルエントになるまで、5%CO
2中で、37℃で一晩インキュベートした。血清試料を細胞培養培地中で連続2倍希釈し、次いで、等体積のウイルスと混合し、希釈して、およそ40フォーカス形成単位(FFU)/ウェルをもたらした。この血清:ウイルス混合物を37℃で2時間インキュベートして、ウイルス中和が起こるのを可能にし、次いで、37℃および5%CO
2で1時間にわたってベロ細胞に添加した。細胞単層を、DMEM培地中1.0%メチルセルロース、2%熱不活性化FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンからなる半固形培地で覆い、37℃および5%CO
2中で2日間にわたってインキュベートした。半固形培地を除去し、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、サポニンで透過性にした。処理された細胞をウイルス特異的MAb4G2で染色し、フォーカスをAEC溶液(Vector Laboratories)で現像した。フォーカスを数え上げ、未処理のウイルス試料と比較したフォーカスのパーセント減少を計算した。DENV4特異的血清中和力価(NT
50力価)を、50%以上のフォーカス低減を達成した最終血清希釈の逆数と定義した。
【0302】
例示的なワクチン研究の結果を
図18に示す。標準的な不活性化技法を使用して調製されたワクチンが群平均NT
50力価=160をもたらした一方で、高リン酸条件下で調製されたDENV4ワクチンは、群平均NT
50力価=747を引き起こし、中和抗体の4.7倍の増加を表す。
【0303】
具体的に、
図18は、標準的なH
2O
2/CuCl
2不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μMのCuCl
2を含有する110mMのNaCl、20時間、室温)下で、または高リン酸塩(150mMのNa
2HPO
4)の存在下での標準的な不活性化条件下で調製された精製されたDENV4ウイルスを使用したDENV4ワクチンの免疫原性の改善を例示する棒グラフを示す。残留生ウイルスに関する試験により完全な不活性化が確認され、ワクチンを0.10%の水酸化アルミニウムとともに配合した。成体BALB/cマウス群(n=3/群)に、0、14、および28日目に、2μgの不活性化DENV4抗原で腹腔内にワクチン接種した。最終免疫化後の14日目に、血清を収集し、DENV4に対する中和抗体力価について試験した。NT
50力価は、感染性DENV4ウイルスの50%がインビトロで中和される最も高い血清希釈を表す。群平均(平均の±標準誤差)を示す。
【0304】
これらの結果は、高リン酸塩を含有する不活性化条件がインビトロで抗原性の改善を示したことを示し(
図17Aおよび17B)、インビボで実質的に改善されたワクチン媒介性免疫応答も提供する。
【0305】
実施例14
(複数のリン酸塩系多原子オキシアニオンが、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中の抗原損傷から保護した)
本実施例に示されるように、驚くべきことに、出願者は、高濃度の他のリン酸塩系多原子オキシアニオンが、H
2O
2/CuCl
2の組み合わせでの不活性化中の病原体の生物学的に関連する中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0306】
本実施例に示されるように、DENV特異的サンドイッチELISAを、実施例12に記載される通りであるが、標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義する)下で、または0.01、0.05、0.1、0.5、1.5、3、10、15、もしくは30mMの三リン酸ナトリウム(Na
5P
3O
10)、または0.01、0.05、0.1、0.5、1.5、3、10、15、30、もしくは60mMのトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)を含む代替的なリン酸塩系多原子オキシアニオン源の存在下での標準的な条件下で不活性化された精製されたDENV4を使用して行った。20時間のH
2O
2/CuCl
2不活性化後、試料をカタラーゼで処理して残留H
2O
2を除去し、次いで、連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限界で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。
【0307】
例示的なELISAの結果が
図19に示され、これは、三リン酸ナトリウム(
図19A)およびトリメタリン酸ナトリウム(
図19B)などの他のリン酸塩系多原子オキシアニオンがH
2O
2/CuCl
2に基づく不活性化中のウイルスエピトープ損傷から保護することを示す棒グラフを示す。2つのDENV特異的モノクローナル抗体、15A5および6H6を使用して、異なる濃度の(A)三リン酸ナトリウム(Na5P
3O
10)または(B)トリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)を含む条件下でのH
2O
2/CuCl
2での不活性化後のウイルスの抗原性の保持を測定した。等量のDENV4を各事例で使用し、モノクローナルDENV特異的抗体を使用して、不活性化ウイルスが生ウイルスと比較してどの程度良好に認識されるかを決定した。標準的な条件(Std.)下で、ウイルス上の中和エピトープが不活性化中に実質的に損傷されたが、これらのエピトープは、不活性化を高濃度のNa
5P
3O
10またはNa
3P
3O
9の存在下で行った場合、損傷から保護された。不活性化後、試料を残留生ウイルスについて試験した。完全なウイルス不活性化(50PFU/mL未満)を示した試料は、棒上に(−)を有し、残留感染性ウイルスを示した試料は、棒上に(+)で示される。破線は、標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2を含有する110mMのNaCl、20時間、室温)下で観察されたELISAシグナルを示す。
【0308】
したがって、標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、ウイルスが高濃度の三リン酸ナトリウム(
図19A)またはトリメタリン酸ナトリウム(
図19B)のいずれかの存在下で完全に不活性化されると同時に、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加も示した例がいくつか存在する。
【0309】
実施例15
(硫酸塩は、H
2O
2/CuCl
2不活性化中に抗原性を改善した別の無機多原子オキシアニオンを代表する)
驚くべきことに、出願者は、硫酸塩などの高濃度の非リン酸塩多原子オキシアニオンがH
2O
2/CuCl
2での不活性化中の中和エピトープの維持を改善することも見出した。
【0310】
本実施例に見られるように、DENV特異的ELISAを、実施例12に記載される通りであるが、SO
42−多原子オキシアニオン源として硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)または硫酸マグネシウム(MgSO
4)の存在下または不在下で不活性化された精製されたDENV4を使用して行った。比較のために、不活性化実験も単原子陰イオン源のみとして塩化マグネシウム(MgCl
2)または塩化ナトリウム(NaCl)を用いて行われた。DENV特異的サンドイッチELISAを、精製された生DENV4ビリオン、または標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義する)下で、またはNa
2SO
4の増加濃度(10、25、50、75、100、150、250、および500mM)、MgSO
4の増加濃度(10、25、50、75、100、150、250、500、750、1000、および1500mM)、MgCl
2の増加濃度(10、50、および150mM)、もしくはNaClの増加濃度(150、250、500、750、1000、および1500mM)で、室温で20時間の標準的な不活性化条件下で、H
2O
2/CuCl
2で不活性化されたDENV4ビリオンで行った。H
2O
2/CuCl
2不活性化の20時間後、試料をカタラーゼで処理して残留H
2O
2を除去し、次いで、連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限界で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。
【0311】
例示的なELISAの結果が
図20A〜20Dに示され、これらは、高濃度の無機多原子オキシアニオン、硫酸塩が、H
2O
2/CuCl
2に基づく不活性化中のウイルスエピトープ損傷から保護することを例示する。精製されたDENV4を、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaClからなる標準的な(Std.)緩衝液条件下で、室温で20時間にわたって、H
2O
2/CuCl
2(0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2で不活性化し、DENV特異的ELISAにより抗原性の保持について試験した。これらの標準的な不活性化条件は、(
図20A)硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の増加濃度、(
図20B)硫酸マグネシウム(MgSO
4)の増加濃度のいずれかで補完され、より高い濃度の硫酸塩が抗原性の改善に対応した。対照的に、単原子陰イオン(Cl
−)源として異なる濃度の(
図20C)塩化マグネシウム(MgCl
2)または(
図20D)塩化ナトリウム(NaCl)の添加は、抗原性には保護効果を示さなかった。不活性化後、試料を残留生ウイルスについて試験した。完全なウイルス不活性化(50PFU/mL未満)を示した試料は、棒上に(−)を有し、残留感染性ウイルスを示した試料は、棒上に(+)で示される。破線は、標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2を含有する110mMのNaCl、室温で20時間)下で観察されたELISAシグナルを示す。
【0312】
したがって、標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、高濃度の硫酸ナトリウム(
図20A)または硫酸マグネシウム(
図20B)のいずれかの存在下で不活性化されたウイルスが完全なウイルス不活性化をもたらすと同時に、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加も示した例がいくつか存在する。塩化マグネシウム(
図20C)または塩化ナトリウム(
図20D)などの単原子陰イオンの増加濃度の存在下で行われた不活性化実験は、保護効果または抗原性の改善を示さない。
【0313】
実施例16
(無機多原子オキシアニオンの組み合わせが、H
2O
2/CuCl
2不活性化中に抗原性を改善した)
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンの混合物が、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0314】
本実施例に示されるように、ELISAを、実施例12に記載される通りであるが、リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)およびトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)の多様な組み合わせまたはリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)および硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の多様な組み合わせの存在下で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。サンドイッチELISAを、未処理の精製されたDENV4ビリオン、または標準的な条件(0.01%のH
2O
2、1μΜのCuCl
2、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、または各々がNa
3P
3O
9(0、0.1、0.5、1、2、および3mM)の増加濃度と組み合わせられたNa
2HPO
4の増加濃度(10、50、100、および150mM)で、室温で20時間にわたって、H
2O
2/CuCl
2で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。あるいは、標準的な不活性化条件に、室温で20時間にわたって各々がNa
2SO
4の異なる濃度(0、10、または50mM)と組み合わせられたNa
2HPO
4の増加濃度(2、10、50、100、250、または500mM)を補充した。20時間のH
2O
2/CuCl
2不活性化後、試料をカタラーゼで処理して残留H
2O
2を除去し、次いで、連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限界で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。
【0315】
例示的なELISAの結果を
図21Aおよび21Bに示す。
【0316】
具体的に、
図21Aは、異なる形態のリン酸塩(例えば、Na
2HPO
4およびNa
3P
3O
9)を組み合わせて使用して、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中に生物学的に関連する中和エピトープを保護することができることを示す。精製されたDENV4を、10mMのNaCl、2%のD−ソルビトール、ならびに異なるトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9)濃度(0、0.1、0.5、1.0、2.0、および3.0mM)と組み合わせたNa
2HPO
4(10、50、100、または150mM)からなる異なる緩衝液条件下で、H
2O
2/CuCl
2(0.01%)H
2O
2および1μΜのCuCl
2、20時間、室温)で不活性化し、DENV特異的ELISAにより抗原性の保持について試験した。破線は、標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μΜCuCl
2を含有する110mMのNaCl、20時間、室温)下で観察されたELISAシグナルを示す。不活性化後、全ての試料を試験し、各棒上の(−)で示されるように、残留生ウイルス(50PFU/mL未満)に対して陰性であることを見出した。
【0317】
具体的に、
図21Bは、リン酸塩および硫酸塩を組み合わせて使用して、H
2O
2/CuCl
2での不活性化中に生物学的に関連する中和エピトープを保護することができることを示す。精製されたDENV4を、10mMのNaCl、2%のD−ソルビトール、ならびに異なる硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)濃度(0、10、および50mM)と組み合わせたNa
2HPO
4(2、10、50、100、250、または500mM)からなる異なる緩衝液条件下で、H
2O
2/CuCl
2(0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2、20時間、室温)で不活性化し、DENV特異的ELISAにより抗原性の保持について試験した。破線は、標準的な不活性化条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、ならびに0.01%のH
2O
2および1μΜのCuCl
2を含有する10mMのNaCl、20時間、室温)下で観察されたELISAシグナルを示す。不活性化後、試料を残留生ウイルスについて試験した。完全なウイルス不活性化(50PFU/mL未満)を示した試料は、棒上に(−)を有し、残留感染性ウイルスを示した試料は、棒上に(+)で示される。
【0318】
したがって、標準的な不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウム/三リン酸ナトリウム(
図21A)または高濃度のリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム(
図21B)のいずれかの存在下で完全に不活性化されると同時に、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加も示した例がいくつか存在する。
【0319】
実施例17
(無機多原子オキシアニオンが、H
2O
2/CuCl
2不活性化中のチクングニア熱ウイルスの抗原損傷から保護した)
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、追加のウイルスモデルを使用してH
2O
2/CuCl
2での不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0320】
本実施例に示されるように、チクングニア熱ウイルス(CHIKV)特異的サンドイッチELISAを行った。CHIKV特異的ELISAは、ウイルスの表面上の中和エピトープに特異的な2つのCHIKV特異的モノクローナル抗体(MAbs)、152および166を使用した。MAb152を使用してELISAプレートをコーティングし、捕捉抗体としての役割を果たした一方で、ビオチン化MAb166を検出抗体として使用した。このサンドイッチELISAを、未処理の精製された生CHIKVビリオン(菌株:181/25)、または標準的な条件(0.01%のH
2O
2、5μΜのCuCl
2、6mMのNa
2HPO
4[pH=7.4]、0.7mM KH
2PO
4、130mMのNaCl、0.6%のD−ソルビトール、1×10
10PFU/mLと同等のウイルスタンパク質濃度=200μg/mLと定義する)下で、または高濃度のNa
2HPO
4(150mM、pH=7.5)、または高濃度のNa
2HPO
4(150mM)およびトリメタリン酸ナトリウム(Na
3P
3O
9、3mM)の組み合わせで、室温で20時間にわたって、H
2O
2/CuCl
2で不活性化された精製されたCHIKVビリオンを使用して行った。試料をカタラーゼで処理して残留H
2O
2を除去し、次いで、本アッセイの線形範囲に達するように連続希釈し、MAb152をコーティングした予めブロックされたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをビオチン化MAb166とともに1時間インキュベートした。別の洗浄ラウンド後、プレートをストレプトアビジンポリ−HRP(ThermoFisher Scientific)とともに1時間インキュベートした。最終洗浄ステップ後、比色検出試薬(o−フェニレンジアミン、OPD)、次いで、1M塩酸を添加して、発色現像を停止させ、プレートをELISAプレートリーダーで、490nmで読み取った。生光学密度(O.D.)をブランクウェルからバックグラウンド除去し、未処理の生OD値と比較し、未処理の生ウイルスを100%ELISAシグナルと定義した。20時間の不活性化期間の終わりに、各条件(カタラーゼで処理して残留H
2O
2を除去したもの)の10%を共培養により試験し、残留生ウイルス(100PFU/mLの推定LOD)に対して陰性であることを見出した。
【0321】
例示的なELISAの結果を
図22に示す。
【0322】
具体的に、
図22は、リン酸塩(Na
2HPO
4)およびトリメタリン酸塩などの無機多原子オキシアニオンの添加が、H
2O
2/CuCl
2不活性化中のチクングニア熱ウイルス(CHIKV)抗原性を改善することを示す。精製されたCHIKVを、標準的な緩衝液条件(リン酸緩衝生理食塩水[pH=7.4]、0.6%のD−ソルビトール)下で、または示されるように、増加したNa
2HPO
4もしくはトリメタリン酸塩を補充して、H
2O
2(0.01%)およびCuCl
2(5μΜ)で、室温で20時間にわたって処理した。未処理の生CHIKVを比較のために示す。処理期間後、試料を、E1およびE2構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるCHIKV特異的サンドイッチELISAを使用して抗原性の保持についてアッセイした。20時間の不活性化期間の終わりに、各条件の10%を共培養により試験し、残留生ウイルス(100PFU/mLの推定LOD)に対して陰性であることを見出した。
【0323】
したがって、H
2O
2/CuCl
2に基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウム/トリメタリン酸塩の存在下で完全に不活性化されたが、これらの試料は、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0324】
実施例18
(無機多原子オキシアニオンが、ホルムアルデヒドでの不活性化中に起こる抗原損傷から保護する)
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、ホルムアルデヒドでの不活性化中の中和エピトープの維持を改善することも見出した。
【0325】
本実施例に示されるように、DENV特異的ELISAを、実施例12に記載される通りであるが、高濃度のリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)または硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の存在下または不在下で、ホルムアルデヒド(CH
2O)で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。ELISAを、未処理の精製されたDENV4ビリオン、または標準的な条件(0.01%ホルムアルデヒド、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義する)下で、またはリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)(5、50、100、500、および750mM)または硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)(5、50、100および500mM)の増加濃度で、37℃で20日間にわたって、ホルムアルデヒドで不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。20日間のホルムアルデヒドに基づく不活性化後、試料を連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限界で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。
【0326】
例示的なELISAの結果を
図23に示す。
【0327】
具体的に、
図23は、リン酸塩(Na
2HPO
4)または硫酸塩(Na
2SO
4)などの無機多原子オキシアニオンの添加が、ホルムアルデヒド系ウイルス不活性化中の抗原損傷から保護することを示す。精製されたDENV4を、未処理のままにした(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl中でインキュベートした)か、または標準的な条件(0.01%のホルムアルデヒド、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl)下で、またはNa
2HPO
4もしくはNa
2SO
4の増加濃度での標準的な条件下で、37℃で20日間にわたって、ホルムアルデヒドで不活性化した。不活性化後、試料を、DENV特異的ELISAを使用して抗原性の保持について試験した。破線は、標準的な不活性化条件で観察されたELISAシグナルを示す。不活性化後、全ての試料を試験し、各棒上の(−)で示されるように、残留生ウイルス(50PFU/mL未満)に対して陰性であることを見出した。
【0328】
したがって、標準的なホルムアルデヒドに基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムのいずれかの存在下で完全に不活性化されたが、試料のうちの多くは、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0329】
実施例19
(無機多原子オキシアニオンが、β−プロピオラクトン(BPL)不活性化中の抗原損傷から保護する)
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、BPLでの不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0330】
本実施例に示されるように、ELISAを、実施例12に記載される通りであるが、高濃度のNa
2HPO
4またはNa
2SO
4の存在下または不在下で標準的なBPL不活性化手法で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。ELISAを、未処理の精製されたDENV4ビリオン、または標準的な条件(0.1%BPL[C
3H
4O
2]、100mM HEPES、10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mLと定義する)下で、またはリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)(5,50、100、500、および750mM)または硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)(5、50、100、および500mM)の増加濃度の存在下で行われる標準的な不活性化条件下で、室温で20時間にわたって、BPLで不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。20時間のBPLに基づく不活性化後、試料を連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限界で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。
【0331】
例示的なELISAの結果を
図24に示す。
【0332】
具体的に、
図24は、リン酸塩(Na
2HPO
4)または硫酸塩(Na
2SO
4)などの無機多原子オキシアニオンの添加が、β−プロピオラクトン(BPL)でのウイルス不活性化中に起こる抗原損傷から保護することを示す。精製されたDENV4を、未処理のままにした(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl中でインキュベートした)か、または示されるように、Na
2HPO
4もしくはNa
2SO
4の増加濃度で、標準的な条件(0.1%BPL[C
3H
4O
2]、100mM HEPES、5mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、室温で20時間にわたって、BPLで不活性化した。不活性化後、試料を、DENV特異的ELISAを使用して抗原性の保持について試験した。破線は、標準的な不活性化条件で観察されたELISAシグナルを示す。不活性化後、全ての試料を試験し、各棒上の(−)で示されるように、残留生ウイルス(50PFU/mL未満)に対して陰性であることを見出した。
【0333】
したがって、標準的なBPLに基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムのいずれかの存在下で完全に不活性化されたが、試料のうちの多くは、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0334】
実施例20
(無機多原子オキシアニオンが、バイナリーエチレンイミン(BEI)不活性化中の抗原損傷から保護した)
驚くべきことに、出願者は、無機多原子オキシアニオンが、BEIでの不活性化中の中和エピトープの維持を改善することができることも見出した。
【0335】
本実施例に示されるように、ELISAを、実施例12に記載される通りであるが、高濃度のNa
2HPO
4の存在下または不在下で典型的な範囲のBEI濃度(Aarthi,et.al.,Biologicals 32(2004)153−156)で不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。ELISAを、未処理の精製されたDENV4ビリオン、または標準的な緩衝液条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl、タンパク質濃度=50μg/mL)下で、またはリン酸ナトリウム(Na
2HPO
4、150mM)の増加濃度の存在下で行われた標準的な緩衝液条件下で、37℃で20時間にわたって、BEIで不活性化された精製されたDENV4ビリオンを使用して行った。20時間のBEIに基づく不活性化後、試料を連続10倍希釈し、50PFU/mLの検出限界で、ベロ細胞上でプラークアッセイにより生ウイルスについて試験した。
【0336】
例示的なELISAの結果を
図25に示す。
【0337】
具体的に、
図25は、リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)などの無機多原子オキシアニオンの添加が、バイナリーエチレンイミン(BEI)でのウイルス不活性化中に起こる抗原損傷から保護することを示す。精製されたDENV4を、未処理のままにした(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl中でインキュベートした)か、または標準的な緩衝液条件(10mMのNa
2HPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール、および110mMのNaCl)下で、Na
2HPO
4を150mMに増加させて、示されるBEIの増加濃度で、37℃で20時間にわたって不活性化した。不活性化後、試料を、DENV特異的ELISAを使用して抗原性の保持について試験した。不活性化後、全ての試料を試験し、各棒上の(−)で示されるように、残留生ウイルス(50PFU/mL未満)に対して陰性であることを見出した。
【0338】
したがって、BEIに基づく不活性化条件は、抗体結合部位の破壊に起因してウイルス特異的中和エピトープの損失およびELISAシグナルの損失をもたらした。対照的に、感染性ウイルスが高濃度のリン酸ナトリウムの存在下で完全に不活性化されたが、これらの試料は、天然抗体結合部位の保持の増強および抗原組成の改善を示すELISAシグナルの増加を示した。
【0339】
実施例21
(メチサゾンが、単一および二重酸化系ウイルス不活性化の両方の速度を増強した)
本実施例に示されるように、出願者は、メチサゾンが、単一および二重酸化系ウイルス不活性化の両方の速度を増強したと決定した。
図26A〜Cに示されるように、メチサゾンの添加が、ワクシニアウイルス(VV、DNAゲノム)、ならびにデング熱ウイルス血清型4(DENV4、RNAゲノム)およびチクングニア熱ウイルス(CHIKV、RNAゲノム)に関して二重酸化に基づく不活性化の速度を実質的に増加することができた。
【0340】
さらに、メチサゾンのみがウイルス不活性化に最小限の影響しか及ぼさなかった(
図26Bおよび26C)が、メチサゾンおよびH
2O
2はともに(銅の不在下でさえも)、ウイルス不活性化に対する相乗的な増強を実証した。
【0341】
具体的に、
図26A、26B、および26Cは、特定の態様に従って、メチサゾンが単一および二重酸化系ウイルス不活性化の両方の速度を増強したことを示す。(A)ワクシニアウイルス(PBS、pH=7.5)、(B)デング熱ウイルス血清型4(DENV4、110mMのNaCl、150mMのNaPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール中)、および(C)チクングニア熱ウイルス(CHIKV、150mMのNaPO
4を補充したPBS[pH=7.5]中)を各々、図に示される不活性化試薬で処理した。異なる成分の濃度は、以下の通りであった:H
2O
2=0.004%(CHIKV)または0.002%(DENV4およびVV)、CuCl
2=1μΜ(全てのウイルス)、メチサゾン(MZ)=10μΜ(全てのウイルス)。点線は、検出限界(LOD)を示す。本実施例は、150mMのNaPO
4を用い、これは、本明細書に開示される無機多原子オキシアニオンの増加範囲内の例示的な濃度である。
【0342】
実施例22
(メチサゾンは、二重酸化系細菌性不活性化の速度を増強した)
本実施例に示されるように、出願者は、メチサゾンが二重酸化系細菌性不活性化の速度を増強したと決定した。
【0343】
実施例21の結果を細菌に拡張し(
図27A〜C)、ここで、この場合もやはり、メチサゾンの二重酸化手法(例えば、H
2O
2/CuCl
2)への添加が、Campylobacter coli(例示的なグラム陰性菌)、Listeria monocytogenes(例示的なグラム陽性菌)、およびShigella dysenteriae(例示的なグラム陰性菌)に対する不活性化速度を実質的に増強した。
【0344】
具体的に、
図27A、27B、および27Cは、特定の態様に従って、メチサゾンが二重酸化系細菌性不活性化の速度を増強したことを示す。(A)Campylobacter coli(B)Listeria monocytogenesおよび(C)Shigella dysenteriaeを、10mMのNaCl、150mMのNaPO
4[pH=7.5]、および2%のD−ソルビトールに緩衝液交換し、各パネルに示される不活性化成分で処理した。1mL当たりのコロニー形成単位(CFU/mL)により決定した不活性化後の生存能を経時的に追跡した。不活性化成分の濃度を、以下の通り:C.coli:H
2O
2=0.01%、CuCl
2=2μΜ、メチサゾン(MZ)=20μΜ;L.monocytogenes:H
2O
2=0.10%、CuCl
2=10μΜ、メチサゾン(MZ)=100μΜ;S.dysenteriae:H
2O
2=0.10%、CuCl
2=10μΜ、MZ=100μΜに各種類の細菌に対して最適化し、開き記号がMZなしの条件を表す一方で、閉じ記号はMZの添加を示す。検出限界は、10CFU/mLであった。本実施例は、150mMのNaPO
4を用い、これは、本明細書に開示される無機多原子オキシアニオンの増加範囲内の例示的な濃度である。
【0345】
実施例23
(メチサゾンは、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持しながら不活性化速度を増強した)
本実施例に示されるように、出願者は、メチサゾンが、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持しながら不活性化速度を増強したと決定した。不活性化中の抗原性へのメチサゾンの影響を評価するために、例示的なモデルウイルスCHIKVおよびDENV4を、高濃度H
2O
2(単独酸化系)、二重酸化(本明細書に記載されている)、またはメチサゾンを用いた二重酸化の複数の不活性化手法を用いて処理した。
図28A(チクングニア熱ウイルス(CHIKV))および28B(デング熱ウイルス血清型4(DENV4))のELISAデータによって示されるように、二重酸化手法へのメチサゾンの添加は、不活性化の速度をおよそ10〜20倍増加しながら、中和エピトープに対する損傷を低減することによって抗原性を維持したか、または著しく改善した。
【0346】
具体的に、
図28Aおよび28Bは、特定の態様に従って、メチサゾンが二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持しながら不活性化速度を増強したことを示す。チクングニア熱ウイルス(CHIKV、150mMのNaPO
4を補充したPBS[pH=7.5]中)およびデング熱ウイルス血清型4(DENV4、110mMのNaCl、150mMのNaPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール中)を各々、図に示される不活性化成分で、室温で20時間処理した。ウイルス処理後、抗原保持を、(A)E1およびE2構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるCHIKV特異的サンドイッチELISA、または(B)エンベロープ構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるDENV特異的サンドイッチELISAのいずれかで試験した。ELISA値は、中和エピトープの保持を示し、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。両方のウイルスを、損傷不活性化手法による中和エピトープの損失を示すために、3%のH
2O
2でも処理した。各条件の不活性化半減期を示す。本実施例は、150mMのNaPO
4を用い、これは、本明細書に開示される無機多原子オキシアニオンの増加範囲内の例示的な濃度である。
【0347】
実施例24
(メチサゾンの化学的類似体、またはメチサゾン官能基/下部構造、またはそれらの組み合わせは、二重酸化系ウイルス不活性化中の不活性化および抗原性の維持を増強した)
本実施例に示されるように、出願者は、メチサゾンの化学的類似体、またはメチサゾン官能基/下部構造、またはそれらの組み合わせが、二重酸化系ウイルス不活性化中の不活性化および抗原性の維持を増強したと決定した。
【0348】
上述の通り、メチサゾンは、インビボ抗ウイルス剤として本来開発された化合物である。我々は、いくつかの関連化合物を試験して、それらがワクチン開発のための病原体不活性化に同様の増強をもたらしたかを決定した(
図29A〜C)。例示的なモデルウイルスDENV4で示されるように、イサチンβ−チオセミカルバゾンおよびN−プロピルイサチンβ−チオセミカルバゾンなどのこれらの化合物のいくつかは、二重酸化系においてより優れた抗原性を維持しながら、不活性化の増強された速度を含むメチサゾンと同様の結果を実証した。興味深いことに、チオセミカルバジド部分だけを使用しても、不活性化の増強およびより優れた抗原性が依然として観察されるであろう一方で、イサチンまたはセミカルバジドは、不活性化の速度を増加させそうにないが、それでも不活性化中の酸化的な損傷からのタンパク質抗原の保護を実証する。メチサゾン関連化合物の別々の主な成分(官能基/下部構造)が最適な不活性化を再現するために組み合わせられ得るかを探求するために、我々は、イサチン+チオセミカルバジドまたはイサチン+セミカルバジドの混合物を試験した。イサチン+セミカルバジドが依然として抗原保護を示した一方で、ウイルス不活性化を増強しなかった。対照的に、イサチン+チオセミカルバジドは、急速な不活性化(いずれの成分のみよりも急速)、ならびに大幅に増加した抗原性の両方をもたらした。
【0349】
具体的に、
図29A、29B、および29Cは、特定の態様に従って、メチサゾンの化学的類似体、またはメチサゾン官能基/下部構造、またはそれらの組み合わせが、二重酸化系ウイルス不活性化中の不活性化および抗原性の維持を増強したことを示す。(A)イサチンβ−チオセミカルバゾンクラスの関連化学的化合物を示す。(B)デング熱ウイルス血清型4(DENV4、110mMのNaCl、150mMのNaPO
4[pH=7.5]、2%のD−ソルビトール中)を、異なるMZ様化合物の不在または存在下で、各パネルに示される二重酸化成分(H
2O
2=0.01%、CuCl
2=1μM)で処理し、各化合物を10μMの濃度で使用した。不活性化を評価するために、生存ウイルスを不活性化の1時間後にプラークアッセイにより試験した。点線は、検出の限界を示す。(C)抗原性を定量化するために、エンベロープ構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるDENV特異的サンドイッチELISAを不活性化の20時間後に行った。ELISA値は、中和エピトープの保持を示し、生ウイルス対照のパーセンテージとして表す。本実施例は、150mMのNaPO
4を用い、これは、本明細書に開示される無機多原子オキシアニオンの増加範囲内の例示的な濃度である。
【0350】
実施例25
(メチサゾンが多原子オキシアニオンと相乗して、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持した)
本実施例に示されるように、出願者は、メチサゾンが多原子オキシアニオンと相乗して、二重酸化系ウイルス不活性化中に抗原性を維持したと決定した。
【0351】
二重酸化不活性化中の多原子オキシアニオンと併せたメチサゾンの使用を調査した。
図30に示されるように、メチサゾンは、多原子オキシアニオンと相乗して、単離におけるいずれかの手法によって達成され得るよりも高い抗原性をもたらした。
【0352】
具体的に、
図21は、特定の態様に従って、デング熱ウイルス血清型4(DENV4、110mMのNaCl、2%のD−ソルビトール中)を、メチサゾン化合物(10μM)有りまたは無しで、標準的な(10mM)濃度または高(150mM)Na
2HPO
4濃度(pH=7.5)を使用して、二重酸化手法(H
2O
2=0.002%、CuCl
2=1μM)で、室温で20時間処理したことを示す。処理後、抗原損傷を、エンベロープ構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるDENV特異的サンドイッチELISAを使用して決定した。ELISA値を、未処理の対照の生ウイルスのパーセンテージとして表す。
【0353】
実施例26
(二重酸化系の遷移金属成分と比較して増加レベルのメチサゾンが、二重酸化系の抗原性および不活性化プロファイルを改善した)
本実施例に示されるように、出願者は、二重酸化系の遷移金属成分と比較して増加レベルのメチサゾンが、二重酸化系の抗原性および不活性化プロファイルを改善したと決定した。
【0354】
我々は、二重酸化系におけるメチサゾンおよび遷移金属の相対濃度の影響を考察した(
図31)。遷移金属と比較してメチサゾン濃度が増加することにより、10:1(メチサゾン:遷移金属)の好ましいモル比とともに、保持された抗原性および増加したウイルス不活性化速度の両方において付随する改善が実証されたことを見出した。
【0355】
具体的に、
図31は、特定の態様に従って、二重酸化系の遷移金属成分と比較して増加レベルのメチサゾンが、二重酸化系の抗原性および不活性化プロファイルを改善したことを示す。チクングニア熱ウイルス(CHIKV、150mMのNaPO
4を補充したPBS[pH=7.5]中)を、メチサゾンの減少濃度の存在下で、室温でH
2O
2(0.02%)およびCuCl
2(1μM)で処理した。処理後、ウイルスを、不活性化を評価するためにプラークアッセイにより1時間時点で試験し、E1およびE2構造タンパク質に特異的な2つの中和モノクローナル抗体からなるCFHKV特異的サンドイッチELISAを使用して、20時間時点の抗原性の保持について試験した。プラークアッセイの検出限界を点線で示す。本実施例は、150mMのNaPO
4を用い、これは、本明細書に開示される無機多原子オキシアニオンの増加範囲内の例示的な濃度である。
【0356】
実施例を支持する参考文献が、それらのそれぞれの教示のために参照により本明細書に組み込まれる。
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