【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様を記載する前に、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除いて、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は複数言及を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、「抗原(an antigen)」への言及は複数の抗原を含み、「ウイルス」への言及は1つまたは複数のウイルスおよび当業者に公知のその等価物への言及であり、以下同様である。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、装置および材料をここで記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、本発明に関して使用され得る刊行物に報告される細胞株、ベクターおよび方法論を記載および開示する目的のために参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中のいずれも、本発明が先行発明によってこのような開示に先立つ権利がないことの自認として解釈されるべきではない。
【0010】
本発明は、先行技術に固有の課題を解決し、技術水準における明確な進歩を提供する。概して、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照する、PPV VP2を提供する。
有利なことに、本発明によって提供される実験データは、本発明のPPV VP2サブユニットワクチンが、胎児におけるウイルス血症およびPPV感染の予防において安全で有効であることを開示している。さらに、本発明によって提供される実験データは、本発明のワクチンが異種北米ならびに異種欧州PPVチャレンジ株から防御するので、広範な防御範囲を有することを開示している。
【0011】
有利なことに、本発明によって提供される実験データは、本発明のPPV VP2サブユニットワクチンが全死滅ウイルスと同じくらい有効であり、これは驚くべき効果であることを開示している。しかしながら、PPV VP2で構成される組換えサブユニットワクチンを利用することによって、大規模な不活性化工程(全死滅ウイルスワクチンを生成する際に、天然PPVを不活性化するのに必要である)を回避することができた。
「ブタパルボウイルス」または「PPV」という用語は当業者に周知である。しかしながら、「ブタパルボウイルス」は、一本鎖DNA分子を含むパルボウイルス科内のパルボウイルス属の自律複製ウイルスである。ウイルスのゲノムは3つのカプシドタンパク質(VP1、VP2、VP3)および1つの非構造タンパク質(NS1)をコードする。ブタにおいてPPVによって引き起こされる疾患は通常、SMEDI(死産、ミイラ化、胚死および不妊の頭字語)と呼ばれる。「ブタパルボウイルス」という用語は、ブタパルボウイルスの全ての可能な株、遺伝子型、表現型および血清型を包含する。
【0012】
「ウイルスタンパク質2」または「VP2」という用語は、ブタパルボウイルスのカプシドタンパク質VP2に関する。「ウイルスタンパク質2」または「VP2」という用語は当業者に周知である。
「タンパク質」、「アミノ酸」および「ポリペプチド」という用語は互換的に使用される。「タンパク質」という用語は、天然アミノ酸ならびにその誘導体で構成されるアミノ酸の配列を指す。天然アミノ酸は当技術分野で周知であり、生化学の標準的な教科書に記載されている。アミノ酸配列内で、アミノ酸残基はペプチド結合によって連結されている。さらに、アミノ酸配列の2つの末端は、カルボキシル末端(C末端)およびアミノ末端(N末端)と呼ばれる。「タンパク質」という用語は、本質的に精製されたタンパク質またはさらに他のタンパク質を含むタンパク質調製物を包含する。さらに、この用語はまた、タンパク質断片に関する。さらに、これは化学的に修飾されたタンパク質を含む。このような修飾は人工的修飾または天然修飾、例えばリン酸化、グリコシル化、ミリスチル化などであり得る。
【0013】
「アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照する」という用語は、完全長野生型PPV VP2タンパク質のアミノ酸配列を参照したアミノ酸位置の番号付けに関する。好ましくは、本明細書で言及されるアミノ位置の番号付けは、(N末端)アミノ酸1位のメチオニン残基を含む579アミノ酸残基を有する野生型PPV VP2タンパク質配列に関連する。「アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照する」という用語は、配列番号1に代表的に示される野生型PPV VP2(PPV27a VP2)を包含する。
【0014】
本発明の一態様では、PPV VP2がさらに、
− アミノ酸25位のイソロイシン残基、および/または
− アミノ酸36位のセリン残基、および/または
− アミノ酸37位のイソロイシン残基
を有する。
よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、
さらに
− アミノ酸25位のイソロイシン残基、および/または
− アミノ酸36位のセリン残基、および/または
− アミノ酸37位のイソロイシン残基
を有する、PPV VP2を提供する。
【0015】
本発明の一態様では、アミノ酸位置の番号付けが配列番号1に示されるアミノ酸配列を参照する。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、アミノ酸位置の番号付けは配列番号1に示されるアミノ酸配列を参照する、PPV VP2を提供する。
よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、アミノ酸位置の番号付けは配列番号1に示されるアミノ酸配列を参照する、PPV VP2を提供する。
【0016】
本発明の一態様では、PPV VP2が組換えPPV VP2である。
本明細書で使用される「組換え」という用語は、特に組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子、例えば組換えDNA技術によって産生されるポリペプチドを指す。このような技術の例としては、発現されるタンパク質(例えば、PPV VP2)をコードするDNAを適切な発現ベクター、好ましくはバキュロウイルス発現ベクターに挿入し、今度はこれを使用して宿主細胞をトランスフェクト、またはバキュロウイルス発現ベクターの場合には、宿主細胞を感染させて、DNAによってコードされるタンパク質またはポリペプチドを産生する場合が挙げられる。よって、本明細書で使用される「組換えPPV VP2」という用語は特に、組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を指す。
本発明の一態様では、PPV VP2が組換えバキュロウイルス発現PPV VP2である。
「バキュロウイルス」または「バキュロウイルス系」という用語は当業者に周知である。さらに、「バキュロウイルス」という用語を以下でさらに特定する。
本発明の一態様では、前記PPV VP2が、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる。
【0017】
本発明の一態様では、前記PPV VP2が、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、
配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなるPPV VP2を提供する。
【0018】
本発明の一態様では、前記PPV VP2が配列番号1または配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる、あるいは配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16の少なくとも210個、少なくとも250個または少なくとも300個の連続アミノ酸残基を有する任意の断片含むまたは断片からなる。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、
配列番号1または配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる、あるいは配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16の少なくとも210個、少なくとも250個または少なくとも300個の連続アミノ酸残基を有する任意の断片を含むまたは断片からなるPPV VP2を提供する。
【0019】
本発明の一態様では、前記PPV VP2が、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、
配列番号1または配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなるPPV VP2を提供する。
【0020】
本発明の一態様では、前記PPV VP2が、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。
【0021】
本発明の一態様では、前記PPV VP2が、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、
配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされるPPV VP2を提供する。
【0022】
本発明の一態様では、前記PPV VP2が、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照し、
配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされるPPV VP2を提供する。
【0023】
配列番号4は、グリシンリピートで構成されるVP2コード領域に隣接するように2つのClaI制限酵素部位を有するようにさらに修飾されたコドン最適化PPV 27a VP2ヌクレオチド配列(アミノ酸25位はイソロイシン残基であり、アミノ酸36位はセリン残基であり、アミノ酸37位はイソロイシン残基である)である。しかしながら、ClaI制限酵素部位を、VP2コード領域を破壊しないように導入した。配列番号2は配列番号4に対応するタンパク質配列である。配列番号3はコドン最適化PPV 27a VP2ヌクレオチド配列(ClaI制限酵素部位を含まない)である。配列番号1は配列番号3に対応するタンパク質配列である。配列番号5〜16は、ClaI制限酵素部位を含む(配列番号5〜10)または含まない(配列番号11〜16)さらなるPPV VP2タンパク質配列を開示している。
【0024】
「核酸」または「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書で互換的に使用され、DNA分子、RNA分子、cDNA分子または誘導体を含むポリヌクレオチドを指す。この用語は一本鎖ならびに二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。本発明の核酸は、単離ポリヌクレオチド(すなわち、その自然環境から単離された)および遺伝子組換え形態を包含する。さらに、天然修飾ポリヌクレオチド、例えばグリコシル化もしくはメチル化ポリヌクレオチドまたは人工修飾ポリヌクレオチド、例えばビオチン化ポリヌクレオチドを含む化学修飾ポリヌクレオチドも含まれる。さらに、「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的であり、任意の核酸を指す。「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語はまた具体的には、5つの生物学的に生じる塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)以外の塩基で構成された核酸も含む。
【0025】
「同一性」または「配列同一性」という用語は当技術分野で公知であり、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列、すなわち参照配列と、参照配列と比較される所与の配列間の関係を指す。配列同一性は、所与の配列と参照配列の列間の一致によって決定される最高の配列類似性をもたらすよう最適に整列させた後に、所与の配列を参照配列と比較することによって決定される。このようなアラインメントで、配列同一性は、ポジション・バイ・ポジション(position by position)に基づいて確認される、例えば、特定の位置で、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一であれば、その位置で配列が「同一である」。次いで、このような位置同一性の総数を参照配列中のヌクレオチドまたは残基の総数で割って、配列同一性%を得る。配列同一性は、それだけに限らないが、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、Computational Molecular Biology, Lesk, A. N., ed., Oxford University Press, New York (1988)、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York (1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinge, G., Academic Press (1987);Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991);およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されるものを含む公知の方法によって容易に計算することができる。配列同一性を決定するための好ましい方法は、試験する配列間の最大の一致をもたらすよう設計される。配列同一性を決定するための方法は、所与の配列間の配列同一性を決定する公的に入手可能なコンピュータプログラムで体系化される。このようなプログラムの例としては、それだけに限らないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990)が挙げられる。BLASTXプログラムはNCBIおよび他の供給元から公的に入手可能である(その教示が参照により本明細書に組み込まれる、BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894, Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990))。これらのプログラムは、所与の配列と参照配列との間の最高レベルの配列同一性をもたらすために、デフォルトギャップ質量を用いて配列を最適に整列させる。実例として、参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば85%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%の「配列同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、所与のポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチド当たり最大15個、好ましくは最大10個、さらにより好ましくは最大5個の点突然変異を含み得ることを除いて、所与のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意図している。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドでは、参照配列中のヌクレオチドの最大15%、好ましくは10%、さらにより好ましくは5%が欠失され得るまたは別のヌクレオチドで置換され得る、あるいは参照配列中の全ヌクレオチドの最大15%、好ましくは10%、さらにより好ましくは5%のいくつかのヌクレオチドが参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端位置、または参照配列もしくは参照配列内の1つもしくは複数の連続した群中のヌクレオチド間に個別に散在して、これらの末端位置の間のどこかに生じ得る。同様に、参照アミノ酸配列と少なくとも例えば85%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%の配列同一性を有する所与のアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、所与のポリペプチド配列が参照アミノ酸配列の各100アミノ酸当たり最大15個、好ましくは最大10個、さらにより好ましくは最大5個のアミノ酸変化を含み得ることを除いて、ポリペプチドの所与のアミノ酸配列が参照配列と同一であることを意図している。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%の配列同一性を有する所与のポリペプチド配列を得るために、参照配列中のアミノ酸残基の最大15%、好ましくは最大10%、さらにより好ましくは最大5%が欠失され得るまたは別のアミノ酸で置換され得る、あるいは参照配列中のアミノ酸残基の総数の最大15%、好ましくは最大10%、さらにより好ましくは最大5%のいくつかのアミノ酸が参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置、または参照配列もしくは参照配列内の1つもしくは複数の連続した群中の残基間に個別に散在して、これらの末端位置の間のどこかに生じ得る。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。しかしながら、配列同一性を決定する場合、保存的置換を一致として含めない。
【0026】
「同一性」、「配列同一性」および「同一性%」という用語は本明細書で互換的に使用される。本発明の目的のために、ここでは、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性%を決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、第2のアミノまたは核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸または核酸の配列にギャップを導入することができる)ことが定義される。次いで、対応するアミノ酸またはヌクレオチド位置のアミノ酸またはヌクレオチド残基を比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチド残基によって占められていれば、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性%は、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である[すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置(すなわち、重複する位置)の総数×100]。好ましくは、2つの配列が同じ長さである。
配列比較は、比較する2つの配列の全長にわたって、または2つの配列の断片にわたって行うことができる。典型的には、比較を、比較する2つの配列の全長にわたって行う。しかしながら、配列同一性を、例えば、20、50、100またはそれ以上の連続アミノ酸残基の領域にわたって行うことができる。
【0027】
当業者であれば、2つの配列間の相同性を決定するためにいくつかの異なるコンピュータプログラムが利用可能であるという事実に気づくだろう。例えば、2つの配列間の配列の比較および同一性%の決定を、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸または核酸配列間の同一性%を、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch[J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970)]アルゴリズムを使用して、Blosum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、およびギャップ質量16、14、12、10、8、6または4および長さ質量1、2、3、4、5または6を使用して決定する。当業者であれば、異なるアルゴリズムを使用した場合、これらの全ての異なるパラメータがわずかに異なる結果をもたらすが、2つの配列の全体的な同一性%は有意には変化しないことを認識するだろう。
【0028】
本発明のタンパク質配列または核酸配列をさらに「クエリー配列(query sequence)」として使用して、公的データベースに対して検索を行って、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTNおよびBLASTPプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTタンパク質検索を、BLASTPプログラム、スコア=50、ワード長=3で行って、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップ入りアラインメントを得るために、Gapped BLASTをAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402に記載されるように利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、BLASTPおよびBLASTN)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/の国立バイオテクノロジー情報センターのホームページを参照されたい。
【0029】
さらに、本発明は、本明細書に記載されるPPV VP2を含む免疫原性組成物を提供する。よって、本発明は、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するブタパルボウイルス(PPV)ウイルスタンパク質2(VP2)を含む免疫原性組成物であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照する、組成物を提供する。
【0030】
「免疫原性組成物」という用語は、免疫原性組成物が投与された宿主において免疫学的応答を誘発する少なくとも1つの抗原を含む組成物を指す。このような免疫学的応答は、本発明の免疫原性組成物に対する細胞および/または抗体媒介免疫応答であり得る。好ましくは、免疫原性組成物は免疫応答を誘導し、より好ましくは、PPV感染の臨床徴候の1つまたは複数に対する防御免疫を与える。宿主は「対象」とも記載される。好ましくは、本明細書に記載または言及される宿主または対象のいずれもブタ類(イノシシ科動物の総称)である。
【0031】
通常、「免疫学的応答」には、それだけに限らないが、以下の効果の1つまたは複数が含まれる:本発明の免疫原性組成物に含まれる1つまたは複数の抗原に特異的に向けられた、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞傷害性T細胞および/またはγ−δT細胞の産生または活性化。好ましくは、宿主は防御免疫学的応答または治療的応答のいずれかを示す。
「防御免疫学的応答」または「防御免疫」は、感染宿主によって通常示される臨床徴候の減少もしくは欠如、より速い回復時間および/または感染宿主の組織もしくは体液もしくは排泄物中の感染力の持続時間の低下もしくは病原体力価の低下によって実証される。
【0032】
新たな感染に対する耐性が増強されるおよび/または疾患の臨床的重症度が減少するように宿主が防御免疫学的応答を示す場合、免疫原性組成物は「ワクチン」として記載される。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が単回投与用に製剤化される。
単回投与のための体積は本明細書の他で定義されている。
免疫原性組成物は、好ましくは、局所または全身投与される。従来から使用される適切な投与経路は、経口または非経口投与、例えば鼻腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下ならびに吸入である。しかしながら、化合物の性質および作用様式に応じて、免疫原性組成物を他の経路でも投与することができる。しかしながら、最も好ましくは、免疫原性組成物は筋肉内投与される。
【0033】
本発明の一態様では、免疫原性組成物が筋肉内投与される。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、妊娠および授乳中の未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタにとって安全である。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、30日間の懐胎、好ましくは40日間の懐胎から未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタにとって安全である。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む。
「薬学的に許容される担体」という用語は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤、アジュバント、免疫刺激剤ならびにこれらの組合せを含む。
【0034】
「希釈剤」には水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセリンなどが含まれ得る。等張剤には塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトールおよびラクトースなどが含まれ得る。安定剤にはアルブミンおよびエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩などが含まれる。
本発明の一態様では、薬学的に許容される担体がカルボマーである。
好ましくは、免疫原性組成物は、1種または複数の他の免疫調節剤、例えばインターロイキン、インターフェロンまたは他のサイトカインをさらに含むことができる。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は当業者によって容易に決定され得る。
いくつかの態様では、本発明の免疫原性組成物がアジュバントを含有する。本明細書で使用される「アジュバント」には、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンが含まれ得る。エマルジョンは、特に、軽質流動パラフィン油(ヨーロッパ薬局方(Pharmacopea)型);イソプレノイド油、例えばスクアランまたはスクアレン;アルケン、特にイソブテンまたはデセンのオリゴマー化から生じる油;直鎖アルキル基を含む酸またはアルコールのエステル、より具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)またはプロピレングリコールジオレエート;分岐脂肪酸またはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルに基づき得る。油を乳化剤と組み合わせて使用してエマルジョンを形成する。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタンのエステル、マンニド(mannide)のエステル(例えば、アンヒドロマンニトールオレエート)、グリコールのエステル、ポリグリセロールのエステル、プロピレングリコールのエステル、およびエトキシル化されていてもよいオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸のエステル、およびポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にPluronic製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)およびTodd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)を参照されたい。代表的なアジュバントは、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach” edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の147頁に記載されているSPTエマルジョンおよびこの同じ本の183頁に記載されているエマルジョンMF59である。
【0035】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー、および無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖またはポリアルコールのポルアルケニルエーテルと架橋したアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物はカルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者であれば、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有し、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基によって置き換えられているポリヒドロキシル化化合物と架橋したこのようなアクリルポリマーを記載する米国特許第2909462号も参照することができる。好ましい基は、2〜4個の炭素原子を含有するもの、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基である。不飽和基自体が他の置換基、例えばメチルを含有していてもよい。Carbopol;(BF Goodrich、Ohio、米国)という名称で販売されている製品が特に適している。これらはアリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋している。中でも、Carbopol 974P、934Pおよび971Pを挙げることができる。Carbopol 971Pの使用が最も好ましい。無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーの中には、無水マレイン酸とエチレンのコポリマーである、コポリマーEMA(Monsanto)がある。これらのポリマーの水への溶解によって酸溶液が得られ、これは、免疫原性組成物、免疫学的組成物またはワクチン組成物自体を組み込むアジュバント溶液を得るために、好ましくは生理的pHに中和される。
【0036】
さらなる適切なアジュバントには、それだけに限らないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、Blockコポリマー(CytRx、Atlanta、GA)、SAF−M(Chiron、Emeryville、CA)、モノホスホリル脂質A、アブリジン脂質−アミンアジュバント、大腸菌(E.coli)(組換えまたはその他)由来の熱不安定性エンテロトキシン、コレラ毒素、IMS 1314もしくはムラミルジペプチド、または天然もしくは組換えサイトトキシンもしくはその類似物、または内因性サイトカイン放出の刺激剤などが含まれる。
【0037】
アジュバントを、1投与量当たり約100μg〜約10mgの量、好ましくは1投与量当たり約100μg〜約10mgの量、より好ましくは1投与量当たり約500μg〜約5mgの量、さらにより好ましくは1投与量当たり約750μg〜約2.5mgの量、最も好ましくは1投与量当たり約1mgの量で添加することができると予想される。あるいは、アジュバントは、最終製品の約0.01体積%〜50体積%の濃度、好ましくは約2体積%〜30体積%の濃度、より好ましくは約5体積%〜25体積%の濃度、さらにより好ましくは約7体積%〜22体積%の濃度、最も好ましくは10体積%〜20体積%の濃度であり得る。
【0038】
本発明の一態様では、免疫原性組成物が約0.1μg〜50μgのPPV VP2抗原を含む。好ましくは、免疫原性組成物が、約0.2μg〜40μg、より好ましくは約0.3μg〜30μg、より好ましくは約0.4μg〜20μg、さらにより好ましくは約0.5μg〜10μgを含み、0.5μg、0.75μg、1μg、1.25μg、1.5μg、2μg、2.5μg、3μg、3.5μg、4μg、4.5μg、5μg、5.5μg、6μg、6.5μg、7μg、7.5μg、8μg、8.5μg、9μg、9.5μgまたは10μgのPPV VP2抗原が最も好ましい。
本発明の一態様では、免疫原性組成物がワクチンである。
「ワクチン」という用語は、本明細書の他で既に記載されている。しかしながら、新たな感染に対する耐性が増強されるおよび/または疾患の臨床的重症度が減少するように宿主が防御免疫学的応答を示す場合、免疫原性組成物は「ワクチン」として記載される。
【0039】
本発明の一態様では、免疫原性組成物が同種および/または異種チャレンジから防御する。有利なことには、本発明によって提供される実験データが、本発明のワクチンが異種北米ならびに異種欧州チャレンジ株から防御するので、広範な防御範囲を有することを開示している。
「防御する」および「予防」および「予防すること」という用語は本出願で互換的に使用される。これらの用語は他で定義されている。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が北米および/または欧州単離株によるチャレンジから防御する。
「北米および欧州単離株」という用語は当業者に周知である。「北米および/または欧州単離株」という用語は、北米および欧州で分離されたまたは分離される全ての単離株を包含する。
【0040】
本発明の一態様では、免疫原性組成物が北米および/または欧州単離株に対して交差防御性である。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、必要な対象においてPPV感染によって引き起こされる臨床徴候の治療および/または予防において有効である。「治療および/または予防」、「臨床徴候」および「必要な」という用語は他で定義されている。
さらに、本発明は、本明細書に記載されるPPV VP2をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
さらに、本発明は、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0041】
さらに、本発明は、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列を含むまたはヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを提供する。
さらに、本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
本発明の一態様では、ベクターが発現ベクターである。
本発明の一態様では、ベクターがバキュロウイルスである。
「ベクター」という用語は当業者に周知である。「ベクター」という用語は、当技術分野で知られているように、遺伝物質を宿主細胞に伝達するために使用されるポリヌクレオチド構築物、典型的にはプラスミドまたはウイルスを指す。ベクターは、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミドまたはファージであり得る。本明細書で使用されるベクターは、DNAまたはRNAのいずれかで構成され得る。いくつかの実施形態では、ベクターがDNAで構成される。「発現ベクター」は、適切な環境中に存在する場合に、ベクターによって保有される1つまたは複数の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を指示することができるベクターである。ベクターは、好ましくは自律複製可能である。典型的には、発現ベクターは転写プロモーター、遺伝子および転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は通常、プロモーターの制御下に置かれ、遺伝子はプロモーターと「作動可能に連結している(operably linked to)」と言われる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結している」という用語は、調節エレメントと遺伝子またはそのコード領域との間の連結を記載するために使用される。典型的には、遺伝子発現は、1つまたは複数の調節エレメント、例えば、限定されないが、構成的または誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーの制御下に置かれる。遺伝子またはコード領域は、調節エレメントと「作動可能に連結している(operably linked toまたはoperatively linked to)」または「作動可能に会合している(operably associated with)」と言われ、これは遺伝子またはコード領域が調節エレメントによって制御されているまたは影響を受けることを意味する。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現をもたらす場合、プロモーターはコード配列と作動可能に連結している。
【0043】
発現用のベクター(または組換え体)を作製および/または使用するためのベクターおよび方法は、特にDNA発現ベクターに関して、米国特許第4603112号、同第4769330号、同第5174993号、同第5505941号、同第5338683号、同第5494807号、同第4722848号、同第5942235号、同第5364773号、同第5762938号、同第5770212号、同第5942235号、同第382425号、PCT公開国際公開第94/16716号、国際公開第96/39491号、国際公開第95/30018号;Paoletti, "Applications of pox virus vectors to vaccination: An update, "PNAS USA 93: 11349-11353, October 1996;Moss, "Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety," PNAS USA 93: 11341-11348, October 1996;Smithらの米国特許第4745051号(組換えバキュロウイルス);Richardson, C. D. (Editor), Methods in Molecular Biology 39, "Baculovirus Expression Protocols" (1995 Humana Press Inc.);Smith et al., "Production of Human Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector", Molecular and Cellular Biology, December, 1983, Vol. 3, No. 12, p. 2156-2165;Pennock et al., "Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector, "Molecular and Cellular Biology March 1984, Vol. 4, No. 3, p. 406;欧州特許第0370573号;1986年10月16日に出願された米国特許出願番号第920197号;欧州特許公開番号第0265785号;米国特許第4769331号(組換えヘルペスウイルス);Roizman, "The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors," PNAS USA 93:11307-11312, October 1996;Andreansky et al., "The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors," PNAS USA 93: 11313-11318, October 1996;Robertson et al., "Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes", PNAS USA 93: 11334-11340, October 1996;Frolov et al., "Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications," PNAS USA 93: 11371-11377, October 1996;Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991;米国特許第5591439号、同第5552143号;国際公開第98/00166号;共に1996年7月3日に出願された許可された米国出願番号第08/675556号および同第08/675566号(組換えアデノウイルス);Grunhaus et al., 1992, "Adenovirus as cloning vectors," Seminars in Virology (Vol. 3) p. 237-52, 1993;Ballay et al. EMBO Journal, vol. 4, p. 3861-65、Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990;Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 42434;PCT国際公開第91/11525号;Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561、Science, 259: 1745-49, 1993;およびMcClements et al., "Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease", PNAS USA 93: 11414-11420, October 1996;ならびに米国特許第5591639号、同第5589466号および同第5580859号ならびに国際公開第90/11092号、国際公開第93/19183号、国際公開第94/21797号、国際公開第95/11307号、国際公開第95/20660号;Tang et al., Nature, and Furth et al., Analytical Biochemistryに開示される方法により得るまたはこれと同様であり得る。国際公開第98/33510号;Ju et al., Diabetologia, 41: 736-739, 1998(レンチウイルス発現系);Sanfordらの米国特許第4945050号;Fischbachetら(Intracel);国際公開第90/01543号;Robinson et al., Seminars in Immunology vol. 9, pp. 271-283 (1997)、(DNAベクター系);Szokaらの米国特許第4394448号(DNAを生細胞中に挿入する方法);McCormickらの米国特許第5677178号(細胞変性ウイルスの使用);および米国特許第5928913号(遺伝子送達用ベクター);ならびに本明細書に引用される他の文献も参照されたい。
【0044】
「調節エレメント」および「発現制御エレメント」という用語は互換的に使用され、特定の宿主生物中の作動可能に連結したコード配列の発現に影響を及ぼすことができる核酸分子を指す。これらの用語は広義に使用され、プロモーター、RNAポリメラーゼと転写因子の基本的な相互作用に必要なコアエレメント、上流エレメント、エンハンサーおよび応答エレメントを含む、転写を促進または調節する全てのエレメントを網羅する。原核生物の代表的な調節エレメントには、プロモーター、オペレーター配列およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞で使用される調節エレメントには、限定されないが、宿主細胞におけるコード配列の発現および/またはコードされるポリペプチドの産生をもたらすおよび/または調節する、転写および翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナル、配列内リボソーム進入部位(IRES)、2A配列などが含まれ得る。
【0045】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼの結合を可能にし、遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列である。典型的には、プロモーターは、遺伝子の転写開始部位の近位の、遺伝子の5’非コード領域に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内の配列エレメントは通常、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴付けられる。プロモーターの例としては、それだけに限らないが、細菌、酵母、植物、ウイルスおよび哺乳動物(ヒトを含む)由来のプロモーターが挙げられる。プロモーターは誘導性、抑制性および/または構成的であり得る。誘導性プロモーターは、温度変化などの培養条件のある変化に応じて、その制御下でDNAからの増加したレベルの転写を開始する。
本明細書で使用する場合、「エンハンサー」という用語は、転写開始部位に対するエンハンサーの距離または配向にかかわらず、転写効率を増加させることができるタイプの調節エレメントを指す。
【0046】
限定されないが、例えばSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. (1989))に記載される制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製およびDNA配列決定の標準的な技術を含む、当技術分野で周知の任意の適切な遺伝子工学技術を使用して、ウイルスベクターの作製を達成することができる。
【0047】
「バキュロウイルス」という用語は当業者に周知である。しかしながら、本明細書で使用する場合、「バキュロウイルス」は特に、所望のタンパク質を発現するように設計された組換えバキュロウイルスベクターを使用して昆虫細胞内で所望のタンパク質を産生するための系を意味する。バキュロウイルス発現系は、一般に、昆虫細胞内での組換えタンパク質発現を達成するのに必要な全てのエレメントを含み、典型的には、所望のタンパク質を発現させるためのバキュロウイルスベクターの操作、操作したバキュロウイルスベクターの昆虫細胞への導入、所望のタンパク質が発現されるように操作したバキュロウイルスベクターを含む昆虫細胞の適切な増殖培地中での培養、およびタンパク質の回収を含む。典型的には、バキュロウイルスベクターの操作は、選択された遺伝子のコード配列を非必須ウイルス遺伝子のプロモーターの後ろに挿入した組換えバキュロウイルスの構築および単離を含み、現在使用されているバキュロウイルス発現系のほとんどがオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcMNPV)((Virology 202 (2), 586-605 (1994)、NCBI受託番号:NC_001623)の配列に基づく。バキュロウイルス発現系は当技術分野で周知であり、例えば、“Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual” by David R. O'Reilly, Lois Miller, Verne Luckow, pub. by Oxford Univ. Press (1994)、“The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide” by Linda A. King, R. D. Possee, published by Chapman & Hall (1992)に記載されている。組換えタンパク質を産生するためのバキュロウイルス系の代表的な非限定的な例は、例えば国際公開第2006/072065号に記載されている。
【0048】
好ましいバキュロウイルスベクターには、特に産生細胞が昆虫細胞であるならば、BaculoGold(BD Biosciences Pharmingen、San Diego、Calif.)またはDiamondBac(Sigma Aldrich)などのバキュロウイルスが含まれる。バキュロウイルス発現系が好ましいが、他の発現系が本発明の目的のために働くことが当業者によって理解される。
さらに、本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞を提供する。好ましくは、ベクターがバキュロウイルスである。
「細胞」という用語は、当業者に周知である。「細胞」という用語は、動物細胞、原生生物細胞、植物細胞または真菌細胞などの真核細胞を包含する。好ましくは、真核細胞は哺乳動物細胞、例えばCHO、BHKもしくはCOS、または真菌細胞、例えば出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、または昆虫細胞、例えばSf9である。
【0049】
本発明の一態様では、細胞が昆虫細胞である。
本明細書で使用される「昆虫細胞」は、昆虫種に由来する細胞または細胞培養物を意味する。ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)およびイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)種由来の昆虫細胞が本発明に関して特に興味深い。
好ましくは、本明細書で言及される昆虫細胞は、ヨトウガ(Sf)細胞またはヨトウガ由来の細胞株の細胞であり、より好ましくはSf9細胞およびSf+細胞からなる群から選択される。それぞれ、本明細書で言及される昆虫細胞は、好ましくはヨトウガ(Sf)細胞またはヨトウガ由来の細胞株の細胞であり、より好ましくはSf9細胞およびSf+細胞からなる群から選択される。
【0050】
本発明の一態様では、昆虫細胞がSf9細胞およびSf+細胞からなる群から選択される。
さらに、本発明は、本明細書に記載されるPPV VP2を含むウイルス様粒子を提供する。
「ウイルス様粒子」(VLP)という用語は、ウイルス由来の非複製空ウイルスシェルを包含する。VLPは一般的に、それだけに限らないが、カプシド、コート、シェル、表面および/またはエンベロープタンパク質、あるいはこれらのタンパク質由来の粒子形成ポリペプチドと呼ばれるタンパク質などの1つまたは複数のウイルスタンパク質で構成される。VLPは、適切な発現系におけるタンパク質の組換え発現で自発的に形成し得る。ウイルスタンパク質の組換え発現後のVLPの存在は、当技術分野で公知の従来の技術を使用して、例えば電子顕微鏡、X線結晶構造解析などによって検出することができる。例えば、Baker et al., Biophys. J. (1991) 60: 1445-1456;Hagensee et al., J. Virol. (1994) 68:4503-4505を参照されたい。例えば、低温電子顕微鏡法を当のVLP調製物のガラス化水性試料に行い、画像を適切な露光条件下で記録することができる。
【0051】
「ウイルス様粒子」(VLP)という用語はまた、複数のPPV VP2で構成されたVLPを包含する。
本発明の一態様では、ウイルス様粒子が本明細書に記載される複数のPPV VP2で構成される。
さらに、本発明は、細胞を本明細書に記載されるベクターでトランスフェクトするステップを含む、本明細書に記載されるPPV VP2を作製する方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞、好ましくは昆虫細胞を、本明細書に記載されるバキュロウイルスで感染させるステップを含む、本明細書に記載されるPPV VP2を産生する方法を提供する。
【0052】
組成物を、所望であれば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサー装置で提供することができる。パックは例えば、金属またはプラスチック箔を含む、例えばブリスターパックである。パックまたはディスペンサー装置に、投与、好ましくは動物、特にブタ類への投与のための説明書を付随させることができる。ヒト投与についての製造、使用または販売の政府機関による承認を反映する、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定される形態の通知を1つまたは複数のこのような容器に付随させることができる。
よって、本発明は、本明細書に記載されるPPV VP2または免疫原性組成物を含むキットを提供する。
本発明の一態様では、キットが、ブタ類の疾患の治療および/または予防のための指示書面をさらに含む。
【0053】
本発明の一態様では、キットが、PPV感染の治療および/または予防のための指示書面をさらに含む。
本発明の別の態様では、本発明のPPVウイルスが不活性化されて、本明細書に記載されるウイルスタンパク質2(VP2)による全不活性化ウイルスが得られる。
よって、本発明はまた、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するウイルスタンパク質2(VP2)を有する不活性化ブタパルボウイルス(PPV)であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照する、PPVに言及する。
【0054】
さらに、本発明はまた、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなるウイルスタンパク質2(VP2)を有する不活性化ブタパルボウイルス(PPV)に言及する。
さらに、本発明はまた、本明細書に記載されるウイルスタンパク質2(VP2)を有する不活性化ブタパルボウイルス(PPV)を含む免疫原性組成物に言及する。
よって、本発明はまた、
− アミノ酸228位のグルタミン酸残基もしくはグルタメート残基、および/または
− アミノ酸414位のセリン残基、および/または
− アミノ酸419位のグルタミン残基、および/または
− アミノ酸436位のスレオニン残基
を有するウイルスタンパク質2(VP2)を有する不活性化ブタパルボウイルス(PPV)を含む免疫原性組成物であって、
アミノ酸位置の番号付けは野生型PPV VP2のアミノ酸配列を参照する、組成物に言及する。
【0055】
よって、本発明はまた、配列番号1、配列番号2または配列番号5〜16のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなるウイルスタンパク質2(VP2)を有する不活性化ブタパルボウイルス(PPV)を含む免疫原性組成物に言及する。
任意の従来の不活性化法を本発明の目的のために使用することができる。よって、不活性化を、当業者に公知の化学的および/または物理的処理によって行うことができる。好ましい不活性化法には、バイナリーエチレンイミン(binary ethylenimine)(BEI)に環化された2−ブロモエチレンアミンヒドロブロミド(BEA)の溶液の添加を含む環化バイナリーエチレンイミン(BEI)の添加が含まれる。好ましいさらなる化学不活性化剤は、それだけに限らないが、Triton X−100、デオキシコール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、β−プロピオラクトン、チメロサール、フェノールおよびホルムアルデヒド(ホルマリン)を含む。しかしながら、不活性化は中和ステップも含み得る。好ましい中和剤には、それだけに限らないが、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなどが含まれる。
【0056】
好ましいホルマリン不活性化条件には、約0.02%(v/v)〜2.0%(v/v)、より好ましくは約0.1%(v/v)〜1.0%(v/v)、さらにより好ましくは約0.15%(v/v)〜0.8%(v/v)、さらにより好ましくは約0.16%(v/v)〜0.6%(v/v)、最も好ましくは約0.2%(v/v)〜0.4%(v/v)のホルマリン濃度が含まれる。インキュベーション時間はPPVの耐性に依存する。一般に、適切な培養系でPPVの増殖を検出することができなくなるまで、不活性化工程を行う。
好ましくは、本発明の不活性化PPVは、好ましくは本明細書の上に記載される濃度を使用してホルマリン不活性化される。
本発明の不活性化PPVを、Nature, 1974, 252, 252-254 or Journal of Immunology, 1978, 120, 1109-13に記載されるような公知の技術を使用してリポソームに組み込むことができる。本発明の別の実施形態では、本発明の不活性化PPVを、多糖、ペプチド、タンパク質などまたはこれらの組合せなどの適切な生物学的化合物にコンジュゲートすることができる。
【0057】
本発明はまた、医薬品、好ましくはワクチンを調製するための、
− 本明細書に記載されるPPV VP2、
− 本明細書に記載される免疫原性組成物、
− 本明細書に記載されるポリヌクレオチド、
− 本明細書に記載されるベクター、
− 本明細書に記載される細胞、
− 本明細書に記載されるバキュロウイルス、および/または
− 本明細書に記載されるウイルス様粒子
の使用に言及する。
本発明はまた、PPVによる感染の治療および/または予防、PPVによる感染によって引き起こされる臨床徴候の減少、予防および/または治療、ならびにPPVによる感染によって引き起こされる疾患の治療および/または予防のための医薬品を調製するための、本明細書に記載されるPPV VP2または本明細書に記載される免疫原性組成物の使用に言及する。
【0058】
さらに、本発明は、本明細書に記載される免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、対象を免疫する方法を提供する。
「免疫すること」という用語は、免疫原性組成物を免疫する対象に投与し、それによってこのような免疫原性組成に含まれる抗原に対する免疫学的応答を引き起こすことによる能動免疫に関する。
好ましくは、免疫が群れの特定のPPV感染の発生率を低下させる、および/または特定のPPV感染によって引き起こされるもしくは特定のPPV感染に関連する臨床徴候の重症度を減少させる。
【0059】
さらに、本明細書で提供される免疫原性組成物による必要な対象の免疫化は、PPV感染による対象の感染の予防をもたらす。さらにより好ましくは、免疫化はPPV感染に対する有効で長期持続性の免疫学的応答をもたらす。前記期間は、1カ月超、好ましくは2カ月超、好ましくは3カ月超、より好ましくは4カ月超、より好ましくは5カ月超、より好ましくは6カ月超の間続くことが理解されるだろう。免疫化が免疫した全ての対象において有効となり得るわけでないことが理解されるべきである。しかしながら、この用語は、群れの対象のかなりの部分が有効に免疫化されることを要する。
【0060】
好ましくは、通常、すなわち、免疫なしでは、PPV感染によって引き起こされるまたはPPV感染に関連する臨床徴候を発症するであろう対象の群れが本明細書において想起される。群れの対象が有効に免疫されているかどうかは、当業者によってさらなる面倒なしに決定することができる。好ましくは、所与の群れの対象の少なくとも33%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%における臨床徴候が、免疫されていないまたは本発明の前に入手可能であった免疫原性組成物で免疫されているが、その後特定のPPVによって感染した対象と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%、発生率または重症度において減少する場合、免疫が有効であるとする。
【0061】
さらに、本発明は、必要な対象においてPPV感染によって引き起こされる臨床徴候を治療および/または予防する方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
有利なことに、本明細書の実施例節に示されるように、本明細書で提供される免疫原性組成物が、必要な対象においてPPV感染によって引き起こされる臨床徴候を治療および/または予防するのに有効であることが判明した。
「治療および/または予防」という用語は、群れにおける特定のPPV感染の発生率の減少および/または特定のPPV感染によって引き起こされるもしくは特定のPPV感染に関連する臨床徴候の重症度の減少を指す。よって、「治療および/または予防」という用語はまた、有効量の本明細書で提供される免疫原性組成物を受けていない動物の群と比較した、このような有効量の免疫原性組成物を受けた動物の群における、特定のPPVに感染した群れの中の動物の数の減少(=特定のPPV感染の発生率の減少)および/または通常PPV感染に関連するもしくはPPV感染によって引き起こされる臨床徴候の重症度の減少を指す。
【0062】
「治療および/または予防」は一般的に、有効量の本発明の免疫原性組成物を、このような治療/予防を必要とするまたはこのような治療/予防から利益を得ることができるであろう対象または対象の群れに投与することを含む。「治療」という用語は、いったん対象または群れの少なくともいくらかの動物が当該PPVに既に感染しており、当該PPV感染によって引き起こされるまたは当該PPV感染に関連するある臨床徴候を既に示したら、有効量の免疫原性組成物を投与することを指す。「予防」という用語は、対象がPPVに感染する前または少なくともこのような動物もしくは動物の群の中のいずれもPPVによる感染によって引き起こされるもしくはPPVによる感染に関連する臨床徴候を示していない場合の対象への投与を指す。「予防(prophylaxis)」および「予防すること(preventing)」という用語は本出願で互換的に使用される。
【0063】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、対象において免疫応答を誘発するまたは誘発することができる抗原の量を意味するが、これに限られない。このような有効量は、群れにおける特定のPPV感染の発生率を減少させるおよび/または特定のPPV感染の臨床徴候の重症度を減少させることができる。
好ましくは、処置されていないまたは本発明の前に入手可能であった免疫原性組成物によって処置されているがその後特定のPPVに感染した対象と比較して、臨床徴候が、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%、発生率または重症度において減少する。
【0064】
本明細書で使用される「臨床徴候」という用語は、PPVからの対象の感染の徴候を指す。感染の臨床徴候は選択される病原体に依存する。このような臨床徴候の例としては、それだけに限らないが、胚および/または胎児感染および死亡を特徴とする一過性白血球減少症および生殖障害、またはこれらの組合せが挙げられる。直接観察可能な臨床徴候の例としては、産仔数減少、同腹仔当たりの胚もしくは胎児のミイラ化の増加、胚もしくは胎児の自己溶解、胚もしくは胎児のサイズの減少、胚もしくは胎児の質量減少などまたはこれらの組合せが挙げられる。このような臨床徴候のさらなる例としては、それだけに限らないが、ウイルス血症の増加、標的組織および血液中のウイルス量の増加、同畜舎内の動物(penmate)へのPPVの伝播/拡散の増加など、またはこれらの組合せが挙げられる。
好ましくは、処置されていないまたは本発明の前に入手可能であった免疫原性組成物によって処置されているが、その後特定のPPVに感染した対象と比較した、処置対象における発生率または重症度において減少した臨床徴候は、胚および/または胎児感染および死亡を特徴とする一過性白血球減少症および生殖障害、またはこれらの組合せを指す。
【0065】
本明細書で使用される「必要とする(in need)」または「必要な(of need)」という用語は、投与/治療が、健康もしくは臨床徴候における増強もしくは改善、または本発明による免疫原性組成物を受ける動物(その胚または胎児を含む)の健康に対する任意の他のプラスの医学的効果に関連することを意味する。
「減少させること(reducing)」または「減少した(reduced)」または「減少(reduction)」または「低下させる(lower)」という用語は、本出願で互換的に使用される。「減少」という用語は、臨床徴候が、処置されていない(免疫されていない)が、その後特定のPPVに感染した対象と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%減少することを意味する。
【0066】
さらに、本発明は、同じ種の非免疫対照群の対象と比較して、対象における生殖障害を減少させる方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
有利なことに、本明細書の実施例部分に示されるように、本明細書で提供される免疫原性組成物は、生殖障害を減少させるのに有効であることが判明した。
さらに、本発明は、同じ種の非免疫対照群の対象と比較して、対象における胚および胎児死亡を減少させる方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
有利なことに、本明細書の実施例節に示されるように、本明細書で提供される免疫原性組成物は、胚および胎児死亡を減少させるのに有効であることが判明した。
【0067】
さらに、本発明は、胚および胎児をブタパルボウイルス感染から防御するために繁殖ブタ(経産雌ブタおよび未経産雌ブタ)を能動免疫する方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される免疫原性組成物を前記ブタ(経産雌ブタおよび未経産雌ブタ)に投与するステップを含む方法を提供する。
本発明の一態様では、前記対象がブタ類(イノシシ科動物の総称)、ウシ、ネコおよびイヌからなる群から選択される。
好ましくは、前記対象がブタ類である。ブタ類は雌および雄動物を含むことが理解されるべきである。精液はPPVを含有し得、そのために、雌および雄繁殖動物が「ブタ類」という単語に包含される。よって、「ブタ類」という単語は、雄ブタなどの雄動物ならびに未経産雌ブタおよび雌ブタなどの雌動物を含む。
本明細書で使用される「未経産雌ブタ」という用語は、最初の懐胎/妊娠前および中のイノシシ・ブタ類(porcine)、好ましくは(家畜)ブタ(pig)を指す。対照的に、本明細書で使用される「経産雌ブタ」という用語は、最初の懐胎/妊娠のプラスの結果としての最初の分娩後のイノシシ・ブタ類、好ましくは(家畜)ブタを指す。
【0068】
本発明の一態様では、前記対象はブタ類、好ましくは未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタである。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が1回投与される。
単回投与は1回だけ投与されると理解される。
【0069】
1対象当たりの投与体積は、ワクチン接種経路および対象の年齢に依存する。好ましくは、単回投与が、約0.2ml〜2.5ml、より好ましくは約0.2ml〜2.0ml、さらにより好ましくは約0.2ml〜1.75ml、さらにより好ましくは約0.2ml〜1.5ml、さらにより好ましくは約0.4ml〜1.25ml、さらにより好ましくは約0.4ml〜1.0mlの総体積を有し、単回0.5ml投与または1.0ml投与が最も好ましい。最も好ましくは、単回投与が0.5ml、1ml、1.5mlまたは2mlの総体積を有する。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が2回投与以上投与される。
本明細書の実施例節で示されるように、本明細書で提供される免疫原性組成物は、2回投与の必要な対象への投与後に有効であることが判明した。
【0070】
しかしながら、免疫原性組成物を2回投与以上投与することができ、初回投与を2回目の(ブースター)投与の投与前に投与する。好ましくは、2回目の投与を、初回投与の少なくとも15日後に投与する。より好ましくは、2回目の投与を、初回投与の15日〜40日後に投与する。さらにより好ましくは、2回目の投与を、初回投与の少なくとも17日後に投与する。さらにより好ましくは、2回目の投与を、初回投与の17日〜30日後に投与する。さらにより好ましくは、2回目の投与を、初回投与の少なくとも19日後に投与する。さらにより好ましくは、2回目の投与を、初回投与の19日〜25日後に投与する。最も好ましくは、2回目の投与を、初回投与の少なくとも21日後に投与する。さらにより好ましくは、2回目の投与を、初回投与の約21日後または初回投与後21日目に投与する。2回投与レジメンの好ましい態様では、初回投与と2回目の投与の両方の免疫原性組成物を同じ量投与する。好ましくは、各投与が上に指定される好ましい量内にあり、初回投与および2回目の投与について1mlまたは2mlの用量が最も好ましい。初回投与および2回目の投与レジメンに加えて、代替実施形態は、さらなるその後の投与を含む。例えば、これらの態様では、3回目、4回目または5回目の投与が投与され得るだろう。好ましくは、その後の3回目、4回目および5回目の投与レジメンが初回投与と同じ量投与され、投与間の時間枠が上述の初回投与と2回目の投与との間のタイミングと一致している。
【0071】
1対象当たりの投与体積はワクチン接種経路および対象の年齢に依存する。好ましくは、総体積が、1投与当たり約0.2ml〜5ml、より好ましくは約0.5ml〜3.0ml、さらにより好ましくは約1.0ml〜2.5ml、さらにより好ましくは約1.0ml〜2.0mlである。最も好ましくは、体積が1投与当たり1ml、1.5ml、2mlまたは2.5mlである。
免疫原性組成物は、好ましくは局所または全身投与される。従来から使用される適切な投与経路は経口または非経口投与、例えば鼻腔内、静脈内、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、皮下ならびに吸入である。しかしながら、化合物の性質および作用様式に応じて、免疫原性組成物を他の経路によっても投与することができる。例えば、このような他の経路には、皮内、静脈内、血管内、動脈内、腹腔内、髄腔内、気管内、皮内、心臓内、小葉内(intralobally)、肺葉内、髄内、肺内、直腸内および膣内が含まれる。しかしながら、より好ましくは、免疫原性組成物が皮下または筋肉内投与される。最も好ましくは、免疫原性組成物が筋肉内投与される。
【0072】
本発明の一態様では、前記免疫原性組成物が筋肉内投与される。
本発明の一態様では、前記免疫原性組成物が未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。
好ましくは、免疫原性組成物が、少なくとも3カ月齢、より好ましくは少なくとも4カ月齢、最も好ましくは少なくとも5カ月齢の未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。
【0073】
本発明の一態様では、免疫原性組成物が少なくとも3カ月齢の未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。
本発明の一態様では、前記免疫原性組成物が妊娠前の未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。
2ショット体制では、前記免疫原性組成物の2回目の投与が、好ましくは交配/授精の2、3、4または5週間前、最も好ましくは交配/授精の約3週間前に未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。好ましくは、前記免疫原性組成物の初回投与が、2回目の投与の2、3、4、5または6週間前、最も好ましくは2回目の投与の約3週間前に未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。しかしながら、2ショット体制を適用した後、好ましくは、未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに3、4、5、6、7または8カ月毎、最も好ましくは約6カ月毎に再ワクチン接種する。
【0074】
本発明の一態様では、前記免疫原性組成物が、妊娠および授乳中の未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタに投与される。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、妊娠および授乳中の未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタにとって安全である。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、30日間の懐胎、好ましくは40日間の懐胎から未経産雌ブタおよび/または経産雌ブタにとって安全である。
好ましくは、本発明の免疫原性組成物が、0.1μg〜50μg、好ましくは0.25μg〜25μg、より好ましくは0.5μg〜12.5μg、さらにより好ましくは0.5μg〜5μg、最も好ましくは0.5μg〜2μgのPPV VP2抗原を含む。より好ましくは、本発明の免疫原性組成物が、約0.25μg、0.5μg、0.75μg、1μg、1.25μg、1.5μg、1.75μg、2μg、2.25μg、2.5μg、2.75μg、3μg、3.5μg、4μg、4.5μgまたは5μgの量の本発明のPPV VP2抗原を含む。
【0075】
本発明の一態様では、免疫原性組成物が、0.1μg〜50μgのPPV VP2抗原、好ましくは0.5μg〜10μgのPPV VP2抗原を含む。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が同種および/または異種チャレンジから防御する。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が北米および/または欧州単離株によるチャレンジから防御する。
本発明の一態様では、免疫原性組成物が北米および/または欧州単離株に対して交差防御性である。
本発明の一態様では、前記方法が、同じ種の非免疫対照群の対象と比較して、胚および/または胎児感染および死亡を特徴とする一過性白血球減少症および生殖障害の減少、またはこれらの組合せからなる群から選択される有効性パラメータの改善をもたらす。
本発明の一態様では、前記方法が、同じ種の非免疫対照群の対象と比較して、産仔数減少、同腹仔当たりの胚もしくは胎児のミイラ化の増加、胚もしくは胎児の自己溶解、胚もしくは胎児のサイズの減少、胚もしくは胎児の質量減少、ウイルス血症の増加、標的組織および血液中のウイルス量の増加、同畜舎内の動物へのPPVの伝播/拡散の増加、またはこれらの組合せからなる群から選択される有効性パラメータの改善をもたらす。