特許第6876138号(P6876138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876138自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876138
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/348 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   F04C2/348
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-546171(P2019-546171)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公表番号】特表2020-508412(P2020-508412A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2017054286
(87)【国際公開番号】WO2018153468
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】515069336
【氏名又は名称】ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ドクター スカルチーニ, ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ディパーチェ, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ペッレグリーニ, エマニュエル
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510082(JP,A)
【文献】 特開2003−307185(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102015006403(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/30− 2/352
F04C 18/30−18/352
F04C 18/48−18/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジング(12)と、
回転可能なロータリング(16)と、
概ね半径方向の複数のベーンスロット(50)を含む回転可能且つ併進不能のロータハブ(14)と、
前記ロータリング(16)と前記ロータハブ(14)とを機械的に接続する複数のペンデュラムベーン(30)と、
を備える自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)であって、
各々の前記ペンデュラムベーン(30)は、前記ロータリング(16)の対応する円形アンダーカット凹部(70)と共に振り子の支点(33)を画定する円形の振り子頭部(32)と、対応する前記ベーンスロット(50)内で半径方向に併進可能且つ枢動可能に配置された円形の振り子足部(34)と、前記振り子頭部(32)及び前記振り子足部(34)を接続するベーン脚部(35)と、を有し、
前記ベーンスロット(50)の当接スロット壁(54)には、当該ベーンスロット(50)の開口領域において接触ノーズ(58)が設けられ、
前記ペンデュラムベーン(30)には、回転接触セクタ(CO)において前記接触ノーズ(58)と当接する接触路面(36´)を有する接触路(36)が設けられ、
前記接触路面(36´)の半径方向の内側端部は、内側突出部(40)を画定し、
概ね平らな前記当接スロット壁(54)には、潜凹部(56)が設けられ、
前記内側突出部(40)は、一時的に前記潜凹部(56)に潜り込み、
前記ペンデュラムベーン(30)の前記内側突出部(40)と前記当接スロット壁(54)との間の機械的接触が、回転位置とは無関係に、常に回避される、
自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項2】
前記ロータハブ(14)又は前記ロータリング(16)は、外部エンジンによって機械的に駆動され、
併進可能且つ回転不能な制御リング(18)は、最小偏心位置と最大偏心位置との間で前記ポンプハウジング(12)に対して併進可能に設けられ、
前記ロータリング(16)は、前記制御リング(18)によって回転可能に且つ随伴的併進が可能なように支持される、請求項1に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項3】
前記内側突出部(40)は、前記制御リング(18)の前記最大偏心位置で前記潜凹部(56)に潜り込む、請求項2に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項4】
前記内側突出部(40)は、前記接触セクタ(CO)内の前記潜凹部(56)に潜り込む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項5】
前記接触セクタ(CO)は、2つの隣接する前記ペンデュラムベーン(30)の間の角度によって画定されるチャンバセクタ(CH)よりも少なくとも1.0倍大きい、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項6】
前記接触路面(36´)の半径方向の外側端部が外側突出部(38)を画定し、前記ロータリング(16)が前記円形アンダーカット凹部(70)に隣接して半径方向凹部(72)を備え、それぞれの外側突出部(38)が対応する前記半径方向凹部(72)に一時的に潜り込むようになっている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項7】
前記潜凹部(56)の深さ(d)は、前記当接スロット壁(54)の通常の平坦面を基準にして少なくとも0.1mmである、請求項1に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【請求項8】
前記ロータハブ(14)は、前記ロータリング(16)を駆動している、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された液体を供給する、好ましくは加圧された潤滑液体で自動車の駆動エンジンを潤滑するための自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプに関する。より好ましくは、本発明は、電気的に駆動されるのではなく、自動車の駆動エンジンによって機械的に駆動される機械式のペンデュラム型ポンプに関し、好ましくは、ポンプの回転速度とは独立に容積性能が可変である、可変ペンデュラム型ポンプとして提供される。
【背景技術】
【0002】
円周壁に沿って単に摺動するロータベーンを有する従来のベーンポンプと比較して、ペンデュラム型ポンプは、ベーンにおける摩耗が非常に少なく、ペンデュラムベーンによって分離されたポンプチャンバが流体に対して高密封であるので、より高い油圧品質を有する。ペンデュラム型ポンプは、回転可能なロータハブ並びに回転可能なロータリングを有し、ペンデュラムベーンがロータリングとロータハブとを半径方向に接続して、それらの回転経路で振り子振動を提供する機械的仕組みであるので、比較的複雑である。
【0003】
ロータハブと偏心ロータリングとを接続する複雑な伝達ギアを使用しない場合は、ロータハブがロータリングを駆動するか、又はロータリングがペンデュラムベーンを介してロータハブを駆動する必要がある。特許文献1及び特許文献2は両方とも、典型的な自動車用潤滑剤ペンデュラム型ポンプを開示している。特許文献1には、ロータリングを最大偏心位置と最小偏心位置との間で併進させるための併進可能な制御リングを備えた可変ペンデュラム型ポンプが開示されている。回転力は、ロータハブ又はロータリングからペンデュラムベーンに伝達される。ロータリングを支持する制御リングの最大偏心位置では、ポンプ性能が最大化され、その結果、最大回転力がロータハブとロータリングとの間、特に被駆動ロータ部とペンデュラムベーンとの間で伝達される。しかし、回転力をロータハブ又はロータリングからペンデュラムベーンに伝達する接触セクタは、一時的に回転力をペンデュラムベーンが一つも駆動されないか又は一つだけ駆動される程度に小さくすることができる。これは、比較的高い機械的摩耗を引き起こす伝達力ピークをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012219847号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2642073号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、接触セクタが増大した自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプを提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプは、回転可能なロータリングと、概ね半径方向の複数のベーンスロットを含む回転可能且つ併進不能なロータハブと、ロータリングとロータハブとを機械的に接続する複数のペンデュラムベーンとを備えた静止ポンプハウジングを備えている。回転可能なロータリングは、併進可能又は併進不能に提供され得る。回転可能なロータリングが併進不能に設けられている場合、回転可能なロータリングは常に最大偏心位置にある。回転可能なロータリングが併進可能に提供される場合、回転可能なロータリングは、最大偏心位置と最小偏心位置との間で併進され、位置決めされ得る。ペンデュラムベーンは、回転ポンプ室を互いに分離し、ロータハブとロータリングとの間で回転力を伝達する。ロータハブのベーンスロットは、必ずしも正確な半径方向の向きを備えている必要はないが、スロットの方向性は大型ラジアル部品では必須である。
【0008】
ペンデュラム型ポンプには歯車がないので、ロータハブとロータリングとの間で回転力が伝達されることはなく、又、外部歯車を介して回転力が伝達されることもない。被駆動ロータハブからロータリングへの回転力の伝達は、ペンデュラムベーンのみを介して行われる。
【0009】
各々のペンデュラムベーンは、ロータリングの、対応する円形アンダーカット凹部と共に振り子の支点を画定する円形の振り子頭部を含む。ペンデュラムベーンは、ロータリングにおいて、併進不能であるが、枢動可能に結合される。振り子の支点は、ペンデュラムベーンの半径方向の外側端部に設けられる。
【0010】
円形の振り子足部がペンデュラムベーンの半径方向の内側端部に設けられている。振り子足部は、半径方向に併進可能に配置され、また、対応する直線ベーンスロット内で枢動可能に配置される。ベーンスロットは、平行且つ平坦な複数のスロット壁を有する実質的に直線状のベーンスロットである。円形の振り子足部は、閉じた円形ではなく、振り子足部が常にベーンスロット内で実質的に液密に案内され支持されることを確実にする円形及び円筒形部分を備えている。円形部分は、常に、対応するベーンスロット壁との摺動接触線を画定する。振り子足部の他の部分は、必ずしも円形である必要はない。
【0011】
振り子頭部と振り子足部とは、ベーン脚部によって接続されている。ペンデュラムベーンは、好ましくは、一体化した単一部品として提供される。
【0012】
ベーンスロットは、概ね平坦である当接スロット壁を備えている。接触ノーズがベーンスロットの開口領域に設けられ、ペンデュラムベーンとロータハブとの間で回転力を伝達する。ロータハブがロータリングを駆動しているときは、接触ノーズがベーンスロットの開口縁部の遅角側に設けられる。ロータリングがロータハブを駆動しているときは、接触ノーズがベーンスロットの開口縁部の進角側に設けられる。
【0013】
接触ノーズは、ベーンスロットの軸方向長さにわたって延在する軸方向プロファイルとして提供される。ペンデュラム型ポンプの軸方向は、ロータハブの回転軸の方向である。
【0014】
ペンデュラムベーンには、ポンプ接触セクタ内で接触ノーズと当接する接触路面によって画定される接触路が設けられる。最大偏心位置では、接触路面が接触ノーズと力伝達接触するのは、ポンプ接触セクタ内においてのみであり、ポンプ接触セクタの外側では、接触路面は接触ノーズと接触していない。ポンプ接触セクタが広くなるほど、より多くの接触路面と接触ノーズとの対が、ロータハブとペンデュラムベーンとの間で回転力を伝達する。
【0015】
接触路面の半径方向内側端部は、ペンデュラムベーン脚部の本体から突出する突出部を画定する。接触路の半径方向の広がりは、比較的長く、好ましくは、接触路が好ましくは凹面を画定するように、何らかの形で湾曲している。接触路の半径方向の広がりが長くなればなるほど、半径方向内側の突出部は、ベーン脚部から接線方向/円周方向に、より大きく突出する。
【0016】
接触路に対向して協動する当接スロット壁は、振り子足部が移動しながら接触することができる領域では完全に平面であるが、ベーンスロットの半径方向の外側端部領域には潜凹部が設けられる。潜凹部は、接触ノーズから半径方向で内側に、好ましくは接触ノーズに隣接して設けられる。
【0017】
突出部は、回転位置及び偏心とは無関係に、ペンデュラムベーンの半径方向の内側突出部と当接スロット壁との間の機械的接触が常に回避されるように、潜凹部内に一時的に潜り込む。潜凹部は、接触セクタが実質的に拡大されるように、接触路の半径方向の広がりを実質的に拡大させることを可能にする。その結果、各ペンデュラムベーンの平均した機械的な力である伝達荷重がそれに応じて低減され、その結果、ポンプの信頼性及び寿命が増大し、及び/又はより高い総回転力をロータハブとペンデュラムベーンとの間で伝達することができる。
【0018】
接触セクタは、接触路面が接触ノーズと力伝達接触をしている回転セクタである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、ロータハブ又はロータリングは、機械的に駆動される。ペンデュラム型ポンプは、別個の電気モータによって駆動されるのではなく、自動車装置の駆動エンジンであり得るエンジンによって機械的に駆動される。ペンデュラム型ポンプは駆動エンジンによって機械的に駆動されるので、ペンデュラム型ポンプの回転速度は、例えば500〜5000rpmの広い範囲内で変化する。その結果、ペンデュラム型ポンプの回転速度は、ペンデュラム型ポンプの要求される液圧性能と一致しない。
【0020】
従って、ペンデュラム型ポンプは、最小偏心位置と最大偏心位置との間でポンプハウジングに対して併進可能である、併進可能且つ回転不能な制御リングを備えている。偏心とは、ロータハブ及びロータリングの回転軸の距離である。ロータリングは、制御リングによって回転可能且つ随伴的併進可能に支持される。併進経路は、直線状であってもよいし、円形であってもよい。ポンプの容積は、制御リングを適切な位置に移動させることで、適切な容積性能を規定して適合させることができる。可変ペンデュラム型ポンプにおける幾何学的制約は厳しく、そのため、大きな接触セクタを実現することは困難である。半径方向から見て比較的長い接触路は、ロータハブとペンデュラムベーンとの間の回転力の比較的滑らかな伝達を提供する。
【0021】
最大偏心状態が高い回転力を伝達するために最も重要な状態であるので、ペンデュラムベーンの内側突出部は、少なくとも併進可能な制御リングの最大偏心位置で対応する潜凹部内に潜り込むことが好ましい。更に、突出部は任意の偏心位置で凹部内に潜り込むことがより好ましい。
【0022】
好ましい実施形態では、接触路の半径方向の広がりは非常に大きく、接触セクタはチャンバセクタの少なくとも1.1倍である。チャンバセクタとは、隣接する2つのペンデュラムベーンがなす角度又は隣接するベーンスロット間の角度によって定義される領域である。このことにより、常に少なくとも1つのペンデュラムベーンが、あらゆる偏心度、特に最大偏心度で、ロータハブとロータリングとの間で回転力を伝達する。その結果、回転力は連続的に伝達され、ベーンにおける高い伝達力ピークが回避される。
【0023】
好ましくは、接触路面の半径方向の外側端部は、外側突出部を画定する。ロータリングには、対応する円形アンダーカット凹部に隣接して半径方向凹部が設けられており、外側突出部が、対応する半径方向凹部に一時的に潜入することにより、半径方向における接触路の範囲を最大に延ばすことを可能として、接触セクタを最大にすることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、当接スロット壁の潜凹部の深さは、当接スロット壁の通常の平坦面を基準にして少なくとも0.1mmである。
【0025】
好ましくは、ロータハブは、ロータリングを駆動している。ロータハブは、外部装置によって機械的又は電気的に駆動される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプの開放した上面図である。
図2】接触セクタCOにおけるペンデュラムベーンを示す図1の拡大図である。
図3】接触セクタCO内へ回転する直前のペンデュラムベーンを示す図1の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、機械的に駆動されるように設けられた、開いた、すなわちカバー蓋のない自動車用液体ペンデュラム型ベーンポンプ10を示す。ポンプ10は、いわゆる可変ペンデュラム型ポンプであり、その容積性能は、回転速度とは無関係に制御することができる。
【0028】
ペンデュラム型ポンプ10は、駆動エンジン、例えば内燃機関に機械的に接続され、それにより駆動することができる。ペンデュラム型ポンプ10は、例えば、駆動エンジンの潤滑のために、及び/又は作動力を油圧装置に供給するために、加圧潤滑液を供給する。
【0029】
ペンデュラム型ポンプ10は、併進可能且つ回転不能な制御リング18、回転可能且つ併進可能なロータリング16、及び回転可能且つ併進不能なロータハブ14を収容する金属ポンプハウジング12を備えている。制御リング18は、制御リング18の移動経路が正確に線形ではなく、円形であるように、枢動部品20の周りに枢動可能に設けられる。制御リング18の併進位置は、2つの反作用する油圧制御室22、24と予荷重ばね26とによって規定される。
【0030】
制御リング18は、回転可能なロータリング16を支持し、ロータリング16の併進位置を規定し、それによってロータハブ14に対するロータリング16の偏心を規定する。これにより、ロータリング16は、図1に示すように、最大偏心位置と、偏心がゼロに近いか、又はゼロでさえあり得る最小偏心位置との間で併進され、位置決めされ得る。その結果、最小容積性能のみが実現され得るか、又は容積性能が全く実現され得ない。
【0031】
ペンデュラム型ポンプ10には、ロータリング16とロータハブ14とを機械的に接続する7つのペンデュラムベーン30が設けられている。ロータハブ14は、外部動力装置、例えば内燃機関によって機械的に駆動され、ペンデュラムベーン30を直接駆動し、ロータリング16を間接的に駆動する。ロータハブ14は、ほぼ円筒形の表面15を有し、ペンデュラムベーン30を案内するための7つの半径方向のベーンスロット50を備えている。ベーンスロット50は、円筒形の表面15にスロット開口を形成する。
【0032】
ペンデュラムベーン30は、2つの機能、すなわち、回転ポンプ室を互いに分離する機能と、回転力をロータハブ14からロータリング16に伝達してロータリング16をロータハブ14と共に回転させる機能と、を有する。
【0033】
各ペンデュラムベーン30は、その半径方向の外側端部に、円形の振り子頭部32を備え、この円形の振り子頭部32はロータリング16の対応する円形アンダーカット凹部70に枢動可能に支持される。円形の振り子頭部32及び円形アンダーカット凹部70は共に振り子の支点33を画定し、ペンデュラムベーン30はロータリング16に対して振動することができる。
【0034】
ペンデュラムベーン30は、その半径方向の内側端部に円形の振り子足部34を備える。振り子足部34は完全に円形ではなく、振り子足部の中心に対して一定の脚部半径rを有する2つの円形部分341、342を備えている。振り子足部34は、対応するベーンスロット50内で概ね液密に枢動可能且つ半径方向に併進可能に設けられる。
【0035】
ベーンスロット50は、半径方向のスロット中心軸と平行に設けられた4つの半径方向のスロット壁によって画定され、回転するロータハブ14及び静止ハウジングの側壁部によって画定される。ベーンスロット50は、遅角ベーンスロット壁54とロータハブ14によって画定される平行な進角ベーンスロット壁52との間にスロット幅wを有する。スロット幅wは、振り子足部34の脚部半径rの約2倍(w=2×r)である。
【0036】
遅角ベーンスロット壁は、当接スロット壁54を画定し、ベーンスロット50の開口領域の接触ノーズ58を備えている。接触ノーズ58は、その軸方向の広がり全体にわたって一定の断面を有し、少なくとも数ミリメートルの半径を有する。接触ノーズ58は、鋭いエッジではない。
【0037】
ペンデュラムベーン30は、ベーン30の遅角側に設けられ、対応するベーン30及びベーンスロット50が接触セクタCO内で回転するときに、対応する接触ノーズ58と接触する凹状の接触路面36´によって画定される接触路36を備える。接触セクタCOは、回転セクタであり、接触路面36´は、回転力をロータハブ14からペンデュラムベーン30に伝達し、ベーン30を介してロータリング16に伝達するために、対応する接触ノーズ58と機械的且つ力伝達的に接触している。
【0038】
本実施形態では、接触セクタCOは、隣接する2つのベーンスロット50又は隣接する2つのペンデュラムベーン30によって囲まれた角度によって規定されるチャンバセクタCHの角度の1.5倍大きい。これは、図1に示すような最大偏心位置において、ロータハブ14からロータリング16に回転力を伝達するペンデュラムベーン30の平均数が、最大偏心位置で約1.5であることを意味する。他の偏心位置では、接触セクタは最大偏心位置よりも小さい。
【0039】
接触路面36´の半径方向の内側端部は、振り子頭部32と振り子足部34とを接続するベーン脚部35からに突出する内側突出部40を画定する。ペンデュラムベーン30は、単一のベーン本体31によって画定される。
【0040】
概ね平坦面である当接スロット壁54には、接触ノーズ58から半径方向で内側に隣接する凹状の潜凹部56が設けられている。潜凹部56は、当接スロット壁54の通常の平坦面から0.5mmを超える深さdを有する。図1に示す最大偏心位置では、接触セクタCO内の接触段階中に、内側突出部40は、潜凹部56の表面に接触することなく潜凹部56内に潜り込む。
【0041】
接触路面36´の半径方向の外側端部は、ベーン脚部35から突出する外側突出部38を画定する。外側突出部38は、円形の振り子頭部32に隣接して半径方向で内側に設けられている。ロータリング16には、円形アンダーカット凹部70に隣接して半径方向凹部72が設けられている。半径方向凹部72及び円形アンダーカット凹部70は、ロータリング16の内周面74に設けられている。外側突出部38は、ロータの回転中、対応する半径方向凹部72内に一時的に入り込むが、接触セクタCOにおいては入らないことが好ましい。
図1
図2
図3