特許第6876145号(P6876145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876145ビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876145
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20210517BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20210517BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20210517BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H01L21/316 X
   C07F7/10 F
   H01L21/318 B
   H01L21/318 C
   C23C16/42
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-553053(P2019-553053)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公表番号】特表2020-516067(P2020-516067A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】KR2018003655
(87)【国際公開番号】WO2018182309
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0040078
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0055632
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0035010
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514145604
【氏名又は名称】ディーエヌエフ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DNF Co. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン セ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビョン−イル
(72)【発明者】
【氏名】イ サン−ド
(72)【発明者】
【氏名】イ サム ドン
(72)【発明者】
【氏名】イ サン イク
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョン ウン
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0280724(US,A1)
【文献】 特開2008−074847(JP,A)
【文献】 特表2014−523638(JP,A)
【文献】 特開2014−237644(JP,A)
【文献】 特表2016−526051(JP,A)
【文献】 特開昭62−283980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/205、21/31−21/32、
21/365、21/469−21/475、21/86、
C07F 7/00− 7/30、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1が、下記化学式2または化学式3で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
[化学式1]
【化1】

(前記化学式1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであるか、RとRおよびRとRは、それぞれ独立して、互いに連結されて環を形成してもよく;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルである。)

[化学式2]
【化2】

[化学式3]
【化3】

(前記化学式2または化学式3中、
Rは、(C1−C3)アルキルまたは(C2−C3)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり、
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C3)アルキル、または(C2−C3)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【請求項2】
前記化学式2および化学式3において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素または(C1−C7)アルキルであり、
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C3)アルキル、または(C2−C3)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数である、請求項1に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項3】
前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式4または5で表される、請求項1に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
[化学式4]
【化4】

[化学式5]
【化5】

(前記化学式4および化学式5中、
Rは、(C1−C3)アルキルまたは(C2−C3)アルケニルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C3)アルキル、または(C2−C3)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【請求項4】
前記化学式4および5において、Rは(C1−C3)アルキルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C5)アルキルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数である、請求項に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項5】
前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式6または7で表される、請求項1に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
[化学式6]
【化6】

[化学式7]
【化7】

(前記化学式6および化学式7中、
Rは、(C1−C3)アルキルまたは(C2−C3)アルケニルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C3)アルキル、または(C2−C3)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【請求項6】
前記化学式6および化学式7において、Rは(C1−C3)アルキルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C3)アルキル、または(C2−C3)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数である、請求項に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項7】
前記ビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物が、下記化合物から選択されるものである、請求項1に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】
【請求項8】
請求項1乃至の何れか一項に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いたシリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
原子層蒸着法、気相蒸着法、有機金属化学気相蒸着法、低圧気相蒸着法、プラズマ強化気相蒸着法、またはプラズマ強化原子層蒸着法により蒸着が行われる、請求項に記載のシリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項10】
シリコン含有薄膜が、シリコン酸化膜、シリコンオキシ炭化膜、シリコン窒化膜、シリコンオキシ窒化膜、シリコン炭窒化膜、またはシリコン炭化膜である、請求項に記載のシリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項11】
a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30〜500℃に維持するステップと、
b)基板に、請求項1乃至の何れか一項に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)前記シリコン含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入してシリコン含有薄膜を形成するステップと、を含む、請求項に記載のシリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記反応ガスは、50〜1000Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給する、請求項11に記載のシリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項13】
下記化学式1が、下記化学式2または化学式3で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物。
[化学式1]
【化13】

(前記化学式1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであるか、RとRおよびRとRは、それぞれ独立して、互いに連結されて環を形成してもよく;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルである。)

[化学式2]
【化14】

[化学式3]
【化15】

(前記化学式2または化学式3中、
Rは、(C1−C3)アルキルまたは(C2−C3)アルケニルであり、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり、
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C3)アルキル、または(C2−C3)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法に関し、より詳細には、薄膜蒸着用前駆体として、特定の化合物であるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン含有薄膜は、半導体分野において、種々の蒸着工程によりシリコン膜(silicon)、シリコン酸化膜(silicon oxide)、シリコン窒化膜(silicon nitride)、シリコン炭窒化膜(Silicon carbonitride)、およびシリコンオキシ窒化膜(Silicon oxynitride)などの様々な形態で製造されており、その応用分野が広範囲である。
【0003】
特に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜は、非常に優れた遮断特性および耐酸化性のため、装置の製作において、絶縁膜、拡散防止膜、ハードマスク、エッチング停止層、シード層、スペーサー、トレンチアイソレーション、金属間誘電物質、および保護膜層に用いられている。
【0004】
近年、多結晶シリコン薄膜が薄膜トランジスタ(thin film transistor、TFT)、太陽電池などに用いられており、その応用分野が多様化しつつある。
【0005】
シリコンが含有されている薄膜を製造するための公知の代表的な技術としては、混合されたガス形態のシリコン前駆体と反応ガスが反応して基板の表面に膜を形成したり、表面上に直接反応して膜を形成したりする化学気相蒸着(MOCVD)法や、ガス形態のシリコン前駆体が基板の表面に物理的または化学的に吸着された後、反応ガスを順に投入することにより膜を形成する原子層蒸着(ALD)法が挙げられ、これを応用した低圧化学気相蒸着(LPCVD)法、および低温で蒸着が可能なプラズマを利用した化学気相蒸着(PECVD)法と原子層蒸着(PEALD)法などの種々の薄膜製造技術が次世代半導体およびディスプレイ素子の製造工程に適用され、超微細パターンの形成や、ナノ単位の厚さで均一且つ優れた特性を有する極薄膜の蒸着に用いられている。
【0006】
シリコン含有薄膜を形成するために用いられる前駆体は、シラン、シラン塩化物、アミノシラン、およびアルコキシシラン形態の化合物が代表的であり、具体例としては、ジクロロシラン(dichlorosilane:SiHCl)およびヘキサクロロジシラン(hexachlorodisilane:ClSiSiCl)などのシラン塩化物形態の化合物、トリシリルアミン(trisilylamine:N(SiH)、ビスジエチルアミノシラン(bis−diethylaminosilane:HSi(N(CHCH)、およびジイソプロピルアミノシラン(di−isopropylaminosilane:HSiN(i−C)などが挙げられる。これらは、半導体の製造およびディスプレイの製造における量産工程で用いられている。
【0007】
しかしながら、素子の超高集積化による素子の微細化とアスペクト比の増加、および素子材料の多様化により、所望の低い温度で、均一で且つ薄い厚さを有し、優れた電気的特性を有する超微細薄膜を形成する技術が求められており、従来のシリコン前駆体を用いた600℃以上の高温工程、ステップカバレッジ、エッチング特性、薄膜の物理的および電気的特性が問題となっている。そこで、より優れた新規なシリコン前駆体の開発と薄膜の形成方法が研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第6071830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、シリコンを含有する薄膜の前駆体として使用可能なビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含有するシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いたシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、シリコン含有薄膜の前駆体として使用可能なビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、薄膜蒸着前駆体として優れた物性を有するビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物をシリコン含有薄膜蒸着前駆体として含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供するものであって、本発明のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式1で表される。
【0013】
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであるか、RとRおよびRとRは、それぞれ独立して、互いに連結されて環を形成してもよく;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルである。)
【0014】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり、Rは水素であってもよい。
【0015】
薄膜蒸着用として優れた特性を有するという点から、好ましくは、本発明の一実施形態に係るビス(アミノシリル)アルキルアミンは、下記化学式2または下記化学式3で表されてもよい。
【0016】
[化学式2]
【化2】
【0017】
[化学式3]
【化3】
(前記化学式2または化学式3中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり、
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C5)アルキル、または(C2−C5)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【0018】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式2または化学式3において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素または(C1−C5)アルキルであり、R11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C5)アルキル、または(C2−C5)アルケニルであり;nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数であってもよい。
【0019】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式4または5で表されてもよい。
【0020】
[化学式4]
【化4】
【0021】
[化学式5]
【化5】
(前記化学式4および化学式5中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【0022】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式4または5において、Rは(C1−C5)アルキルであり;R〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C5)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数であってもよい。
【0023】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式6または7で表されてもよい。
【0024】
[化学式6]
【化6】
【0025】
[化学式7]
【化7】
(前記化学式6および化学式7中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【0026】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式6または化学式7にいおいて、Rは(C1−C5)アルキルであり;R11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C5)アルキル、または(C2−C5)アルケニルであり;nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数であってもよい。
【0027】
具体的に、本発明の一実施形態に係るビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化合物から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0029】
また、本発明は、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いたシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【0030】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、原子層蒸着(ALD)法、気相蒸着(CVD)法、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)法、低圧気相蒸着(LPCVD)法、プラズマ強化気相蒸着(PECVD)法、またはプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法により行われてもよく、シリコン含有薄膜は、シリコン酸化膜(SiO)、シリコンオキシ炭化膜(SiOC)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコンオキシ窒化膜(SiON)、シリコン炭窒化膜(SiCN)、またはシリコン炭化膜(SiC)であってもよい。
【0031】
具体的に、本発明のシリコン含有薄膜の製造方法は、a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30〜500℃に維持するステップと、
b)基板に前記本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)前記シリコン含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入してシリコン含有薄膜を形成するステップと、を含んでもよく、反応ガスは、プラズマパワー50〜1000Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給されてもよい。
【0032】
また、本発明は、本発明の前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を提供する。
【0033】
より効率的で、且つ高品質の薄膜を蒸着するという点から、好ましくは、前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、前記化学式2または化学式3で表されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、常温で液体であって、揮発性が高く、熱的安定性に非常に優れたビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を前駆体として含むことで、より低いパワーおよび成膜温度条件下で、高い純度および耐久性を有する高品質のシリコン含有薄膜を提供することができる。
【0035】
また、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いたシリコン含有薄膜の製造方法は、低い成膜温度条件下でも、優れた熱的安定性、蒸着率、および応力強度を実現することができ、さらには、それから製造されたシリコン含有薄膜は、炭素、酸素、水素などの不純物の含量が最小化され、純度が高く、非常に優れた物理的・電気的特性を有するとともに、フッ化水素に対する優れた耐性、優れた水分透湿度、および優れたステップカバレッジを有するシリコン含有薄膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1および2で製造されたビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物の蒸気圧測定結果を示した図である。
図2】実施例1および2で製造されたビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物の熱重量分析結果を示した図である。
図3】実施例3〜実施例5で製造されたシリコン酸化薄膜の蒸着された膜を赤外分光計分析により分析した結果を示した図である。
図4】実施例6〜実施例9で製造されたシリコン窒化薄膜の蒸着された膜を赤外分光計分析により分析した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、常温で液体であって、揮発性が高く、且つ熱的安定性が高いため、シリコン含有薄膜の形成に非常に有用な前駆体として用いられるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供するものであって、本発明のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式1で表される。
【0038】
[化学式1]
【化13】
(前記化学式1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであるか、RとRおよびRとRは、それぞれ独立して、互いに連結されて環を形成してもよく;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルである。)
【0039】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、前記化学式1で表される薄膜蒸着用前駆体を含むことで、低温でも成膜が可能であるとともに、耐久性の高い高品質の薄膜を容易に製造することができる。
【0040】
さらに、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、化学式1で表される薄膜蒸着用前駆体を含むことで、高い薄膜蒸着率で薄膜の蒸着が可能であり、膜が優れた応力特性および水分透湿度を有する。
【0041】
これは、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物に含まれている前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物が、2つのアミノシリル基および1つのアルキルまたはアルケニル基を置換基として有することにより、揮発性が高いながらも、優れた熱的安定性を有するためであると判断される。
【0042】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり、Rは水素であってもよい。
【0043】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式2または下記化学式3で表されてもよい。
【0044】
[化学式2]
【化14】
【0045】
[化学式3]
【化15】
(前記化学式2または化学式3中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり、
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C5)アルキル、または(C2−C5)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【0046】
本発明の前記化学式2または3で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、2つのアミノシリル官能基および1つのアルキルまたはアルケニル基が置換されることにより、熱的に安定しているとともに、2つのアミノシリル官能基の何れか1つ以上に、少なくとも1つ以上の水素が置換されたシラザン骨格を有しているため、常温で液体であって、揮発性が高い。したがって、シリコン含有薄膜の形成において非常に有用に用いられることができる。
【0047】
具体的に、本発明のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、シラザン骨格を有する化合物であって、2つのアミノシリル官能基(
【化16】

【化17】
、または
【化18】

【化19】
)を必須に有し、そのうち1つのアミノシリル官能基のシリルが、1つ以上の水素を必須に有する官能基(
【化20】
または
【化21】
)を有することで、薄膜蒸着用前駆体として非常に優れた効果を奏することができる。
【0048】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式2または化学式3において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素または(C1−C5)アルキルであり、R11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C5)アルキル、または(C2−C5)アルケニルであり;nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数であってもよい。
【0049】
より好ましくは、本発明の前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式4または化学式5で表されてもよい。
【0050】
[化学式4]
【化22】
【0051】
[化学式5]
【化23】
(前記化学式4および化学式5中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【0052】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式4および5において、Rは(C1−C5)アルキルであり;R〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C5)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数であってもよい。より好ましくは、ビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は化学式4で表されてもよく、化学式4において、Rは(C1−C3)アルキルであり;R〜Rは、それぞれ独立して、(C1−C3)アルキルであってもよい。
【0053】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式6または7で表されてもよい。
【0054】
[化学式6]
【化24】
【0055】
[化学式7]
【化25】
(前記化学式6および化学式7中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、1〜7の整数である。)
【0056】
より好ましくは、化学式6および化学式7において、Rは(C1−C5)アルキルであり;R11〜R14は、それぞれ独立して、水素、(C1−C5)アルキル、または(C2−C5)アルケニルであり;nおよびmは、互いに独立して、1〜4の整数であってもよく、好ましくは、Rは(C1−C5)アルキルであり;R11〜R14は、それぞれ独立して、(C1−C5)アルキルであってもよく、nおよびmは、互いに独立して、1〜3の整数であってもよい。より好ましくは、ビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は化学式6で表されてもよく、化学式6において、Rは(C1−C3)アルキルであり;R11〜R14は、それぞれ独立して、(C1−C3)アルキルであってもよい。
【0057】
本発明のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、シラザン骨格における2つのアミノシリル基のシリル基が2個の水素または4個の水素を有する場合に、シリコン含有薄膜蒸着用前駆体としてより優れた反応性および熱的安定性を有し、さらに高品質の薄膜を製造することができる。
【0058】
より優れた特性を有する薄膜蒸着用前駆体の点から、好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式4で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式4−1で表されてもよい。
【0059】
[化学式4−1]
【化26】
(前記化学式4−1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであるか、RとRは、それぞれ独立して、互いに連結されて環を形成してもよく;
は、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルである。)
【0060】
より優れた特性を有する薄膜蒸着用前駆体の点から、好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式6で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式6−1で表されてもよい。
【0061】
[化学式6−1]
【化27】
(前記化学式6−1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
およびRは、それぞれ独立して、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであるか、RとRは、互いに連結されて環を形成してもよい。)
【0062】
これに限定されるものではないが、本発明の一実施形態に係る化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、具体的に、下記の化合物であってもよい。
【0063】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0064】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、前記化学式1のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を薄膜蒸着用前駆体として必ず含み、シリコン含有薄膜蒸着用組成物中のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物の含量は、薄膜の成膜条件または薄膜の厚さ、特性などを考慮して、当業者が認識できる範囲内で含まれてもよい。
【0065】
本発明に記載の「アルキル」は、直鎖状、分岐状、および環状の飽和、不飽和炭化水素を意味し、1〜7個の炭素原子、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ネオブチル、ペンチルなどを含む。
【0066】
本明細書に記載の「ハロゲン」は、ハロゲン族元素を意味し、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0067】
本発明に記載の、単独、または他の基の一部としての用語「アルケニル」は、2〜7個の炭素原子、および1個以上の炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖状、分岐状、または環状の炭化水素ラジカルを意味する。より好ましいアルケニルラジカルは、2〜5個の炭素原子を有する低級アルケニルラジカルである。最も好ましい低級アルケニルラジカルは、約2〜3個の炭素原子を有するラジカルである。また、アルケニル基は、任意の利用可能な付着点で置換されてもよい。アルケニルラジカルの例としては、エテニル、プロペニル、アリル、ブテニル、および4−メチルブテニルを含む。用語「アルケニル」および「低級アルケニル」は、シス(cis)およびトランス(trans)配向、または代替的に、EおよびZ配向を有するラジカルを含む。
【0068】
本発明に記載の「RとRおよびRとRは、互いに独立して、連結されて環を形成してもよく」という記載は、詳細に、RとRは互いに連結されて環を形成するが、RとRが環を形成しない場合、逆に、RとRは環を形成しないが、RとRが互いに連結されて環を形成する場合、またはRとRおよびRとRの両方がそれぞれ環を形成する場合を何れも含み、形成された環は、Nを含む脂環族環または芳香族環であり、好ましくは脂環族環であってもよい。
【0069】
本発明に記載の「脂環族環」は、環状に結合された構造の有機化合物のうち、芳香族化合物ではない化合物を意味する。
【0070】
本発明の前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、当業者が認識できる範囲内で可能な方法により製造されてもよい。
【0071】
また、本発明は、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いたシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【0072】
本発明のシリコン含有薄膜の製造方法は、常温および常圧で液体であって、揮発性が高く、熱的安定性に優れた前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を前駆体として含む、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いることで、取り扱いが容易であり、種々の薄膜が製造可能であるとともに、低温および低いパワーでも、高い蒸着率で高純度、優れた水分透湿度、および優れた薄膜応力を有するシリコン含有薄膜を製造することができる。
【0073】
さらに、本発明の製造方法により製造されたシリコン含有薄膜は、耐久性および電気的特性に優れるとともに、フッ化水素に対する耐性、およびステップカバレッジも優れている。
【0074】
本発明のシリコン含有薄膜の製造方法において、シリコン含有薄膜は、本技術分野における当業者が認識できる範囲内で可能な方法であれば何れも可能であるが、好ましくは、原子層蒸着(ALD)法、気相蒸着(CVD)法、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)法、低圧気相蒸着(LPCVD)法、プラズマ強化気相蒸着(PECVD)法、またはプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法により形成されてもよく、薄膜蒸着がより容易であり、製造された薄膜が優れた特性を有するという点から、PECVD、ALD、またはPEALDが好ましい。
【0075】
本発明のシリコン含有薄膜は、シリコン酸化膜(SiO)、シリコンオキシ炭化膜(SiOC)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコンオキシ窒化膜(SiON)、シリコン炭窒化膜(SiCN)、シリコン炭化膜(SiC)、シリコンオキシ窒化膜、またはシリコン炭窒化膜であってもよく、高品質の種々の薄膜、特に、OLEDの封止材として使用可能な薄膜を製造することができる。
【0076】
本発明のシリコン含有薄膜の製造方法は、具体的に、
a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30〜500℃に維持するステップと、
b)基板に前記本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)前記ステップのシリコン含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入してシリコン含有薄膜を形成するステップと、を含んでもよい。
【0077】
より具体的に、本発明のシリコン含有薄膜の製造方法は、
A)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30〜500℃に維持するステップと、
B)基板に本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
C)残留の蒸着用組成物および副産物をパージするステップと、
D)前記蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入してシリコン含有薄膜を形成するステップと、
E)残留の反応ガスおよび副産物をパージするステップと、を含んで製造されてもよく、前記D)ステップにおける反応ガスは、前記蒸着用組成物に含まれているビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物のリガンドを除去してSi−O原子層を形成することができる。
【0078】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る反応ガスは、50〜1000Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給されてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態に係るシリコン含有薄膜の製造方法は、本発明のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を前駆体として用いることで、好ましくは30〜500℃、より好ましくは30〜300℃で、50〜1000W、好ましくは100〜800W、より好ましくは400〜600Wの低いプラズマの発生によっても反応ガスを活性化させて薄膜を製造することができる。
【0080】
本発明の一実施形態に係るシリコン含有薄膜の製造方法は、目的とする薄膜の構造または熱的特性に応じて蒸着条件が調節可能であり、本発明の一実施形態に係る蒸着条件としては、ビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を含有するシリコン含有薄膜蒸着用組成物の投入流量、反応ガス、キャリヤガスの投入流量、圧力、RFパワー、基板温度などが挙げられる。かかる蒸着条件の非限定的な例として、シリコン含有薄膜蒸着用組成物の投入流量は10〜1000cc/min、キャリヤガスは10〜1000cc/min、反応ガスの流量は1〜1500cc/min、圧力は0.5〜10torr、RFパワーは50〜1000W、および基板温度は30〜500℃の範囲、好ましくは80〜300℃の範囲で調節可能であるが、これに限定されるものではない。
【0081】
本発明のシリコン含有薄膜の製造方法で用いられる反応ガスは、これに限定されるものではないが、水素(H)、ヒドラジン(N)、オゾン(O)、酸素(O)、亜酸化窒素(NO)アンモニア(NH)、窒素(N)、シラン(SiH)、ボラン(BH)、ジボラン(B)、およびホスフィン(PH)から選択される1つまたは1つ以上の混合気体であってもよく、キャリヤガスは、窒素(N)、アルゴン(Ar)、およびヘリウム(He)から選択される1つまたは2つ以上の混合気体であってもよい。
【0082】
本発明の一実施形態に係るシリコン含有薄膜の製造方法で用いられる基板は、Si、Ge、SiGe、GaP、GaAs、SiC、SiGeC、InAs、およびInPのうち1つ以上の半導体材料を含む基板;SOI(Silicon On Insulator)基板;石英基板;またはディスプレイ用ガラス基板;ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PolyEthylene Terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN、PolyEthylene Naphthalate)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Poly Methyl MethAcrylate)、ポリカーボネート(PC、PolyCarbonate)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(Polyester)などの可撓性プラスチック基板;であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0083】
また、前記シリコン含有薄膜は、前記基板に直ちに薄膜を形成することの他に、前記基板と前記シリコン含有薄膜との間に、多数の導電層、誘電層、または絶縁層などが形成されてもよい。
【0084】
また、本発明は、シリコン含有薄膜の前駆体として使用可能なビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物を提供するものであって、本発明のビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、下記化学式1で表される。
【0085】
【化33】
(前記化学式1中、
Rは、(C1−C7)アルキルまたは(C2−C7)アルケニルであり;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルであるか、RとRおよびRとRは、それぞれ独立して、互いに連結されて環を形成してもよく;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C1−C7)アルキル、または(C2−C7)アルケニルである。)
【0086】
本発明の前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、上述のように、常温で液体であって、揮発性が高く、熱的安定性が高いため、シリコン含有薄膜の形成において非常に有用な前駆体として用いられる。
【0087】
さらに、アミノシリル基のシリル(ケイ素)にそれぞれ4個の水素が存在することで、反応性に優れるため、優れた薄膜蒸着速度で薄膜蒸着が可能であって、高純度の薄膜を製造することができる。
【0088】
好ましくは、前記化学式1で表されるビス(アミノシリル)アルキルアミン化合物は、前記化学式2、より好ましくは、前記化学式6または化学式7で表されてもよい。
【0089】
以下、本発明を下記実施例によってさらに具体的に説明する。それに先立ち、本明細書および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって、本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【0090】
したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全部を代弁しているわけではないため、本出願時点においてこれらに代替可能な多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0091】
また、以下の全ての実施例は、常用化されたシャワーヘッド方式の200mm枚葉式(single wafer type)ALD装置(CN1、Atomic Premium)を用いて、公知のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法により行った。また、常用化されたシャワーヘッド方式の200mm枚葉式(single wafer type)CVD(PECVD)装置(CN1、Atomic Premium)を用いて、公知のプラズマ気相化学蒸着法により行うことができる。
【0092】
蒸着されたシリコン含有薄膜の厚さはエリプソメータ(Ellipsometer、OPTI−PROBE 2600、THERMA−WAVE)により測定し、赤外分光器(Infrared Spectroscopy、IFS66V/S & Hyperion 3000、Bruker Optics)、X−線光電子分光分析器(X−ray photoelectron spectroscopy)、透湿度測定器(Water Vapor transmission rate(WVTR、MOCON、Aquatran 2)、応力測定器(Frontier Semiconductor、FSM500TC)を用いて、薄膜特性を分析した。
【0093】
[実施例1]ビス(メチルジメチルアミノシリル)メチルアミンの製造
【化34】
無水および不活性雰囲気下で、火炎乾燥された1000mLのフラスコに、ジクロロメチルシラン(SiH(CH)Cl)115g(1.0mol)とペンタン(n−Pentane)577g(8mol)を入れ、−25℃に維持しながらメチルアミン(CHNH)59g(1.9mol)をゆっくりと添加した後、3時間撹拌し、濾過によりメチルアミン塩化水素塩((CH)NHCl)を除去した。回収したビス(クロロメチルシリル)メチルアミン(SiH(CH)Cl)N(CH)溶液をペンタン(n−Pentane)と撹拌しながら、ジメチルアミン((CHNH)94g(7.13mol)を−25℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加が完了された後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で6時間撹拌した。濾過して生成された白色のジメチルアミン塩化水素塩((CHNHCl))を除去した後、濾液を得た。この濾液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により、ビス(ジメチルアミノ(メチルシリル))メチルアミン((CHNSiH(CH))N(CH))を71g(0.35mol)得た(収率70%)。
【0094】
H−NMR(inCDCl):δ 0.16(t, 6H (Si−CH), 2.42(d, 3H (NCH)), 2.48(s, 12H,((CHNSi)), 4.39(m, 2H, (−SiHN)).
【0095】
[実施例2]ビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミンの製造
【化35】
無水および不活性雰囲気下で、火炎乾燥された5000mLのSus反応器(高圧反応器)に、ジクロロシラン(SiHCl)360g(3.56mol)とペンタン(n−Pentane)3,202g(27.79mol)を入れ、−25℃に維持しながらメチルアミン(CHNH)210g(6.77mol)をゆっくりと添加した後、3時間撹拌し、濾過によりメチルアミン塩化水素塩((CH)NHCl))を除去した。回収したビスクロロシリルアミン(SiHCl)N(CH)溶液をペンタン(n−Pentane)と撹拌しながら、エチルメチルアミン((CHCH)(CH)NH)421g(7.13mol)を−25℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加が完了された後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で6時間撹拌した。濾過して生成された白色のエチルメチルアミン塩化水素塩((CHCH)(CH)NHCl))を除去した後、濾液を得た。この濾液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により、ビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミン((CHCH)(CH)NSiHN(CH))を219g(1.07mol)得た(収率60%)。
【0096】
H−NMR(inC6D6):δ 0.97(t, 6H (N−CH−CH), 2.47(s, 6H (Si−NCH), 2.53(s, 3H (SiH−NCH)), 2.81(q, 4H (N−CH−CH, 4.77(m, 4H, (−SiHN)).
【0097】
[実施例3]ビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミンを用いた、プラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法によるシリコン酸化薄膜の製造
公知のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置にて、シリコン酸化膜を形成するための組成物として、本発明に係る実施例2で製造されたビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミン化合物を用いて膜を形成した。
【0098】
反応ガスとしては、プラズマとともに亜酸化窒素を使用し、不活性気体である窒素はパージのために使用した。反応ガスおよびプラズマ時間0.5秒で成膜した。表1に、具体的なシリコン酸化薄膜の蒸着方法を示した。
【0099】
表2に、製造されたシリコン酸化薄膜の分析結果を示し、図3に、蒸着された膜を赤外分光計により分析した結果を示した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
[実施例4および5]ビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミンを用いた、プラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法によるシリコン酸化薄膜の製造
実施例3において、蒸着条件を下記表1の条件で行ったことを除き、実施例3と同様に行ってシリコン酸化膜を製造した。製造されたシリコン酸化薄膜の分析結果を下記表2に示し、図3に、蒸着された膜を赤外分光計により分析した結果を示した。
【0103】
[実施例6]ビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミンを用いた、プラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法によるシリコン窒化薄膜の製造
公知のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置にて、シリコン窒化膜を形成するための組成物として、本発明に係る実施例2で製造されたビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミン化合物を用いて膜を形成した。反応ガスとしては、プラズマとともに、1回目の反応ガスとして窒素とアンモニアを使用し、2回目の反応ガスとして窒素を使用した。不活性気体である窒素はパージのために使用した。以下の表3に、具体的なシリコン窒化薄膜の蒸着方法を示した。
【0104】
表4に、具体的なシリコン窒化薄膜の分析結果を示し、図4に、蒸着された膜を赤外分光計により分析した結果を示した。
【0105】
[実施例7〜9]ビス(エチルメチルアミノシリル)メチルアミンを用いた、プラズマ強化原子層蒸着(PEALD)法によるシリコン窒化薄膜の製造
実施例6において、下記表3の条件で行ったことを除き、実施例6と同様に行ってシリコン窒化薄膜を製造した。表4に、製造されたシリコン窒化薄膜の分析結果を示し、図4に、蒸着された膜を赤外分光計により分析した結果を示した。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
図1
図2
図3
図4