特許第6876156号(P6876156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スージョウ カノヴァ バイオファーマシューティカル カンパニーリミテッドの特許一覧

特許6876156IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用
<>
  • 特許6876156-IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用 図000006
  • 特許6876156-IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用 図000007
  • 特許6876156-IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用 図000008
  • 特許6876156-IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用 図000009
  • 特許6876156-IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用 図000010
  • 特許6876156-IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876156
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】IL−17A及びIL−17Fに反応するモノクローナル抗体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20210517BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210517BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C12N15/13
   C07K16/46ZNA
   C07K16/24
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 N
   A61P37/02
   A61P29/00
   A61P25/00 171
   A61P17/06
   A61P19/02
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-570603(P2019-570603)
(86)(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公表番号】特表2020-511159(P2020-511159A)
(43)【公表日】2020年4月16日
(86)【国際出願番号】CN2017076278
(87)【国際公開番号】WO2018161340
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】519325474
【氏名又は名称】スージョウ カノヴァ バイオファーマシューティカル カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】Suzhou Kanova Biopharmaceutical Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ リ
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−519348(JP,A)
【文献】 特表2010−530357(JP,A)
【文献】 特表2011−519911(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/161570(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/014979(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−17A及びIL−17Fの両者に結合し、IL−17A及びIL−17Fの両者の活性を阻害する抗IL17A/F抗体であり、配列番号1で表されるCDR1H、配列番号2で表されるCDR2H、配列番号3で表されるCDR3H、配列番号4で表されるCDR1L、配列番号5で表されるCDR2L、及び、配列番号6で表されるCDR3Lを含む、抗IL17A/F抗体。
【請求項2】
配列番号7で表される可変重鎖ドメイン(VH1−1)並びに配列番号8で表される可変軽鎖ドメイン(VL5)又は配列番号9で表される可変軽鎖ドメイン(VL2−1)を含む、請求項1に記載の抗IL17A/F抗体。
【請求項3】
ヒトIgGクラスに属する、請求項1に記載の抗IL17A/F抗体。
【請求項4】
マウス、キメラ又はヒト化バリアントである、請求項1に記載の抗IL17A/F抗体。
【請求項5】
配列番号10で表される重鎖と配列番号11で表される軽鎖とを含む、請求項1に記載の抗IL17A/F抗体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗IL17A/F抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項9】
被験体におけるIL−17A及び/又はIL−17F関連疾病を治療するための医薬組成物であって、治療に有効な量の請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗IL17A/F抗体及び医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病が、自己免疫疾患又は炎症性疾患から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病が乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、変形性関節症又は炎症性腸疾患(IBD)から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
被験体が哺乳類である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記被験体が、ラット、マウス、サル又はヒトから選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
被験体がヒトである、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−17A及びIL−17Fの両者に反応する抗体、及びその使用に関する。具体的には、本発明は、IL−17A及びIL−17Fの両者に結合し、IL−17A及びIL−17Fの両者の活性を阻害する抗IL17A/F抗体、及びその抗体の使用を提供することである。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン17(IL−17)サイトカインファミリーには、IL−17A(通常、IL−17という)、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E(IL−25ともいう)及びIL−17Fの6つのメンバーを含まれている。IL−17A(CTLA−8、Swiss Prot Q16552)、IL−17F(Swiss−Prot#Q96PD4 SEQ ID#NP_443104)は、前記メンバーの全部の中でその生物学的機能とそれに対する調節メカニズムが最も既知されている。この2つのサイトカインの間には、最も高い配列相同性(55%の同一性)を有している。IL−17A又はIL−17Fをコードする遺伝子は、マウスとヒトにおいても互いに近い状態で同じ染色体に存在する。それらが共有する発現パターンはハイライトされる(非特許文献1)。IL−17AとIL−17Fは、機能の面からいずれも炎症誘発反応を介導するが、炎症の種類と部位によって一定の違いがある(非特許文献2、3)。IL−25は、IL−17Aとの配列相同性は最も低いでおり、IL−17Fの場合の50%と比べて、ただ16%の配列相同性を有する。したがって、IL−25は免疫学的にユニークな役割を果たし、蠕虫寄生虫及びアレルギー性炎症に応対するTヘルパー(Th)2応答を主に調節する(非特許文献4)。IL−17B、IL−17C、及びIL−17Dは、炎症誘発性サイトカインの産生を引き起こすことが知られているが、それらの生物学的機能はほとんど知られない(非特許文献5〜7)。3つの異なる研究グループによる近来の研究は、IL−17Cが粘膜免疫と自己免疫反応での作用をハイライトしている(非特許文献8〜10)。IL−17ファミリーのサイトカインは、標的細胞の表面受容体を介して生物学的機能を調節している。IL−17RAは最初に同定されたIL−17受容体である。IL−17RB、IL−17RC、IL−17RD及びIL−17REを含む他の4つのIL−17Rファミリーのメンバーは、後で主にIL−17RAとの配列相同性に基づいて同定された。IL−17ファミリーのサイトカインに対応する機能的受容体は、通常、ヘテロ二量体の形で存在し、共通のサブユニットとしてIL−17RAを有している。例えば、IL−17RAとIL−17RCからなる受容体複合体はIL−17AとIL−17Fとを認識しており、一方、IL−17RAはIL−17RBと対形成してIL−25に結合する(非特許文献11、12)。
【0003】
IL−17A及びIL−17Fの産生が調節不全した場合には、炎症誘発性サイトカインの過剰な発現と慢性炎症に導き、その結果、組織の損傷と自己免疫が引き起こされる。IL−17ファミリーのサイトカインは、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患、乾癬などの多くの自己免疫疾患に関連している。Th17細胞とIL−17ファミリーのサイトカインがMSの発展における重要な役割が、ヒトのMSに類似なマウスモデルであるEAEを用いた研究で解明されるまで、長い間、MSはTh1依存性の疾患とみなされた(非特許文献13、14)。Th17細胞及び関わるサイトカインは、それらに関連する中枢神経系の炎症及び病変形成を促進する主要な働きを持つ(非特許文献13、14)。IL−17Aは、RA患者の滑液や、滑膜で容易に検出される(非特許文献15)。RAのマウスモデルを用いた複数の研究により、IL−17Aが疾患の進展における重要な働きを持つことは実証している(非特許文献16〜20)。疾患が発症した後に、IL−17に対してブロックすることで、骨や軟骨の侵食を効果的に防ぎ、臨床状態の重症度を軽減になる(非特許文献19)。サイトカインであるIL−17Aは、多くの自己免疫疾患に汎用するので、理想的な薬物ターゲットになっている。実際上、ヒト化したIL−17A抗体はもうRA、乾癬、ぶどう膜炎の治療のために開発されており、良好な成果が得られた(非特許文献21、22)。
【0004】
要約すると、IL−17AとIL−17Fは共通の受容体を有し、両者は炎症促進の面で重複に機能する。IL−17A及びIL−17Fは、複数の炎症性サイトカイン、ケモカイン及び接着分子の産生を誘導でき、好中球及びマクロファージを炎症部位にリクルートできる。IL−17AとIL−17Fは、同じように、ヒト、ヒト疾患に対応する動物モデルが有する関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、変形性関節症及び炎症性腸疾患(IBD)を含む多様な自己免疫疾患及び炎症性疾患の進展、病理に寄与した医薬品に関連付けた。RA患者の滑膜組織では、高レベルのIL−17Aが検出された(非特許文献23)。IL−17AはMS患者の脳脊髄液で過剰に発現している(非特許文献24)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wang X., et al., Immunity 2012; 36: 23−31
【非特許文献2】Ishigame H, et al., Immunity 2009; 30: 108−119
【非特許文献3】Yang XO, et al., J Exp Med 2008; 205: 1063−1075
【非特許文献4】Fallon PG, et al., J Exp Med 2006; 203: 1105−1116
【非特許文献5】Yamaguchi Y, et al., J Immunol 2007; 179: 7128−7136
【非特許文献6】Wu Q, et al., Microbes Infect 2007; 9: 78−86
【非特許文献7】Li H, et al, Proc Natl Acad Sci USA 2000; 97: 773−778
【非特許文献8】Ramirez−Carrozzi V, et al. Nat Immunol 2011; 12: 1159−1166
【非特許文献9】Song X, et al., Nat Immunol 2011; 12:1151−1158
【非特許文献10】Chang SH, et al., Immunity 2011; 35: 611−621
【非特許文献11】Iwakura Y, et al., Immunity 2011; 34: 149−162
【非特許文献12】Chang SH, Dong C. Cell Signal 2011; 23: 1069−1075
【非特許文献13】Langrish CL, et al., J Exp Med 2005; 201: 233−240
【非特許文献14】Park H, et al., Nat Immunol 2005; 6: 1133−1141
【非特許文献15】Chabaud M, et al., J Immunol 1998; 161:409−414
【非特許文献16】Murphy CA, et al., J Exp Med 2003; 198: 1951−1957
【非特許文献17】Nakae S, et al., J Immunol 2003; 171: 6173−6177
【非特許文献18】Nakae S, et al. Proc Natl Acad Sci USA 2003; 100: 5986−5990
【非特許文献19】Lubberts E, et al., Arthritis Rheum 2004; 50: 650−659
【非特許文献20】Ruddy MJ, et al., J Leukoc Biol 2004; 76: 135−144
【非特許文献21】Genovesse MC, et al., Arthritis Rheum 2010; 62: 929−939
【非特許文献22】Hueber W, et al., Sci Transl Med 2010; 2: 52−72
【非特許文献23】Chabaud M et al., J Immunol 2003; 171: 6173−6177
【非特許文献24】Hellings, P.W., et al., Am. J. Resp. Cell Mol Biol. 28 (2003)42−50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IL−17Aアンタゴニスト及びIL17Fアンタゴニストの必要性、臨床用または治療用の可能性は、IL−17A、IL−17Fの両者の免疫活性を実証することによって示されている。具体的には、IL−17AとIL−17Fの両者とを結合でき、そしてIL−17AとIL−17Fの両者の活性を遮断可能な抗体は、新しい及び/又はより良い治療プロパティを備えることが望ましい。したがって、IL−17A及びIL−17Fの両者を結合可能なアンタゴニストが必要となる。IL−17AとIL−17Fの両者を一つのモノクローナル抗体でブロックすることは、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎の治療に使用したIL−17Aアゴニストよりも優れた臨床的な又は治療的な可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒトIL−17A及びIL−17Fの両者に特異的に結合可能な抗体(本明細書では、「交差反応性抗体」、「IL−17A/F抗体」などと呼ばれることがある)を提供する。前記抗体は、IL−17AとIL−17Fの両者の活性を調節できるので、免疫関連疾患や炎症性疾患などの様々な疾患や病態の治療に有用である。前記抗体は、配列番号1で表されるCDR1H、配列番号2で表されるCDR2H、配列番号3で表されるCDR3H、配列番号4で表されるCDR1L、配列番号5で表されるCDR2L、配列番号6で表されるCDR3Lを含むことを特徴とする。
【0008】
一実施形態では、上述した抗IL17A/F抗体は、マウス、キメラ又はヒト化バリアントである。前記抗IL17A/F抗体は、二重特異性を持つモノクローナル抗体である。
【0009】
一実施形態では、前記抗体は、配列番号7で表される可変重鎖ドメイン(VH1−1)、及び配列番号8で表される可変軽鎖ドメイン(VL5)又は配列番号9で表される可変軽鎖ドメイン(VL2−1)を含むことを特徴とする。
【0010】
一実施形態では、前記抗体は、配列番号7で表される可変重鎖ドメイン(VH1−1)、及び配列番号8で表される可変軽鎖ドメイン(VL5)を含むことを特徴とする。
【0011】
一実施形態では、前記抗体は、ヒトIgGクラスに属することを特徴とする。
【0012】
一実施形態では、前記抗体は、配列番号10で表される重鎖、及び配列番号11で表される軽鎖を含むことを特徴とする。
【0013】
IL−17A/F抗体は、特にIL−17A及び/又はIL−17Fの存在に関連する病態、または哺乳類細胞に対するインビトロ、インサイチュ、またはインビボ診断または治療中の作用を見つけてしまう。一実施形態において、IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病は、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、変形性関節症又は炎症性腸疾患(IBD)を含む自己免疫疾患又は炎症性疾患であるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、親抗体が非還元及び還元条件下でSDS−PAGEを行った結果を示す図である。各レーンに約2μgのタンパク質をロードした。(A)マーカー:ページルーラーで事前に染色したタンパク質ラダー(Thermo Scientific、製品番号:26616);BSA−N:非還元条件;QH_VH1−1+QH_VL2−1−N、非還元条件で;QH_VH1−1+QH_VL5−N、非還元条件;QH_VH1−1+QH_VL2−1−R、還元条件;QH_VH1−1+QH_VL5−R、還元条件;BSA−R、還元条件で;(B)分子量はマーカーで示された。
図2図2は、HFF−1細胞においてIL−17A、IL−17F及びIL−17A/FによるIL−6誘導に対して、抗IL17A/F抗体の阻害効果(IC50が、nMレベル)、即ち、本発明の抗IL17A/F抗体について機能的なアッセイの結果を示す図である。(A)IL−17Aで誘導したIL−6の産生が、抗IL17A/F抗体であるVH1−1/VL5 mAbによって阻害され、IC50は1.727nMである。(B)IL−17Fで誘導したIL−6の産生が、抗IL17A/F抗体であるVH1−1/VL5 mAbによって阻害され、IC50は1.77nMである。(C)IL−17A/Fヘテロダイマーで誘導したIL−6の産生が、抗IL−17A/F抗体であるVH1−1/VL5 mAbによって阻害され、IC50は0.99nMである。対照抗体として、ヒトIgG1(hIgG1)を使用した。
図3図3は、抗IL17A/F抗体が、IL−17A、IL−17FまたはIL−A/FとIL−17受容体との間のインタラクションに対する遮断作用を示す図である。(A)IL−17AとIL−17RAの間のインタラクションが、抗IL17A/F抗体、抗IL17A/F VH1−1/VL5抗体によってブロックされる。(B)IL−17FとIL−17RAの間のインタラクションが、抗IL17A/F抗体、抗IL17A/F VH1−1/VL5抗体によってブロックされる。(C)IL−17A/FとIL−17RAの間のインタラクションが、抗IL17A/F抗体、抗IL17A/F VH1−1/VL5抗体によってブロックされる。対照抗体として、ヒトIgG1(hIgG1)を使用した。
図4図4は、hIgG VH1−1/VL5が、ヒトIL−17ファミリーのメンバーへの結合プロパティを示す図である。2μg/mlのヒトIL−17A、B、C、D、E及びFは、それぞれ、ELISAプレートにコーティングされ、連続濃度のhIgG VH1−1/VL5抗体(A〜F)で培養した。対照抗体としてヒトIgG1(hIgG1)を用いた。結合プロパティはOD450nmで示された。EC50値は、GraphPad Prismで算出された。
図5図5は、hIgG VH1−1/VL5が、カニクイザルIL−17A及びFへの結合プロパティを示す図である。2μg/mlのカニクイザルIL−17A(A)及び17F(B)が、それぞれ、ELISAプレートにコーティングされ、hIgG VH1−1/VL5抗体(抗体濃度、0.3nM〜66.67nM)で培養した。対照抗体としてヒトIgG1(hIgG1)を用いた。EC50値は、GraphPad Prismによって算出された。
図6図6は、薬力学的マウスモデルにおいて、抗IL17A/F抗体はヒトIL−17で誘導したCXCL1分泌を阻害する図である。各マウスに20μgの抗IL17A/F抗体を静脈内注射(i.v.)した1時間後、各マウスにヒトIL−17A(3μg)を皮下投与(s.c.)した。KCレベルは、ヒトIL−17A注射した2時間後にELISAにて測定した。各群にはn=5マウスにする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明についてさらに詳細に説明する。以下の段落には、本発明の不同の態様をより詳細に明確化されている。反対の意味を明らかに示されていない限り、前記明確化された各態様は、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は利点と見なされた特徴が、他の好ましい又は利点と見なされた特徴と組み合わせることができ、その組み合わせも請求の範囲によって定義する本発明の範囲から逸脱することはない。
【0016】
特に明記しない限り、本発明を実施するためには、当分野での分子生物学、化学、生化学及び組換えDNA技術、バイオインフォマティクスの常法である技術を使用する。そのような技術は、本発明で完全に説明されている。
【0017】
本発明の第1の態様は、IL−17A及びIL−17Fの両者に結合し、IL−17A及びIL−17Fの両者の活性を阻害する抗IL17A/F抗体を提供する。前記抗体は、配列番号1で表されるCDR1H、配列番号2で表されるCDR2H、配列番号3で表されるCDR3H、配列番号4で表されるCDR1L、配列番号5で表されるCDR2L、配列番号6で表されるCDR3Lを含む。
【0018】
本発明の抗IL17A/F抗体は、二重特異な結合活性を持つモノクローナル抗体である。
【0019】
前記抗IL17A/F抗体は、IL−17A及びIL−17Fと、両者の受容体との結合を阻害できる。
【0020】
一実施形態では、上述した抗IL17A/F抗体は、マウス、キメラ又はヒト化バリアントである。一実施形態において、前記抗体は、配列番号7で表される可変重鎖ドメイン(VH1−1)、及び配列番号8で表される可変軽鎖ドメイン(VL5)又は配列番号9で表されるVL2−1を含む。一実施形態では、前記抗体は、配列番号7で表される可変重鎖ドメイン(VH1−1)、及び配列番号8で表される可変軽鎖ドメイン(VL5)を含む。
【0021】
一実施形態では、前記抗体は、ヒトIgGクラスに属することを特徴とする。一実施形態では、前記ヒト化抗体は、配列番号10で表される重鎖、及び配列番号11で表される軽鎖を含む。
【0022】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の抗IL17A/F抗体をコードするヌクレオチド配列を提供する。当分野で知られているように、ヌクレオチド配列は、抗IL17A/F抗体を発現するために、コドンが用いた細胞の種類によって最適化し得る。
【0023】
本出願はまた、第1の態様の抗IL17A/F抗体の重鎖可変ドメイン、及び/又は軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0024】
第1の態様の抗IL17A/F抗体をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターも、本発明の範囲に含まれる。前記組換え発現ベクターは、原核生物又は真核生物の宿主細胞において前記ヌクレオチド配列を発現することができる。
【0025】
当分野で知られているように、第1の態様の抗IL17A/F抗体をコードする発現ベクター、またはヌクレオチド配列を含む宿主細胞も、本発明の範囲に含まれる。前記宿主細胞は、本発明の抗IL17A/F抗体を産生することができる。前記宿主細胞は、前記ヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターを細胞に形質転換又はトランスフェクトすることによって作成することができる。前記宿主細胞にヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターを含んでいてもよく、相同組換えすることで宿主細胞のゲノムにヌクレオチド配列を組み込まれることもよい。前記宿主細胞は、原核生物又は真核生物に由来の宿主細胞、例えば、CHO細胞、HEK293細胞、または骨髄腫細胞などの哺乳類に由来する細胞株であってもよい。前記哺乳類は、ラット、マウス、サル、及びヒトからなる群より選択されるものであるが、これらに限定されない。宿主細胞は、好ましくはヒト細胞である。
【0026】
この面で、本発明の抗IL17A/F抗体は、発現ベクターまたは第1の態様の抗IL17A/F抗体をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞によって発現させることができる。発現した抗IL17A/F抗体は、従来のタンパク質の精製法により、前記細胞又は細胞培養上清液から回収することができる。抗体の組換え産生については、当分野で公知されている。もう一つの態様で、本発明の抗IL17A/F抗体は、適切な抗原で動物を免疫して、免疫された動物から収集した腹水液から抗IL17A/F抗体を回収することで、合成または産生されることができる。
【0027】
一実施形態では、本発明は以下のステップを含む第1の態様の抗IL17A/F抗体を産生する方法を提供する:抗IL17A/F抗体の発現は、発現ベクターまたは第1の態様の抗IL17A/F抗体をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養し、宿主細胞又は細胞培養上清液から抗IL17A/F抗体を回収することによって行った。
【0028】
第3の態様では、本発明は、被験体においてIL−17A及び/又はIL−17F関連疾病の治療に使用する医薬品の製造における、第1の態様の抗IL17A/F抗体の使用に関する。一実施形態において、IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病は、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、変形性関節症、炎症性腸疾患(IBD)を含む自己免疫疾患又は炎症性疾患であるが、これらに限定されない。被験体は、ラット、マウス、サル、又はヒトなどの哺乳類であってもよい。被験体は、好ましくはヒトである。
【0029】
第4の態様において、本発明は、治療的有効な量の第1の態様の抗IL17A/F抗体と、医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物であり、被験体においてIL−17A及び/又はIL−17F関連疾病の治療に使用する医薬組成物を提供する。医薬組成物に適した賦形剤は、当業者が選択することができる。一実施形態において、IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病は、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、変形性関節症、炎症性腸疾患(IBD)を含む自己免疫疾患又は炎症性疾患であるが、これらに限定されない。被験体は、ラット、マウス、サル、又はヒトなどの哺乳類であってもよい。被験体は、好ましくはヒトである。
【0030】
第5の態様では、本発明は、治療的有効な量の本発明の第4の態様の医薬組成物を投与することを含む、被験体においてIL−17A及び/又はIL−17F関連疾病を治療する方法を提供する。一実施形態において、IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病は、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、変形性関節症、炎症性腸疾患(IBD)を含む自己免疫疾患又は炎症性疾患であるが、これらに限定されない。被験体は、ラット、マウス、サル、又はヒトなどの哺乳類であってもよい。被験体は、好ましくはヒトである。
【0031】
上記した内容で、本発明の範囲内に含まれる主題、本発明のことを製造又は使用する方法、及びその方法の最も好ましい形態を含む主旨に関する一般的な説明を提供した。以下、当業者がより効率的実施するために、実施例を提供され、本発明について完全な記述を提供する。なお、当業者であっては、これらの実施例の詳細は本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではないと理解すべき、その範囲は本開示に添付した請求の範囲及びその均等物とするのを理解すべきである。本開示の観点から、本発明の様々なさらなる態様及び実施形態が当業者には明らかであろう。
【0032】
本明細書で使用される「及び/又は」は、2つの具体的な特徴または構成要素が、一種単独で又は両者ともに採用していることを具体的に開示したと解する。例えば、「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B及び(iii)A及びBともに採用していることを具体的に開示したとみなされ、本明細書で個別に示されることと同様に理解される。
【0033】
特記しない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明の特定の態様または実施形態に限定されるものではない、説明した全部の態様及び実施形態に等しく適用できる。
【0034】
本発明、及び本明細書で又は本発明の審査中に引用した全ての書類と配列アクセッション番号(「appln引用書類」)、及びappln引用書類で引用又は参照した全ての書類、及びここで引用した又は参照した全ての書類(「引用書類」)、及び本明細書に引用した書類で引用又は参照された全ての書類は、本明細書で言及した製品又はここで参照により組み込まれた書類中の製造元からの指示、紹介、製品仕様書、及び製品説明書とともに、参照することにより本明細書に包含され、本発明の実施に使用する。より具体的には、本明細書において参照した全ての文書は、その全体が、各々の文書が具体的にかつ個別に記載されたのと同じ程度に、本明細書において参照として援用される。
【実施例】
【0035】
実施例1 抗IL17A/F抗体の生成
ヒトIL−17A(Cell Signaling#8928SF、www.cellsignal.com)と、IL−17F(Cell Signaling#8906LC、www.cellsignal.com)(10μgずつ)と、完全フロイントアジュバント(Sigma−Aldrich、Cat#F6881)とを、BALB/cマウス(16−18g、6週齢、北京バイタルリバーラボラトリーアニマルテクノロジー社から購入)に皮下注射して免疫を行った。免疫は3日間隔で5回繰り返した。最終ブーストの3日後、注射部位に近いリンパ節を慎重に切り取した。リンパ球は、PEG1500(ポリエチレングリコール1500、Roche TM.Cat#:783641、10×4mlで75 mM Hepes液に含まれ、PEG 50%W/Vである)によりAg 8.653骨髄腫細胞(Sigma−Aldrich、Cat#85011420)と融合させ、HAT セレクション(Sigma cat #:H0262)とHFCS(Hybridoma Fusion and Cloning Supplement、50x、Roche cat#:11−363−735−001)でクローンした。ヒトIL−17A及びIL−17Fの両者とを結合できる抗体の産生は、ELISA及びサイトカイン放出アッセイにて、ハイブリドーマ上清液を用いてスクリーニングを行った(実施例5を参照)。選択されたマウス抗IL17A/Fクローン(1−15−X)は、CDR−移植と復帰突然変異(back mutation)を使用してヒト化した。
【0036】
CDR−移植による抗体のヒト化:アクセプターのフレームワークの選択が行った。親抗体の可変ドメイン配列は、NCBI Ig−Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/igblast/)を用いてヒト生殖細胞系のデータベースにおいて検索したものである。各重鎖及び軽鎖については、5つ異なるヒトアクセプター(即ち、親抗体と高い相同性を有するヒト可変ドメイン)を選択した。前記ヒトアクセプターのCDRは、対応するマウスのものに置き換えられることで、ヒト化可変ドメイン配列にした。重鎖及び軽鎖のCDR配列(配列番号1〜6)をそれぞれ以下に示す。5つのヒト化した重鎖と、5つのヒト化した軽鎖を設計、合成して、発現ベクターに挿入された。前記ヒト化した抗体を発現させて、親和性ランキング試験に用いた。最も強い結合親和性を持つ抗体(VH1−VL5及びVH1−VL2)を選択し、復帰突然変異に用いた。さらなる特徴付けのため、バリアントの中から、VH1−1/VL5及びVH1−1/VL2−1を選択した。VH1−1/VL5は最も高い結合親和性を示した。
【0037】
CDR1Hアミノ酸配列(配列番号1)
DYNLN
【0038】
CDR2Hアミノ酸配列(配列番号2)
VIHPDYGTTSYNQKFKD
【0039】
CDR3Hアミノ酸配列(配列番号3)
YDYGDAMDY
【0040】
CDR1Lアミノ酸配列(配列番号4)
RSSQSLVHSNGNTYLH
【0041】
CDR2Lアミノ酸配列(配列番号5)
KVSNRFS
【0042】
CDR3Lアミノ酸配列(配列番号6)
SQSTHVPLT
【0043】
可変重鎖ドメイン(VH1−1)のアミノ酸配列(配列番号7)
QFQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYNLNWVRQAPGKGLEWMGVIHPDYGTTSYNQKFKDRVTMTVDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCVRYDYGDAMDYWGQGTLVTVSS
【0044】
可変軽鎖ドメイン(VL5)のアミノ酸配列(配列番号8)
DIVMTQSPLSLSVTPGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWYLQKPGQPPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQSTHVPLTFGQGTKLEIK
【0045】
可変軽鎖ドメイン(VL2−1)のアミノ酸配列(配列番号9)
DIVMTQTPLSSSVTLGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWLQQRPGQPPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGAGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQSTHVPLTFGQGTKLEIK
【0046】
実施例2 抗IL17A/F抗体の発現と精製
ヒト化IgG重鎖(配列番号10のアミノ酸配列)、軽鎖(配列番号11のアミノ酸配列)をコードするDNA配列を合成し、pTGE5ベクター(Genescriptから購入可能)に挿入されて、全長IgGの発現プラスミドを構築した。親抗体の発現は、100mlのHEK293細胞培養で行われ(HEK293細胞はThermoFisher Scientificから購入可能)、その上清液をプロテインAアフィニティーカラムで精製した。精製した抗体は、PD−10脱塩カラム(Thermofisher Scientificから購入可能)を用いてPBSにバッファーを交換した。精製したタンパク質の濃度と純度は、それぞれ、OD280とSDS−PAGEで測定した。ヒト化した抗体は、30 mlの HEK 293細胞培養で発現した。細胞はスピンダウンした。上清液をろ過し、SDS−PAGE分析を行いた(図1)。
【0047】
VH1−1を含む重鎖アミノ酸配列(配列番号10、完全長配列)
QFQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYNLNWVRQAPGKGLEWMGVIHPDYGTTSYNQKFKDRVTMTVDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCVRYDYGDAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0048】
VL5を含む軽鎖アミノ酸配列(配列番号11、完全長配列)
DIVMTQSPLSLSVTPGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWYLQKPGQPPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQSTHVPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0049】
実施例3 抗IL17A/F抗体がヒトIL−17A及びIL−17FへのSPR分析による結合親和性
抗ヒトFcガンマ特異抗体(Jackson Immuno Research、ロット番号124448、コード109−008−098)をアミンカップリング法にてセンサーチップに固定した。培地に分泌された4つの抗体、及び親抗体を注入され、それぞれ抗ヒトFc抗体によってFc(捕捉相)を介して捕捉された。平衡させた後、300秒かけてIL−17を注入し(結合相)、次に、1200秒かけてランニングバッファーを注入した(解離相)。参照フロー細胞(フロー細胞1)の応答は、サイクルごとにヒト化した抗体のフロー細胞の応答から差し引かれた。次のヒト化した抗体を注入する前に、その表面は再生させた。このプロセスが、全ての抗体を分析したまで繰り返された。ヒト化した抗体の解離率は、Biacore T200エバリュエーションソフトを用いて、実験データをローカルマシンで1:1インタラクションモデルにフィットすることで取得した。前記抗体は、それらの解離速度定数(解離率、K)によって順位付けされた。IL−17とインタラクションする時に、親抗体と類似の親和性を有するバインダーを選択した。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例4 ELISAで測定したヒトIL−17A及びIL−17Fへの結合
MaxiSorp 96 wellプレート(NUNC#449824、www.thermofisher.com)は、2μg/mlのヒトIL−17A(Cell Signaling#8928SF、www.cellsignal.com)又はヒトIL−17F(Cell Signaling#8906LC、 www.cellsignal.com)を含む1xPBS(50μl/well)を用してコートされた。プレートは4℃で一晩培養した。コーティング液を除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で1回洗浄した。次に、200μl/wellのブロッキングバッファー(0.05%tween−20を含む1x PBS、3%BSA)を添加し、室温で1時間培養した。ブロッキングバッファーを除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1x PBS)で3回洗浄した。1xPBSで抗IL−17A/F抗体(実施例2で作製した)を10、3.33、1.11、0.37、0.123、0.041、0.0137、0.0046、0.0015、0.00031、0.000102、0.000034μg/mlに希釈し、プレートに加えた(50μl/well)。プレートを室温で2時間培養した。ウェルの中に存在した抗体を除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で3回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG(H&L)−HRP二次抗体(Jackson Immuno Research#109−035−088、www.jacksonimmuno.com)を1xPBSで1:5000に希釈して、各ウェルに追加した(50μl/well)。プレートを室温で1時間培養した。二次抗体を除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で7回洗浄した。50μl/wellのTMB(eBioscience#85−00−4201−56、www.ebioscience.com)を加えて、プレートを室温で数分間培養した。次に、50μl/wellの2N HSOを加えて反応を停止させた。光学密度(吸光度)は、ヒトIL−17A及びIL−17Fへの結合に関連する450nmで測定された。平衡定数であるEC50(nM)を表2に示す。以上の結果から、抗IL17A/F抗体は、ヒトIL−17AとIL−17Fの両者に対して高い親和性で結合できることを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例5 抗IL17A/F抗体は、IL−17A、IL17F又はIL17A/Fヘテロダイマーによって誘導した炎症性サイトカインの産生をブロックする。
【0054】
IL−17A及びIL−17Fに対応する受容体は、それぞれ、IL−17RA及びIL−17RCである。これらの受容体は、線維芽細胞及び上皮細胞に遍在的に発現している。IL−17A及びIL−17Fは、細胞上の受容体に結合して、前記細胞でのIL−6、IL−8、TNF−αなどの複数のサイトカインの産生及び放出を誘導することができる。IL−17A又はIL−17F特異的な抗体は、可溶性IL−17A又はL−17Fに結合して、それらのIL−17RA又はIL−17RCへの結合をそれぞれブロックすることができる。これより、サイトカインの誘導は抑制され、そしてさらに炎症の発生が抑制される。
【0055】
前記アッセイは、抗IL−17A/F抗体(実施例2で作成したもの)を用いた予備培養することによりhIL−17A、hIL−17F、またはIL17−A/Fヘテロダイマー(R&DシステムCat#5837−IL)での刺激を行ったHFF−1細胞(ヒト皮膚線維芽細胞は、中国科学アカデミー幹細胞バンク、#SCSP−109)において、hIL−6の産生の検出することで行った。HFF−1細胞は細胞表面にIL−17受容体を発現している。可溶性hIL−17A又はhIL−17Fは、受容体に結合し、HFF−1細胞のhIL−6サイトカインの発現及び放出を誘導している。hIL−17A及びhIL−17Fに反応する抗IL−17A/F抗体は、サイトカインとIL−17受容体との結合をブロックして、IL−17A/Fで誘導したhIL−6の発現を阻害する。培養上清液に放出されたhIL−6は、ELISAで検出することができる。hIL−6についての測定は、抗IL−17A/F抗体の阻害作用を示すことができる。
【0056】
HFF−1細胞は、15%FBS(ThermoFisher Scientificから購入可能)、1%ペニシリン・ストレプトマイシン(PS、市販品)を含む0.3ml/ウェルDMEM培地で1.5x10細胞/ウェルの細胞密度にした後、48ウェルプレート(ThermoFisher Scientificから購入可能)に播種し、37℃、5%COで12時間インキュベートした。次に、ウェルの中の培地を除去し、細胞をPBSで1回洗浄した(300μl/well)。前記細胞に300μl/wellの無血清DMEM培地を加えて、37℃で6時間飢餓状態にした。6時間の飢餓状態後、ウェルの中の無血清DMEM培地を細胞から除去した。細胞に30%FBS、2%PSを含むDMEM培地150μl/wellを加えた。その後、抗IL−17A/F抗体と、hIL−17A、IL17Fとの、又はIL−17A/Fヘテロダイマーとの150μl/well混合物を対応するウェルに加えた。プレートを37℃で24時間培養した。次に、上清液を回収してhIL−6のELISAに用いた。hIL−6の測定は、ヒトIL−6 ELISA Ready−SET−Goのキット(eBioscience#88−7066−88)を用いて実施した。結果を図2に示し、抗IL17A/F抗体(VH1−1−VL5 mAb)が、サイトカイン、IL−17A、IL−17F、及びIL−IL17A/Fヘテロダイマーによって誘導して刺激したIL−6の産生をブロックすることを表す(図2において、A、B、C)。
【0057】
実施例6 抗IL17A/F抗体は、IL−17A、IL−17F又はIL17A/FのIL−17受容体への結合をブロックする。
抗IL17A/F抗体(実施例2で作製した)は、IL−17A、IL−17F又はIL17A/FのIL−17受容体への結合に対する作用をELISAにて検査した。IL−17A、IL−17F、又はIL−17A/Fは、96wellプレートにおいて50μl/wellのタンパク質溶液(タンパク質濃度は0.5μg/ml)で、4℃で一晩コートされた。前記ウェルは、200μl/wellの1%BSA(0.05%のtween)を含むPBSTにより、室温で1時間ブロックされた。ウェルをPBSTで3回洗浄した。抗IL17A/F抗体、及びアイソタイプ対照抗体としてのヒトIgG1(Biolegend cat#403102)をPBSで、30μg/mlから0.0005μg/mlまで(30、10、3.33、1.11、0.37、0.123、0.041、0.0137、0.0046、0.0015、0.0005μg/ml)に希釈した。抗体を対応するウェルに加えて(50μl/well)、室温で4時間培養した。ウェルをPBSTで3回洗浄した。hIL17RA−mIgG2aFc(10μg/ml、標準分子生物学技術、Carson S、Molecular Biology Techniques、2012に基づく内製した)を各ウェルに加えて(50μl/well)、室温で1時間培養した。ウェルをPBSTで3回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG−HRP(1:5000でPBSに含まれ、EASYBIO Cat#BE0102)を各ウェルに(50μl/well)加えて、室温で30分間培養した。ウェルをPBSTで6回洗浄した。各ウェルにTMB基質を加えて(ウェルずつ50μl)、反応は各ウェルに50μlの2N HSOを加えることで停止させた。プレートは450nmと570nmで読み取られた。図3に示すように、抗IL17A/F抗体は、IL−17A、IL17F、さらにはIL−17A/FのIL−17受容体への結合をブロックする。上記データから、抗IL17A/F抗体はサイトカインとその受容体との間のインタラクションを遮断することにより、IL−17A、IL−17F及びIL17A/Fの活性を阻害することをさらに実証する。
【0058】
実施例7 ELISAで測定したヒトIL−17A、IL−17Fへの結合、及び他のIL−17のファミリーのメンバーとの交差反応性
MaxiSorp 96wellプレート(NUNC#449824、www.thermofisher.com)は、2μg/mlのヒトIL−17A(Cell Signaling#8928SF、www.cellsignal.com)、ヒトIL−17F(Cell Signaling#8906LC、www.cellsignal.com)、ヒトIL−17B(Peprotech#200−28、www.peprotech.com)、ヒトIL−17C(R&Dシステム#1234−IL−025/CF、www.rndsystems.com)、ヒトIL −17D((Peprotech#200−27、www.peprotech.com)、ヒトIL−17E(R&D systems#1258−IL−025/CF、www.rndsystems.com)、それぞれを含む1x PBS(50μl/well)を用いてコートされた。プレートは4℃で一晩培養した。コーティング液を除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で1回洗浄した。次に、200μl/wellのブロッキングバッファー(0.05%tween−20を含む1x PBS、3%BSA)を加えて、室温で1時間培養した。ブロッキングバッファーを除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で3回洗浄した。1x PBSで抗IL17A/F抗体、hIgG VH1−1/VL5を10、3.33、1.11、0.37、0.123、0.041、0.0137、0.0046、0.0015、0.00031、0.000102、0.000034μg/mlに希釈し、プレートに加えた(50μl/well)。プレートを室温で2時間培養した。ウェルの中に存在した抗体を除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で3回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG(H&L)−HRP二次抗体(Jackson Immuno Research#109−035−088、www.jacksonimmuno.com)を1xPBSで1:5000に希釈したものを、各ウェルに追加した(50μl/well)。プレートを室温で1時間培養した。二次抗体を除去し、プレートを200μl/wellのPBST(0.05%tween−20を含む1xPBS)で7回洗浄した。50μl/wellのTMB(eBioscience#85−00−4201−56、www.ebioscience.com)を加えて、プレートを室温で数分間培養した。次に、50μl/wellの2N HSOを加えて反応を停止させた。プレートを450 nmで読み取った。結果を表3に示す。抗IL17A/F抗体であるhIgG VH1−1/VL5は、ヒトIL−17A及び17Fの両者との結合能を持つ(図4のAとF)、EC50はそれぞれ、0.046、0.047nMである。それ以外、hIgG VH1−1/VL5はヒトIL−17B、17C、17D及び17Eに結合しなかった(図4、B、C、D及びE)。したがって、hIgG VH1−1/VL5抗体は、ヒトIL−17A及び17Fへの結合特異性を持つ、他のIL−17ファミリーのメンバーとは交差反応性を有しない。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例8 カニクイザルIL−17A及びIL−17Fとの交差反応性(結合能アッセイ)
抗IL−17A/F抗体がカニクイザルIL−17A及びIL−17Fへの結合能は、ELISAにて測定した。なお、ヒトIL−17A及びFをそれぞれ、カニクイザルIL−17A(GeneID:XM_005552759.2、標準分子生物学技術、Carson S、Molecular Biology Techniques、2012による内製した)及びIL−17F(GeneID:XM_005552757.2、標準分子生物学技術、Carson S、Molecular Biology Techniques、2012による内製した)に置き換えた以外、実施例7と同様の方法でアッセイを実施した。
hIgG VH1−1−VL5抗体は、カニクイザルII−17A及び17Fへの結合能を持つ、EC50はそれぞれ0.06、0.18nMである(表4、及び図5のA、B)。
【0061】
【表4】
【0062】
カニクイザルは、カニクイザルIL−17A及びIL−17Fへの交差反応性を有することから、抗IL17A/F抗体に関する薬物動態学、薬力学、及び毒物学研究に適したことを示している。よって、抗IL17A/F抗体は医薬組成物としての開発が望まれている。
【0063】
実施例9 抗IL17A/F抗体の作用のin vivo動物研究
ヒトIL−17(Cell Signaling Cat#8928SF、3μg/マウス)を皮下注射する1時間前に、抗IL−17A/F抗体(実施例2で作製したVH1−1/VL5、20μg/マウス)をC57BL/6Nマウスに(群各n = 5、8週齢、体重:18−20g 、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.、Ltd.から購入可能)静脈内投与した。IL−17を投与したから2時間の時点で血液サンプルを採取し、血漿中のCXCL1ケモカインのレベルをELISA(マウスCXCL1/GROアルファDuoSet ELISAキット、R&Dシステム、DY345)を用いて測定した。アイソタイプ対照抗体としては、ヒトIgG1(BioLegend Cat#40312)を用いた。図6に示すように、抗IL17A/F抗体(実施例2で作製した)は、アイソタイプ対照抗体と比較して、C57BL/6マウスの血漿におけるヒトIL−17Aで誘導したケモカインの分泌を低下させることができる。この結果から、抗IL17A/F抗体が、IL−17の活性を阻害、遮断、または中和するための医薬品として使用できることを示唆している。
【0064】
In vivo及びin vitro研究では、被験体においてIL−17A及び/又はIL−17F関連疾病の治療に使用する医薬品の製造のための、抗IL17A/F抗体の使用を実証した。IL−17A及び/又はIL−17F関連疾病は、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、変形性関節症及び炎症性腸疾患(IBD)などを含む自己免疫疾患及び炎症性疾患からなる群より選択できる。被験体は、ラット、マウス、サル、又はヒトなどの哺乳類であってもよい。好ましくは、被験体はヒトである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]