特許第6876178号(P6876178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876178交通管制サーバ及び交通管制システム並びに交通管制サーバと無線通信可能な表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6876178
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】交通管制サーバ及び交通管制システム並びに交通管制サーバと無線通信可能な表示装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210517BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20210517BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20210517BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20210517BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20210517BHJP
【FI】
   G08G1/16 A
   G08G1/01 A
   G08G1/00 X
   G05D1/02 H
   G06Q50/08
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2020-61867(P2020-61867)
(22)【出願日】2020年3月31日
【審査請求日】2021年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森實 裕人
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】金井 政樹
【審査官】 上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/151291(WO,A1)
【文献】 特開2016−218576(JP,A)
【文献】 特開2015−191341(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/013687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G05D 1/00−1/12
G06Q 10/00−10/10
30/00−30/08
50/00−50/20
50/26−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内の予め定められた走行経路に沿って自律走行する無人車両と、前記鉱山内を運転手が搭乗して走行する有人車両とのそれぞれに無線通信接続された、前記無人車両及び前記有人車両の干渉回避のための交通管制を行う交通管制サーバであって、
前記交通管制サーバは、
前記無人車両に対し、前記走行経路上の部分区間を当該無人車両の走行を許可する走行許可区間として設定する走行許可区間設定部と、
前記有人車両が前記走行許可区間に接近すると、当該有人車両に対して警告を発信し、当該有人車両と前記走行許可区間内を走行する前記無人車両との干渉を回避させるための干渉制御部と、
前記無人車両の走行経路を示す地図情報を格納するマスタ地図情報記憶部と、
設定された前記走行許可区間を示す区間応答情報を前記無人車両に送信し、前記警告を発するための警告情報を前記有人車両に送信するとともに、前記有人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記有人車両の位置情報および前記無人車両の位置算出装置が算出した前記無人車両の位置情報を受信するサーバ側通信制御部と、
受信した前記有人車両の位置情報に基づいて、前記有人車両の周りに前記有人車両が停止可能な停止トリガー領域を設定し、前記無人車両に対して設定された前記走行許可区間の周りに警告領域を設定する干渉判定領域設定部と、を備え、
前記干渉制御部は、前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて、前記有人車両に対して警告画面表示および警告鳴動のすくなくとも1つを行うための前記警告情報を生成し、
前記サーバ側通信制御部は、前記警告情報を前記有人車両に対して送信することを特徴とする交通管制サーバ。
【請求項2】
請求項1に記載の交通管制サーバにおいて、
前記干渉制御部は、前記有人車両の前記停止トリガー領域と前記無人車両に設定された前記走行許可区間との重なりがある場合に緊急回避の度合いが最も高いレベルの警告情報を生成し、前記有人車両の前記停止トリガー領域と前記無人車両に次に設定される予定の前記次走行許可区間との重なりがある場合に緊急回避の度合いが中程度の警告情報を生成し、前記有人車両の前記停止トリガー領域と前記警告領域との重なりがある場合には緊急回避の度合いが最も低いレベルの警告情報を生成することを特徴とする交通管制サーバ。
【請求項3】
請求項1に記載の交通管制サーバにおいて、
前記干渉制御部は、前記警告情報を生成するとともに、前記無人車両に制動動作を行わせるための制動指示情報を生成し、
前記サーバ側通信制御部は、前記警告情報を前記有人車両に対して送信するとともに、前記制動指示情報を前記無人車両に対して送信することを特徴とする交通管制サーバ。
【請求項4】
請求項1に記載の交通管制サーバにおいて、
前記警告情報を解除する警告解除機能を備え、
前記有人車両の前記停止トリガー領域と前記無人車両に次に設定される予定の前記次走行許可区間または前記警告領域との重なりがある場合に、前記警告情報を解除可能とし、
前記有人車両の前記停止トリガー領域と前記無人車両に設定された前記走行許可区間との重なりがある場合に、前記警告情報を解除不可能とすることを特徴とする交通管制サーバ。
【請求項5】
請求項4に記載の交通管制サーバにおいて、
前記有人車両の前記停止トリガー領域と前記無人車両に次に設定される予定の前記次走行許可区間との重なりがある場合に、前記警告情報が解除された時からの時間を計測し、前記計測した時間が一定時間を経過したとき、前記警告情報を解除しない状態に戻すことを特徴とする交通管制サーバ。
【請求項6】
鉱山内の予め定められた走行経路に沿って自律走行する無人車両と、前記鉱山内を運転手が搭乗して走行する有人車両とのそれぞれに無線通信接続された、前記無人車両及び前記有人車両の干渉回避のための交通管制を行う交通管制サーバを含む交通管制システムであって、
前記交通管制サーバは、
前記無人車両に対し、前記走行経路上の部分区間を当該無人車両の走行を許可する走行許可区間として設定する走行許可区間設定部と、
前記有人車両が前記走行許可区間に接近すると、当該有人車両に対して警告を発信し、当該有人車両と前記走行許可区間内を走行する前記無人車両との干渉を回避させるための干渉制御部と、
前記無人車両の走行経路を示す地図情報を格納するマスタ地図情報記憶部と、
設定された前記走行許可区間を示す区間応答情報を前記無人車両に送信し、前記警告を発するための警告情報を前記有人車両に送信するとともに、前記有人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記有人車両の位置情報および前記無人車両の位置算出装置が算出した前記無人車両の位置情報を受信するサーバ側通信制御部と、
受信した前記有人車両の位置情報に基づいて、前記有人車両の周りに前記有人車両が停止可能な停止トリガー領域を設定し、前記無人車両に対して設定された前記走行許可区間の周りに警告領域を設定する干渉判定領域設定部と、を備え、
前記有人車両は、
前記警告情報を受信するとともに、前記有人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記有人車両の位置情報を前記交通管制サーバに送信する有人端末側通信制御部と、
前記警告情報に基づいて前記運転手への警告を発する処理を行う警告処理部と、を備え、
前記無人車両は、
前記区間応答情報を受信するとともに、前記無人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記無人車両の位置情報を前記交通管制サーバに送信する無人端末側通信制御部と、
前記区間応答情報に基づいて、前記無人車両を自律走行させる制御を行う自律走行制御部と、を備え、
前記干渉制御部は、前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて、前記有人車両に対して警告画面表示および警告鳴動のすくなくとも1つを行うための前記警告情報を生成し、
前記サーバ側通信制御部は、前記警告情報を前記有人車両に対して送信することを特徴する交通管制システム。
【請求項7】
請求項6に記載の交通管制システムにおいて、
前記警告情報を表示するための表示装置を備え、
前記表示装置は、前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて生成された前記警告情報に基づいて、前記表示装置の画面表示を変更することを特徴する交通管制システム。
【請求項8】
請求項1に記載の交通管制サーバと無線通信接続され、前記警告情報を表示するための表示装置であって、
前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて生成された前記警告情報に基づいて、前記表示装置の画面表示を変更することを特徴する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通管制サーバ及び交通管制システム並びに交通管制サーバと無線通信可能な表示装置に係り、特に無人車両及び有人車両が走行する作業現場における両者の干渉を抑止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
露天掘り鉱山などでは、掘削した鉱石を搬送する無人ダンプなどの複数の自律走行車両(以下「無人車両」という)と、道路を整備するドーザやグレーダ、埃が立たないようにする散水車、パトロールをするサービスカー等の有人車両と、が混在して走行することがある。無人車両は管制局からの指示に従って自律走行しているので、無人車両同士の干渉は管制局による交通管制により抑止することができる。しかし、有人車両は、その有人車両を運転する運転手の判断で走行しており、管制局が有人車両の進行方法を把握していない。そのため、現状では、無人車両及び有人車両の干渉回避は有人車両の運転手の注意力や運転技術に大きく依存しており、より安全性を向上させたいという要望がある。
【0003】
このような干渉回避のための技術として、特許文献1には、無人車両と有人車両とが交差する位置までの距離に基づいて、干渉を回避するための動作レベルを複数段階から一つ決定し、有人車両の運転手に対する警告情報の出力を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6325655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現時点では、有人車両と無人車両の進行方向が交差せず、接触しない場合であっても、有人車両のオペレータが無人車両の接近に気づかず、有人車両を急に動かす、方向転換などの動作により、将来的に無人車両と干渉する恐れが発生する。この場合、干渉の危険性が大きくなることで安全性が十分に確保できない。
【0006】
また、有人車両の現在位置が、無人車両に対して次に設定される予定の走行許可区間に侵入している場合に、有人車両への注意喚起が行われない場合には、無人車両に走行許可区間を設定することを妨害してしまう状況が発生する。この場合には、無人車両の停止につながり、鉱山全体の生産性の低下につながる。
【0007】
特許文献1は、有人車両と無人車両との進行方向が交差する状況下での干渉回避に役立つ技術を提供しているが、現時点で有人車両と無人車両とが交差していない状況であっても、有人車両の運転手への注意喚起が行われていない場合には干渉の危険性が増大すること、有人車両が無人車両の進路を妨害することで鉱山全体の生産性の低下の抑止することについては考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、有人車両と無人車両との干渉を制御することにより、鉱山内を走行する有人車両及び無人車両の安全性の確保及び生産性の低下抑止を両立させることのできる交通管制サーバ及び交通管制システム並びに交通管制サーバと無線通信可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る交通管制サーバは、鉱山内の予め定められた走行経路に沿って自律走行する無人車両と、前記鉱山内を運転手が搭乗して走行する有人車両とのそれぞれに無線通信接続された、前記無人車両及び前記有人車両の干渉制御のための交通管制を行う交通管制サーバであって、前記交通管制サーバは、前記無人車両に対し、前記走行経路上の部分区間を当該無人車両の走行を許可する走行許可区間として設定する走行許可区間設定部と、前記有人車両が前記走行許可区間に接近すると、当該有人車両に対して警告を発信し、当該有人車両と前記走行許可区間内を走行する前記無人車両との干渉を回避させるための干渉制御部と、前記無人車両の走行経路を示す地図情報を格納するマスタ地図情報記憶部と、設定された前記走行許可区間を示す区間応答情報を前記無人車両に送信し、前記警告を発するための警告情報を前記有人車両に送信するとともに、前記有人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記有人車両の位置情報および前記無人車両の位置算出装置が算出した前記無人車両の位置情報を受信するサーバ側通信制御部と、受信した前記有人車両の位置情報に基づいて、前記有人車両の周りに前記有人車両が停止可能な停止トリガー領域を設定し、前記無人車両に対して設定された前記走行許可区間の周りに警告領域を設定する干渉判定領域設定部と、を備える。前記干渉制御部は、前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて、前記有人車両に対して警告画面表示および警告鳴動のすくなくとも1つを行うための前記警告情報を生成し、前記サーバ側通信制御部は、前記警告情報を前記有人車両に対して送信することを特徴する。
【0010】
また、本発明に係る交通管制システムは、鉱山内の予め定められた走行経路に沿って自律走行する無人車両と、前記鉱山内を運転手が搭乗して走行する有人車両とのそれぞれに無線通信接続された、前記無人車両及び前記有人車両の干渉回避のための交通管制を行う交通管制サーバを含む交通管制システムであって、前記交通管制サーバは、前記無人車両に対し、前記走行経路上の部分区間を当該無人車両の走行を許可する走行許可区間として設定する走行許可区間設定部と、前記有人車両が前記走行許可区間に接近すると、当該有人車両に対して警告を発信し、当該有人車両と前記走行許可区間内を走行する前記無人車両との干渉を回避させるための干渉制御部と、前記無人車両の走行経路を示す地図情報を格納するマスタ地図情報記憶部と、設定された前記走行許可区間を示す区間応答情報を前記無人車両に送信し、前記警告を発するための警告情報を前記有人車両に送信するとともに、前記有人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記有人車両の位置情報および前記無人車両の位置算出装置が算出した前記無人車両の位置情報を受信するサーバ側通信制御部と、受信した前記有人車両の位置情報に基づいて、前記有人車両の周りに前記有人車両が停止可能な停止トリガー領域を設定し、前記無人車両に対して設定された前記走行許可区間の周りに警告領域を設定する干渉判定領域設定部と、を備え、前記有人車両は、前記警告情報を受信するとともに、前記有人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記有人車両の位置情報を前記交通管制サーバに送信する有人端末側通信制御部と、前記警告情報に基づいて前記運転手への警告を発する処理を行う警告処理部と、を備え、前記無人車両は、前記区間応答情報を受信するとともに、前記無人車両に搭載された位置算出装置が算出した前記無人車両の位置情報を前記交通管制サーバに送信する無人端末側通信制御部と、前記区間応答情報に基づいて、前記無人車両を自律走行させる制御を行う自律走行制御部と、を備える。前記干渉制御部は、前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて、前記有人車両に対して警告画面表示および警告鳴動のすくなくとも1つを行うための前記警告情報を生成し、前記サーバ側通信制御部は、前記警告情報を前記有人車両に対して送信することを特徴する。
【0011】
また、本発明に係る表示装置は、前記交通管制サーバと無線通信接続され、前記警告情報を表示するための表示装置であって、前記有人車両の前記停止トリガー領域と、前記無人車両に設定された前記走行許可区間および前記無人車両に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なりに応じて生成された前記警告情報に基づいて、前記表示装置の画面表示を変更することを特徴する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザに対して、回避行動を促したら、無人車両の進行を優先させることができ、干渉回避を行って安全性を確保できるとともに、生産性を向上させることができる。
【0013】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態に係る交通管制システムの概略構成を示す図。
図2図1の搬送路を詳述した図。
図3】交通管制サーバ、無人ダンプ及びダンプ端末装置のハードウェア構成図。
図4】有人車両端末装置のハードウェア構成図。
図5】交通管制サーバ及びダンプ端末装置の主な機能を示す機能ブロック図。
図6】交通管制サーバ及び有人車両端末装置の主な機能を示す機能ブロック図。
図7】走行許可区間設定処理を示す図であって、(a)は各無人ダンプに対して設定された走行許可区間を示し、(b)は無人ダンプに対して新たに設定された走行許可区間を示し、(c)は解放区間を示す図。
図8】有人車両による無人ダンプの走行許可区間への干渉状態を示す図。
図9】無人ダンプが有人車両の脇を通過する状態を示す図であって、(a)は有人車両が停止している状態、(b)は有人車両が無人ダンプの走行許可区間に侵入しない方向に走行している状態、(c)は無人ダンプが有人車両の脇を通過する状態、(d)は有人車両が無人ダンプの走行許可区間に侵入してしまう状態を示す図。
図10】有人車両が、無人ダンプに設定される予定の次の走行許可区間候補に存在し、無人ダンプの進行を妨げている状態を示す図であって、(a)は無人ダンプが進行している状態、(b)は有人車両が無人ダンプに設定される予定の次の走行許可区間候補に存在している状態、(c)は無人ダンプが設定された走行許可区間の終端で停止する状態を示す図。
図11】第一実施形態に係る交通管制サーバの処理の流れを示すフローチャート。
図12】干渉制御処理で用いられる領域を説明する図であって、(a)は無人ダンプに対する走行許可区間、警告領域、次走行許可区間の関係、(b)は有人車両に対する停止トリガー領域の設定を示す図。
図13】干渉制御処理の流れを示すフローチャート。
図14】有人車両が無人ダンプの走行許可区間に侵入している状態を示す図。
図15】警告レベル3における画面表示例を示す図であって、(a)は北方向が上の例、(b)は有人車両の進行方向が上の例を示す図。
図16】有人車両が無人ダンプの進路を妨害している状態を示す図であって、(a)は有人車両が一つ先の走行許可区間候補に存在している状態、(b)は手前の走行許可区間候補を走行許可区間とした状態を示す図。
図17】警告レベル2における画面表示例を示す図。
図18】無人ダンプが有人車両の脇を通過する状態を示す図。
図19】警告レベル1における画面表示例を示す図。
図20】第二実施形態に係る、警告情報の解除機能を備えた干渉制御処理の流れを示すフローチャート。
図21】警告情報の解除機能を備えた干渉制御処理における画面表示例を示す図。
図22】警告解除ボタンに対する画面表示例を示す図であって、(a)は警告解除ボタンが有効な状態、(b)は警告解除ボタンが無効な状態、(c)は警告解除ボタンが押された状態を示す図。
図23】警告情報の解除機能を備えた警告レベル3の警告処理の流れを示すフローチャート。
図24】警告情報の解除機能を備えた警告レベル2の警告処理の流れを示すフローチャート。
図25】警告情報の解除機能を備えた警告レベル1の警告処理の流れを示すフローチャート。
図26】実際に即した画面表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部分には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
(第一実施形態)
第一実施形態は、鉱山においてショベルやホイールローダ等の積込機が積み込んだ土砂や鉱石を搬送し、運転手が搭乗することなく自律走行する無人ダンプ(無人車両に相当する)と、ドーザやグレーダ、散水車、及びサービスカーのような運転手が搭乗して走行する有人車両と、これら無人ダンプ及び有人車両の干渉を回避するために交通管制を行う交通管制サーバと、を無線通信回線で接続した交通管制システムに係り、特に生産性と安全性との両立を図りつつ、無人ダンプ及び有人車両の干渉を抑止するための構成に特徴がある。以下、本発明の第一実施形態に係る交通管制システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0017】
まず、図1に基づいて第一実施形態に係る交通管制システムの概略構成について説明する。図1は、第一実施形態に係る交通管制システムの概略構成を示す図である。図1に示す交通管制システム1は、鉱山などの採石場で、土砂や鉱石の積込作業を行うショベル10−1、10−2から積み込まれた土砂や鉱石等の積荷を搬送するための鉱山用の無人ダンプ(以下「無人車両」という場合がある)20−1、20−2、及び散水車やサービスカー等の有人車両70−1、70−2のそれぞれと、採石場の近傍若しくは遠隔の管制センタ30に設置された交通管制サーバ31とを、無線通信回線40を介して互いに通信接続して構成される。
【0018】
各無人ダンプ20−1、20−2は、鉱山内で予め設定された搬送路60に沿って、ショベル10−1又は10−2、及び図示しない放土場の間を往復し、積荷を搬送する。
【0019】
鉱山内には、複数の無線基地局41−1、41−2、41−3が設置される。そしてこれらの無線基地局41−1、41−2、41−3を経由して、無線通信の電波が送受信される。
【0020】
ショベル10−1、10−2及び各無人ダンプ20−1、20−2は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation System)の少なくとも3つの航法衛星50−1、50−2、50−3から測位電波を受信して自車両の位置を取得するための位置算出装置(図1では図示を省略する)を備える。GNSSとして、例えばGPS(Global Positioning System)、GALILEOを用いてもよい。無人ダンプ20−1、20−2や有人車両70−1、70−2は実際には複数存在し、それぞれが交通管制サーバ31と無線で通信を行うが、その構成は同じであるので、以下ではショベル10−1、無人ダンプ20−1、及び有人車両70−1を例に挙げて説明する。
【0021】
ショベル10−1は、超大型の油圧ショベルであって、走行体11と、この走行体11上に旋回可能に設けた旋回体12と、運転室13と、旋回体12の前部中央に設けたフロント作業機14と、を備えて構成される。フロント作業機14は、旋回体12に対して俯仰動可能に設けられたブーム15と、このブーム15の先端に回動可能に設けられたアーム16と、そのアーム16の先端に取り付けられたバケット17とを含む。ショベル10−1における見通しの良い場所、例えば運転室13の上部に、無線通信回線40に接続するためのアンテナ18が設置されている。
【0022】
無人ダンプ20−1は、本体を形成するフレーム21と、前輪22及び後輪23と、フレーム21の後方部分に設けられたヒンジピン(図示せず)を回動中心として上下方向に回動可能な荷台24を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ(図示せず)と、を含む。また、無人ダンプ20−1は、見通しの良い場所、例えば、無人ダンプ20−1の上面前方に、無線通信回線40に接続するためのアンテナ25が設置される。
【0023】
更に無人ダンプ20−1は、交通管制サーバ31からの指示に従って自律走行するための車載端末装置(以下「ダンプ端末装置」と略記する)26(図3等参照)を搭載する。
【0024】
有人車両70−1は、交通管制サーバ31からの指示に従って、運転手に対してブレーキ操作を促すための警告を発報するための警告装置768を含む車載端末装置(以下「有人車両端末装置」と略記する)76(図4等参照)を搭載する。
【0025】
交通管制サーバ31は、無線通信回線40に接続するためのアンテナ32に接続される。そして、交通管制サーバ31は、アンテナ32、無線基地局41−1、41−2、41−3を経由して、ダンプ端末装置26及び有人車両端末装置76のそれぞれと通信する。
【0026】
図2は、図1の搬送路60を詳述した図であり、無人ダンプや有人車両が走行する露天掘り鉱山現場の構成例を示す。図2の符号61は、ショベルによる掘削現場を示す。ショベル10−1は、このエリアで掘った表土や鉱石を無人ダンプ20−1に積み込む。よって、掘削現場61は、積込位置を含む。
【0027】
図2の符号62は、表土を展開する放土場である。無人ダンプ20−1が掘削現場61から搬送した表土等は、この場所で放土され、層状あるいは放射状に展開される。
【0028】
図2の符号63は、鉱石を粉砕処理するクラッシャ(不図示)などが設置された放土場である。クラッシャが破砕した鉱石は、ベルトコンベアなどにより貨車による積み出し場あるいは処理設備などに搬送される。無人ダンプ20−1は、掘削現場61で表土や鉱石を積み込む。そして、無人ダンプ20−1は搬送路60を走行して、それらを放土場62又は63に搬送する。
【0029】
掘削現場61において、ショベル10−1が表土を掘削している場合、無人ダンプ20−1は、掘削現場61及び放土場62の間を往復する。掘削現場61において、ショベル10−1が鉱石を掘削している場合は、無人ダンプ20−1は、掘削現場61及び放土場63の間を往復する。このため、搬送路60は、掘削現場61及び放土場62を結ぶ搬送路と、掘削現場61及び放土場63を結ぶ搬送路と、を含み、これらの搬送路が交差点67において交差する。そこで、複数の無人ダンプがそれぞれ異なる積荷、表土又は鉱石を搬送している場合は、無人ダンプ同士が交差点67などにおいて干渉する恐れがある。
【0030】
また、搬送路60上には、無人ダンプ20−1の進行方向が異なる二つの走行経路64が備えられる。各走行経路64は、上り車線及び下り車線を構成する。そして、無人ダンプ20−1は、搬送路60上を一般の道路などと同じように例えば左側通行で走行する。
【0031】
走行経路64は、地図上で設定された座標値として与えられる。より具体的には、交通管制サーバ31と各無人ダンプ20−1とに同一の地図情報を格納しておく。この地図情報は、地図上にある地点(以下「ノード」という)65と、このノード65の座標値とを含む。走行経路64は、複数のノード65、及び隣接するノード65を接続するサブリンク66により定義される。
【0032】
次に、図3及び図4を参照して、図1の交通管制サーバ31、無人ダンプ20−1及びダンプ端末装置26、及び有人車両端末装置76のハードウェア構成について説明する。図3は、交通管制サーバ31、無人ダンプ20−1及びダンプ端末装置26のハードウェア構成図である。図4は、有人車両端末装置76のハードウェア構成図である。
【0033】
図3に示すように、交通管制サーバ31は、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、マスタ地図情報データベース(以下データベースを「DB」と略記する)316、及び走行許可区間情報DB317(以下「区間情報DB」と略記する)を含んで構成される。
【0034】
サーバ側制御装置311は、交通管制サーバ31の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置の他、交通管制サーバ31で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、また、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、を含むハードウェアを用いて構成される。交通管制サーバ31で実行されるプログラムの機能構成は図5を参照して後述する。また、サーバ側制御装置311は、交通管制サーバ31で実行される機能を実現するための集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を用いて構成してもよい。
【0035】
サーバ側入力装置312は、マウス、キーボードなどの入力装置により構成され、無人ダンプ20−1の状態表示や無人ダンプ20−1へのマニュアル指示を入力するためのユーザインターフェースとして機能する。
【0036】
サーバ側表示装置313は、液晶モニタ等により構成され、オペレータに対して情報を表示して提供するインターフェースとして機能する。
【0037】
サーバ側通信装置314は、有線/無線ネットワークとの通信接続を行う装置により構成される。交通管制サーバ31は有線通信回線33を介してアンテナ32と接続され、無線通信回線40を介して無線基地局41−1、41−2、41−3と接続される。
【0038】
通信バス315は、各構成要素を互いに電気的に接続する。
【0039】
マスタ地図情報DB(マスタ地図情報記憶部)316は、HDDなど情報を固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、搬送路60上の各ノードの位置情報(座標値)と、各ノードを連結するサブリンクとにより定義された地図情報(走行経路情報)を記憶する。また、鉱山の地形情報や、各ノードの絶対座標(測位電波を基に算出される3次元実座標)を含んでもよい。各ノードには、そのノードを固有に識別する位置識別情報(以下「ノードID」という)が付与される。
【0040】
区間情報DB317は、HDDなど情報を固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、各無人ダンプ20−1を固有に識別する車両識別情報、各無人ダンプに割り当てられた走行許可区間を示す位置情報、各無人ダンプの現在位置、走行速度を含む区間情報を記憶する。車両識別情報は、無人ダンプ及び有人車両の区別がつく情報であることが望ましい。または、区間情報DB317は、車両識別情報に無人ダンプ又は有人車両の区別をつけるためのフラグを関連付けて格納してもよい。
【0041】
上記の各DBは、地図情報や区間情報を記憶する記憶部だけを備え、サーバ側制御装置311がそれらのデータベースの更新・検索処理を行ってもよいし、各DBに情報の更新・検索処理を行うエンジンを搭載したものでもよい。
【0042】
一方、無人ダンプ20−1は、電気駆動ダンプトラックであって、ダンプ端末装置26の他、ダンプ端末装置26の指示を受けて無人ダンプ20−1の加減速やステアリングを制御する車両制御装置27、外界センサ装置28、及び位置検出装置29を備える。
【0043】
ダンプ端末装置26は、端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265、及び端末側地図情報DB266を含んで構成される。
【0044】
端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265、及び端末側地図情報DB266のそれぞれは、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、及びマスタ地図情報DB316のそれぞれと同一の構成であるので、重複説明を省略する。上記端末側地図情報DB266は、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報と同じ地図情報を格納する。
【0045】
車両制御装置27は、リターダブレーキ271、サービスブレーキ272、ステアリング制御装置273、及び加速制御装置274を含む。車両制御装置27は、ダンプ端末装置26に電気的に接続され、交通管制サーバ31からの指示に従って無人ダンプ20−1を自律走行させる。
【0046】
リターダブレーキ271は、通常制動時に使用するブレーキである。リターダブレーキ271は、電気駆動エンジンを構成する電動機を発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生電力を生成し、これを抵抗器に印加して熱エネルギーとして消費させることで制動力を得るものである。
【0047】
サービスブレーキ272は、緊急制動時に使用するブレーキであり、機械ブレーキにより構成される。サービスブレーキ272の頻回の使用は、機械ブレーキの構成部品、例えばブレーキパッドやディスクの磨耗を招く。
【0048】
ステアリング制御装置273は、無人ダンプ20−1のステアリング角度を調整する。
【0049】
加速制御装置274は、無人ダンプ20−1の加速、減速の調整を行う。
【0050】
外界センサ装置28は、ミリ波レーダや前方カメラなど、無人ダンプ20−1の走行方向(進行方向)前方の障害物を検知するためのセンサであり、その種類は問わない。外界センサ装置28の検知結果はダンプ端末装置26の端末側制御装置261に出力され、通常時は走行経路から離脱しないように走行位置の監視や加減速に用いられ、緊急時には緊急回避行動に必要な制御動作に用いられる。
【0051】
位置算出装置29は、航法衛星50−1、50−2、50−3(図1参照)からの測位電波を基に自車両の現在位置を算出する。算出された自車両の現在位置は、ダンプ端末装置26から交通管制サーバ31に対して送信される。
【0052】
ダンプ端末装置26は、無線基地局41−1、41−2、41−3を経由して交通管制サーバ31と無線通信接続される。
【0053】
図4に示すように、有人車両端末装置76もダンプ端末装置26と同様、端末側制御装置761、端末側入力装置762、端末側表示装置763、端末側通信装置764、及び通信バス765を含む。これらの各構成要素はダンプ端末装置26の構成と同様であるので重複説明を省略する。
【0054】
有人車両端末装置76は、上記の構成に加え、交通管制サーバ31からの指示に従って有人車両70−1の運転手に対して干渉回避動作(ブレーキ操作やステアリング操作)を促すための警告を発する警告装置768を備える。
【0055】
警告装置768は、警告音や警告メッセージを発声するスピーカや点滅ライトなど、オペレータの五感に対して作用する警告を発報するものであれば、その種類は問わない。また、警告装置768は、端末側表示装置763の画面に警告表示を行うものとして構成してもよい。有人車両端末装置76は、ダンプ端末装置26と同様、有人車両70−1の現在位置を検出する位置算出装置79に電気的に接続される。
【0056】
有人車両端末装置76は、無線基地局41−1、41−2、41−3を経由して交通管制サーバ31と無線通信接続される。
【0057】
次に、図5及び図6を参照して、図1の交通管制サーバ31、ダンプ端末装置26、及び有人車両端末装置76の機能構成について説明する。図5は、交通管制サーバ及びダンプ端末装置の主な機能を示す機能ブロック図である。図6は、有人車両端末装置の主な機能を示す機能ブロック図である。
【0058】
図5に示すように、交通管制サーバ31のサーバ側制御装置311は、配車管理部311a、走行許可区間設定部311b、干渉制御部311c、干渉判定領域設定部311d、サーバ側通信制御部311e、及び通信インターフェース(以下「通信I/F」と略記する)311fを備える。
【0059】
配車管理部311aは、無人ダンプ20−1の目的地を設定し、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照して、現在位置から目的地に至る走行経路を決定する。
【0060】
配車管理部311aの処理例として、例えば無人ダンプ20−1が駐機場にいる場合には、積込位置を含む積込場の入口を目的地として設定する。そして、配車管理部311aは、駐機場から積込場の入口に至るまでの走行経路を設定する。この走行経路の設定に際し、配車管理部311aは、積込位置の移動に伴って動的に走行経路を生成してもよい。更に、配車管理部311aは、無人ダンプ20−1が積込位置に入る場合には積載物の内容によって放土場62、63のいずれかを目的地として設定し、それに至るまでの走行経路を生成する。
【0061】
走行許可区間設定部311bは、無人ダンプ20−1に対し、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照し、配車管理部311aで決定された走行経路上の部分区間を無人ダンプ20−1の走行を許可する走行許可区間として設定し、当該走行許可区間の位置を示す区間情報を生成する。走行許可区間設定部311bは、区間情報DB317に格納された区間情報に対し、新たに生成した区間情報を上書きして更新する。区間情報には、走行許可区間の最前端のノードである前方境界点のノードID、及び最後端のノードである後方境界点のノードIDが含まれる。走行許可区間設定部311bは、ダンプ端末装置26から新たな走行許可区間の設定を要求する情報(以下「要求情報」という)を受信すると、これに応じて走行許可区間の設定処理を行う。走行許可区間設定部311bは、新たな走行許可区間を設定した際には既に通過した走行許可区間を削除し、新たに設定した走行許可区間に対してその走行許可区間の区間情報を生成し、できなかった場合には走行不許可を示す応答情報を生成する。
【0062】
干渉制御部311cは、区間情報DB317に格納された区間情報を参照し、有人車両70−1が走行許可区間に接近すると、有人車両70−1の運転手に対して警告を発するための警告情報を生成する。また、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1に減速、リターダブレーキ271を用いた通常停止動作、又はサービスブレーキ272を用いた(リターダブレーキ271を併用する場合もある)緊急停止動作を指示するための制動指示情報を生成する。
【0063】
干渉判定領域設定部311dは、干渉制御部311cでの干渉判定を行うために、走行許可区間設定部311bで設定された走行許可区間に基づく無人ダンプ20−1の警告領域の設定、無人ダンプ20−1からの要求情報および配車管理部311aからの走行経路に基づいて、新たに設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間候補(以下「次走行許可区間」という場合がある)を設定する。また、有人車両70−1の現在位置および速度に基づいて、有人車両70−1に対する停止トリガー領域を設定する。前記干渉制御部311cでは、上記の領域の重複に基づいて、干渉状態を判定する。
【0064】
サーバ側通信制御部311eは、ダンプ端末装置26及び有人車両端末装置76(図6)との間の無線通信制御を行う。具体的には、制動指示情報と、区間情報又は応答情報(区間応答情報)と、をダンプ端末装置26に送信する。また、ダンプ端末装置26から、要求情報、無人ダンプ20−1の位置算出装置29が算出した自車両の位置を示す無人ダンプ位置情報、及び無人ダンプ20−1の速度情報を受信する。速度情報は、位置情報の変化量を基に走行方向及び速さ(スカラ量)を含む速度(ベクトル)を示す情報として構成してもよいし、無人ダンプ20−1に搭載したジャイロセンサのような車体の向きを検出するセンサの出力結果と車輪の回転数から求めた速さとを組み合わせた情報として構成してもよい。
【0065】
通信I/F311fは、USB(Universal Serial Bus)規格の接続端子等、サーバ側通信装置314と通信接続するためのハードウェアにより構成される。
【0066】
次にダンプ端末装置26について説明する。ダンプ端末装置26の端末側制御装置261は、自律走行制御部261a、端末側通信制御部261b、通信I/F261c、及び要求情報処理部261dを備える。
【0067】
自律走行制御部261aは、位置算出装置29から自車両の現在位置を取得し、端末側地図情報DB266の地図情報を参照して、区間情報に含まれる走行許可区間に従って自車両を走行させるための制御を車両制御装置27に対して行う。また、自律走行制御部261aは、外界センサ装置28の検知結果に基づいて前方障害物の有無を判定し、障害物との干渉、衝突の回避動作の有無も判定し、必要があれば制御動作のための制御を行う。更に自律走行制御部261aは、交通管制サーバ31からの指示に従って、車両制御装置27に含まれる制動装置に対する駆動制御を行い、減速動作、通常停止動作、又は緊急停止動作を行う。従って、自律走行制御部261aは、制動制御部としての機能も有する。
【0068】
端末側通信制御部(無人端末側通信制御部)261bは、交通管制サーバ31との間で行う無線通信の制御を行う。端末側通信装置261bは、要求情報の送信と、区間情報又は応答情報(区間応答情報)、制動指示情報の受信と、を行う。
【0069】
通信I/F261cは、USB規格の接続端子等、端末側通信装置264と通信接続をするためのハードウェアにより構成される。
【0070】
要求情報処理部261dは、端末側地図情報DB266に格納された地図情報及び位置算出装置29が算出した現在位置を基に、無人ダンプ20−1が要求情報を送信する要求地点に到達したかを判断し、要求地点に到達すると要求情報を生成して端末側通信制御部261bを介して交通管制サーバ31に対して要求情報を送信する。
【0071】
また、図6に示すように、有人車両70−1に搭載する有人車両端末装置76の端末側制御装置761は、警告処理部761a、端末側通信制御部761b、及び通信I/F761cを備える。端末側通信制御部761b、及び通信I/F761cは、ダンプ端末装置26の構成と同様であるので重複説明を省略する。なお、有人車両70−1に搭載される位置算出装置79が算出した自車両の現在位置を示す位置情報は、端末側通信制御装置(有人端末側通信制御部)761bを介して交通管制サーバ31に送信される。
【0072】
警告処理部761aは、交通管制サーバ31(のサーバ側通信制御部311e)から受信した警告情報に示す警告レベル(後述)に応じた警告を、警告装置768が発するように制御する。また、警告処理部761aは、上記警告レベルに応じた警告表示を端末側表示装置763に表示する。
【0073】
交通管制サーバ31が備える配車管理部311a、走行許可区間設定部311b、干渉制御部311c、干渉判定領域設定部311d、サーバ側通信制御部311eは、これらの機能を実現するプログラムが図3に示すサーバ側制御装置311(ハードウェア)により実行されることにより実現する。同様に、ダンプ端末装置26に備えられる自律走行制御部261a、端末側通信制御部261b、及び要求情報処理部261dは、これらの機能を実現するプログラムが図3に示す端末側制御装置261(ハードウェア)により実行されることで実現する。更に、有人車両端末装置76に備えられる警告処理部761a及び端末側通信制御部761bは、これらの機能を実現するプログラムが図4に示す端末側制御装置761(ハードウェア)により実行されることで実現する。
【0074】
次に、図7(a)〜(c)を参照して、交通管制サーバ31による走行許可区間設定処理について説明する。図7(a)〜(c)は、走行許可区間設定処理を示す図であって、図7(a)は各無人ダンプに対して設定された走行許可区間を示し、図7(b)は無人ダンプに対して新たに設定された走行許可区間を示し、図7(c)は解放区間を示す。交通管制サーバ31は、排他的に走行許可区間を設定するので、走行許可区間設定処理の説明は、無人ダンプ同士の干渉を回避するための処理の説明も兼ねる。
【0075】
図7(a)に示す無人ダンプ20−1、20−2は、矢印A方向に向かって走行中の無人ダンプである。走行許可区間83aは無人ダンプ20−1に対して設定された走行許可区間である。走行許可区間83bは無人ダンプ20−2に対して設定された走行許可区間である。D1は、無人ダンプ20−1の現在位置から走行許可区間83aの前方境界点(終端)までの走行経路64に沿った距離を示す走行許可残存距離である。D2は、要求情報の送信を開始する走行許可要求開始距離である。
【0076】
走行許可要求開始距離D2は、無人ダンプ20−1が停止可能な距離(以下「停止可能距離」といい、UVSLで表す)よりも長い距離であり、例えばUVSLにマージンとしての所定のオフセット距離mを加えた距離として定義される。この場合、走行許可要求開始距離D2は下式(1)で表せる。また、UVSLは、無人ダンプ20−1の現在の速度から通常の制動操作、即ちリターダブレーキ271を主に用いる制動動作で停止できる距離を基に算出され、例えば下式(2)により表せる。
[数1]
[数2]
【0077】
所定のオフセット距離mの値は、例えば無線通信にかかる時間や無線通信の障害の発生度合いなどを考慮して設定する。無人ダンプ20−1の速度vは、無人ダンプ20−1の現在速度を車輪の回転数などから測定したものであってもよく、また、無人ダンプ20−1の現在の走行位置に対してマスタ地図情報DB316及び端末側地図情報DB266に格納された地図情報に設定されている最大許容速度を用いてもよい。
【0078】
無人ダンプ20−1の走行許可残存距離D1が走行許可要求開始距離D2以下となったとき、無人ダンプ20−1は、交通管制サーバ31に対して要求情報を送信する。要求情報は無人ダンプ20−1の現在位置情報を含む。
【0079】
走行許可区間設定部311bは、無人ダンプ20−1から要求情報を受信すると、送られてきた要求情報に含まれる位置情報に基づいて無人ダンプ20−1の存在する区間(隣接するノード65間の走行経路64に相当する)を特定する。そして、無人ダンプ20−1の進行方向前方に向かって、無人ダンプ20−1の存在する区間の終端から走行許可付与長さ以上となる区間について走行許可を設定する。但し、他の車両に許可が設定されている区間がある場合には、その手前までについて走行許可区間を設定する。
【0080】
図7(b)に示す例では、無人ダンプ20−1の存在する区間は90であり、その終端から走行許可付与長さ95に含まれる区間は、区間91、92、93、94となる。但し、区間93、94は、既に無人ダンプ20−2に走行許可区間83bとして設定されている。そこで、無人ダンプ20−1に対して新たに設定できる走行許可区間の候補は、区間91、92となるが、区間91は既に無人ダンプ20−1に対して設定されている走行許可区間83aに含まれている。従って、走行許可区間設定部311bは、区間92のみを新たな走行許可区間として設定する。
【0081】
走行許可区間設定部311bは、走行許可を設定された区間のうち無人ダンプ20−1が通過した区間を所定のタイミングで解除する。具体的には、図7(c)に示すように、走行許可区間設定部311bは、解除対象となる区間(図7(c)に示す例では、区間93)の終端から無人ダンプ20−2の位置までの距離D4が、予め定められた走行許可解除距離D3以上となったときに解除する。解除された区間(解放区間)は、後続の無人ダンプ20−1の走行許可区間として設定可能になる。
【0082】
無人ダンプ同士、例えば無人ダンプ20−1、20−2は以上のような走行許可区間の割り当てによって相互に干渉することを防止することができる。しかし、有人車両70−1には走行許可区間を設定しないので、走行許可区間設定部311bによる走行許可区間設定処理だけでは干渉を回避できない。そこで、本実施形態では、干渉制御部311cが有人車両と無人車両との干渉回避処理を実行する。以下、干渉回避処理について説明する。
【0083】
図8から図10(a)〜(c)を参照して、干渉回避処理が必要となる状態について説明する。図8は、有人車両による無人ダンプの走行許可区間への干渉状態を示す図である。図9(a)〜(d)は、無人ダンプが有人車両の脇を通過する状態を示す図である。図10(a)〜(c)は、無人ダンプに対して設定される予定の次の走行許可区間候補に有人車両が存在することにより、有人車両が無人ダンプの進行を妨げている状態を示す図である。
【0084】
まず、図8を用いて、有人車両による無人ダンプの走行許可区間への干渉状態を回避する必要があることを説明する。図8に示すように、搬送路60を形成する幹線80は、脇道81との合流点において交差する。また、走行許可区間設定部311bが、幹線80に無人ダンプ20−1に対して合流点を含む走行許可区間83を設定しているとする。走行許可区間83は、座標値により定義されるデータにより構成されるので、有人車両70−1の運転手は走行許可区間83を視認できない。従って、有人車両70−1が脇道81から幹線80に進入しようとすると、結果的に合流点において走行許可区間83に侵入する。従って、合流点は、走行許可区間83と有人車両70−1との干渉地点となる。以下、合流点を干渉地点82と見做して説明する。
【0085】
干渉地点82の位置は、干渉制御部311cが有人車両70−1の速度情報(ベクトル情報)を受信し、有人車両70−1の進行方向を算出して走行許可区間83に侵入する地点を予測し、干渉地点を算出してもよい。
【0086】
次に、図9(a)〜(d)を用いて、無人ダンプが有人車両の脇を通過する際に、有人車両の運転手に対して適切に注意喚起をする必要があることを説明する。図9(a)〜(d)に示すように、搬送路60を形成する幹線80を走行する無人ダンプ20−1に走行許可区間83が設定されているとする。このとき、図9(a)に示すように有人車両70−1が停止しているか、または図9(b)に示すように有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行許可区間83に侵入しない方向に走行している場合は、図9(c)に示すように無人ダンプ20−1は有人車両70−1の脇を通過することができる。
【0087】
しかし、現時点では無人ダンプ20−1が有人車両70−1の脇を通過できる状態であっても、図9(d)に示すように、有人車両70−1の運転手が旋回または方向転換などの運転動作により、無人ダンプ20−1の走行許可区間83に侵入してしまい、干渉地点82で干渉してしまう可能性がある。これは、有人車両70−1の運転手が、自車両の脇を無人ダンプ20−1が通過することを把握していないことが要因である。
【0088】
最後に、図10(a)〜(c)を用いて、無人ダンプに設定されるべき次の走行許可区間に有人車両が存在することで、有人車両が無人ダンプの進行を妨げていることを、有人車両の運転手に対して注意喚起する必要があることを説明する。
【0089】
図10(a)に示すように、搬送路60を形成する幹線80を走行する無人ダンプ20−1に走行許可区間83a、83b、83cが設定されているとする。そして、無人ダンプ20−1が進行し、無人ダンプ20−1の現在位置から前方境界点(終端)65cまでの走行許可残存距離D1が走行許可要求開始距離D2以下となったとき(図7(a)参照)、無人ダンプ20−1は、交通管制サーバ31に対して要求情報を送信する。
【0090】
図7(a)〜(c)で説明したように、走行許可区間設定部311bは、無人ダンプ20−1から要求情報を受信すると、送られてきた要求情報に含まれる位置情報に基づいて、無人ダンプ20−1の次の走行許可区間候補1001を設定しようとする。しかし、図10(b)に示すように、有人車両70−1が次に設定しようとする走行許可区間候補1001に存在する場合は、有人車両70−1と無人ダンプ20−1が干渉するため、走行許可区間設定部311bは、走行許可区間を設定することができない。無人ダンプ20−1は、図10(c)に示すように、次の走行許可区間1001が設定されない場合は、設定された走行許可区間83cの終端で停止する。このとき、有人車両70−1の運転手に対して、当該車両が無人ダンプ20−1の進路を妨害している旨の注意喚起がなされていない場合は、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の進路上に存在する可能性もあり、鉱山全体の生産性の低下につながる。
【0091】
なお、無人ダンプ20−1に対して設定された走行許可区間83は、有人車両70−1から見ると本来は進入禁止の区間である。従って、無人ダンプ20−1以外の車両の立場から、走行許可区間ではなく閉塞区間と言い換えてもよい。
【0092】
ここで、有人車両70−1への警告情報を区分する警告レベルについて定義する。警告レベルは、図8から図10(a)〜(c)を基に説明した、有人車両70−1による無人ダンプ20−1への走行許可区間への干渉回避の緊急度合いに応じて設定する。
【0093】
「警告レベル3」は、有人車両70−1に対して最も緊急な(緊急回避の度合いが最も高い)干渉回避行動が必要なレベルとする。この警告レベル3の状態は、有人車両70−1が回避行動を取らないと、無人ダンプ20−1との接触が避けられない状態である。
【0094】
次に、「警告レベル2」は、無人ダンプ20−1に設定されるべき次の走行許可区間に有人車両70−1が存在することで、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の進行を妨げている状態とする。この警告レベル2の状態では、警告レベル3と比較して、緊急回避の度合いは低い(中程度)が、有人車両70−1が回避行動を取らないと、無人ダンプ20−1が走行できなくなり、生産性が低下してしまう。そのため、有人車両70−1への注意喚起が必要である。
【0095】
最後に、「警告レベル1」は、無人ダンプ20−1が有人車両70−1の脇を通過するなど、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行を妨害している状態ではないが、今後の干渉回避のために、有人車両70−1に対して適切に注意喚起する必要がある状態とする。警告レベル1は、前記の警告レベル3および警告レベル2に比較して、緊急回避の度合いは低い。
【0096】
次に、図11から図19を参照して本実施形態に係る交通管制システムの処理内容について説明する。図11は、第一実施形態に係る交通管制サーバの処理の流れを示すフローチャートである。図12(a)、(b)は、干渉制御処理で用いられる領域を説明する図である。図13は、干渉制御処理の流れを示すフローチャートである。図14は、有人車両が無人ダンプの走行許可区間に侵入している状態を示す図である。図15(a)、(b)は、警告レベル3における画面表示例を示す図である。図16(a)、(b)は、有人車両が無人ダンプの進路を妨害している状態を示す図である。図17は、警告レベル2における画面表示例を示す図である。図18は、無人ダンプが有人車両の脇を通過する状態を示す図である。図19は、警告レベル1における画面表示例を示す図である。以下、図11の各ステップ順に沿って、交通管制システムの処理の概要について説明する。
【0097】
図11に示すように、交通管制サーバ31は、主電源が投入されると走行許可区間設定処理(S1101〜S1105)及び有人車両が無人ダンプの走行許可区間に干渉することを制御するための干渉制御処理に関する処理(S1106〜S1107)を開始する。これら二つの処理は並列に実行され、干渉制御処理において走行許可区間設定処理の処理結果も参照される。
【0098】
より詳しくは、交通管制サーバ31の主電源が投入されると、配車管理部311aは、無人ダンプ21−1から要求情報の受信を待機する(S1101)。
【0099】
サーバ側通信装置314、通信I/F311f、サーバ側通信制御部311eを経由して、配車管理部311aが要求情報を受信すると(S1101/Yes)、要求情報を送信したダンプ端末装置26を搭載した無人ダンプ20−1の走行経路が既に決定しているかを判定し(S1102)、走行経路が既に決まっていれば(S1102/Yes)、ステップS1104へ進む。
【0100】
無人ダンプ20−1の走行経路が未だ決定していない場合(S1102/No)、配車管理部311aは無人ダンプ20−1の目的地とそこへ至る走行経路をマスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照して決定する(S1103)。
【0101】
ステップS1102又はステップS1103に続いて、走行許可区間設定部311bは、要求情報を送信したダンプ端末装置26が搭載された無人ダンプ20−1についての走行許可区間設定処理を行う。走行許可区間設定部311bは、要求情報に含まれる無人ダンプ位置情報、マスタ地図情報DB316の地図情報、及び他のダンプに設定された走行許可区間の情報を登録した区間情報DB317内の区間情報を参照して、無人ダンプ20−1に新たな走行許可区間を設定するための処理を行う(図7(a)〜(c)参照)。
【0102】
走行許可区間設定部311bは、走行許可区間を設定できた場合には新たに設定した走行許可区間の前方境界点及び後方境界点を含む区間情報を生成し、要求情報を送信したダンプ端末装置26に返信する。区間情報は、当該区間の制限速度を示す情報を更に含んでもよい。走行許可区間設定部311bは、走行許可区間を設定できなかった場合には走行不許可を示す応答情報を生成し、無人ダンプ20−1に返送する(S1104)。
【0103】
無人ダンプ20−1は、応答情報を受信すると走行許可区間83の終端に到達するまで要求情報の送信を繰り返す。無人ダンプ20−1は、区間情報を受信すると要求情報の再送を停止し、区間情報を受信することなく終端に到達すると停車する。
【0104】
走行許可区間設定部311bは、走行許可区間を設定できた場合には、無人ダンプ20−1に新たに設定した走行許可区間を後述する次走行許可区間として記録する一方、既に無人ダンプ20−1が通過した走行許可区間を削除し、新たに設定した走行許可区間の区間情報を区間情報DB317に更新登録する(S1105)。その後、ステップS1101へ戻り、要求情報の受信を待機する。
【0105】
一方、干渉制御部311cは、交通管制サーバ31の主電源の投入後、有人車両70−1に搭載された有人車両端末装置76から有人車両70−1の位置情報の受信を待機する(S1106)。
【0106】
有人車両70−1の運転手は、有人車両70−1の運転開始前に有人車両端末装置76の主電源をONにする。これにより、有人車両70−1に搭載された位置算出装置79による現在位置の検出が開始する。有人車両端末装置76は、無線通信回線40を介して有人車両位置情報を交通管制サーバ31に送信する。
【0107】
サーバ側通信装置314、通信I/F311f、サーバ側通信制御部311eを経由して、干渉制御部311cが有人車両70−1の位置情報を受信すると(S1106/Yes)、干渉制御処理を開始する(S1107)。
【0108】
干渉制御処理の詳細な説明に先立ち、干渉制御処理に用いる領域について図12(a)、(b)を参照して説明する。図12(a)には無人ダンプの警告領域および次走行許可区間について示し、図12(b)には有人車両の停止トリガー領域について示す。これらの無人ダンプの警告領域および次走行許可区間、有人車両の停止トリガー領域は、干渉判定領域設定部311dにより設定される。
【0109】
図12(a)に示すように、走行許可区間設定部311bが設定した走行許可区間83a、83bの周りの領域、詳しくは、走行許可区間設定部311bが設定した走行許可区間83a、83bに対して横方向に所定のオフセット距離nだけ拡幅した領域を無人ダンプ20−1の警告領域1201とする。また、走行許可区間設定部311bにより、無人ダンプ20−1に設定された走行許可区間の残存距離に対して、新たに次に設定される予定の走行許可区間を次走行許可区間候補1001a、1001bとする。
【0110】
図12(b)に示すように、停止トリガー領域は、有人車両70−1の周囲近傍の当該有人車両70−1が停止可能な領域であり、詳しくは、有人車両70−1に対して、前後左右方向にオフセット距離nだけ拡幅した領域1202と、さらに有人車両70−1の前方方向において有人車両70−1が停止可能な距離MVSLだけ拡幅した領域1203とを合わせた領域である。有人車両70−1が停止可能な距離MVSLの算出方法については、無人ダンプ20−1が停止可能な距離UVSLと同様に算出する(式(2)参照)。
【0111】
なお、ここでは、警告領域1201に対するオフセット距離nと停止トリガー領域(1202、1203)に対するオフセット距離nを同じ値に設定したが、無人ダンプ20−1や有人車両70−1の動作性能などに合わせて、異なる値に設定してもよいことは当然である。
【0112】
以下、図13の各ステップ順に沿って、干渉制御処理について説明する。
【0113】
干渉制御部311cは、上記で説明したように、干渉判定領域設定部311dから、有人車両70−1の現在位置および速度に基づいて設定した停止トリガー領域を取得し(S1301)、無人ダンプ20−1に対して設定された走行許可区間に基づいて設定した警告領域を取得する(S1302)。
【0114】
次に、干渉制御部311cは、有人車両70−1に設定された停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の走行可能領域(つまり、走行許可区間)が重なっているかどうかを判定する(S1303)。
【0115】
停止トリガー領域と走行可能領域が重なっている場合(S1303/Yes)、無人ダンプ20−1に設定された走行許可区間(83a、83b、83c)に対して、図14に示すように有人車両70−1が侵入している可能性があることを意味している。そこで、無人ダンプ20−1と有人車両70−1が干渉する干渉地点82に対する有人車両70−1の現在位置からの距離を算出する。そして、算出した距離に応じて、段階的に有人車両70−1及び無人ダンプ20−1に対して干渉回避行動を行う(S1304)。
【0116】
また、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行許可区間に侵入する可能性がある時は、有人車両70−1の運転手に対しては、警告レベル3の警告が必要である。干渉制御部311cは、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行許可区間に侵入する可能性がある旨の警告情報(警告レベル3に相当する警告情報)を生成し、サーバ側通信制御部311eから有人車両70−1に対して送信・通知する(S1304)。
【0117】
図15(a)、(b)に、警告レベル3に対する有人車両70−1の端末側表示装置763の画面表示例を示す。画面の構成要素として、有人車両への警告メッセージを表示する領域1501、その対処方法を表示する領域1502、および有人車両と無人ダンプとの干渉状況を表示する領域1503がある。
【0118】
例えば、警告メッセージを表示する領域1501には、無人車両(無人ダンプ)と干渉する旨を表示し、対処方法を表示する領域1502には、即時に干渉回避行動をとるように促す旨を表示している。
【0119】
干渉状況を表示する領域1503には、有人車両70−1が走行している地図情報の他に、有人車両70−1に対して設定される停止トリガー領域(1202、1203)、無人車両20−1、無人車両20−1に対する走行許可区間83、無人ダンプ20−1と有人車両70−1との合流点(干渉地点)82などの干渉を回避するために必要な情報を表示する。これにより、どのように行動すればよいかの判断を手助けしている。
【0120】
例えば、図15(a)に示すように、有人車両70−1の端末側表示装置763に無人ダンプ20−1との干渉状況を示す画面を表示したり警告装置768で警告音を鳴動したりすることにより、有人車両70−1の運転手に対して警告を行うのもよい。また、図15(a)に示すように、北方向が表示画面の上になるようにしてもよいし、図15(b)に示すように、有人車両の進行方向が表示画面の上になるように表示してもよい。
【0121】
また、警告レベル3の警告処理(S1304)において、干渉制御部311cは、算出した距離に応じて、必要により、干渉回避行動を行うための制動指示情報を生成し、無人ダンプ20−1のダンプ端末装置26に対して送信してもよい。
【0122】
一方、停止トリガー領域と走行可能領域が重なっていない場合(S1303/No)、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報があるかどうかを判定する(S1305)。
【0123】
無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報がある場合(S1305/Yes)、停止トリガー領域と無人ダンプ20−1に対して次に設定される次走行許可区間候補が重なっているかどうかを判定する(S1306)。
【0124】
停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の次走行許可区間候補が重なっている場合(S1306/Yes)、図16(a)、(b)に示すように、無人ダンプ20−1に対して次に設定される予定の次走行許可区間上に有人車両70−1が存在していることを意味する。この場合、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1に対して、停止トリガー領域と重なっている次走行許可区間候補を設定しない(S1307)。
【0125】
例えば、図16(a)、(b)に示す例において、要求情報に基づいて無人ダンプ20−1に対して次に設定される予定の次走行許可区間候補を1001a、1001bとする。このとき、図16(a)に示すように、停止トリガー領域(1202、1203)は、次走行許可区間候補1001aとは重なっていないが、次走行許可区間候補1001bとは重なっている。そこで、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1に次走行許可区間候補1001aは設定するが、次走行許可区間候補1001bは設定しない。このとき、図16(b)に示すように、次走行許可区間候補1001aは、走行許可区間83cとなり、それに併せて警告領域1201も走行許可区間83cを含むように拡張される。
【0126】
さらに、干渉制御部311cは、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の進路を妨害している旨の警告情報(警告レベル2に相当する警告情報)を生成し、サーバ側通信制御部311eから有人車両70−1に対して送信・通知する(S1308)。
【0127】
図17は、警告レベル2に対する画面表示例である。図17に示すように、有人車両70−1への警告情報を端末側表示装置763に画面表示することにより、有人車両70−1へ無人ダンプ20−1の次走行許可区間からの移動を促し、停止トリガー領域と次走行許可区間候補が重ならないようにさせる。例えば、警告メッセージを表示する領域1701では、無人車両(無人ダンプ)の走行許可区間を妨害している旨を表示し、対処方法を表示する領域1702には、現在の位置から移動する旨を表示している。また、領域1703には干渉状況を表示することで、どの方向へ移動すればよいかの判断を手助けしている。
【0128】
また、警告情報の警告レベル2に応じて、警告装置768で警告音を鳴動することにより、有人車両70−1の運転手に対して警告を行うのもよい。
【0129】
一方、停止トリガー領域と次走行許可区間候補が重なっていない場合(S1306/NO)、無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報があり、かつ次の走行許可区間上に有人車両70−1が存在していないので、無人ダンプ20−1に次の走行許可区間を設定する(S1309)。
【0130】
次の走行許可区間が設定された(S1309)または無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報がない場合(S1305/No)は、停止トリガー領域と警告領域が重なっているかどうかを判定する(S1310)。
【0131】
停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の警告領域が重なっている場合(S1310/Yes)、図18に示すように、無人ダンプ20−1が有人車両70−1に接近し、その脇を通過しようとしていることを意味する。そのため、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1が有人車両70−1に接近していることを意味する警告情報(警告レベル1に相当する警告情報)を生成し、サーバ側通信制御部311eから有人車両70−1に送信・通知する(S1311)。この状況では、停止トリガー領域(1202、1203)と無人ダンプ20−1の警告領域1201が重なっているのであって、停止トリガー領域(1202、1203)と走行可能区間83とが重なっていないので、無人ダンプ20−1が有人車両70−1の脇を通過できることを保証している。
【0132】
図19は、警告レベル1に対する画面表示例である。図19に示すように、無人ダンプ20−1が有人車両70−1の脇を通過する警告情報を端末側表示装置763に画面表示することで、有人車両70−1の運転手は無人ダンプ20−1が接近し、脇を通過することを認識することができる。また、例えば、警告メッセージを表示する領域1901には、無人車両(無人ダンプ)が通過する旨のメッセージを表示し、対処方法を表示する領域1902には、無人車両(無人ダンプ)の走行経路に侵入しないように注意喚起するメッセージを表示する。また、領域1903には干渉状況(この場合は非干渉の位置関係)を表示することで、どの方向から接近してくるかの判断を手助けしている。この注意喚起により、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行許可区間83に不用意に侵入することへの注意喚起を行うことができる。
【0133】
また、警告情報の警告レベル1に応じて、警告装置768で警告音を鳴動することにより、有人車両70−1の運転手に対して警告を行うのもよい。
【0134】
最後に、停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の警告領域が重なっていない場合(S1310/No)、もしくは全ての警告情報を通知した後(S1304、S1308、S1311)は、干渉制御処理の最初の処理S1301に戻って、干渉制御処理を繰り返す。
【0135】
以上で説明したように、本実施形態において、前記交通管制サーバ31の前記干渉制御部311cは、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と、前記無人車両20−1に設定された前記走行許可区間および前記無人車両20−1に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なり(干渉)に応じて、前記有人車両70−1に対して警告画面表示および警告鳴動のすくなくとも1つを行うための前記警告情報を生成し、前記サーバ側通信制御部311eは、前記警告情報を前記有人車両70−1に対して送信する。
【0136】
また、前記干渉制御部311cは、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と前記無人車両20−1に設定された前記走行許可区間との重なりがある場合に緊急回避の度合いが最も高いレベル(警告レベル3)の警告情報を生成し、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と前記無人車両20−1に次に設定される予定の前記次走行許可区間との重なりがある場合に緊急回避の度合いが中程度(警告レベル2)の警告情報を生成し、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と前記警告領域との重なりがある場合には緊急回避の度合いが最も低いレベル(警告レベル1)の警告情報を生成する。
【0137】
また、前記干渉制御部311cは、前記警告情報を生成するとともに、前記無人車両20−1に制動動作を行わせるための制動指示情報を生成し、前記サーバ側通信制御部311eは、前記警告情報を前記有人車両70−1に対して送信するとともに、前記制動指示情報を前記無人車両20−1に対して送信する。
【0138】
また、前記交通管制サーバ31と無線通信接続され、前記警告情報を表示するための表示装置763を前記有人車両70−1に備えており、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と、前記無人車両20−1に設定された前記走行許可区間および前記無人車両20−1に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに前記走行許可区間に対して設定される前記警告領域との重なり(干渉)に応じて生成された前記警告情報に基づいて、前記表示装置763の画面表示を変更する。
【0139】
本実施形態によれば、ユーザ(有人車両70−1の運転手)に対して、回避行動を促したら、無人車両20−1の進行を優先させることができ、干渉回避を行って安全性を確保できるとともに、生産性を向上させることができる。
【0140】
(第二実施形態)
また、上記第一実施形態において、警告レベルに応じて、警告情報を解除する機能を備えてもよい。警告情報を解除する機能は、警告を解除するためのボタンを押すことが可能な状態(有効状態)かまたは押せない状態(無効状態)かの判定と、警告が解除された状態かどうかの管理を行うパラメータを備えることで実現できる。図20は、第二実施形態に係る、警告情報の解除機能を備えた干渉制御処理の流れを示すフローチャートである。図21は、警告情報の解除機能を備えた干渉制御処理における画面表示例である。また、図22(a)〜(c)は、警告解除ボタンに対する画面表示例である。
【0141】
以下、図20の各ステップ順に沿って、警告情報の解除機能を備えた干渉制御処理について説明する。
【0142】
干渉制御部311cは、有人車両70−1の有人車両端末装置76に対して警告解除ボタンを設定するための情報(設定情報)を送信することで、ユーザが警告を解除するための警告解除ボタンを有効(押下可能)状態に、ユーザが解除ボタンを押したかどうかを判定する警告解除状態をOFF(押していない状態)に設定する(S2000)。例えば、警告解除ボタンは、図21の2104に示すように、有人車両70−1のユーザが視認できる位置(図21に示す例では、有人車両70−1の端末側表示装置763の表示画面の左上)に配置する。なお、警告解除ボタンは、端末側表示装置763の表示画面以外に配置してもよいし、物理的なボタンないしスイッチなどで構成してもよい。
【0143】
図22(a)〜(c)には、警告解除ボタンの状態の例を示す。有人車両70−1のユーザが警告解除ボタンを押すことが可能な状態は、図22(a)に示すように警告解除ボタンが有効な状態である。一方、警告解除ボタンを押すことができない状態は図22(b)、すなわち警告解除ボタンが無効な状態である。また、警告解除ボタンが有効な状態であって警告解除ボタンが押された状態は図22(c)であり、警告が解除された状態を意味する。
【0144】
次に、第一実施形態と同様に、干渉制御部311cは、干渉判定領域設定部311dから、有人車両70−1の現在位置および速度に基づいて設定した停止トリガー領域を取得し(S2001)、無人ダンプ20−1に対して設定された走行許可区間に基づいて設定した警告領域を取得する(S2002)。
【0145】
停止トリガー領域と走行可能領域が重なっている場合(S2003/Yes)、第一実施形態と同様に、無人ダンプ20−1に設定された走行許可区間(83a、83b、83c)に対して、図14に示すように有人車両70−1が侵入している可能性があり、無人ダンプ20−1との干渉回避が必要な警告レベル3であることを意味している。そこで、無人ダンプ20−1との干渉回避が必要な警告レベル3では、ユーザが警告情報を解除できないようにする。
【0146】
図23は、警告情報の解除機能を備えた警告レベル3の警告処理(S2004)の流れを示すフローチャートである。干渉制御部311cは、警告情報を解除する警告解除ボタンを無効(S2301)にすることで、警告情報を解除できないようにしている。これは、警告レベル3の状況では、有人車両70−1は無人ダンプ20−1との干渉を回避することを最優先とするべきであるためである。そして、警告解除状態はOFFに設定したまま(S2302)、第一実施形態のS1304と同様に、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行許可区間に侵入する可能性がある旨の警告情報(警告レベル3に相当する警告情報)を生成し、サーバ側通信制御部311eから有人車両70−1に対して送信・通知し、無人ダンプ20−1と有人車両70−1が干渉する干渉地点82に対する有人車両70−1の現在位置からの距離に応じて、図15で説明した最大レベルの注意喚起を行う(S2303)。また、干渉制御部311cは、前記距離に応じて、必要により、干渉回避行動を行うための制動指示情報を生成し、無人ダンプ20−1のダンプ端末装置26に対して送信してもよい。
【0147】
一方、停止トリガー領域と走行可能領域が重なっていない場合(S2003/No)、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報があるかどうかを判定する(S2005)。
【0148】
無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報がある場合(S2005/Yes)、停止トリガー領域と無人ダンプ20−1に対して次に設定される次走行許可区間候補が重なっているかどうかを判定する(S2006)。
【0149】
停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の次走行許可区間候補が重なっている場合(S2006/Yes)、第一実施形態と同様に図16(a)、(b)に示すように、無人ダンプ20−1に対して次に設定される予定の次走行許可区間上に有人車両70−1が存在していることを意味する。この場合、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1に対して、停止トリガー領域と重なっている次走行許可区間候補を設定しない(S2007)。
【0150】
そして、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の走行経路を妨害している警告レベル2の干渉回避処理を行う(S2008)。
【0151】
図24は、警告情報の解除機能を備えた警告レベル2の警告処理(S2008)の流れを示すフローチャートである。干渉制御部311cは、警告情報を解除する警告解除ボタンを有効(S2401)にすることで、警告情報を解除することが可能となる。
【0152】
次に、警告解除状態がOFFであるかを判定し(S2402)、警告解除状態がOFFの場合(S2402/Yes)は、第一実施形態と同様に、有人車両70−1が無人ダンプ20−1の進路を妨害している旨の警告情報(警告レベル2に相当する警告情報)を生成し、サーバ側通信制御部311eから有人車両70−1に対して送信・通知する(S2403)。
【0153】
そして、干渉制御部311cは、警告解除ボタンが押されたかどうかを判定する(S2404)。警告解除ボタンが押された場合(S2404/Yes)、警告解除状態をONに設定し(S2405)、上述した警告音や警告表示などの警告処理を解除する(S2406)。また、警告解除状態が開始された時からの時間を計測するために、タイマーをスタートさせる(S2407)。このタイマーは、無人ダンプ20−1の進行を妨害する有人車両70−1が、警告を解除したにも関わらず、一定時間を経過しても無人ダンプ20−1の進行を妨害しているかどうかを判断するために用いる。一方で、警告解除ボタンが押されていない場合(S2404/No)、ステップS2001に戻る。
【0154】
また、S2402での判定で、警告解除状態がONの場合(S2402/No)、タイマーがスタートしてから一定時間が経過したかどうかを判定する(S2408)。一定時間が経過している場合(S2408/Yes)、警告解除状態をOFFに設定し(S2409)(つまり、警告情報を解除しない状態に戻し)、タイマーをリセットする(S2410)。この処理により、有人車両70−1が、警告を解除して一定時間が経過した後でも、無人ダンプ20−1の進行を妨害している場合には、再び警告レベル2の処理を実施できるようにしている。
【0155】
一方、停止トリガー領域と次走行許可区間候補が重なっていない場合(S2006/NO)、無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報があり、かつ次の走行許可区間上に有人車両70−1が存在していないので、無人ダンプ20−1に次の走行許可区間を設定する(S2009)。
【0156】
次の走行許可区間が設定された(S2009)または無人ダンプ20−1からの走行許可区間の更新に関する要求情報がない場合(S2005/No)は、停止トリガー領域と警告領域が重なっているかどうかを判定する(S2010)。
【0157】
停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の警告領域が重なっている場合(S2010/Yes)、第一実施形態と同様に、図18に示すように、無人ダンプ20−1が有人車両70−1に接近し、その脇を通過しようとしているときの警告レベル1の干渉回避処理を行う(S2011)。
【0158】
図25は、警告情報の解除機能を備えた警告レベル1の警告処理(S2011)の流れを示すフローチャートである。干渉制御部311cは、警告レベル2と同様に、警告情報を解除する警告解除ボタンを有効(S2501)にすることで、警告情報を解除することが可能となる。
【0159】
次に、警告解除状態がOFFであるかを判定し(S2502)、警告解除状態がOFFの場合(S2502/Yes)は、干渉制御部311cは、無人ダンプ20−1が有人車両70−1に接近していることを意味する警告情報(警告レベル1に相当する警告情報)を生成し、サーバ側通信制御部311eから有人車両70−1に送信・通知する(S2503)。
【0160】
そして、干渉制御部311cは、警告解除ボタンが押されたかどうかを判定する(S2504)。警告解除ボタンが押された場合(S2504/Yes)、警告解除状態をONに設定し(S2505)、上述した警告音や警告表示などの警告処理を解除する(S2506)。逆に、警告解除ボタンが押されていない場合(S2504/No)、警告解除状態がOFFのまま、S2001へ戻る。これにより、警告を解除しない限りは、警告情報が有人車両70−1に通知され続ける。
【0161】
一方、警告解除ボタンを押して、警告解除状態がONの場合(S2502/No)、有人車両70−1への警告が解除された状態となる。
【0162】
最後に、停止トリガー領域と無人ダンプ20−1の警告領域が重なっていない場合(S2010/No)、もしくは全ての警告情報を通知した後(S2004、S2008、S2011)は、干渉制御処理の最初の処理S2001に戻って、干渉制御処理を繰り返す。
【0163】
なお、図26は、有人車両端末装置76の警告処理部761aが、上記した警告レベルの警告情報を受けて端末側表示装置763に表示する、より実際に即した画面表示例である。
【0164】
以上で説明したように、本実施形態において、前記交通管制サーバ31は、前記警告情報を解除する警告解除機能を備え、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と前記無人車両20−1に次に設定される予定の前記次走行許可区間または前記警告領域との重なりがある場合に、前記警告情報を解除可能とし、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と前記無人車両20−1に設定された前記走行許可区間との重なりがある場合に、前記警告情報を解除不可能とする。
【0165】
また、前記交通管制サーバ31は、前記有人車両70−1の前記停止トリガー領域と前記無人車両20−1に次に設定される予定の前記次走行許可区間との重なりがある場合に、前記警告情報が解除された時からの時間を計測し、前記計測した時間が一定時間を経過したとき、前記警告情報を解除しない状態に戻す。
【0166】
また、前記有人車両70−1に備えられた前記表示装置763は、前記警告情報を解除するための警告解除ボタンを表示画面に含む。
【0167】
これにより、無人ダンプ20−1との緊急の干渉回避が必要ではない警告レベル1および警告レベル2において、警告情報を解除する機能をもつことにより、有人車両70−1の運転手は作業に集中することが可能となる。
【0168】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0169】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0170】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0171】
1 交通管制システム
10−1、10−2 ショベル
20−1、20−2 無人ダンプ(無人車両)
26 ダンプ端末装置
30 管制センタ
31 交通管制サーバ
32 アンテナ
40 無線通信回線
41−1、41−2、41−3 無線基地局
50−1、50−2、50−3 航法衛星
60 搬送路
61 掘削現場
62、63 放土場
70−1、70−2 有人車両
76 有人車両端末装置
763 端末側表示装置
768 警告装置
【要約】
【課題】有人車両と無人車両との干渉を制御することにより、鉱山内を走行する有人車両及び無人車両の安全性の確保及び生産性の低下抑止を両立させることのできる交通管制サーバ及び交通管制システム並びに交通管制サーバと無線通信可能な表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】交通管制サーバ31の干渉制御部311cは、有人車両70−1の停止トリガー領域と、無人車両20−1に設定された走行許可区間および無人車両20−1に次に設定される予定の走行許可区間である次走行許可区間ならびに走行許可区間に対して設定される警告領域との重なり(干渉)に応じて、有人車両70−1に対して警告画面表示および警告鳴動のすくなくとも1つを行うための警告情報を生成し、サーバ側通信制御部311eは、警告情報を有人車両70−1に対して送信する。
【選択図】図5
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