特許第6876179号(P6876179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876179
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】茶飲料又は固形食品
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20210517BHJP
   A23F 3/40 20060101ALI20210517BHJP
   A23F 3/30 20060101ALI20210517BHJP
   A23F 3/34 20060101ALI20210517BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20210517BHJP
【FI】
   A23F3/16
   A23F3/40
   A23F3/30
   A23F3/34
   A23L5/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-69678(P2020-69678)
(22)【出願日】2020年4月8日
(65)【公開番号】特開2020-178679(P2020-178679A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2021年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-82809(P2019-82809)
(32)【優先日】2019年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 駿介
(72)【発明者】
【氏名】大木 余里子
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−061125(JP,A)
【文献】 特開2018−099099(JP,A)
【文献】 YANG Z. et al.,Analysis of coumarin and its glycosidically bound precursor in Japanese green tea having sweet-herba,Food Chem.,2009年,vol.114, no.1,pp.289-294
【文献】 食品成分表2016 本表編,2016年,pp.210-211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−3/42
A23L 5/00−5/49
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)タンニン、及び
(B)クマリン及びその誘導体から選択される少なくとも1種
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.75×10−4以上20×10−4以下である、
茶飲料又は固形食品。
【請求項2】
成分(B)として少なくともクマリンを含有する、請求項1記載の茶飲料又は固形食品。
【請求項3】
成分(B)としてクマリン及びその誘導体を含有する、請求項1又は2記載の茶飲料又は固形食品。
【請求項4】
成分(A1)として非重合体カテキン類を含み、成分(A)と成分(A1)との質量比[(A1)/(A)]が0.05〜1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の茶飲料又は固形食品。
【請求項5】
茶飲料であって、該茶飲料中の成分(B)の含有量が40〜500質量ppbである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項6】
茶飲料であって、該茶飲料が緑茶飲料、ウーロン茶飲料又はルイボス茶飲料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項7】
固形食品であって、該固形食品中の成分(B)の含有量が0.5〜50質量ppmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶飲料又は固形食品に関する。
【背景技術】
【0002】
タンニンは茶葉等に含まれるポリフェノールの1種であり、抗酸化作用をはじめとする様々な生理活性を有することが知られている。このような生理効果を発現させるためには、タンニンを継続して摂取する必要があり、それを生活習慣として簡便に摂取する手段として茶飲料がある。
【0003】
しかしながら、タンニンは強い渋味を有するため、茶飲料を継続して摂取するうえで障害となりやすい。そこで、ポリフェノールの渋味の抑制について検討され、例えば、シクロデキストリンやソーマチンがタンニン等のポリフェノールによる渋味に対してマスキング作用を有することが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−221019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、タンニン由来の渋味が抑制された茶飲料又は固形食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、タンニンに対して特定の香気成分を特定の質量比で含有させることで、タンニン由来の渋味が抑制された茶飲料又は固形食品が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B);
(A)タンニン、及び
(B)クマリン及びその誘導体から選択される少なくとも1種
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.75×10−4〜20×10−4である、
茶飲料又は固形食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンニン由来の渋味が抑制された茶飲料又は固形食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔茶飲料〕
本明細書において「茶飲料」とは、植物抽出物を茶原料として含み、液体として飲用に供されるものをいう。
植物抽出物の原料としては特に限定されないが、例えば、Camellia属の茶葉、穀物、Camellia属以外の茎葉、根を挙げることができる。なお、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、植物の種類に応じて公知の方法を採用することができる。
【0010】
Camellia属の茶葉としては、例えば、C.sinensis.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶葉(Camellia sinensis)が挙げられる。茶葉は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができ、1種又は2種以上を使用することができる。なお、茶葉の茶品種及び採取時期は特に限定されず、また茶葉は火入れ加工が施されていてもよい。不発酵茶としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶葉が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等のウーロン茶葉が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶葉が挙げられる。
穀物としては、例えば、大麦、小麦、ハト麦、ライ麦、燕麦、裸麦等の麦;玄米等の米;大豆、黒大豆、ソラマメ、インゲン豆、小豆、エビスクサ、ササゲ、ラッカセイ、エンドウ、リョクトウ等の豆;ソバ、コーン(トウモロコシ)、白ゴマ、黒ゴマ、粟、稗、黍、キヌワ等の雑穀を挙げることができる。穀物は、1種又は2種以上を使用することができる。
Camellia属以外の茎葉、根としては、例えば、イチョウの葉、柿の葉、ビワの葉、桑の葉、ゴボウ、チコリの葉、タンポポの葉又は根、クコの葉、杜仲の葉、エゴマの葉、小松菜、ルイボス、クマザサ、ヨモギ、ドクダミ、アマチャヅル、スイカズラ、ツキミソウ、カキドオシ、カワラケツメイ、ギムネマ・シルベスタ、黄杞茶(クルミ科)、甜茶(バラ科)、キダチアロエ等が挙げられる。更に、カモミール、ハイビスカス、ペパーミント、レモングラス、レモンピール、レモンバーム、ローズヒップ、ローズマリー等のハーブも用いることができる。Camellia属以外の茎葉、根は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0011】
中でも、本発明の効果を享受しやすい点から、Camellia属の茶葉、穀物及びルイボスから選択される少なくとも1種を原料とすることが好ましく、Camellia属の茶葉及びルイボスから選択される少なくとも1種を原料とすることが更に好ましい。
【0012】
本発明の茶飲料の種類としては、例えば、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料、ルイボス茶飲料、麦茶飲料、コーン茶飲料が好ましく、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、ルイボス茶飲料が更に好ましい。
【0013】
本発明の茶飲料は、成分(A)としてタンニンを含有する。ここで、本明細書において「タンニン」とは、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものであって、非重合体カテキン類、没食子酸、そのエステル及びそれらの縮合物、並びにクロロゲン酸類及びその縮合物を包含する概念である。また、本明細書において「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称であり、本発明においては上記8種のうち少なくとも1種を含有すればよい。また、「クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸を併せての総称であり、本発明においては上記6種のうち少なくとも1種を含有すればよい。
【0014】
本発明の茶飲料中の成分(A)の含有量は、生理活性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.025質量%以上が更に好ましく、また風味バランスの観点から、0.20質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.12質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A)の範囲としては、茶飲料中に、好ましくは0.01〜0.20質量%であり、より好ましくは0.02〜0.15質量%であり、更に好ましくは0.025〜0.12質量%である。なお、成分(A)の分析は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。また、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0015】
本発明の茶飲料は、成分(A)として、非重合体カテキン類(以下、「成分(A1)」とも称する)を含有することが好ましい。
本発明の茶飲料中の成分(A)と成分(A1)との質量比[(A1)/(A)]は、渋味抑制の観点から、0.05以上が好ましく、0.06以上がより好ましく、0.07以上が更に好ましい。なお、かかる質量比[(A1)/(A)]の上限は特に限定されないが、1であってもよい。
【0016】
本発明の茶飲料中の成分(A1)の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.0015質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上が更に好ましく、また0.2質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.12質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A1)の範囲としては、茶飲料中に、好ましくは0.001〜0.2質量%であり、より好ましくは0.0015〜0.15質量%であり、更に好ましくは0.002〜0.12質量%である。なお、成分(A1)の含有量は、上記8種の非重合体カテキン類の合計量に基づいて定義される。また、成分(A1)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0017】
本発明の茶飲料は、成分(B)としてクマリン及びその誘導体から選択される少なくとも1種を含有する。ここで、本明細書において「クマリン」とは、ベンゾ−α−ピロンであり、また「クマリン誘導体」とは、7−メトキシクマリン、4−ヒドロキシクマリン及び3,4−ジヒドロクマリンである。クマリン及びその誘導体は、甘い香りを有する香気成分として知られているが、同様に甘い香りを有するバニリンやウンデカラクトンは、タンニン由来の渋味に対してマスキング作用を発現せず、クマリン及びその誘導体がタンニン由来の渋味に対して特異的にマスキング作用を発現することを本発明者らは見出した。中でも、本発明の効果を享受しやすい点から、成分(B)として、少なくともクマリンを含有することが好ましく、クマリン及びその誘導体を含有することが更に好ましい。なお、成分(B)としては飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、天然由来品でも、化学合成品でも、市販品でも、原料由来のものでもよい。
【0018】
本発明の茶飲料中の成分(B)の含有量は、渋味抑制の観点から、40質量ppb以上が好ましく、45質量ppb以上がより好ましく、55質量ppb以上が更に好ましく、60質量ppb以上が殊更に好ましく、また成分(B)由来の異味抑制の観点から、500質量ppb以下が好ましく、400質量ppb以下がより好ましく、250質量ppb以下が更に好ましく、150質量ppb以下が殊更に好ましい。成分(B)の含有量の範囲としては、茶飲料中に、好ましくは40〜500質量ppbであり、より好ましくは45〜400質量ppbであり、更に好ましくは55〜250質量ppbであり、殊更に好ましくは60〜150質量ppbである。なお、成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0019】
本発明の茶飲料は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.75×10−4以上20×10−4以下であるが、渋味抑制の観点から、0.9×10−4以上が好ましく、1.2×10−4以上がより好ましく、1.4×10−4以上がより好ましく、1.5×10−4以上が更に好ましく、2×10−4以上が殊更に好ましく、また成分(B)由来の異味抑制の観点から、12×10−4以下が好ましく、8×10−4以下がより好ましく、4×10−4以下が更に好ましい。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、好ましくは0.9×10−4以上12×10−4以下であり、より好ましくは1.2×10−4以上8×10−4以下であり、更に好ましくは1.4×10−4以上8×10−4以下であり、より更に好ましくは1.5×10−4以上4×10−4以下であり、殊更に好ましくは2×10−4以上4×10−4以下である。なお、質量比[(B)/(A)]は、成分(A)と成分(B)の含有量の単位を揃えて算出するものとする。
【0020】
本発明の茶飲料は、所望により、甘味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、エステル、花蜜エキス、色素、乳化剤、乳成分、ココアパウダー、保存料、調味料、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0021】
本発明の茶飲料のpH(20℃)は、4以上が好ましく、4.5以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、そして7以下が好ましく、6.9以下がより好ましく、6.8以下が更に好ましい。かかるpHの範囲としては、好ましくは4〜7であり、より好ましくは4.5〜6.9であり、更に好ましくは5〜6.8である。なお、pHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定するものとする。
【0022】
本発明の茶飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して容器詰茶飲料とすることができる。
【0023】
本発明の茶飲料は、加熱殺菌済でもよい。殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されない。例えば、茶飲料を容器包装に充填し、密栓若しくは密封した後殺菌するか、又は自記温度計をつけた殺菌器等で殺菌したもの若しくはろ過器等で除菌したものを自動的に容器包装に充填した後、密栓若しくは密封すればよい。より具体的には、レトルト殺菌法、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)等を挙げることができる。
【0024】
また、加熱殺菌は、容器内の中心部の温度を85℃で30分間加熱する方法、又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うことができる。例えば、F0値が0.005〜40、好ましくは0.006〜35、更に好ましくは0.007〜30となる条件で加熱殺菌することができる。ここで、本明細書において「F0値」とは、茶飲料を加熱殺菌した場合の加熱殺菌効果を評価する値で、基準温度(121.1℃)に規格化した場合の加熱時間(分)に相当する。F0値は、容器内温度に対する致死率(121.1℃で1)に、加熱時間(分)を乗じて算出される。致死率は致死率表(藤巻正生ら、「食品工業」、恒星社厚生閣、1985年、1049頁)から求めることができる。F0値を算出するには、一般的に用いられる面積計算法、公式法等を採用することができる(例えば谷川ら《缶詰製造学》頁220、恒星社厚生閣 参照)。本発明において、F0値を所定の値になるよう設定するには、例えば、予め得た致死率曲線から、適当な加熱温度・加熱時間を決定すればよい。
【0025】
本発明の茶飲料は適宜の方法で製造することができるが、例えば、成分(A)及び成分(B)、必要により他の成分を配合し、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]を調整して製造することができる。
【0026】
成分(A)としては、市販の試薬を用いてもよいが、成分(A)を豊富に含む植物の抽出物の形態で含有させることができる。
植物としては、成分(A)を含み、飲食品の分野において通常使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、Camellia属の茶葉、柿葉、栗皮、ヒマワリ種子、リンゴ、コーヒー豆、シモン葉、マツ、サトウキビ、南天の葉、ゴボウ、ナスの皮、ウメの果実、フキタンポポ、ブドウ種子、ブドウ果皮等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。中でも、タンニン含量、風味の観点から、Camellia属の茶葉、コーヒー豆及びリンゴから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。なお、コーヒー豆は、生コーヒー豆でも、焙煎コーヒー豆でもよく、焙煎条件は、適宜選択することができる。また、抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0027】
〔食品〕
本明細書において「固形食品」とは、タンニンを含有する植物抽出物を原料として含み、固体として噛む、舐めるなどして食用に供されるものをいう。固形食品の形態としては、常温(20℃)において固体であれば特に限定されないが、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等を挙げることができる。中でも、粉末状、顆粒状、錠状が好ましく、粉末状、錠状が更に好ましい。固形食品中の固形分量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、殊更に好ましくは97質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
【0028】
植物抽出物の原料としては特に限定されないが、例えば、Camellia属の茶葉、コーヒー豆、リンゴやブドウ等の果実、穀物、Camellia属以外の茎葉や根を挙げることができる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点から、Camellia属の茶葉、穀物及びルイボスから選択される少なくとも1種を原料とすることが好ましく、Camellia属の茶葉及びルイボスから選択される少なくとも1種を原料とすることが更に好ましい。なお、Camellia属の茶葉、コーヒー豆、物、Camellia属以外の茎葉や根については、上記において説明したとおりである。また、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、植物の種類に応じて公知の方法を採用することができる。
【0029】
本発明の固形食品の種類としては、例えば、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、紅茶抽出物、コーヒー豆抽出物、ワイン、ルイボス茶抽出物、麦茶抽出物、コーン茶抽出物を配合した食品が好ましく、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物及びルイボス茶抽出物から選択される少なくとも1以上を配合した固形食品が更に好ましい。
【0030】
本発明の固形食品中の成分(A)の含有量は、生理活性の観点から、0.2質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、また風味バランスの観点から、20.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A)の範囲としては、固形食品中に、好ましくは0.2〜20.0質量%であり、より好ましくは1.0〜10.0質量%であり、更に好ましくは2.0〜5.0質量%である。なお、成分(A)の分析は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。また、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0031】
本発明の固形食品は、成分(A)として、(A1)非重合体カテキン類を含有することが好ましい。
本発明の固形食品中の成分(A)と成分(A1)との質量比[(A1)/(A)]は、渋味抑制の観点から、0.05以上が好ましく、0.06以上がより好ましく、0.07以上が更に好ましい。なお、かかる質量比[(A1)/(A)]の上限は特に限定されないが、1.0であってもよい。
【0032】
本発明の固形食品中の成分(A1)の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.015質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、また2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A1)の範囲としては、固形食品中に、好ましくは0.01〜2.0質量%であり、より好ましくは0.015〜1.5質量%であり、更に好ましくは0.02〜1.2質量%である。なお、成分(A1)の含有量は、上記8種の非重合体カテキン類の合計量に基づいて定義される。また、成分(A1)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0033】
本発明の固形食品は、成分(B)としてクマリン及びその誘導体から選択される少なくとも1種を含有する。
成分(B)としては、本発明の効果を享受しやすい点から、少なくともクマリンを含有することが好ましく、クマリン及びその誘導体を含有することが更に好ましい。なお、成分(B)としては飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、天然由来品でも、化学合成品でも、市販品でも、原料由来のものでもよい。
【0034】
本発明の固形食品の成分(B)の含有量は、渋味抑制の観点から、0.5質量ppm以上が好ましく、2.0質量ppm以上がより好ましく、3.0質量ppm以上が更に好ましく、また成分(B)由来の異味抑制の観点から、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、12質量ppm以下が更に好ましく、8.0質量ppm以下が殊更に好ましい。成分(B)の含有量の範囲としては、固形食品中に、好ましくは0.5〜50質量ppmであり、より好ましくは2.0〜30質量ppmであり、更に好ましくは3.0〜12質量ppmであり、殊更に好ましくは3.0〜8.0質量ppmである。なお、成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0035】
本発明の固形食品は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.75×10−4以上20×10−4以下であるが、渋味抑制の観点から、0.9×10−4以上が好ましく、1.2×10−4以上がより好ましく、1.4×10−4以上がより好ましく、1.5×10−4以上が更に好ましく、また成分(B)由来の異味抑制の観点から、12×10−4以下が好ましく、8×10−4以下がより好ましく、4×10−4以下が更に好ましい。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、好ましくは0.9×10−4以上12×10−4以下であり、より好ましくは1.2×10−4以上8×10−4以下であり、更に好ましくは1.4×10−4以上8×10−4以下であり、より更に好ましくは1.5×10−4以上4×10−4以下である。なお、質量比[(B)/(A)]は、成分(A)と成分(B)の含有量の単位を揃えて算出するものとする。
【0036】
また、本発明の固形食品は、必要に応じて許容される担体を含有することができる。担体としては、例えば、賦形剤(例えば、澱粉又はデキストリン等の澱粉分解物、グルコース、ガラクトース、フルクトース等の単糖、スクロース、ラクトース、ラクトース、パラチノース等の二糖、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、還元パラチノース等の糖アルコール);結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、メチルセルロース、硬化油等);崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等);滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素等);嬌味剤(例えば、ステビア等);オリゴ糖、寒天、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、希釈剤等の担体が挙げられる。
【0037】
中でも、担体としては、賦形剤が好適に使用され、賦形剤の中では、デキストリン及び糖アルコールから選択される1種以上が好ましい。ここで、本明細書において「デキストリン」とは、でんぷん分解物の一種であり、でんぷんを酸処理又は加熱処理して部分的に加水分解し低分子化した化合物である。賦形剤がデキストリンである場合、デキストリンは、グリコシド結合が鎖状に結合していても、環状に結合していても、これらの混合物であってもよく、糖の結合方式は特に限定されない。また、デキストリンのデキストロース当量(DE)は、好ましくは1〜40であり、より好ましくは2〜30であり、更に好ましくは3〜20であり、殊更に好ましくは3〜16である。なお、デキストリン及びデキストロース当量(DE)の分析法としては、例えば、SOMOGYI法等を挙げることができる。
【0038】
担体の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で、担体の種類により適宜設定することができる。
【0039】
本発明の固形食品は、所望により、甘味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、エステル、花蜜エキス、色素、乳化剤、乳成分、ココアパウダー、保存料、調味料、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0040】
本発明の固形食品の具体例としては、例えば、ゼリー、グミ、キャンディ、スナック、ビスケット、チョコレート、米菓等の菓子等が挙げられるが、これらに限定されない。固形食品は、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等)とすることもできる。この場合、剤型は、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤等が好ましい。
【0041】
本発明の固形食品は適宜の方法で製造することができるが、例えば、成分(A)及び成分(B)、必要により他の成分を配合し、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]を調整して製造することができる。成分(A)及び成分(B)の配合順序は特に限定されず、任意の順序で添加しても、両者を同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することが可能であり、混合装置を使用しても構わない。混合装置の混合方式は、容器回転型でも、容器固定型でもよい。容器回転型として、例えば、水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型等を採用することができる。容器固定型として、例えば、リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレンダ−等を採用することができる。また、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等が挙げられる。なお、造粒条件は、造粒方法により適宜選択することができる。また、錠剤とする場合には、湿式打錠及び乾式打錠のいずれでもよく、公知の圧縮成形機を使用することができる。
【実施例】
【0042】
1.タンニンの分析
試料中のタンニン量の測定は酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10)。
純水で溶解した試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線からタンニン量を求めた。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
リン酸緩衝液の調製 :1/15mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0043】
2.非重合体カテキン類の分析
純水で溶解希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムODS、4.6mmφ×250mm 粒子径5μm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定する。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行う。なお、グラジエント条件は以下の通りである。
【0044】
濃度勾配条件(体積%)
時間 A液濃度 B液濃度
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0045】
3.クマリン及びその誘導体の分析
試料10mLをGC用ヘッドスペースバイアル(20mL)に採取し、塩化ナトリウム4gを添加した。その後、バイアルに攪拌子を入れて密栓し、スターラーで30分間撹拌しながら、SPMEファイバー(シグマアルドリッチ社製、50/30μm、DVB/CAR/PDMS)に含有成分を吸着させた。吸着後、SPMEファイバーを注入口で加熱脱着し、GC/MS測定を行った。分析機器は、Agilent 7890A/5975Cinert(アジレント・テクノロジー社製)を使用した。
【0046】
分析条件は次のとおりである。
・カラム :VF−WAX(60m(長さ)、0.25mm(内径)、1.0μm(膜厚))
・カラム温度 :40℃ (3min)→ 20℃/min→ 250℃
・カラム圧力 :定流量モード(31kPa)
・カラム流量 :lmL/min(He)
・注入口温度 :250℃
・注入方式 :スプリットレス
・検出器 :MS
・イオン源温度:230℃
・イオン化方法:EI(70eV)
・スキャン範囲:m/z10〜500
・定量イオン :クマリン m/z146、7−メトキシクマリン m/z176、4−ヒドロキシクマリン m/z162、3,4−ジヒドロクマリン m/z148
【0047】
定量は以下の手順にて行った。
各成分の標準試薬をエタノールで溶解し、段階希釈して標品を調製した。所定濃度の標品を試料に添加し、試料単体と同様にSPMEファイバーに吸着させ、GC/MS測定を行った。そして、測定された各成分の定量イオンのピーク面積と調製濃度から検量線を作成し、試料中のクマリン及びその誘導体の含有量を求めた。
【0048】
4.pHの測定
茶飲料を20℃に温度調整し、pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて測定した。
【0049】
製造例1
茶抽出液IIの製造
煎茶葉(宮崎県産、鹿児島県産)30gを90℃の熱水4000gに投入し、3分間抽出を行い、茶殻を除去した後、液温20℃まで冷却し、緑茶抽出液を得た。当該緑茶抽出液を「茶抽出液II」とする。得られた茶抽出液IIは、タンニンの含有量が0.014質量%であり、非重合体カテキン類の含有量が0.010質量%であり、クマリンの含有量が5質量ppbであった。
【0050】
製造例2
茶抽出液IIIの製造
烏龍茶葉(ユニリーバ社)3gを90℃の熱水150gに投入し、8分間抽出を行い、茶殻を除去した後、液温20℃まで冷却し、ウーロン茶抽出液を得た。当該ウーロン茶抽出液を「茶抽出液III」とする。得られた茶抽出液IIIは、タンニンの含有量が0.020質量%であり、非重合体カテキン類の含有量が0.007質量%であり、クマリンの含有量が10質量ppbであった。
【0051】
製造例3
茶抽出液IVの製造
ルイボス茶ティーパック(株式会社 国太楼)2gを90℃の熱水200gに投入し、30秒抽出を行い、ティーパックを除去した後、液温20℃まで冷却し、ルイボス茶抽出液を得た。当該ルイボス茶抽出液を「茶抽出液IV」とする。得られた茶抽出液IVは、タンニンの含有量が0.016質量%であり、クマリンの含有量が5.6質量ppbであった。なお、非重合体カテキン類は検出されなかった。
【0052】
製造例4
茶抽出液Vの製造
麦茶葉(株式会社 小川生薬)2gを90℃の熱水140gに投入し、3分間抽出を行い、茶殻を除去した後、液温20℃まで冷却し、麦茶抽出液を得た。当該麦茶抽出液を「茶抽出液V」とする。得られた茶抽出液Vは、クマリン含有量が5.4質量ppbであった。なお、タンニン及び非重合体カテキン類は検出されなかった。
【0053】
製造例5
茶抽出液VIの製造
コーン茶葉(株式会社 ほんぢ園)4gを90℃の熱水150gに投入し、5分間抽出を行い、茶殻を除去した後、液温20℃まで冷却し、コーン茶抽出液を得た。当該コーン茶抽出液を「茶抽出液VI」とする。得られた茶抽出液VIは、クマリン含有量が11.3質量ppbであった。なお、タンニン及び非重合体カテキン類は検出されなかった。
【0054】
比較例1
茶抽出物I(Teavigo、太陽化学社製、タンニン94質量%、非重合体カテキン類94質量%、以下、同様である。)と、イオン交換水とを表2に示す割合で配合して緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
実施例1〜9
更に、クマリンを表2に示す割合で配合したこと以外は、比較例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表2に示す。
【0056】
官能評価1
各茶飲料の「渋味」について専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、エピガロカテキンガレート(EGCG)をイオン交換水に表1に示す割合で配合して「渋味」の強さを11段階に調整した「渋味標準飲料」を調製し、専門パネル4名が各濃度の「渋味標準飲料」について、表1に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルがEGCG濃度の低い「渋味標準飲料」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各容器詰茶飲料を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準飲料」の中から「渋味」が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。なお、評点は、数値が大きいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。また、渋味改善効果とは、クマリン類配合の有無による評点の差である。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
比較例2
茶抽出物Iの配合量を表3に示す割合に変更したこと以外は、比較例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表3に示す。
【0060】
実施例10、11
更に、クマリンを表3に示す割合で配合したこと以外は、比較例2と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
比較例3
茶抽出物Iの配合量を表4に示す割合に変更したこと以外は、比較例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表4に示す。
【0063】
実施例12、比較例4
更に、クマリンを表4に示す割合で配合したこと以外は、比較例3と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
比較例5
茶抽出物Iの配合量を表5に示す割合に変更したこと以外は、比較例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表5に示す。
【0066】
実施例13
更に、クマリンを表5に示す割合で配合したこと以外は、比較例5と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】
比較例6
クマリンに代えて、バニリンを配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例2の結果とともに表6に示す。
【0069】
比較例7
クマリンに代えて、ウンデカラクトンを配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例2の結果とともに表6に示す。
【0070】
実施例14〜16
クマリンに代えて、表6に示すクマリン誘導体を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例2の結果とともに表6に示す。
【0071】
実施例17
クマリンとともに、表6に示すクマリン誘導体を表6に示す割合で配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例2の結果とともに表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
参考例1
製造例1で得られた茶抽出液IIと、イオン交換水とを表7に示す割合で配合し、次いで重曹でpHが6.0となるように調整し、次いでイオン交換水にて全量を100質量%に調整して緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0074】
比較例8
更に、茶抽出物Iを表7に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0075】
比較例9
更に、リンゴ抽出物(リンゴポリフェノール アップリン、ユニテックフーズ株式会社、タンニン22質量%、非重合体カテキン類0.4質量%、以下、同様である。)を表7に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0076】
比較例10
更に、コーヒー抽出物(クロロゲン酸含有製剤、長谷川香料株式会社、タンニン20質量%、非重合体カテキン類0質量%、以下、同様である。)を表7に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0077】
実施例18〜20
更に、クマリンを表7に示す割合で配合したこと以外は、比較例8と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0078】
実施例21〜23
更に、クマリンを表7に示す割合で配合したこと以外は、比較例9と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0079】
実施例24
更に、クマリンを表7に示す割合で配合したこと以外は、比較例10と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表7に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
実施例25〜27
クマリンに代えて、表8に示すクマリン誘導体を配合したこと以外は、実施例18と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例18、比較例8及び参考例1の結果とともに表8に示す。
【0082】
実施例28
クマリンとともに、表8に示すクマリン誘導体を表8に示す割合で配合したこと以外は、実施例18と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例18、比較例8及び参考例1の結果とともに表8に示す。
【0083】
実施例29〜31
クマリンに代えて、表8に示すクマリン誘導体を配合したこと以外は、実施例21と同様の操作により緑茶飲料を調製した。得られた各緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、実施例21、比較例9及び参考例1の結果とともに表8に示す。
【0084】
【表8】
【0085】
比較例11
更に、茶抽出物Iを表9に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表9に示す。
【0086】
実施例32、33
更に、クマリンを表9に示す割合で配合したこと以外は、比較例11と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表9に示す。
【0087】
【表9】
【0088】
比較例12
更に、茶抽出物Iを表10に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表10に示す。
【0089】
実施例34、35、及び比較例13
更に、クマリンを表10に示す割合で配合したこと以外は、比較例12と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表10に示す。
【0090】
【表10】
【0091】
比較例14
更に、茶抽出物Iを表11に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表11に示す。
【0092】
実施例36
更に、クマリンを表11に示す割合で配合したこと以外は、比較例14と同様の操作により緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表11に示す。
【0093】
【表11】
【0094】
比較例15
茶抽出物Iと、製造例2で得られた茶抽出液IIIと、イオン交換水とを表12に示す割合で配合してウーロン茶飲料を得た。得られたウーロン茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表12に示す。
【0095】
実施例37
更に、クマリンを表12に示す割合で配合したこと以外は、比較例15と同様の操作によりウーロン茶飲料を得た。得られたウーロン茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表12に示す。
【0096】
【表12】
【0097】
比較例16
茶抽出物Iと、製造例3で得られた茶抽出液IVと、イオン交換水とを表13に示す割合で配合し、次いで重曹でpHが6.0となるように調整し、次いでイオン交換水にて全量を100質量%に調整してルイボス茶飲料を得た。得られたルイボス茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表13に示す。
【0098】
比較例17
製造例3で得られた茶抽出液IVと、コーヒー抽出物と、イオン交換水とを表12に示す割合で配合し、次いで重曹でpHが6.0となるように調整し、次いでイオン交換水にて全量を100質量%に調整してルイボス茶飲料を得た。得られたルイボス茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表13に示す。
【0099】
比較例18
茶抽出物Iと、製造例3で得られた茶抽出液IVと、コーヒー抽出物と、イオン交換水とを表12に示す割合で配合し、次いで重曹でpHが6.0となるように調整し、次いでイオン交換水にて全量を100質量%に調整してルイボス茶飲料を得た。得られたルイボス茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表13に示す。
【0100】
実施例38
更に、クマリンを表13に示す割合で配合したこと以外は、比較例16と同様の操作によりルイボス茶飲料を得た。得られたルイボス茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表13に示す。
【0101】
実施例39
更に、クマリンを表13に示す割合で配合したこと以外は、比較例17と同様の操作によりルイボス茶飲料を得た。得られたルイボス茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表13に示す。
【0102】
実施例40
更に、クマリンを表13に示す割合で配合したこと以外は、比較例18と同様の操作によりルイボス茶飲料を得た。得られたルイボス茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表13に示す。
【0103】
【表13】
【0104】
比較例19
茶抽出物Iと、製造例4で得られた茶抽出液Vと、イオン交換水とを表14に示す割合で配合して麦茶飲料を得た。得られた麦茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表14に示す。
【0105】
実施例41
更に、クマリンを表14に示す割合で配合したこと以外は、比較例19と同様の操作により麦茶飲料を得た。得られた麦茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表14に示す。
【0106】
【表14】
【0107】
比較例20
茶抽出物Iと、製造例5で得られた茶抽出液VIと、イオン交換水とを表15に示す割合で配合してコーン茶飲料を得た。得られたコーン茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表15に示す。
【0108】
実施例42
更に、クマリンを表15に示す割合で配合したこと以外は、比較例20と同様の操作によりコーン茶飲料を得た。得られたコーン茶飲料について分析及び官能評価1を行った。その結果を表15に示す。
【0109】
【表15】
【0110】
表2〜15から、タンニンに対して、クマリン及びその誘導体から選択される少なくとも1種を特定の量比で含有させることで、タンニン由来の渋味が抑制された茶飲料が得られることがわかる。また、表6から、バニリンやウンデカラクトンは、クマリン及びその誘導体と同様に甘い香りを有する香気成分であるが、タンニン由来の渋味の抑制が不十分となることがわかる。
【0111】
比較例21
茶抽出物I(Teavigo、太陽化学社製、タンニン94質量%、非重合体カテキン類94質量%、以下、同様である。)と、賦形剤(サンデック#100、三和澱粉社製)を表17に示す割合で配合して緑茶配合粉末食品を得た。得られた緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表17に示す。
【0112】
実施例43〜45
更に、クマリンを表17に示す割合で配合したこと以外は、比較例21と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた各緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表17に示す。
【0113】
官能評価2
各粉末食品の「渋味」について専門パネル3名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、エピガロカテキンガレート(EGCG)を賦形剤(サンデック#100、三和澱粉社製)に表16に示す割合で配合して「渋味」の強さを16段階に調整した「渋味標準粉末食品」を調製し、専門パネル3名が各濃度の「渋味標準粉末食品」について、表16に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルがEGCG濃度の低い「渋味標準粉末食品」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各粉末食品を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準粉末食品」の中から「渋味」が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。なお、評点は、数値が大きいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。また、渋味改善効果とは、クマリン類配合の有無による評点の差である。
【0114】
【表16】
【0115】
【表17】
【0116】
比較例22
茶抽出物Iの配合量を表18に示す割合に変更したこと以外は、比較例21と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表18に示す。
【0117】
実施例46
更に、クマリンを表18に示す割合で配合したこと以外は、比較例22と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた各緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表18に示す。
【0118】
【表18】
【0119】
比較例23
茶抽出物Iの配合量を表19に示す割合に変更したこと以外は、比較例22と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表19に示す。
【0120】
実施例47
更に、クマリンを表19に示す割合で配合したこと以外は、比較例23と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた各緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表19に示す。
【0121】
【表19】
【0122】
比較例24
茶抽出物Iの配合量を表20に示す割合に変更したこと以外は、比較例23と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表20に示す。
【0123】
実施例48
更に、クマリンを表20に示す割合で配合したこと以外は、比較例24と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた各緑茶配合粉末食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表20に示す。
【0124】
【表20】
【0125】
比較例25
茶抽出物Iの配合量を表21に示す割合に変更したこと以外は、比較例24と同様の操作により緑茶配合粉末食品を調製した。得られた緑茶粉末配合食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表21に示す。
【0126】
実施例49
更に、クマリンを表21に示す割合で配合したこと以外は、比較例25と同様の操作により緑茶粉末配合食品を調製した。得られた各緑茶粉末配合食品について分析及び官能評価2を行った。その結果を表21に示す。
【0127】
【表21】
【0128】
表17〜21から、タンニンに対して、クマリン及びその誘導体から選択される少なくとも1種を特定の量比で含有させることで、タンニン由来の渋味が抑制された固形食品が得られることがわかる。