特許第6876180号(P6876180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876180
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】加熱部材、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20210517BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
   H05B3/00 335
   H05B3/00 370
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-75296(P2020-75296)
(22)【出願日】2020年4月21日
(62)【分割の表示】特願2018-238380(P2018-238380)の分割
【原出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2020-129124(P2020-129124A)
(43)【公開日】2020年8月27日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−059508(JP,A)
【文献】 特開2012−252190(JP,A)
【文献】 特開2007−240606(JP,A)
【文献】 特開平08−328409(JP,A)
【文献】 特開平06−348172(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0091251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層である第1の基板と、
絶縁層であり、前記第1の基板の上に、媒体の搬送方向と直交する方向において間を空けて並べられて配置される複数の第2の基板と、
複数の前記第2の基板それぞれの上に配置され、それぞれ通電されて前記媒体を加熱する複数の発熱部材と、
を備える加熱部材。
【請求項2】
隣接する2個の前記発熱部材の間の距離は、これら2個の前記発熱部材が配置された2個の前記第2の基板の間の距離と同じである、
請求項1記載の加熱部材。
【請求項3】
複数の前記第2の基板それぞれの形状と、複数の前記第2の基板それぞれに配置された前記発熱部材の形状とは同じである、
請求項1または2記載の加熱部材。
【請求項4】
複数の前記第2の基板は、予め決められた厚さを有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱部材と、
弾性層が形成され、複数のローラに懸架された無端ベルトと、
弾性層が表面に形成されたプレスローラと、
を備え、
前記加熱部材の複数の前記発熱部材は、前記無端ベルトの内側に接触し、前記プレスローラの方向に押圧されることにより、前記プレスローラとの間に定着ニップを形成し、
前記定着ニップにおいて、前記媒体に転写されたトナーを、前記媒体に定着させる、
定着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の定着装置と、
前記定着装置が備える前記加熱部材の複数の前記発熱部材のうち、前記媒体が通過する位置に対応する複数の前記発熱部材のうちの1個以上を選択して通電し、前記加熱部材における加熱を制御する加熱制御装置と、
を備え、
前記媒体に画像を形成する、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、加熱部材、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に搭載される定着装置の熱源として、ハロゲンランプを代表とする赤外線を発するランプ、あるいは、電磁誘導によりジュール熱で加熱する方式が実用化されている。
【0003】
一般に、定着装置は加熱ローラ(あるいは複数のローラに掛け渡された定着ベルト)とプレスローラの対により構成されるが、定着装置の熱効率を最大化するためには出来るだけ構成要素の熱容量を低減化し、かつ、加熱領域を集中させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2629980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の加熱方式では、加熱幅が広いため、広範囲に分散された熱エネルギーをニップ部分だけに集中的に与えることは難しく、熱効率を最適化することが難しい。また、電子写真用の定着装置では、用紙搬送方向と直角方向に発熱むらが生じると、定着品質に影響する。特に、カラー印刷の場合は、発色、光沢に差異が発生する可能性がある。
【0006】
更に、熱容量を極端に削減した定着装置では、用紙が通過しない部分の温度が極端に上昇するため、ヒータの反り、ベルトの劣化、搬送ローラの膨張による速度ムラなどの問題が発生する場合があった。また、用紙が通過しない部分を加熱することは、省エネルギー化の観点からも好ましくない。用紙が通過する部分のみを集中的に加熱することは、環境対応の観点からも重要な技術課題となっている。
【0007】
このため、発熱領域を分割して制御することが提案されているが、発熱領域を分割する場合には、安全上の対策から、動作電圧の値や設置環境等を考慮して分割後の発熱部材間の境界部分における沿面距離または空間距離を一定の値以上で設けなければならないため、その部分で温度低下が生じてしまい、その結果、温度ムラにより定着品質の低下の原因となってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、通紙領域に対する集中的かつ安定した加熱を可能とし、定着品質の向上と省エネルギー化を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態にかかる加熱部材は、絶縁層である第1の基板と、絶縁層であり、前記第1の基板の上に、媒体の搬送方向と直交する方向において間を空けて並べられて配置される複数の第2の基板と、前記複数の第2の基板それぞれの上に配置され、それぞれ通電されて前記媒体を加熱する複数の発熱部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る定着装置が搭載される画像形成装置の構成例を示す図。
図2】一実施形態における画像形成部の一部を拡大して示す構成図。
図3】一実施形態におけるMFPの制御系の構成例を示すブロック図。
図4】一実施形態に係る定着装置の構成例を示す図。
図5】一実施形態における発熱部材群の配置図。
図6】一実施形態における分割後の発熱部材間の沿面距離を説明する断面図。
図7】一実施形態における発熱部材群とその駆動回路の接続状態を示す図。
図8】一実施形態におけるMFPの制御動作の具体例を示すフローチャート。
図9】一実施形態の変形例における発熱部材とセラミック基板の固定構造を示す断面図。
図10】一実施形態の変形例における発熱部材群の形状パターンを示す図。
図11】一実施形態の変形例における発熱部材群の形状パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る定着装置について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る定着装置が搭載される画像形成装置の構成例を示す図である。図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0012】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には操作部14が設けられている。操作部14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0013】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するものであり、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(図1では奥行方向)に配置されている。
【0014】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0015】
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙Pを収容する複数の給紙カセット18を備えている。
【0016】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置されている。また、レーザ露光器(走査ヘッド)19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応した複数のレーザ露光器19Y、19M、19C、19Kを有している。
【0017】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大して示す構成図である。尚、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを例に説明する。
【0018】
画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電器(帯電チャージャ)23K、現像器24K、一次転写ローラ(転写器)25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、レーザ露光器19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
【0019】
画像形成部20Kの帯電器23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0020】
また、図1に示すように、画像形成部20Y〜20Kの上部には、現像器24Y〜24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジを含む。
【0021】
中間転写ベルト21は、循環的に移動する。中間転写ベルト21は、駆動ローラ31および従動ローラ32に張架される。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kにより一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
【0022】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、二次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と二次転写ローラ33間を用紙Pが通過する際に、二次転写ローラ33により二次転写電圧が印加される。そして、中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0023】
また、図1で示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送する給紙ローラ35が設けられている。更に、二次転写ローラ33の下流には定着装置36が設けられている。また、定着装置36の下流には搬送ローラ37が設けられている。搬送ローラ37は用紙Pを排紙部38に排出する。更に、定着装置36の下流には、反転搬送路39が設けられている。反転搬送路39は、用紙Pを反転させて二次転写ローラ33の方向に導くものであり、両面印刷を行う際に使用される。図1図2はMFP10の構成例を示すものであり、定着装置36以外の画像形成装置部分の構造を限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
【0024】
図3は、本実施形態におけるMFP10の制御系50の構成例を示すブロック図である。制御系50は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、定着制御回路150を備えている。
【0025】
CPU100は、ROM120あるいはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。ROM120(あるいはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、用紙の通紙領域や用紙中の印字領域の大きさ(主走査方向での幅)と通電させる発熱部材との対応関係などが挙げられる。
【0026】
定着装置36の定着温度制御プログラムは、トナー像が形成された用紙における画像形成領域の大きさを判定する判定ロジックと、用紙が定着装置36の内部に搬送される前に用紙の通紙領域に対応する発熱部材のスイッチング素子を選択して通電し、加熱手段における加熱を制御する加熱制御ロジックとを含んでいる。
【0027】
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。入出力制御回路123は、操作部14を構成するオペレーションパネル123a、表示器123bを制御する。給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35あるいは搬送路の搬送ローラ37等を駆動するモータ群130a等を制御する。給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて給紙カセット18近傍あるいは搬送路上の各種センサ130bの検知結果を考慮してモータ群130a等を制御する。画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、レーザ露光器19、現像器24、転写器25をそれぞれ制御する。定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36の駆動モータ360、加熱部材361、サーミスタ等の温度検知部材362をそれぞれ制御する。尚、本実施形態では定着装置36の制御プログラムおよび制御データをMFP10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。
【0028】
図4は、定着装置36の構成例を示す図である。ここでは、定着装置36が、板状の加熱部材361、弾性層が形成され、複数のローラに懸架された無端ベルト363、無端ベルト363を駆動するベルト搬送ローラ364、無端ベルト363に張力を与えるテンションローラ365、弾性層が表面に形成されたプレスローラ366を備えている。加熱部材361は、発熱部側が無端ベルト363の内側に接触し、プレスローラ366方向に押圧されることで、プレスローラ366との間に所定幅の定着ニップを形成する。加熱部材361がニップ領域を形成しつつ加熱する構成のため、通電時における応答性はハロゲンランプによる加熱方式の場合よりも高い。
【0029】
無端ベルト363は、例えば厚さ50umのSUS基材あるいは70umの耐熱樹脂であるポリイミド上の外側に厚さ200umのシリコンゴム層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。プレスローラ366は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mmのシリコンスポンジ層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。
【0030】
また、加熱部材361は、セラミック基板上にグレーズ層および発熱抵抗層が積層されている。反対側に余分な熱を逃がすとともに基板の反りを防ぐために、発熱抵抗層は、例えばTaSiO2などの既知の素材で形成され、主走査方向において所定の長さと個数に分割されている。
【0031】
発熱抵抗層の形成の方法は既知の方法(例えばサーマルヘッドの作成方法)と同様であり、発熱抵抗層の上にアルミでマスキング層を形成させる。隣接する発熱部材間が絶縁され、かつ、用紙搬送方向に発熱抵抗体(発熱部材)が露出するようなパターンでアルミ層を形成する。発熱抵抗層への通電は、両端のアルミ層(電極)から配線を繋ぎ、それぞれをスイッチングドライバICのスイッチング素子に繋ぐ。更に、発熱抵抗層、アルミ層、配線等の全てを覆うように、最上部に保護層を形成する。保護層は、例えばSi3N4などによって形成される。
【0032】
図5は、本実施形態における発熱部材群の配置図である。同図に示されるように、セラミック基板361a上には、図示左右方向における長さが複数種であって、平行四辺形または台形形状に形成された発熱部材361bが並べて配置されており、発熱部材361bの用紙搬送方向(図示上下方向)における両端部には電極361c、電極361dが形成されている。
【0033】
図5に示すように、発熱部材361bは複数に分割されているが、後述するように、これらは発熱部材単位あるいは発熱部材群単位(ブロック単位)で直流または交流の印加電圧によって駆動される。しかし、例えば交流で高圧(100V以上)の場合や直流でも電流量が大きい場合には、隣接する発熱部材361b間は、安全対策上、沿面距離や空間距離を十分に確保する必要がある。沿面距離は、2つの導電性部分間の、絶縁物の表面に沿った最短距離である。これに対し、空間距離は、2つの導電性部分間の、空間を通る最短距離である。しかし、これらの距離を長くし過ぎると、境界部分での温度低下を招いてしまう。
【0034】
そこで、本実施形態では、温度低下を抑えつつ、隣接する部材間の境界における沿面距離または空間距離を所定の最適値に調整するために、各発熱部材361bの形状を変更している。具体的には、図5の場合、発熱部材361bは、上面が平行四辺形または台形であり、それぞれの上辺と下辺側に電極361c、電極361dがそれぞれ形成されている。このため、互いに隣接する発熱部材361b間の境界部分に位置する側面は用紙搬送方向に対して所定の角度で傾斜しており、対向する側面同士は平行となっている。したがって、用紙搬送方向と平行に分割する場合に比べて、隣接する発熱部材361b間における電極361c、361d間の沿面距離を長くすることができる。
【0035】
また、図5に示すように、本実施形態では、加熱部材361の発熱パターンは、図示左右方向の長さが通紙される用紙の大きさに対応して複数種の発熱部材361bにより構成されている。具体的には、ハガキサイズ(100×148mm)、CDジャケットサイズ(121×121mm)、B5Rサイズ(182×257mm)、A4Rサイズ(210×297mm)に対応して複数種の長さの発熱部材(発熱素子)361bに分割されている。隣接する発熱部材361bからなる発熱部材群は、搬送される用紙の搬送精度やスキューや非加熱部分への熱の逃げを考慮して、加熱領域に対して5%程度あるいは約10mmの余裕を持つように通電される。
【0036】
例えば、最小サイズであるハガキサイズの幅100mmに対応するため、主走査方向(図示左右方向)における中央部に第1の発熱部材群を設け、その幅は105mmとする。次に大きいサイズ121mmと148mmに対応するため、第1の発熱部材群の外側(図示左右方向)に、幅50mmの第2の発熱部材群を設け、148mm+5%で155mmまでの幅をカバーする。更に大きいサイズ182mmと210mmに対応するため、第2の発熱部材群の更に外側には、各発熱部材の幅が65mmの第3の発熱部材群を設け、210mm+5%で220mmまでの幅をカバーする。尚、発熱部材群の分割数とそれぞれの幅は一例として挙げたもので、これに限定はされない。例えばMFP10が5つの媒体サイズに対応していた場合には、発熱部材群を各媒体サイズに合わせて5分割してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、通紙領域にラインセンサ(図示省略する)を配置し、通過する用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できるものとする。印刷動作の開始時に画像データあるいはMFP10内の用紙の貯蔵されている給紙カセット18の情報から用紙サイズを判定する構成にしてもよい。
【0038】
図6は、分割後の発熱部材361b間の沿面距離を説明する断面図である。図6(A)は、分割されていない発熱部材361bの長手方向における断面図である。ここでは、絶縁層であるセラミック基板361a上に厚さD1の発熱部材361bが一枚だけ固定されている場合を示している。また、図6(B)は、発熱部材361bの厚さをD1に維持しつつ、発熱部材361bを複数個に分割した場合を示している。図6(A)の場合と同様に、発熱部材361b(発熱層)はセラミック基板361a上に固定されている。発熱部材361b(発熱層)は導体であるため、D1は沿面距離には影響を与えない。境界部分は絶縁されているため、隣接する発熱部材361b間の空間距離をG1とすると、沿面距離はG1となる。これに対し、図6(C)は、本実施形態における加熱部材361のパターンを示している。発熱部材361b(発熱層)の厚さはD1であり、図6(A)・(B)の場合と同様であるが、セラミック基板361aとは別に、発熱部材361bの下に別の絶縁層としてブロック状のセラミック基板361a′が設けられている。セラミック基板361a′の上面は、分割されている発熱部材361bの下面と同じ形状である。厚さD2のセラミック基板361a′を別途設けたことにより、隣接する発熱部材361b間の空間距離はG1よりも短いG2であるが、沿面距離は2×D2+G2となる。すなわち、空間距離を短くした代わりに、沿面距離を長く調整することで、境界部分における温度低下を抑えつつ、同時に安全上の対策を行うことが示されている。
【0039】
図7は、発熱部材群とその駆動回路の接続状態を示す図である。同図に示されるように、発熱部材361bは、対応する駆動IC151によって個別または中央部分に対して対称位置にあるグループ毎に通電が制御される。各発熱部材361bは、それぞれに同一の電位が印加されるように、全体としては並列接続となっているが、中央部分に対して対称位置にある一対の発熱部材361b同士は並列回路の中で直列に接続されており、同一の駆動IC151で駆動制御されている。駆動IC151の個数を発熱部材361bの分割数よりも少なくできるため、駆動IC151の数量を減らし、装置サイズや製造コストを抑えることができる。
【0040】
各発熱部材361bに対する通電の切替部である駆動IC151の具体例としては、スイッチング素子、FET、トライアックス、スイッチングICなどが挙げられる。図7では、発熱部材361bには、それぞれ交流で電圧が印加され、発熱する構成例を示しているが、直流にすることもできる。
【0041】
例えば、用紙Pが最小サイズ(ハガキサイズ)の場合には、中央に配置されている発熱部材361b(第1の発熱部材群)の駆動IC151のみがONとなり、加熱される。用紙Pのサイズが大きくなるにつれて、第2の発熱部材群、第3の発熱部材群の駆動IC151も順次ONとなるように制御される。第1〜第3の発熱部材群は均一な温度上昇率になるように、電気抵抗値がそれぞれ調整されているものとする。
【0042】
また、図7では、電源から供給された電流は4つに分かれて流れるため、駆動IC151と同様に、並列回路毎に安全素子152が設けられている。安全素子152は、対応する発熱部材361bの表面温度を計測する温度検知部材362(図示省略する)の温度検出結果が“異常温度検出”である場合には、駆動IC151を制御して電気回路を遮断する素子である。
【0043】
以下、上記のように構成されたMFP10の印刷時の動作を図面に基づいて説明する。図8は、本実施形態におけるMFP10の制御の具体例を示すフローチャートである。
【0044】
先ず、スキャナ部15で画像データを読込む(Act101)と、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムが並列して実行される。
【0045】
画像形成処理が開始されると、読込まれた画像データを処理し(Act102)、感光体ドラム22の表面に静電潜像を書込み(Act103)、現像器24で静電潜像を現像した後(Act104)、Act114へ進む。
【0046】
定着温度制御処理が開始されると、例えばラインセンサ(図示省略された)の検出信号、操作部14による用紙選択情報に基づいて用紙サイズを判定し(Act105)、用紙Pが通過する位置(通紙領域)に配置された発熱部材群を発熱対象として選択する(Act106)。
【0047】
次に、選択された発熱部材群への温度制御開始信号をONにすると(Act107)、選択された発熱部材群への通電が行われ、発熱部材群の表面温度が上昇する。すなわち、加熱領域が定まると、選択された発熱部材361bを全て同一の制御で稼働する。このとき、通電された発熱部材361bは、均一の温度上昇率で発熱する。
【0048】
次に、無端ベルト363の内側あるいは外側に配置された温度検知部材(図示省略する)により、発熱部材群の表面温度を検知すると(Act108)、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内か否かを判定する(Act109)。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内であると判定された場合は(Act109:Yes)、Act110へ進む。これに対し、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内でないと判定された場合は(Act109:No)、Act111へ進む。
【0049】
Act111においては、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えているか否かを判定する。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていると判定された場合(Act111:Yes)は、Act106において選択されていた発熱部材群への通電をOFFにし(Act112)、Act108へ戻る。これに対し、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていないと判定された場合(Act111:No)は、Act109の判定結果より表面温度が所定の温度下限値に満たない状態であるため、発熱部材群への通電をON状態に維持、あるいは、再度ONにし(Act113)、Act108へ戻る。
【0050】
次に、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内の状態で、用紙Pを転写部に搬送すると(Act110)、用紙Pにトナー像を転写した後(Act114)に、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
【0051】
次に、定着装置36内で用紙Pにトナー像を定着させると(Act115)、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する(Act116)。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act116:Yes)、全ての発熱部材群への通電をOFFにし(Act117)、処理を終了する。これに対し、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act116:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act101へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0052】
このように、本実施形態によれば、使用される用紙サイズが属するグループに基づいて発熱対象となる発熱部材群を切替えることにより、非通紙部分の異常発熱を防止できるだけでなく、非通紙部分の無駄な加熱を抑制できる。このため、定着装置36が消費する熱エネルギーを大幅に削減することが可能である。更に、両端に形成された電極間の沿面距離、隣接する発熱部材361bの間の境界部分における沿面距離または空間距離が、境界部分において温度低下が生じないように調整されているため、境界部分における温度低下を抑制しつつ、安全上の対策も同時に行うことができる。この結果、通紙領域内における加熱部材361の温度ムラがなくなり、定着品質を向上させることができる。
【0053】
<変形例>
以下、上記実施形態の幾つかの変形例について図面に基づいて詳細に説明する。
図9は、上記実施形態の変形例における発熱部材361bとセラミック基板361aの固定構造を示す断面図である。ここでは、複数の発熱部材361bが固定されるセラミック基板361aの上面を湾曲形状に形成するとともに、この上面における湾曲の角度および発熱部材361bの各々固定位置によって沿面距離および空間距離が調整されることが示されている。図9に示すように、クラウン形状のセラミック基板361aの湾曲面上に複数の発熱部材361bを固定しているため、隣接する発熱部材361b間の境界部分における空間距離は短くなるが、その分沿面距離を長くすることができる。各発熱部材361bは独立してパターン化されたものをセラミック基板361aにそれぞれ貼り付けてもよいし、上述のようにセラミック基板361a上で抵抗発熱層のパターンを同時に形成する方法でも形成できる。
【0054】
図10および図11は、上記実施形態の変形例における発熱部材群の他の形状パターンを示す図である。図10では、隣接する発熱部材361b間の境界部分を屈曲形状にするとともに、この境界部分において対向する面同士が平行になるように形成することで電極361c,電極361d間の沿面距離が調整されることが示されている。
【0055】
また、連続印刷中に異なるサイズの用紙が搬送され、印刷される場合(特に、小サイズから、それよりも大きなサイズの用紙が印刷される場合)は、用紙サイズに対応して発熱する発熱部材361bに係る温度検知部材362の温度検出結果が部材間で同一になるまでの時間を確保するために、用紙の搬送間隔を延長する、あるいは搬送速度を遅らせるよう定着制御プログラムで制御を行うと好適である。
【0056】
また、分割後の発熱部材361bの長さは、境界部分が通紙領域の端部よりも外側になるように調整すると、境界部分からの影響を小さく抑えることができるため好適である。
【0057】
更に、上記実施形態では、定着装置36内に用紙Pが搬送される前に、用紙設定情報に基づいて用紙Pの通紙領域の大きさを判定する構成としたが、用紙の通紙領域の代わりに印字領域(画像形成領域)が通過する位置を判定して加熱することもできる。用紙Pの印字領域の大きさを判定する方法としては、画像データの解析結果を利用する方法、用紙Pに対する余白設定などの印刷フォーマット情報に基づく方法、光学センサの検出結果に基づいて判定する方法などが挙げられる。この場合、定着が必要な箇所のみを限定的に加熱することができるため、省エネルギー効率を更に高めることができる。
【0058】
これに対し、図11では、矢印Aで示す用紙搬送方向に対して長方形の発熱部材361bが一定の角度だけ傾斜するようにセラミック基板361a上に固定される場合が示されている。上記図5のように発熱部材361bが平行四辺形または台形形状に形成されている場合には、電流は部材内を最短距離で流れるため、発熱部材361bの大きさによっては同じ発熱部材361bの中でも発熱のしやすさに差が生じてしまう。そこで、図11のように、電極361c〜電極361d間の距離が同じである長方形の発熱部材361bを用紙搬送方向に対して傾斜させて配置することで、通電条件・発熱条件を均一にすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
36…定着装置
150…定着制御回路
151…駆動IC
361…加熱部材
361a…セラミック基板
361b…発熱部材
361c,361d…電極
363…無端ベルト
366…加圧ローラ
図1
図2
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図11