【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づき、本発明の多層膜付きλ/2フレネルロムについて更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
以下の実施例では、菱面体を形成する等方性材料として石英又はCaF
2を用い、フレネルロムHWPに多層膜Mを形成した際の位相差の波長特性を示す。具体的には、石英製とCaF
2製のフレネルロムHWPの4つの全反射面の少なくとも1つ以上の面に、膜材料が異なる3種類の多層膜(2〜50層膜)をそれぞれ成膜したものを示す。
【0059】
<実施例1.多層膜付き石英製λ/2フレネルロム>
石英製のλ/2フレネルロムの4つ全ての全反射面に、GdF
3/MgF
2、LaF
3/MgF
2、NdF
3/MgF
2の多層膜を成膜した場合における位相差の波長特性を実施例1−1.〜1−11.に示す。
図7は、石英製のλ/2フレネルロムの概要図で、多層膜の種類(構成)によらず同一の形状である。なお、2つの菱面体をオプティカル・コンタクトした場合と、互いに離して平行に並べた場合の位相差に違いはない。また、
図7に示す石英製のλ/2フレネルロムは、同一の平行四辺形状のプリズム素子を2つ組み合わせた構造であり、入射光線Iと出射光線Eの光軸がずれない。換言すると、入射光線Iと出射光線Eが一直線になり、入射光線Iと出射光線Eの光軸が(略)同軸となる。
【0060】
(実施例1−1.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の2層膜)
図8に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による2層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表1に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の2層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1135nmの範囲で170〜190°の位相差にする事が可能になる。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例1−2.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の4層膜)
図9に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表2に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の4層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1250nmの範囲で170〜182.3°の位相差にする事が可能になる。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例1−3.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の10層膜)
図10に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表3に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の10層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1632nmの範囲で170〜182.6°の位相差にする事が可能になる。
【0065】
【表3】
【0066】
(実施例1−4.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の20層膜)
図11に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による20層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表4に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の20層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1872nmの範囲で170〜187.6°の位相差にする事が可能になる。
【0067】
【表4】
【0068】
(実施例1−5.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の50層膜)
図12に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表5に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の50層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で174.9〜187.8°の位相差にする事が可能になる。
【0069】
【表5】
【0070】
(実施例1−6.石英製λ/2フレネルロム、LaF
3/MgF
2の2層膜)
図13に4つの全反射面にLaF
3/MgF
2による2層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表6に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にLaF
3/MgF
2の2層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1233nmの範囲で170〜190°の位相差にする事が可能になる。
【0071】
【表6】
【0072】
(実施例1−7.石英製λ/2フレネルロム、LaF
3/MgF
2の4層膜)
図14に4つの全反射面にLaF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表7に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にLaF
3/MgF
2の4層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1618nmの範囲で170〜182.8°の位相差にする事が可能になる。
【0073】
【表7】
【0074】
(実施例1−8.石英製λ/2フレネルロム、LaF
3/MgF
2の10層膜)
図15に4つの全反射面にLaF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表8に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にLaF
3/MgF
2の10層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で174.1〜186.6°の位相差にする事が可能になる。
【0075】
【表8】
【0076】
(実施例1−9.石英製λ/2フレネルロム、NdF
3/MgF
2の2層膜)
図16に4つの全反射面にNdF
3/MgF
2による2層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表9に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にNdF
3/MgF
2の2層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1240nmの範囲で170〜190°の位相差にする事が可能になる。
【0077】
【表9】
【0078】
(実施例1−10.石英製λ/2フレネルロム、NdF
3/MgF
2の4層膜)
図17に4つの全反射面にNdF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表10に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にNdF
3/MgF
2の4層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1711nmの範囲で170〜183.2°の位相差にする事が可能になる。
【0079】
【表10】
【0080】
(実施例1−11.石英製λ/2フレネルロム、NdF
3/MgF
2の10層膜)
図18に4つの全反射面にNdF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表11に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にNdF
3/MgF
2の10層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で175.5〜187.1°の位相差にする事が可能になる。
【0081】
【表11】
【0082】
<実施例2.多層膜付きCaF
2製λ/2フレネルロム>
CaF
2製のλ/2フレネルロムの4つ全ての全反射面に、GdF
3/MgF
2、LaF
3/MgF
2、NdF
3/MgF
2の多層膜を成膜した場合における位相差の波長特性を実施例2−1.〜2−11.に示す。
図19は、CaF
2製のλ/2フレネルロムの概要図で、多層膜の種類(構成)によらず同一の形状である。なお、2つの菱面体をオプティカル・コンタクトした場合と、互いに離して平行に並べた場合の位相差に違いはない。また、
図19に示すCaF
2製のλ/2フレネルロムは、同一の平行四辺形状のプリズム素子を2つ組み合わせた構造であり、入射光線Iと出射光線Eの光軸がずれない。換言すると、入射光線Iと出射光線Eが一直線になり、入射光線Iと出射光線Eの光軸が(略)同軸となる。
【0083】
(実施例2−1.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の2層膜)
図20に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による2層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表12に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の2層膜を成膜する事で、波長λ=190〜764nmの範囲で170〜190°の位相差にする事が可能になる。
【0084】
【表12】
【0085】
(実施例2−2.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の4層膜)
図21に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表13に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の4層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1155nmの範囲で170〜185.6°の位相差にする事が可能になる。
【0086】
【表13】
【0087】
(実施例2−3.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の10層膜)
図22に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表14に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の10層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1866nmの範囲で170〜189.1°の位相差にする事が可能になる。
【0088】
【表14】
【0089】
(実施例2−4.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の20層膜)
図23に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による20層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表15に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の20層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で170.9〜188.9°の位相差にする事が可能になる。
【0090】
【表15】
【0091】
(実施例2−5.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2の50層膜)
図24に4つの全反射面にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表16に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にGdF
3/MgF
2の50層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で175.4〜189°の位相差にする事が可能になる。
【0092】
【表16】
【0093】
(実施例2−6.CaF
2製λ/2フレネルロム、LaF
3/MgF
2の2層膜)
図25に4つの全反射面にLaF
3/MgF
2による2層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表17に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にLaF
3/MgF
2の2層膜を成膜する事で、波長λ=190〜788nmの範囲で170〜190°の位相差にする事が可能になる。
【0094】
【表17】
【0095】
(実施例2−7.CaF
2製λ/2フレネルロム、LaF
3/MgF
2の4層膜)
図26に4つの全反射面にLaF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表18に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にLaF
3/MgF
2の4層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1221nmの範囲で170〜185.6°の位相差にする事が可能になる。
【0096】
【表18】
【0097】
(実施例2−8.CaF
2製λ/2フレネルロム、LaF
3/MgF
2の10層膜)
図27に4つの全反射面にLaF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表19に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にLaF
3/MgF
2の10層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で172.6〜187.7°の位相差にする事が可能になる。
【0098】
【表19】
【0099】
(実施例2−9.CaF
2製λ/2フレネルロム、NdF
3/MgF
2の2層膜)
図28に4つの全反射面にNdF
3/MgF
2による2層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表20に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にNdF
3/MgF
2の2層膜を成膜する事で、波長λ=190〜777nmの範囲で170〜190°の位相差にする事が可能になる。
【0100】
【表20】
【0101】
(実施例2−10.CaF
2製λ/2フレネルロム、NdF
3/MgF
2の4層膜)
図29に4つの全反射面にNdF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表21に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にNdF
3/MgF
2の4層膜を成膜する事で、波長λ=190〜1252nmの範囲で170〜184.7°の位相差にする事が可能になる。
【0102】
【表21】
【0103】
(実施例2−11.CaF
2製λ/2フレネルロム、NdF
3/MgF
2の10層膜)
図30に4つの全反射面にNdF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表22に多層膜の膜厚などを示す。全反射面にNdF
3/MgF
2の10層膜を成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で173.7〜186.3°の位相差にする事が可能になる。
【0104】
【表22】
【0105】
<比較例.従来のフレネルロムとの比較>
本実施形態の多層膜付きλ/2フレネルロムと従来のフレネルロムとの比較を以下に示す。本実施形態の多層膜付きλ/2フレネルロムは、波長λ=190〜2000nmと真空紫外から近赤外の波長領域において、位相差を180±10°にする事が可能な位相子である。第一菱面体10及び第二菱面体20を構成する素材は、上記の波長帯域を透過する等方性材料で安定的な入手が可能な石英又はCaF
2となる。
図31に示すように、位相差特性は、石英製の方が若干劣っている為、以下に示す比較は、等方性材料として石英を用いた場合で行う。なお、以下の比較では、多層膜Mが50層膜である例を示して行っているが、積層数によらず、概ね同様の結果となる。
【0106】
図32は、全反射面に多層膜を有する本実施形態のフレネルロムHWPと、従来から存在する各種フレネルロムによる位相差の波長特性について比較したものである。フレネルロムは、位相差の波長特性に優れた素子で、素材に石英を使用する事で、真空紫外から近赤外領域までの波長領域に対応可能な位相子とする事が可能である。位相差の平坦性や使用時の使い勝手などは、構造によって異なり、これらを鑑みた際に、優れた位相差性能を持ち、使い勝手が良く、現実的なフレネルロムは、従来存在していなかった。
【0107】
(比較例1.石英製λ/2フレネルロム膜無し、MgF
2単層膜フレネルロム(従来品)との比較)
図33Aに石英製の膜無しλ/2フレネルロムと、全反射面にMgF
2単層膜又はGdF
3単層膜を形成した従来のフレネルロム(MgF
2単層膜フレネルロム又はGdF
3単層膜フレネルロム)の概要図を示し、
図33Bに位相差の波長特性の比較を示す。なお、MgF
2単層膜フレネルロムは、特許文献1を参考にλ/2フレネルロムとして検討し直したものである。ここで示した3つの従来品と本実施形態のフレネルロムHWPは、基本形状は同一であり、違いは全反射面の膜構成のみとなっている。このような屋根型(ダブル型)と言われる構造の場合、入射光線と出射光線の光軸にズレなどが起こらない為、光学系を組み立てる際や、素子を回転させて使用する際に非常に便利である。また、開口と長さの比が10:30程度と偏光用素子としては、一般的な大きさである。位相差特性は、波長λ=190〜2000nmにおいて、本実施形態のフレネルロムHWP以外は、180°±10°を超えてしまう。
【0108】
(比較例2.石英製λ/2フレネルロム1個型との比較)
図34Aに石英製λ/2フレネルロム1個型(従来品)の概要図を示し、
図34Bに位相差の波長特性の比較を示す。1個型の場合、1回の全反射で得られる位相差が最大約40°〜45°程度である為、2回の全反射で得られる位相差は、90°程度になる。素子を長くして全反射回数を4回にする事も可能であるが、位相差の性能は、屋根型(ダブル型)にして4回反射させる場合と同じである。その上、1個型の場合、構造上、入射光線と出射光線の光軸にズレが発生するという特徴があり、素子を長くすればする程ズレが大きくなってしまい、光学系を組む際に、光線のズレに合わせて、後の部品もずらして配置しなければならなくなったり、1個型フレネルロムを回転させながら使用すると、出射光線の位置も回転してしまい、使用し難くなってしまう。
【0109】
(比較例3.石英λ/2フレネルロムキング型との比較)
図35Aに石英λ/2フレネルロムキング型(従来品)の概要図を示し、
図35Bに位相差の波長特性の比較を示す。キング型の場合、3回の全反射で得られる位相差が、最大約100°前後と位相差を180°にする事が出来ない。また、キング型は、その構造上、
図35Aに図示した一か所の位置以外では、入射光線と出射光線の光軸にズレが発生し光線の上下が逆転する。この為、光線の上下を修正する部品を追加する必要があり、使用し難いという問題がある。
【0110】
<実施例3.多層膜の成膜面数を1つ〜3つとした多層膜付きλ/2フレネルロム>
石英製又はCaF
2製λ/2フレネルロムに多層膜を成膜した際の位相差の波長特性を以下に示す。具体的には、石英製又はCaF
2製のフレネルロムの1つ〜3つの全反射面に、膜材料GdF
3とMgF
2の、多層膜を成膜した場合に、位相差特性が広帯域となることを示す例である。
【0111】
(実施例3−1.多層膜付き石英製λ/2フレネルロム)
石英製のλ/2フレネルロムの1つ〜3つの全反射面に、GdF
3/MgF
2による多層膜を成膜した場合の位相差波長特性を実施例3−1−1〜3−1−4に示す。具体的には、
図7に示す石英製のλ/2フレネルロムにおいて、4つの全反射面の任意の1つ〜3つの面に多層膜を成膜した例を示す。
【0112】
(実施例3−1−1.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:1面、50層膜)
図36にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表23に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の50層膜を3つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜1753nmの範囲で170〜181.6°の位相差にする事が可能になる。
【0113】
【表23】
【0114】
(実施例3−1−2.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:2面、10層膜)
図37にGdF
3/MgF
2による10層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表24に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の10層膜を2つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜1905nmの範囲で170〜186°の位相差にする事が可能になる。
【0115】
【表24】
【0116】
(実施例3−1−3.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:2面、50層膜)
図38にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表25に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の50層膜を2つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜1934nmの範囲で170〜183.3°の位相差にする事が可能になる。
【0117】
【表25】
【0118】
(実施例3−1−4.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:3面、50層膜)
図39にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表26に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の50層膜を3つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で175〜183°の位相差にする事が可能になる。
【0119】
【表26】
【0120】
(実施例3−2.多層膜付きCaF
2製λ/2フレネルロム)
CaF
2製のλ/2フレネルロムの1つ〜3つの全反射面に、GdF
3/MgF
2による多層膜を成膜した場合の位相差波長特性を実施例3−2−1〜3−2−4に示す。具体的には、
図19に示すCaF
2製のλ/2フレネルロムにおいて、4つの全反射面の任意の1つ〜3つの面に多層膜を成膜した例を示す。
【0121】
(実施例3−2−1.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:1面、50層膜)
図40にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表27に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の50層膜を1つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜1685nmの範囲で170〜187°の位相差にする事が可能になる。
【0122】
【表27】
【0123】
(実施例3−2−2.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:2面、8層膜)
図41にGdF
3/MgF
2による8層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表28に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の8層膜を2つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜1903nmの範囲で170〜187.2°の位相差にする事が可能になる。
【0124】
【表28】
【0125】
(実施例3−2−3.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:2面、50層膜)
図42にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表29に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の50層膜を2つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で175.7〜184.7°の位相差にする事が可能になる。
【0126】
【表29】
【0127】
(実施例3−2−4.CaF
2製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:3面、50層膜)
図43にGdF
3/MgF
2による50層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表30に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の50層膜を3つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜2000nmの範囲で173.4〜185.2°の位相差にする事が可能になる。
【0128】
【表30】
【0129】
<実施例4.多層膜の成膜面数を1つとした多層膜付きλ/2フレネルロム>
石英製λ/2フレネルロムに多層膜を成膜した際の位相差の波長特性を以下に示す。具体的には、石英製のフレネルロムの1つの全反射面に、膜材料GdF
3とMgF
2の4層膜を成膜した場合に、広帯域性は若干劣るものの、真空紫外域から可視域まで、うねりの少ない平坦な位相差特性が得られることと、膜層数と成膜面数も少なく製造上の誤差が少なくできることを示す例である。
【0130】
(実施例4−1.石英製λ/2フレネルロム、GdF
3/MgF
2、成膜面数:1面、4層膜)
石英製のλ/2フレネルロムの1つの全反射面に、GdF
3/MgF
2による多層膜を成膜した場合の位相差波長特性を実施例4−1に示す。具体的には、
図7に示す石英製のλ/2フレネルロムにおいて、4つの全反射面の任意の1つの面に多層膜を成膜した例を示す。
【0131】
図44にGdF
3/MgF
2による4層膜を成膜した場合の位相差の波長特性について示す。また、表31に膜厚などを示す。GdF
3/MgF
2の4層膜を1つの全反射面に成膜する事で、波長λ=190〜1436nmの範囲で170〜180.7°の位相差にする事が可能になる。
【0132】
【表31】
【0133】
以上の結果から、多層膜を成膜する全反射面の数が2つ又は3つの場合において、4つの場合と同等か、より少ない多層膜の層数で、より広帯域な位相差特性を得られる場合があることが分かった。原理的には、多層膜を成膜する全反射面の数によらず、多層膜の層数の多い方が広帯域な位相差特性を得られると考えられるが、フレネルロムの構成や目的とする波長範囲によっては、多層膜を成膜する全反射面の数が少ない方が、効果が高い場合があることが分かった。
【0134】
また、1つ又は2つの全反射面に多層膜を成膜する場合、4つの全反射面に多層膜を成膜する場合と比べて成膜回数を1/4又は半分に減らすことができるため、製造誤差を減らせる等、生産上のメリットもある。したがって、多層膜付きλ/2フレネルロムにおいて、少なくとも1つ以上の全反射面に多層膜を形成することにより、位相差の広帯域化が可能であり、2つ以上の面に4層以上の多層膜を形成することがより好ましい