特許第6876191号(P6876191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876191デジタル受信器/励振器のための多機能チャネル化/DDCアーキテクチャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876191
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】デジタル受信器/励振器のための多機能チャネル化/DDCアーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20210517BHJP
   H04B 1/26 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H04L27/26 410
   H04B1/26 C
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-500609(P2020-500609)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公表番号】特表2020-527885(P2020-527885A)
(43)【公表日】2020年9月10日
(86)【国際出願番号】US2018035048
(87)【国際公開番号】WO2019022844
(87)【国際公開日】20190131
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】15/663,308
(32)【優先日】2017年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マール,ハリー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,イアン エス.
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−523535(JP,A)
【文献】 米国特許第5550546(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0133603(US,A1)
【文献】 特開2002−057593(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0013494(US,A1)
【文献】 Brian Swenson,Discrete-time channelizers for aeronautical telemetry: Part II - Variable bandwidth,Proceedings of the International Telemetering Conference,2012年10月,URL,https://repository.arizona.edu/handle/10150/581674
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル受信器であって:
選択された周波数で局部発振(LO)信号を発生するデジタルシンセサイザ;
入力信号を受信し、前記LO信号の周波数に基づいて前記入力信号の位相のシフトに応答して混合出力信号を生成する信号ミキサ;及び
第1モード及び第2モードで選択的に動作可能なマルチモードダイナミックチャネライザであり、前記第1モードは、帯域幅及び利得によって規定されるチャネルサイズを有する複数の個々のチャネルを生成するように構成され、前記第2モードは選択されたチャネルの並列化を生成するように構成された、マルチモードダイナミックチャネライザ;
を有し、
前記第2モードで動作することに応答して、前記マルチモードダイナミックチャネライザは、前記混合出力信号に基づいて、前記選択されたチャネルの前記帯域幅及び前記利得のうちの少なくとも1つを調節して、前記選択されたチャネルの前記チャネルサイズを変更する、
デジタル受信器。
【請求項2】
前記選択されたチャネルの特性を修正する少なくとも1つの係数パラメータを出力するように構成された係数入力モジュールをさらに有する、請求項1に記載のデジタル受信器。
【請求項3】
前記特性は、選択された非ゼロ周波数及び選択された中心周波数のうちの少なくとも1つである、請求項2に記載のデジタル受信器。
【請求項4】
前記第2モードで動作することに応答して、前記マルチモードダイナミックチャネライザは、前記少なくとも1つの係数パラメータにさらに基づいて、前記選択されたチャネルの前記チャネルサイズをさらに変更する、請求項2に記載のデジタル受信器。
【請求項5】
請求項4に記載のデジタル受信器であり、前記マルチモードダイナミックチャネライザは:
少なくとも1つのステアリングされた出力RF信号を生成するために、前記第1モード及び前記第2モードに基づいて前記選択されたチャネルの前記帯域幅を能動的に調節するように構成された適応フィルタ;及び
前記少なくとも1つのステアリングされた出力RF信号に基づいて実数値を示す少なくとも1つのベースバンド出力信号を生成するように構成された少なくとも1つのフーリエ変換モジュール;
を有するデジタル受信器。
【請求項6】
前記適応フィルタは、適応多相デシメート有限インパルス応答フィルタアレイ(FIR)である、請求項5に記載のデジタル受信器。
【請求項7】
前記適応フィルタと信号通信するモードセレクタモジュールを更に備える請求項5に記載のデジタル受信器であって、
前記モードセレクタモジュールは、前記第1モードを選択する第1モード選択信号の受信に応答して、前記複数の個々のチャネルを生成するように、前記適応フィルタに対して命令するように、かつ、前記第2モードを選択する第2モード選択信号の受信に応答して、前記選択されたチャネルの並列化を生成するように、構成される、
デジタル受信器。
【請求項8】
前記フーリエ変換モジュールと信号通信するデジタルダウンコンバータ(DDC)をさらに備える請求項7に記載のデジタル受信器であって、
前記DDCは、サンプルクロック速度に従って前記フーリエ変換モジュールの出力信号をサンプリングすることに応答して、実RF出力信号を出力するように構成される、
デジタル受信器。
【請求項9】
デジタル受信器に含まれるマルチモードダイナミックチャネライザであって、当該マルチモードダイナミックチャネライザは:
少なくとも1つのフィルタリングされた複素RF信号を生成するために、それぞれの複素RFチャネルの帯域幅を能動的に調節するように構成された適応フィルタ;
前記少なくとも1つのフィルタリングされた複素RF信号に基づいてベースバンドで複素出力信号を生成するように構成された少なくとも1つのフーリエ変換モジュール;及び
前記適応フィルタと信号通信するモードセレクタモジュールであり、第1動作モードを示す第1モード選択信号の受信に応答して複数の個々のチャネルを生成するよう前記適応フィルタに命令するように、かつ前記第1動作モードとは異なる第2動作モードを示す第2モード選択信号の受信に応答して選択されたチャネルの並列化を生成するよう前記適応フィルタに命令するように構成されている、モードセレクタモジュール;
を有する、マルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項10】
前記適応フィルタは、適応多相デシメート有限インパルス応答フィルタアレイ(FIR)である、請求項9に記載のマルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項11】
前記第2動作モードで動作することに応答して、前記適応フィルタは、前記デジタル受信器により受信される入力信号に対してシフトされる位相を有する混合出力信号に基づいて、前記選択されたチャネルの並列化を生成する、請求項9に記載のマルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項12】
前記選択されたチャネルの前記並列化を生成することは、前記選択されたチャネルの前記帯域幅及び利得のうちの少なくとも1つを調節して、前記選択されたチャネルのチャネルサイズを変更することを含む、請求項11に記載のマルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項13】
前記適応フィルタは、前記選択されたチャネルの特性を修正する少なくとも1つの係数パラメータを受信する、請求項12に記載のマルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項14】
前記特性は、選択された非ゼロ周波数及び選択された中心周波数のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のマルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項15】
前記第2動作モードで動作することに応答して、前記適応フィルタは、前記少なくとも1つの係数パラメータに基づいて、前記選択されたチャネルの前記チャネルサイズをさらに変更する、請求項14に記載のマルチモードダイナミックチャネライザ。
【請求項16】
デジタル受信器で受信された入力信号を処理する方法であって:
選択された周波数で局部発振(LO)信号を発生するステップ;
前記入力信号を前記LO信号と混合して、前記入力信号の入力位相に対してシフトされた位相を有する混合出力信号を生成するステップ;
前記混合出力信号を処理して、帯域幅及び利得によって定義されるチャネルサイズを有する複数の個々のチャネルを生成する第1モードで、マルチモードダイナミックチャネライザを動作させるステップ;及び
選択されたチャネルの並列化を生成するように前記混合出力信号を処理する第2モードで、マルチモードダイナミックチャネライザを動作させるステップ;
を有する方法。
【請求項17】
前記混合された出力信号に基づいて前記選択されたチャネルの前記帯域幅及び前記利得のうちの少なくとも1つを調節して、前記選択されたチャネルの前記チャネルサイズを変更するステップ、
をさらに有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
受信された係数パラメータに基づいて、前記選択されたチャネルの少なくとも1つの特性を修正するステップをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの特性は、選択された非ゼロ周波数及び選択された中心周波数のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの係数パラメータに基づいて前記選択されたチャネルの前記チャネルサイズを変更すること、
をさらに含む請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレクトロニクスに関し、より詳細には、物体の検出に関する。
【0002】
広帯域システムのためのハードウェア実装は、要求される帯域幅(バンド幅)要求についていくことができない。ゆえに、バンドをサブバンドへと縮小するために、チャネライザ又はチャネル化器(channelizer)を使用することができる。チャネル化器では、各サブバンドが並列チャネル上で処理される。
【0003】
チャネライザ回路又はチャネル化器回路はスタティックチャネル用に設計され、コンパイル時に定義される。しかしながら、常に変化する無線周波数環境に反応するためには、動的チャネルが必要である。例えば、検出すべきエミッタオブジェクト(例えば、空中、地上、海上、及び/又は宇宙のレーダーのような脅威)は、中心周波数を効果的にホップ(hop)することができ、場合によっては、少なくとも一時的に検出を回避することができる。さらに、オブジェクト又は脅威は、短時間のみ検出可能であるかも知れない(例えば、いわゆるポップアップ又はパルスオブジェクト/脅威)。従来の受信器アーキテクチャは、そのようなポップアップ又はパルスオブジェクト/脅威を捕捉できない可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
非限定的な実施形態によれば、デジタル受信器が、選択された周波数で局部発振(LO)信号を発生するデジタルシンセサイザと、入力信号を受信し、前記LO信号の周波数に基づいて前記入力信号の位相のシフトに応答して混合出力信号を生成する信号ミキサとを含む。マルチモードダイナミックチャネライザが第1モード及び第2モードで選択的に動作可能である。前記第1モードは、帯域幅及び利得によって規定されるチャネルサイズを有する複数の個々のチャネルを生成するように構成され、前記第2モードは選択されたチャネルの並列化を生成するように構成される。前記第2モードで動作することに応答して、前記マルチモードダイナミックチャネライザは、前記混合出力信号に基づいて、前記選択されたチャネルの前記帯域幅及び前記利得のうちの少なくとも1つを調節して、前記選択されたチャネルの前記チャネルサイズを変更する。
【0005】
別の非限定的な実施形態によれば、デジタル受信器に含まれるマルチモードダイナミックチャネライザが、少なくとも1つのフィルタリングされた複素RF信号を生成するために、それぞれの複素RFチャネルの帯域幅を能動的に調節するように構成された適応フィルタを含む。少なくとも1つのフーリエ変換モジュールが、前記少なくとも1つのフィルタリングされた複素RF信号に基づいてベースバンドで複素出力信号を生成するように構成される。マルチモードダイナミックチャネライザがさらに、前記適応フィルタと信号通信するモードセレクタモジュールを含む。モードセレクタモジュールは、第1動作モードを示す第1モード選択信号の受信に応答して複数の個々のチャネルを生成するよう前記適応フィルタに命令するように、かつ前記第1動作モードとは異なる第2動作モードを示す第2モード選択信号の受信に応答して選択されたチャネルの並列化を生成するよう前記適応フィルタに命令するように構成されている。
【0006】
さらに別の非限定的な実施形態によれば、デジタル受信器で受信された入力信号を処理する方法が、選択された周波数で局部発振(LO)信号を発生するステップと、前記入力信号を前記LO信号と混合して、前記入力信号の入力位相に対してシフトされた位相を有する混合出力信号を生成するステップとを有する。当該方法はさらに、前記混合出力信号を処理して、帯域幅及び利得によって定義されるチャネルサイズを有する複数の個々のチャネルを生成する第1モードで、マルチモードダイナミックチャネライザを動作させるステップと、選択されたチャネルの並列化を生成するように前記混合出力信号を処理する第2モードで、マルチモードダイナミックチャネライザを動作させるステップとを有する。
【0007】
追加の特徴及び利点は、本発明の技術によって実現される。本発明の他の実施形態及び態様は、本明細書に詳細に記載されており、請求項に係る発明の一部とみなされる。利点及び特徴を有する本発明のより良い理解については、説明及び図面を参照されたい。
【0008】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面及び詳細な説明に関連して、以下の簡単な説明を参照する。ここで、同様の参照番号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非限定的な実施形態に従ったマルチモードダイナミックチャネライザを含むデジタル受信器のブロック図である。
図2】非限定的な実施形態に従ったマルチモードダイナミックチャネライザに含まれる適応フィルタのブロック図である。
図3】非限定的な実施形態に従ったマルチモードチャネライザバンクを含むデジタル受信器のブロック図である。
図4】非限定的な実施形態に従ったデジタル受信器で受信された入力信号を処理する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明及び図面(その内容は、本開示に参考として含まれる)において、要素間の様々な接続が記載されていることに留意されたい。これらの接続は、一般的に、また、特に断らない限り、直接的又は間接的であり得、本明細書は、この点に関して制限することを意図していないことに留意されたい。この点において、エンティティ間の結合は、直接的又は間接的接続のいずれかを意味することができる。
【0011】
関連する技術的概念の概要に目を向けると、多くのデジタル・システム・パーソナリティは、レーダー、電子戦(EW)、及び電子信号通信を含む一連の用途に取り組む必要がある。例えば、ある場合には、広い帯域幅を有する中ダイナミックレンジがEW用途に望ましいが、レーダ特有の用途には、狭い帯域幅を有する高ダイナミックレンジが望ましい。レーダーシステムは、異なるモードで動作することが期待されている。各モードは、異なる性能仕様を必要とし、したがって、典型的には、所与の用途に合わせられた異なる処理技術を使用して実施される。従来のシステムは、レーダ、EW、及び電子信号通信が同時に実行されるような多機能用途に対して、「1つのプロセッサがすべてに適合する」パラダイム、すなわち、ナノ秒のタイムスケールで複数の解法間で迅速に時間多重化するための解を、提供しない。いくつかの従来のシステムは、別個の(すなわち独立した)チャネル化器を使用してチャネル化を実行する前に、デジタルダウンコンバータ(DDC)で入力信号を処理することによって、同時処理性能を達成しようと試みている。しかしながら、同じ設計で別個のDDCとチャネル化器を実装すると、過剰なFPGA資源を消費し、処理資源をさらに制約する。
【0012】
装置、システム、及び方法の様々な非限定的な実施形態が、広帯域スペクトルにわたって完全に再構成可能、動的、及び適応可能なチャネル化アーキテクチャを含むデジタル電子受信器を提供するために本明細書に記載されている。チャネル化アーキテクチャは、複数の異なる信号処理モードの中で選択された信号処理モードで動作することができるマルチモード動的チャネル化回路(チャネライザ)を含む。チャネライザの処理モードは、デジタル受信器へモード選択信号を入力することにより選択することができる。信号処理モードに基づいて、チャネライザは、受信された入力信号を処理し、選択された処理モードに対応する所望の出力データを出力する。
【0013】
次に、図1を参照すると、非限定的な実施形態に従って、デジタル受信器100が示されている。デジタル受信器100は、マルチモードダイナミックチャネライザ102、デジタルシンセサイザ(DDS)104、信号ミキサ106、係数入力モジュール108、電子デジタルミキサ110、及びDDCコントローラ111を含む。デジタルシンセサイザ104は、直接/離散デジタルシンセサイザとして構成することができ、LO制御回路(図示せず)によって設定されたパラメータ(例えば、選択された周波数)に従って局部発振(LO)周波数信号112(例えば、正弦波)を生成する。LO周波数信号112は、選択されたチャネルの周波数中心を能動的に同調させるために利用される。信号ミキサ106は、デジタルシンセサイザ104と信号通信しており、LO周波数信号112をターゲットRF入力信号114と混合(mix)して、ターゲットRF入力信号114の周波数に対してシフトされた周波数を有する混合出力信号116を生成する。入力信号114は、実数値、又は実数成分(I)及び虚数成分(Q)を含む複素数として受信されることができる。ミキサ106により出力される混合出力信号116によって設定されるシフトされた周波数は、チャネル化器102の選択されたチャネルの中心周波数を選択することを可能にする。
【0014】
マルチモードダイナミックチャネライザ102は、ミキサ106及び係数入力モジュール108と信号通信している。ミキサ106は、混合出力信号116をマルチモードダイナミックチャネライザ102に送る。係数入力モジュール108は、1つ以上の係数パラメータ118a〜118nを出力する。係数パラメータ118a〜118nは、マルチモードダイナミックチャネル化器102に入力される1つ以上の複雑なRFチャネルの特性を修正(modify)することができる。この特性には、選択された非ゼロ周波数、利得、及び選択された中心周波数が含まれるが、これらに限定されない。例えば、係数パラメータ118a〜118nは、特定の非ゼロ周波数で信号を通過させるためのバンドパスフィルタを生成して、中心周波数値等を選択するために、デジタル的に設定することができる。少なくとも1つの実施例では、係数パラメータ118a〜118nは、10ビット分解能で生成され、70dBのダイナミックレンジに対して設定されたバイアスで89mWの有効電力で動作する。係数パラメータは、サンプリング周波数fsのチャンネル数Mに対する比(例えば、fcutoff = fs,/M)である固定したカットオフ周波数を有するローパス構成に設定することができる。したがって、少なくとも1つの実施形態は、カットオフ周波数がfs,/Mより小さいか又はより大きいように、係数を変更することができる。
【0015】
マルチモードダイナミックチャネライザ102は、適応フィルタ120と、1つ以上のフーリエ変換モジュール122とを含む。適応フィルタ120は、適応(例えば、同調可能)多相デシメート有限インパルス応答(finite impulse response(FIR))フィルタアレイである。FIRフィルタアレイ120は、例えば、複素RF入力信号(I、Q)などのミキサ106から送出される1つ以上の入力信号を処理し、1つ以上のフィルタリングされた出力RF信号を生成する。適応フィルタ120は、個々のチャネルを独立に適応(すなわち同調)させるために、必要に応じて、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、又はローパスフィルタとして動作することができる。
【0016】
フーリエ変換モジュール122は、適応フィルタ120と信号通信しており、適応フィルタ120から1つ以上の複素RF出力チャネル121を受信する。フーリエ変換モジュール122に入力されたチャネルは、同時に、フィルタリングされた「多相(polyphased)」応答として表現される。複素RFチャネル121に基づいて、フーリエ変換モジュール122は、多数の実数値出力信号すなわち出力チャネル123を生成する。フーリエ変換モジュール122からの出力に続いて、チャネル123は中央に配置されるか、「ベースバンド」で出力される。
【0017】
電子デジタルミキサ110は、フーリエ変換モジュール122と信号通信して、実数値出力信号123、すなわちベースバンドチャネル信号123を受信する。デジタルミキサ110は、デジタル化された帯域制限信号(band limited channel)を、より低いサンプリングレートで、より低い周波数信号にデジタル的に変換することができる。少なくとも1つの実施形態において、デジタルミキサ110は、サンプルクロック速度に従って実出力信号123をサンプリングする。少なくとも1つの実施例では、デジタルミキサ110は、「オーバーサンプリングされた(oversampled)」チャネル化器が具現化されたときに、周波数空間(frequency space)を補償する。このようにして、デジタルミキサ110は、周波数オフセットを補正することができ、デジタルミキサ110の出力が実質的にベースバンドにあることを確実にする。
【0018】
DDCコントローラ111は、デジタルミキサ110の下流に設けられ、デシメートされたベースバンド出力信号125を生成することができ、これは、さらにビットパッケージされ、タグ付けされ、分析され得る。いくつかの実施形態では、デシメートされた(decimated)ベースバンド出力信号125は多相出力信号であるが、他の実施形態では、デシメートされたベースバンド出力信号125は多相ではない。
【0019】
マルチモードダイナミックチャネライザ102は、モードセレクタモジュール(mode selector module)126をさらに含む。モードセレクタモジュール126は、モード選択信号128(例えば、ユーザによる入力)を受信する。モード選択信号128は、複数の異なる動作モードの中からマルチモードダイナミックチャネライザ102の選択された動作モードを示す。マルチモードダイナミックチャネライザ102の選択されたモードは、混合出力信号116の特性に基づいて自動的に選択されるか、或いは手動で選択されることができる。
【0020】
モード選択信号によって示される利用可能な動作モードは、例えば、レーダーモード、EWモード、通信モードを含む。例えば、レーダモード又は通信モードで動作するとき、マルチモードダイナミックチャネライザ102は、DDCを実行して混合信号116をより低い帯域幅へとデシメート(decimate)する。例えば、EWモードで動作するとき、マルチモードダイナミックチャネライザ102は、混合信号116のサブバンドをデシメートし、入力信号の全スペクトルの全スペクトルカバレッジ、又は全スペクトルのサブセットを出力するように動作する。モード選択信号に応答して、モードセレクタモジュール126は、モード指令信号130を出力する。モード指令信号130は、モード選択信号128によって示されるモードに従って動作するように、適応フィルタ120に命令する。例えば、チャネル化モードの呼び出しに応答して、適応フィルタ120は、係数パラメータ118a〜118nを利用して、複数の個々の複素RFチャネル121を生成する。各複素RFチャネル121は、帯域幅及び利得によって定義されるチャネルサイズを有する。
【0021】
しかしながら、DDCモードを起動する(invoking)とき、適応フィルタ120は、選択された個々のチャネルの並列化を生成する。少なくとも1つの非限定的な実施形態において、「並列化」信号処理動作は、複数の入力チャネルの中の選択されたチャネルの表現を多相化するものとして定義することができる。したがって、DDCモードで動作するとき、マルチモードダイナミックチャネル化器102は、係数パラメータ118a〜118n及び/又は混合出力信号116に基づいて、個々の複素RFチャネル121の帯域幅、利得及び中心周波数のうちの少なくとも1つを調整して、個々の複素RFチャネル121又は標的化された(targeted)複素RFチャネル121のチャネルサイズ及び/又は中心周波数を変更することができる。
【0022】
図2を参照すると、多相FIRフィルタアレイとして構成された適応フィルタ120が、非限定的な実施形態に従って図示されている。適応FIRフィルタ120は、16タップを含むことができ、3.25ギガヘルツ(GHz)クロックによって駆動されることができる。適応FIRフィルタ120のアナログ帯域幅は、12GHzまで到達することができる。少なくとも1つの実施形態において、適応FIRフィルタ120は、複数の多相信号を1つ以上のアップサンプリングされた(up-sampled)ベースバンドチャネル(例えば、I/Qチャネル)に変換することができる。
【0023】
適応FIRフィルタ120は、複数のサンプルホールド回路(sample and hold circuits, S/H)304をさらに含む。少なくとも1つの実施例では、S/H回路は、I/Qチャンネルのそれぞれのペアに対応するペア305に配置される。各S/H対305はまた、実数値出力ベースバンドチャネル123a〜123hに対応する。少なくとも1つの非限定的な実施形態では、S/H出力信号は、フーリエ変換モジュール122と信号通信している複数のFIRフィルタ分岐306へとルーティングされる。分岐306は、動的にタップされ、適応FIRフィルタ120を能動的に再構成することができる。
【0024】
フーリエ変換モジュール122は、適応FIRフィルタ120から、例えば、I/Qチャネル310a〜310hなどの1つ以上のベースバンドチャネルを受信し、多数の複素IF出力信号123a〜123hを生成する。複素IF信号123a〜123hはデジタルミキサ110に送られ、デジタルミキサ110は、実数値出力ベースバンド信号123a〜123hのうちの1つ以上をサンプリングする。例えば、複素IF信号123aは第1のクロックサイクルで出力され、第2の複素IF信号123bは第2のクロックサイクルで出力されるなどである。複素IF信号123a〜123hは、アップサンプリングすることができ、例えば、3.25GHzのレートでクロックされる。DDCコントローラ111は、複素IF信号123a〜123hを組み合わせて、例えば26GHzでクロックされるデシメートされたRF出力信号125を形成する。1つ以上の実施形態において、適応FIRフィルタ120及びフーリエ変換モジュール122は、例えば3.25GHzでクロックされ、デジタルミキサ110は、例えば26GHzでクロックされる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、DDCコントローラ111は、最後のステージとして配置される。したがって、適応FIRフィルタ120は、DDCモードがモード選択信号128を介して起動されるときに、混合複素RF入力信号に第1デシメーションを選択的に適用することができる。次いで、FIRフィルタ120の出力は、例えば、フーリエ変換モジュール122を介して、複素IF信号123a〜123hに変換される。複素IF信号123a〜123h は、DDCコントローラ111によって生成されるデシメートされた出力信号125へとさらにデシメートされ得る。複素IFシグナル123a〜123hの任意の数が使用され得ることが理解されるべきである。したがって、もし適応FIRフィルタ120が4組の複素RF入力チャネルを許容し、データがチャネルの1つのみを介して提供されるならば、他の残りのチャネルは「接地」され、使用されないままとすることができる。適応FIRフィルタ120へのこれらの複雑なベースバンドチャネルへの入力を提供するために、多数のデジタル-アナログ変換器を含めることができる。
【0026】
少なくとも1つの実施例によれば、図2に示す適応FIRフィルタ120は、帯域通過サンプリングとして知られるベースバンドへのダウンコンバージョン及びフィルタリングを実施するために使用することができる。FIRフィルタモジュール120の係数パラメータ118は、例えば、係数入力モジュール108(図2には図示せず)を介してデジタル的に設定することができる。したがって、適応FIRフィルタ120は、フィルタタップの数によって制御される任意のフィルタ形状を実現することができる非常にフレキシブルなフィルタを提供する。少なくとも1つの実施例では、FIRフィルタ係数パラメータは、特定の非ゼロ周波数で信号を通過させるためのバンドパスフィルタを生成するように設定される。
【0027】
次に、1回信号がバンドパスフィルタリングされるように、種々のサブサンプリング技術を使用することができる。少なくとも1つの実施例では、ナイキスト基準よりはるかに低いサンプリングレートを使用して、信号をベースバンドまでエイリアス(alias)することができる。例えば、約10メガヘルツ(MHz)の帯域幅を有する初期信号が、約200MHzから約210MHzの中心周波数において、デジタル化することができる。このことは、適応FIRフィルタ120を、約200MHzから約210MHzに設定された帯域通過フィルタとして利用することによって達成される。次いで、得られた信号は、例えば、約50MHzでサンプリングすることができる。デジタル化された信号(すなわち、約200MHz〜約210MHzでデジタル化された信号)は、約50MHzのサンプリングウィンドウにエイリアスされる(aliased)。上述の周波数値は単なる例であり、他の周波数が実装されてもよいことを理解されたい。次いで、ローパスフィルタをサンプリングされた信号に適用して、エイリアスをフィルタリングして除去し、それにより、デジタル化された信号上に伝達された情報を得ることができる。このようにして、適応FIRフィルタ120は、帯域通過フィルタに利用され、次いで初期信号をダウンサンプリングする。
【0028】
次に図3を参照すると、デジタル受信器100が、独立したマルチモードダイナミックチャネライザ102a、102b、102nのアレイを有するマルチモードチャネライザバンク250を含むように示されている。少なくとも1つの実施形態では、それぞれのマルチモードダイナミックチャネライザ102a〜102nに含まれる各適応フィルタ120a〜120nは、異なる周波数チャネルを帯域通過させるように設定することができる。マルチモードダイナミックチャネライザ102a〜102nは、並列接続(parallel connection)又はデイジーチェーン接続(daisy-chain connection)などの様々なアーキテクチャに従って接続することができる。
【0029】
各マルチモードダイナミックチャネライザ102は、所与のマルチモードダイナミックチャネライザ102のチャネルに関して、それぞれの適応フィルタ120を独立して同調又はチューニング(tuning)することができる。モード選択信号128a〜128nは、上述のように動作モードを起動するために、各マルチモードダイナミックチャネライザ102に入力することができる。例えば、マルチモードダイナミックチャネライザ102a〜102nのデイジーチェーン構成は、マルチモードダイナミックチャネライザバンク250に含まれる各マルチモードダイナミックチャネライザ102から個々のデシメートされた出力信号125a〜125nを出力することを可能にする。DDC/データパッケージングコントローラ252が、追加のデシメーションを達成するために、各個々のデシメートされた出力信号125a〜125nに対してビットパッケージング及びデータタグ付けを実行することができ、必要に応じて、デシメートされた出力信号125a〜125nを表すデータ信号254を種々の追加のデバイス又はシステムと交換して、さらなる分析を実行することができる。したがって、最小データ速度でスペクトルをパッキングしながら、より広いスペクトルにわたってマルチモードチャネル化を実行することができる。
【0030】
次に、図4を参照すると、フロー図が、非限定的な実施形態に従って、デジタル受信器で受信された入力信号を処理する方法を示す。この方法は、ステップ400で開始し、ステップ402では、入力信号がデジタル受信器100で受信される。ステップ404において、選択された周波数を有するLO信号が、デジタルシンセサイザ104を介して生成される。ステップ406において、入力信号は、信号ミキサ106を介してLO信号と混合され、入力信号に対してシフトされる位相を有する混合出力信号を生成する。位相は、LO信号の選択された周波数に基づいてシフトされ得る。ステップ408では、モード選択信号128がマルチモードダイナミックチャネライザ102で受信される。モード選択信号128は、デジタル受信器100に含まれるマルチモードダイナミックチャネライザ102の特定の信号処理モードを起動する。例えば、マルチモードダイナミックチャネライザ102は、チャネライザモードとDDCモードとの間で選択的に遷移させることができる。マルチモードダイナミックチャネライザ102は、追加のモードで動作するように構成することができ、モード選択信号128は、マルチモードダイナミックチャネライザ102の利用可能な処理モードの中から任意のモードを選択することができることを理解されたい。
【0031】
ステップ410において、マルチモードダイナミックチャネライザ102の選択された動作モードが決定される。第1のモード(例えば、チャネライザモード)が選択されると、マルチモードダイナミックチャネライザ102は、ステップ412での混合出力信号に基づいて、適応フィルタ120を介して複数の個々のチャネルを生成し、この方法はステップ414で終了する。しかしながら、第2のモード(例えば、DDCモード)が選択されると、マルチモードダイナミックチャネライザ102は、適応フィルタ120の係数パラメータを調整し、ステップ416において、適応フィルタ120を介して、個々の複素RFチャネルの並列化を実行する。少なくとも1つの実施形態では、個々の複雑なRFチャネルの並列化は、ステップ418において選択された個々のチャネルのサイズを調整することを含む。チャネルのサイズは、個々のチャネルの中心周波数及び帯域幅に基づいて調整され、この方法はステップ414で終了する。マルチモードダイナミックチャネライザ102の出力は、1つ以上の複素IF信号123a〜123hを生成するために、フーリエ変換モジュール122によってさらに処理することができることを理解すべきである。1つ以上の複素IF信号123a〜123hは、DDCコントローラ111を介してさらにデシメートされて、デシメートされた出力信号125を生成することができることを理解すべきである。
【0032】
特許請求の範囲に記載した機能要素に加え全ての手段又はステップの対応する構造、材料、行為等は、特許請求の範囲に規定された他の構成要件との結合において当該機能を発揮する任意の構造、材料又は行為を含むものである。本発明の説明は、例示及び説明の目的で提示されたが、開示された形態の本発明を網羅的に又は限定することを意図したものではない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には多くの修正及びバリエーションが明らかであろう。実施形態は、本発明の原理及び実際の用途を最もよく説明し、当業者が、意図される特定の用途に適した種々の修正を施した種々の実施形態について本発明を理解することを可能にするために選択され、説明された。
【0033】
本明細書で使用される「モジュール」という用語は、用途固有の集積回路(ASIC)、電子回路、マイクロプロセッサ、1つ又は複数のソフトウェア又はファームウェアプログラムを実行するコンピュータプロセッサ(共有、専用、又はグループ)及びメモリ、組み合わせ論理回路、種々の入力及び出力を含むマイクロコントローラ、及び/又は上述の機能性を提供する他の適切なコンポーネントを指す。モジュールは、種々のアルゴリズム、変換、及び/又は論理処理を実行して、コンポーネント又はシステムを制御する1つ以上の信号を生成するように構成される。ソフトウェアで実現される場合、モジュールは、処理回路(例えば、マイクロプロセッサ)によって読み取り可能な非一時的な機械読取り可能記憶媒体としてメモリに実現され、方法を実行するための処理回路による実行のための命令を記憶する。コントローラは、アルゴリズム、論理又はコンピュータ実行可能命令を記憶することができ、命令を解釈し実行するのに必要な回路を含む記憶モジュールを含む電子ハードウェアコントローラを指す。
【0034】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、当業者は、現在及び将来とも、以下の特許請求の範囲の範囲内にある種々の改善及び強化を行うことができることが理解されるであろう。これらの請求項は、最初に記載された発明に対する適切な保護を維持すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4