(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックを図に示す実施形態を用いて詳細に説明する。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す正面図である。
図2は、実施形態に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す側面図である。
【0013】
実施形態に係る燃料電池スタック20は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)である。燃料電池スタック20は、複数の単セルを有する。燃料電池スタック20の各セルは、膜電極接合体81と、膜電極接合体81を挟んでカソード側を構成する要素とアノード側を構成する要素とを有する。
【0014】
燃料電池用セパレータ21は、ガス遮蔽板としての金属板30の一方の面にカソードガス供給拡散層Cが形成され、他方の面にアノードガス供給拡散層Aが形成されている(タイプCAのセパレータ)。燃料電池用セパレータ22は、金属板30の一方の面にアノードガス供給拡散層Aが形成されている(タイプAのセパレータ)。燃料電池用セパレータ23は、金属板30の一方の面にカソードガス供給拡散層Cが形成されている(タイプCのセパレータ)。燃料電池用セパレータ24は、金属板30の一方の面にカソードガス供給拡散層Cが形成され、他方の面に冷却水供給拡散層Wが形成されている(タイプCWのセパレータ)。
【0015】
各セルは、カソード側とアノード側が交互になるように配置されている。カソードガス供給拡散層Cとアノードガス供給拡散層Aとは、膜電極接合体(MEA)81を挟んで対向して設けられている。実施形態においては、単セルが2つ配置される毎に冷却水を供給する冷却水供給拡散層Wが設けられている。なお、冷却水供給拡散層Wは、単セル1つ置きに設けられていてもよいし、3つ置き又はそれ以上置きに設けられていてもよい。冷却水供給拡散層Wには金属板30(好ましくはタイプAまたはタイプCのセパレータにおける金属板30)が対向するように、燃料電池用セパレータ21〜24が組み合わされて積層されている。
【0016】
なお、本発明の燃料電池セルスタックは、
図1及び
図2には図示していないが、金属板30の一方の面にアノードガス供給拡散層Aが形成され、他方の面に冷却水供給拡散層Wが形成されたもの(タイプAWのセパレータ)を備えていてもよい。また、金属板30の一方の面に冷却水供給拡散層Wが形成されたセパレータ(タイプWのセパレータ)を備えていてもよい。また、金属板の両面に冷却水供給拡散層Wが形成されたセパレータを備えていてもよい。各燃料電池用セパレータの構成の詳細については後述する。
【0017】
積層されたセルの両端部には、集電板27A,27Bが配設されている。さらに集電板27A、27Bの外側には、絶縁シート28A,28Bを介してエンドプレート75,76が配置されている。燃料電池用セパレータ21〜24は、エンドプレート75、76によって両側から押圧されている。燃料電池セルスタック20の両端に位置し、集電板27A,27Bに接する燃料電池用セパレータについては、その金属板30(耐食層)が外方を向くようにすることが好ましい。
【0018】
図1及び
図2においては、燃料電池用セパレータ21〜24、膜電極接合体81、集電板27A,27B、絶縁シート28A,28B、及び、エンドプレート75,76は、分かり易くするために、離間して描かれているが、これらは、図示された配列の順に、相互に密に接合されている。接合の方法は特に限定されない。例えば、エンドプレート75,76により各部材を両側から押圧することのみによって接合してもよいし、各部材の適宜の位置を接着剤により接着したうえでエンドプレート75,76により各部材を両側から押圧することにより接合してもよいし、その他の方法により接合してもよい。各燃料電池用セパレータ21〜24、膜電極接合体81、集電板27A,27B、絶縁シート28A,28B等は、例えば厚さが百μm程度から十mm程度である。本明細書の各実施形態における各図は、厚さを誇張して描かれている。
【0019】
アノード側のエンドプレート75の一端部にはアノードガス供給口71A、カソードガス排出口72B及び冷却水排出口73Bがそれぞれ設けられている。他方、カソード側のエンドプレート76の一端部(エンドプレート75の上記一端部とは反対側)には、アノードガス排出口71B、カソードガス供給口72A及び冷却水供給口73A(
図2ではこれらがまとめて破線で示されている)が設けられている。これらの各供給口、各排出口にはそれぞれ対応する流体の供給管、排出管が接続されることになる。
【0020】
各燃料電池用セパレータ21〜24には、それぞれ、アノードガス供給口71Aに連通するアノードガス流入口61A、カソードガス排出口72Bに連通するカソードガス(及び生成水)流出口62B、及び、冷却水排出口73Bに連通する冷却水流出口63Bが設けられている。また、各燃料電池用セパレータ21〜24には、それぞれ、アノードガス排出口71Bに連通するアノードガス流出口61B、カソードガス供給口72Aに連通するカソードガス流入口62A、及び、冷却水供給口73Aに連通する冷却水流入口63Aが設けられている。
【0021】
アノードガス供給口71A、カソードガス供給口72A及び冷却水供給口73Aを通じてカソードガス、アノードガス及び冷却水が供給される。実施形態においては、アノードガスとして水素ガスを使用し、カソードガスとして空気を用いた場合を例示する。
【0022】
次に、膜電極接合体81について説明する。
図3は、膜電極接合体(MEA)81を説明するために示す図である。
図3(a)は膜電極接合体81の平面図であり、
図3(b)は膜電極接合体81の正面図であり、
図3(c)は膜電極接合体の側面図である。
【0023】
膜電極接合体81は、
図3に示すように、電解質膜(PEM)82と、電解質膜82の両面にそれぞれ配置された触媒層(CL)85と、各触媒層85の外側の面に配置されたマイクロポーラスレイヤ(MPL)83とを有する。実施形態においては、電解質膜82とその両側に配置された触媒層85から構成されるものを触媒コート電解質膜(Catalyst Coated Membrame:CCM)という。マイクロポーラスレイヤ83は多孔質体層40よりも微細な径の気孔(細孔)を有する。なお、マイクロポーラスレイヤ83は、省略することもできる。
【0024】
次に、燃料電池用セパレータ21〜24及び燃料電池用ガス供給拡散層42について説明する。
図4は、タイプCの燃料電池用セパレータ23の金属板30の側から見た平面図である。但し、
図4においては、燃料電池用セパレータ23の流路パターンを分かり易く表すために、金属板30の図示は省略している。
図5は、
図4の断面図である。
図5(a)は
図4のA1−A4断面図(但し、A2−A3部分は省略)であり、
図5(b)は
図4のA2−A3断面図である。
図5においては、燃料電池用セパレータ23と膜電極接合体81との位置関係を示すために、膜電極接合体81が接合された状態の燃料電池用セパレータ23を示している。また、膜電極接合体81の断面構造は省略している。
【0025】
図6は、ガス流路用溝55の平面構造を示す図である。
図7は、ガス流路用溝55の平面構造及び断面構造を示す図である。
図7(a)は平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のA−A断面図である。
図8は、異なる深さ位置におけるガス流路用溝55の平面構造を示す図である。
図8(a)は深さ位置D1(多孔質体層40(又はガス流路用溝55)の表面における深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示し、
図8(b)は深さ位置D2(ガス流路用溝55の深さの1/2の深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示し、
図8(c)は深さ位置D3(ガス流路用溝55の底における深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示す。
【0026】
図6及び
図7において、符号55はガス流路用溝を示し、符号55Aはガス流路用溝55のうち一のガス流路用溝を示し、符号55Bは一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝を示す。従って、一のガス流路用溝55Aは、ガス流路用溝55でもあることからガス流路用溝55(55A)と表記することもあり、一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝55Bも、ガス流路用溝55でもあることからガス流路用溝55(55B)という符号を付すこともある。また、
図6中、太実線で囲まれた領域が第1矩形領域R1であり、その左右の太破線で囲まれた領域が第2矩形領域R2であり、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なった領域が重なり領域R3であり色を濃くして示している。また、符号Rは複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する矩形領域を示し、符号R1はそのうち一のガス流路用溝55Aが外接する第1矩形領域を示し、符号R2は一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝55Bが外接する第2矩形領域を示し、符号R3は第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域を示す。従って、第1矩形領域R1は、矩形領域Rでもあることから第1矩形領域R(R1)と表記することもあり、第2矩形領域R2も、矩形領域Rでもあることから第2矩形領域R(R2)と表記することもある。また、
図7(a)中、符号L2はガス流路用溝55の配列ピッチを示す。
【0027】
図7及び
図8においては、カソードガスの流れを図示している。
図7(a)及び
図8中、ガス流路用溝55内の矢印はガス流路用溝55に沿った流れであり、多孔質体層40内に記した縦方向上向きの矢印はガス流路用溝55から多孔質体層40(ガス拡散層43)中に押し出されたカソードガスの流れ(伏流ガス流れ)である。また、
図7(b)中、多孔質体層40内に記した横方向及び下方向(膜電極接合体側に向かう方向)向きの矢印は、ガス流路用溝55から多孔質体層40(ガス拡散層43)中に押し出されたカソードガスの流れを示す。
図9は、第1矩形領域R1、第2矩形領域R2及び重なり領域R3の関係を示す図である。
【0028】
燃料電池用セパレータ23は、
図4及び
図5に示すように、金属板30の一方の面に燃料電池用ガス供給拡散層42が形成された構造を有する。
図5中、金属板30には、断面であることを示すハッチングを施している。金属板30は、インコネル、ニッケル、金、銀及び白金のうち一以上からなる金属、またはオーステナイト系ステンレス鋼板への金属のめっきもしくはクラッド材であることが好ましい。これらの金属を用いることにより、耐食性を向上できる。
【0029】
燃料電池用セパレータ23においては、金属板30の縦方向の一端部(
図4の下部)に、
図4の右、中央、左の順に、カソードガス流入口62Aと、冷却水流入口63Aと、アノードガス流出口61Bとが設けられている。また、他端部(
図4の上部)に、
図4の左、中央、右の順に、カソードガス流出口62Bと、冷却水流出口63Bと、アノードガス流入口61Aとが設けられている。
【0030】
各流入口61A,62A,63A、各流出口61B,62B,63B、及び、燃料電池用ガス供給拡散層42の形成領域のそれぞれの周囲は、電子導電性又は非電子導電性の緻密枠32によって囲まれている。緻密枠32はアノードガス、カソードガス及び冷却水の漏洩を防ぐ。緻密枠32の外面には、各流入口61A,62A,63A、各流出口61B,62B,63B、及び、燃料電池用ガス供給拡散層42の形成領域を囲むように、緻密枠32に沿って溝33Aが形成されている(
図4には不図示。)。この溝33A内にガスケット(パッキン、Oリングなどのシール材)33が配置されている。
【0031】
金属板30の両面には、上記の各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bが設けられている部分を除いて、その全面に電子導電性を有する耐食層(
図5においては図示せず)が形成されている。各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bの内周面に耐食層が形成されていてもよい。金属板30の側面及び端面に耐食層が形成されていてもよい。耐食層は、好ましくは緻密枠32と同じ組成の緻密層であり、金属板30の腐食を抑制する作用を有する。燃料電池用セパレータを組み合わせて
図1あるいは
図2に示すような燃料電池セルスタックを構成する段階で、ガスケット33は接合される他の燃料電池用セパレータ、膜電極接合体81又は集電板27A,27Bと密着して流体の漏洩を抑制する。
【0032】
燃料電池用セパレータ23は、タイプCの燃料電池用セパレータであって、
図4及び
図5に示すように、基板としての長方形の金属板30の一方の面における中央部にカソードガスを供給・拡散する燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されている。燃料電池用ガス供給拡散層42は、ガスの透過及び拡散が可能で、かつ、導電性を有するシート状の多孔質体層40と、多孔質体層40の一方の面において並列に、かつ、それぞれがガスの流入側から流出側に向かってジグザグ状又は波状に形成された複数のガス流路用溝55と、多孔質体層40のうちガス流路用溝55以外の部分であるガス拡散層43とを有する(
図4参照。)。
【0033】
そして、平面的に見て、複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝55が外接する複数の矩形領域Rのうち、一のガス流路用溝55が外接する第1矩形領域R1と、一のガス流路用溝に隣接するガス流路用溝が外接する第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっている(
図6及び
図9参照。)。また、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55の断面形状を問わず複数のガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても存在する(
図7及び
図8参照。)。
【0034】
なお、本明細書において、「矩形領域」とは、複数のガス流路用溝のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する矩形領域Rであるが(
図6及び7参照。)、多孔質体層40に、複数のガス流路用溝と交差するように、ガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1又は複数のガス圧均等化用溝が形成されている場合には(例えば後述する
図12参照。)、当該ガス圧均等化用溝によって分割された領域に形成されるそれぞれの矩形領域Rに関しても、その幅及び/又は長さの違いにかかわらず、本発明の矩形領域に含まれるものとする。また、本明細書において、「伏流領域」とは、矩形領域のうちガス流路用溝55を除いた領域のことをいい、当該伏流領域中、多くのガスは流出側に向かって最短距離の経路に沿って流れることとなる。
【0035】
また、本明細書において、「ガスの流入側から流出側に向かって」とは、「およそガスの流れる方向に沿って」という意味であり、「ガスの流入側から流出側に向かう」方向は、多孔質体層40全体としてみた場合の多孔質体層40内のガスの流れの方向である。これは、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42のように、カソードガス流入口62Aとカソードガス流出口62Bが金属板30の対角線上の位置に配設されている場合に、ガス流路は上記の対角線に沿って形成されている必要はなく、実施形態のように、「ガスの流入側から流出側に向かう」方向は、「多孔質体層40全体としてみた場合の多孔質体層40内のガスの流れの方向が、
図4の紙面の下から上の縦方向に向かうような場合は」、
図4のように、
図4の紙面の下から上の縦方向に沿ってガス流路用溝は形成されていればよいし、また、それ以外の方向に沿って形成されていてもよい。なお、ガス圧均等化用溝は、「ガスの流入側から流出側に向かう」方向、すなわち多孔質体層40全体としてみた場合の多孔質体層40内のガスの流れの方向に対して略直交するように配されるとよい。
【0036】
ここで、ガス流入側溝51、ガス流出側溝52又はガス圧均等化用溝56に挟まれた部分に形成され、かつ、多孔質体層40端部、ガス流入側溝51、ガス流出側溝52、ガス圧均等化用溝56のいずれか2つの隣り合う多孔質体層40端部又は溝と連通するように(換言すると、複数溝(51,52,56)及び多孔質体層40端部のいずれか2つの隣り合う多孔質体層40端部又は溝(51,52,56)の間に形成され、これら隣り合う2つの多孔質体層40端部又は溝(51,52,56)と連通するように)形成され、並列に配置された複数のガス流路用溝55の各々について、このガス流路用溝55が外接する矩形領域を矩形領域Rとしている。従って、上記のように「第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なる」ように構成する、すなわち、
図9(a)に示すように、ガス流路用溝(矩形領域R)の配列ピッチL2と、矩形領域R(第1矩形領域R1及び第2矩形領域R2)の幅Lとを、L2<Lの関係を満たすようにすると、隣り合うジグザグ状のガス流路用溝55の一方の谷側に他方の山側が互いの流路が重ならない程度に突き出すような構成となる。なお、多孔質体層40端部は多孔質体層40の端の近傍を含むものとする。
【0037】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42においては、重なり領域R3の幅L1と、矩形領域R(第1矩形領域R1及び第2矩形領域R2)の幅Lとが、「L1≧0.1×L」の関係を満たすことが好ましく、「L1≧0.2×L」の関係を満たすことがより好ましく、「L1≧0.3×L」の関係を満たすことがさらに好ましい(
図7参照。)。
【0038】
カソードガスとしての空気(酸素ガス及び窒素ガス)は、多孔質体層40(ガス拡散層43)内を拡散する。多孔質体層40は、導電材(好ましくは炭素系導電材)と高分子樹脂の混合物を含む。高分子樹脂に炭素系導電材を混合することにより、高分子樹脂に高い導電性を付与することができ、また高分子樹脂の結着性により炭素材の成型性を向上させることができる。多孔質体層40の流体抵抗は、多孔質体層の気孔率と流体の流れる面の面積に依存する。気孔率が大きくなれば流体抵抗は小さくなる。流体が流れる面積が大きくなれば流体抵抗は小さくなる。およその目安としては、(カソードガス用の)燃料電池用ガス供給拡散層42においては、多孔質体層40の気孔率は、50〜85%程度である。なお、(アノードガス用の)燃料電池用ガス供給拡散層41においては、多孔質体層40の気孔率は、30〜85%程度である。
【0039】
多孔質体層40の気孔率が上記のように構成されていることから、ガス流路用溝55の内表面を介して、ガス流路用溝55と多孔質体層40との間のカソードガス、水蒸気、凝結水の流通が適切に行われるようになる結果、多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できるようになり、また、発電時に使用されなかったカソードガスや発電時に生成した水蒸気や凝結水をガス流路用溝外に効率よく排出することができるようになる。その結果、ガス流路用溝55の内表面に、金属、セラミックス、樹脂等からなるガス不透過層に微細なガス流通孔を多数開口したガス透過フィルターのようなものを形成する必要も無い。
【0040】
炭素系導電材の含有率を調整することにより、燃料電池用ガス供給拡散層42の気孔率を調整することができ、ひいては、燃料電池用ガス供給拡散層42の移動抵抗を調整することができる。特に炭素系導電材の含有率を高くすると移動抵抗が小さくなる(気孔率が大きくなる)。逆に、炭素系導電材の含有率を低くすると移動抵抗が大きくなる(気孔率が小さくなる)。耐食層及び緻密枠32も炭素系導電材と高分子樹脂の混合物であり、炭素系導電材の適度な含有率により、導電性を確保しつつ緻密化したものであるのが好ましい。
【0041】
炭素系導電材としては特に限定されないが、例えば黒鉛、カーボンブラック、ダイヤモンド被覆カーボンブラック、炭化ケイ素、炭化チタン、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができる。高分子樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。高分子樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ゴム系樹脂、フラン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0042】
カソードガス流入口62Aと多孔質体層40が形成されている領域との間には流入通路57が形成されている(
図4参照。)。カソードガス流出口62Bと多孔質体層40が形成されている領域との間には流出通路58が形成されている。これらの流入通路57及び流出通路58は膜電極接合体81又はそのフレーム81Aを支持するためのものである。したがって、カソードガスを円滑に流し、かつ膜電極接合体81をサポートできる構造であればよい。例えば、気孔率のきわめて大きい多孔質層でもよいし、多数の支柱を配列した構造でもよい。多孔質体層40における流入通路57と面する領域には金属板30の幅方向に沿って細長い流入側溝51が形成されている。また、多孔質体層40における流出通路58と面する領域にも金属板30の幅方向に沿って細長い流出側溝52が形成されている。但し、流入側溝51及び流出側溝52は、これらを省略することもできる。
【0043】
多孔質体層40、流入通路57、及び流出通路58は、
図5に示すように、緻密枠32と同じ高さ(厚さ)に形成されている。燃料電池用ガス供給拡散層42における金属板30に対向する側の面には、空隙からなる複数のガス流路用溝55が設けられており、これら複数のガス流路用溝55と金属板30との隙間に複数のガス流路が形成されている。ガス流路用溝55は所定の間隙で複数形成されている。各ガス流路用溝55は、流入側においては流入側溝51を介して流入通路57と連通し、流出側においては流出側溝52を介して流出通路58と連通している。ガス流路用溝55の数及び構造は図示のものに限定されない。
【0044】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、これを輸送機器用の燃料電池に用いる場合には、輸送機器の種類・大きさにもよるが、多孔質体層40の横幅は例えば30mm〜300mm程度である。ガス流路用溝55の幅Wは例えば0.3mm〜2mm程度である。多孔質体層40の厚さは例えば150〜400μm程度であり、ガス流路用溝55の深さは例えば100〜300μm程度であり、ガス流路用溝の底と多孔質体層40の他方の面との距離(天井厚)は例えば100〜300μm程度である。実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42を輸送機器以外の用途(例えば定置用)の燃料電池に用いる場合には、上記のサイズに限定されるものではなく、必要とされる性能などに応じて適宜のサイズのものを用いることができる。ガス流路用溝55は、
図4に示すように、ジグザグ形状をなしている。すなわち、ガス流路用溝55は、直線部551と、空気の流れる方向を変える角部552とを有している。直線部551の長さや、角部552の角度は図示のものに限定されない。例えば、
図4においては角部552の角度はほぼ直角であるが、鋭角であってもよく、鈍角であってもよい。また、角部552は、適宜の面取り処理や丸め処理が施されていてもよい。
【0045】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42においては、
図4に示すように、各直線部551の長さおよび各角部552の形状はいずれも等しい。そして、上記したように、平面的に見て、複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する複数の矩形領域(長方形領域)Rを定義したとき、一のガス流路用溝55が外接する第1矩形領域R1と、一のガス流路用溝に隣接するガス流路用溝55が外接する第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっており(
図6参照。)、かつ、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても存在する(
図7及び
図8参照。)。
【0046】
タイプAの燃料電池用セパレータ22における燃料電池用ガス供給拡散層41も、基本的には燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有する。但し、燃料電池用ガス供給拡散層に供給するガスが水素ガスであることから、燃料電池用ガス供給拡散層42よりも気孔率が低く、また、厚さが薄い(後述する
図10(b)参照。)。
【0047】
タイプCAの燃料電池用セパレータ21においては、燃料電池用ガス供給拡散層として燃料電池用ガス供給拡散層41及び燃料電池用ガス供給拡散層42を用いる(後述する
図10(a)参照。)。タイプCWの燃料電池用セパレータ24は、タイプCの燃料電池用セパレータ23における燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されていない面に冷却水供給拡散層が形成されたものである(後述する
図10(c)参照。)。タイプAWの燃料電池用セパレータ25は、タイプAの燃料電池用セパレータ22における燃料電池用ガス供給拡散層41が形成されていない面に冷却水供給拡散層が形成されたものである(後述する
図10(d)参照。)。
【0048】
燃料電池スタック20を運転すると、アノードガス(水素ガス)を導入する燃料極ではプロトン(H+)が生成する。プロトンは、膜電極接合体81中を拡散して酸素極側に移動し、酸素と反応して水が生成する。生成した水は、酸素極側から排出される。このとき、上記のような構造を有する燃料電池用ガス供給拡散層42を備える燃料電池用セパレータ23においては、カソードガス流入口62Aから流入した空気は流入通路57及び流入側溝51を通って、ガス流路用溝55に流入する。流入側溝51内に流入した空気の一部はガス流路用溝55内に入ってガス流路用溝55から多孔質体層40(ガス拡散層43)内に入り、他の一部は多孔質体層40(ガス拡散層43)の端面から直接に多孔質体層40(ガス拡散層43)に入って、多孔質体層40(ガス拡散層43)内を拡散していく。
【0049】
空気は、多孔質体層40(ガス拡散層43)内を平面方向に拡散しながら厚さ方向にも拡散し、多孔質体層40(ガス拡散層43)に接して設けられた膜電極接合体81に供給され、発電反応に寄与する。発電に使用されなかったガス(未使用の酸素ガス及び窒素ガス)及び発電時に生成した水(水蒸気又は凝縮水)は多孔質体層40(ガス拡散層43)、ガス流路用溝55、流出側溝52を介して流出通路58に流出する。流出通路58に流出した酸素ガス、窒素ガス及び水は、最終的に流出通路58からカソードガス流出口62B及びカソードガス排出口72Bを通って排出されていく。このとき、燃料電池用ガス供給拡散層42の構造上、全ての水は排出されず、一部が多孔質体層40(ガス拡散層43)内に留まる。
【0050】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体で生成した水(水蒸気又は凝縮水)を、多孔質体層40及びガス流路用溝55を介してガス流路用溝外に効率良く排出できるようになる。また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で水をガス流路用溝外に効率良く排出できるようになる。
【0051】
[実施形態の効果]
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42によれば、多孔質体層40の一方の面において複数のガス流路用溝55が形成されていることから、従来よりも燃料電池用ガスの移動抵抗が減少し、膜電極接合体に対して従来よりも多量の燃料電池用ガスを供給できる。
【0052】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42によれば、複数のガス流路用溝55が多孔質体層40の一方の面に形成されていることから、多孔質体層40の他方の面に配設される膜電極接合体81に対する燃料電池用ガスの供給は必ず多孔質体層40を介して行われるので、複数のガス流路が多孔質体層の一方の面から他方の面にかけて開口されている場合よりも燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できる。また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42によれば、多孔質体層40の一方の面に複数のガス流路用溝55がガスの流入側から流出側に向かってジグザグ状又は波状に形成されていることから、ガス流路用溝中のガス流れに限らず上流側流路と下流通路とを短絡して伏流するガス流れ(伏流ガス流れ)が形成されるため 、多孔質体層に供給される燃料電池用ガスの供給経路が面内に広く分散するようになり、複数のガス流路用溝がガスの流入側から流出側に向かって直線状に形成されている場合よりも燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できる。
【0053】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42によれば、複数のガス流路用溝55のうち一のガス流路用55Aが外接する第1矩形領域R1においては、当該一のガス流路用溝55A中を流れる燃料電池用ガスの一部が多孔質体層40に入り込んでいわゆる伏流領域が第1矩形領域R1中に形成され、また、上記の一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝55B中を流れる燃料電池用ガスの一部が多孔質体層40に入り込んでいわゆる伏流領域が第2矩形領域R2中に形成され、これらの第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっていることから(
図6及び
図7参照。)、多孔質体層40に供給される燃料電池用ガスの供給経路が面内に隙間無く分散するようになるため、ガス燃料電池用ガスを膜電極接合体81に対してより一層均一に供給できる。
【0054】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42によれば、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても存在することから(
図7及び
図8参照。)、多孔質体層40に供給される燃料電池用ガスの供給経路がガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても面内に隙間無く分散するようになるため、燃料電池用ガスを膜電極接合体に対してより一層均一に供給できる。
【0055】
その結果、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、従来よりも多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できるようになることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0056】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、上記のような特徴を有することから、発電に使用されなかった燃料電池用ガス(この場合カソードガス(酸素ガス、窒素ガス))を、多孔質体層40及びガス流路用溝55を介してガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で発電に使用されなかった燃料電池用ガス(この場合カソードガス(酸素ガス、窒素ガス))をガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、従来よりも燃料電池用ガスの移動抵抗が低く保つこと、ひいては、反応ガス濃度を高く保つことが可能となり、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0057】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気又は凝縮水を、多孔質体層40及びガス流路用溝55を介してガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で水蒸気又は凝縮水をガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、従来よりも排水性に優れた燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0058】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42によれば、重なり領域R3の幅L1と、矩形領域の幅Lとが、「L1≧0.1×L」の関係を満たすことから、燃料電池用ガス供給拡散層42に占める重なり領域R3の平面面積割合を大きくすることができ、燃料電池用ガスを膜電極接合体81に対してより一層均一に供給できる。
【0059】
実施形態に係る燃料電池用セパレータ23は、金属板30と、金属板30の少なくとも一方の面に配設された燃料電池用ガス供給拡散層とを備える燃料電池用セパレータであって、燃料電池用ガス供給拡散層が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42であり、当該燃料電池用ガス供給拡散層42は、複数のガス流路用溝55が金属板30側に位置するように金属板30に対して配置されており、ガス流路用溝55と金属板30とでガス流路が構成されていることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くでき、さらには、従来よりも排水性に優れた、燃料電池用セパレータとなる。
【0060】
実施形態に係る燃料電池セルスタック20は、燃料電池用セパレータと、膜電極接合体とが積層されてなる燃料電池セルスタックであって、燃料電池用セパレータが、実施形態に係る燃料電池用セパレータ23であり、当該燃料電池用セパレータ23と膜電極接合体81とは、燃料電池用ガス供給拡散層42の複数のガス流路用溝55が形成されていない側の面に膜電極接合体81が位置する位置関係で積層されていることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くでき、さらには、従来よりも排水性に優れた、燃料電池セルスタックとなる。
【0061】
[燃料電池用セパレータ23の製造方法]
一例として、耐食層、緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42等は等方圧加圧により形成する。たとえば熱硬化性樹脂を用いる場合(熱可塑性樹脂でもよい)、炭素系導電材粉末(および、状況に応じて炭素繊維)、樹脂粉末および揮発性溶剤を混錬してペースト状にする。このペーストには、耐食層、および緻密枠用のもの、流体供給拡散層用のもの等、多数種類を用意しておく。そして、金属板30上に、耐食層、緻密枠32のパターン、燃料電池用ガス供給拡散層42のパターン等を順次プリント、スタンプ、絞り出し等により形成する。各パターンの形成ごとに溶剤を揮発させる。上記のすべてのパターンが形成された金属板30の全体を軟質の薄いゴムバックに入れ、真空に脱気した後、ゴムバックを耐圧容器に入れ、加熱流体を容器内に導入して、加熱流体で等方圧加圧して樹脂を硬化させる。緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42の高さ(厚さ)を最終的に同じ高さ(厚さ)にするために、樹脂硬化の際の収縮の程度に応じて、これらの各枠、壁、層等の高さ(厚さ)をパターン作製時に調整しておくことが好ましい。
【0062】
一方で、金属板30上に耐食層を形成しておき、他方で緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42を形成し、最後にこれらを熱圧着して製造することもできる。このとき緻密枠32は金属板30上の耐食層と同時に作成してもよい。第1段階で金属板30上に耐食層と緻密枠32とを作成し、この後第2段階で燃料電池用ガス供給拡散層42のペーストを金属板30の耐食層上に順次印刷し、乾燥させた後、ロールプレス(ホットプレス)で硬化させて製造することもできる。
【0063】
または、次のような製造方法を用いることもできる。カーボンファイバー(CF)、少量の黒煙微粒子(GCB)及び結着剤となる熱可塑性もしくは熱硬化性または繊維状物を形成する樹脂を混錬してシート状に形成し、硬化する前のグリーンシート状態のときに、流入通路57、流出通路58、流入側溝51、流出側溝52及ガス流路用溝55に対応する形状の突起を有するスタンプ型をシートに押し当てて、流入通路57、流出通路58、流入側溝51、流出側溝52及ガス流路用溝55を形成する。最後にグリーンシートを熱処理し、これを耐食層が形成された金属板30に接着する。
【0064】
燃料電池用ガス供給拡散層42の移動抵抗(又は流体抵抗)は、多孔質体層40の気孔率と流体の流れる方向に直交する面の面積(各層の高さ(厚さ)と幅)に依存する。気孔率が大きくなれば移動抵抗は小さくなる。流体が流れる面積が大きくなれば移動抵抗は小さくなる(単位面積当りの移動抵抗は一定である)。おおよその目安としては、燃料電池用ガス供給拡散層の気孔率は、(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層42については30〜85%程度、(カソードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41については50〜85%程度である。気孔率Pは、測定が容易な、P=(多孔質体層中の気孔の体積)/(多孔質体層の体積)で定められる。ここで、気孔は外部に通じていない気孔を含む真の気孔である。
【0065】
なお、上記した製造方法は、燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ(燃料電池用セパレータ21、燃料電池用セパレータ22、燃料電池用セパレータ24及び燃料電池用セパレータ25)を製造する際にも適用できる。
【0066】
[燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ]
図10は、燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ(燃料電池用セパレータ21、燃料電池用セパレータ22、燃料電池用セパレータ24及び燃料電池用セパレータ25)の断面図である。
図10(a)はタイプCAの燃料電池用セパレータ21の断面図であり、
図10(b)はタイプAの燃料電池用セパレータ22の断面図であり、
図10(c)はタイプCWの燃料電池用セパレータ24の断面図であり、
図10(d)はタイプAWの燃料電池用セパレータ25の断面図である。
【0067】
本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ21の(カソードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層42及び/又は(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41に適用することができる(
図10(a)参照。)。また、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ22の(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41に適用することができる(
図10(b)参照。)。また、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ24の(カソードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層42に適用することができる(
図10(c)参照。)。また、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ25の(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41に適用することができる(
図10(b)参照。)。
【0068】
このように本発明の燃料電池用ガス供給拡散層を上記のような燃料電池用セパレータ21,22,24,25の燃料電池用ガス供給拡散層に適用した場合であっても、従来よりも多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できるようになることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0069】
[変形例1]
図11は、変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aの(金属板30の側から見た)平面構造を説明するために示す図である。但し、
図4の場合と同様に、燃料電池用セパレータ23の流路パターンを分かり易く表すために、金属板30の図示は省略している。以降の
図12〜
図21においても同様である。変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aは、基本的には実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の構成が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aにおいては、
図11に示すように、ガス流路用溝55が、ガス流路用溝55の流入側端部の幅W1と、ガス流路用溝55の流出側端部の幅W2とが、「W2<W1」の関係を満たすような構成を有する。変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aによれば、ガス流路用溝中のガス流の線速度が流出端部側で高くなることから、流路間の多孔質中のガスの伏流割合が高くなり、より一層多量の燃料電池用ガスを均等に多孔質体層に送り込むことが可能となり、流出側の領域においても、いわゆる伏流領域における燃料電池用ガス濃度の低下を抑制することができる。また、反応生成物として生じ下流に向かって増加する水蒸気又は凝縮水を効果的に排出できる。流路用溝55の幅Wは、ガスの流入側から流出側に向かって徐々に狭くなっている。
【0070】
[変形例2]
図12は、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの平面構造を説明するために示す図である。
図12において、符号R4は後述する「分割重なり領域」を示す。変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bは、基本的には、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、ガス流路用溝に加えてガス圧均等化用溝が形成されている点が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bにおいては、
図12に示すように、多孔質体層40には、複数のガス流路用溝55と交差するように、ガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1本のガス圧均等化用溝56が形成されている。また、当該ガス圧均等化用溝56によって分割された重なり領域を「分割重なり領域R4」と定義したとき、分割重なり領域R4が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置においても存在する。変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bによれば、ガス圧均等化用溝56の作用により、ガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって燃料電池用ガスの供給量を均等にできる。また、分割重なり領域R4が、複数のガス流路用溝のどの深さ位置においても存在することから、多孔質体層に供給される燃料電池用ガスの供給経路が隙間無く分散するため、燃料電池用ガスを膜電極接合体に対してより一層均一に供給できる。
【0071】
なお、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bにおいては、ガス流路用溝55の深さと、ガス圧均等化用溝56の深さを等しくしている。このためガス流路用溝55とガス圧均等化用溝56とを同じ製造工程でかつ単純な構造の金型を用いて形成することが可能となることから、ガス圧均等化用溝を形成することによる製造コストの上昇を抑制できるという効果をも有する。
【0072】
[変形例3]
図13は、変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cの平面構造を説明するために示す図である。変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cは、基本的には、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の構成が変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cの場合と異なる。すなわち、変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cにおいては、
図13に示すように、ガス流路用溝55が、ガス流路用溝55の流入側端部の幅W1とガス流路用溝55の流出側端部の幅W2とが「W2<W1」の関係を満たすような構成を有する。変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cによれば、ガス流路用溝中のガス流の線速度が流出端部側で高くなることから、流路間の多孔質中のガスの伏流割合が高くなり、多量の燃料電池用ガスをより一層均等に多孔質体層の全領域に送り込むことが可能となり、流出側の領域においても、いわゆる伏流領域での燃料電池用ガス濃度の低下を抑制することができる。また、反応生成物として生じ下流に向かって増加する水蒸気又は凝縮水を効果的に排出できる。流路用溝55の幅Wは、ガスの流入側から流出側に向かって徐々に狭くなっているが、段階的に狭くなっていてもよい。
【0073】
[変形例4]
図14は、変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dの平面構造を説明するために示す図である。変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dは、基本的には、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の平面構造が変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dは、
図14に示すように、流出側端部におけるガス流路用溝55の形成密度(単位面積当たりの形成本数)が流入側端部におけるガス流路用溝55の形成密度(単位面積当たりの形成本数)よりも高い。変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dによれば、反応の進行に伴い燃料電池用ガスが下流に向かって流れるに従って消費されるために供給が少なくなりがちな流出側においても伏流領域における燃料電池用ガス濃度の低下を抑制することができ、また、反応生成物として生じ下流に向かって増加する水蒸気又は凝縮水を効果的に排出できる。
【0074】
[変形例5]
図15は、変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eの平面構造を説明するために示す図である。変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eは、基本的には、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の平面構造が変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eは、
図15に示すように、変形例4の場合と同様に、流出側端部におけるガス流路用溝55の形成密度(単位面積当たりの形成本数)が流入側端部におけるガス流路用溝55の形成密度(単位面積当たりの形成本数)よりも高い。変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dによれば、反応の進行に伴い燃料電池用ガスが下流に向かって流れるに従って消費されるために供給が少なくなりがちな流出側においても伏流領域における燃料電池用ガス濃度の低下を抑制することができ、また、反応生成物として生じ下流に向かって増加する水蒸気又は凝縮水を効果的に排出できる。なお、変形例5においては、変形例4においてよりもガス流路用溝55の縦方向のジグザグピッチを短くしている。
【0075】
[変形例6]
図16は、変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fの平面構造を説明するために示す図である。変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fは、基本的には、変形例2〜5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42b〜42eと同様の構成を有するが、ガス圧均等化用溝56の形成本数が、変形例2〜5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42b〜42eの場合と異なる。すなわち、変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fにおいては、
図16に示すように、ガス圧均等化用溝56の形成本数が2本である。変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fにおいては、ガス圧均等化用溝56の形成本数が2本であることから、ガス圧均等化用溝56の作用により、ガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって燃料電池用ガスの供給量をより一層均等にできる。流路用溝55の幅Wは、ガスの流入側から流出側に向かって段階的に狭くなっているが、徐々に狭くなっていてもよい。
【0076】
[変形例7]
図17は、変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gの平面構造を説明するために示す図である。変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gは、基本的には、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、最も流入側にあるガス流路用溝の形成角度が、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gにおいては、
図17に示すように、最も流入側にあるガス流路用溝55の形成角度が、燃料電池用ガスが当該ガス流路用溝55に入り易い角度になっている。変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gによれば、最も流入側にあるガス流路用溝55の形成角度が、当該燃料電池用ガスがガス流路用溝55に入り易い角度になっていることから、燃料電池用ガスの移動抵抗が減少し、膜電極接合体に対してより一層多量の燃料電池用ガスを供給できる。
【0077】
[変形例8]
図18は、変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hの平面構造を説明するために示す図である。変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hは、基本的には、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成角度が、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hにおいては、
図18に示すように、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成角度のいずれもが、ガスの流入側から流出側に沿う方向(金属板30の縦長方向)に平行となる角度になっている。変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hによれば、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成角度のいずれもが、ガスの流入側から流出側に沿う方向(金属板30の縦長方向)に平行となる角度になっていることから、燃料電池用ガスの流入の際及び流出の際の流入の際の移動抵抗が減少し、膜電極接合体に対してより一層多量の燃料電池用ガスを供給できる。
【0078】
[変形例9]
図19は、変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iの平面構造を説明するために示す図である。変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iは、基本的には、変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hと同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成幅が変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hの場合と異なる。すなわち、変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iにおいては、
図19に示すように、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成幅が変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hの場合よりも広い。また、端部に向かうにつれて広くなるようなテーパー状になっている。変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iによれば、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成幅が変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hの場合よりも広く、また、端部に向かうにつれて広くなるようなテーパー状になっていることから、燃料電池用ガスの流入の際及び流出の際の移動抵抗がより一層減少し、膜電極接合体に対してより一層多量の燃料電池用ガスを供給できる。
【0079】
[変形例10]
図20は、変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jの平面構造を説明するために示す図である。変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jは、基本的には、実施形態に係る係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の平面形状が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jにおいては、
図20に示すように、複数のガス流路用溝55の平面形状が波状である。変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jによれば、ガス流路用溝55の平面形状が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合とは異なるが、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と同様に、多孔質体層に供給される燃料電池用ガスの供給経路が面内に広く分散するようになるため、複数のガス流路用溝がガスの流入側から流出側に向かって直線状に形成されている場合よりも燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できる。
【0080】
[変形例11]
図21は、変形例11に係る燃料電池用セパレータ23kの平面構造を説明するために示す図である。変形例11に係る燃料電池用セパレータ23kはCタイプの燃料電池用セパレータであって、基本的には、実施形態に係る係る燃料電池用セパレータ23と同様の構成を有するが、カソードガス流入口62A及びカソードガス流出口62B、アノードガス流入口61A及びアノードガス流出口61B、並びに、冷却水流入口63A及び冷却水流出口63Bを含む平面構造が実施形態に係る燃料電池用セパレータ23の場合と異なる。すなわち、変形例11に係る燃料電池用セパレータ23kにおいては、
図21に示すように、金属板30の縦方向両端部にそれぞれカソードガス流入口62A及びカソードガス流出口62Bのみが形成され、アノードガス流入口61A及びアノードガス流出口61B並びに冷却水流入口63A及び冷却水流出口63Bは、金属板30の横方向両端部にそれぞれ形成されている。変形例11に係る燃料電池用セパレータ23kによれば、アノードガスよりも燃料電池用ガス供給拡散層中を拡散し難いカソードガスを流通させるためのカソードガス流入口62A及びカソードガス流出口62Bの形成幅を広くできることから、より一層多量のカソードガスを膜電極接合体に対して均一に供給できる。また、発電に使用されなかった酸素ガス及び窒素ガスをガス流路用溝外に効率良く排出できるようになるため、燃料電池の発電効率をより一層高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。また、変形例11に係る燃料電池用ガス供給拡散層23kによれば、発電時に膜電極接合体で生成した水蒸気又は凝縮水をガス流路用溝外に効率良く排出できるようになるため、より一層排水性に優れた燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0081】
[変形例12]
上記した実施形態においては、膜電極接合体として、燃料電池用ガス供給拡散層42,41とほぼ同じ面積の触媒層85を有する膜電極接合体81を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。膜電極接合体として、燃料電池用ガス供給拡散層42,41よりも小さい面積の触媒層85を有する膜電極接合体を用いてもよい。
図22は、変形例12に係る燃料電池用セパレータ23Lの平面図である。変形例12に係る燃料電池用セパレータ23Lにおいては、膜電極接合体81として、燃料電池用ガス供給拡散層42,41よりも小さい面積の触媒層85を有する膜電極接合体を用いるとともに、燃料電池用ガス供給拡散層42,41の中央部分(燃料電池用ガス供給拡散層42,41の膜電極接合体81側の表面にカソードガスが均一に供給される部分)に膜電極接合体81の触媒層85が位置するようにこれらを積層したものである。変形例12に係る燃料電池用セパレータ23Lによれば、燃料電池用ガスが均一に供給され発電効率のよい領域で発電を行うことができるようになり燃料電池の発電効率をより一層高くできる。
【0082】
[変形例13]
上記した実施形態においては、ガス流路用溝として、多孔質体層40(又はガス流路用溝55)の表面のガス流路用溝の幅と、ガス流路用溝55の底のガス流路用溝の幅とが等しく、断面が長方形状のガス流路用溝55を用いたが(
図5及び
図7参照。)、本発明はこれに限定されるものではない。溝の底が表面よりも狭い断面三角形状のガス流路用溝であってもよいし、溝の底が表面よりも狭い断面半円形状のガス流路用溝であってもよいし、その他の形状のガス流路用溝であってもよい。
図23及び
図24は、変形例13に係るガス流路用溝55の形成パターンを説明するために示す図である。このうち、
図23はガス流路用溝55の構造を示す図であり、
図24は、異なる深さ位置におけるガス流路用溝55の平面構造を説明するために示す図である。
図23(a)は平面図であり、
図23(b)は
図23(a)のA−A断面図である。
図24(a)は深さ位置D1(多孔質体層40(又はガス流路用溝55)の表面における深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示し、
図24(b)は深さ位置D2(ガス流路用溝55の深さの1/2の深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示し、
図24(c)は深さ位置D3(ガス流路用溝55の底における深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示す。
図23及び
図24においては、カソードガスの流れを図示している。
図23(a)及び
図24中、ガス流路用溝55内の矢印はガス流路用溝55に沿った流れであり、多孔質体層40内に記した縦方向上向きの矢印はガス流路用溝55から多孔質体層40(ガス拡散層43)中に押し出されたカソードガスの流れ(伏流ガス流れ)である。また、
図24(b)中、多孔質体40内に記した横方向及び下方向(膜電極接合体側に向かう方向)向きの矢印は、ガス流路用溝55mから膜電極接合体側に向けて多孔質体層40(ガス拡散層43)中に押し出されたカソードガスの流れを示す。
【0083】
図23に示すように、ガス流路用溝として、溝の底が表面よりも狭い断面三角形状のガス流路用溝55を用いることもできる。このような場合には、深さ位置D3における矩形領域Rの面積が深さ位置D1における矩形領域Rの面積よりも小さくなり、燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給するという観点では不利になるが、このような場合であっても、
図24に示すように、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置においても存在するようにすれば、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と同様に、燃料電池用ガスを膜電極接合体に対してより一層均一に供給できる。従って、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層が有する「燃料電池用ガスを膜電極接合体に対してより一層均一に供給できる」という効果は、重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置においても存在するという条件を満たしている場合には、ガス流路用溝55の断面形状を問わず得られるものである。
【0084】
[変形例14]
上記した実施形態においては、燃料電池用ガス供給拡散層として、一方の面にガス流路用溝55が形成された多孔質体層40を備える燃料電池用ガス供給拡散層42を用いたが(
図5参照。)、本発明はこれに限定されるものではない。
図25は、変形例14に係る燃料電池用ガス供給拡散層42nの断面図である。
図5の場合と同様に、膜電極接合体81が接合された状態の燃料電池用セパレータ23nを示している。
図25に示すように、一方の面にガス流路用溝55が形成された多孔質体層40と、当該多孔質体層40の他方の面に配設されたマイクロポーラスレイヤ44とを備える燃料電池用ガス供給拡散層を用いこともできる。このような構成とした場合には、マイクロポーラスレイヤを備えない膜電極接合体を用いて燃料電池用セパレータを構成することができるようになる。
【0085】
[変形例15]
上記した実施形態においては、ガス遮蔽板として、金属板30を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。金属板30以外の、ガスを遮蔽する性質をもった材料からなる板(例えば、セラミックス板、樹脂板)を用いることもできる。
【0086】
なお、上記各変形例は、各変形例に記載の特徴を、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42、燃料電池用セパレータ23及び燃料電池セルスタック20に適用したものであるが、各変形例に記載の特徴は、これに限らず、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックの全般に適用可能である。例えば、各変形例に記載の特徴は、タイプCAの燃料電池用ガス供給拡散層21、タイプCWの燃料電池用ガス供給拡散層24、タイプAの燃料電池用ガス供給拡散層22、タイプAWの燃料電池用ガス供給拡散層25、これら燃料電池用ガス供給拡散層を備えた燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックにも適用可能である。
【0087】
以上、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックを、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。