特許第6876202号(P6876202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876202脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876202
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20210517BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20210517BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61K31/58
   A61K9/127
   A61K31/506
   A61K47/24
   A61K47/28
   A61K47/20
   A61K47/26
   A61K8/14
   A61P17/14
   A61Q7/00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-539667(P2020-539667)
(86)(22)【出願日】2019年4月11日
(65)【公表番号】特表2020-535234(P2020-535234A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(86)【国際出願番号】KR2019004311
(87)【国際公開番号】WO2019245142
(87)【国際公開日】20191226
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0069736
(32)【優先日】2018年6月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520109036
【氏名又は名称】ムージンメディ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ユ,キョンナム
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2020−535233(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0018150(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0074883(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0086560(KR,A)
【文献】 韓国特許第2010−1710026(KR,B1)
【文献】 韓国特許第2010−1870694(KR,B1)
【文献】 Theranostics,2016年,6(6),pp.817-827
【文献】 Biol Pharm Bull,2016年,39(6),pp.1060-1068
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛治療用薬物が封入された、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体であって、ここで、
前記脱毛治療用薬物は、フィナステリド、ミノキシジル及びデュタステリドからなる群から1種以上が選択され、
前記ナノリポソームは、レシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質を含み、
前記マイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質を含む、
ナノリポソーム−マイクロバブル結合体。
【請求項2】
前記脱毛治療用薬物は、2型5−α還元酵素の発現または活性を抑制してテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を阻害する効能、または毛乳頭真皮細胞の死滅を抑制する効能がある、請求項1に記載のナノリポソーム−マイクロバブル結合体。
【請求項3】
請求項1に記載のナノリポソーム−マイクロバブル結合体を含有する、脱毛の改善又は治療用組成物。
【請求項4】
レシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質をクロロホルムで混合して脂質フィルム組成物を製造する第1ステップ、
前記脂質フィルム組成物に脱毛治療用薬物溶液を入れて超音波処理する第2ステップ、
前記超音波処理された脂質フィルム組成物を凍結し、融解した後、再び超音波処理する第3ステップ、及び
前記第3ステップで超音波処理された脂質フィルム組成物を遠心分離し、沈殿物状態のナノリポソームを回収する第4ステップを含んで製造されたナノリポソームと、
両性リン脂質、コレステロール、アニオン性脂質、アミン基を有する脂質、及びジスルフィドを有する脂質をクロロホルムで混合して脂質フィルム組成物を製造する第Aステップ、
前記第Aステップにグルコース溶液を入れて超音波処理する第Bステップ、
前記第Bステップで超音波処理された脂質フィルム組成物を凍結し、融解した後、再び超音波処理する第Cステップ、及び
前記第Cステップで超音波処理された脂質フィルム組成物に疎水性気体を注入してマイクロバブルを製造する第Dステップを含んで製造されたマイクロバブルと、を混合してナノリポソーム−マイクロバブル結合体を形成することを特報とする、請求項1に記載のナノリポソーム−マイクロバブル結合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)、デュタステリド(Dutasteride)などの脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソームに、疎水性気体を含むマイクロバブルが化学的に安定な状態で結合されている、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有した脱毛改善または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
脱毛は、一般に、頭皮の太くて黒い髪の毛が抜けることを意味する。脱毛の原因はさまざまであるが、遺伝的な原因と男性ホルモンであるアンドロゲン(androgen)が重要な因子として考えられている。その中でも60〜70%程度と大きな割合を占めている男性型脱毛症(androgenic alopecia)は、テストステロン(testosterone)が5−α還元酵素(5−alpha reductase、SRD5A)によってジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone、DHT)に変換され、過剰に生成されたジヒドロテストステロンが毛乳頭真皮細胞(dermal papilla cell、DPC)の男性ホルモン受容体(androgenic receptor、AR)に結合してアポトーシス(apoptosis)を誘発し、毛髪の小型化により脱毛が進行するのである。5−α還元酵素のうち、毛包の毛乳頭と外側毛根鞘に主に分布する2型5−α還元酵素(5−alpha reductase type 2、SRD5A2)自体が多く発現している男性や、2型5−α還元酵素の活性度が高いヒトは、ジヒドロテストステロンの量が一般な男性よりも相対的に多いため、脱毛の発生可能性が大きくなる。よって、男性型脱毛症の治療核心は、2型5−α還元酵素の量又は活性度を低下させてテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を防ぐことにある。
【0004】
現在、脱毛治療剤としてプロペシア(Propecia)、ミノキシジル(Minoxidil)、デュタステリド(Dutasteride)などの薬物が開発されている。プロペシアは、フィナステリド(finasterid)成分の薬物であって、2型5−α還元酵素を直接抑制し、デュタステリドは、1型、2型5−α還元酵素を抑制してテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を抑制して脱毛の進行を緩和させる。フィナステリドは、経口用脱毛治療剤であって、元々前立腺肥大症の治療薬であった。服用患者の発毛副作用が観察され、後で男性脱毛治療剤として開発された。しかし、これらの薬物は、服用患者に性欲減退や勃起不全などの副作用が発生し、服用中止時に脱毛が再び進行するという欠点を持つ。特に、米国FDAでは、不妊又は精子数の少ない男性の場合、薬物の服用を中止することを勧告している(Myscore V et al.,2012)。
【0005】
一方、細胞内薬物送達システムに要求される重要な二つの性質は、効率性と細胞毒性(安全性)であって、コレステロールや脂質などで構成されたナノリポソーム送達体技術が幅広く使用されている(Zuris JA et al.,2015)。しかし、このようなナノリポソーム技術のみでは、皮膚バリアの役割を果たす角質層の下に存在する真皮内への薬物送達が容易ではない(Nemes Z et al.,1999)。
【0006】
マイクロバブルは、FDAに承認された診断超音波造影剤であって、疎水性気体で充填されたマイクロサイズの気泡形状を持っている。超音波にさらされたマイクロバブルは、空洞現象(cavitation)が生じて周辺細胞の細胞膜が一時的に気孔を形成し、この気孔を介して細胞内へ物質が透過する超音波穿孔法(sonoporation)でナノリポソームが細胞内へ送達されることにより、他の細胞送達法よりもさらに効果的に送達することができる。
【0007】
そこで、本発明者らは、フィナステリドが封入されたナノリポソームを真皮層まで効率よく送達するために、フィナステリドをナノリポソームに封入し、これをマイクロバブルと結合させた組成物を製造した。よって、このような技術によって真皮内への薬物送達効率が良い送達体を製造し、これを脱毛改善または治療用組成物として用いることにより、本発明を完成することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1683463号(発明の名称:マイクロバブル−リポソーム−メラニンナノ粒子複合体及びこれを含む造影剤、出願人:ソウル大学産学協力団、登録日:2016年12月1日)
【特許文献2】韓国登録特許第10−1082391号(発明の名称:ビタミンCを含む脱毛防止及び発毛促進用ナノハイブリッド複合体及び発毛促進用組成物、出願人:(株)シエンファーム及び梨花女子大学産学協力団、登録日:2011年11月4日)
【特許文献3】韓国登録特許第10−1054731号(発明の名称:難溶性発毛及び育毛生理活性物質であるフィナステリドを含むナノ粒子及びこれを含有する皮膚外用剤組成物、出願人:(株)アモーレパシフィック、登録日:2011年8月1日)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Myscore V et al.,Finasteride and sexual side effects,Indian Dermatol Online J,2012,3(1),62-65.
【非特許文献2】Zuris JA et al.,Cationic lipid-mediated delivery of proteins enables efficient protein-based genome editing in vitro and in vivo,Nat Biotechnol,2015,33(1),73-80.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物を提供することにある。
【0011】
より具体的には、本発明の目的は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)、デュタステリド(Dutasteride)などの脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソームに、疎水性気体を含むマイクロバブルが化学的に安定的に結合されているナノリポソーム−マイクロバブル結合体と、これを含有して口腔投与による副作用なしに脱毛の改善または治療効果に優れる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体に関するものである。
【0013】
前記脱毛治療用薬物は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)及びデュタステリド(Dutasteride)よりなる群から1種以上選択されて含まれたものであり得る。
【0014】
また、前記脱毛治療用薬物は、2型5−α還元酵素の発現または活性を抑制してテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を阻害する効能、または毛乳頭真皮細胞の死滅を抑制する効能があるものであり得る。
【0015】
前記ナノリポソームは、レシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質を含むことができる。
【0016】
前記マイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質を含むことができる。
【0017】
前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体は、1100〜2100nmの粒子サイズを有することができる。
【0018】
本発明は、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体を含有する脱毛の改善または治療用組成物を提供することができる。
【0019】
また、本発明は、下記の毛乳頭真皮細胞を選択的に認識することができるナノリポソーム−マイクロバブル結合体の製造方法を提供する。より好ましくは、ナノリポソームとマイクロバブルをそれぞれ製造した後、これを混合してナノリポソーム−マイクロバブル結合体を製造することができる。
【0020】
前記ナノリポソームは、下記の方法で製造することができる。
【0021】
好ましくは、レシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質をクロロホルムで混合して脂質フィルム組成物を製造する第1ステップと、
前記脂質フィルム組成物に脱毛治療用薬物溶液を入れて超音波処理する第2ステップと、
前記超音波処理された脂質フィルム組成物を凍結し、融解した後、再び超音波処理する第3ステップと、
前記第3ステップで超音波処理された脂質フィルム組成物を遠心分離し、沈殿物状態のナノリポソームを回収する第4ステップとを含んで、前記ナノリポソームを製造することができる。
【0022】
また、前記マイクロバブルは、下記の方法で製造することができる。
【0023】
両性リン脂質、コレステロール、アニオン性脂質、アミン基を有する脂質、及びジスルフィドを有する脂質をクロロホルムで混合して脂質フィルム組成物を製造する第Aステップと、
前記第Aステップにグルコース溶液を入れて超音波処理する第Bステップと、
前記第Bステップで超音波処理された脂質フィルム組成物を凍結し、融解した後、再び超音波処理する第Cステップと、
前記第Cステップで超音波処理された脂質フィルム組成物に疎水性気体を注入してマイクロバブルを製造する第Dステップと、を含んで、前記マイクロバブルを製造することができる。
【0024】
このように製造されたマイクロバブルにナノリポソームを混合してナノリポソーム−マイクロバブル結合体を形成することができる。
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本発明は、脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物に関する。
【0027】
前記脱毛治療用薬物は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)、デュタステリド(Dutasteride)などから選択できるが、これらの薬物と同じメカニズムの脱毛治療用薬物であれば利用可能である。また、前記脱毛治療用薬物は、好ましくは、2型5−α還元酵素の発現または活性を抑制してテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を阻害する効能があるものであればいずれも選択できる。
【0028】
前記ナノリポソームは、レシチン(lecithin、α−phosphatidylcholin)、カチオン性リン脂質及びコレステロールを含むことができ、これにより、前記レシチン、カチオン性リン脂質及びコレステロールがナノリポソームを形成する膜を成すことができる。
【0029】
レシチンは、動/植物界に広く分布しており、生体適合性に優れるうえ、その安定性においても既に検証されて食品と製薬の送達体技術に広く活用されている。また、ナノリポソームのサイズ調節及び変形を容易にする材料として使用できる。
【0030】
前記カチオン性リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)よりなる群から1種以上選択できる。好ましくは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)を使用するのが良い。
【0031】
本発明のナノリポソームは、中性の水、細胞培養液、血液などで数時間以上安定的に分散できる。
【0032】
本発明のマイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質を含むことができ、これらの混合物からなる脂質フィルム組成物に投入された疎水性気体を介してバブルを形成する膜をなすことにより、マイクロバブルが製造される。
【0033】
前記両性リン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−distearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DSPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DMPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dioleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DOPC)、1−ミリストイル−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1−myristoyl−2−palmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、MPPC)、及び1−ミリストイル−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1−myristoyl−2−stearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、MSPC)よりなる群の中から選択できる。好ましくは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DPPC)を使用するのが良い。
【0034】
前記アニオン性リン脂質は、ジセチルホスフェート(dicetyl phosphate、DCP)、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dierucoyl−sn−glycero−3−phosphate、DEPA)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dilauroyl−sn−glycero−3−phosphate、DLPA)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphate、DMPA)、及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dioleoyl−sn−glycero−3−phosphate、DOPA)よりなる群から1種以上選択できる。好ましくは、ジセチルホスフェート(DCP)を使用するのが良い。
【0035】
前記カチオン性リン脂質としては、ナノリポソームの製造時に使用するものを同一に使用することができ、より詳しくは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)よりなる群から1種以上選択できる。好ましくは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)を使用するのが良い。
【0036】
前記ジスルフィド基を有する脂質としては、DSPE−PEG−sPDPとも呼ばれる1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ポリ(エチレングリコール)−2000−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートを使用するのが良い。
【0037】
*DSPE−PEG−sPDP:1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ポリ(エチレングリコール)−2000−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート
DSPE−PEG−sPDP脂質は、下記(化学式1)の化学構造を有する脂質である。
【0038】
【化1】
マイクロバブルの製造のための両性リン脂質:アニオン性リン脂質:コレステロール:カチオン性リン脂質:ジスルフィド基を有する脂質の混合割合は、1〜3mM:0.1〜0.3mM:0.5〜2mM:0.1〜0.3mM:0.1〜0.3mMであり得る。このとき、両性リン脂質:アニオン性リン脂質:コレステロール:カチオン性リン脂質:ジスルフィド基を有する脂質として、DPPC:DCP:コレステロール:DPPE:sPDPが使用でき、好ましくは、DPPC:DCP:コレステロール:DPPE:sPDPが2.0mM:0.18mM:0.9mM:0.17mM:0.17mMで混合できる。
【0039】
マイクロバブル内の前記DSPE−PEG−sPDP脂質は、ナノリポソームと結合するときに架橋剤になり、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体に結合できる。
【0040】
前記マイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質の混合物のバブリングにより誘導されたものであり得る。また、前記マイクロバブルの内部は、SF、CO、CF及びCから選択される疎水性気体が内包されたものであり得る。前記疎水性気体は、好ましくはSFであることがさらに良い。
【0041】
前記ナノリポソームは、100〜200nmの粒子サイズを有することができる。ナノリポソームのサイズが100nm未満である場合には、脱毛治療用薬物が前記ナノリポソームに封入され難く、体内に注入される場合に安定性が低くなることがあって好ましくない。また、200nmを超える場合にも、前記ナノリポソームの含まれた組成物が体内に注入される場合に安定性が低くなることがあって好ましくない。また、前記マイクロバブルは、1000〜2000nmの粒子サイズを有することができる。このため、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体は、約1100〜2200nmの粒子サイズを有することができる。
【0042】
本発明は、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体組成物を含有する脱毛改善または治療用組成物を提供することができる。前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体組成物は、男性ホルモンである5−α還元酵素を抑制してジヒドロテストステロン(DHT)の濃度を減少させることにより、脱毛の治療に有効である。
【0043】
本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体組成物の製造方法において、ナノリポソームを製造し、マイクロバブルを製造してこれを混合することにより、前記結合体を製造することができる。
【0044】
ナノリポソームの製造において、前記第1ステップのレシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質は、2:0.01〜0.5:0.01〜0.5のモル比で混合できる。このときの混合比から外れると、ナノリポソームを構成する脂質がうまく製造できない。
【0045】
第2ステップで、脱毛治療用薬物は0.01〜1000ng/mlの濃度で脂質フィルム組成物に添加できる。脱毛治療用薬物溶液の溶媒は、水またはアルコールであり、前記アルコールは、好ましくはエタノールまたはその水溶液であり得る。
【0046】
前記第3ステップで凍結し融解する過程は、1〜12回繰り返し行うことができる。脂質フィルム組成物を凍結し融解するステップを繰り返し行うことにより、より均一な大きさのナノリポソーム分散液が形成でき、ナノリポソームの薬物封入効率を高めることができる。ただし、12回を超える場合には、ナノリポソームの封入効率がむしろ減少するおそれがあるので、12回以内が望ましい。
【0047】
ナノリポソームとマイクロバブルとの結合のために、本発明でマイクロバブルを製造するとき、第Bステップで、マイクロバブルはグルコース溶液、グリセロール及びプロピレングリコールのうちの1種以上の溶液を用いて安定化した後、ナノリポソームと混合することができる。好ましくは、グルコース溶液を使用するのが良い。このとき、グルコース溶液は、1〜20%(w/v)になることができる。グルコースの濃度が20%(w/v)を超える場合には、粘性が生じてマイクロバブルの合成ができないことがある。
【0048】
また、本発明は、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体を含有する医薬組成物を提供することができるが、前記医薬組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形で製剤化して使用できる。前記医薬組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれる。このような固形製剤は、本発明の組成物に少なくとも一つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜることにより調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0049】
本発明の医薬組成物の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定の疾患または病理状態、疾患または病理状態の重症度、投与経路、及び処方者の判断によって異なる。これらの因子に基づいた投与量の決定は当業者のレベル内にあり、一般に、投与量は0.01mg/k/日乃至約2000mg/kg/日の範囲である。さらに好ましい投与量は、1mg/kg/日乃至500mg/kg/日である。投与は、1日1回投与することも、1日数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面でも、本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
本発明の医薬組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与できる。投与の全ての方式は予想できるが、例えば、皮膚塗布、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与できる。
【発明の効果】
【0051】
本発明は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)、デュタステリド(Dutasteride)などの脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物に関するものである。現在、脱毛治療剤として使用されているフィナステリドなどの経口投与剤は、口腔投与による様々な副作用が発生して頭皮塗布による薬物送達が最も好ましいが、頭皮塗布のみでは薬物自体が毛包細胞までうまく送達されないという欠点がある。この他に、皮膚外用剤として使用される脱毛治療用薬物においても各種副作用があり、その使用濃度をさらに下げなければならない必要性がある。
【0052】
したがって、送達支持体を活用してフィナステリドの薬物送達効率を高めることが重要である。本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体を用いる場合には、低い濃度で処理される脱毛治療用薬物の送達効率を増強させることができるため、男性型脱毛の治療を非常に効果的に行うことができる。
【0053】
韓国登録特許第10−1683463号には、マイクロバブルを用いた細胞内薬物送達体技術が開示されているが、これは、抗がん剤に適用することができる技術のみに制限されている。韓国登録特許第10−1054731号には、フィナステリドを含むナノ粒子とこれを含有した皮膚外用剤組成物が開示されているが、ナノリポソームの構造が本発明とは異なり、本発明は、上記の技術とは差別化された技術であることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】毛乳頭真皮細胞(dermal papilla cell、DPC)に本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体を送達して超音波を加えたとき、細胞膜に穿孔が生じ、マイクロバブルが崩壊しながらナノリポソームが細胞内に入ることを示す模式図である。
図2】左の写真は200nm以下のサイズを示すリポソームのCryo−EM分析イメージであり、右の写真はサイズ1〜2μmのバブルの光学顕微鏡分析イメージを示す。
図3】右の写真はナノリポソーム−マイクロバブル結合体(HTP)を介して細胞内に薬物(蛍光を含む)が浸透したことを示す写真であり、左の写真はこれに対する対照群処理細胞の写真である。このとき、細胞写真の上側写真はマイクロバブル(HTP)の超音波活性イメージを示す。
図4】左のグラフは3T3細胞とDPC細胞にそれぞれテストステロン(TS)を処理してDPCに細胞毒性があることを提示する結果であり、右のグラフはDPC細胞にHTPを単独で処理しても、またはHTP及びテストステロン(TS)を処理しても、細胞毒性が殆どないことを提示する結果である。
図5】マウスで脱毛を誘導し、本発明のナノリポソーム−マイクロバブル(HTP)をマウスに5回処理した後、発毛効果が現れるかを1週間隔で写真によって確認した結果である(対照群は薬物無処理群、TS:テストステロン、HTS:実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル、NL:比較例1のリポソーム)。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されることも可能である。むしろ、ここで紹介される内容が徹底かつ完全たるものとなるように、当業者に本発明の思想を十分に伝えるために提供するのである。
【0056】
<実施例1.ナノリポソーム−マイクロバブル結合体の製作>
実施例1−1.ナノリポソームの製作
レシチン(Lecithin、Sigma Aldrich)、コレステロール(Cholesterol、Sigma Aldrich)及びカチオン性リン脂質としてのDPPE(Sigma Aldrich)を2:0.1:0.05のモル比でクロロホルム(chloroform)で混ぜた後、回転濃縮器を活用して脂質フィルム(lipidfilm)化した。
【0057】
ここにフィナステリドを仕込み、超音波を加えながら混合した。液体窒素を活用して凍結し融解する過程(freeze thaw cycle)を5回繰り返し行い、その後、超音波(プローブ方式)処理してより小さなサイズの均一な状態のナノリポソーム組成物を製作した。
【0058】
その後、遠心分離方法で沈殿したナノリポソーム組成物(脂質の総量20.43mg)を回収して5%(w/v)グルコース水溶液に分散させた。一方、ナノリポソーム製造前のフィナステリド溶液とナノリポソームの製造後に残される溶液におけるフィナステリド濃度を確認してナノリポソーム内の薬物封入率を計算したところ、60%以上であることが確認された。
【0059】
実施例2−2.マイクロバブルの製作
両性リン脂質としてのDPPC(1,2−dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、Sigma Aldrich)15.4mg、コレステロール(Cholesterol、Sigma Aldrich)3.48mg、アニオン性リン脂質としてのDCP(dicetyl phosphate、Sigma−Aldrich)1mg、カチオン性リン脂質としてのDPPE(1,2−dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、Sigma Aldrich)1.2mg、及びジスルフィド基を有する脂質としてのDSPE−PEG−sPDP(1,2−distearoly−sn−phosphoethanolamine−N−[PDP(polyethyleneglycol)]、Avanti polar)5mgをクロロホルム(chloroform)1mLで混合した後、回転濃縮器を用いてマイクロバブルの合成のための脂質フィルム(lipid film)化した。
【0060】
その後、5%(w/v)グルコース水溶液1mlを入れ、超音波を加えて混合した。液体窒素を用いて凍結し融解する過程(freeze thaw cycle)を3回繰り返し行い、超音波(プローブ方式)処理した後、SFガスを充填して分散状態のマイクロバブル組成物を製造した。
【0061】
実施例2−3.ナノリポソーム−マイクロバブルの製作
実施例2−1で製造されたナノリポソーム(20.53mg/mL)1mLと実施例2−2のマイクロバブル(26.08mg/mL)0.5mLを混合(2:1の体積比)して、ナノリポソームとマイクロバブルがグルコース水溶液に分散した状態となるようにした。
【0062】
その後、装備(Tianjin Iris)を用いて15秒間強い振動効果[Mixing frequency:4500tr/mn(cpm;分あたりm送り量の単位)]を与え、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体を形成させた後、5%グルコース水溶液に分散した状態で冷蔵保管した。
【0063】
このように最終製造されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体を、以下「実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体」またはHTP(Hair loss therapeutic particle)という。
【0064】
<比較例1.ナノリポソーム>
実施例2−1に記載された方法でナノリポソームを製造して(マイクロバブル未結合)比較例1の組成物として使用した。
【0065】
<実験例1.ナノリポソーム−マイクロバブル結合体のサイズ及び表面電荷の確認>
実施例2−1と2−2で製造したナノリポソーム、マイクロバブルをイメージ化して図2に示した。図2の左側はナノリポソーム、右側はマイクロバブルを撮影した写真であって、それぞれ適切なサイズに製造されたことが分かる。
【0066】
また、このナノリポソームとマイクロバブルとを結合したナノリポソーム−マイクロバブル結合体のサイズをDLS(Dynamic Light Scattering)で測定したところ、平均サイズは1100nm前後と確認された。表面電荷は+2.25mVであった。比較例1(実施例2−1)のマイクロバブル結合体が付いていないナノリポソーム自体だけのサイズは98nmであり、その表面電荷は+1.75mVであった。毛乳頭真皮細胞内にナノリポソームを送達するためには、表面電荷値が正電荷であることが良いが、マイクロバブル結合体自体が−0.91mVであることが確認されたにも拘らず、本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体の表面電荷を下げずに、むしろさらに高い正電荷値を有することが分かる。このため、本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体が細胞送達用組成物としての利用に適することを判断することができる。
【0067】
<実験例2.細胞の生存及び浸透有無の確認>
実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体の毛乳頭真皮細胞への流入を確認するために、実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体をDPC細胞に2時間フィナステリドを基準に100ng/mlの濃度で処理した後、図3に共焦点蛍光顕微鏡写真を示した。このとき、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体の製造中にナノリポソーム脂質に蛍光体RITC(red)蛍光色素(dye)を導入し、これを確認した。
【0068】
図3において、青色はDNAの染色写真、赤色はRITCの蛍光写真であって、対照群では、赤色が全く現れないが、右側では細胞質内の赤色と核(DNA)内の青色がマージ(merge)されて現れる。よって、実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体処理により毛乳頭真皮細胞内にフィナステリドが封入されたナノリポソームがうまく注入されていることが分かる。
【0069】
一方、製造されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体(HTP)にマイクロバブルが完全に結合された状態であることを確認するために、超音波映像で確認したが、HTPの溶液にマイクロバブルによる褐色の帯が現れることが確認された(図3の上側写真)。
【0070】
<実験例3.細胞生存率の確認>
細胞生存率の確認は、WST−1アッセイ(EZ−cytox Cell Viability Assay Kit)によって行った。毛乳頭真皮細胞(DPC)と3T3線維芽細胞を96ウェルプレートに1x10/wellの密度で24時間培養した。ここにテストステロンが200μMで処理された培地で交換し、さらに24時間後、そのままWST−1試薬を添加した。WST−1試薬を培養液の10%仕込み、1時間後に460nmで吸光度を測定して細胞の生存及び増殖を対照群(非処理群)と比較した。細胞生存評価は、テストステロン処理後4日間、24時間の周期で測定した。
【0071】
その結果は図4の左側に示したが、DPC細胞は、3T3細胞に比べて、時間経過に伴って死滅程度が大幅に増加して、テストステロンの増加による脱毛過程を提示することができるモデルが十分に確立されたことが分かる。
【0072】
次に、同じ方法においてテストステロンの処理前、本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体(HTP)の処理後、テストステロンが200μMで処理された培地で交換し、以後の過程を同様にして細胞の状態を確認した。比較群には、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体(HTP)のみを単独処理した。
【0073】
このため、図4の右側のグラフを確認すると、このとき、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体(HTP)単独処理群でも、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体とテストステロンがすべて処理された群(TS+HTP)でも、毒性なしに細胞がよく育つのを示している。
【0074】
したがって、このような結果は、本発明の実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体内にフィナステリドがよく封入され、この薬物が持つ機能性を最適に発揮することができる状態であることを示し、また、前記結合体が毛乳頭細胞でテストステロンによるアポトーシスに起因する脱毛過程を効果的に抑制することができることを意味する。
【0075】
<実験例4.マウスモデルにおけるナノリポソーム−マイクロバブル結合体の脱毛抑制効果の確認>
6週齢のマウス(C57BL/6J)を動物用除毛器(philips製)と除毛クリーム(Veet製)を用いてマウスなどの毛を除毛した後、テストステロンをプロピレングリコールとエタノールの混合溶液(3:7(v:v))に溶かすが、30μg/mlの濃度で毎日塗布してヒトの脱毛と同様の環境に作った。
【0076】
この実験で、各実験群は下記のとおりである(テストステロンはいずれも皮膚塗布する)。
【0077】
(1)対照群(無処理群);
(2)テストステロン処理群;
(3)テストステロン処理後、実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体の皮膚塗布処理群;
(4)テストステロン処理後、市販のフィナステリド溶液の経口投与処理群;
(5)テストステロン処理後、市販のフィナステリド溶液の皮膚塗布処理群;
(6)テストステロン処理後、比較例1のナノリポソームの皮膚塗布処理群;
(7)実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル結合体の皮膚塗布処理群;
ナノリポソーム−マイクロバブル結合体(HTP)としては、ナノリポソームとマイクロバブルが2:1の割合で結合されて分散したものを使用した。これをフィナステリド総量で1μgずつマウスの除毛された背中全体にプラスチックスパチュラで200μkずつ塗布し、3分後、医療用超音波機器を用いて超音波にさらした。このとき、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体は、1日おきに5回処理した。同じ条件であるが、実施例2又は比較例1の溶液の代わりに市販のフィナステリド溶液を処理した群では、総フィナステリドの含有量を合わせた。
【0078】
市販のフィナステリド溶液が経口投与剤であるため、これを比較するための経口投与群には、塗布用量よりも10倍の用量を投与し、皮膚に塗布するのと投与時間及び回数を同一にした。
【0079】
これに対する結果は図5に示したが、図5において、対照群は薬物無処理群であり、各略語の中でも、TS:テストステロン、HTS:実施例2のナノリポソーム−マイクロバブル、NL:比較例1のリポソームを示す。
【0080】
図5の結果を参照すると、対照群(1)では、何らの処理もされていないため、時間の流れに沿って毛が自然に育ち、テストステロンのみを処理した群(2)では、毛が殆ど育っていない。
【0081】
一方、テストステロンの処理後、実施例2の組成物を処理した群(3)では、毛がよく育っていることを確認することができた。
【0082】
これとは異なり、テストステロンの処理後、市販のフィナステリド薬物を経口投与した群(4)または皮膚塗布した群(5)は、7週目に毛が育とうとすることが見えただけであった。
【0083】
テストステロンの処理後、マイクロバブルが結合されていない比較例1のリポソームを処理した群(6)では、テストステロンのみを処理した比較群のように毛が殆ど育っていないことが分かるが、これは、脱毛治療薬物がリポソームに封入されており、市販の薬物よりも体内送達力がむしろ低下するためであることが確認された。この結果から、リポソームがマイクロバブルを介して生体膜内に送達されるので薬物の送達過程が必須的であることを証明することができる。
【0084】
図5の写真上には示されていないが、実施例2の組成物(HTP)のみを処理した群も、対照群と同様に毛が育って特別な毒性などの副作用は示さないことが分かった。
【0085】
したがって、上述した結果は、本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体が男性型脱毛の治療に非常に効果的であることを提示する。
図1
図2
図3
図4
図5