【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体に関するものである。
【0013】
前記脱毛治療用薬物は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)及びデュタステリド(Dutasteride)よりなる群から1種以上選択されて含まれたものであり得る。
【0014】
また、前記脱毛治療用薬物は、2型5−α還元酵素の発現または活性を抑制してテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を阻害する効能、または毛乳頭真皮細胞の死滅を抑制する効能があるものであり得る。
【0015】
前記ナノリポソームは、レシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質を含むことができる。
【0016】
前記マイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質を含むことができる。
【0017】
前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体は、1100〜2100nmの粒子サイズを有することができる。
【0018】
本発明は、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体を含有する脱毛の改善または治療用組成物を提供することができる。
【0019】
また、本発明は、下記の毛乳頭真皮細胞を選択的に認識することができるナノリポソーム−マイクロバブル結合体の製造方法を提供する。より好ましくは、ナノリポソームとマイクロバブルをそれぞれ製造した後、これを混合してナノリポソーム−マイクロバブル結合体を製造することができる。
【0020】
前記ナノリポソームは、下記の方法で製造することができる。
【0021】
好ましくは、レシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質をクロロホルムで混合して脂質フィルム組成物を製造する第1ステップと、
前記脂質フィルム組成物に脱毛治療用薬物溶液を入れて超音波処理する第2ステップと、
前記超音波処理された脂質フィルム組成物を凍結し、融解した後、再び超音波処理する第3ステップと、
前記第3ステップで超音波処理された脂質フィルム組成物を遠心分離し、沈殿物状態のナノリポソームを回収する第4ステップとを含んで、前記ナノリポソームを製造することができる。
【0022】
また、前記マイクロバブルは、下記の方法で製造することができる。
【0023】
両性リン脂質、コレステロール、アニオン性脂質、アミン基を有する脂質、及びジスルフィドを有する脂質をクロロホルムで混合して脂質フィルム組成物を製造する第Aステップと、
前記第Aステップにグルコース溶液を入れて超音波処理する第Bステップと、
前記第Bステップで超音波処理された脂質フィルム組成物を凍結し、融解した後、再び超音波処理する第Cステップと、
前記第Cステップで超音波処理された脂質フィルム組成物に疎水性気体を注入してマイクロバブルを製造する第Dステップと、を含んで、前記マイクロバブルを製造することができる。
【0024】
このように製造されたマイクロバブルにナノリポソームを混合してナノリポソーム−マイクロバブル結合体を形成することができる。
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本発明は、脱毛治療用薬物が封入されたナノリポソーム−マイクロバブル結合体及びこれを含有する脱毛改善または治療用組成物に関する。
【0027】
前記脱毛治療用薬物は、フィナステリド(finasterid)、ミノキシジル(Minoxidil)、デュタステリド(Dutasteride)などから選択できるが、これらの薬物と同じメカニズムの脱毛治療用薬物であれば利用可能である。また、前記脱毛治療用薬物は、好ましくは、2型5−α還元酵素の発現または活性を抑制してテストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を阻害する効能があるものであればいずれも選択できる。
【0028】
前記ナノリポソームは、レシチン(lecithin、α−phosphatidylcholin)、カチオン性リン脂質及びコレステロールを含むことができ、これにより、前記レシチン、カチオン性リン脂質及びコレステロールがナノリポソームを形成する膜を成すことができる。
【0029】
レシチンは、動/植物界に広く分布しており、生体適合性に優れるうえ、その安定性においても既に検証されて食品と製薬の送達体技術に広く活用されている。また、ナノリポソームのサイズ調節及び変形を容易にする材料として使用できる。
【0030】
前記カチオン性リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)よりなる群から1種以上選択できる。好ましくは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)を使用するのが良い。
【0031】
本発明のナノリポソームは、中性の水、細胞培養液、血液などで数時間以上安定的に分散できる。
【0032】
本発明のマイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質を含むことができ、これらの混合物からなる脂質フィルム組成物に投入された疎水性気体を介してバブルを形成する膜をなすことにより、マイクロバブルが製造される。
【0033】
前記両性リン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−distearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DSPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DMPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dioleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DOPC)、1−ミリストイル−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1−myristoyl−2−palmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、MPPC)、及び1−ミリストイル−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1−myristoyl−2−stearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、MSPC)よりなる群の中から選択できる。好ましくは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2−dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、DPPC)を使用するのが良い。
【0034】
前記アニオン性リン脂質は、ジセチルホスフェート(dicetyl phosphate、DCP)、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dierucoyl−sn−glycero−3−phosphate、DEPA)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dilauroyl−sn−glycero−3−phosphate、DLPA)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphate、DMPA)、及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2−dioleoyl−sn−glycero−3−phosphate、DOPA)よりなる群から1種以上選択できる。好ましくは、ジセチルホスフェート(DCP)を使用するのが良い。
【0035】
前記カチオン性リン脂質としては、ナノリポソームの製造時に使用するものを同一に使用することができ、より詳しくは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)よりなる群から1種以上選択できる。好ましくは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)を使用するのが良い。
【0036】
前記ジスルフィド基を有する脂質としては、DSPE−PEG−sPDPとも呼ばれる1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ポリ(エチレングリコール)−2000−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートを使用するのが良い。
【0037】
*DSPE−PEG−sPDP:1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ポリ(エチレングリコール)−2000−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート
DSPE−PEG−sPDP脂質は、下記(化学式1)の化学構造を有する脂質である。
【0038】
【化1】
マイクロバブルの製造のための両性リン脂質:アニオン性リン脂質:コレステロール:カチオン性リン脂質:ジスルフィド基を有する脂質の混合割合は、1〜3mM:0.1〜0.3mM:0.5〜2mM:0.1〜0.3mM:0.1〜0.3mMであり得る。このとき、両性リン脂質:アニオン性リン脂質:コレステロール:カチオン性リン脂質:ジスルフィド基を有する脂質として、DPPC:DCP:コレステロール:DPPE:sPDPが使用でき、好ましくは、DPPC:DCP:コレステロール:DPPE:sPDPが2.0mM:0.18mM:0.9mM:0.17mM:0.17mMで混合できる。
【0039】
マイクロバブル内の前記DSPE−PEG−sPDP脂質は、ナノリポソームと結合するときに架橋剤になり、ナノリポソーム−マイクロバブル結合体に結合できる。
【0040】
前記マイクロバブルは、両性リン脂質、アニオン性リン脂質、コレステロール、カチオン性リン脂質、及びジスルフィド基を有する脂質の混合物のバブリングにより誘導されたものであり得る。また、前記マイクロバブルの内部は、SF
6、CO
2、CF
4及びC
3F
8から選択される疎水性気体が内包されたものであり得る。前記疎水性気体は、好ましくはSF
6であることがさらに良い。
【0041】
前記ナノリポソームは、100〜200nmの粒子サイズを有することができる。ナノリポソームのサイズが100nm未満である場合には、脱毛治療用薬物が前記ナノリポソームに封入され難く、体内に注入される場合に安定性が低くなることがあって好ましくない。また、200nmを超える場合にも、前記ナノリポソームの含まれた組成物が体内に注入される場合に安定性が低くなることがあって好ましくない。また、前記マイクロバブルは、1000〜2000nmの粒子サイズを有することができる。このため、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体は、約1100〜2200nmの粒子サイズを有することができる。
【0042】
本発明は、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体組成物を含有する脱毛改善または治療用組成物を提供することができる。前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体組成物は、男性ホルモンである5−α還元酵素を抑制してジヒドロテストステロン(DHT)の濃度を減少させることにより、脱毛の治療に有効である。
【0043】
本発明のナノリポソーム−マイクロバブル結合体組成物の製造方法において、ナノリポソームを製造し、マイクロバブルを製造してこれを混合することにより、前記結合体を製造することができる。
【0044】
ナノリポソームの製造において、前記第1ステップのレシチン、コレステロール及びカチオン性リン脂質は、2:0.01〜0.5:0.01〜0.5のモル比で混合できる。このときの混合比から外れると、ナノリポソームを構成する脂質がうまく製造できない。
【0045】
第2ステップで、脱毛治療用薬物は0.01〜1000ng/mlの濃度で脂質フィルム組成物に添加できる。脱毛治療用薬物溶液の溶媒は、水またはアルコールであり、前記アルコールは、好ましくはエタノールまたはその水溶液であり得る。
【0046】
前記第3ステップで凍結し融解する過程は、1〜12回繰り返し行うことができる。脂質フィルム組成物を凍結し融解するステップを繰り返し行うことにより、より均一な大きさのナノリポソーム分散液が形成でき、ナノリポソームの薬物封入効率を高めることができる。ただし、12回を超える場合には、ナノリポソームの封入効率がむしろ減少するおそれがあるので、12回以内が望ましい。
【0047】
ナノリポソームとマイクロバブルとの結合のために、本発明でマイクロバブルを製造するとき、第Bステップで、マイクロバブルはグルコース溶液、グリセロール及びプロピレングリコールのうちの1種以上の溶液を用いて安定化した後、ナノリポソームと混合することができる。好ましくは、グルコース溶液を使用するのが良い。このとき、グルコース溶液は、1〜20%(w/v)になることができる。グルコースの濃度が20%(w/v)を超える場合には、粘性が生じてマイクロバブルの合成ができないことがある。
【0048】
また、本発明は、前記ナノリポソーム−マイクロバブル結合体を含有する医薬組成物を提供することができるが、前記医薬組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形で製剤化して使用できる。前記医薬組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれる。このような固形製剤は、本発明の組成物に少なくとも一つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜることにより調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0049】
本発明の医薬組成物の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定の疾患または病理状態、疾患または病理状態の重症度、投与経路、及び処方者の判断によって異なる。これらの因子に基づいた投与量の決定は当業者のレベル内にあり、一般に、投与量は0.01mg/k/日乃至約2000mg/kg/日の範囲である。さらに好ましい投与量は、1mg/kg/日乃至500mg/kg/日である。投与は、1日1回投与することも、1日数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面でも、本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
本発明の医薬組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与できる。投与の全ての方式は予想できるが、例えば、皮膚塗布、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与できる。