(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記光照射部から略十字形状の光である逆十字パターンを照射して、前記逆十字パターンと前記十字パターンとが重なった画像を前記カメラで読み取ることで前記読取部の中心位置を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
前記制御部は、前記初期状態で前記補正用基板を読み取った結果と、前記補正用基板を略180度回転させた状態で前記補正用基板を読み取った結果とが一致し、前記補正用基板を略90度回転させた状態で前記補正用基板を読み取った結果と、前記補正用基板を略270度回転させた状態で前記補正用基板を読み取った結果とが一致するような補正値を生成し、当該生成された補正値を用いて前記描画情報を補正する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の露光装置。
前記制御部は、前記補正用基板が前記マスク保持部の略中央に載置された第1状態と、前記第1状態から前記補正用基板の略半分だけ前記第2方向に前記補正用基板が移動された第2状態とで前記補正用基板を読み取る
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の露光装置。
前記テンプレートには、前記第1方向に沿った第1線が、当該第1線の幅と略同一の間隔で配置された第1パターンが形成された第1領域と、前記第2方向に沿った第2線が、当該第2線の幅と略同一の間隔で配置された第2パターンが形成された第2領域と、が前記第1方向に隣接して形成され、
前記光照射部は、前記第1方向に沿った縞状の第3パターンであって、前記第1パターンより縞の幅が広い又は幅が狭い第3パターンの光と、前記第2方向に沿った縞状の第4パターンであって、前記第2パターンより縞の幅が広い又は幅が狭い第4パターンの光と、を照射し、
前記カメラは、前記第1パターンと前記第3パターンとが重なることで形成されたモアレ縞である第1モアレ縞と、前記第2パターンと前記第4パターンとが重なることで形成されたモアレ縞である第2モアレ縞とを読み取り、
前記制御部は、前記第1モアレ縞に基づいて前記光照射部の前記第2方向の位置ずれを取得し、前記第2モアレ縞に基づいて前記光照射部の前記第1方向の位置ずれを取得する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の露光装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、重複する部分については説明を省略する。
【0019】
本発明における露光装置とは、略水平方向に保持した感光性基板(例えば、ガラス基板)を走査方向に移動させながらレーザ等の光を照射してフォトマスクを生成するマスク製造装置である。感光性基板としては、例えば、熱膨張率が非常に小さい(例えば、約5.5×10
−7/K程度)石英ガラスが用いられる。
【0020】
露光装置により生成されるフォトマスクは、例えば液晶表示装置用の基板を製造するために用いられる露光用マスクである。フォトマスクは、一辺が例えば1mを超える(例えば、1400mm×1220mm)大型の略矩形形状の基板上に、1個または複数個のイメージデバイス用転写パターンが形成されたものである。以下、加工前、加工中及び加工後の感光性基板(フォトマスク)を包括する概念として、マスクMという用語を使用する。
【0021】
ただし、本発明の露光装置は、マスク製造装置に限定されない。本発明の露光装置は、略水平方向に保持した基板を走査方向に移動させながら光(レーザ、UV、偏光光等を含む)を照射する様々な装置を含む概念である。
【0022】
図1は、第1の実施の形態に係る露光装置1の概略を示す斜視図である。露光装置1は、主として、定盤11と、板状部12と、レール13、14と、枠体15と、マスク保持部20と、光照射部30と、測定部40(
図9参照)と、レーザ干渉計50と、読取部60と、を有する。なお、
図1においては、一部の構成について図示を省略している。また、露光装置1は、装置全体を覆う図示しない温度調整部により、一定温度に保たれている。
【0023】
定盤11は、略直方体形状(厚板状)の部材であり、例えば、石(例えば、花崗岩)や低膨張率の鋳物(例えば、ニッケル系の合金)で形成される。定盤11は、上側(+z側)に略水平(xy平面と略平行)な上面11aを有する。
【0024】
定盤11は、設置面(例えば、床)上に載置された複数の除振台(図示せず)の上に載置される。これにより、定盤11が除振台を介して設置面上に載置される。除振台はすでに公知であるため、詳細な説明を省略する。なお、除振台は必須ではない。定盤11の+x側には、マスクMをマスク保持部20に設置するローダ(図示せず)が設けられる。
【0025】
レール13は、セラミック製の細長い板状の部材であり、定盤11の上面11aに、長手方向がx方向に沿うように固定される。3本のレール13は、高さ(z方向の位置)が略同一であり、上面が高精度及び高平坦度で形成される。
【0026】
ローダ側(+x側)のレール13は、端が上面11aの端部に設けられ、反ローダ側(−x側)のレール13は、端が上面11aの端部より内側に設けられる。
【0027】
板状部12は、レール13の上に載置される。板状部12は、セラミック製の略板状の部材であり、全体として略矩形形状である。板状部12の下面(−z側の面)には、長手方向がx方向に沿うようにガイド部(図示せず)が設けられる。これにより、板状部12がx方向以外に移動しないように板状部12の移動方向が規制される。
【0028】
板状部12の上面12aには、レール14が設けられる。レール14は、長手方向がy方向に沿うように固定される。レール14は、高さが略同一であり、上面が高精度及び高平坦度で形成される。
【0029】
マスク保持部20は、平面視略矩形形状の略板状であり、熱膨張係数が略0.5〜1×10−7/Kの低膨張性セラミックを用いて形成される。これにより、マスク保持部20の変形を防止することができる。なお、マスク保持部20は、熱膨張係数が略5×10−8/Kの超低膨張性ガラスセラミックを用いて形成することもできる。この場合には、制御しきれない温度変化が発生したとしても、マスク保持部20の変形を確実に防止することができる。なお、マスク保持部20をマスクMと同様に伸び縮みする材料で形成してもよい。
【0030】
マスク保持部20は、レール14の上に載置される。言い換えれば、マスク保持部20は、板状部12及びレール13、14を介して上面11aに設けられる。
【0031】
マスク保持部20の下面には、長手方向がy方向に沿うようにガイド部(図示せず)が設けられる。これにより、マスク保持部20、すなわち板状部12がy方向以外に移動しないようにマスク保持部20の移動方向が規制される。
【0032】
このように、マスク保持部20(板状部12)は、レール13に沿ってx方向に移動可能に設けられ、マスク保持部20は、レール14に沿ってy方向に移動可能に設けられる。
【0033】
マスク保持部20は、略水平な上面20aを有する。上面20aには、マスクM(図示省略)が載置される。マスク保持部20の詳細については後に詳述する。
【0034】
露光装置1は、図示しない駆動部71、72(
図1では図示せず、
図10参照)を有する。駆動部71、72は、例えばリニアモータである。駆動部71はマスク保持部20(板状部12)をレール13に沿ってx方向に移動させ、駆動部72はマスク保持部20をレール14に沿ってy方向に移動させる。駆動部71、72が板状部12やマスク保持部20を移動させる方法は、既に公知の様々な方法を用いることができる。
【0035】
測定部40(
図1では図示省略、
図9参照)は、例えばリニアエンコーダであり、マスク保持部20の位置を測定する。測定部40は、位置測定部41、42を有する。測定部40については後に詳述する、
【0036】
定盤11には、枠体15が設けられる。枠体15は、マスク保持部20の上方(+z方向)に光照射部30を保持する。また、枠体15は、読取部60を保持する。
【0037】
光照射部30は、マスクMに光(本実施の形態では、レーザ光)を照射する。光照射部30は、y方向に沿って一定間隔(例えば、略200mmおき)で設けられる。本実施の形態では、7個の光照射部30a、光照射部30b、光照射部30c、光照射部30d、光照射部30e、光照射部30f、光照射部30gを有する。光照射部30a〜30gは、それぞれ図示しない駆動部により、z方向に移動可能に設けられる。駆動部は、光照射部30a〜30gの焦点位置がマスクMの上面に合うように、光照射部30a〜30g全体を10mm程度の範囲で動かす粗動軸(図示せず)と、光照射部30a〜30gを30μm程度の範囲で微動させる微動軸(図示せず)と、を有する。光照射部30については後に詳述する。
【0038】
読取部60は、マスクMに形成されたパターンや、テンプレート25に形成されたパターンを読み取る。読取部60は、7個の読取部60a、読取部60b、読取部60c、読取部60d、読取部60e、読取部60f、読取部60gを有する。読取部60a〜60gは、それぞれ光照射部30a〜30gに隣接して設けられる。読取部60については後に詳述する。
【0039】
なお、本実施の形態では、読取部60と光照射部30とが隣接するように、光照射部30及び読取部60が枠体15に設けられるが、読取部60が光照射部30に設けられてもよい。
【0040】
レーザ干渉計50は、レーザ干渉計51、52を有する。枠体15の−y側に設けられた柱には、レーザ干渉計51が設けられる。また、定盤11の+x側の側面には、レーザ干渉計52(
図1では図示省略)が設けられる。レーザ干渉計50については、後に詳述する。
【0041】
次に、マスク保持部20について説明する。
図2は、マスク保持部20の概略を示す斜視図である。
【0042】
マスク保持部20は、上面20aと隣接する側面20b、20c、20dを有する。側面20dは側面20bの反対側の面である。側面20bは+x側の側面であり、側面20cは−y側の側面であり、側面20dは−x側の側面である。側面20b、20dは、x方向と略直交しており(y方向に略沿っており)、側面20cはx方向に略沿っている。側面20b、20c、20dは、z方向と略平行である。
【0043】
上面20aには、バーミラー21、22、23が設けられる。バーミラー21、22は、側面20bに沿って設けられ、バーミラー23は、−y側の側面20cに沿って設けられる。
【0044】
側面20dには、テンプレート保持部24が設けられる。テンプレート保持部24には、テンプレート25が設けられる。
【0045】
図3は、テンプレート保持部24及びテンプレート25について説明する図である。テンプレート保持部24は、透明な材料(例えば、石英ガラス)で形成され、z方向と略平行方向に移動可能に設けられる。テンプレート保持部24を石英ガラスとすることで、テンプレート25の熱膨張による歪みを最小とすることができる。
【0046】
テンプレート保持部24の上側の面24aには、テンプレート25が設けられる凹部24bが形成される。凹部24bとテンプレート25との間には、弾性を有する透明な樹脂材料26が充填される。これにより、テンプレート25を凹部24bに接着しつつ、テンプレート保持部24のz方向の移動や温度等の変化による歪みを防ぐことができる。樹脂材料26が充填される空間の厚さは、
図3における左右方向、高さ方向ともに略同一とする。本実施の形態では、テンプレート25の移動による影響よりもテンプレート25の変形による影響の方がはるかに大きいため、接着に樹脂材料26を用いることでテンプレート25の変形を確実に防止する。
【0047】
マスク保持部20には、駆動部73(
図3では図示せず、
図10参照)が設けられる。駆動部73は、テンプレート保持部24をz方向(
図3の矢印方向)に移動させる。また、テンプレート保持部24は、側面20dに対し、図示しないマグネット吸着又は真空吸着機構、及び摩擦力により固定される。駆動部73や真空吸着機構は、既に公知の様々な方法を用いることができる。
【0048】
駆動部73は、マスク保持部20の上面20aに載置されたマスクMの上面Maと、テンプレート25の上面25aとが略一致する(ここで略一致とは、略±30μm以内である)ように、テンプレート保持部24を側面20dと略平行方向に移動させる。テンプレート保持部24は、マスクMの種類による厚さの差異分(10mm程度)だけz方向に移動可能に設けられることが望ましい。
【0049】
テンプレート25は、上面25aが上側に露出するようにテンプレート保持部24に設けられる。
図4は、テンプレート25の上面25aの部分拡大図である。
【0050】
上面25aには、x方向に略沿った線L1が、線L1の幅と略同一の間隔で配置された縞状のパターンP1が形成された領域R1と、y方向に略沿った線L2が、線L2の幅と略同一の間隔で配置された縞状のパターンP2が形成された領域R2と、が形成される。領域R1と領域R2とは、x方向に隣接して形成され、x方向に沿ってみたときに領域R1の両側に領域R2が設けられる。領域R1、R2のx方向の長さは略300μmである。
【0051】
領域R1は、テンプレート25のx方向略中央に設けられる。テンプレート25のx方向略中央は、仮にテンプレート25に曲がりが発生したとしても延び縮みの無い(又は最も少ない)部分である。このように領域R1、R2を配置することで、モアレ縞を撮像する(後に詳述)処理をマスク保持部20が静止した状態で行う場合においても、+x側の領域R2と−x側の領域R2とで補完することで光照射部30の対物レンズ32a〜32g(
図6参照)の対称歪み成分をキャンセルすることができる。
【0052】
パターンP1は、光照射部30a〜30gのy方向の位置を決定するためのパターンであり、パターンP2は、光照射部30a〜30gからマスクMへ光を照射するタイミングを決定するためのパターンである。線L1、L2の幅l1、l2は略1〜2μmである。
【0053】
なお、本実施の形態では、略1〜2μmの幅及び間隔を有する線L1、L2を描画したが、線L1、L2の幅及び間隔を略1μmとし、略2μmの幅及び間隔を有する線(x方向に略沿った線及びy方向に略沿った線)を更に描画するようにしてもよい。
【0054】
パターンP1、P2の外側には、十字パターンP5が形成される。十字パターンP5は、光照射部30a〜30gのy方向の間隔と略同一の間隔で形成される。
【0055】
テンプレート25は、
図5に示すように、1枚のマスク(感光性基板)から複数作成される。
図5は、1枚のマスクからテンプレート25が複数作成される様子を模式的に示す図であり、(A)が平面図であり、(B)が側面図である。マスクは、例えばカラーフィルタ用の特別面取り品(例えば1500mm×1220mm程度の大きさ、厚さが13mm程度)である。マスク上に帯状の領域R1、R2を複数形成し、これを中心とした所定の幅(ここでは略55mm)でマスクを切断し、切断面を仕上げる(ここでは、幅が略50mm程度まで研磨する)ことでテンプレート25が形成される。外周に沿って幅w1が6.3mm〜8mm程度、高さh1が4.5mm〜6mm程度の面取りが形成されているため、外周に沿って略15mm程度の領域R5はパターンP1、P2等を描画しない。テンプレート25はマスクMと同じ材質であるため、たとえ環境温度が変化してマスクMが熱膨張又は熱収縮したとしても、テンプレート25も同じ量だけ膨張又は収縮するため、温度変化による不具合を最小限にすることができる。
【0056】
図3の説明に戻る。
図3の二点鎖線で示すように、テンプレート25には光照射部30(
図3では図示省略)から光が照射され、テンプレート保持部24、テンプレート25等を通過した光は、カメラ18に入射する。
【0057】
カメラ18は、レール13(
図3では図示省略)に設けられ、レール13に沿ってx方向に移動可能である。カメラ18a〜18gは、それぞれ図示しない駆動部により、光照射部30a〜30gの−z側に位置するようにx方向に移動される。
【0058】
カメラ18は、z方向に移動可能に設けられ、図示しない駆動部によりz方向に駆動される。カメラ18は、y方向に沿って7個(カメラ18a〜18g、
図12参照)設けられる。
【0059】
カメラ18は、CCD、CMOS等の撮像素子18mと、鏡筒18nと、を有する。撮像素子18mは、テンプレート25等を通過した光を受光する。カメラ18の視野は略1mm×1.2mm程度であり、撮像素子18mにはパターンP1、P2及び十字パターンP5が全て結像される。鏡筒18nの内部には、対物レンズ18oが設けられる。対物レンズ18oは、鏡筒18nの上端近傍に設けられ、テンプレート保持部24、テンプレート25及び樹脂材料26を通過した光束を集光する。鏡筒18nとテンプレート保持部24の下側の面との間には、隙間が形成される。
【0060】
カメラ18は、高性能である必要はない。例えば、光学歪の有無は問わず、撮像素子18mの解像度が低くてもよい。これについては後に詳述する。
【0061】
次に、光照射部30について説明する。
図6は、光照射部30aの概略を示す要部透視図である。光照射部30aは、主として、DMD31aと、対物レンズ32aと、光源部33aと、AF処理部34aと、を有する。光照射部30b〜光照射部30gは、光照射部30aと同一の構成であり、それぞれDMD31b〜31gと、対物レンズ32b〜32gと、光源部33b〜33gと、AF処理部34b〜34gと、を有する。以下、光照射部30b〜光照射部30gについての説明を省略し、光照射部30aについて説明する。
【0062】
DMD31aは、デジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device、DMD)であり、面状のレーザ光が照射可能である。DMD31aは、多数の可動式のマイクロミラー(図示省略)を有し、1枚のマイクロミラーから1画素分の光が照射される。マイクロミラーは、大きさが略10μmであり、2次元状に配置されている。DMD31aには光源部33a(後に詳述)から光が照射され、光は各マイクロミラーで反射される。マイクロミラーは、その対角線と略平行な軸を中心に回転可能であり、ON(マスクMに向けて光を反射させる)とOFF(マスクMに向けて光を反射させない)との切り替えが可能である。DMD31aはすでに公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0063】
対物レンズ32aは、DMD31aの各マイクロミラーで反射されたレーザ光をマスクMの表面に結像させる。描画時には、光照射部30a〜光照射部30gのそれぞれから光が照射され、この光がマスクM上で結像することにより、マスクMにパターンが描画される。
【0064】
光源部33aは、主として、光源331と、レンズ332と、フライアイレンズ333と、レンズ334、335と、ミラー336と、を有する。光源331は、例えばレーザダイオードであり、光源331から出射された光は、光ファイバ等を介してレンズ332に導かれる。
【0065】
光は、レンズ332からフライアイレンズ333に導かれる。フライアイレンズ333は複数枚のレンズ(図示せず)を2次元状に配置したものであり、フライアイレンズ333において多数の点光源が作られる。フライアイレンズ333を通過した光は、レンズ334、335(例えば、コンデンサレンズ)を通って平行光となり、ミラー336でDMD31aに向けて反射される。
【0066】
AF処理部34aは、マスクMへ照射される光の焦点をマスクMに合わせるものであり、主として、AF用光源341と、コリメータレンズ342と、AF用シリンドリカルレンズ343、ペンタプリズム344、345と、レンズ346と、AFセンサ347、348と、を有する。AF用光源341から照射された光はコリメータレンズ342で平行光となり、AF用シリンドリカルレンズ343で線状の光となり、ペンタプリズム344で反射されてマスクMの表面に結像する。マスクMで反射した光は、ペンタプリズム345で反射され、レンズ346で集光されて、AFセンサ347、348に入射する。ペンタプリズム344、345は、略97度の曲げ角度で光を曲げる。なお、ペンタプリズム344、345の代わりにミラーを用いてもよいが、ミラーの角度ズレにより焦点ボケを起こすため、ペンタプリズムを用いることが望ましい。AF処理部34aは、AFセンサ347、348で受光された結果に基づいて合焦位置を求めるオートフォーカス処理を行う。なお、このような光テコ式によるオートフォーカス処理はすでに公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0067】
次に、読取部60について説明する。読取部60a〜読取部60gは、同一の構成であるため、以下、読取部60aについて説明する。
【0068】
図7は、読取部60aの概略を示す斜視図であり、要部を透視した図である。読取部60aは、高倍率顕微鏡光学系であり、主として、対物レンズ601と、対物レンズ601へ光(ここでは、可視光)を照射する光源ユニット602と、チタン、ジルコニア等の低熱伝導体で形成された鏡筒603と、鏡筒603の内部に設けられたチューブレンズ604と、光源ユニット602からの光を透過させると共に、対物レンズ601から導かれた光を反射するハーフミラー605と、を有する顕微鏡と、顕微鏡により取得されたパターンを結像するカメラ606と、を有する。
【0069】
光源ユニット602は、可視光線(例えば、波長が略450〜600nmの光)を照射する部材であり、面光源状の光を照射する。光源ユニット602は、遠方に設置された光源621と、光源621からの光を導く光バンドルファイバ622と、光ファイバの端面近傍に設置された拡散板623と、拡散板623に隣接して設けられるコリメータレンズ624と、を有する。
【0070】
光源621は、例えば白色LEDであり、可視光域の光を照射する。光源621は発熱するため、光源621は読取部60aから離れた位置に設けられる。光源621から照射された光は、光バンドルファイバ622を用いて導光される。拡散板623は、光バンドルファイバ622により導光されて、光バンドルファイバ622の端面から放射される光を広げ均一に変換した後、コリメータレンズ624は、その光を対物レンズ601に導く。
【0071】
光源ユニット602から照射された光は、対物レンズ601を通り、パターンP等で反射して、再び対物レンズ601へ導かれる。対物レンズ601は、倍率が略100倍の高倍率、開口数(NA、numerical aperture)が略0.8、作動距離が略2mmの特性を有する可視光レンズである。チューブレンズ604は、無限遠補正された対物レンズ601からの光を結像させるレンズであり、焦点距離が略200mmである。
【0072】
カメラ606は、解像度がUXGA(1600×1200画素)程度であり、大きさが2/3インチ程度であり、消費電力が3W程度である。カメラ606は、マスクM(
図9では図示省略)に形成されたパターンPの像やテンプレート25のパターンP1、P2、十字パターンP5の像を取得する。カメラ606は、水冷用ウオータージャケットで囲まれている。カメラ606は、制御部151a(
図12参照)により、超低速度スキャンが可能であり、したがってマスクMに描画された細かいパターンを正確に読み取ることができる。
【0073】
なお
図7では、光源621から照射された光が光バンドルファイバ622を介して拡散板623へ導光されたが、光バンドルファイバ622は必須ではない。例えば光源621を鏡筒603近傍に設け、光源621から直接対物レンズ601へ光が照射されてもよい。この場合には、光源601及びカメラ606を水冷用ウオータージャケットで囲むようにすればよい。
【0074】
図8は、光照射部30と読取部60との位置関係を模式的に示す図である。
図8は、マスク保持部20の上面20aに光照射部30及び読取部60を投影したときの様子を示す。光照射部30a〜30gの対物レンズ32a〜32gは、y方向に沿って設けられる。また、対物レンズ32a〜32gに隣接して、AF処理部34a〜34gのAF用光源341及びAFセンサ347、348がそれぞれ設けられる。
【0075】
また、保持板15aには、対物レンズ32a〜32gに隣接して、それぞれ読取部60a〜読取部60gの対物レンズ601が設けられる。本来であれば光照射部30の対物レンズ32a〜32gの位置と、読取部60の対物レンズ601の位置とを一致させたいが、光照射部30の描画性能の向上のためには、光照射部30に読取部60の機能を含ませることができず、光照射部30と読取部60とを別々に設けなければならない。したがって、対物レンズ601と対物レンズ32a〜32gとはできるだけ近い位置、例えば対物レンズ32a〜32gに隣接する位置に設けることが望ましい。
【0076】
対物レンズ601と対物レンズ32a〜32gとは、一体の機構で保持することが望ましい。例えば、対物レンズ601として第1対物レンズと第2対物レンズ(結像レンズ)とを有する無限遠補正対物レンズを用い、軽い第1対物レンズのみを対物レンズ32a〜32gと一体化し、第1対物レンズと対物レンズ32a〜32gとが共に移動するようにすればよい。第1対物レンズと第2対物レンズとの間は平行光線であるため、第1対物レンズのみがz方向に移動しても結像条件は変化せず、読取部60の機能に問題は生じない。これにより、重い読取部60全体をz方向に移動しなくても済む。
【0077】
AF用光源341と、AFセンサ347、348と、対物レンズ601とは、平面視における位置が重ならないように配置される。
【0078】
なお
図8では、対物レンズ32a〜32gの中心と対物レンズ601の中心とがy方向にずれている(yd>0)が、対物レンズ32a〜32gの中心と対物レンズ601の中心とのy方向の位置を合わせる(yd=0)ようにしてもよい。この場合には、AF用光源341及びAFセンサ347、348の位置をそれぞれ
図8に示す状態から反時計方向に回せばよい。
【0079】
図9は、測定部40及びレーザ干渉計50がマスク保持部20の位置を測定する様子を示す概略図である。なお、
図9では、レール13、14の一部のみ図示している。また、
図9では、光照射部30a、30gのみ図示し、光照射部30b〜30fについては図示を省略する。
【0080】
位置測定部41、42は、リニアスケールによる位置測定部であり、それぞれ、スケール41a、42aと、検出ヘッド41b、42bと、を有する。
【0081】
スケール41aは、+y側のレール13の+y側の端面及び−y側のレール13の−y側の端面に設けられる。検出ヘッド41bは、板状部12(
図6では図示省略)の+y側及び−y側の端面に設けられる。
図9では、+y側のスケール41a及び検出ヘッド41bについての図示を省略する。
【0082】
スケール42aは、+x側のレール14の+x側の端面及び−x側のレール13の−x側の端面に設けられる。検出ヘッド42bは、マスク保持部20の+x側及び−x側の端面に設けられる。
図9では、−x側のスケール42a及び検出ヘッド42bについての図示を省略する。
【0083】
スケール41a、42aは、例えばレーザホログラムスケールであり、0.512μmピッチでメモリが形成されている。検出ヘッド41b、42bは、光(例えば、レーザ光)を照射し、スケール41a、42aで反射された光を取得し、これにより発生する信号を512等分して1nmを得、これにより発生する信号を5120等分して0.1nmを得る。位置測定部41、42はすでに公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0084】
光照射部30aには、xz平面と略平行な反射面を有するミラー35aが設けられる。光照射部30gには、xz平面と略平行な反射面を有するミラー35b、35cが設けられる。ミラー35a、35b、35cは、x方向の位置が重ならないように設けられる。
【0085】
光照射部30aには、yz平面と略平行な反射面を有するミラー36aが設けられる。光照射部30gには、yz平面と略平行な反射面を有するミラー36gが設けられる。
【0086】
レーザ干渉計51、52は、4本のレーザ光を照射する。レーザ干渉計51は、レーザ干渉計51a、51b、51cを有する。レーザ干渉計52は、レーザ干渉計52a、52gを有する。
【0087】
図9において、レーザ光の経路を2点鎖線で示す。レーザ干渉計51a、51b、51cから照射される光のうちの2本は、バーミラー23で反射されて、その反射光がレーザ干渉計51a、51b、51cで受光される。
【0088】
レーザ干渉計51aから照射される光のうちの残りの2本はミラー35aで反射して、その反射光がレーザ干渉計51aで受光される。レーザ干渉計51bから照射される光のうちの残りの2本はミラー35bで反射して、その反射光がレーザ干渉計51bで受光される。レーザ干渉計51cから照射される光のうちの残りの2本はミラー35cで反射して、その反射光がレーザ干渉計51cで受光される。
【0089】
レーザ干渉計51a〜51cは、それぞれミラー35a〜35cの位置を基準としバーミラー23の位置を測定することで、光照射部30a、30gとマスク保持部20とのy方向の位置関係を測定する。
【0090】
レーザ干渉計52aから照射される光のうちの2本は、バーミラー22で反射されて、その反射光がレーザ干渉計52aで受光される。レーザ干渉計52gから照射される光のうちの2本は、バーミラー21で反射されて、その反射光がレーザ干渉計52gで受光される。
【0091】
レーザ干渉計52aから照射される光のうちの残りの2本はミラー36aで反射して、その反射光がレーザ干渉計52aで受光される。レーザ干渉計52gから照射される光のうちの残りの2本はミラー36gで反射して、その反射光がレーザ干渉計52gで受光される。
【0092】
レーザ干渉計52a、52gは、それぞれミラー36a、36gの位置を基準としバーミラー21、22の位置を測定することで、光照射部30a〜30gとマスク保持部20とのx方向の位置関係を測定する。
【0093】
本実施の形態では、光照射部30b〜30fにはミラーが設けられず、そのミラーの位置を測定するレーザ干渉計も設けられない。これは、光照射部30b〜30fの位置を光照射部30a、30gの位置に基づいて内挿により求められることと、カメラ18で撮像されるモアレ縞を用いた補正処理(後に詳述)により補正が可能だからである。また、レーザ干渉計50の数を少なくすることで、レーザ干渉計50用のレーザトランスデューサとして6本の分岐が可能なものを用いる場合に、5本をレーザ干渉計51a〜51c、52a、52b用とし、1本を空気中の波長変化を検出する波長トラッカ用とし、レーザトランスデューサの数を1つとすることで、複数のレーザトランスデューサを設けることにより不具合を避けつつ、装置を小型化することができ、かつコストを下げることができる。
【0094】
図10は、露光装置1の電気的な構成を示すブロック図である。露光装置1は、CPU(Central Processing Unit)151と、RAM(Random Access Memory)152と、ROM(Read Only Memory)153と、入出力インターフェース(I/F)154と、通信インターフェース(I/F)155と、メディアインターフェース(I/F)156と、を有し、これらは光照射部30、位置測定部41、42、レーザ干渉計51、52、駆動部71、72、73等と互いに接続されている。
【0095】
CPU151は、RAM152、ROM153に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。CPU151には、位置測定部41、42、レーザ干渉計51、52等から信号が入力される。CPU151から出力された信号は、駆動部71、72、63、光照射部30に出力される。
【0096】
RAM152は、揮発性メモリである。ROM153は、各種制御プログラム等が記憶されている不揮発性メモリである。CPU151は、RAM152、ROM153に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。また、ROM153は、露光装置1の起動時にCPU151が行うブートプログラムや、露光装置1のハードウェアに依存するプログラム、マスクMへの描画データなどを格納する。また、RAM152は、CPU151が実行するプログラム及びCPU151が使用するデータなどを格納する。
【0097】
CPU151は、入出力インターフェース154を介して、キーボードやマウス等の入出力装置141を制御する。通信インターフェース155は、ネットワーク142を介して他の機器からデータを受信してCPU151に送信すると共に、CPU151が生成したデータを、ネットワーク142を介して他の機器に送信する。
【0098】
メディアインターフェース156は、記憶媒体143に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM152に格納する。なお、記憶媒体143は、例えば、ICカード、SDカード、DVD等である。
【0099】
なお、各機能を実現するプログラムは、例えば、記憶媒体143から読み出されて、RAM152を介して露光装置1にインストールされ、CPU151によって実行される。
【0100】
CPU151は、入力信号に基づいて露光装置1の各部を制御する制御部151aの機能を有する。制御部151aは、CPU151が読み込んだ所定のプログラムを実行することにより構築される。制御部151aが行う処理については、後に詳述する。
【0101】
図10に示す露光装置1の構成は、本実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、例えば一般的な情報処理装置が備える構成を排除するものではない。露光装置1の構成要素は、処理内容に応じてさらに多くの構成要素に分類されてもよいし、1つの構成要素が複数の構成要素の処理を実行してもよい。
【0102】
このように構成された露光装置1の作用について説明する。以下の処理は、主として制御部151aによって行われる。
【0103】
制御部151aは、描画処理に先立って、レーザ干渉計51、52を用いて位置測定部41、42の校正処理を行う。レーザ干渉計51、52の測定値は正確であるが、露光装置1におけるクリーンエアーのダウンフローで10nm近い揺らぎが発生する。また、レーザ干渉計51、52は相対位置のみの測定しかできない(原点を知る事はできない)。
【0104】
位置測定部41、42の測定結果は、マスク保持部20のピッチングやヨーイングによる誤差等を含む。そのため、位置測定部41、42による測定結果が誤差を含まないようにレーザ干渉計51、52の測定値と位置測定部41、42による測定値との関係を事前に調べ、位置測定部41、42の校正処理を行ったうえで、位置測定部41、42を用いて描画処理を行うことで、揺らぎの無い状態でピッチング誤差やヨーイング誤差を取り除き、描画精度を向上させることができる。校正処理において、制御部151aは、各光照射部30a〜30gに対するルックアップテーブル(LUT、Look up table)を算出する。校正処理の詳細については後に詳述する。
【0105】
校正処理の次に、描画処理の前に行う前処理について説明する。
図11は、前処理の流れを示すフローチャートである。
【0106】
まず、光照射部30からの光照射位置や光照射タイミングを補正するための補正用基板の作成及びこの補正用基板を用いた補正テーブル生成処理を行う(ステップS10)。以下、ステップS10の処理について詳細に説明する。
【0107】
まず、補正用基板の作成処理を行う(ステップS11)。補正用基板を作成するためのマスクMがマスク保持部20に載置されたら、制御部151aは、マスクMに補正用基板パターンを描画して、補正用基板を生成する。制御部151aは、補正用基板パターンに関する情報である補正用基板描画情報をROM153から取得し、補正用基板描画情報に基づいて描画処理を行う。
【0108】
図12は、補正用基板描画情報の一例を示す図である。
図12においては、マスクMの位置を点線で模式的に示す。補正用基板パターンは、二次元状に配列された複数の十字を含むパターンであり、本実施の形態では格子状に配列されたパターンである。制御部151aは、駆動部71、72を制御してマスク保持部20をx方向及びy方向に動かしながら、マスクMに補正用基板パターンを描画して補正用基板M1を生成する。なお、マスク保持部20を動かす処理については、後に詳述する。また、光をマスクMに照射する処理は、すでに公知の技術を用いて行うことができる。
【0109】
図13は、
図12に示す補正用基板描画情報に基づいて生成した補正用基板M1を示す。
図13においては、様々な誤差により、x方向の描画パターンが右側(−y方向)にy1だけふくらんだ曲線となっている。
【0110】
次に、制御部151aは、補正用基板M1を生成したときの状態である初期状態(0度)と、初期状態から補正用基板M1を略90度、略180度、及び略270度回転させた状態とのそれぞれの状態で補正用基板M1をマスク保持部20の上面20aに載置し、それぞれの場合において、読取部60を用いて補正用基板M1を読み取る(ステップS12〜S15)。
【0111】
なお、ステップS12〜S15では、二つの状態下で補正用基板M1を読み取る。一つ目の状態(状態I)は、補正用基板M1が上面20aの略中央に載置された状態である。状態Iは、ステップS11で補正用基板M1を作成するために載置されたマスクMの位置と略一致する。二つ目の状態(状態II)は、状態Iから補正用基板M1のy方向の大きさの略半分だけy方向(例えば、−y方向)に補正用基板M1を移動させたときの状態である。
【0112】
初期状態(ステップS12)かつ状態Iにおいては、領域A1のパターンは読取部60aで読み取られ、領域A2のパターンは読取部60bで読み取られ、領域A3のパターンは読取部60cで読み取られ、領域A4のパターンは読取部60dで読み取られ、領域A5のパターンは読取部60eで読み取られ、領域A6のパターンは読取部60fで読み取られ、領域A7のパターンは読取部60gで読み取られる。したがって、読取部60を用いて補正用基板M1を読み取った結果は、
図12に示す補正用基板描画情報と一致する。
【0113】
図14は、初期状態から補正用基板M1を略180度回転させた状態(ステップS14)かつ状態Iにおいて、読取部60を用いて補正用基板M1を読み取った結果を示す。この場合には、領域A1のパターンは読取部60gで読み取られ、領域A2のパターンは読取部60fで読み取られ、領域A3のパターンは読取部60eで読み取られ、領域A4のパターンは読取部60dで読み取られ、領域A5のパターンは読取部60cで読み取られ、領域A6のパターンは読取部60bで読み取られ、領域A7のパターンは読取部60aで読み取られる。したがって、初期状態から略180度回転された補正用基板M1を読取部60により読み取った結果(
図14の実線参照)は、x方向の描画パターンが、左側(+y方向)にy2だけふくらんだ曲線となる。y2は、y1の2倍の大きさである。なお、
図14において、破線は補正用基板描画情報を示す。
【0114】
制御部151aは、ステップS12〜ステップS15における読み取り結果に基づいて光照射部30の補正値を求め、これを補正テーブルとして作成する(ステップS16)。以下、ステップS16の処理について詳細に説明する。
【0115】
制御部151aは、ステップS12における初期状態での読み取り結果と、ステップS14における補正用基板M1を略180度回転させた状態での読み取り結果の中間を、光照射部30の補正値とする。
【0116】
図13、14に示す場合においては、補正値は、x方向の描画パターンが、+y方向にy1だけふくらんだ曲線となる。この補正値を補正用基板描画情報に加算した情報を用いて補正用基板M1’(図示せず)を描画すると、補正用基板M1’のパターンは直線となり、初期状態での読取部60による読み取り結果と、初期状態から補正用基板M1’を略180度回転させた状態での読取部60による読み取り結果は一致する。
【0117】
同様に、制御部151aは、ステップS13における補正用基板M1を略90度回転させた状態での読取部60による読み取り結果と、ステップS15における補正用基板M1を略270度回転させた状態での読取部60による読み取り結果の中間を補正値として算出する。
【0118】
ステップS16では、状態I、IIの両方の読み取り結果に基づいて補正値を算出する。例えば、補正用基板M1の中心点を中心とした点対称の歪み(例えば、中心点から放射状に広がる放射曲線状の歪み)がある場合には、補正用基板M1を90度、180度、270度回転させても測定結果が重なってしまい、補正ができない。したがって、点対称の歪み成分を排除するためには、状態Iと状態IIとで読み取りを行い(ステップS12〜S15)、その差を無くすように補正値を算出する(ステップS16)ことが望ましい。なお、ステップS12〜S15において、さらに、状態IIから補正用基板M1のy方向の大きさの略半分だけy方向に補正用基板M1を移動させた状態(状態III)で補正用基板M1を読み取り、その差を無くすように補正値を算出(ステップS16)してもよい。
【0119】
このようにして、制御部151aは、ステップS12〜S15における読み取り結果が一致する補正値を光照射部30の補正テーブルとする。これにより、光照射部30が自らを校正し、マスクMに描画されるパターンと、描画情報に示されるパターンとの意図しないずれを無くすことができる。また、複数の十字の位置を含む補正用基板パターンを用いることで、x方向、y方向のそれぞれについて補正値を求めることができる。ここで、補正テーブルは、マスクM上の位置と関連付けられたデータである。
【0120】
制御部151aは、補正用基板M1(マスク保持部20)をy方向に移動させて、同一のパターンを隣接する複数の読取部60(例えば、読取部60a及び読取部60b)で読み取り(ステップS12〜S15)、この読み取り結果に基づいて補正テーブルを作成する(ステップS16)。マスク保持部20のy方向のストロークが略200mm(ここでは、隣接する光照射部30の間隔)であるため、補正テーブルは、y方向の幅が略200mmでx方向に細長い帯状のブロックがy方向に隣接して並んだ構成となっている。したがって、例えば
図13に示す補正用基板M1のパターンf1を読取部60a、60bで読み取り、読取部60aで読み取った結果と読取部60bで読み取った結果とがx方向にずれていた場合には、このずれがなくなるように帯状のブロックを移動させて補正テーブルを作成する。これにより、読取部60の位置ずれ(例えば、枠体15の曲がり)や、補正用基板M1の曲がり成分の影響を排除することができる。
【0121】
また、補正用基板M1をy方向に移動させて、同一のパターンを隣接する複数の読取部60で読み取ることを繰り返すことで、y方向の読み取りデータを拡張し、y方向の幅が略200mmのブロックをy方向につなげてy方向の幅が略1400mmの補正テーブルを作成することができる。
【0122】
なお、本実施の形態では、まず補正用基板(ステップS11)を作成し、これに基づいて補正テーブルを作成した(ステップS12〜S16)が、ステップS11は必須ではなく、予め作成されていた補正用基板を用いてステップS12〜S16の処理を行なってもよい。
【0123】
また、ステップS11〜S16の処理を複数回(例えば、3回程度)行うようにしてもよい。例えば、1回目のステップS11〜S16の処理により補正テーブルを作成し、この補正テーブルを用いて2回目の補正用基板を作成し(ステップS11)、2回目の補正テーブルを作成する(ステップS12〜S16)の処理を行う。これにより、より正確な補正テーブルを作成することができる。
【0124】
次に、制御部151aは、テンプレート25の変形(曲がり、歪み、伸び縮み等)による変形に関するテンプレート補正テーブルを作成する(ステップS20)。以下、ステップS20の処理について説明する。
【0125】
まず、制御部151aは、テンプレート25を読取部60の下方へ移動させて、読取部60により十字パターンP5を読み取る(ステップS21)。テンプレート25はマスク保持部20のマスクMが載置される領域の外側にあるため、制御部151aは、補正テーブルが0であるとしてマスク保持部20を移動させる。このとき、制御部151aは、テンプレート25(マスク保持部20)をy方向に移動させて、同一の十字パターンP5を複数の読取部60(例えば、読取部60a及び読取部60b)で読み取る。
【0126】
次に、制御部151aは、ステップS21での読み取り結果と、ステップS16で求められた補正テーブルとを比較してテンプレート補正テーブルを作成する(ステップS22)。テンプレート補正テーブルにより、補正テーブル(マスク保持部20が有する誤差)に対するテンプレート25の歪みや曲がりが判明する。ここで、テンプレート補正テーブルは、y方向の位置と関連付けられた情報である。
【0127】
なおステップS21において、同一の十字パターンP5を読取部60a及び読取部60bで読み取り、読取部60aで読み取った結果と読取部60bで読み取った結果とがx方向にずれていた場合には、ステップS22において、このずれをなくすようにテンプレート補正テーブルを作成することが望ましい。これにより、読取部60の位置ずれを考慮したテンプレート補正テーブルを作成することができる。
【0128】
以上により、前処理が終了する。その後、マスク保持部20にマスクMが載置される。制御部151aは、駆動部73を制御してテンプレート保持部24をz方向に移動させて、マスクMの高さとテンプレート25の高さとを一致させる。また、描画処理を行うのは、マスク保持部20にマスクMを載置してから数時間経過した後であるため、制御部151aは、この待機時に光照射部30と読取部60との位置関係を把握する処理を行う。
【0129】
図15は、光照射部30と読取部60との位置関係を把握する処理の流れを示すフローチャートである。まず、制御部151aは、光照射部30の下側にテンプレート25が位置するように、駆動部71、72によりマスク保持部20を移動させた状態で、光照射部30からテンプレート25に向けて光を照射し、カメラ18で撮像された画像に基づいて光照射部30の中心位置を取得する(ステップS31)。光照射部30からテンプレート25に向けて光を照射するときには、制御部151aはマスク保持部20を停止させる。また、光照射部30からは、検査用パターンが照射される。
【0130】
図16は、光照射部30a〜30gからそれぞれ照射される検査用パターンを示す図である。検査用パターンは、x方向に沿った線L3が、線L3の幅と略同一の間隔で配置された縞状のパターンP3を有する領域R3と、y方向に沿った線L4が、線L4の幅と略同一の間隔で配置された縞状のパターンP4が形成された領域R4とを有する。領域R3と領域R4とは、x方向に隣接して形成され、x方向に沿ってみたときに領域R3の両側に領域R4が設けられる。線L3、L4の幅l3、l4は、それぞれ線L1、L2の幅l1、l2より太い。また、光照射部30a〜30gからは、逆コントラストの逆十字パターンP6が照射される。
【0131】
検査用パターンは、テンプレート25等を通過して、カメラ18の撮像素子18mに結像される。カメラ18a〜18g(
図23参照)では、それぞれ光照射部30a〜30gから照射されたパターンP3、P4、逆十字パターンP6と、テンプレート25に形成されたパターンP1、P2、十字パターンP5とが重なった画像を読み取る。
【0132】
制御部151aは、十字パターンP5と逆十字パターンP6とが重なった画像に基づいて、光照射部30の大まかな位置ずれを取得する。
図17は、テンプレート25の十字パターンP5と逆十字パターンP6とが重なった画像の一例であり、(A)は光照射部30の中心位置が本来の位置にある場合を示し、(B)は光照射部30の中心位置が本来の位置からずれている場合を示す。
【0133】
設計どおりに光照射部30が設けられていれば、
図17(A)に示すように十字パターンP5が逆十字パターンP6の中心にある。それに対し、
図17(B)に示すように十字パターンP5が逆十字パターンP6の中心にない場合には、十字パターンP5と逆十字パターンP6との隙間x1、x2の差分を光照射部30の中心位置のx方向のずれとして取得し、十字パターンP5と逆十字パターンP6との隙間y1、y2の差分を光照射部30の中心位置のy方向のずれとして取得する。これにより、光照射部30a〜30gの大まかな位置ずれ(例えば、光照射部30bが光照射部30aのy方向真横で一定間隔の位置にある等、1μm程度の精度)を取得することができる。
【0134】
また、制御部151aは、パターンP1、P2とパターンP3、P4とが重なった画像に基づいて、光照射部30の正確な位置ずれを取得する。
図18は、撮像素子18mに結像された画像の一部を例示する図であり、(A)はパターンP1とパターンP3とが重なった部分の画像の一例であり、(B)はパターンP2とパターンP4とが重なった部分の画像の一例である。なお、
図18では、説明のため、パターンP1とパターンP3とをずらし、パターンP2とパターンP4とをずらして図示している。
【0135】
線L3の幅l3が線L1の幅l1より太く、隣接する線L3と線L3との間隔(幅l3と略同一)が隣接する線L1と線L1との間隔(幅l1と略同一)より広いため、
図17(A)に示すように、撮像素子18mにはモアレ縞が結像される。制御部151aは、パターンP1、P3により形成されたモアレ縞の黒のピーク位置、白のピーク位置やモアレ縞の位相を検出することで、光照射部30a〜30gのy方向の位置ずれを取得する。
【0136】
線L4の幅l4が線L2の幅l2より太く、隣接する線L4と線L4との間隔(幅l4と略同一)が隣接する線L2と線L2との間隔(幅l2と略同一)より広いため、
図17(B)に示すように、撮像素子18mにはモアレ縞が結像される。制御部151aは、パターンP2、P4により形成されたモアレ縞の黒のピーク位置、白のピーク位置やモアレ縞の位相を検出することで、光照射部30a〜30gのx方向の位置ずれを取得する。
【0137】
マスク保持部20が停止している場合には、DMD31a〜31gがスキューしているため、パターンP3、P4が直線ではなく、鋸歯状に曲がる場合があり得るが、モアレ縞のピーク位置や位相の検出に問題はない。
【0138】
なお、本実施の形態では、線L3、L4の幅l3、l4がそれぞれ線L1、L2の幅l1、l2より太く、隣接する線L3と線L3との間隔及び隣接する線L4と線L4との間隔が、それぞれ隣接する線L1と線L1との間隔及び隣接する線L2と線L2との間隔より広いが、線L3、L4の幅l3、l4がそれぞれ線L、L21の幅l1、l2より細く、隣接する線L3と線L3との間隔及び隣接する線L4と線L4との間隔が、それぞれ隣接する線L1と線L1との間隔及び隣接する線L2と線L2との間隔より狭くてもよい。この場合にも、撮像素子18mにはモアレ縞が結像される。
【0139】
領域R1、R3はy方向に沿って連続しているため、撮像素子18mで読み取られるモアレ縞には黒のピーク位置、白のピーク位置が複数含まれる。しかしながら、領域R2、R4はx方向の幅が狭いため、領域R2、R4がそれぞれ1つしかない場合にはモアレ縞に黒のピーク位置、白のピーク位置が複数含まれないおそれがある。本実施の形態では、x方向に沿ってみたときに、領域R1の両側に領域R2が設けられ、領域R3の両側に領域R4が設けられるため、領域R1、R3の+x側に配置された領域R2、R4によるモアレ縞と、領域R1、R3の−x側に配置された領域R2、R4によるモアレ縞とを合わせる(必要に応じて領域R2、R4間を補完する)ことで黒のピーク位置、白のピーク位置を複数検出することができ、これにより光照射部30a〜30gのx方向の位置ずれを正確に取得することができる。
【0140】
本実施の形態では、モアレ縞を用いるため、線L1、L2が読み取り不可能なカメラ18を用いたとしても、線L1、L2の幅の数百分の一の精度で位置ずれを取得することができる(具体的には、線L1、L2が略1μm、位置ずれの取得精度は略1nm)。また、モアレ縞が読み取り可能であれば、鏡筒18n内の対物レンズ18o等に光学歪があっても問題はない。
【0141】
制御部151aは、カメラ18で撮像された画像のモアレ縞の位置及び十字パターンP5、P6の位置が設計位置と略一致するか否か、又は設計位置とどの程度離れているかを求める。例えば、設計値と1〜2μm以上ずれている場合には、光照射部30を枠体15に対して移動させて光照射部の位置と設計値とのずれが1〜2μm以下となるようにする。
【0142】
制御部151aは、光照射部30の中心位置を取得する(ステップS31)処理を、光照射部30a〜30gの全てに対して行う。
【0143】
次に、制御部151aは、読取部60の下側にテンプレート25が位置するように、駆動部71、72によりマスク保持部20を移動させた状態で、読取部60で十字パターンP5を読み取り、読取部60の中心位置を取得する(ステップS32)。このとき、制御部151aは、x方向に距離xd、y方向に距離yd(
図8参照)だけ移動させる。距離xd、ydは、設計値であり、予め定められROM153に記憶されている。
【0144】
読取部60の視野は狭いため、ステップS32においては、まず+x側(
図4の上側)の十字パターンP5を読み取り、次に−x側(
図4の下側)の十字パターンP5を読み取り、2回の測定結果の中心を読取部60の中心位置とする。
【0145】
図19は、カメラ606で十字パターンP5を読み取る様子を示す図である。制御部151aは、カメラ606の視野内における十字パターンP5のエッジ位置E1〜E8を読み取る。制御部151aは、エッジ位置E1〜E4の平均位置から十字パターンP5のy方向の中心位置を求め、エッジ位置E5〜E8の平均位置から十字パターンP5のx方向の中心位置を求め、十字パターンP5の中心位置とカメラ606の視野の中心位置との差異を読取部60の中心位置のずれとして取得する。
【0146】
制御部151aは、読取部60の中心位置を取得する(ステップS32)処理を、読取部60a〜60gの全てに対して行う。
【0147】
制御部151aは、ステップS31で求められた光照射部30a〜30gの中心位置と、ステップS32で求められた読取部60a〜60gの中心位置との差分(距離)をそれぞれ求め、この差分に基づいて補正テーブルを修正する(ステップS33)。本実施の形態では、光照射部30と読取部60との距離を間接的に測定する。例えば、ステップS31において、光照射部30aを用いて、最も−x側の位置かつ+x側の十字パターンP5(以下、十字パターンP5
1とする)の中心位置を求め、これをWTP
11(x、y)とする。また、ステップS32において、読取部60aを用いて十字パターンP5
1の中心位置を求め、これをRTP
11(x、y)とする。そして、WTP
11(x、y)とRTP
11(x、y)との差分を光照射部30と読取部60との距離とする。
【0148】
光照射部30aにより光が照射される領域の補正テーブルについては、光照射部30aの中心位置と読取部60aの中心位置との差分に基づいて補正テーブルを修正する。同様に、光照射部30b〜30gにより光が照射される領域の補正テーブルについては、それぞれ、光照射部30b〜30gの中心位置と読取部60b〜60gの中心位置との差分に基づいて補正テーブルを修正する。
【0149】
補正テーブルは、読取部60の読み取り結果に基づいて作成されるが、描画を行なうのは光照射部30である。したがって、ステップS33において、光照射部30と読取部60との位置関係に基づいて補正テーブルを修正することで、読取部60の位置における補正テーブルを光照射部30の位置における補正テーブルに変換することができる。
【0150】
これにより、待機時の処理を終了する。なお、制御部151aは、ステップS31においてカメラ18で撮像されたモアレ縞に基づいて、光照射部30から照射された光が合焦しているか否かを検知してもよい。
図20は、パターンP1、P3により形成されたモアレ縞の様子を模式的に示すグラフである。
図20における縦軸はカメラ18に入射する光量であり、横軸はy方向の位置を示す。
図20に示すグラフにおいて、一番低いところが黒のピーク位置であり、一番高いところが白のピーク位置である。
【0151】
図20において、線Uは合焦している場合のグラフであり、線Vは合焦していない場合のグラフである。線Vは線Uに比べてグラフの傾きがなだらかであり、また線Vの白のピーク位置の高さが線Uの白のピーク位置の高さより低くなっている。このように、モアレ縞を示すグラフを解析することで、専用のセンサを用いることなく、光照射部30の合焦の有無を検知することができる。制御部151aは、光照射部30が合焦していないことを検知したら、光照射部30が合焦するように光照射部30をz方向に移動させる。
【0152】
また、制御部151aは、待機時に、光照射部30からテンプレート25のパターンP1、P2及び十字パターンP5が形成されていない位置に光を照射して多角形を描画し、描画された画像をカメラ18で撮像してもよい。これにより、描画される画像の変形(ラスタライジングロジックのバグによる画化け、例えば本来閉じている線が閉じていないような不具合)を前もって知ることができる。
【0153】
次に、制御部151aは、描画処理を行う。描画処理の説明の前に、マスク保持部20の移動について説明する。
【0154】
図21は、制御部151aが行う駆動部71、72の制御について説明する図である。ここでは、駆動部71、72がリニアモータであるとして説明する。
【0155】
まず、推力変換部164、174は、駆動部71、72の可動子のU相、V相、W相にそれぞれ信号を出力し、推力変換部164、174は、その結果に基づいて可動子のU相、V相、W相の力率(力率情報)を求めておく。
【0156】
−y側の位置測定部41における計測信号は、Xカウンタ(1)161に入力され、+y側の位置測定部41における計測信号は、Xカウンタ(2)162に入力される。制御部151aは、Xカウンタ(1)161の出力と、Xカウンタ(2)162の出力との平均値を、現在位置とする。
【0157】
−x側の位置測定部42における計測信号は、Yカウンタ(1)171に入力され、+x側の位置測定部42における計測信号は、Yカウンタ(2)172に入力される。制御部151aは、Yカウンタ(1)171の出力と、Yカウンタ(2)172の出力との平均値を、現在位置とする。
【0158】
目標座標算出部163、173では、それぞれ、CPU151から出力されるパルス等に基づいて、現時点における目標座標(位置指令)が算出される。制御部151aは、Xカウンタ(1)161、Xカウンタ(2)162からの出力信号と、目標座標算出部163から出力された位置指令との偏差の一次関数(P)を算出する。また、制御部151aは、偏差の積分に比例して変化する入力値(I)と、偏差の微分に比例して変化する入力値(D)を算出する。これらの値は、推力変換部164へ入力される。制御部151aは、Yカウンタ(1)171、Yカウンタ(2)172からの出力信号と、目標座標算出部173から出力された位置指令との偏差の一次関数(P)を算出する。また、制御部151aは、偏差の積分に比例して変化する入力値(I)と、偏差の微分に比例して変化する入力値(D)を算出する。これらの値は、推力変換部174へ入力される。
【0159】
さらに、制御部151aは、目標座標算出部163、173でそれぞれ算出された位置指令を1次微分する1次微分項と、位置指令を2次微分する2次微分項と、を算出し、それぞれ推力変換部164、174へ入力する。推力変換部164、174には、それぞれ原点センサ165、175から駆動部71、72の位置を管理するために基準となる原点信号が入力される。
【0160】
推力変換部164、174は、それぞれ、入力された情報に基づいて駆動部71、72を駆動するための信号を生成する。具体的には、推力変換部164、174は、比例動作、積分動作、微分動作を組み合わせたPID制御と、目標座標算出部163、173から入力された位置指令、1次微分項、2次微分項とに基づいたフィードフォワード制御と、を行う。そして、推力変換部164、174では、制御結果、力率情報等に基づいて駆動信号を生成する。駆動信号は、U相、V相、W相のそれぞれに対応する信号であり、アンプでそれぞれ増幅された後、可動子のU相、V相、W相のコイルそれぞれに出力される。したがって、マスク保持部20を正確に移動させることができる。なお、精度の高い制御(nm〜数十nm単位の制御)を行うためには、アンプは、DCリニアアンプであることが望ましい。
【0161】
制御部151aは、このようにしてマスク保持部20を移動させつつ、光照射部30の下側をマスクMが通過するときに光照射部30から光を照射して、描画処理を行う。
【0162】
図22は、描画処理における処理の流れを示すフローチャートである。制御部151aは、マスク保持部20を+x側の端に移動させてから、マスク保持部20を−x側に移動させる(ステップS41)。
【0163】
制御部151aは、光照射部30の下側にテンプレート25が位置するときに、光照射部30からテンプレート25に向けて光を照射し、光照射部30のx方向及びy方向の位置ずれを取得する(ステップS42)。当該処理は、駆動部71、72によりマスク保持部20を移動させながら行われる。
【0164】
ステップS42では、制御部151aは、光照射部30の下側をテンプレート25が通過する間、光照射部30からテンプレート25に向けて検査用パターン(
図16参照)を照射する。検査用パターンは、テンプレート25等を通過して、カメラ18の撮像素子18mに結像される。カメラ18a〜18g(
図23参照)では、それぞれ光照射部30a〜30gから照射されたパターンP3、P4、十字パターンP6と、テンプレート25に形成されたパターンP1、P2、十字パターンP5とが重なることで形成されるモアレ縞を読み取る。
【0165】
このようにして光照射部30a〜30gのそれぞれに対してx方向及びy方向の位置ずれを取得した後に、制御部151aは、位置ずれを補正するように光照射部30a〜30gからマスクMへ光を照射する(ステップS43)。ステップS43において、制御部151aは、パターンP2、P4によるモアレ縞の計測結果からx方向のオフセット値を調整して、光照射部30a〜30gへ光を照射する信号(水平同期信号)のタイミングを変えることでx方向の位置ズレを補正する。また制御部151aは、パターンP1、P3によるモアレ縞の計測結果からy方向のオフセット値を調整して、描画データを位置ずれ分だけy方向に移動させることでy方向の位置ズレを補正する。以下、ステップS43の処理について
図23を用いて説明する。
【0166】
図23は、制御部151aが行う描画位置補正処理について説明する図である。なお、光照射部30a〜30gに対するルックアップテーブル(LUT、Look up table)LUT181a〜187aは、校正処理により予め算出されている。LUT181a〜187aは、光照射部30a〜30gの位置毎にxy座標に対応して値が2次元状に配置されたものである。
【0167】
校正処理時に、位置測定部41、42の測定結果とレーザ干渉計52の測定結果は、LUT181a〜187aに入力される。LUT181aについてはレーザ干渉計52aの測定結果に基づき、LUT187aについてはレーザ干渉計52gの測定結果に基づく。LUT182a〜186aについてはレーザ干渉計52a、52gの測定結果に基づいて内挿により算出する。制御部151aは、レーザ干渉計51、52における測定結果に基づいて各光照射部30a〜30gのLUT181a〜187aを算出する。
【0168】
また校正処理時に、位置測定部41、42の測定結果とレーザ干渉計51の測定結果は、LUT188aに入力される。制御部151aは、LUT188aを算出する。なお、LUT181a〜188aは、位置測定部41、42とレーザ干渉計51、52との計測差が変化しない限り定常値である。
【0169】
制御部151aは、推力変換部164、174において生成された駆動信号に基づいて駆動部71、72を駆動しながら、位置測定部41、42によりマスク保持部20のx方向の位置及びマスク保持部20のy方向の位置を測定する。そして、これらの値を各光照射部30a〜30gの位置に応じて重み付け加算して、現時点における光照射部30a〜30gのx方向の位置191〜197及び現時点における光照射部30aのy方向の位置198を算出する。重み付け加算による位置191〜198の算出は、位置測定部41、42が光照射部30a〜30gの位置にあると仮定したときの測定値の算出と同様の方法で行う。なお、位置測定部41、42の測定値はそれぞれヨー変位量を含むため、y方向の位置198は、位置測定部41、42の測定値から求められた回転量を足して算出する必要がある。
【0170】
カメラ18a〜18gで計測されたモアレ縞は、それぞれ画像処理回路190a〜190gで解析される。画像処理回路190a〜190gでの解析結果は、それぞれ、Ofs181b〜187b、181c〜187cに入力される。
【0171】
Ofs181b〜187bは、それぞれ、画像処理回路190a〜190gにおける走査露光毎のパターンP2、P4に基づくモアレ縞の解析結果から算出されたオフセット値と、ステップS16で作成され、かつステップS33で修正された補正テーブルとが加算された値である。また、Ofs181c〜187cは、それぞれ、画像処理回路190a〜190gにおける走査露光毎のパターンP1、P3に基づくモアレ縞の解析結果から算出されたオフセット値と、ステップS16で作成され、かつステップS33で修正された補正テーブルとが加算された値である。
【0172】
制御部151aは、光照射部30aのx方向の位置191を取得すると、この位置191における補正値をLUT181aから取得し、これにOfs181bの値を足した値を光照射部30aのx方向のパターン位置補正量として算出する。同様に、制御部151aは、光照射部30b〜30gのx方向の位置192〜197に基づいて、この位置192〜197における補正値をLUT182a〜187aから取得し、これにOfs182b〜187bを足した値を光照射部30b〜30gのx方向のパターン位置補正量としてそれぞれ算出する。
【0173】
また、制御部151aは、光照射部30aのy方向の位置198を取得すると、この位置191における補正値をLUT188aから取得し、これにOfs181cの値を足した値を光照射部30aのy方向のパターン位置補正量として算出する。同様に、制御部151aは、LUT188aの値にOfs182b〜187bの値を足した値を光照射部30b〜30gのy方向のパターン位置補正量としてそれぞれ算出する。
【0174】
制御部151aは、算出されたx方向のパターン位置補正量及びy方向のパターン位置補正量を用いて描画情報を補正する。これにより、ステップS43の処理を終了する。描画情報を補正することで、次の描画処理(ステップS44、後に詳述)において光照射部30a〜30g同士の位置ずれを補正して描画処理を行うことができる。したがって、マスクMに描画された画像において、光照射部30aと光照射部30bとのつなぎ目、光照射部30bと光照射部30cとのつなぎ目、光照射部30cと光照射部30dとのつなぎ目、光照射部30dと光照射部30eとのつなぎ目、光照射部30eと光照射部30fとのつなぎ目、光照射部30fと光照射部30gとのつなぎ目のずれをなくし、マスクMに綺麗な描画を行なうことができる。
【0175】
制御部151aは、ステップS43で補正された後の描画情報に基づいて、光照射部30a〜30gの下にマスクMがきたタイミングで照射を開始する(ステップS44)。
【0176】
ステップS44の描画処理では、制御部151aが光照射部30に水平同期信号(
図23におけるH Drive)を出力し、水平同期信号が光照射部30a〜30gに入力されたタイミングで描画が行われる。水平同期信号は、描画画素に対して1回入力される。制御部151aは、x方向のパターン位置補正量に基づいて、水平同期信号のタイミングを補正する。以下、描画処理における水平同期信号のタイミング補正について説明する。
【0177】
テンプレート25の位置からマスクMの端の位置までの水平同期信号の数は予め定められており、ROM153に記憶されている。制御部151aは、カメラ18で撮像された画像に基づいて光照射部30a〜30gのx方向の位置ズレを取得し、取得したx方向の位置ズレに基づいて所定回数の水平同期信号を出すタイミングを変える。
【0178】
水平同期信号のカウントの開始時点は、パターンP2、P4の重ね合わせにより形成されたモアレ縞の黒のピーク位置(白のピーク位置でもよい)である。制御部151aは、このピーク位置を、ステップS22で作成されたテンプレート補正テーブルを用いて補正する。
【0179】
また、テンプレート25から描画開始位置までの水平同期信号のタイミングは、LUT181a〜187a及びOfs181b〜187bから算出された位置ズレに基づいて補正される。
【0180】
制御部151aは、マスク保持部20を−x方向に移動させながら、水平同期信号にあわせて光照射部30から光を照射して描画処理を行う。なお、所定回数の水平同期信号は、位置測定部41及びレーザ干渉計52の測定結果に基づいて補正される。制御部151aはステップS43で補正された描画情報を用いて描画するため、ステップS44における描画位置は正確である。
【0181】
マスク保持部20が−x方向の端へと移動したら、制御部151aは、一列分の描画を終了する。
【0182】
制御部151aは、全ての列の描画が終了したか否かを判定する(ステップS45)。全ての列の描画が終了した(ステップS45でYES)ら、制御部151aは、描画処理を終了する
【0183】
全ての列の描画が終了していない(ステップS45でNO)場合には、制御部151aは、マスク保持部20をy方向へと移動させる(ステップS46)。そして、制御部151aは、ステップS41〜S45の処理を繰り返す。なおステップS45では、描画位置の誤差を小さくするため、最初の一行の描画後に、略200mm程度マスク保持部20を−y方向に動かして、隣の光照射部30が描画したすぐ横に二行目の描画を行い、次にマスク保持部20を+y方向に動かして一行目の描画の隣に三行目の描画を行い、次にマスク保持部20を−y方向に動かして二行目の横に四行目の描画を行う、という処理を繰り返し、最後に隣接する光照射部30の略中間位置の行を描画する。
【0184】
本実施の形態によれば、読取部60を用いて補正用基板M1を読み取った結果に基づいて補正テーブル作成し(ステップS10)、補正テーブルを用いて描画情報を補正する(ステップS43)ため、光照射部30を校正して正確に描画処理を行うことができる。特に、光照射部30に隣接して読取部60を設けるため、精度の高い校正、すなわち高精度の描画を行なうことができる。また、露光装置1のみで補正が完了するため、別途計測装置を設けることなく、高精度の描画を行なうことができる。
【0185】
また、本実施の形態では、マスク保持部20、すなわちテンプレート25を移動させながら光照射部30から光を照射し、光照射部30から照射されたパターンとテンプレート25に形成されたパターンとが重なった画像をカメラ18で読み取り、マークを形成した部品(テンプレート25、すなわちマスク保持部20)とマークを形成していない部品(光照射部30)との位置関係を求め、これに基づいて描画情報や水平同期信号のタイミングを補正する(ステップS42〜S44)ことで、高精度の描画を行なうことができる。さらに、テンプレート25の曲がりや、伸び縮み等による変形に関するテンプレート補正テーブルを作成(ステップS20)し、これを加味して描画位置の補正を行なう(ステップS44)ことで、より高精度の描画を行なうことができる。
【0186】
本実施の形態は、複数の光照射部30a〜30gを有する場合に有効である。光照射部30a〜30g毎に正確な描画を行なうことができるため、光照射部30a〜30gのそれぞれにより描画された画像のつなぎ目が目立たない。これにより、高精度の描画を行なうことができる。また、複数の光照射部30a〜30gを用いるため、1枚のマスクMへの描画に要する時間を短くすることができる。
【0187】
また、本実施の形態によれば、テンプレート25に形成されたパターンP1、P2と、光照射部30a〜30gから照射されるパターンP3、P4のモアレ縞を観察することで、カメラ18がパターンP1、P2等を読み取れない場合においても、マスク保持部20と光照射部30a〜30gとの位置関係を求めることができる。したがって、カメラ18の性能が高度でなくても、ナノメートル単位の精度で光照射部30a〜30gの位置ずれを求めることができる。
【0188】
また、本実施の形態によれば、待機時に、光照射部30a〜30gの中心位置(ステップS31で求められる)と、読取部60a〜60gの中心位置(ステップS32で求められる)との差分をそれぞれ求め、この差分に基づいて補正テーブルを修正する(ステップS33)ため、正確に描画を行うことができる。光照射部30a〜30gの描画能力を高くするためには、光照射部30a〜30gとは別に読取部60a〜60gを有する必要があるが、光照射部30a〜30gの中心位置と読取部60a〜60gの中心位置との差分に基づいて補正テーブルを修正するため、読取部60a〜60gを別途設けることによる不具合を解決することができる。
【0189】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。当業者であれば、実施形態の各要素を、適宜、変更、追加、変換等することが可能である。
【0190】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略水平とは、厳密に水平の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に平行、直交等と表現する場合において、厳密に平行、直交等の場合のみでなく、略平行、略直交等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、Aの近傍という場合に、Aの近くのある範囲の領域であって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。