(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876222
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 37/02 20060101AFI20210517BHJP
B23K 9/025 20060101ALI20210517BHJP
F22B 37/02 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
B23K37/02 E
B23K9/025 Z
F22B37/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-230241(P2016-230241)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-86663(P2018-86663A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】593083918
【氏名又は名称】株式会社コクホ
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳弘
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−000130(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−1143537(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/02
B23K 9/025
F22B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の被溶接物及び該一方の被溶接物に沿う他方の被溶接物の双方に対して該両被溶接物間に配置される介在物を溶接により接合する溶接装置であって、
前記両被溶接物に沿って移動する移動部と、
前記移動部に搭載されて該移動部とともに移動しつつ前記一方の被溶接物及び前記他方の被溶接物に対して前記介在物の一方の側縁及び他方の側縁を溶接によりそれぞれ接合する2つの溶接トーチを備え、
前記移動部は、前記両被溶接物に跨って配置された4個の走行車輪を有する溶接台車と、該溶接台車を走行させる台車駆動機構と、該台車駆動機構により前記溶接台車を前記両被溶接物に沿って走行させる倣い機構を具備し、
前記倣い機構は、前記溶接台車の底面において台車垂直軸に対して傾けて配置された傾斜軸及び該傾斜軸に支持される倣いローラから成り、
前記溶接台車が前進する際に一方の被溶接物側に偏向するべく該溶接台車の4個の走行車輪をセッティングした状態において、偏向する側の一方の被溶接物に前記倣い機構の倣いローラが当接する溶接装置。
【請求項2】
前記移動部に搭載されて、前記2つの溶接トーチを個別に位置調整可能に支持する2組のトーチ支持機構を備えている請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記溶接トーチは、前記移動部の前記溶接台車上において前記一方の被溶接物側及び前記他方の被溶接物側にそれぞれ配置され、前記一方の被溶接物側に配置された前記溶接トーチは、前記他方の被溶接物と前記介在物の他方の側縁との間の溶接線にトーチ先端を向けた状態で前記トーチ支持機構により支持され、前記他方の被溶接物側に配置された前記溶接トーチは、前記一方の被溶接物と前記介在物の一方の側縁との間の溶接線にトーチ先端を向けた状態で前記トーチ支持機構により支持され、前記2つの溶接トーチは、前記移動部の進行方向に対して互いに前後にオフセットしてそれぞれ支持されている請求項2に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、互いに隣接する一方の鋼管及び他方の鋼管(一方の被溶接物及び他方の被溶接物)と、これらの鋼管の間に配置する平鋼(介在物)とを溶接により接合するのに好適な溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、互いに隣接する鋼管と、これらの鋼管の間に配置する平鋼とを溶接により接合するに際しては、まず、互いに隣接する鋼管の間に平鋼を配置して、この平鋼の一方の面において、平鋼の両側に位置する鋼管に平鋼の両側縁を溶接によりそれぞれ仮付けする。
【0003】
次いで、仮付けすることで一体化した鋼管及び平鋼を裏返して、平鋼の他方の面において、平鋼の一方側に位置する鋼管に対して平鋼の一方の側縁を隅肉溶接により接合した後、平鋼の他方側に位置する鋼管に対して平鋼の他方の側縁を隅肉溶接によって接合する。
【0004】
そして、既に一体化している鋼管及び平鋼を再び裏返して、平鋼の一方の面において、平鋼の両側縁を一方側の鋼管及び他方側の鋼管に順次隅肉溶接によって本付けする。
このような鋼管及び平鋼の溶接による接合方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-174401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の鋼管及び平鋼の溶接による接合方法において、隣接する鋼管への仮付けの終わった平鋼を隅肉溶接によって鋼管に本付けする場合は、一方側の鋼管に平鋼の一方の側縁を隅肉溶接により本付けした後、他方側の鋼管に対して平鋼の他方の側縁を隅肉溶接により本付けしている。
【0007】
したがって、一方側の鋼管に平鋼の一方の側縁を隅肉溶接により本付けした時点で、溶接の熱に起因する歪が平鋼に生じてしまい、この歪の量が多い場合には、他方側の鋼管に対して平鋼の他方の側縁を本付けすることができない、または、本付けすることができたとしても、鋼管と平鋼との間に隙間ができてしまうという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0008】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、例えば、互いに隣接する一方の鋼管及び他方の鋼管(一方の被溶接物及び他方の被溶接物)と、これらの鋼管の間に配置する平鋼(介在物)とを溶接により接合するに際して、隅肉溶接によって平鋼と両鋼管とを隙間なく接合することができるのは勿論のこと、溶接施工時間の短縮化をも実現することが可能である溶接装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、一方の被溶接物及び該一方の被溶接物に沿う他方の被溶接物の双方に対して該両被溶接物間に配置される介在物を溶接により接合する溶接装置であって、前記両被溶接物に沿って移動する移動部と、前記移動部に搭載されて該移動部とともに移動しつつ前記一方の被溶接物及び前記他方の被溶接物に対して前記介在物の一方の側縁及び他方の側縁を溶接によりそれぞれ接合する2つの溶接トーチを備え
、前記移動部は、前記両被溶接物に跨って配置された4個の走行車輪を有する溶接台車と、該溶接台車を走行させる台車駆動機構と、該台車駆動機構により前記溶接台車を前記両被溶接物に沿って走行させる倣い機構を具備し、前記倣い機構は、前記溶接台車の底面において台車垂直軸に対して傾けて配置された傾斜軸及び該傾斜軸に支持される倣いローラから成り、前記溶接台車が前進する際に一方の被溶接物側に偏向するべく該溶接台車の4個の走行車輪をセッティングした状態において、偏向する側の一方の被溶接物に前記倣い機構の倣いローラが当接する構成としている。
【0011】
本発明の第
2の態様は、前記移動部に搭載されて、前記2つの溶接トーチを個別に位置調整可能に支持する2組のトーチ支持機構を備えている構成とする。
【0012】
本発明の第
3の態様において、前記溶接トーチは、前記移動部の前記溶接台車上において前記一方の被溶接物側及び前記他方の被溶接物側にそれぞれ配置され、前記一方の被溶接物側に配置された前記溶接トーチは、前記他方の被溶接物と前記介在物の他方の側縁との間の溶接線にトーチ先端を向けた状態で前記トーチ支持機構により支持され、前記他方の被溶接物側に配置された前記溶接トーチは、前記一方の被溶接物と前記介在物の一方の側縁との間の溶接線にトーチ先端を向けた状態で前記トーチ支持機構により支持され、前記2つの溶接トーチは、前記移動部の進行方向に対して互いに前後にオフセットしてそれぞれ支持されている構成とする。
【0013】
本発明に係る溶接装置では、一方の被溶接物及び他方の被溶接物の双方に対して両被溶接物間に位置する介在物を接合する場合、両被溶接物に沿って移動部を移動させると、この移動部に搭載された2つの溶接トーチが移動部とともに移動する。
【0014】
この移動の間、2つの溶接トーチのうちのいずれか一方の溶接トーチにより、一方の被溶接物と介在物の一方の側縁との溶接が成されると共に、2つの溶接トーチのうちのいずれか他方の溶接トーチにより、他方の被溶接物と介在物の他方の側縁との溶接が成される。
【0015】
つまり、介在物の一方の被溶接物及び他方の被溶接物に対する溶接による接合が同時に成されることとなり、溶接の熱により生じる介在物の歪がこの介在物と両被溶接物との接合部分に与える影響が少なく抑えられることとなる。
【0016】
したがって、介在物と両被溶接物とが溶接により隙間なく接合することとなり、加えて、介在物の一方の被溶接物及び他方の被溶接物に対する接合が同時に成されるので、溶接がワンパスで済む分だけ接合に要する時間の短縮が図られることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る溶接装置では、例えば、互いに隣接する一方の鋼管及び他方の鋼管(一方の被溶接物及び他方の被溶接物)と、これらの鋼管の間に配置する平鋼(介在物)とを溶接により接合するに際して、隅肉溶接によって平鋼と両鋼管とを隙間なく接合することが可能であり、加えて、溶接施工時間の短縮化も実現することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溶接装置を概略的に示す全体構成説明図である。
【
図2】
図1に示した溶接装置における移動部の背面説明図である。
【
図3】
図1に示した溶接装置における移動部の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1〜
図3は、本発明の一実施形態による溶接装置を示しており、この実施形態では、本発明に係る溶接装置によって互いに隣接する鋼管とこれらの鋼管の間に配置する平鋼とを接合する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図1に示すように、この溶接装置1は、互いに隣接する一方の鋼管W1及び他方の鋼管W2(一方の被溶接物及び他方の被溶接物)と、これらの鋼管W1,W2の間に配置する平鋼(介在物)W3とを溶接により接合する半自動溶接装置であって、両鋼管W1,W2に沿って移動する移動部2と、2組の溶接部10,10を備えている。なお、
図1手前側(
図2右側、
図3下側)の鋼管を一方の鋼管W1とし、
図1奥側(
図2左側、
図3上側)の鋼管を他方の鋼管W2とする。
【0021】
移動部2は、
図2にも示すように、前後左右に合計4個の走行車輪3aを有する溶接台車3を具備している。この溶接台車3は、左右の車輪3a,3aを鋼管W1,W2にそれぞれ接触させて両鋼管W1,W2に跨って配置されており、この溶接台車3の底面3bに磁石4を配置することで、この磁石4の磁力によって左右の車輪3a,3aを鋼管W1,W2にグリップさせるようにしている。
【0022】
また、移動部2は、溶接台車3に搭載された減速機付きモータ5aの出力を走行車輪3aに伝達する台車駆動機構5を具備している。なお、減速機付きモータ5aの出力は、台車駆動機構5によって4個の走行車輪3aの全部に伝達されるようにしてもよいし、4個の走行車輪3aのうちの少なくとも前後いずれかの2個の走行車輪3aに伝達されるようにしてもよい。
【0023】
さらに、移動部2は、
図3にも示すように、倣い機構6を具備している。この倣い機構6は、溶接台車3の底面3bにおいて台車垂直軸に対して若干傾けて配置された傾斜軸6a及びこの傾斜軸6aに支持される倣いローラ6bから成っており、この倣い機構6は、溶接台車3の前後の2箇所に配置されている。
【0024】
この場合、溶接台車3の4個の走行車輪3aは、
図3右方向に前進する際に一方の鋼管W1側に偏向するようにセッティングされており、偏向する側の鋼管W1に倣いローラ6b,6bを当接させることで、溶接台車3を両鋼管W1,W2に沿って進ませることができるようにしている。
【0025】
一方、2組装備される溶接部10は、溶接台車3上でトーチ支持機構20により支持される溶接トーチ11と、この溶接トーチ11にフィラーワイヤを送給するワイヤ送給器12と、溶接トーチ11側にシールドガスを供給するガスボンベ13と、溶接電源14を具備している。フィラーワイヤの送給と、シールドガス及び溶接電源の供給は、溶接トーチ11及びワイヤ送給器12を結ぶケーブル15を介して行われる。また、ワイヤ送給器12のワイヤ送給電源には、一般の電源16が使用される。
【0026】
この実施形態では、2組の溶接部10,10のそれぞれにガスボンベ13及び溶接電源14を1セットずつ揃えているが、1セットのガスボンベ13及び溶接電源14を2組の溶接部10,10で共用するようにしてもよい。
【0027】
トーチ支持機構20は、溶接台車3上において台車軸と直交する方向(
図2左右方向、
図3上下方向)に固定されたレール21と、このレール21上に移動可能に配置されたスライド枠22と、このスライド枠22内に溶接台車3に対して上下方向に移動可能に配置されたスライダ23と、スライダ23に対して基端部が溶接台車3の台車軸と平行なスライダ軸24回りに回動可能に支持されたアーム25と、このアーム25の先端部に配置されて溶接トーチ11を把持するクランプ26を具備している。
この実施形態では、2組の溶接部10,10の各トーチ支持機構20,20間において、1つのレール21を共用している。
【0028】
スライド枠22には、レール21の端部に設置された止壁21aを貫通する水平調節ねじ27の先端がねじ込んであり、この水平調節ねじ27の頭部27aを回動操作することでレール21上におけるスライド枠22の溶接台車3に対する左右方向の位置調整が成されるようになっている。すなわち、両鋼管W1,W2と平鋼W3との接合部分に対する溶接トーチ11の左右方向の位置調整が成されるようになっている。
【0029】
スライダ23には、スライド枠22の天壁22aを貫通する上下調節ねじ28の先端がねじ込んであり、この上下調節ねじ28の頭部28aを回動操作することでスライド枠22内におけるスライダ23の溶接台車3に対する上下方向の位置調整が成されるようになっている。すなわち、両鋼管W1,W2と平鋼W3との接合部分に対する溶接トーチ11の上下方向の位置調整が成されるようになっている。
【0030】
クランプ26は、2枚の押さえ板26a,26bの各端部同士をヒンジ状に繋げて成っており、2枚の押さえ板26a,26b間に溶接トーチ11を挟み込んで、各先端部同士をねじ29で締付けることで溶接トーチ11を把持するようになっている。
【0031】
そして、2組の溶接部10,10の各溶接トーチ11,11は、溶接台車3上において一方の鋼管W1側及び他方の鋼管W2側にそれぞれ配置されて、トーチ支持機構20,20によりそれぞれ支持される。
【0032】
この場合、溶接台車3上において一方の鋼管W1側に配置された溶接トーチ11は、その先端11aを
図2左斜め下方で且つ他方の鋼管W2と平鋼W3の他方の側縁W3bとの間の溶接線X2に向けた状態でトーチ支持機構20により支持されている。
【0033】
また、溶接台車3上において他方の鋼管W2側に配置された溶接トーチ11は、その先端11aを
図2右斜め下方で且つ一方の鋼管W1と平鋼W3の一方の側縁W3aとの間の溶接線X1に向けた状態でトーチ支持機構20により支持されている。つまり、2つの溶接トーチ11,11は、互いにクロスするようにして支持されている。
【0034】
そして、2つの溶接トーチ11,11は、溶接台車3の進行方向に対して互いに前後にオフセットしてそれぞれ支持されている。なお、
図3における符号8はリミットスイッチである。
【0035】
そこで、本実施形態による溶接装置1により、互いに隣接する鋼管W1,W2の双方に対して該両鋼管W1,W2間に配置される平鋼W3を隅肉溶接により接合する要領を説明する。
【0036】
まず、隣接する鋼管W1,W2を含む複数本の鋼管を図示しない治具上に並べて載置すると共に、隣接する鋼管W1,W2を含む複数本の鋼管間に平鋼W3をそれぞれ配置した後、複数の平鋼W3を各々の両側に位置する鋼管に溶接によりそれぞれ仮付けする。
【0037】
次いで、仮付けが済んで一体化した隣接する鋼管W1,W2を含む複数本の鋼管を裏返して、仮付けした面を下にして治具上に載置する(
図1に示す状態)。これに続いて、互いに隣接する鋼管W1,W2間に移動部2である溶接台車3をセットする。
【0038】
具体的には、溶接台車3の左右の車輪3a,3aを鋼管W1,W2にそれぞれ接触させて両鋼管W1,W2に跨るようにして溶接台車3を載置し、溶接台車3が進みながら偏向する側の鋼管W1に倣い機構6の倣いローラ6b,6bを当接させると共に、この溶接台車3の底面3bに配置した磁石4の磁力によって左右の車輪3a,3aを鋼管W1,W2にグリップさせる。
【0039】
次いで、2つの溶接部10,10の各トーチ支持機構20における水平調節ねじ27の頭部27a及び上下調節ねじ28の頭部28aをそれぞれ回動操作して、両鋼管W1,W2及び平鋼W3間の各溶接線X1,X2対する溶接トーチ11の左右方向及び上下方向の各位置調整を行う。
【0040】
この後、2つの溶接部10,10の各溶接トーチ11,11に対してフィラーワイヤの送給とシールドガス及び溶接電源の供給をそれぞれ開始して、溶接台車3を両鋼管W1,W2に沿って走行させると、溶接台車3に搭載された2つの溶接トーチ11,11が溶接台車3とともに移動する。
【0041】
この移動の間、溶接台車3上において一方の鋼管W1側に配置された溶接トーチ11により、その先端11aが向けられた他方の鋼管W2と平鋼W3の他方の側縁W3bとの間の溶接線X2上において隅肉溶接が成され、溶接台車3上において他方の鋼管W2側に配置された溶接トーチ11により、その先端11aが向けられた一方の鋼管W1と平鋼W3の一方の側縁W3aとの間の溶接線X1上において隅肉溶接が成される。
【0042】
つまり、平鋼W3の一方の鋼管W1及び他方の鋼管W2に対する隅肉溶接による接合が同時に成されることとなり、溶接の熱により生じる平鋼W3の歪がこの平鋼W3と両鋼管W1,鋼管W2との接合部分に与える影響が少なく抑えられることとなる。
【0043】
したがって、平鋼W3と両鋼管W1,鋼管W2とが溶接により隙間なく接合することとなり、加えて、平鋼W3の一方の鋼管W1及び他方の鋼管W2に対する隅肉溶接による接合が同時に成されるので、溶接がワンパスで済む分だけ接合に要する時間の短縮が図られることとなる。
【0044】
また、本実施形態による溶接装置1では、2つの溶接トーチ11,11を移動させる移動部2として、両鋼管W1,鋼管W2に跨って配置されて、台車駆動機構5及び倣い機構6により両鋼管W1,鋼管W2に沿って走行する溶接台車3を採用しているので、両鋼管W1,W2の周囲に大掛かりなレールやガイドを必要としない分だけ、装置コストの低減が図られることとなる。
【0045】
さらに、本実施形態による溶接装置1では、2組のトーチ支持機構20,20によって、2つの溶接トーチ11,11を溶接台車3上において個別に位置調整可能に支持するようにしているので、2つの溶接トーチ11,11の各溶接線X1,X2に対する細かい位置合わせを行い得ることとなる。
【0046】
さらにまた、本実施形態による溶接装置1では、溶接台車3上において、一方の鋼管W1側に配置された溶接トーチ11と他方の鋼管W2側に配置された溶接トーチ11とを2組のトーチ支持機構20,20によって互いにクロスするようにして支持しているので、溶接台車3の走行が安定して成されることとなる。
【0047】
本発明に係る溶接装置の構成は、例えば、互いに隣接する伝熱管(一方の被溶接物及び他方の被溶接物)と、これらの伝熱管の間に配置するメンブレンバー(介在物)とを備えたボイラ火炉壁のメンブレンパネルを製作するのに採用することができる。
【0048】
本発明に係る溶接装置の構成は、上記した実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 溶接装置
2 移動部
3 溶接台車(移動部)
5 台車駆動機構(移動部)
6 倣い機構(移動部)
11 溶接トーチ
20 トーチ支持機構
21 レール
22 スライド枠
23 スライダ
24 スライダ軸
25 アーム
26 クランプ
W1 一方の鋼管(一方の被溶接物)
W2 他方の鋼管(他方の被溶接物)
W3 平鋼(介在物)
W3a 平鋼の一方の側縁
W3b 平鋼の他方の側縁
X1,X2 溶接線