(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
携帯端末が通信網を介して管理サーバに接続され、前記携帯端末と前記管理サーバとの間で通信を行うことにより、点検対象電柱の設備に対して取集された点検データを前記管理サーバへ送信し格納する配電設備点検システムであって、
前記携帯端末は、表示部と、マイクと、GPS機能と、内臓又は外付けのカメラと、前記カメラを介して得られた画像を解析する画像解析手段と、電柱の位置情報及び電柱番号を含む電柱用マスタデータを格納する記憶部と、アラーム発生源とを有すると共に、異常感知センサ、及び、各種点検用センサに接続可能であり、
前記携帯端末は、さらに、
前記カメラで前記点検対象電柱を捉えて、音声による点検開始指示を受けると、前記GPS機能によって検出された前記携帯端末の位置情報と前記画像解析手段により解析された前記カメラを介して得られた画像中の前記点検対象電柱に関する情報とに基づき、前記カメラで捉えた前記点検対象電柱の位置を特定し、前記電柱用マスタデータとの照合により、前記点検対象電柱の電柱番号を特定する電柱番号特定手段と、
前記カメラによって捉えた前記点検対象電柱の画像に基づき、前記画像解析手段により前記点検対象電柱の設備を自動認識する自動認識手段と、
前記自動認識手段によって認識された設備を前記管理サーバ上に格納されている前記点検対象電柱の設備データと照合して、点検対象とする点検対象設備を特定する点検対象特定手段と、
前記異常感知センサによる検出結果に基づき前記点検対象設備に異常があるか否かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段により異常があると判定された場合に前記携帯端末の前記アラーム発生源を駆動させると共に前記表示部に表示される異常がある設備の部分を強調表示させる異常通知手段と、
前記点検対象特定手段により特定された前記点検対象設備のそれぞれに対して、画面上のタップにより、又は、音声によって個別に点検する前記点検対象設備が特定され、異常がない場合には、異常がない旨の音声指示により異常なしの点検結果情報を点検データとして前記点検対象電柱および前記点検対象設備と関連付けて前記記憶部に格納し、異常がある場合には、異常がある旨の音声指示により点検データを入力可能な入力モードとし、前記カメラ、前記異常感知センサ、及び、前記各種点検用センサにより収集入力された点検データを前記点検対象電柱および前記点検対象設備と関連付けて前記記憶部に格納する点検データ格納処理手段と、
全ての前記点検対象設備の点検を終えた場合に、前記記憶部に格納されている前記点検データを前記管理サーバに送信して、該管理サーバに格納させる点検結果送信手段と、
を具備することを特徴とする配電設備点検システム。
前記異常感知センサは、サーモカメラ、及び、指向性マイクを含み、前記異常判定手段は、前記サーモカメラによる検出結果が異常値である場合、及び、前記指向性マイクによる検出結果が異常値である場合の少なくとも一方を満たした場合に異常と判定するものであることを特徴とする請求項1記載の配電設備点検システム。
前記自動認識手段によって認識された設備は、認識されたことが分かる表示形式で表示され、前記強調表示は、前記認識されたことが分かる表示形式とは異なる表示形式で表示されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配電設備点検システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した設備点検装置は、特定された点検対象の画像が入力されるごとにその点検対象に関する点検項目を点検作業者に表示して点検担当者の負担を軽減しようとするものであるが、異常がない点検対象に対しても点検項目が表示され、点検項目ごとに点検結果を入力する必要があり、電柱に設置されている複数の配電設備を点検する場合においては、必ずしも効率的な作業が行えるものではなかった。
また、従来の設備点検装置は、点検対象の画像を入力する必要がり、点検対象が複数ある場合には、入力し忘れると点検ができなくなり、全ての点検対象設備を確実に点検する上では、課題が残るものであった。
【0007】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、電柱に設置されている複数の配電設備の点検作業を効率的に行い、また、複数の点検対象設備を確実に点検することが可能であり、さらに、設備単位で作業者が行う点検作業に対する点検結果のシステムへの登録作業も手間をかけずに行うことが可能な配電設備点検システムを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る配電設備点検システムは、携帯端末が通信網を介して管理サーバに接続され、前記携帯端末と前記管理サーバとの間で通信を行うことにより、点検対象電柱の設備に対して取集された点検データを前記管理サーバへ送信し格納するシステムであって、前記携帯端末は、表示部と、マイクと、GPS機能と、内臓又は外付けのカメラと、前記カメラを介して得られた画像を解析する画像解析手段と、電柱の位置情報及び電柱番号を含む電柱用マスタデータを格納する記憶部と、アラーム発生源とを有すると共に、異常感知センサ、及び、各種点検用センサに接続可能であり、前記携帯端末は、さらに、前記カメラで前記点検対象電柱を捉えて、音声による点検開始指示を受けると、前記GPS機能によって検出された前記携帯端末の位置情報と前記画像解析手段により解析された前記カメラを介して得られた画像中の前記点検対象電柱に関する情報とに基づき、前記カメラで捉えた前記点検対象電柱の位置を特定し、前記電柱用マスタデータとの照合により、前記点検対象電柱の電柱番号を特定する電柱番号特定手段と、前記カメラによって捉えた前記点検対象電柱の画像に基づき、前記画像解析手段により前記点検対象電柱の設備を自動認識する自動認識手段と、前記自動認識手段によって認識された設備を前記管理サーバ上に格納されている前記点検対象電柱の設備データと照合して、点検対象とする点検対象設備を特定する点検対象特定手段と、前記異常感知センサによる検出結果に基づき前記点検対象設備に異常があるか否かを判定する異常判定手段と、前記異常判定手段により異常があると判定された場合に前記携帯端末の前記アラーム発生源を駆動させると共に前記表示部に表示される異常がある設備の部分を強調表示させる異常通知手段と、前記点検対象特定手段により特定された前記点検対象設備のそれぞれに対して、画面上のタップにより、又は、音声によって個別に点検する前記点検対象設備が特定され、異常がない場合には、異常がない旨の音声指示により異常なしの点検結果情報を点検データとして前記点検対象電柱および前記点検対象設備と関連付けて前記記憶部に格納し、異常がある場合には、異常がある旨の音声指示により点検データを入力可能な入力モードとし、前記カメラ、前記異常感知センサ、及び、前記各種点検用センサにより収集入力された点検データを前記点検対象電柱および前記点検対象設備と関連付けて前記記憶部に格納する点検データ格納処理手段と、全ての前記点検対象設備の点検を終えた場合に、前記記憶部に格納されている前記点検データを前記管理サーバに送信して、該管理サーバに格納させる点検結果送信手段と、を具備することを特徴としている。
【0009】
ここで、携帯端末は、スマートフォンやタブレット端末などのようなモバイル情報端末であり、表示部と、マイクと、GPS機能と、カメラ機能と、カメラを介して得られた画像を解析する画像解析手段と、電柱の位置情報及び電柱番号を含む電柱用マスタデータを格納する記憶部と、アラーム発生源とを有するものであれば、特にこだわるものではない。
カメラは、携帯端末に内蔵されているカメラを用いても、スマートグラスのようなウェアラブルカメラを用いてもよい。
【0010】
したがって、このようなシステムにおいては、点検対象電柱に設置されている配電設備の点検を行うにあたり、カメラを点検対象電柱に向けてその電柱を捉えた後に音声によって点検開始指示をすると、電柱番号特定手段により、GPS機能によって検出された携帯端末の位置情報とカメラを介して得られた画像中の点検対象電柱に関する情報とに基づき、その点検対象電柱の位置が特定されると共に、記憶部に格納された電柱用マスタデータとの照合により、点検対象電柱の電柱番号が特定される。また、自動認識手段により、カメラによって捉えた点検対象電柱の画像から画像解析手段によって電柱の設備が自動認識され、点検対象特定手段により、自動認識された電柱の設備が管理サーバ上に格納されている点検対象電柱の設備データと照合されて、点検対象とする点検対象設備に特定される。
【0011】
そして、異常判定手段によって異常感知センサによる検出結果に基づき点検対象設備に異常があると判定された場合に、異常通知手段により、携帯端末のアラーム発生源を駆動させると共に表示部に表示される異常がある設備の部分を強調表示させる。
その後、点検対象特定手段により特定された点検対象設備のそれぞれに対して、
画面上のタップにより、又は、音声によって個別に点検する前記点検対象設備が特定され、異常がない場合には、異常がない旨の音声指示により異常なしの点検結果が記憶部に格納され、異常がある場合には、異常がある旨の音声指示により、点検データを入力可能な入力モードとなり、収集入力された点検データが点検結果として記憶部に格納される。そして、全ての点検対象設備の点検を終えた場合には、記憶部に格納されている点検データが管理サーバへ送信され、該管理サーバに格納される。
【0012】
このため、点検作業者は、カメラで捉えた画像から自動認識された点検対象電柱の各配電設備に対して、音声による指示や画面上のタップにより点検対象設備を特定して点検を行うことができ、また、異常がある点検対象設備は、予め画面上で強調表示されるので、異常の有無の確認が容易となり、効率的かつ確実に点検作業を行うことが可能となる。特に、異常がない点検対象設備に対しは、異常がない旨の音声指示により異常なしの点検結果情報が記憶部に格納されるので、異常がある設備に対して、点検データの収集に時間をかけることが可能となり、点検作業の効率化と点検精度の向上を図ることが可能となる。
また、全ての点検対象設備の点検を終えた場合にのみ、記憶部に格納されている点検データが管理サーバへ送信されるので、点検対象となる全ての設備を確実に点検することが可能となり、また、点検結果のシステムへの登録作業も手間をかけずに行うことが可能となり、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0013】
なお、前記異常感知センサは、サーモカメラ、及び、指向性マイクを含み、前記異常判定手段は、前記サーモカメラによる検出結果が異常値である場合、及び、前記指向性マイクによる検出結果が異常値である場合の少なくとも一方を満たした場合に異常と判定するものであってもよい。
【0014】
また、前記自動認識手段は、前記画像解析手段により電柱の設備以外の異物があることをも自動認識し、前記点検対象特定手段は、前記自動認識手段により前記異物を自動認識した場合に、その異物も点検対象とし、前記異常通知手段は、前記携帯端末の前記アラーム発生源を駆動させると共に前記表示部に表示される前記異物の部分をも強調表示させるようにしてもよい。
このような構成によれば、配電設備のみを点検するだけではなく、鳥類の栄巣やその材料となる枝や金属物の存在をも作業者に把握させて対応させることも可能となる。
【0015】
さらに、自動認識手段によって認識された設備は、認識されたことが分かる表示形式で表示させ(例えば、設備を枠で囲んで表示し)、強調表示は、認識されたことが分かる表示形式とは異なる表示形式で表示(例えば、枠の色や形状を異ならせて表示)させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、カメラで電柱を捉えて点検開始を指示すると、その電柱の電柱番号が特定され、電柱の設備が自動認識されて点検対象設備が特定され、異常感知センサによる検出結果に基づき点検対象設備に異常があると判定された場合に携帯端末のアラーム発生源を駆動させると共に異常がある設備を強調表示させるので、点検作業者は、これを参照しながら、点検対象設備のそれぞれに対して、異常の有無を確認し、異常がない場合には、異常がない旨の音声指示により異常なしの点検結果情報が記憶部に格納され、異常がある場合には、収集入力された点検データが点検結果として記憶部に格納される。そして、全ての点検対象設備の点検を終えて点検終了の指示を受けると、記憶部に格納されている点検データが管理サーバに送信され、該管理サーバに格納される。
したがって、電柱に設置されている複数の配電設備の点検作業をカメラにより得られた画像の画像解析や異常通知を利用して効率的に且つ確実に行うことが可能となり、また、現場において設備単位で作業者が行った点検作業の点検結果のシステムへの登録を手間をかけずに行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0019】
図1において、本発明に係る配電設備点検システムの全体構成が示されている。
配電設備点検システムは、VPN(仮想プライベートネットワーク)1を介して、会社内の管理サーバ2に接続された携帯端末3を備えて構成されている。
【0020】
管理サーバ2は、配電設備の点検結果情報を格納する点検結果データベース10や、電柱の位置情報を電柱番号などと関連付けて格納する電柱データベース11、各電柱に設置されている配電設備を電柱番号などと関連付けて格納する配電設備データベース12等を具備する。
【0021】
携帯端末3としては、スマートフォンやタブレット、巡視点検用モバイル(PDA)等のモバイル情報端末である。この携帯端末3は、表示部30と、内蔵マイク31と、GPS信号を受信して現在位置を検出するGPS機能32と、表示部30に表示されている画像を解析する画像解析部33と、電柱の位置情報及び電柱番号を含む電柱用マスタデータ等を格納する記憶部34と、アラーム発生源35とを有する。
アラーム発生源35は、機械式音源、電子音源、発光源、及び振動源の何れか、又は、組み合わせで構成されるものであってもよい
【0022】
また、携帯端末3は、カメラ36、及び、サーモカメラ37aや指向性マイク37bなどの異常感知センサ37と接続されている(例えば、異常感知センサ37の挿入端子を携帯端末3に挿入接続する)。カメラ36は、携帯端末3に内蔵されている内蔵カメラ36aであっても、スマートグラス36bのような外付けのウェアラブルカメラであってもよい。ウェアラブルカメラである場合には、異常感知センサ37は、カメラ36と一体化されたものであっても、別体のものであってもよい。
【0023】
さらに、携帯端末3は、点検用の各種センサが一体化された点検用センサ群38が無線通信にて接続されている。一体化されているセンサとしては、接触型の温度センサ、非接触型のガスセンサ、接触型の振動センサ、接触型の電流センサ等であり、地絡センサや放電センサを更に具備するものであってもよい。
【0024】
このような携帯端末3は、さらに、表示部30に表示される電柱の電柱番号を特定する電柱番号特定部40と、表示部に表示されている電柱に設置された点検対象設備等を自動認識する自動認識部41と、点検対象となる部分を特定する点検対象特定部42と、点検対象となる設備の異常の有無を判定する異常判定部43と、異常がある場合にアラーム発生源を駆動させると共に表示部30に異常箇所が分かるように表示する異常通知部44と、点検対象設備の異常の有無に応じて点検データを記憶部34に格納する点検データ格納処理部45と、記憶部34に格納された点検データを管理サーバ2へ送信する点検結果送信部46とを備えている。
【0025】
電柱番号特定部40は、GPS機能によって把握される携帯端末3の位置情報と、カメラ36を介して得られた画像データから画像解析部33により解析された画像中の電柱に関する情報(方位、距離など)とに基づき、画面に表示されている電柱の位置を特定し、記憶部34に格納されている電柱用マスタデータとの照合により、その電柱の電柱番号を特定する。
【0026】
自動認識部41は、画面に表示されている電柱に設置されている配電設備を画像解析部33により自動認識する。また、自動認識部は、配電設備以外の異物(例えば、鳥類の栄巣やその材料となる枝や金属物等)も画像解析部33により自動認識する。
【0027】
点検対象特定部42は、自動認識部41で認識された対象物を、管理サーバ2の配電設備データベース12に格納されている対象電柱の設備データと照合して、点検対象となる設備であるか否かを判定し、点検対象の設備であると判定された場合には、点検対象設備として特定し、その点検対象設備の部分を枠で囲んで表示する。また、照合した結果、登録されている設備以外であると判定された場合には、配電設備以外の異物として、点検対象に特定する。
【0028】
異常判定部43は、自動判別された点検対象設備に対して、異常感知センサ37の検出結果に基づき異常があるか否かを判定するもので、例えば、サーモカメラ37aによる検出結果が異常値である場合、及び、指向性マイク37bによる検出結果が異常値である場合の少なくとも一方を満たした場合に異常と判定する。
【0029】
異常通知部44は、異常判定部43により異常があると判定された場合に、アラーム発生源35を駆動させると共に表示部30に表示される異常がある点検対象設備の部分に赤枠を表示させる等の強調表示を行う。また、異常通知部44は、自動認識部41によって電柱に異物を認識した場合にも、アラーム発生源35を駆動させると共に表示部30に表示される異物の部分に赤枠を表示させる等の強調表示を行う。
【0030】
点検データ格納処理部45は、点検対象特定部42で特定された点検対象設備や異物に対して順次点検して得られた点検データを記憶部34に格納する処理を行うもので、特に異常がない点検対象物に対しは、異常ない旨の音声指示により異常なしの点検結果情報を点検データとして記憶部34に格納し、異常や異物が認められる場合には、異常がある旨の音声指示により、カメラ36、異常感知センサ37、及び、点検用センサ群38により収集入力された画像や点検結果を、コメント等と共に点検データとして記憶部34に格納する処理を行う。
【0031】
点検結果送信部46は、全ての点検対象物の点検が終了すると、記憶部34に格納されている点検データを管理サーバ2に送信して該管理サーバ2に格納させる。
【0032】
以上のような構成において、携帯端末3を用いて配電設備の点検は
図2に示されるように行われる。
先ず、点検対象となる電柱(点検対象電柱)をカメラ36(携帯端末3の内蔵カメラ36aまたはスマートグラス36b)で捉え、表示部30に表示させた状態で、音声により点検開始を指示する(ステップ50)。
【0033】
これを受けて携帯端末3は、自身のGPS機能32により取得した情報に基づいて検出された携帯端末3の位置情報と、カメラ36によって撮影された画像データから画像解析部33により解析された画像中の電柱に関する情報(方位、距離など)とに基づき、捉えている電柱の位置を特定し、記憶部34に格納されている電柱用マスタデータとの照合により、捉えている電柱の電柱番号を特定する(ステップ52)。
【0034】
また、携帯端末3は、捉えている画面に表示された電柱に設置されている配電設備や異物を画像解析部33によって自動認識し、配電設備においては、管理サーバ2の配電設備データベース12に格納されている該当電柱の設備データと照合し、合致するものを点検対象設備として特定し、この特定された点検対象設備を、例えば、
図3(a)のように枠で囲んで画面表示する(ステップ54)。
また、認識した異物は、管理サーバ2の配電設備データベース12に格納されている設備データに登録されているものではないことを確認した上で点検対象として特定する。
【0035】
その後、自動認識された点検対象設備に対して、異常感知センサ37(サーモカメラ37a、指向性マイク37b)によって得られた検出結果に基づき異常があるか否かを判定する(ステップ56)。この異常判定は、サーモカメラ37aによる検出結果が異常値である場合、及び、指向性マイク37bによる検出結果が異常値である場合の少なくとも一方を満たした場合に異常と判定する。
【0036】
そして、ステップ56において、点検対象設備に異常があると判定された場合には、携帯端末3のアラーム発生源35を駆動させて警報音を鳴動させると共に、異常がある点検対象設備を赤枠で囲んで、或いは、枠の表示形式を異ならせて(例えば、
図3(b)のようにピッチの細かい破線で囲んで)強調表示する(ステップ58)。
また、ステップ56において、電柱に点検対象設備以外の異物があると判定した場合においても、携帯端末3のアラーム発生源40を駆動させて警報音を鳴動させると共に、異物を強調表示する(ステップ58)。
このステップ58において、サーモカメラ37aによる異常判定がなされた場合には、点検対象設備の温度分布(
図3(c)で示すようなサーモ画像)を表示するようにしてもよい。
【0037】
以上の処理を経て、次に、点検対象設備、及び、異物に対して、順次個別の点検を行うために、携帯端末3は、点検対象となる点検対象設備または異物の入力を音声又は画像の表示で要請する。これを受けて、点検作業者は、画面上において枠で囲まれている設備又は異物を、音声(例えば、「変圧器」と音声で指示)または画面上の操作(画面上の設備をタップ)により特定して個別の点検に入る(ステップ60)。
【0038】
携帯端末は、点検対象設備または異物が特定されると、この特定された点検対象設備または異物に対して、異常の有無の入力を音声又は画面上の表示で要請し、これを受けて、点検作業者は、画面上での強調表示がなく、目視でも異常が認められない場合には、「異常なし」との点検結果を音声によって指示する。また、画面上で強調表示がなされ、又は、目視によって異常が認められる場合には、「異常あり」との点検結果を音声によって指示する(ステップ62)。
携帯端末3は、異常なしの指示がなされると、異常なしの点検結果情報を点検データとして該当電柱や設備の種別等と関連づけて記憶部34に格納し(ステップ64)、その点検対象設備または異物を点検済として消込を行う(ステップ66)。
【0039】
これに対して、ステップ62において、異常ありの指示がなされると、携帯端末3は、点検データを収集する入力モードとなり、点検データの入力要請を音声又は画面上の表示で要請し、点検作業者からの各種点検データの入力を待つ待機状態とする。
点検作業者は、これを受けて、音声による指示または携帯端末3の操作によりカメラ36によって該当する点検対象設備または異物の画面を撮影すると共に、該当する点検対象設備のサーモカメラ37aによるサーモ画像を撮影して入力し(ステップ68)、また、必要に応じて該当する点検設備に接近して点検用センサ群38を近接又は接触させて設備診断を行い、その結果を入力する。また、点検対象が異物の場合には、除去が可能であれば、その異物を除去する(ステップ70)。
【0040】
また、点検作業者は、異常内容を音声または画面上の操作により入力し、必要に応じて、GPSによる位置情報、撮影写真、地図情報、工事内容等を音声または画面上の操作で入力して工事依頼票を作成する(ステップ68)。
そして、緊急性の有無を確認し(ステップ72)、緊急性があれば、上長の承認を得た後に工事会社へ工事を依頼する(ステップ74)。
【0041】
その後、点検データの入力等を終えると、携帯端末3は、該当する点検対象設備または異物に対する点検終了指示の入力要請が音声又は画面上の表示で要請され、これを受けて点検作業者が該当設備または異物に対して点検終了を音声又は画面上の操作により指示を行うと(ステップ76)、携帯端末3は、該当設備又は該当異物に対する警報音を停止すると共に、強調表示を停止し(ステップ78)、収集した点検データ(撮影した写真、サーモ画像、各種点検センサから得られた点検結果、作業者が入力したコメントなど)を該当電柱や設備の種別等と関連づけて記憶部に格納し(ステップ80)、その後、その点検対象設備又は対象異物を点検済として消込を行う(ステップ66)。
【0042】
その後、ステップ82において、点検対象として特定された設備又は異物について、未点検の点検対象設備や異物の有無を確認し(ステップ82)、未点検のものがあれば、ステップ60へ戻り、同様の処理を繰り返す。
これに対して、未点検の設備や異物がなく、全ての点検対象設備や異物の点検が終了したと判定された場合には、該当する電柱の全景の写真の入力要請が音声又は画面上の表示で要請され、これを受けて点検作業者が電柱全景の写真を撮影してそのデータを入力して記憶部34に格納すると(ステップ84)、携帯端末3は、音声又は画面の表示で、設備点検完了を通知し(ステップ86)、ステップ64やステップ80で記憶部34に格納された点検データや、ステップ84で記憶部34に格納された電柱の全景画像を管理サーバ2に送信する(ステップ88)。そして、管理サーバ2は、これを受けて点検データを、点検結果データベース10に格納し、いつでも閲覧できる状態とする。
【0043】
したがって、以上の配電設備点検システムによれば、携帯端末3の内蔵カメラ36aやスマートグラス36bで点検しようとする電柱を捉えて点検開始指示を音声で行うと、点検しようとする電柱の位置が特定されて電柱番号が特定され、また、その電柱に設置されている点検対象設備や異物が自動判別され、異常感知センサ36による検出結果に基づき、点検対象設備の異常の有無が判定され、異常がある点検対象設備や異物があると、警報音鳴動すると共に画面上の該当点検対象設備や異物が強調表示される。
【0044】
その後、その画面を参照しながら、点検対象設備や異物を順次点検し、点検データを収集するが、異常がない設備に対しては、異常なしの音声指示により、異常なしの点検結果情報がその電柱の電柱番号や設備の種別と関連付けられて点検データとして記憶部34に自動的に格納され、異常がある設備や異物に対しては、その電柱の点検対象設備や異物に対して収集入力された点検データがその電柱の電柱番号及び点検対象設備の種別と関連付けられて記憶部34に格納される。
そして、各設備や異物の点検データが収集された後に、該当電柱の全景の写真が取集され、記憶部34に格納されていた点検データと電柱全景の写真データが管理サーバ2に送信されて格納される。
【0045】
なお、次の点検対象電柱の配電設備を点検する場合には、以上の操作を繰り返せばよく、したがって、管理サーバ2の点検結果データベース10に格納される点検結果は、例えば、
図4に示されるようなデータ構造として格納される。
【0046】
したがって、点検作業者は、点検対象電柱を点検するにあたり、携帯端末によって自動認識された点検対象設置や異物を見ながら、順次、点検対象を音声又は画面上のタップによって選択し、点検データを収集すればよく、効率よく点検することが可能となる。特に、異常がない設備に対しては、異常なしの音声指示により自動的に点検なしの点検結果情報が格納されて消込みがなされるので、作業労力を大幅に低減することが可能になる。
【0047】
また、点検対象となる設備や異物の全てが点検されない限り点検が完了しないので、点検漏れがなく、確実に点検作業を行うことが可能となり、また、異常がない設備に対しては、異常なしの点検結果情報が記憶部に格納して点検を早急に終わらせ、異常がある設備に対して、点検用センサ群38による精密な点検データの収集に時間をかけることが可能となるので、点検精度の向上を図ることが可能となる。
【0048】
さらに、取集された各設備や異物の点検データを点検終了後に管理サーバ2に自動的に送信されて格納されるので、登録作業を格別な処理は必要ではなく、また、責任者による事後の確認も容易となる。