特許第6876284号(P6876284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876284
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】シート装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20210517BHJP
   A61G 5/02 20060101ALI20210517BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A47C7/62 Z
   A61G5/02
   G01L5/00 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-255599(P2016-255599)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-102830(P2018-102830A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成28年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進課事業(SCOPE) 地域ICT振興型研究開発、「布圧力センサを用いた車椅子用褥瘡予防支援システムの研究開発」研究開発委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
(73)【特許権者】
【識別番号】000150774
【氏名又は名称】株式会社槌屋
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000226839
【氏名又は名称】日進医療器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽久
(72)【発明者】
【氏名】水野 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】柴田 莉沙
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 健二
(72)【発明者】
【氏名】榎堀 優
(72)【発明者】
【氏名】林 千尋
(72)【発明者】
【氏名】亀野 敏志
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−071098(JP,A)
【文献】 特開2011−086114(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0068720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/62
A61G 5/02
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の荷重を支持する支持面を有する荷重支持体と、当該荷重支持体の前記支持面にかかる荷重の分布を検知する荷重分布検知装置とが備えられたシート装置において、
前記荷重分布検知装置は、前記荷重支持体の前記支持面を覆う覆い体と、当該覆い体において前記支持面を覆う部分に形成されて、受ける荷重に応じて静電容量が変化するコンデンサーである感圧セルと、当該感圧セルと電気的に接続された状態に設けられたコンデンサーである対照セルと、前記感圧セルにおける静電容量の変化量に、前記対照セルにおける静電容量の変化量として検出される混線信号の補正をかける補正手段とを備え
前記対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサーであり、前記覆い体において前記支持面を覆う部分に設けられ、かつ、前記対照セルのひずみを抑える構成が付加されているものである
シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたシート装置であって、
前記対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサーであり、かつ、前記対照セルのひずみを抑制するコーティングによって前記覆い体上に固められた状態に設けられている、
シート装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたシート装置であって、
前記対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサーであり、かつ、前記対照セルが受ける荷重を抑えるカバーによって覆われた状態で前記覆い体上に設けられている、
シート装置。
【請求項4】
着座者の荷重を支持する支持面を有する荷重支持体と、当該荷重支持体の前記支持面にかかる荷重の分布を検知する荷重分布検知装置とが備えられたシート装置において、
前記荷重分布検知装置は、前記荷重支持体の前記支持面を覆う覆い体と、当該覆い体において前記支持面を覆う部分に形成されて、受ける荷重に応じて静電容量が変化するコンデンサーである感圧セルと、当該感圧セルと電気的に接続された状態に設けられたコンデンサーである対照セルと、前記感圧セルにおける静電容量の変化量に、前記対照セルにおける静電容量の変化量として検出される混線信号の補正をかける補正手段とを備え、
前記荷重支持体は、適正な着座姿勢にある前記着座者の荷重を前記支持面によって支持する際に前記着座者からの荷重がかからない面である非支持面を備え、
前記覆い体は、前記荷重支持体における前記支持面および前記非支持面の両方を覆った状態に配設され、
前記対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサーであり、かつ、前記覆い体において前記非支持面を覆う部分に設けられている、
シート装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたシート装置であって、
前記覆い体は、経糸と緯糸とを互いに織り合わせて構成された織物であり、
前記織物において緯方向に並ぶ経糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電経糸が緯方向に並ぶ導電経糸領域と、絶縁体からなる経糸である絶縁経糸が緯方向に並ぶ絶縁経糸領域と、が緯方向に交互に並べられた構造を呈し、
前記織物において経方向に並ぶ緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電緯糸が経方向に並ぶ導電緯糸領域と、絶縁体からなる緯糸である絶縁緯糸が経方向に並ぶ絶縁緯糸領域と、が経方向に交互に並べられた構造を呈し、
前記織物において前記支持面を覆う部分には、前記導電経糸領域と前記導電緯糸領域とが交差される複数箇所に、前記導電経糸と前記導電緯糸とが織り合わされたコンデンサーが前記感圧セルとして形成され、
前記織物において前記非支持面を覆う部分には、前記導電経糸領域と前記導電緯糸領域とが交差される少なくとも1箇所に、前記導電経糸と前記導電緯糸とが織り合わされたコンデンサーが前記対照セルとして形成され、
前記感圧セルは、当該感圧セルにおける前記導電経糸と前記導電緯糸との距離の変化に応じて静電容量を変化させる、
シート装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたシート装置であって、
前記荷重支持体は、縁部に切り欠きを有する一方側の面を前記支持面として有し、
前記荷重支持体において前記切り欠きがある側の端面は、前記織物の縁部を前記荷重支持体の前記支持面側から端面側に折り曲げてなる折りしろによってくるまれ、
前記折りしろ上には、前記対照セルが配設され、
前記折りしろにおいて前記切り欠きをくるむ部分である切り欠きくるみ部分は、前記織物の端縁から延びる裁ち目によって、前記折りしろにおける他の部分とは別個に折り曲げられるように構成されている、
シート装置。
【請求項7】
車椅子である、請求項1ないし請求項6のうちのいずれかに記載されたシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者を支持する支持面にかかる荷重の分布を検知する荷重分布検知装置が備えられたシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子などのシート装置において、着座者を支持する支持面にかかる荷重の分布を検知して、この検知結果から着座者の姿勢の崩れについての警報を発するものが存在する(例えば特許文献1を参照)。ここで、特許文献1の技術では、車椅子のシートのクッションに柔軟な薄膜状のセンサーを設ける。このセンサーは、帯状の電極が縦横に配されて、これらの電極が交差される複数箇所がコンデンサーとされた構成を有する。そして、センサーは、その各コンデンサーにかかる荷重を、その各電極間の静電容量に基づいて検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−071098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された技術は、センサーの各コンデンサーが互いに隣り合って電気的につながった状態に並んでいるため、各コンデンサーに混線が生じてこれらのコンデンサーの静電容量を正確に求めることができないものであった。
【0005】
本発明は、シート装置の支持面にかかる荷重の分布をコンデンサーの並びにおける各コンデンサーの静電容量から求める際に補正処理を行うことで、支持面にかかる荷重の分布をより高い精度で求めることを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における1つの特徴によると、着座者の荷重を支持する支持面を有する荷重支持体と、この荷重支持体の支持面にかかる荷重の分布を検知する荷重分布検知装置とが備えられたシート装置が提供される。荷重分布検知装置は、荷重支持体の支持面を覆う覆い体と、この覆い体において支持面を覆う部分に形成されて、受ける荷重に応じて静電容量が変化するコンデンサーである感圧セルを備えている。また、荷重分布検知装置は、感圧セルと電気的に接続された状態に設けられたコンデンサーである対照セルと、感圧セルにおける静電容量の変化量に、対照セルにおける静電容量の変化量として検出される混線信号の補正をかける補正手段とを備えている。
【0007】
本発明のシート装置は、荷重支持体の支持面にかかる着座者の荷重の分布を検知する際に、荷重支持体の支持面上に設けられたコンデンサーである感圧セルの静電容量の変化量を求める。ここで、上記シート装置において感圧セルと電気的に接続されたコンデンサーである対照セルは、感圧セルからの混線信号のために、見かけ上の静電容量が変化する。その上で、上記シート装置は、感圧セルの静電容量の変化量に含まれる混線信号の影響を、対照セルにおける見かけ上の静電容量の変化量に基づいて補正する。このように、シート装置の支持面にかかる荷重の分布を感圧セルの並びにおける各感圧セルの静電容量から求める際に補正処理を行うことで、支持面にかかる荷重の分布をより高い精度で求めることが可能となる。
【0008】
上記シート装置における態様の1つにおいては、対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサーである。この態様における好ましい実施形態の1つにおいては、対照セルは、この対照セルのひずみを抑制するコーティングによって覆い体上に固められた状態に設けられている。この構成によれば、対照セルを固めるコーティングにより対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0009】
上記態様における別の好ましい実施形態の1つにおいては、対照セルは、この対照セルが受ける荷重を抑えるカバーによって覆われた状態で覆い体上に設けられている。この構成によれば、対照セルを覆うカバーにより対照セルにかかる荷重を抑えてこの対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0010】
上記態様における別の好ましい実施形態の1つにおいては、荷重支持体は、適正な着座姿勢にある着座者の荷重を支持面によって支持する際に着座者からの荷重がかからない面である非支持面を備える。また、覆い体は、荷重支持体における支持面および非支持面の両方を覆った状態に配設され、対照セルは、覆い体において非支持面を覆う部分に設けられている。この構成によれば、着座者からの荷重が対照セルにかからないようにしてこの対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0011】
上記好ましい実施形態の1つにおいては、覆い体は、経糸と緯糸とを互いに織り合わせて構成された織物とすることができる。この場合、織物において緯方向に並ぶ経糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電経糸が緯方向に並ぶ導電経糸領域と、絶縁体からなる経糸である絶縁経糸が緯方向に並ぶ絶縁経糸領域と、が緯方向に交互に並べられた構造を呈する。織物において経方向に並ぶ緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電緯糸が経方向に並ぶ導電緯糸領域と、絶縁体からなる緯糸である絶縁緯糸が経方向に並ぶ絶縁緯糸領域と、が経方向に交互に並べられた構造を呈する。織物において支持面を覆う部分には、導電経糸領域と導電緯糸領域とが交差される複数箇所に、導電経糸と導電緯糸とが織り合わされたコンデンサーが感圧セルとして形成される。織物において非支持面を覆う部分には、導電経糸領域と導電緯糸領域とが交差される少なくとも1箇所に、導電経糸と導電緯糸とが織り合わされたコンデンサーが対照セルとして形成される。感圧セルは、この感圧セルにおける導電経糸と導電緯糸との距離の変化に応じて静電容量を変化させる。
【0012】
上記好ましい実施形態の1つにおいては、荷重支持体は、縁部に切り欠きを有する一方側の面を支持面として有する。荷重支持体において切り欠きがある側の端面は、織物の縁部を荷重支持体の支持面側から端面側に折り曲げてなる折りしろによってくるまれる。この折りしろ上には、上記対照セルが配設される。折りしろにおいて切り欠きをくるむ部分である切り欠きくるみ部分は、織物の端縁から延びる裁ち目によって、折りしろにおける他の部分とは別個に折り曲げられるように構成されている。
【0013】
上記好ましい実施形態によれば、荷重支持体をくるむ織物の折りしろに裁ち目を入れて形成される切り欠きくるみ部分によって、荷重支持体の切り欠きを他の端面とは別個にくるむことができる。これにより、荷重支持体の切り欠きの部分において織物が荷重支持体から浮き上がった状態になることを抑えることができる。また、対照セルを織物の折りしろに配設する構成により、この折りしろで荷重支持体をくるむという単純な作業で対照セルを配置することができる。
【0014】
上述した各実施形態にかかるシート装置は、具体的には例えば車椅子である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる車椅子1の斜視図である。
図2図1の座10の分解斜視図である。
図3図1の座10の平面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図2の織物13の部分拡大図である。
図6図2の荷重分布検知装置12の構成を表したブロック図である。
図7図1の背20の分解斜視図である。
図8図1の背20の正面図である。
図9図8のIX−IX線端面図である。
図10図8のX−X線端面図である。
図11図7の織物23の部分拡大図である。
図12】車椅子1に着座者が適正な着座姿勢で着座した際に座10にかかった荷重の分布を表した強度グラフである。
図13】車椅子1に着座者が適正な着座姿勢で着座した際に背20にかかった荷重の分布を表した強度グラフである。
図14図6の処理装置12Dの処理を表したフローチャートである。
図15図5の織物13の変形例を表した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、本明細書においては、各構成の前後左右上下を、適正な着座姿勢にある着座者(図示せず)から見た場合の前後左右上下を基準として定義する。
【0017】
〈車椅子1の構成〉
一実施形態にかかるシート装置である車椅子1は、図1に示すように、着座者(図示せず)が着座するひじ掛けいす状のフレーム1Aに、2つ1組の駆動輪1Bと、2つ1組の自在輪1Cとを組みつけた構成となっている。フレーム1Aには、着座に際して着座者が腰を下ろす座10と、着座者がその背中をもたれかからせる背20とが着脱自在(仮想線を参照)に取り付けられている。
【0018】
駆動輪1Bは、フレーム1Aの下部を左右両側から挟み込むように配置されて、前後に回転させることができるようになっている。自在輪1Cは、フレーム1Aの下部において各駆動輪1Bの前方となる部分に1つずつ配置されて、前後左右のいずれの方向にも転がすことができるようになっている。駆動輪1Bおよび自在輪1Cは、車椅子1および着座者の荷重を分散して支えている。また、フレーム1Aの上部には、自転車のグリップを模した形状の手押しハンドル1Dが2本設けられている。これらの構成によれば、着座者が着座した状態の車椅子1を、この車椅子1の後方から人力で押し引きして移動させることができる。
【0019】
〈座10の構成〉
座10は、図2ないし図4に示すように、弾性を有するクッション材11を荷重支持体として、この荷重支持体を開閉可能なカバー10Aで包んだ構成を有している。このカバー10Aは、その下面(図4では下側の面)に適宜の数(例えば2つ)の取り付け部材10Bが取り付けられて、この取り付け部材10Bによってフレーム1A(図4の仮想線を参照)に着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0020】
なお、本実施形態において、クッション材11は直方体状のフォーム板材であるが、クッション材11は例えば植物由来のラテックスあるいはシリコーンゲルを袋詰めにした荷重支持体であってもよく、その形状は直方体状に限定されない。また、本実施形態において、カバー10Aは線ファスナー開閉式のカバーであるが、カバー10Aは例えば面ファスナー開閉式のカバーなどであってもよい。また、本実施形態において、取り付け部材10Bはカバー10Aをフレーム1Aに貼り付ける面ファスナーであるが、取り付け部材10Bは例えばカバー10Aをフレーム1Aに結わえる留めひもであってもよい。また、取り付け部材10Bは、例えばフレーム1Aに対するカバー10Aの滑りを防ぐ滑り止めシートであってもよい。
【0021】
クッション材11は、図4に示すように、その一方側の面(図4では上側の板面)を支持面11Aとして、この支持面11Aで着座者90(仮想線を参照)の荷重を片側(図4では下側)から支持できるようになっている。クッション材11は、その支持面11Aを上に向けた状態で適正な着座姿勢にある着座者90の荷重を支持する際に、そのこば面11Bに着座者90からの荷重がかからないように形成されている。ここで、こば面11Bは、支持面11Aを上に向けた状態のクッション材11において前後左右のいずれかを向く端面であり、本発明における「非支持面」に相当する。なお、こば面11Bには、着座者90からの荷重によってクッション材11にひずみが生じた場合に、このひずみに伴って生じる応力が荷重としてかかることがあるが、この荷重の大きさは着座者90からの荷重と比して無視できるほど小さい。
【0022】
クッション材11は、図2に示すように、クッション材11の支持面11Aにかかる荷重の分布を検知するための荷重分布検知装置12と一緒にカバー10Aに包まれている。荷重分布検知装置12は、クッション材11を上側からくるむ(図4参照)織物13を備えている。ここで、織物13は、図4に示すように、その中央部13Iでクッション材11の支持面11Aを覆い、織物13において中央部13Iを取り巻く周縁部13K(図2参照)でこば面11Bを覆った状態に配設される。すなわち、織物13は、本発明における「覆い体」に相当する。また、織物13は、その緯方向側の縁部である耳13M(図5参照)がクッション材11の下面(図4では下側の面)に接着材13Nによって貼り付けられている。なお、接着材13Nは、耳13Mをクッション材11に着脱自在に貼り付けるフックアンドパイルまたは両面テープであっても、耳13Mをクッション材11から剥がれないように固着させる接着剤あるいは縫い糸であってもよい。
【0023】
織物13は、図5に示すように、経方向に延びる経糸と緯方向に延びる緯糸とを互いに織り合わせて構成された平織の織物である。ここで、織物13の経糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電経糸13Aと、絶縁体からなる絶縁経糸13Cと、の2種類の経糸からなり、これら2種類の経糸は織物13の緯方向に並んでいる。また、織物13の緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電緯糸13Eと、絶縁体からなる絶縁緯糸13Gと、の2種類の緯糸からなり、これら2種類の緯糸は織物13の経方向に並んでいる。なお、織物13において、導電緯糸13Eおよび絶縁緯糸13Gは、これらの各糸端を織物13の耳13Mから切りっぱなしの状態で突出させている。
【0024】
ところで、織物13における経糸の並びは、導電経糸13Aのみが緯方向に並ぶ導電経糸領域13Bと、絶縁経糸13Cのみが緯方向に並ぶ絶縁経糸領域13Dと、が緯方向に交互に並べられた構造を呈している。また、織物13における緯糸の並びは、導電緯糸13Eのみが経方向に並ぶ導電緯糸領域13Fと、絶縁緯糸13Gのみが経方向に並ぶ絶縁緯糸領域13Hと、が経方向に交互に並べられた構造を呈している。ここで、導電経糸領域13Bおよび導電緯糸領域13Fは、織物13において中央部13Iを通る領域においては比較的密になり、周縁部13Kを通る領域においては比較的疎となるように並べられている。
【0025】
このため、導電経糸領域13Bと導電緯糸領域13Fとが交差される複数箇所には、それぞれ導電経糸13Aと導電緯糸13Eとが織り合わされたコンデンサーが形成される。これらのコンデンサーの一部は、図2に示すように、クッション材11の支持面11Aを覆う織物13の中央部13Iに経緯に並んだ状態に配されて、支持面11Aにかかる荷重の分布を検知するための感圧セル13Jとされる。また、上記複数のコンデンサーの一部は、織物13の周縁部13Kに中央部13Iを囲むように配されて、感圧セル13Jから隔離された対照セル13Lとされる。これらの対照セル13Lは、各対照セル13Lをなす導電経糸領域13Bの導電経糸13Aおよび導電緯糸領域13Fの導電緯糸13Eと電気的に接続される。
【0026】
さて、荷重分布検知装置12は、図6に示すように、それぞれが互いに異なる周期信号を発振する発振回路12Aを、織物13において中央部13I(図5参照)を通る導電経糸領域13Bの本数と同じ数だけ備えている。また、荷重分布検知装置12は、複数の経路からの出力を分離した状態で取り出すマルチプレクサ12Cを備えている。また、荷重分布検知装置12は、マルチプレクサ12Cが取り出した出力に基づいて前もって設定された処理を実行する処理装置12Dを備えている。また、荷重分布検知装置12は、処理装置12Dの処理結果を記憶するストレージ12Eを備えている。また、荷重分布検知装置12は、発振回路12A、マルチプレクサ12C、処理装置12D、および、ストレージ12Eを収納するきょう体12Fを備えている。
【0027】
各発振回路12Aは、きょう体12Fにきょう体接地された状態で、所定の周波数の矩形波交流電流を持続的に作り、この矩形波交流電流を周期信号として発振する。これらの周期信号は、織物13の各導電経糸領域13Bにはとめ接続されたフレキシブルフラットケーブル12G(図5参照)を介して、織物13の中央部13Iを通る各導電経糸領域13Bにそれぞれ別個に印加される。マルチプレクサ12Cは、織物13の各導電緯糸領域13Fからの出力を、これらの導電緯糸領域13Fにはとめ接続されたフレキシブルフラットケーブル12H(図5参照)を介して取り出す。なお、図2および図5において、フレキシブルフラットケーブル12Gおよびフレキシブルフラットケーブル12Hは、織物13において対照セル13Lよりも中央部13I寄りとなる部分ではとめ接続されている。ただし、フレキシブルフラットケーブル12Gおよびフレキシブルフラットケーブル12Hは、織物13において対照セル13Lよりも縁部寄りとなる部分ではとめ接続されていてもよい(図15参照)。
【0028】
処理装置12Dは、図14のフローチャートに示す複数の処理を実行する。すなわち、処理装置12Dは、各発振回路12Aの周期信号を取得し(ステップS1)、マルチプレクサ12Cが取り出した出力を取得して(ステップS2)、これらから各感圧セル13Jおよび各対照セル13Lの見かけ上の静電容量を導出する(ステップS3)。なお、上記見かけ上の静電容量は、ステップS1で周期信号として取得した矩形波交流電流と、ステップS2で取得した出力とを、その振幅または位相で対比することによって求めることができるものである。
【0029】
ここで、感圧セル13Jおよび対照セル13Lの静電容量は、対象のセル(感圧セル13Jまたは対照セル13L)が受ける荷重に応じて、このセルを構成する導電経糸13Aと導電緯糸13Eとの距離が変化する(すなわちひずむ)ことによって変動する。また、処理装置12Dが上記ステップS3にて導出する感圧セル13Jおよび対照セル13Lの見かけ上の静電容量は、対象以外のセル(感圧セル13Jまたは対照セル13L)の静電容量が変動することにより生じる混線信号によっても変動する。
【0030】
そこで、処理装置12Dは、着座者90からの荷重がかからない対照セル13Lの静電容量の変化量を上記混線信号として検出し(ステップS4)、検出した混線信号で感圧セル13Jの見かけ上の静電容量を補正する(ステップS5)。そして、処理装置12Dは、補正後の感圧セル13Jの静電容量からこの感圧セル13Jが受ける荷重に対応するパラメータを導出する(ステップS6)。すなわち、処理装置12Dは、導出した各感圧セル13Jおよび各対照セル13Lの静電容量に基づいて、各感圧セル13Jが受ける荷重に対応するパラメータを導出する。この際、処理装置12Dは、本発明における「補正手段」として機能する。
【0031】
そして、処理装置12Dは、上記ステップS6の導出結果に基づいてクッション材11の支持面11Aにかかる荷重に対応するパラメータの分布を検知し(ステップS7)、その検知結果をストレージ12Eに出力する(ステップS8)。このストレージ12Eは、処理装置12Dの出力をその出力時間と対応付けて、後でコンピュータ読み取りによる確認ができる強度グラフの画像ファイルとして記憶する。
【0032】
上述した各構成においては、クッション材11の支持面11Aにかかる着座者90(図4参照)の荷重の分布を検知する際に、クッション材11の支持面11A上に並ぶように形成されたコンデンサーである感圧セル13Jの静電容量の変化量を求める。この際、感圧セル13Jと電気的に接続されたコンデンサーである対照セル13Lは、感圧セル13Jからの混線信号のために、見かけ上の静電容量が変化する。その上で、処理装置12Dは、感圧セル13Jの静電容量の変化量に含まれる混線信号の影響を、対照セル13Lにおける見かけ上の静電容量の変化量に基づいて補正する。このように、支持面11Aにかかる荷重の分布を感圧セル13Jの並びにおける各感圧セル13Jの静電容量から求める際に補正処理を行うことで、支持面11Aにかかる荷重の分布をより高い精度で求めることが可能となる。また、対照セル13Lをこば面11B上に設けることで、着座者90からの荷重が対照セル13Lにかからないようにしてこの対照セル13Lのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0033】
〈背20の構成〉
背20は、図7ないし図10に示すように、弾性を有するクッション材21を荷重支持体として、この荷重支持体を開閉可能なカバー20Aで包んだ構成を有している。このカバー20Aは、その後面に適宜の数(例えば2つ)の取り付け部材20Bが取り付けられて、この取り付け部材20Bによってフレーム1A(図10の仮想線を参照)に着脱自在に取り付けることができるようになっている。なお、カバー20Aは、その内部にクッション材21を収納した状態において、カバー20Aの上部を折り曲げてたたむ(図1参照)ことが可能なサイズに形成されている。
【0034】
なお、本実施形態において、カバー20Aはダブルファスナー開閉式のカバーであるが、カバー20Aは例えば線ファスナー開閉式または面ファスナー開閉式のカバーなどであってもよい。また、本実施形態において、取り付け部材20Bはカバー20Aをフレーム1Aに貼り付ける面ファスナーであるが、取り付け部材20Bは例えばカバー20Aをフレーム1Aに結わえる留めひもであってもよい。
【0035】
また、本実施形態において、クッション材21は、直方体状のフォーム板材における上部の両角を面取りすることで、屈折した切り欠きである片几帳面21Cを左右両側の側縁上部に有する板材(図7および図8を参照)として形成されている。これらの片几帳面21Cには、その屈折部分から下方に向かって直線状に伸びる切り欠きであるスリット21Dが設けられている。なお、クッション材21は例えば植物由来のラテックスあるいはシリコーンゲルを袋詰めにした荷重支持体であってもよく、その形状は上述したものに限定されない。
【0036】
また、クッション材21は、図10に示すように、その一方側(本実施形態では前側)の板面を支持面21Aとして、この支持面21Aで着座者90(仮想線を参照)がもたれかかることによる荷重を片側(本実施形態では後側)から支持できるようになっている。クッション材21をなすフォーム板材は、その支持面21Aを前方に向けた状態で適正な着座姿勢にある着座者90の荷重を支持する際に、左右のいずれかを向く端面21Bに着座者90からの荷重がかからないように形成されている。ここで、端面21Bは、本発明における「非支持面」に相当する。なお、端面21Bには、着座者90からの荷重によってクッション材21にひずみが生じた場合に、このひずみに伴って生じる応力が荷重としてかかることがあるが、この荷重の大きさは着座者90からの荷重と比して無視できるほど小さい。
【0037】
クッション材21は、図7に示すように、クッション材21の支持面21Aにかかる荷重の分布を検知するための荷重分布検知装置22と一緒にカバー20Aに包まれている。荷重分布検知装置22は、クッション材21を前側からくるむ織物23(図9参照)を備えている。ここで、織物23は、図9および図10に示すように、その中央部23Iでクッション材21の支持面21Aを覆い、織物23の周縁部23Kをクッション材21の支持面21A側から端面21B側に折り曲げてなる折りしろ23Oで端面21Bを覆った状態に配設される。すなわち、織物23は、本発明における「覆い体」に相当する。また、織物23の縁部は、クッション材21の後面に接着材23Nによって貼り付けられている。なお、接着材23Nは、織物23をクッション材21に着脱自在に貼り付けるフックアンドパイルまたは両面テープであっても、織物23をクッション材21から剥がれないように固着させる接着剤あるいは縫い糸であってもよい。
【0038】
織物23は、図11に示すように、経方向に延びる経糸と緯方向に延びる緯糸とを互いに織り合わせて構成された平織の織物である。ここで、織物23の経糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電経糸23Aと、絶縁体からなる絶縁経糸23Cと、の2種類の経糸からなり、これら2種類の経糸は織物23の緯方向に並んでいる。また、織物23の緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電緯糸23Eと、絶縁体からなる絶縁緯糸23Gと、の2種類の緯糸からなり、これら2種類の緯糸は織物23の経方向に並んでいる。なお、織物23において、導電緯糸23Eおよび絶縁緯糸23Gは、その各糸端を織物23における緯方向側の縁部である耳23Mから切りっぱなしの状態で突出させている。
【0039】
ところで、織物23における経糸の並びは、導電経糸23Aのみが緯方向に並ぶ導電経糸領域23Bと、絶縁経糸23Cのみが緯方向に並ぶ絶縁経糸領域23Dと、が緯方向に交互に並べられた構造を呈している。また、織物23における緯糸の並びは、導電緯糸23Eのみが経方向に並ぶ導電緯糸領域23Fと、絶縁緯糸23Gのみが経方向に並ぶ絶縁緯糸領域23Hと、が経方向に交互に並べられた構造を呈している。ここで、導電経糸領域23Bおよび導電緯糸領域23Fは、織物23において中央部23Iを通る領域においては比較的密になり、周縁部23Kを通る領域においては比較的疎となるように並べられている。
【0040】
このため、導電経糸領域23Bと導電緯糸領域23Fとが交差される複数箇所には、それぞれ導電経糸23Aと導電緯糸23Eとが織り合わされたコンデンサーが形成される。これらのコンデンサーの一部は、織物23の中央部23Iに経緯に並んだ状態に配されて、支持面21Aにかかる荷重の分布を検知するための感圧セル23Jとされる。また、上記複数のコンデンサーの一部は、織物23の周縁部23Kに中央部23Iを多重に(例えば3重に)囲むように配されて感圧セル23Jから隔離される。そして、これらのコンデンサーのうち、折りしろ23Oにて端面21B(図7参照)を覆う部分に位置するコンデンサーが対照セル23Lとされる。これらの対照セル23Lは、各対照セル23Lをなす導電経糸領域23Bの導電経糸23Aおよび導電緯糸領域23Fの導電緯糸23Eと電気的に接続される。
【0041】
上記各構成によれば、織物23の折りしろ23Oに配設したコンデンサーを対照セル23Lとする構成により、折りしろ23Oでクッション材21をくるむという単純な作業で対照セル23Lの配置を行うことができる。また、対照セル23Lとされる織物23上のコンデンサーを、クッション材21におけるサイズおよび形状に対応させて変更することで、クッション材21のサイズおよび形状によらず、その端面21B上に対照セル23Lを配置することができる。
【0042】
荷重分布検知装置22(図7参照)は、織物23の中央部23Iを通る各導電緯糸領域23Fに、これらの導電緯糸領域23Fに織物23の周縁部23Kにてはとめ接続されたフレキシブルフラットケーブル22G(図11参照)を介して交流電流を印加する。また、荷重分布検知装置22は、織物23の各導電経糸領域23Bからの出力を、これらの導電経糸領域23Bにはとめ接続されたフレキシブルフラットケーブル22H(図11参照)を介して取り出す。そして、荷重分布検知装置22は、取り出した出力から各感圧セル23Jおよび各対照セル23Lの静電容量を導出し、その導出結果に基づいてクッション材21の支持面21Aにかかる着座者90(図10参照)の荷重の分布を検知する。ここで、荷重分布検知装置22が支持面21Aにかかる荷重の分布を検知する際の処理は、荷重分布検知装置12が支持面11Aにかかる荷重の分布を検知する際の処理として上述した処理と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0043】
ところで、織物23の折りしろ23Oは、織物23における経方向側の端縁から経方向に延びる裁ち目23P(図11参照)によって2つに分割されて、それぞれを別個に折り曲げられるように構成されている。2つに分割された折りしろ23Oの一方は、図9に示すように、クッション材21のスリット21Dに差し込まれて、片几帳面21C内の端面21Bをくるむ切り欠きくるみ部分23Qとされる。また、2つに分割された折りしろ23Oの他方は、図10に示すように、図9の切り欠きくるみ部分23Qとは別個にクッション材21の端面21Bをくるむ。
【0044】
上述した各構成によれば、クッション材21をくるむ織物23の折りしろ23Oに裁ち目23Pを入れて形成される切り欠きくるみ部分23Qによって、クッション材21の切り欠き(例えば片几帳面21C)の端面21Bを他の端面21Bとは別個にくるむことができる。これにより、クッション材21の切り欠き(例えば片几帳面21C)において織物23がクッション材21から浮き上がった状態になることを抑えて、クッション材21の形状の複雑さによらずこのクッション材21を織物23でくるむことができる。さらに、クッション材21のスリット21Dに切り欠きくるみ部分23Qを差し込むことで、この切り欠きくるみ部分23Qをクッション材21から浮き上がらないように固定することができる。
【0045】
〈測定実験の結果〉
本発明者は、車椅子1(図1参照)に着座者(図示せず)が適正な着座姿勢で着座した場合に、この着座者から座10および背20(図1参照)にかかる荷重の分布を測定する測定実験を行った。この測定実験では、図12に示すように、着座者が腰を下ろした座10には、着座者の臀部および大たい部の下に荷重の分布があり、この分布のうち着座者の坐骨の真下に位置する部分には、他の部分よりも荷重が集中していることが明りょうに判別できた。また、上記測定実験によれば、図13に示すように、着座者がもたれかかった背20には、着座者の肩部が当たる上側の両角部に荷重が集中することが明りょうに判別できた。
【0046】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような形態を実施することができる。
【0047】
(1)荷重支持体の支持面および非支持面の両方を覆う荷重分布検知装置の織物は平織の織物に限定されず、平二重織を含む任意の製織方法で作られた織物とすることができる。また、荷重分布検知装置の織物は、この織物に形成される感圧セルおよび対照セルが外部の湿度変化の影響を受けることを抑える防湿シートで覆われたものとすることができる。
【0048】
(2)荷重分布検知装置において、感圧セルおよび対照セルを、クッション材を包むカバーに縫製によって一体化された織物に形成したものとすることができる。ここで、感圧セルおよび対照セルを前もって織物に形成した場合には、この織物をクッション材およびカバーのいずれに縫い付けることもできるため、感圧セルおよび対照セルを設ける作業の作業能率が高くなる。
【0049】
(3)荷重分布検知装置において、処理装置およびストレージを、クッション材のカバーの外に設けることができる。この場合、各発振回路の周期信号およびマルチプレクサが取り出す出力は、有線または無線の送信装置を介して外部の処理装置に送られ、この処理装置の処理に使われる。
【0050】
(4)本発明は、座および背にクッション材を使用しない車椅子に適用することもできる。この場合、荷重分布検知装置の織物は、車椅子のフレームにおいて着座者からの荷重を支持する部材である荷重支持体に直接取り付けられて、この荷重支持体において荷重を支持する支持面および荷重がかからない非支持面の両方を覆う。
【0051】
(5)対照セルを、感圧セルと同様に、荷重分布検知装置の織物において荷重支持体の支持面を覆う部分に設けることができる。この場合、対照セルは、この対照セルのひずみを抑制するコーティングによって織物上に固められた状態に設けられていることが好ましい。この構成によれば、対照セルを固めるコーティングにより対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。また、対照セルは、この対照セルが受ける荷重を抑えるカバーによって覆われた状態で織物上に設けられているものであってもよい。この構成によれば、対照セルを覆うカバーにより対照セルにかかる荷重を抑えてこの対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0052】
(6)本発明において、荷重支持体の支持面を覆う織物を、例えば帯状の電極が縦横に配されて、これらの電極が交差される複数箇所がコンデンサーとされた構成を有する覆い体に置き換えることができる。
【0053】
(7)本発明は、車椅子のみならず、例えばソファーおよびスツールを含むいす、または、これらのいすと組み合わせて使用することが可能なクッションもしくはざぶとんなど、任意のシート装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 車椅子(シート装置)
1A フレーム
1B 駆動輪
1C 自在輪
1D 手押しハンドル
10 座
10A カバー
10B 取り付け部材
11 クッション材(荷重支持体)
11A 支持面
11B こば面(非支持面)
12 荷重分布検知装置
12A 発振回路
12C マルチプレクサ
12D 処理装置
12E ストレージ
12F きょう体
12G フレキシブルフラットケーブル
12H フレキシブルフラットケーブル
13 織物(覆い体)
13A 導電経糸
13B 導電経糸領域
13C 絶縁経糸
13D 絶縁経糸領域
13E 導電緯糸
13F 導電緯糸領域
13G 絶縁緯糸
13H 絶縁緯糸領域
13I 中央部
13J 感圧セル
13K 周縁部
13L 対照セル
13M 耳
13N 接着材
20 背
20A カバー
20B 取り付け部材
21 クッション材(荷重支持体)
21A 支持面
21B 端面(非支持面)
21C 片几帳面(切り欠き)
21D スリット
22 荷重分布検知装置
22G フレキシブルフラットケーブル
22H フレキシブルフラットケーブル
23 織物(覆い体)
23A 導電経糸
23B 導電経糸領域
23C 絶縁経糸
23D 絶縁経糸領域
23E 導電緯糸
23F 導電緯糸領域
23G 絶縁緯糸
23H 絶縁緯糸領域
23I 中央部
23J 感圧セル
23K 周縁部
23L 対照セル
23M 耳
23N 接着材
23O 折りしろ
23P 裁ち目
23Q 切り欠きくるみ部分
90 着座者
図1
図2
図3
図4
図5
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