【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年11月3日 https://ash.confex.com/ash/2016/webprogram/Paper96487.html、2016年12月1日 https://www.bloodjournal.org/content/128/22/4240 https://www.bloodjournal.org/content/128/22/4240/tab−figures−only https://www.bloodjournal.org/content/128/22/4240/tab−article−info及び 2016年12月5日 米国,サンディエゴ,San Diego Convention Centerにて開催された58th ASH▲R▼ Annual Meeting and Expositionにおいて公開
【文献】
CHAUDHARY, B. et al.,Regulatory T cells in the tumor microenvironment and cancer progression: role and therapeutic targeting,Vaccines,2016年 8月 6日,4(3):28,1-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後に採取された血液が、チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から25〜42日後に採取された血液である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態のがんの再発の予測補助方法(以下、単に「方法」ともいう)は、がん患者から採取された血液中のeTreg細胞数を測定する工程を含む。がん患者は、がんに罹患していると診断され、チロシンキナーゼ阻害剤の投与履歴を有する患者であり、好ましくはチロシンキナーゼ阻害剤の投与を3年以上継続して受けており、分子遺伝学的完全寛解を2年以上継続して示している患者である。
【0013】
「チロシンキナーゼ阻害剤の投与履歴を有する」とは、患者がチロシンキナーゼ阻害剤を投与された経験が1回以上あることを意味する。「分子遺伝学的完全寛解」とは、高感度のRQ-PCR (Real-time Quantitative PCR)法又はnested PCR法によって、がんの原因遺伝子、たとえばBCR-ABL遺伝子が2回連続して検出されないことを意味する。
【0014】
がんは、チロシンキナーゼの異常に起因するがんであれば特に限定されず、白血病、具体的には慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)および慢性リンパ性白血病、消化管間質腫瘍(GIST)、非小細胞肺がん、腎細胞がん、膵神経内分泌腫瘍、悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)、悪性黒色腫、HER2過剰発現乳がん、特発性肺線維症、小リンパ球性リンパ腫などが挙げられるが、好ましくは慢性骨髄性白血病である。
【0015】
がん患者から採取された血液は、全血、血清または血漿を含む。血液は、採取が簡便なものがとりわけ好ましく、例えば末梢血およびそれから取得される血清および血漿などが挙げられる。
血液は、チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後、好ましくはチロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から25〜42日後に採取された血液である。
【0016】
チロシンキナーゼ阻害剤は特に限定されず、イマチニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブ、アファチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、イブルチニブなどが挙げられるが、好ましくはイマチニブである。
【0017】
eTreg細胞とは、最終分化段階にあり、強い免疫抑制活性を示す制御性T細胞である。eTreg細胞は、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。ここで、本明細書において、細胞表面マーカーについての「発現する」、「+」などの表現は、当該細胞表面マーカーを後述の標識化抗体によって標識した際に、シグナルが所定の閾値以上となることを意味する。たとえば、CD3
+細胞は、抗CD3標識抗体で標識した際に所定の閾値以上の蛍光強度を示す細胞である。本明細書において、細胞表面マーカーについての「発現しない」、「−」などの表現は、当該細胞表面マーカーを後述の標識化抗体によって標識した際に、シグナルが所定の閾値未満となることを意味する。たとえば、CD45RA
-細胞は、抗CD45RA標識抗体で標識した際に所定の閾値未満の蛍光強度を示す細胞である。
【0018】
CD3 (Cluster of Differentiation 3)は、T細胞受容体と複合体形成することで知られる膜貫通タンパク質である。CD4 (Cluster of Differentiation 4)は、ヘルパーT細胞表面に発現する補助受容体である。FOXP3 (Forkhead box P3)は、Tregのマスター転写因子をコードする遺伝子である。CD45RA (Cluster of Differentiation 45 RA)は、ナイーブT細胞マーカーの1つである。eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。eTreg細胞数の測定は、たとえば、Nishikawaら(Current Opinion in Immunology, 2014, 27:1-7)などの記載に従って、測定することができる。
【0019】
本実施形態の方法は、チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止の10〜50日前、好ましくはチロシンキナーゼ阻害剤の投与停止の15〜44日前に採取された血液中のeTreg細胞数を測定する工程をさらに含んでいてもよい。
【0020】
本実施形態の方法は、チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後に採取された血液中のCD8
+T細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数からなる群より選択される少なくとも1つを測定する工程をさらに含んでいてもよい。以下の実施例で示すように、PD-1、CTLA-4、LAG-3、Tim-3、TIGIT又はICOSを更に発現しているeTreg細胞数をCD8
+T細胞数又はPD-1
+CD8
+T細胞数で除することによって得られるパラメータを用いた場合には良好な分類結果が得られた。
【0021】
CD8 (Cluster of Differentiation 8)は、細胞傷害性T細胞表面に発現する補助受容体である。CD8
+T細胞は、CD3及びCD8(CD8a)を発現することによって特徴付けられる細胞(CD3
+CD8
+T細胞又はCD3
+CD8a
+T細胞)である。したがって、CD8
+T細胞数は、当業者に公知の方法によって、このようなCD3
+CD8
+T細胞(あるいはCD3
+CD8a
+T細胞)の数を計測することにより測定することができる。CD8
+T細胞数は、たとえば、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体、標識化抗FoxP3抗体及び標識化抗CD45RA抗体に代えて、標識化抗CD3抗体及び標識化抗CD8抗体(あるいは標識化抗CD8a抗体)を用いることを除いては、eTreg細胞数の計測に関して述べたことと同様にして計測することができる。なお、CD8は、CD8aなどを含むCD8ファミリーを形成するが、本発明で測定するのはCD8aである。以下、CD8aを単に「CD8」ということがある。
【0022】
PD-1
+CD8
+T細胞数は、CD3、CD8(CD8a)及びPD-1を発現することによって特徴付けられる細胞(PD-1
+CD3
+CD8
+T細胞又はPD-1
+CD3
+CD8a
+T細胞)である。PD-1 (Programmed cell death 1)は、PD-L1又はPD-L2リガンドとの相互作用によってT細胞の活性化を抑制することで知られる免疫チェックポイントタンパク質である。PD-1
+CD8
+T細胞数は、当業者に公知の方法によって、PD-1
+CD3
+CD8
+T細胞(あるいはPD-1
+CD3
+CD8a
+T細胞)の数を計測することにより測定することができる。PD-1
+CD8
+T細胞数は、たとえば、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体、標識化抗FoxP3抗体及び標識化抗CD45RA抗体に代えて、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD8抗体(あるいは標識化抗CD8a抗体)及び標識化抗PD-1抗体を用いることを除いては、eTreg細胞数の計測に関して述べたことと同様にして計測することができる。
【0023】
本実施形態の方法は、チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後に採取された血液中のPD-1
+eTreg細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数及びICOS
+eTreg細胞数からなる群より選択される少なくとも1つを測定する工程をさらに含んでいてもよい。以下の実施例で示すように、PD-1、CTLA-4、LAG-3、Tim-3、TIGIT又はICOSを更に発現しているeTreg細胞数を用いた場合には良好な分類結果が得られた。
【0024】
PD-1
+eTreg細胞は、PD-1、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(PD-1
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。PD-1
+eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、PD-1
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。PD-1
+eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗PD-1抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗PD-1抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。
【0025】
CTLA-4
+ eTreg細胞は、CTLA-4、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(CTLA-4
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。CTLA-4 (Cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4)は、T細胞の免疫応答の抑制に関与することで知られる免疫チェックポイントタンパク質をコードする遺伝子である。CTLA-4
+eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、CTLA-4
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。CTLA-4
+eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗CTLA-4抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗CTLA-4抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。
【0026】
LAG-3
+ eTreg細胞は、LAG-3、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(LAG-3
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。LAG-3 (lymphocyte activation gene-3)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質をコードする遺伝子である。LAG-3
+eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、LAG-3
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。LAG-3
+eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗LAG-3抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗LAG-3抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。
【0027】
Tim-3
+ eTreg細胞は、Tim-3、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(Tim-3
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。Tim-3 (T-cell immunoglobulin and mucin containing protein-3)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質をコードする遺伝子である。Tim-3
+eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、Tim-3
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。Tim-3
+ eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗Tim-3抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗Tim-3抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。
【0028】
TIGIT
+ eTreg細胞は、TIGIT、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(TIGIT
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。TIGIT (T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domain)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質をコードする遺伝子である。TIGIT
+eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、TIGIT
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。TIGIT
+ eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗TIGIT抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗TIGIT抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。
【0029】
ICOS
+ eTreg細胞は、ICOS、CD3、CD4及びFOXP3を発現し、CD45RAを発現しないことによって特徴付けられる細胞(ICOS
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞)である。ICOS (Inducible T cell costimulator)は、Treg細胞の分化誘導に関与する共刺激分子をコードする遺伝子である。ICOS
+eTreg細胞数は、当業者に公知の方法によって、ICOS
+ CD3
+ CD4
+ FOXP3
+ CD45RA
-細胞の数を計測することにより測定することができる。ICOS
+ eTreg細胞数は、たとえば、以下のようにして測定することができる:血液から採取した細胞と、標識化抗ICOS抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗CD45RA抗体とを混合し、細胞表面に発現する抗原に抗体を結合させ、細胞を洗浄し、標識化抗FoxP3抗体を用いて核内染色し、細胞を洗浄し、その後フローサイトメトリを用いて、標識化抗ICOS抗体、標識化抗CD3抗体、標識化抗CD4抗体及び標識化抗FoxP3抗体に由来するシグナルの全てを発し、標識化抗CD45RA抗体に由来するシグナルを発しない細胞の数を計測する。
【0030】
標識化抗体とは、標識物質で標識された抗体を意味する。標識物質は、検出可能なシグナルが生じるかぎり特に限定されない。例えば、それ自体がシグナルを発生する物質(以下、「シグナル発生物質」ともいう)であってもよいし、他の物質の反応を触媒してシグナルを発生させる物質であってもよいが、シグナル発生物質であることが好ましい。このようなシグナル発生物質としては、例えば、蛍光物質、放射性同位元素などが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Alexa Fluor(登録商標)などの蛍光色素、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質などが挙げられる。放射性同位元素としては、
125I、
14C、
32Pなどが挙げられる。他の物質の反応を触媒して検出可能なシグナルを発生させる物質としては、例えば、酵素などが挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。酵素の基質は、選択する酵素の種類に応じて当業者が適宜決定することができる。標識物質は、蛍光物質であることが特に好ましい。
【0031】
本明細書において、「シグナルを検出する」とは、シグナルの有無を定性的に検出すること、シグナル強度を定量すること、及び、シグナルの強度を半定量的に検出することを含む。半定量的な検出とは、シグナルの強度を、「シグナル発生せず」、「弱」、「中」、「強」などのように段階的に示すことをいう。シグナルを検出する方法自体は、当該技術において公知である。本実施形態では、上記の標識物質に由来するシグナルの種類に応じた測定方法を適宜選択すればよい。例えば、標識物質が蛍光物質である場合、それにより発せられる蛍光シグナルを、フローサイトメータなどの公知の装置を用いて測定することにより行うことができる。なお、励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光物質の種類に応じて適宜決定できる。
【0032】
本実施形態では、シグナルの検出結果から、eTreg細胞などの細胞数を測定する。例えば、シグナルの検出回数の値などを、細胞数として用いることができる。細胞数としては、例えば、シグナル検出回数の値から陰性対照試料のシグナル検出回数の値又はバックグラウンドの値を差し引いた値が挙げられる。陰性対照試料は適宜選択できるが、例えば、健常者から得た血液などが挙げられる。
【0033】
本実施形態の方法は、上記の測定結果に基づいて、eTreg細胞数に関する値を取得する工程を含む。
eTreg細胞数に関する値は、がん患者から採取された血液中におけるeTreg細胞数の増加の度合いや血液中に存在する他の細胞、たとえばCD8
+T細胞の数との比などのパラメータ、あるいはそれらの組合せなどであり得る。
【0034】
1つの実施形態では、eTreg細胞数に関する値は、eTreg細胞数の増加率またはeTreg細胞数の増加率の逆数であってもよい。
ここで、eTreg細胞数の増加率は、以下の式:
(チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後に採取された血液中におけるeTreg細胞数)/(チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止の10〜50日前に採取された血液中におけるeTreg細胞数)
によって表される。
【0035】
eTreg細胞数の増加率の逆数は、以下の式:
(チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止の10〜50日前に採取された血液中におけるeTreg細胞数)/(チロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後に採取された血液中におけるeTreg細胞数)
によって表される。
【0036】
Treg細胞は、本来、免疫機能を抑制する作用を有するため、eTreg細胞が増加すると免疫機能が低下し、がん患者の予後は悪くなると考えられる。しかしながら、本発明者らは、このような技術常識に反して、イマチニブの投与中止から約1ヶ月後の血中eTreg細胞数が増加している場合、がん患者の予後が良好であることを見出した。
【0037】
別の実施形態では、以下の群から選択される1以上のパラメータ:
eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数;又は
以下の群から選択される1以上の逆数パラメータ:
CD8
+T細胞数/eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/PD-1
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/PD-1
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/CTLA-4
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/CTLA-4
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/LAG-3
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/LAG-3
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/Tim-3
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/Tim-3
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/TIGIT
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/TIGIT
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/ICOS
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8
+T細胞数/ICOS
+eTreg細胞数;
であってもよい。
【0038】
通常、担がん生体における持続的で継続的なeTreg細胞数の増加は、がん免疫を抑制する方向に働くと考えられている。本発明では、長期間にわたるイマチニブ投与により、患者体内においてeTreg細胞が低下し、抑制が解除されていた免疫状態となる。イマチニブ投与を中止することで、一過性(中止から1ヵ月後)にeTreg細胞がリバウンドした状態をとらえたものである。eTreg細胞の活性化は最初にイマチニブ中止から1ヵ月後の段階で起こり、その後、eTreg細胞のリバウンドが落ち着く。一方で、CD8
+T細胞の活性化は、eTreg細胞の低下中に十分な活性化が誘導されていたかを捉えたものである。つまり、イマチニブ投与中に十分にeTreg細胞の低下があり、腫瘍によるeTreg細胞を介した免疫抑制が解除されていると、体内のCD8
+T細胞が十分に活性化する。このイマチニブによるeTreg細胞の十分な低下とCD8
+T細胞の活性化との両者を捉えた指標が「eTreg細胞数/CD8
+T細胞数」である。本実施形態では、投与中止1ヵ月後のeTreg細胞数/CD8
+T細胞数の値が高いほど、その後の免疫状態の回復及び正常化につながり、結果として非再発の指標となると考えられる。eTreg細胞は、CD8
+T細胞をはじめとするエフェクター細胞の機能を抑制し、一方でCD8
+T細胞は、細胞障害作用を有するエフェクターT細胞である。これらの細胞数の比をとることで、免疫状態が相対的に抑制的なのか又は活性化されているのかの指標を得られると考えられる。
【0039】
別の実施形態では、eTreg細胞数に関する値は、上記のeTreg細胞数の増加率や、パラメータ、逆数パラメータの組合せであってもよい。複数のパラメータを組み合わせて解析に用いることにより、分類工程の精度を高めることができるようになる。
【0040】
より具体的には、eTreg細胞数に関する値は、たとえば上記の群から選択される2つのパラメータ、すなわち以下の第1パラメータおよび以下の第2パラメータの組合せ又は2つの逆数パラメータ、すなわち以下の第1逆数パラメータおよび以下の第2逆数パラメータの組合せであってもよい:
第1パラメータは、eTreg細胞数の増加率であり;
第1逆数パラメータは、eTreg細胞数の増加率の逆数であり;
第2パラメータは、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数からなる群より選択される1の値であり;
第2逆数パラメータは、CD8
+T細胞数/eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/PD-1
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/PD-1
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/CTLA-4
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/CTLA-4
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/LAG-3
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/LAG-3
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/Tim-3
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/Tim-3
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/TIGIT
+eTreg細胞数、PD-1
+CD8
+T細胞数/TIGIT
+eTreg細胞数、CD8
+T細胞数/ICOS
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8
+T細胞数/ICOS
+eTreg細胞数からなる群より選択される1の値である。
【0041】
あるいは、eTreg細胞数に関する値は上記の群から選択される3つのパラメータ、すなわち上記の第1パラメータ、上記の第2パラメータおよび以下の第3パラメータの組合せ又は3つの逆数パラメータ、すなわち上記の第1逆数パラメータ、上記の第2逆数パラメータおよび以下の第3逆数パラメータの組合せであってもよい:
第3パラメータは、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数からなる群より選択される、第2パラメータとは異なるパラメータであり;
第3逆数パラメータは、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数からなる群より選択される、第2逆数パラメータとは異なる逆数パラメータである。
【0042】
好ましい実施形態では、eTreg細胞数に関する値は、以下の第1パラメータ、以下の第2パラメータおよび以下の第3パラメータの組合せである:
第1パラメータは、eTreg細胞数の増加率であり;
第2パラメータは、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数であり;
第3パラメータは、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数である。
【0043】
本実施形態の方法は、上記のようにして得られたeTreg細胞数に関する値に基づいて、患者を再発低リスク群に分類する工程を含む。
分類は、たとえば、パラメータと所定の閾値との比較によって行われてもよい。
所定の閾値は特に限定されず、適宜設定できる。たとえば、次のようにして所定の閾値を設定してもよい。まず、複数のがん患者から採取された血液中のeTreg細胞数を測定する。また、それらのがん患者からチロシンキナーゼ阻害剤の投与停止の10〜50日前に採取された血液中におけるeTreg細胞数を測定する。その後、測定したeTreg細胞数のデータから、eTreg細胞数の増加率を算出する。そして、得られたeTreg細胞数の増加率を、再発履歴がある患者群のデータと、再発履歴がない患者群のデータとに分類する。なお、「再発履歴がある」とは、がん患者が過去に再発を起こしたことがあることを意味する。そして、再発履歴がある患者群から採取された血液中のeTreg細胞数の増加率と、再発履歴がない患者群から採取された血液中のeTreg細胞数の増加率とを最も精度よく区別可能な値を求め、その値を所定の閾値として設定する。所定の閾値の設定においては、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮することが好ましい。
【0044】
より具体的な実施形態では、たとえば、eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上である場合、分類工程において患者は再発低リスク群に分類される。また、eTreg細胞数の増加率の逆数が所定の閾値未満である場合、分類工程において患者は再発低リスク群に分類される。このような分類は、たとえば、表1に支持される。
別の実施形態では、たとえば、1つのパラメータが所定の閾値以上である場合、または1つの逆数パラメータが所定の閾値未満である場合、分類工程において患者は再発低リスク群に分類される。このような分類は、たとえば、表2〜15に支持される。
【0045】
eTreg細胞数に関する値が複数のパラメータを含む場合、分類は、たとえば、各パラメータ又は逆数パラメータと、各パラメータ又は逆数パラメータに対応する所定の閾値とを個々に比較し、全てのパラメータ又は逆数パラメータが所定の閾値以上であるか否か、いずれか1つのパラメータ又は逆数パラメータが所定の閾値以上であるか否かなどの基準に従って行われてもよい。
【0046】
より具体的な実施形態では、たとえば、第1パラメータが所定の閾値以上または第2パラメータが所定の閾値以上の場合、分類工程においてがん患者は再発低リスク群に分類される。また、第1逆数パラメータが所定の閾値未満または第2逆数パラメータが所定の閾値未満の場合、分類工程においてがん患者は再発低リスク群に分類される。このような分類は、たとえば、実施例16の(16-1)、(16-3)、(16-5)に支持される。
【0047】
別の実施形態では、たとえば、第1パラメータが所定の閾値以上、第2パラメータが所定の閾値以上または第3パラメータが所定の閾値以上の場合、分類工程においてがん患者は再発低リスク群に分類される。また、第1逆数パラメータが所定の閾値未満、第2逆数パラメータが所定の閾値未満または第3逆数パラメータが所定の閾値未満の場合、分類工程においてがん患者は再発低リスク群に分類される。このような分類は、たとえば、実施例16の(16-7)に支持される。
【0048】
別の実施形態では、たとえば、第1パラメータが所定の閾値以上かつ第2パラメータが所定の閾値以上、第1パラメータが所定の閾値以上かつ第3パラメータが所定の閾値以上、または第2パラメータが所定の閾値以上かつ第3パラメータが所定の閾値以上の場合、患者は再発低リスク群に分類される。このような分類は、たとえば、実施例16の(16-2)、(16-4)、(16-6)に支持される。
【0049】
別の実施形態では、たとえば、第1パラメータが所定の閾値以上、第2パラメータが所定の閾値以上、かつ、第3パラメータが所定の閾値以上の場合、患者は再発低リスク群に分類される。このような分類は、たとえば、実施例16の(16-8)に支持される。
【0050】
本発明の範囲には、がんの治療方法も含まれる。一実施形態によると、がんの治療方法は、上記の測定工程、取得工程および判定工程を含み、さらに治療工程を含む。本実施形態による治療方法においては、判定工程において、患者は、再発低リスク群と、その他の群とに分類される。治療工程において、その他の群に分類された患者に対して、TKI投与を再開する。再発低リスク群に分類された患者に対しては、薬剤投与再開(薬剤再投与)を行わず、経過観察などの措置がとられ得る。
【0051】
本発明の範囲には、上記のがんの再発の予測補助方法に用いられる試薬キットも含まれる。
第1の実施形態において、試薬キットは、eTreg細胞検出用試薬キットである。第1の実施形態の試薬キットは、抗CD3抗体(第1抗体)、抗CD4抗体(第2抗体)、抗FoxP3抗体(第3抗体)、抗CD45RA抗体(第4抗体)、及び4種類の標識物質を含む。標識物質が酵素である場合、本実施形態の試薬キットは、該酵素に対する基質をさらに含んでいてもよい。
【0052】
第2の実施形態において、試薬キットは、CD8
+T細胞検出用試薬キットである。第2の実施形態の試薬キットは、抗CD3抗体(第1抗体)、抗CD8抗体(第5抗体)、及び2種類の標識物質を含む。標識物質が酵素である場合、本実施形態の試薬キットは、該酵素に対する基質をさらに含んでいてもよい。
【0053】
第1抗体、第2抗体、第3抗体、第4抗体、第5抗体、標識物質及び基質の形態は特に限定されず、固体(例えば、粉末、結晶、凍結乾燥品など)であってもよいし、液体(例えば、溶液、懸濁液、乳濁液など)であってもよい。本実施形態では、第1抗体、第2抗体、第3抗体、第4抗体、第5抗体、標識物質及び基質は、それぞれ別の容器に保存されているか又は個別に包装されていることが好ましい。なお、血液試料、第1抗体、第2抗体、第3抗体、第4抗体、第5抗体、標識物質及び基質についての詳細は、上記の予測補助方法の説明で述べたことと同様である。
【0054】
試薬キットは、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、抗Tim-3抗体、抗TIGIT抗体及び抗ICOS抗体からなる群より選択される1以上の抗体をさらに含んでいてもよい。この場合、試薬キットは、選択された抗体を標識化するための標識物質をさらに含む。選択された抗体を標識化するための標識物質は、上記の第1〜第5抗体を標識化するために用いられる標識物質とは異なる種類のものである。選択された抗体を標識化するための標識物質が酵素である場合、試薬キットは、該酵素に対する基質をさらに含んでいてもよい。
【0055】
試薬キットは、上記の各種試薬を収容した容器を箱に梱包して、ユーザに提供されてもよい。この箱には、試薬キットの添付文書を同梱していてもよい。この添付文書には、たとえば、試薬キットの構成、血液試料中のバイオマーカー濃度の測定プロトコールなどが記載されることが好ましい。
また、試薬キットは、上述の各種試薬の他、洗浄液、キャリブレーターなどを適宜含んでいてもよい。
【0056】
図1Aに、第1の実施形態の試薬キットの外観の一例を示す。図中、510は、試薬キットを示し、511は、第1標識物質で標識化された第1抗体を収容した第1容器を示し、512は、第2標識物質で標識化された第2抗体を収容した第2容器を示し、513は、第3標識物質で標識化された第3抗体を収容した第3容器を示し、514は、第4標識物質で標識化された第4抗体を収容した第4容器を示し、515は、添付文書を示し、516は、梱包箱を示す。
【0057】
図1Bに、第2の実施形態の試薬キットの外観の一例を示す。図中、520は、試薬キットを示し、521は、第1標識物質で標識化された第1抗体を収容した第1容器を示し、522は、第5標識物質で標識化された第5抗体を収容した第2容器を示し、523は、添付文書を示し、524は、梱包箱を示す。
【0058】
本発明の範囲には、上記の試薬を、がんの再発の予測用試薬キットの製造のために使用することも含まれる。すなわち、本発明は、がんの再発の予測用試薬キットの製造のための抗体及び標識物質の使用にも関する。
【0059】
本発明には、がんの再発の予測を補助するデータの取得に適する装置が含まれる。また、本発明には、がんの再発の予測を補助するデータの取得をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム製品も含まれる。なお、該コンピュータプログラム製品が備える媒体は、コンピュータプログラムが非一時的に記録され、且つ、コンピュータが読取可能な媒体であってもよい。
【0060】
以下に、上記の本実施形態の方法を実施するのに好適な装置の一例を、図面を参照して説明する。しかし、本発明はこの例に示される形態のみに限定されない。
図2は、がんの再発の予測を補助するデータを取得するための、予測補助装置の概略図である。
図2に示された予測補助装置11は、測定装置22と、該測定装置22と接続された判定装置33とを含んでいる。
【0061】
本実施形態において、測定装置の種類は特に限定されず、細胞数の測定方法に応じて適宜選択できる。
図2に示される例では、測定装置22は、フローサイトメータである。フローサイトメータは、標識物質に基づくシグナルの検出が可能であれば特に限定されず、標識物質の種類に応じて適宜選択できる。以下に説明する例では、シグナルは、化学発光シグナルや蛍光シグナルなどの光学的情報である。
【0062】
抗原抗体反応を行った細胞サンプルを測定装置22にセットすると、測定装置22は、標識化抗体に基づく光学的情報を取得し、得られた光学的情報を判定装置33に送信する。
【0063】
判定装置33は、コンピュータ本体33aと、入力部33bと、検体情報や判定結果などを表示する表示部33cとを含む。判定装置33は、測定装置22から光学的情報を受信する。そして、判定装置33のプロセッサは、光学的情報に基づいて、がんの再発の予測を補助するデータを取得するプログラムを実行する。
【0064】
図3は、予測補助装置11のコンピュータ本体33aのソフトウェアを機能ブロックで示すブロック図である。
図3に示されるように、判定装置33は、受信部301と、記憶部302と、算出部303と、判定部304と、出力部305とを備える。受信部301は、測定装置22と、ネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0065】
受信部301は、測定装置22から送信された情報を受信する。記憶部302は、判定に必要な所定の閾値や細胞数を算出するための式や処理プログラムなどを記憶する。算出部303は、受信部301で取得された情報を用い、記憶部302に記憶された式にしたがって、細胞数を算出する。判定部304は、算出部303によって算出された細胞数が、記憶部302に記憶された所定の閾値以上であるか又はそれ未満であるかを判定する。出力部305は、判定部304による判定結果を、がんの再発の予測を補助するデータとして出力する。
【0066】
図4は、
図3に示すコンピュータ本体33aのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、コンピュータ本体33aは、CPU(Central Processing Unit)330と、ROM(Read Only Memory)331と、RAM(Random Access Memory)332と、ハードディスク333と、入出力インターフェイス334と、読出装置335と、通信インターフェイス336と、画像出力インターフェイス337とを備えている。CPU330、ROM331、RAM332、ハードディスク333、入出力インターフェイス334、読出装置335、通信インターフェイス336及び画像出力インターフェイス337は、バス338によってデータ通信可能に接続されている。
【0067】
CPU330は、ROM331に記憶されているコンピュータプログラム及びRAM332にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。CPU330がアプリケーションプログラムを実行することにより、
図3に示す各機能が実行される。これにより、判定装置33が、がんの再発の予測を補助するデータを取得するための装置として機能する。
【0068】
ROM331は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されている。ROM331には、CPU330によって実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータが記録されている。
【0069】
RAM332は、SRAM、DRAMなどによって構成されている。RAM332は、ROM331及びハードディスク333に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。RAM332はまた、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU330の作業領域として利用される。
【0070】
ハードディスク333は、CPU330に実行させるためのオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム(がんの再発の予測を補助するデータを取得するためのコンピュータプログラム)などのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。
【0071】
読出装置335は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブなどによって構成されている。読出装置335は、可搬型記録媒体340に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。
【0072】
入出力インターフェイス334は、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェイスと、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインターフェイスと、D/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェイスとから構成されている。入出力インターフェイス334には、キーボード、マウスなどの入力部33bが接続されている。操作者は、当該入力部33bにより、コンピュータ本体33aに各種の指令やデータを入力することが可能である。
【0073】
通信インターフェイス336は、例えば、Ethernet(登録商標)インターフェイスなどである。コンピュータ本体33aは、通信インターフェイス336により、プリンタなどへの印刷データの送信が可能である。測定装置22は、通信インターフェイス336により、判定装置33への測定データ(光学的情報)の送信が可能である。
【0074】
画像出力インターフェイス337は、LCD、CRTなどで構成される表示部33cに接続されている。これにより、表示部33cは、CPU330から与えられた画像データに応じた映像信号を出力することができる。表示部33cは、入力された映像信号にしたがって画像(画面)を表示する。
【0075】
次に、予測補助装置11による、がんの再発の予測を補助するデータ取得の処理手順を説明する。
図5は、がんの再発の予測データ取得のフローチャートの一例である。ここでは、標識化抗体に基づく光学的情報などからeTreg細胞数の増加率を算出し、それに基づいて判定を行なう場合を例として挙げて説明する。しかし、本実施形態は、この例のみに限定されるものではない。
【0076】
まず、ステップS1−1において、予測補助装置11の受信部301は、測定装置22から光学的情報を受信する。次に、ステップS1−2において、算出部303は、受信部301が受信した光学的情報から、記憶部302に記憶された式にしたがってチロシンキナーゼ阻害剤の投与停止から20〜50日後に採取された血液中のeTreg細胞数及びチロシンキナーゼ阻害剤の投与停止の10〜50日前に採取された血液中のeTreg細胞数を測定する。そして、ステップS1−3において、算出部303は、記憶部302に記憶された式にしたがってeTreg細胞数の増加率を算出する。
【0077】
その後、ステップS1−4において、判定部304は、ステップS1−3で算出された増加率が、記憶部302に記憶された所定の閾値以上であるか、それともそれ未満であるかを判定する。ここで、増加率が所定の閾値以上であるとき、ルーチンは、ステップS1−5に進行し、判定部304は、がん患者が再発低リスク群に分類されることを示す判定結果を出力部305に送信する。一方、増加率が所定の閾値未満であるとき、ルーチンは、ステップS1−6に進行し、判定部304は、がん患者が再発低リスク群に分類されないことを示す判定結果を出力部305に送信する。
【0078】
そして、ステップS1−7において、出力部305は、判定結果を出力し、表示部33cに表示させる。これにより、予測補助装置11は、がんの再発の予測を補助するデータを医師などに提供することができる。
【0079】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0080】
実施例1:eTreg細胞数の増加率に基づく分類
イマチニブ投与中止から25〜42日後に慢性骨髄性白血病患者(55人;うち再発例19人および非再発例36人)から採取された末梢血をRPMI1640 (ニプロ社製)で希釈し、Ficoll-Paque PLUS (GEヘルスケアジャパン社製)を用いた密度勾配遠心法によりPBMC(末梢血単核球 Peripheral Blood Mononuclear Cells)層を回収し、細胞凍結保存液中に懸濁し、測定解析まで液体窒素下で凍結保存した。液体窒素凍結細胞バイアルを、37℃の恒温層中で温め、2%FCSを含むPBSまたはRPMI1640溶液中に懸濁し、遠心分離により細胞を回収した。回収した細胞を、100μLの2%FCSを含むPBSに懸濁し、非特異結合をブロックするためにFc block (eBioscience社製)を加え、15分間反応させた。その後、死細胞除去のためにFVD (Fixable Viability Dye;eBioscience社製) および細胞表面の抗原染色のために抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD4抗体及び抗ヒトCD45RA抗体(それぞれeBioscience社製)を加え、抗体反応を20〜30分間行った。洗浄後、細胞内染色のためFoxP3/Transcription Factor Staining Buffer Set (eBioscience社製)を用いて細胞固定および膜透過処理を行い、抗FoxP3抗体(eBioscience社製)を用いて核内染色をおこなった。洗浄後、フローサイトメーター(BD社製)により測定解析を行い、eTreg細胞数を計測した。
また、イマチニブ投与中止の15〜44日前に慢性骨髄性白血病患者から採取された末梢血からPBMCを回収し、上記と同様にして、eTreg細胞数を計測した。
上記の計側結果から、eTreg細胞数の増加率を求め、再発リスク群分類を行った。
【0081】
結果を
図6及び表1に示す。
図6に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表1に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。ここで、正解率とは、再発低リスク群に分類された患者が、分類結果のとおり再発しなかった確率を意味する。また、表中、偽陽性は、再発した患者であるにも拘らず再発低リスク群に分類されたことを意味し、真陽性は、再発しなかった患者が再発低リスク群に分類されたことを意味する。以下の表1の場合、再発例19人のうち再発低リスク群に分類された偽陽性の患者が1人存在し、非再発例36人のうち再発低リスク群に分類された真陽性の患者は10人であった。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例2:eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
イマチニブ投与中止から25〜42日後に慢性骨髄性白血病患者(55人;うち再発例19人および非再発例36人)から採取された末梢血をRPMI1640(ニプロ社製)で希釈し、Ficoll-Paque PLUS (GEヘルスケアジャパン社製)を用いた密度勾配遠心法によりPBMC(末梢血単核球:Peripheral Blood Mononuclear Cells)層を回収し、細胞凍結保存液中に懸濁し、測定解析まで液体窒素下で凍結保存した。液体窒素凍結細胞バイアルを、37℃の恒温層中で温め、2%FCSを含むPBSまたはRPMI1640溶液中に懸濁し、遠心分離により細胞を回収した。回収した細胞を、100μLの2%FCSを含むPBSに懸濁し、非特異結合をブロックするためにFc block (eBioscience社製)を加え、15分間反応させた。その後、死細胞除去のためにFVD (Fixable Viability Dye;eBioscience社製)および細胞表面の抗原染色のために抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD4抗体、抗ヒトCD8a抗体及び抗ヒトCD45RA抗体(それぞれeBioscience社製)を加え、抗体反応を20〜30分間行った。洗浄後、細胞内染色のためFoxP3/Transcription Factor Staining Buffer Set (eBioscience社製)を用いて細胞固定および膜透過処理を行い、抗FoxP3抗体(eBioscience社製)を用いて核内染色をおこなった。洗浄後、フローサイトメーター(BD社製)により測定解析を行い、eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測した。そして、eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求め、再発リスク群分類を行った。
【0084】
結果を
図7及び表2に示す。
図7に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表2に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例3:eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(55人;うち再発例19人および非再発例36人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトPD-1抗体(BioLegend社製)を更に用い、eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してeTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0087】
結果を
図8及び表3に示す。
図8に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表3に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例4:PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(57人;うち再発例20人および非再発例37人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトPD-1抗体(BioLegend社製)を更に用い、PD-1
+eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測してPD-1
+eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0090】
結果を
図9及び表4に示す。
図9に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表4に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0091】
【表4】
【0092】
実施例5:PD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(57人;うち再発例20人および非再発例37人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトPD-1抗体(BioLegend社製)を更に用い、PD-1
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してPD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0093】
結果を
図10及び表5に示す。
図10に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表5に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例6:CTLA-4
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(57人;うち再発例20人および非再発例37人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトCTLA-4抗体(BioLegend社製)を更に用い、CTLA-4
+eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測してCTLA-4
+eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0096】
結果を
図11及び表6に示す。
図11に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表6に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0097】
【表6】
【0098】
実施例7:CTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(57人;うち再発例20人および非再発例37人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトCTLA-4抗体(BioLegend社製)を更に用い、CTLA-4
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してCTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例6と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0099】
結果を
図12及び表7に示す。
図12に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表7に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0100】
【表7】
【0101】
実施例8:LAG-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(20人;うち再発例6人および非再発例14人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトLAG-3抗体(ENZO社製)を更に用い、LAG-3
+eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測してLAG-3
+eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0102】
結果を
図13及び表8に示す。
図13に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表8に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0103】
【表8】
【0104】
実施例9:LAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(20人;うち再発例6人および非再発例14人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトLAG-3抗体(ENZO社製)を更に用い、LAG-3
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してLAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例8と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0105】
結果を
図14及び表9に示す。
図14に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表9に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0106】
【表9】
【0107】
実施例10:Tim-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(20人;うち再発例6人および非再発例14人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトTim-3抗体(BioLegend社製)を更に用い、Tim-3
+eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測してTim-3
+eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0108】
結果を
図15及び表10に示す。
図15に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表10に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0109】
【表10】
【0110】
実施例11:Tim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(20人;うち再発例6人および非再発例14人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトTim-3抗体(BioLegend社製)を更に用い、Tim-3
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してTim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例10と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0111】
結果を
図16及び表11に示す。
図16に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表11に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0112】
【表11】
【0113】
実施例12:TIGIT
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(22人;うち再発例8人および非再発例14人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトTIGIT抗体(eBioscience社製)を更に用い、TIGIT
+eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測してTIGIT
+eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0114】
結果を
図17及び表12に示す。
図17に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表12に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0115】
【表12】
【0116】
実施例13:TIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(22人;うち再発例8人および非再発例14人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトTIGIT抗体(eBioscience社製)を更に用い、TIGIT
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してTIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例12と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0117】
結果を
図18及び表13に示す。
図18に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表13に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0118】
【表13】
【0119】
実施例14:ICOS
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(32人;うち再発例12人および非再発例20人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトICOS抗体(eBioscience社製)を更に用い、ICOS
+eTreg細胞数及びCD8a
+T細胞数を計測してICOS
+eTreg細胞数/CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例2と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0120】
結果を
図19及び表14に示す。
図19に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表14に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0121】
【表14】
【0122】
実施例15:ICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数に基づく分類
慢性骨髄性白血病患者(32人;うち再発例12人および非再発例20人)から採取された末梢血を用い、細胞表面の抗原染色のために抗ヒトICOS抗体(eBioscience社製)を更に用い、ICOS
+eTreg細胞数及びPD-1
+CD8a
+T細胞数を計測してICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8a
+T細胞数を求めたこと以外は実施例14と同様にして、再発リスク群分類を行った。
【0123】
結果を
図20及び表15に示す。
図20に示されるように、非再発群(Non-Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体が多数現れた。一方で、再発群(Ret)では、パラメータが所定の閾値以上を示す検体は殆ど見られなかった。このことから、パラメータが所定の閾値以上を示す患者を再発低リスク群に分類できることが明らかとなった。また、以下の表15に示されるように、上記の再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0124】
【表15】
【0125】
実施例16〜22:複数パラメータの組合せ解析
実施例1〜15で得られた1パラメータ測定の結果を用いて、実施例16〜22では、複数パラメータを組み合わせて解析に用いて、再発リスク群分類を行った。
【0126】
実施例16:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1〜3で得られたパラメータ(対象患者数55人;うち再発例19人および非再発例36人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、分類は以下のとおりにして行った。
【0127】
(16-1)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-2)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、かつ、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-3)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-4)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、かつ、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
【0128】
(16-5)eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-6)eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、かつ、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-7)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-8)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、かつ、eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
【0129】
(16-9)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上かつeTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上かつeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-10)eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上かつeTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上かつeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(16-11)eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上かつeTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、又はeTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上かつeTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
【0130】
結果を以下の表16に示す。表16に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【0131】
【表16】
【0132】
実施例17:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びPD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1、2、4及び5で得られたパラメータ(対象患者数55人;うち再発例19人および非再発例36人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、分類は以下のとおりにして行った。
【0133】
(17-1)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、又はPD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(17-2)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、又はPD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(17-3)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、かつ、PD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(17-4)eTreg細胞数の増加率が所定の閾値以上、かつ、PD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
【0134】
(17-5)eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はPD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(17-6)eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はPD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(17-7)eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はPD-1
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
(17-8)eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上、又はPD-1
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数が所定の閾値以上の場合、再発低リスク群に分類した。
【0135】
結果を以下の表17に示す。表17に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【表17】
【0136】
実施例18:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、CTLA-4
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びCTLA-4
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1、2、6及び7で得られたパラメータ(対象患者数55人;うち再発例19人および非再発例36人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、実施例17の(17-1)〜(17-8)において「PD-1
+eTreg細胞数」を「CTLA-4
+eTreg細胞数」と読み替えること以外は実施例17と同様にして分類を行った。
【0137】
結果を以下の表18に示す。表18に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【表18】
【0138】
実施例19:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、LAG-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びLAG-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1、2、8及び9で得られたパラメータ(対象患者数19人;うち再発例6人および非再発例13人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、実施例17の(17-1)〜(17-8)において「PD-1
+eTreg細胞数」を「LAG-3
+eTreg細胞数」と読み替えること以外は実施例17と同様にして分類を行った。
【0139】
結果を以下の表19に示す。表19に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【表19】
【0140】
実施例20:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、Tim-3
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びTim-3
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1、2、10及び11で得られたパラメータ(対象患者数21人;うち再発例8人および非再発例13人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、実施例17の(17-1)〜(17-8)において「PD-1
+eTreg細胞数」を「Tim-3
+eTreg細胞数」と読み替えること以外は実施例17と同様にして分類を行った。
【0141】
結果を以下の表20に示す。表20に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【表20】
【0142】
実施例21:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、TIGIT
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びTIGIT
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1、2、12及び13で得られたパラメータ(対象患者数21人;うち再発例8人および非再発例13人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、実施例17の(17-1)〜(17-8)において「PD-1
+eTreg細胞数」を「TIGIT
+eTreg細胞数」と読み替えること以外は実施例17と同様にして分類を行った。
【0143】
結果を以下の表21に示す。表21に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【表21】
【0144】
実施例22:eTreg細胞数の増加率、eTreg細胞数/CD8
+T細胞数、ICOS
+eTreg細胞数/CD8
+T細胞数及びICOS
+eTreg細胞数/PD-1
+CD8
+T細胞数の組合せ解析
実施例1、2、14及び15で得られたパラメータ(対象患者数31人;うち再発例11人および非再発例20人)を用いて、パラメータ毎に対応する所定の閾値との比較に基づき、再発リスク群分類を行った。より具体的には、実施例17の(17-1)〜(17-8)において「PD-1
+eTreg細胞数」を「ICOS
+eTreg細胞数」と読み替えること以外は実施例17と同様にして分類を行った。
【0145】
結果を以下の表22に示す。表22に示されるように、複数のパラメータのいずれの組合せパターンにおいても、再発低リスク群分類の正解率は非常に高かった。
【表22】