(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縫い針の表側外周面に針軸方向に形成した糸溝に沿って基端側から供給し前記縫い針の先端部に穿設した糸孔に係止した糸を、所定のピッチで前記縫い針と共に基材又は当該基材表面に接着された表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで挿通した後、前記縫い針を引き戻すときに前記基材の裏面側に前記糸のループ部分を形成し、当該ループ部分の根元部を前記基材又は当該基材に重ね合わせた弾性部材が拘束することによって、前記基材又は前記表皮材の表面側に形成したステッチ用凹溝内に嵌入させた前記糸のステッチ模様を縫製するステッチ加工部品の製造方法であって、
前記糸孔は、前記縫い針の表側外周面と裏側外周面とを貫通して形成され、且つ前記糸孔の針先側内壁部には、前記表側外周面との交差部が前記裏側外周面との交差部より基端側に位置する針先側内壁面が形成され、
前記縫い針を引き戻すときには、前記糸孔に係止した前記糸を前記針先側内壁面によって前記裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、前記糸のループ部分を前記縫い針の裏側のみに形成させること、
前記針先側内壁面と前記縫い針の表側外周面との交差部には、R取り部又は面取り部を形成し、当該R取り部又は面取り部と前記針先側内壁面との境界線は、前記糸溝の底面より前記表側外周面寄りに形成されていることを特徴とするステッチ加工部品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内装部品においては、硬質の合成樹脂からなる基材の表面を柔らかい表皮材で覆い、その表皮材の表面にシボ模様とステッチ模様とを施すことによって、デザイン上の見栄えを向上し、高級感やソフト感を醸す工夫がなされている。このステッチ模様を糸の縫製によって形成する方法として、例えば、表皮材を基材の表面に接着した上で、表皮材の表面側から縫い付けた上糸を基材の裏面側に沿わした下糸に絡ませて縫製(通常のミシン縫い)する方法が、一般に知られている。
【0003】
しかし、この上糸に下糸を絡ませて縫製する通常のミシン縫いによる縫製方法では、縫う対象物である基材の裏面側に、下糸を保持して上糸に絡ませる下糸供給装置を設ける必要がある。ところが、基材の裏面側には、補強リブや各種部品を取り付ける取付リブ等が形成されている場合が多い。そのため、ステッチ模様を形成する領域で、基材の裏面側に上記下糸供給装置を配置することは、リブ等による形状的制約が大きく、必ずしも簡単なことではなかった。
【0004】
この問題に対応するため、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成したステッチ加工部品の製造方法が、特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1には、
図8、
図9に示すように、上糸だけでステッチ模様を形成するステッチ加工装置100として、表皮材102の上方に配置され針先に糸孔101bを有する縫い針101を上下方向へ作動させて糸103を基材104の裏面側に供給する糸供給装置105と、基材104の裏面に当接し当該基材104を所定の姿勢で保持するとともに、糸103のループ部分103aが収容可能に配置された糸逃し部106aを有する受け治具106とを備え、縫い針101を基材104及びその裏面に重ね合わせたゴム系部材107に挿通した所定位置から表皮材102の表面側(矢印Hの方向)に引き戻す時に、ゴム系部材107に形成された糸挿通孔107aが縮径して、糸のループ部分103aの根元部を拘束することを特徴とするステッチ加工部品の製造方法が記載されている。
【0005】
また、縫い針101の糸供給側の外周面101cには、糸103を案内する糸溝101aが糸孔101bまで針軸方向に沿って形成されているとともに、受け治具106の糸逃し部106aには、基材104の裏面側に挿通された縫い針101の糸溝側の外周面101cと微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸規制面106bと、縫い針101を挟んで糸規制面106bと対向し糸のループ部分103aが収容可能に配置された糸逃し面106cとを備え、縫い針101を所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸溝101a内で弛もうとする糸103を糸規制面106bによって糸逃し面106cの方向(矢印T1の方向)へ糸孔101bを通して押し出し、糸孔101bと糸逃し面106cとの間で、糸のループ部分103aを形成することが記載されている。上記方法によれば、縫い針101に対して糸溝101aと反対側のみで、糸のループ部分103aを安定して形成することができ、ステッチ加工時における糸103のほつれ(基材からの糸抜け)を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたステッチ加工部品の製造方法では、以下のような問題があった。
すなわち、
図8に示すように、縫い針101に形成された糸孔101bは、針軸方向と直交する方向に形成されているので、縫い針101を所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸孔101bと糸逃し面106cとの間で、糸のループ部分103aを安定して形成するためには、縫い針101の糸溝側の外周面101cと糸規制面106bとの微小隙間が、0.2〜0.8mm程度の範囲内となるように、縫い針101の挿入位置を制御する必要があった。
【0008】
ところが、見栄えの良いステッチ模様を形成するステッチ加工の条件として、
図10に示すように、表皮材102の表面に形成されたステッチ用凹溝102a内に縫製後の糸103が嵌入するように縫い針101の挿入位置を制御させることが必要であった。そのため、縫製後の糸103がステッチ用凹溝102a内に嵌入するように縫い針101の挿入位置を制御することと、縫い針101の糸溝側の外周面101cと糸規制面106bとの微小隙間を0.2〜0.8mm程度の範囲内となるように縫い針101の挿入位置を制御することとを、両立させることは容易ではなかった。すなわち、受け治具106基準で、縫い針101の挿入位置を制御しようとすると、基材104を受け治具106にセットしたときの基材位置のバラツキ等のため、表皮材102に形成されたステッチ用凹溝102aと縫製後の糸103との位置ずれが生じやすく、見栄えの良いステッチ模様を形成することが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、基材又は基材表面に接着された表皮材の表面側から挿通する糸のみによってステッチ模様が縫製されたステッチ加工部品に対するステッチ加工時における糸のほつれを防止しつつ、見栄えの良いステッチ模様を形成することが容易なステッチ加工部品の製造方法及びその製造方法に使用する縫い針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るステッチ加工部品の製造方法及び縫い針は、次のような構成を有している。
(1)縫い針の表側外周面に針軸方向に形成した糸溝に沿って基端側から供給し前記縫い針の先端部に穿設した糸孔に係止した糸を、所定のピッチで前記縫い針と共に基材又は当該基材表面に接着された表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで挿通した後、前記縫い針を引き戻すときに前記基材の裏面側に前記糸のループ部分を形成し、当該ループ部分の根元部を前記基材又は当該基材に重ね合わせた弾性部材が拘束することによって、前記基材又は前記表皮材の表面側に形成したステッチ用凹溝内に嵌入させた前記糸のステッチ模様を縫製するステッチ加工部品の製造方法であって、
前記糸孔は、前記縫い針の表側外周面と裏側外周面とを貫通して形成され、且つ前記糸孔の針先側内壁部には、前記表側外周面との交差部が前記裏側外周面との交差部より基端側に位置する針先側内壁面が形成され、
前記縫い針を引き戻すときには、前記糸孔に係止した前記糸を前記針先側内壁面によって前記裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、前記糸のループ部分を前記縫い針の裏側のみに形成させることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、糸孔は、縫い針の表側外周面と裏側外周面とを貫通して形成され、且つ糸孔の針先側内壁部には、表側外周面との交差部が裏側外周面との交差部より基端側に位置する針先側内壁面が形成され、縫い針を引き戻すときには、糸孔に係止した糸を針先側内壁面によって裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、糸のループ部分を縫い針の裏側のみに形成させるので、特許文献1に記載されたような基材の受け冶具に形成する糸規制面に頼ることなく、糸のループ部分を安定して形成でき、ステッチ加工時における糸のほつれを簡単に防止できる。そのため、受け冶具基準ではなく、基材又は基材表面に接着された表皮材の表面側に形成されたステッチ用凹溝内に縫製後の糸が嵌入するように、縫い針の基材等への挿入位置を制御させることができる。その結果、ステッチ加工時における糸のほつれを簡単に防止しつつ、ステッチ用凹溝内に縫製後の糸が嵌入することによって見栄えの良いステッチ模様を形成することが容易となる。
【0012】
よって、本発明によれば、基材又は基材表面に接着された表皮材の表面側から挿通する糸のみによってステッチ模様が縫製されたステッチ加工部品に対するステッチ加工時における糸のほつれを防止しつつ、見栄えの良いステッチ模様を形成することが容易なステッチ加工部品の製造方法を提供することができる。
【0013】
(2)(1)に記載されたステッチ加工部品の製造方法において、
前記糸孔の基端側内壁部には、針先側に突出する円弧状内壁面が針軸芯より前記縫い針の裏側外周面寄りに偏芯して形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、糸孔の基端側内壁部には、針先側に突出する円弧状内壁面が針軸芯より縫い針の裏側外周面寄りに偏芯して形成されているので、縫い針を基材等の表面側から基材の裏面側まで挿通させるときに、糸孔内の糸を円弧状内壁面に沿わせることによって糸の切断や損傷を防止し、縫い針を引き戻すときには、円弧状内壁面に沿わせた糸を針軸芯より裏側外周面寄りに偏芯した位置で針先側内壁面に当接させることができる。そのため、糸孔に係止した糸を、切断等することなく、針先側内壁面に沿って裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、糸のループ部分を縫い針の裏側のみにより一層安定して形成させることができる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載されたステッチ加工部品の製造方法において、
前記糸孔の基端側内壁部には、前記針先側内壁面に対して平行に形成された基端側内壁面を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、糸孔の基端側内壁部には、針先側内壁面に対して平行に形成された基端側内壁面を備えているので、縫い針を基材等の表面側から基材の裏面側まで挿通させるときに糸孔内で基端側内壁面に沿わせた糸を、縫い針を引き戻すときには、そのままの形状で針先側内壁面に当接させることができる。そのため、糸孔に係止した糸を、縫い針の表側外周面側へ逃がすことなく、針先側内壁面に沿って裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、糸のループ部分を縫い針の裏側のみにより一層安定して形成させることができる。また、針先側内壁面と基端側内壁面とが平行に形成されているので、縫い針に対する糸孔の加工を、より簡素化させることができる。
【0017】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載されたステッチ加工部品の製造方法において、
前記針先側内壁面と前記縫い針の表側外周面との交差部には、R取り部又は面取り部を形成し、当該R取り部又は面取り部と前記針先側内壁面との境界線は、前記糸溝の底面より前記表側外周面寄りに形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、針先側内壁面と縫い針の表側外周面との交差部には、R取り部又は面取り部を形成したので、縫い針を引き戻すときに糸が交差部に当たって、切断又は損傷するのを回避できる。また、当該R取り部又は面取り部と針先側内壁面との境界線は、糸溝の底面より表側外周面寄りに形成されているので、縫い針を引き戻すときには、糸孔内の糸又は糸溝内の糸を針先側内壁面の傾斜面上で受け止めて、当該糸を針先側内壁面に沿ってスムーズに滑動させることできる。そのため、糸孔内の糸又は糸溝内の糸を、切断又は損傷させることなく、針先側内壁面に沿って裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、糸のループ部分をより一層安定して形成させることができる。
【0019】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載されたステッチ加工部品の製造方法において、
前記針先側内壁面の針軸芯に対する直交方向への傾斜角は、45度〜75度の範囲内で形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、針先側内壁面の針軸芯に対する直交方向への傾斜角は、45度〜75度の範囲内で形成されているので、縫い針を引き戻すときには、糸孔に係止した糸を針先側内壁面に沿って裏側外周面より径方向外方へ適正な摩擦力で滑動させて、糸のループ部分を適正な環状形態に形成させることができる。なお、傾斜角が75度を超えて針軸芯に対する直交方向に近くなると、糸と針先側内壁面との摩擦力が過大となり、糸詰まりが生じやすく好ましくない。また、傾斜角が45度未満では、糸孔に係止した糸が裏側外周面より径方向外方へ滑動する際、糸のループ部が鋭角状に屈曲した形態となり、ループ部に対する基材等による拘束力が低下しやすくなる。そのため、ステッチ加工時における糸のほつれが生じやすくなり、好ましくない。
【0021】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載されたステッチ加工部品の製造方法において、
前記糸孔は、前記先端部において基端側の軸部の外径と同一径に形成された位置に穿設されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、糸孔は、先端部において基端側の軸部の外径と同一径に形成された位置に穿設されているので、糸孔の針先側内壁部に形成する針先側内壁面を、最大限、長く形成できる。そのため、縫い針を引き戻すときには、糸孔に係止した糸を、より長く形成した針先側内壁面に沿って裏側外周面より径方向外方へ滑動させて、糸のループ部分をより一層安定して形成させることができる。
【0023】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載されたステッチ加工部品の製造方法に使用する縫い針である。
【0024】
本発明は、(1)乃至(6)のいずれか1つに記載されたステッチ加工部品の製造方法に使用する縫い針であるので、特許文献1に記載されたような基材の受け冶具に形成する糸規制面に頼ることなく、糸のループ部分を安定して形成でき、ステッチ加工時における糸のほつれを簡単に防止できる。そのため、受け冶具基準ではなく、基材又は基材表面に接着された表皮材の表面に形成されたステッチ用凹溝内に縫製後の糸が嵌入するように、縫い針の基材等への挿入位置をステッチ用凹溝基準で制御させることができる。その結果、ステッチ加工時における糸のほつれを簡単に防止しつつ、ステッチ用凹溝内に縫製後の糸が嵌入することによって見栄えの良いステッチ模様を形成することが容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基材又は基材表面に接着された表皮材の表面側から挿通する糸のみによってステッチ模様が縫製されたステッチ加工部品に対するステッチ加工時における糸のほつれを防止しつつ、見栄えの良いステッチ模様を形成することが容易なステッチ加工部品の製造方法及びその製造方法に使用する縫い針を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明に係る実施形態であるステッチ加工部品の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例のステッチ加工部品の製造方法を説明し、その製造方法に使用する縫い針の構成を同時に説明する。その後、第2実施例のステッチ加工部品の製造方法を説明する。
【0028】
(第1実施例)
まず、本実施形態に係る第1実施例のステッチ加工部品の製造方法及びその製造方法に使用する縫い針の構成を、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1に、本発明に係る実施形態(第1実施例)であるステッチ加工部品の製造方法を表す断面図を示す。
図2に、
図1に示すA−A断面図を示す。
図3に、
図1に示す縫い針の糸孔断面図を示す。
図4に、
図3に示す糸孔の変形例を表す糸孔断面図を示す。
図5に、
図1に示す縫い針に対する比較例の部分断面図を示し、(a)に縫い針挿入時の断面図を示し、(b)に縫い針引き戻し時の断面図を示す。
【0029】
図1、
図2に示すように、本ステッチ加工部品の製造方法(第1実施例)は、縫い針1の表側外周面11に針軸方向に形成した糸溝12に沿って基端側から供給し縫い針1の先端部13に穿設した糸孔14に係止した糸2を、所定のピッチで縫い針1と共に基材3又は当該基材表面に接着された表皮材4の表面側から基材3の裏面側まで挿通した後、縫い針1を引き戻すときに基材3の裏面側に糸2のループ部分21を形成し、当該ループ部分21の根元部22を基材3が拘束することによって、基材3又は表皮材4の表面側に形成したステッチ用凹溝5内に嵌入させた糸2のステッチ模様20を縫製するステッチ加工部品10の製造方法である。ここでは、縫い針1を挿通する方向は、矢印Sで表し、縫い針1を引き戻す方向は、矢印Rで表す。
【0030】
ステッチ加工部品10は、例えば、車両の運転席及び助手席の前方に配置するインストルメントパネルに適用でき、所要の形状に形成された硬質の合成樹脂からなる基材3と、基材3の表面に接着された軟質の表皮材4とから構成されている。基材3は、例えば、射出成形されたポリプロピレン(PP)製である。また、表皮材4は、表面側の延性に優れた表皮41と基材側の発泡層42とで構成され、基材3に接着されている。表皮41には、高級感やソフト感を醸すため、革調のシボ模様が形成されている。表皮41は、例えば、0.5〜0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)製である。発泡層42は、例えば、3〜4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)製である。また、表皮材4の表面には、車両左右方向に延びるステッチ模様20が形成されている。ステッチ模様20の糸2は、例えば、外径が0.5〜0.8mm程度の合成繊維製である。
【0031】
また、縫い針1は、基端側(
図1の上方側)にて縫製装置7に上下動可能に把持され、縫製装置7の表皮押え部71に形成された通孔711から先端部13が突出して、基材3に接着された表皮材4の表面側から基材3の裏面側まで挿通される。縫い針1を挿通するとき、糸孔14に係止した糸2の張力を受けて、縫製装置7の糸供給部から糸2が針先側に供給される。針先側に供給された糸2は、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときに、縫い針1によって穿設された基材3の挿通孔31との間で摩擦力を受け、基材3の裏面側に糸2のループ部分21を形成する。そのループ部分21の根元部22は、基材3の挿通孔31が縮径することによって、基材3に拘束される。
【0032】
なお、縫い針1の表皮材4への挿入位置は、縫製後におけるステッチ模様20の糸2が、表皮材4の表面側に半径rの略円弧状に形成したステッチ用凹溝5内に嵌入されるように、ステッチ用凹溝5を基準に制御する。具体的には、縫い針1の表皮材4への挿入位置は、針先17がステッチ用凹溝5の円弧中心51を通過するように制御する。基材3の裏面側には、受け冶具6が設けられ、受け冶具6には、挿入する縫い針1と干渉しないように逃し溝61が形成されている。
【0033】
また、本ステッチ加工部品10の製造方法では、以下の特徴的構成を有する縫い針1を使用する。すなわち、
図1〜
図3に示すように、縫い針1の先端部13に形成した糸孔14は、縫い針1の糸溝12が形成された表側外周面11とその反対側の裏側外周面15とを貫通して形成され、且つ糸孔14の針先側内壁部141には、表側外周面11との交差部142が裏側外周面15との交差部143より基端側に位置する針先側内壁面141Pが形成されている。
図1に示すように、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときには、糸孔14に係止した糸2を針先側内壁面141Pによって裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を縫い針1の裏側のみに形成させる。
【0034】
なお、針先側内壁面141Pは、縫い針1の表側から裏側に向かって針先方向へ傾斜する傾斜面を構成する。針先側内壁面141Pの針軸芯JCに対する直交方向への傾斜角θ1は、45度〜75度の範囲内で形成されていることが好ましい。傾斜角θ1が75度を超えて針軸芯JCに対する直交方向に近くなると、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときに、糸2と針先側内壁面141Pとの摩擦力が過大となり、糸詰まりが生じる恐れがあり好ましくない。また、傾斜角θ1が45度未満では、糸孔14に係止した糸2が裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動する際、糸2のループ部分21が鋭角状に屈曲した形態となり、ループ部分21に対する基材等による拘束力が低下する恐れがあり好ましくない。
【0035】
また、糸孔14は、先端部13において基端側の軸部16の外径と同一径に形成された位置に穿設されていることが好ましい。この場合、針先側内壁面141Pを、縫い針1の表側から裏側に向かって、最大限、長く形成でき、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときには、糸孔14に係止した糸2を、より長く形成した針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21をより一層安定して形成させることができる。
【0036】
また、
図3に示すように、針先側内壁面141Pと縫い針1の表側外周面11との交差部142には、湾曲状に面取りしたR取り部142R又は斜面状に面取りした面取り部142Cが形成されている。また、R取り部142R又は面取り部142Cと針先側内壁面141Pとの境界線KSは、糸溝12の底面12Tより表側外周面11寄りに形成されている。すなわち、縫い針1の表側外周面11に対する糸溝12の底面12Tの深さ寸法d1は、表側外周面11から境界線KSまでの距離d2より大きい。この場合、
図1に示すように、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときには、糸孔14内の糸2又は糸溝12内の糸2を針先側内壁面141Pの傾斜面上で受け止めて、当該糸2を表側外周面11側へ突出させることなく針先側内壁面141Pに沿ってスムーズに滑動させることできる。なお、針先側内壁面141Pと縫い針1の裏側外周面15との交差部143にも、R取り部143R又は面取り部143Cが形成されている。R取り部143R又は面取り部143Cは、R取り部142R又は面取り部142Cより大きく形成されている。
【0037】
また、
図1、
図3に示すように、糸孔14の基端側内壁部144には、針先側に突出する円弧状内壁面144Wが針軸芯JCより縫い針1の裏側外周面15寄りに偏芯して形成されている。この場合、縫い針1を基材3等の表面側から基材3の裏面側まで挿通させるときには、糸孔14内で糸2を円弧状内壁面144Wに当接させた状態で挿通させ、また、縫い針1を引き戻すときには、円弧状内壁面144Wに当接させた糸孔14内の糸2を、針軸芯JCより裏側外周面15寄りに偏芯した位置で、針先側内壁面141Pに当接させることができる。
【0038】
したがって、縫い針1を基材3等へ挿入する段階(
図1の仮想線)では、糸孔14に係止した糸2を、円弧状内壁面144Wに沿わせることによって、糸2の切断や損傷を回避できる。また、縫い針1を引き戻す段階(
図1の実線)では、糸孔14に係止した糸2を、縫い針1の表側外周面11側へ逃がすことなく、針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を、縫い針1の裏側のみにより一層安定して形成させることができる。
【0039】
また、
図3に示すように、円弧状内壁面144Wは、糸溝12の底面12Tから連続面として延設された傾斜状湾曲面144Sに対する接線144T上で接続するように形成されている。また、当該接線144Tの針軸芯JCに対する直交方向への傾斜角θ2は、針先側内壁面141Pの傾斜角θ1より小さく形成されている。このように、糸溝12と円弧状内壁面144Wとを傾斜状湾曲面144Sを介して連続状に接続することによって、糸溝12内の糸2を糸孔14内へ円滑に移動させることができる。また、円弧状内壁面144Wは、縫い針1の裏側に形成された弓形逃し面15Yと裏側外周面15との交差部において、裏側外周面15との接線上で接続するように形成されている。これによって、縫い針1の裏側における糸2の切断や損傷等をより一層回避できる。
【0040】
なお、
図3に示す糸孔14の変形例として、
図4に示すように、縫い針1Bの糸孔14Bの基端側内壁部144には、針先側内壁面141Pに対して平行に形成された基端側内壁面144Pを備えていても良い。この場合でも、糸孔14Bの基端側内壁部144には、針先側に突出する円弧状内壁面144Wが針軸芯JCより縫い針1の裏側外周面15寄りに偏芯して形成されている。また、基端側内壁面144Pは、傾斜状湾曲面144Qを介して糸溝12の底面12Tと連続状に接続している。また、円弧状内壁面144Wは、縫い針1の裏側に形成された弓形逃し面15Yから離間した位置ではあるが、裏側外周面15と接線上で接続している。
【0041】
また、
図4に示すように、針先側内壁面141Pと縫い針1の表側外周面11との交差部142には、R取り部142R又は面取り部142Cが形成されている。また、R取り部142R又は面取り部142Cと針先側内壁面141Pとの境界線KSは、糸溝12の底面12Tより表側外周面11寄りに形成されている。また、針先側内壁面141Pと縫い針1の裏側外周面15との交差部143にも、R取り部143R又は面取り部143Cが形成されている。R取り部143R又は面取り部143Cは、R取り部142R又は面取り部142Cより大きく形成されている。
【0042】
この変形例では、基端側内壁面144Pの針軸芯JCに対する直交方向への傾斜角θ3は、針先側内壁面141Pの傾斜角θ1と同一であり、縫い針1Bを基材等の表面側から基材3の裏面側まで挿通させるときに糸孔14B内で基端側内壁面144Pに当接させた糸2を、縫い針1Bを引き戻すときには、そのままの形状で針先側内壁面141Pに当接させることができる。そのため、糸孔14Bに係止した糸2を、縫い針1Bの表側外周面11側へ逃がすことなく、針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を縫い針1Bの裏側のみにより一層安定して形成させることができる(
図1を参照)。
【0043】
ここで、本実施例の比較例として、一般的なミシン針1Cを上記縫い針として使用した場合における、糸2のループ部分の形状を、
図5を用いて説明する。
図5(a)に示すように、一般的なミシン針1Cの先端部13Cに穿設した糸孔14Cは、糸溝12Cが形成された表側外周面11Cとその反対側の裏側外周面15Cとを貫通して形成され、且つ糸孔14Cの針先側内壁部141Cには、表側外周面11Cと裏側外周面15Cとの間の中央位置(針軸芯JCの位置)で頂部が基端側へ山型状に突出する針先側内壁面141CPが形成されている。また、糸孔14Cの基端側内壁部144Cには、表側外周面11Cと裏側外周面15Cとの間の中央位置(針軸芯JCの位置)で頂部が針先側へ円弧状に突出する基端側内壁面144CPが形成されている。
【0044】
そのため、
図5(a)に示すように、ミシン針1Cを矢印S方向へ挿入させるときに、糸孔14C内で基端側内壁面144CPに当接させた糸2を、
図5(b)に示すように、ミシン針1Cを矢印R方向へ引き戻すときには、中央位置(針軸芯JCの位置)で頂部が山型状に突出する針先側内壁面141CPによって、表側外周面11Cより径方向外方(矢印Q1方向)へ押し出すと同時に、裏側外周面15Cより径方向外方(矢印Q2方向)へ押し出して、糸2のループ部分21Ca、21Cbをミシン針1Cの表側と裏側の両方に形成させる。この場合、ミシン針1Cの表側のループ部分21Caは、縫製装置の糸供給部が引き戻すので、ミシン針1Cの裏側のループ部分21Cbのみが基材の裏面側に残ることとなり、基材に拘束されるために必要な大きさの糸のループ部分を形成できないことがある。したがって、一般的なミシン針1Cでは、本実施形態に係るステッチ加工部品の製造方法において、ステッチ加工時における糸のほつれを防止し得ない場合がある。
【0045】
(第2実施例)
次に、本実施形態に係る第2実施例のステッチ加工部品の製造方法を、
図6、
図7を用いて説明する。
図6に、本発明に係る実施形態(第2実施例)であるステッチ加工部品の製造方法を表す断面図を示す。
図7に、
図6に示すB−B断面図を示す。
【0046】
図6、
図7に示すように、本ステッチ加工部品の製造方法(第2実施例)は、縫い針1の表側外周面11に針軸方向に形成した糸溝12に沿って基端側から供給し縫い針1の先端部13に形成した糸孔14に係止した糸2を、所定のピッチで縫い針1と共に基材3又は当該基材表面に接着された表皮材4の表面側から矢印S方向へ基材3の裏面側まで挿通した後、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときに基材3の裏面側に糸2のループ部分21を形成し、当該ループ部分21の根元部22を基材3又は当該基材3に重ね合わせた弾性部材8が拘束することによって、基材3又は表皮材4の表面側に形成したステッチ用凹溝5内に嵌入させた糸2のステッチ模様20を縫製するステッチ加工部品10の製造方法である。
【0047】
また、縫い針1の先端部13に形成した糸孔14は、縫い針1の糸溝12が形成された表側外周面11とその反対側の裏側外周面15とを貫通して形成され、且つ糸孔14の針先側内壁部141には、表側外周面11との交差部142が裏側外周面15との交差部143より基端側に位置する針先側内壁面141Pが形成されている。針先側内壁面141Pは、縫い針1の表側から裏側に向かって針先方向へ傾斜する傾斜面を構成する。そのため、
図6に示すように、縫い針1を矢印R方向へ引き戻すときには、糸孔14に係止した糸2を針先側内壁面141Pによって裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を縫い針1の裏側のみに形成させる。
【0048】
第2実施例では、基材3の裏面に所定厚の弾性部材8を当接させるように配置されている。弾性部材8は、ステッチ模様20に沿って帯状に形成され、ショアA硬度がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることが好ましい。弾性部材8以外の点は、第1実施例と共通する。そのため、第1実施例と共通する構成については、同一の符号を付して、その説明を割愛する。第2実施例では、糸2のループ部分21の根元部22を基材3の挿通孔31のみならず、弾性部材8の挿通孔81によっても拘束することができる。
【0049】
よって、基材3又は基材表面に接着された表皮材4の表面側から挿通する糸2のみによってステッチ模様20が縫製されたステッチ加工部品10Bに対するステッチ加工時における糸2のほつれをより一層確実に防止しつつ、見栄えの良いステッチ模様20を形成することが容易なステッチ加工部品10Bの製造方法及びその製造方法に使用する縫い針1を提供することができる。
【0050】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るステッチ加工部品の製造方法によれば、糸孔14は、縫い針1、1Bの表側外周面11と裏側外周面15とを貫通して形成され、且つ糸孔14の針先側内壁部141には、表側外周面11との交差部142が裏側外周面15との交差部143より基端側に位置する針先側内壁面141Pが形成され、縫い針1、1Bを引き戻すときには、糸孔14に係止した糸2を針先側内壁面141Pによって裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を縫い針1の裏側のみに形成させるので、特許文献1に記載されたような基材の受け冶具に形成する糸規制面に頼ることなく、糸2のループ部分21を安定して形成でき、ステッチ加工時における糸2のほつれを簡単に防止できる。そのため、受け冶具6基準ではなく、基材3又は基材表面に接着された表皮材4の表面側に形成されたステッチ用凹溝5内に縫製後の糸2が嵌入するように、縫い針1、1Bの基材等への挿入位置を制御させることができる。その結果、ステッチ加工時における糸2のほつれを簡単に防止しつつ、ステッチ用凹溝5内に縫製後の糸2が嵌入することによって見栄えの良いステッチ模様20を形成することが容易となる。
【0051】
よって、本実施形態によれば、基材3又は基材表面に接着された表皮材4の表面側から挿通する糸2のみによってステッチ模様20が縫製されたステッチ加工部品10、10Bに対するステッチ加工時における糸2のほつれを防止しつつ、見栄えの良いステッチ模様20を形成することが容易なステッチ加工部品の製造方法を提供することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、糸孔14、14Bの基端側内壁部144には、針先側に突出する円弧状内壁面144Wが針軸芯JCより縫い針1、1Bの裏側外周面15寄りに偏芯して形成されているので、縫い針1、1Bを基材等の表面側から基材3の裏面側まで挿通させるときに、糸孔14内の糸2を円弧状内壁面144Wに沿わせることによって糸2の切断や損傷を防止し、縫い針1、1Bを引き戻すときには、円弧状内壁面144Wに沿わせた糸2を針軸芯JCより裏側外周面15寄りに偏芯した位置で針先側内壁面141Pに当接させることができる。そのため、糸孔14に係止した糸2を、切断等することなく、針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を縫い針1、1Bの裏側のみにより一層安定して形成させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、糸孔14Bの基端側内壁部144には、針先側内壁面141Pに対して平行に形成された基端側内壁面144Pを備えているので、縫い針1Bを基材等の表面側から基材3の裏面側まで挿通させるときに糸孔14B内で基端側内壁面144Pに沿わせた糸2を、縫い針1Bを引き戻すときには、そのままの形状で針先側内壁面141Pに当接させることができる。そのため、糸孔14Bに係止した糸2を、縫い針1Bの表側外周面11側へ逃がすことなく、針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21を縫い針1Bの裏側のみにより一層安定して形成させることができる。また、針先側内壁面141Pと基端側内壁面144Pとが平行に形成されているので、縫い針1Bに対する糸孔14Bの加工を簡素化させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、針先側内壁面141Pと縫い針1、1Bの表側外周面11との交差部142には、R取り部142R又は面取り部142Cを形成したので、縫い針1、1Bを引き戻すときに糸2が交差部142に当たって、切断又は損傷するのを回避できる。また、当該R取り部142R又は面取り部142Cと針先側内壁面141Pとの境界線KSは、糸溝12の底面12Tより表側外周面11寄りに形成されているので、縫い針1、1Bを引き戻すときには、糸孔14、14B内の糸2又は糸溝12内の糸2を針先側内壁面141Pの傾斜面上で受け止めて、当該糸2を針先側内壁面141Pに沿ってスムーズに滑動させることできる。そのため、糸孔14、14B内の糸2又は糸溝12内の糸2を、切断又は損傷を回避しつつ、針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21をより一層安定して形成させることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、針先側内壁面141Pの針軸芯JCに対する直交方向への傾斜角θ1は、45度〜75度の範囲内で形成されているので、縫い針1、1Bを引き戻すときには、糸孔14、14Bに係止した糸2を針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ適正な摩擦力で滑動させて、糸2のループ部分21を適正な環状形態に形成させることができる。なお、傾斜角θ1が75度を超えて針軸芯JCに対する直交方向に近くなると、糸2と針先側内壁面141Pとの摩擦力が過大となり、糸詰まりが生じやすく好ましくない。また、傾斜角θ1が45度未満では、糸孔14、14Bに係止した糸2が裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動する際、糸2のループ部分21が鋭角状に屈曲した形態となり、ループ部分21に対する基材等による拘束力が低下しやすくなる。そのため、ステッチ加工時における糸2のほつれが生じやすくなり、好ましくない。
【0056】
また、本実施形態によれば、糸孔14、14Bは、先端部13において基端側の軸部16の外径と同一径に形成された位置に穿設されているので、糸孔14、14Bの針先側内壁部141に形成する針先側内壁面141Pを、最大限、長く形成できる。そのため、縫い針1、1Bを引き戻すときには、糸孔14、14Bに係止した糸2を、より長く形成した針先側内壁面141Pに沿って裏側外周面15より径方向外方(矢印Q方向)へ滑動させて、糸2のループ部分21をより一層安定して形成させることができる。
【0057】
本他の実施形態によれば、本実施形態に係るステッチ加工部品10、10Bの製造方法に使用する縫い針1、1Bであるので、特許文献1に記載されたような基材の受け冶具に形成する糸規制面に頼ることなく、糸2のループ部分21を安定して形成でき、ステッチ加工時における糸2のほつれを簡単に防止できる。そのため、受け冶具6基準ではなく、基材3又は基材表面に接着された表皮材4の表面に形成されたステッチ用凹溝5内に縫製後の糸2が嵌入するように、縫い針1、1Bの基材等への挿入位置をステッチ用凹溝5基準で制御させることができる。その結果、ステッチ加工時における糸2のほつれを簡単に防止しつつ、ステッチ用凹溝5内に縫製後の糸2が嵌入することによって見栄えの良いステッチ模様20を形成することが容易となる。