(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貫通孔が形成されている多孔部材の振動により前記多孔部材上の被処理物を搬送しながらふるい分ける振動ふるい機の前記多孔部材を、水平面に対して傾けた状態で、金属と有機ポリマーとで形成された前記被処理物を前記振動ふるい機に供給する供給工程と、
前記被処理物に過熱水蒸気を接触させる接触処理の処理空間を前記多孔部材の上側で外部空間と仕切る接触処理部に、前記過熱水蒸気を供給し、振動している前記多孔部材上の前記被処理物に前記過熱水蒸気を接触させることにより前記有機ポリマーから液状の生成物を得る接触処理工程と、
前記液状の生成物と前記金属とを前記振動ふるい機によりふるい分ける分離工程と、
を有する分離方法。
前記過熱水蒸気の前記接触処理部への供給流量を調整することにより、前記処理部へ供給する前記過熱水蒸気の温度を調節する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分離方法。
金属と有機ポリマーとで形成された被処理物が供給され、貫通孔が形成されている多孔部材の振動により、前記多孔部材上の前記被処理物を搬送するとともに、前記被処理物から生成した液状の生成物と前記金属とをふるい分ける振動ふるい機と、
前記被処理物に過熱水蒸気を接触させる接触処理の処理空間を前記多孔部材の上側で外部空間と仕切り、供給された前記過熱水蒸気を、振動している前記多孔部材上の前記被処理物に接触させることにより前記有機ポリマーから前記液状の生成物を得る接触処理部と
を備える分離装置。
【背景技術】
【0002】
漁網は、ポリアミドやポリエステルなどの有機ポリマーで作られたものが多く利用されており、廃棄処分とされる使用済みの漁網(廃漁網)は、漁業系廃棄物の中でも、廃プラスチック類として産業廃棄物に分類されるものがある。漁網は、使用時には、網目が形成されている網本体に、網本体の糸(網糸)よりも太いロープが組み合わせられることが多く、廃漁網にはロープが付いていることが多い。また、漁網は、海中での使用のために、径が数mmの鉛の粒を含んでいるものが多く、これにより海水面上に浮かぶことなく、海中に留まるようになっている。そのため、廃漁網の処理は、鉛の含有に起因して、容易ではない。しかし、廃漁網は国内だけでも大量にあり、処理手法の提案が望まれている。
【0003】
廃棄物の処理システムとして、例えば特許文献1には、廃棄物の投入口及び排出口を備えた耐圧容器と、耐圧容器内で廃棄物を攪拌及び粉砕する攪拌手段と、耐圧容器内に飽和水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、耐圧容器内の圧力を開閉弁により調節する圧力調節手段と、これら各手段を制御する制御手段と、廃棄物を乾燥させるための乾燥空気を供給する乾燥空気供給手段とを備える廃棄物処理システムが記載されている。この廃棄物処理システムは、飽和水蒸気による、廃棄物の加水分解処理及び圧力調節手段の開閉弁にて容器内の圧力を低下させた後、耐圧容器内に乾燥空気を、圧力を時間とともにパルス変動させて供給し、加水分解処理後の廃棄物を乾燥する。
【0004】
また、プラスチックの処理技術として、油化技術がある。例えば特許文献2には、プラスチックを分解させるための反応槽と、その反応槽が内部に設けられた加熱室と、加熱装置と、水蒸気並びにプラスチックの分解物を反応槽から排出するための排出部を備えるプラスチック油化装置が記載されている。反応槽は、加熱室内における外側に、その反応槽の少なくとも一部を覆う水蒸気導入層を有し、水蒸気導入層に水蒸気を導入する導入部と、水蒸気導入層から反応槽内に水蒸気を噴出するための水蒸気噴出ノズルを有している。加熱装置は、水蒸気導入層内に導入された水蒸気を過熱するものであり、プラスチック油化装置は、過熱された水蒸気が水蒸気導入層から水蒸気噴出ノズルを介し反応槽内に噴出することにより、反応槽内において水蒸気気相中でプラスチックが分解し、その分解により生成した油分が、水蒸気噴出ノズルを介して反応槽内に噴出した水蒸気と共に排出部を介して反応槽外部に排出されるようになっている。
【0005】
また、分離技術としては、ふるいによる分離技術があり、ふるいによって分離する分離装置としては、例えばふるいである多孔部材に振動を与えてふるい分ける振動ふるい機があり、分離処理の対象である被処理物を搬送しながらふるい分けるものもある。例えば特許文献3には、ごみ振動コンベアと風選機とからなるごみ分離装置が記載されている。このごみ分離装置は、上流側に配された第1スクリーン部と、第1スクリーン部の下流側に連接して設けられ第1スクリーンよりも大きな網目を有する第2スクリーン部とから成るスクリーンを密閉性のケーシング内に張架させ、ケーシングを振動させる。そして、第1スクリーン部の下方から上方へ空気を噴出させ、第2スクリーン部の下方から上方へは第1のスクリーン部におけるよりも流量を大きくして空気を噴出させるようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す分離設備11は、金属と有機ポリマーとで形成された複合材料を被処理物(処理対象物)として処理し、金属を複合材料から分離する分離設備の一例である。この例の分離設備11は、金属を回収することができる分離回収設備となっている。
【0020】
本例での複合材料は漁網13であり、廃棄対象とされた使用済みのいわゆる廃漁網である。漁網13は、網目が形成された網本体(網地)と、ロープ(縄あるいは綱)等で構成されている。なお、被処理物としての漁網13には、ロープが含まれていない場合もある。網本体は、網目を形成するように編まれた糸(網糸とも呼ばれる,図示無し)と、粒状に形成された鉛(以下、鉛粒と称する)15とを備える。本例の糸は、複数の繊維からなるマルチフィラメントとなっているが、シングルフィラメントであっても構わない。鉛粒15は、網本体に複数備えられている。鉛粒15は、糸と糸との間に保持されていてもよいし、貫通孔が形成されており、糸が貫通孔に挿通されていることで保持されていてもよい。
【0021】
被処理物とされる複合材料は、金属と有機ポリマーとが含まれるものであれば、漁網13に限定されない。被処理物における金属は、粒状(例えば、径が大きくても20mm)でもよいし、粒状よりも径が大きな塊状でもよいし、短冊状や切片状などの薄片状、薄片状よりも大きなシート状、径が数mm程度以下の針状、あるいは針状よりも径が大きくかつ長い棒状などでもよい。被処理物は、金属が粒状に形成されている場合に、本例の効果が特に顕著である。金属は、鉛に限られず、有機ポリマーと溶融温度に差があるものならばよく、中でも差が大きいものが好ましい。
【0022】
被処理物に含まれる有機ポリマーは、漁網13の網本体の糸及びロープのように線状に長く延びた線状体を形成しているものに限られない。有機ポリマーは、シート状に形成されていてもよいし、長尺のフィルム(ウェブ)状、塊状など、いずれの形態でもよいが、本例のように線状体である場合に特に顕著な効果を発揮する。
【0023】
有機ポリマーは分子内の少なくとも主鎖に炭素を有するポリマーであり、有機ポリマーには可塑剤等の添加剤が含まれていてもよい。有機ポリマーは特に限定されないが、合成樹脂(プラスチック)である場合に本実施形態は特に良好に金属が分離される。合成樹脂が熱可塑性樹脂である場合に、本実施形態は特に良好に金属が分離される。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル(芳香族ポリエステルであるポリアリレートを含む)、ポリアミドなどが挙げられる。本例では、糸がポリアリレート(例えば、(株)クラレ製のベクトラン(登録商標)など)で形成されている漁網13、及び、糸がポリアミドで形成されている漁網13を処理している。このように、被処理物は、異なる有機ポリマーが混在している複合材料であってもよい。なお、本例では、漁網13のロープもポリアリレートやポリアミドなどの有機ポリマーで形成されている。
【0024】
分離設備11は、漁網13の搬送方向における上流側から順に、切断装置20と、分離装置21と、洗浄装置22等で構成されている。切断装置20は、鉛粒15を有機ポリマーと分離する分離処理の前処理として漁網13を切断するためのものである。切断装置20としては、円板状に形成され、外周に刃を備え、円形の中心を回転中心にして回転することで、例えば搬送されてくる漁網13を切断するロータリブレード(ロータリカッタ)等を用いることができる。ただし、漁網13を切断できれば、ロータリブレードに限定されず、公知の切断装置を用いてよい。分離設備11は切断装置20を備えていなくてもよいが、切断によって、漁網13は分離装置21へ導入しやすくなったり、分離装置21での処理効率を高めるから、切断装置20を備える方が好ましい。切断装置20による切断により漁網13を5cm以上100cm以下の範囲に切断することが好ましく、7cm以上70cm以下の範囲に切断することがより好ましく、10cm以上30cm以下の範囲に切断することがさらに好ましい。本例では10cm以上30cm以下の範囲に切断している。また、切断装置20よりも上流に、漁網13を水洗いする水洗装置(図示無し)を設けてもよい。この水洗装置により水洗いすることにより、切断装置20に供する漁網13に付着している異物が除去される。異物としては、砂、泥、貝殻などがある。
【0025】
分離装置21は、漁網13から鉛粒15を分離するためのものである。分離装置21は、接触処理部25と分離部26と過熱水蒸気供給部27等で構成されている。過熱水蒸気供給部27は過熱水蒸気を接触処理部25に供給するためのものであり、接触処理部25と接続している。接触処理部25は、過熱水蒸気供給部27によって供給された過熱水蒸気を漁網13に接触させ、これにより、鉛粒15は溶融させずに固体状態を維持させたまま有機ポリマーから液状の生成物(以下、液状生成物と称する)28を生成させる。この例では過熱水蒸気供給部27は分離装置21に備えられているが、過熱水蒸気供給部27は接触処理部25と接続していれば分離装置21の外部に設けられた外部装置であってもよい。
【0026】
分離部26は、鉛粒15と、液状生成物28とを分離する。分離した液状生成物28は、回収される。なお、分離装置21の詳細は、別の図面を用いて後述する。
【0027】
洗浄装置22は、鉛粒15に付着している液状生成物28を除去するためのものである。ただし、分離部26により、液状生成物28が除去不要な状態にまで鉛粒15から分離される場合には、洗浄装置22を設けなくてもよい。洗浄装置22は、例えば、
図2に示すように、鉛粒15と鉛粒15を洗浄する洗浄液31とを収容する容器32と、攪拌機35と、洗浄液31を供給する洗浄液供給部36とを備える。洗浄液31としては、液状生成物28を溶解する溶剤であれば特に限定されず、好ましい溶剤としては有機溶剤が挙げられる。
【0028】
攪拌機35は、攪拌翼35aと、攪拌翼35aが一端に設けられた棒状の回転軸35bと、回転軸35bを回転するモータ35c等で構成されている。攪拌翼35aは回転軸35bに固定されており、これにより回転軸35bと一体に回転する。容器32には鉛粒15と洗浄液31が収容され、攪拌翼35aが洗浄液31の液面よりも低い位置に配された状態で回転することにより、鉛粒15と洗浄液31とは攪拌される。これにより、鉛粒15に付着している液状生成物28(
図1参照)が効果的に洗浄液31に溶かされて除去される。
【0029】
容器32は、温度コントローラ32aを備えることが好ましく、本例でもそのようにしている。温度コントローラ32aは、容器32の温度を調整することにより、洗浄液31の温度を調節する。例えば、洗浄液31に対して液状生成物28がより迅速に溶けるように、容器32を介して洗浄液31を加熱する。
【0030】
容器32は底に開口32oが形成されており、開口32oは板状部材32bによって開閉されるようになっている。板状部材32bは、容器32の底面に設けられており、開口32oを閉じる閉じ位置(
図2においては実線で示している)と、開口32oを開く開き位置(
図2においては二点鎖線で示している)との間でスライド移動自在である。板状部材32bは、鉛粒15を洗浄する間は閉じ位置に、洗浄に用いた洗浄液31を排出する場合には開き位置に、配される。
【0031】
開口32oには、網32cが設けられている。網32cは鉛粒15の開口32oからの排出を抑止するためのものであり、そのため網32cの網目(図示無し)は鉛粒15が通過しない大きさとなっている。これにより、例えば洗浄に用いた洗浄液31を排出する場合のように開口32oが開状態にされても、鉛粒15は網32cによって捕捉されるから容器32内に留まる。なお、攪拌による洗浄と洗浄液31の排出とを行う1度の洗浄処理で鉛粒15から液状生成物28が除去しきれない場合には、洗浄処理を複数回繰り返すとよい。分離設備11は、洗浄処理後の鉛粒15を乾燥させる乾燥装置(図示無し)を洗浄装置22よりも下流に備えてもよい。乾燥装置としては、例えば、乾燥気体の吹き付けにより、鉛粒15に付着している洗浄液31の蒸発を促進させて鉛粒15を乾燥させる装置が挙げられる。なお、乾燥気体を送り出す送風機を、洗浄装置22の上方に備え、洗浄液31を排出した後の容器32内へ乾燥気体を送りこむことによって、鉛粒15を乾燥させてもよい。以上のようにして、漁網13から鉛粒15が分離され、回収される。
【0032】
なお、鉛粒15を洗浄する洗浄装置は、この例の洗浄装置22に限られない。例えば、鉛粒15が通過できない程度に小さな網目の網で形成された搬送ベルト(図示無し)と、搬送ベルトを長手方向に走行させる駆動部(図示無し)と、搬送ベルトの上方に配され、洗浄液31を例えば液滴状に噴出する複数の噴出ヘッド(図示無し)と、搬送ベルトの下方に設けられた容器(図示無し)等で構成された洗浄装置などでもよい。この場合には、鉛粒15を搬送ベルト上に載せて搬送し、搬送中の鉛粒15に向けて噴出ヘッドから洗浄液31を噴出して鉛粒15に吹き付けることにより、鉛粒15が洗浄される。また、吹き付けられた洗浄液31は搬送ベルトの網目を通過して容器に入り、回収される。
【0033】
分離装置21について、
図3を参照しながら説明する。分離装置21は、接触処理部25と分離部26との他に、搬送ユニット41と、ホッパ42とを備えることが好ましく、本例でもそのようにしている。搬送ユニット41は、被処理物の漁網13を、分離部26のメッシュ部材51へ向けて搬送するためのものである。搬送ユニット41は、漁網13を搬送するための搬送ベルト43と、複数のローラ46a,46b,46c,・・・,46iと、モータ47と、駆動コントローラ48等で構成されている。搬送ベルト43は、長尺のベルト材(図示無し)の長手方向における一端と他端とを互いに接合することにより、環状に形成されている。
【0034】
複数のローラ46a,46b,46c,・・・,46iは、各々の軸46Sが水平に、かつ軸46Sが互いに平行となるように配されており、搬送ベルト43を周面で支持する。これにより、漁網13の搬送路が設定されている。この例では、接触処理部25及び分離部26へ向かう搬送路を概ね水平に設定している。以降の説明において複数のローラ46a,46b,46c,・・・,46iの個々を区別しない場合には、これらを総称してローラ46と称する。ローラ46の数はこの例では9個としているが、特に限定されず、搬送ベルト43の長さや質量等に応じて適宜決定すればよい。つまり、ローラの数は、2個以上8個以下の範囲内、あるいは、10個以上でもよい。
【0035】
搬送路に並んだ複数のローラ46のうちの少なくともいずれかひとつは、モータ47により周方向に回転する駆動ローラとされる。この例では、漁網13の搬送方向における最上流のローラ46aと最下流のローラ46iとの両方を駆動ローラとしているが、駆動ローラは上記の通り少なくともひとつであればよいから、ローラ46aとローラ46iとのうちいずれか一方だけであってもよい。駆動ローラの回転により搬送ベルト43は長手方向に走行し、これにより、搬送ベルト43上に載置された漁網13は搬送されて分離部26に供給される(供給工程)。モータ47は駆動コントローラ48に制御され、これによりローラの回転速度を介して搬送ベルト43の走行速度が調節される。
【0036】
ローラ46aとローラ46iとの間のローラ46b,46c,・・・,46hは、搬送ベルト43との接触により回転(従動回転)するフリーローラ(従動ローラ)としている。しかし、これらのうちの少なくともいずれかひとつを駆動ローラとしてもよい。
【0037】
ホッパ42は、切断装置20(
図1参照)と接続しており、搬送ベルト43上に漁網13を供給するためのものである。ホッパ42は搬送ベルト43の上方に配され、この例では、搬送ベルト43のうちローラ46aに掛けまわされたベルト部分の上方に配してある。ホッパ42は、
図3に示すように上部が開放されており、底には搬送ベルト43の幅方向に延びた開口(図示無し)が形成されている。これにより、切断装置20から送られてきた漁網13は、上部から投入され、底の開口から落下することで搬送ベルト43上に載置される。漁網13は、切断装置20により予め切断されているから絡まりにくい。そのため、搬送ベルト43上で、局部的に嵩高くなることが抑制され、高さが搬送ベルト43の例えば幅方向において均された状態になる。ホッパ42から、走行している搬送ベルト43に連続的に載置されることにより、漁網13は分離部26へ連続的に供給される。漁網13は、高さが均された状態で分離部26に供給されるから、漁網13に対する分離部26及び接触処理部25での処理が、漁網13の全体にわたってより均一化し、また、より効率よく行われる。
【0038】
ホッパ42の底の開口に開閉機構(図示無し)を設け、ホッパ42からの漁網13の落下を間欠的と連続的との間で切り替えられるようにしてもよい。走行中の搬送ベルト43に対して漁網13を間欠的に落下させることにより、漁網13は搬送ベルト43の長手方向において間欠的に載置され、これにより漁網13を分離部26へ断続的に供給することができる。
【0039】
なお、この例では、搬送ユニット41及びホッパ42を用いて漁網13を分離部26に供給しているが、作業者により分離部26に直接、供給してもよい。ただし、搬送方向に延びた搬送ベルト43を用いることにより、一定の搬送時間が確保され、搬送中に漁網13の高さが均されるから、分離部26に直接供給するよりも好ましい。
【0040】
分離部26は振動ふるい機(振動ふるいコンベア)となっており、メッシュ部材51と、振動機構52と、メッシュ部材51及び振動機構52が設けられた本体部53とを備える。分離部26はさらに、第1回収容器56と、第2回収容器57とを備えることが好ましく、本例でもそのようにしている。
【0041】
メッシュ部材51は、過熱水蒸気に接触させる間の漁網13を保持するため、及び、鉛粒15と液状生成物28とを分離するためのふるいであり、漁網の搬送方向に延びた矩形とされている。本体部53は、箱状に形成されており、上部は、メッシュ部材51に張力を付与した状態で支持するフレーム53aとなっている。振動機構52は、モータ(図示無し)を有し、モータの駆動により、フレーム53aを振動させ、これによりメッシュ部材51を振動させる。このように、振動機構52は、フレーム53aを介してメッシュ部材51を振動させる。振動は、重なった漁網13を浮かせることができ、かつ漁網13及び鉛粒15を搬送できる範囲であれば、振幅と周期とは特に限定されない。
【0042】
図3においては、説明の便宜上、振動機構52を本体部53の外部に描いてあるが、振動機構52は本体部53に内蔵してあってもよい。振動機構は、メッシュ部材51上に載置された搬送対象物を一定の方向に搬送するようにメッシュ部材51を振動させる。このように搬送対象物を一定の方向に搬送するようにメッシュ部材を振動させる振動機構は、特に限定されず、公知の機構を用いてよい。例えば、振動ふるい機は市販品でもよく、本例でも市販品を用いている。市販品の振動ふるい機としては、(株)日東電機エンジニアリング製の振動コンベアや、東京施設工業(株)製の振動フルイコンベアであるユーレルVCを挙げることができる。
【0043】
この例では、分離部26による漁網13の搬送速度を12m/時以上50m/時以下の範囲内で設定している。例えば概ね18m/時に搬送速度を設定し、これにより漁網を12×1000kg/時で搬送している。なお、搬送ベルト43の走行速度は、分離部26における漁網13の搬送速度と同じにすればよい。
【0044】
フレーム53aは、上方から見たときに、搬送方向における上流側が開放したコの字の形状とされており、メッシュ部材51を搬送方向と直交する幅方向における各側端で支持する。搬送方向におけるフレーム53aの下流側は、メッシュ部材51との間に、幅方向に延びたスリット状の開口53oが形成されている。この開口53oは、液状生成物28とふるい分けられた鉛粒15が落下するために形成されている。
【0045】
メッシュ部材51は、部材面が水平面に対して傾斜している。部材面とは、貫通孔(本例では網目)が開口している表面である。メッシュ部材51は幅方向において傾斜していることが好ましく、本例でもそのようにしてある。これにより、生成した液状生成物28(
図1参照)が、幅方向における高い一方から低い他方へ向かって、メッシュ部材51をつたうように移動しやすい。メッシュ部材51の幅方向における傾きθ1(
図4参照)は、水平方向に対して少なくとも2°であることがより好ましく、2°以上20°以下の範囲内であることがさらに好ましく、3°以上10°以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0046】
メッシュ部材51は、さらに、搬送方向において傾斜していてもよく、その場合には上流側から下流側に向かうほど低くなるようにする。これにより、漁網13は、より確実に下流に向けて搬送されやすい。メッシュ部材51の搬送方向における傾きθ2(図示無し)は、水平方向に対して少なくとも2°であれば、より搬送されやすいという点で確実に効果がある。市販の振動ふるい機を用いた場合でも、メッシュ部材51は傾斜するように姿勢を調整する。
【0047】
メッシュ部材51は、例えば金属で形成された網部材である。金属としては、過熱水蒸気と接触しても溶解せずに形状を保持できるものであれば特に限定されない。本例のメッシュ部材51の素材は、ステンレス鋼である。メッシュ部材51はふるいとして機能するために、網目は、分離する金属(この例では鉛粒15)が通過しない大きさとする。この例では、鉛粒15が扁球状であり、短軸長さは0.6mm程度であることから、網目は最も大きい径部分が鉛粒15の短軸長さよりも小さい寸法の0.5mm程度としている。鉛粒15が通過してしまう場合には、複数のメッシュ部材51を厚み方向に重ねて配し、複数のメッシュ部材の各網目よりも小さい網目を形成してもよい。
【0048】
メッシュ部材51は多孔部材の一例であり、多孔部材はメッシュ部材51に限られない。例えば、金属板に例えばパンチング処理によって孔を複数形成した多孔板でもよい。また、多孔板を厚み方向に複数重ねて用いてもよいし、多孔板とメッシュ部材51とを厚み方向に重ねて用いてもよい。
【0049】
本体部53は、第1回収容器56と第2回収容器57と洗浄装置22(
図2参照)とに接続している。第1回収容器56は液状生成物28(
図1参照)を回収するためのものであり、第2回収容器57は後述する未分解生成物58(
図5参照)を回収するためのものである。なお、分離部26は鉛粒15を回収する第3回収容器(図示無し)を備えてもよく、その場合には第3回収容器を洗浄装置22に接続すればよい。
【0050】
接触処理部25は処理部本体61と供給管62とを備える。接触処理部25は分離部26の上に配され、具体的には、処理部本体61がメッシュ部材51の上に配されている。
【0051】
処理部本体61は、下部が開放された箱状とされており、漁網13を過熱水蒸気に接触させる接触処理の処理空間を、メッシュ部材51の上側において確定し、外部空間と仕切る。処理部本体61の、搬送方向における上流側の外部空間と仕切る第1仕切板61aは、搬送ベルト43側の開口を閉じる閉じ位置と、開く開き位置との間で移動自在となっており、これにより、漁網13の入口61i(
図5参照)の開き度合い(開閉も含む)の調節ができるようになっている。本例の第1仕切板61aは、上下方向にスライド移動自在となっているが、漁網13の入口61iの開き度合いを調節できるならば、移動態様は特に限定されない。処理部本体61の、搬送方向における下流側の外部空間と仕切る第2仕切板61bも、第1仕切板61aと同様に構成されており、これにより、鉛粒15が出る出口61oの開き度合い(開閉を含む)の調節ができるようになっている。
【0052】
処理部本体61の幅方向における各端部に側板61cは、起立した姿勢で設けられており、フレーム53aの上に載置される。これにより処理空間を幅方向において外部空間と仕切っている。
【0053】
処理部本体61の内寸、すなわち、処理空間のサイズは、搬送方向の長さが3m、幅方向の長さが1m、高さが1mである。ただし、処理部本体61の内寸は特に限定されず、例えば接触処理の時間をより長くしたい場合や、搬送速度をより大きくしたい場合にはこの例よりも長くすればよい。また、接触処理の時間をより長くしたい場合や、搬送速度をより大きくしたい場合には、複数の処理部本体61を搬送方向に並べて配してもよい。
【0054】
処理部本体61には上面に開口した過熱水蒸気の供給口61s(
図5参照)が形成されている。供給管62は、処理部本体61の上面に、搬送方向に延びて設けられており、過熱水蒸気の供給口に接続する分岐管部62a,62b,62cを有する。これにより、過熱水蒸気供給部27(
図1参照)からの過熱水蒸気は、供給管62の分岐管部62a,62b,62cを通過して処理部本体61へ供給され、メッシュ部材51で搬送されている漁網13に接触する。このように、本例の構成によると、連続的に漁網13を処理することができる。そのため、大量の漁網13を処理することができる。また、本例によると、振動ふるい機で構成された分離部26上に、処理部本体61を設けた構成であるから、シンプルな装置構成にも関わらず確実に漁網13を処理することができ、さらには保守や洗浄、点検等の作業性もよい。分岐管部62a,62b,62cは、この順で搬送方向に並んでいる。この例では分岐管部の数を3つとしているが、分岐管部の数はこの例に限られず、2個、または4個以上でもよい。
【0055】
図5に示すように、供給口61sは搬送方向において概ね等間隔で形成されており、そのため、分岐管部62a,62b,62cも同様に供給管の長手方向において概ね等間隔で形成されている。これにより、過熱水蒸気は、処理部本体61の全域に確実に供給される。振動しているメッシュ部材51上の漁網13は、振動することにより糸と糸との間に隙間が形成されながら搬送されるから、過熱水蒸気は糸同士に形成される隙間に入り込み、全量の漁網13に確実に接触し、漁網13の有機ポリマーを分解して液状生成物28を生成させる(接触処理工程)。生成した液状生成物28は、メッシュ部材51の網目を通過するから、鉛粒15が確実にふるい分けられる(分離工程)。高さが均された状態で供給されてきた漁網13は、メッシュ部材51の振動によっても高さがさらに均されるから、過熱水蒸気は少なくとも幅方向においてより均一に漁網13に接触し、幅方向において均等に有機ポリマーの分解が進む。この手法によると、酸化や炭化を抑制されながら有機ポリマーが分解する。
【0056】
また、メッシュ部材51は振動しているから、液状生成物28はより迅速にメッシュ部材51の下に案内されやすい。そのため、未分解の有機ポリマーはより早く過熱水蒸気と接触できるようになり、分解が促進される。メッシュ部材51は、幅方向において傾いた姿勢で配されているから、液状生成物28はメッシュ部材51をつたって、高い位置から低い位置へと流れやすくなっている。このため、液状生成物28は、幅方向での最も低い位置においてメッシュ部材51から下方に、さらに迅速に案内されやすくなっている。
【0057】
過熱水蒸気供給部27は、液体の水から過熱水蒸気を生成する水蒸気生成部66と、バルブ67と、水蒸気生成部66及びバルブ67を統括して制御するコントローラ68とを備える。水蒸気生成部66には液体の水が供給され、コントローラ68の制御のもと、生成する過熱水蒸気の量、及び過熱水蒸気の温度が調節される。また、バルブ67は、コントローラ68によって開度(開閉を含む)が制御され、これによって処理部本体61へ供給する過熱水蒸気の流量(供給流量)が調節される。なお、バルブ67を例えば全開など一定の開度に保持して、水蒸気生成部66での過熱水蒸気の生成速度を調節することにより、処理部本体61へ供給する過熱水蒸気の流量を調節してもよい。
【0058】
処理部本体61へ供給する過熱水蒸気の流量は、液体の水の状態での体積で100リットル/時以上600リットル/時以下の範囲内にする。すなわち、液体の水を100リットル/時以上600リットル/時以下の範囲内で過熱水蒸気にして処理部本体61に送り込む。なお、1リットルは1×10
−3m
3である。過熱水蒸気の流量を液体の水での体積に換算して100リットル/時以上にすることにより、100リットル/時未満の場合に比べて、過熱水蒸気の処理部本体61に対する流量が多少変動した場合でも過熱水蒸気の温度の変動がより小さく抑えられ、高温かつ所定温度に維持しやすい。その結果、臨界点に達している過熱水蒸気の量がより多く確保され、有機ポリマーが酸化及び炭化することなく、液状への分解がより促進される。また、600リットル/時以下という流量は、本例で用いている水蒸気生成部66において可能な最大値が600リットル/時であるためであり、さらに大きな流量が可能な水蒸気生成部を用いる場合であれば600リットル/時を超えた流量でもよい。また、水蒸気生成部66を複数用い、複数の水蒸気生成部66によって600リットル/時よりも大きな流量にしてもよい。処理部本体61へ供給する過熱水蒸気の流量は、液体の水での体積に換算して少なくとも200リットル/時であることがより好ましく、少なくとも250リットル/時であることがさらに好ましく、少なくとも300リットル/時であることが特に好ましい。ただし、処理部本体61の内寸に応じて、流量を増減することが好ましい。例えば、処理部本体61の高さが本例の2倍である場合や搬送方向における長さが本例の2倍である場合には、流量は2倍とすることが好ましい。
【0059】
処理部本体61へ供給される過熱水蒸気の温度は、水蒸気生成部66において調節した水蒸気の温度に加えて、バルブ67の開度制御による流量の調節にも依存する。そこで、水蒸気の温度は、バルブ67の開度制御によって、より精緻に制御することが好ましく、本例でもそのようにしている。具体的には、処理部本体61の内部に温度センサ(図示無し)を設け、この温度センサの検出結果に基づいて、コントローラ68によりバルブ67の開度を調節するとよい。温度センサは、搬送方向における処理部本体61の概ね中央部に配することが好ましい。過熱水蒸気の温度を高める場合には、バルブ67の開度を小さくする方に調節し、温度を低くする場合には、開度を大きくする方に調節する。処理部本体61へ導入された過熱水蒸気の温度は220℃以上350℃以下の範囲内であることが好ましい。220℃以上とすることにより、220℃未満の場合と比べて、より確実に有機ポリマーから液状生成物28が生成し、鉛粒15が分取される。また、350℃以下にすることにより鉛粒15の鉛粒15の溶融もより確実に防止でき、固体状態を維持させることができる。過熱水蒸気は、水蒸気生成部66で生成されてから処理部本体61の内部に至るまでの間に温度が下降する場合があり、そのような場合には、処理部本体61の内部に至るまでの温度の下降分を考慮して、水蒸気生成部66から送り出す過熱水蒸気の温度を水蒸気生成部66により調節するとよい。なお、本例では処理部本体61へ導入された過熱水蒸気の温度を、漁網13に接触する過熱水蒸気の温度とみなしている。
【0060】
処理部本体61における接触処理をより確実にし、かつ、有機ポリマーの液状生成物28への分解を促進するために、入口61iと出口61oとはできるだけ小さくする方が好ましい。入口61iの高さ(第1仕切部材61aの下端のメッシュ部材51からの高さ)は、供給する漁網13が通過できる程度の高さにする。処理部本体61を通過する間に、漁網13の有機ポリマーの少なくとも一部は分解して液状生成物28になるから、出口61oの高さ(第2仕切部材61bの下端のメッシュ部材51からの高さ)は入口61iの高さより低くてよく、また、できるだけ低くする方が好ましい。
【0061】
処理部本体61中の過熱水蒸気は、処理部本体61と本体部53及びメッシュ部材51との間に形成された隙間から外部へ漏れ出るので、入口61iが出口61oよりも高くした場合には、入口61iから漏れ出る量は出口61oから漏れ出る量の方よりも大きくなる。したがって、処理部本体61の内部において、漁網13に接触する過熱水蒸気の量は、搬送方向において、処理部本体61の概ね中央部である分岐管部62bの下方が最も多く、分岐管部62c、分岐管部62bの順に少なくなっている。このため漁網13は、最も嵩高くなっている入口61iの通過直後は、緩やかに加熱されて、上表面のみの有機ポリマーが局部的に分解してしまうことが抑制される。そのため、上表面のみが局部的に分解して液状生成物28になってしまうことで内部の分解がすすみにくいといった現象が抑制されて、処理部本体61を搬送される。そして、分岐管部62bの下方で漁網13の高さ方向全体にむらなく過熱水蒸気がいきわたり、均一に分解がすすみやすく、結果的により多くの液状生成物28が得られる。また、最も下流の分岐管部62cの下方は、分岐管部62aの下方ほどは温度が低くないから、有機ポリマーの分解が確実にすすむ。
【0062】
本体部53の内部には、開口53oの下方に、メッシュ部材51から落下した鉛粒15を受ける受取部71が箱状に形成されており、この受取部71は、幅方向(
図5の紙面奥行き方向)に延びている。受取部71の底には、鉛粒15を案内する管が設けられ、この管は洗浄装置22に接続している。これにより、メッシュ部材51によりふるい分けられてメッシュ部材51から落下した鉛粒15は、受取部71及び管を介して洗浄装置22へ送られ、洗浄装置22で洗浄されて回収される。
【0063】
本体部53の底板は、下流に向かうほど低くなるように傾斜しており、下流端近傍に、液状生成物28の第1排出口D1と、未分解生成物58の第2排出口D2とが形成されている。第1排出口D1は、第2排出口D2よりも上流に形成されており、この第1排出口D1には、未分解生成物58の排出を防止するフィルタ(網やろ紙など)72が設けられている。未分解生成物58は、有機ポリマーの分解により生成したものの、分解が液状生成物28には進んでおらず、室温(概ね25℃)では液状を保持できない程度にとどまった生成物である。未分解生成物58のほとんどはゲル状の生成物であるが、室温に温度が低下した場合に固体になってしまう生成物が含まれている場合もある。
【0064】
第1排出口D1は第1回収容器56に、第2排出口D2は第2回収容器57に接続する。これにより、鉛粒15からふるい分けられた液状生成物28は第1排出口D1を介して第1回収容器56に、未分解生成物58は第2排出口D2を介して第2回収容器57にそれぞれ回収される。
【解決手段】分離装置21により、金属と有機ポリマーとで形成された漁網13から鉛粒15を分離する。分離部26は、網目が形成されているメッシュ部材51の振動により、漁網13を搬送しながらふるい分ける。供給工程は、メッシュ部材51を、水平面に対して傾けた状態で、漁網13を分離装置21に供給する。接触処理工程は、接触処理部25に過熱水蒸気を供給し、振動しているメッシュ部材51上の漁網13に過熱水蒸気を接触させることにより有機ポリマーから液状生成物を得る。接触処理部25は、漁網13に過熱水蒸気を接触させる接触処理の処理空間を、メッシュ部材51の上側で外部空間と仕切っている。分離工程は、生成した液状の生成物と鉛粒15とを分離部26によりふるい分ける。