(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6876314
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】装身具の止め具
(51)【国際特許分類】
A44C 25/00 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
A44C25/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-551598(P2020-551598)
(86)(22)【出願日】2019年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2019048393
【審査請求日】2020年9月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503053538
【氏名又は名称】有限会社宝石のエンジェル
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚治郎
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−192157(JP,A)
【文献】
特開2013−081524(JP,A)
【文献】
米国特許第06508080(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装身具の片方の鎖状の端部に設けた凹部と、他方の鎖状の端部に設けた凸部とを噛合わせて係止する方式の装身具の止め具において、
前記凹部と前記凸部には、これらを正しい係止位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設け、
前記凹部は、一対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、かつ、前記凸部が一対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、
前記鰐口クリップを構成する一対の顎部材間の内部に一方の吸着部材を設け、かつ、前記係止部材の前方に他方の吸着部材を設け、
前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材が、前記一対の顎部材のいずれか一方に設けられ、かつ、当該鰐口クリップの内部に設けた吸着部材の前方には、前記係止部材の吸着部材が挿入できるホルダーを備え、かつ前記のホルダーは、どちらか一方の顎部材の内側にあって、かつ、前記ホルダーの内周面は、顎部材とおよそ平行にガイド面が形成されていて、かつ、係止部材は、挿入離脱時において、前記ホルダーのガイド面に沿って、移動することを特徴とする装身具の止め具。
【請求項2】
前記ホルダーは、前記鰐口クリップの挿入口を横方向とした場合、その開口面が横方向を向くように配置され、かつ、前記ホルダーには、前記係止部材が、前記ホルダーの内部空間を、およそ水平方向に移動する為のガイド面が形成されることを特徴とする請求項1記載の装身具の止め具。
【請求項3】
前記ホルダーは、円柱状の前記係止部材を嵌入可能な円筒ホルダーであることを特徴とする請求項2記載の装身具の止め具。
【請求項4】
前記ガイド面は、前記円筒ホルダーの内周面と、前記一対の顎部材の一方の顎部材に形成された半円形の挿入口の切欠き面との連続面であり、かつ、前記ホルダーの内周面は、挿入口と同一の面であることを特徴とする請求項3記載の装身具の止め具。
【請求項5】
前記円筒ホルダーの開口面の下側略半分が前記一対の顎部材の一方の顎部材に形成された半円形の挿入口に連続し、
前記円筒ホルダーの開口面の上側略半分が前記一対の顎部材の他方の顎部材と係脱可能であり、
当該他方の顎部材の端部には止め部が形成される、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の装身具の止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、キーホルダー、バック、アクセサリー、ベルトなどの装身具に使用される装身具の止め具である。
【背景技術】
【0002】
従来より、ネックレスなどの装身具において係止のための各種の止め具が用いられている。例えば、凹部となる鰐口クリップの一対の顎部材のいずれか一方の顎部材の内部に磁石が設け、凸部の係止部材の先端部に磁石を設ける。そして、凸部の係止部材の先端部を、開口した凹部の鰐口クリップの先端付近にロケーションする事で磁力の影響を受けて、凸部の係止部材が、凹部の鰐口クリップの中に誘導され、凹部と凸部とが係止される止め具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、アクセサリに適用されるクラスプであって、アクセサリの装着を容易にし、特に片手でも容易に接続が可能であり、さらに小型化が可能なクラスプも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、プラグには、突片の根元に段差が設けられ、本体には、挿入孔に挿入された突片の根元の段差に引っ掛かって、突片の前記挿入孔からの脱落を防止する脱落防止機構が設けられ、さらにプラグには、突片の先端に磁石が設けられ、本体には、挿入孔の奥に、突片の磁石を引き寄せる磁石が設けられた装身具の留め金も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4044598号公報
【特許文献2】特開2012−192157号公報
【特許文献3】特開2013−81524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1乃至特許文献3に示されるような従来の装身具の止め具には未だに様々な問題点がある。
【0007】
第一の問題点として、上記特許文献1や特許文献3に示すような装身具の止め具の場合、その係合状態が意図せず解除される危険性がある。このことを
図5及び
図6を参照して説明する。
図6に示す場合、凹部の鰐口クリップ(20)と凸部の係止部材(21)を長軸の中心線と平行に互いに逆方向に引いても、凸部の係止部材(21)のネック部(22)が、凹部の鰐口クリップ(20)の止め部(23)に当たって係止されるために抜ける事はない。しかしながら、
図5で示すように、凸部である係止部材(21)が、凹部の鰐口クリップ(20)の長軸の中心線に対して平行ではない方向、例えば斜め方向(6時方向など)に引っ張られた場合、凸部の係止部材(21)が凹部の鰐口クリップ(20)を構成する顎部材の挿入口を拡げることが可能となる。その結果、鰐口クリップ(20)の先端部の挿入口が開口して抜けてしまう危険性がある。
【0008】
そこで従来技術の引用文献1では、鰐口クリップの長軸の中心線に対して斜めの方向に引いても抜けないようにする為に、鰐口クリップのバネ材の力を強くして常時閉口状態を保っている。その結果、止め具が大型化したり、凹部と凸部との係合離脱時には、鰐口クリップの後方を非常に強い力で内方に押圧しないと係合離脱ができず、非常に操作性が悪いという問題もある。
【0009】
第二の問題として、装身具の止め具を構成する凹部と凸部とをスムーズに係合できない、又は係合離脱出来ないという問題がある。一般的にネックレスなどの装身具の止め具は非常に小さく、また止め具の係合離脱操作は首の後ろなどで行う場合が多いため、人の目視に頼ることが難しい場合が多い。この場合、例えば、上記従来の特許文献2に示すような止め具では、
図7に示すように、鰐口クリップ(30)の開口付近に多くの縁部(30a)が形成されている。このような構造の場合、凹部となる鰐口クリップ(30)が係止部材(31)の吸着部材(31a)の直径の長さ分だけ開口しても、不十分な開口であれば係止部材(31)と縁部(30a)のいずれかが接触してしまい、その結果、スムーズに鰐口クリップ(30)及び係止部材(31)を係合できない。
【0010】
更に 係合離脱時においても、同様である(
図9参照)。鰐口クリップ(30)が不完全な開口状態 、つまり、凹部となる鰐口クリップ(30)が係止部材(31)の吸着部材(31a)の直径の長さ分だけ開口しても、鰐口クリップ(30)の吸着部材 (30b)は、鰐口クリップ(30)の下の止め部の奥に位置するので、係止部材(31)の吸着部材(31a)は、鰐口クリップ(30)の縁部(30a)又は止め部に当たり抜けない。(尚、完全開口の時は、鰐口クリップ(30)の吸着部材(30b)は、鰐口クリップ(30)の長軸の中心線上に位置するので、係止部材(31)の吸着部材(31a)は、止め部に当たる事は無くスムーズに離脱出来る。)首の後ろなどの係合離脱操作は、完全開口なのか不完全開口なのか判断できない。その結果、スムーズに鰐口クリップ(30) 及び係止部材(31)を係合離脱できない。
【0011】
更に 特許文献1及び特許文献3の係合離脱時においても、同様である。
図5,
図6又は
図8を参照しながら説明をする。凹部となる鰐口クリップ(20)が、係止部材(21)の磁気部材 の直径の長さ分だけ開口しても、係止部材(21)が10時方向に引いたときは、係止部材のネック部(22)と止め部(23)が接触してしまう。その結果、スムーズに鰐口クリップ(20)及び係止部材(21)を係合脱離できない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、凸部となる係止部材がどんな方向に引っ張られても凹部となる鰐口クリップから意図せず抜ける事がなく、操作性がよく、且つ係合時には係止部材を鰐口クリップに確実に嵌挿でき、かつ、係合離脱時には、鰐口クリップが係止部材の吸着部材の直径分だけ開口すれば、いかなる方向へ引っ張られても、止め部に接触することなくスムーズに係合離脱できる装身具の止め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、装身具の片方の鎖状の端部に設けた凹部と、他方の鎖状の端部に設けた凸部とを噛合わせて係止する方式の装身具の止め具において、前記凹部と前記凸部には、これらを正しい係止位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設け、前記凹部は、一対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、かつ、前記凸部が一対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、前記鰐口クリップを構成する一対の顎部材間の内部に一方の吸着部材を設け、かつ、前記係止部材の前方に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材が、前記一対の顎部材のいずれか一方に設けられ、かつ、当該鰐口クリップの内部に設けた吸着部材の前方には、前記係止部材の吸着部材が挿入できるホルダーを備え
、かつ前記のホルダーは、どちらか一方の顎部材の内側にあって、かつ、前記ホルダーの内周面は、顎部材とおよそ平行にガイド面が形成されていて、かつ、係止部材は、挿入離脱時において、前記ホルダーのガイド面に沿って、移動することを特徴とする。
【0014】
この装身具の止め具において、前記ホルダーは、前記鰐口クリップの挿入口を横方向とした場合、その開口面が横方向を向くように配置され、かつ、前記ホルダーには、前記係止部材が、前記ホルダーの内部空間を、およそ水平方向に移動する為のガイド面が形成されることが好ましい。
【0015】
この装身具の止め具において、前記ホルダーは、円柱状の前記係止部材を嵌入可能な円筒ホルダーであることが好ましい。
【0016】
この装身具の止め具において、前記ガイド面は、前記円筒ホルダーの内周面と、前記一対の顎部材の一方の顎部材に形成された半円形の挿入口の切欠き面との連続面であ
り、かつ、前記ホルダーの内周面は、挿入口と同一の面であることが好ましい。
【0017】
この装身具の止め具において、前記円筒ホルダーの開口面の下側略半分が前記一対の顎部材の一方の顎部材に形成された半円形の挿入口に連続し、前記円筒ホルダーの開口面の上側略半分が前記一対の顎部材の他方の顎部材と係脱可能であり、当該他方の顎部材の端部には止め部が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る装身具の止め具は、凹部として一対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップ、凸部として一対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材を備える。鰐口クリップを構成する一対の顎部材間の内部に一方の吸着部材を設け、かつ、係止部材の前方に他方の吸着部材を設ける。吸着部材は、一対の顎部材のいずれか一方に設置されていて、かつ、鰐口クリップの内部に設けた吸着部材の前方には、係止部材の吸着部材が挿入できるホルダーを備える。この構成により、本発明に係る装身具の止め具では、凸部となる係止部材がどんな方向に引っ張られても凹部となる鰐口クリップから意図せず抜ける事がなく、操作性がよく、且つ係合時には係止部材を鰐口クリップに確実に嵌挿できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る装身具の止め具の斜視図である。
【
図2】同上装身具の止め具を構成する鰐口クリップの分解斜視図である。
【
図3】同上装身具の止め具を構成する鰐口クリップ及び係止部材の離脱状態を説明するための図である。
【
図4】同上鰐口クリップ及び係止部材の係合状態を説明するための図である。
【
図5】引用文献1に係る止め具の断面状態を示す図である。
【
図7】引用文献2に係る止め具の断面状態を示す図である。
【
図8】引用文献1に係る止め具の断面状態を示す図である。
【
図9】引用文献2に係る止め具の断面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る止め具に関して図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る装身具の止め具(F)は、
図1及び
図2に示すように、凸部(1)及び凹部(5)を備える。凹部(5)は、一対の顎部材(6と7)を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップ(5)である。凸部(1)は、一対の開口状態の顎部材間(6と7の間)に嵌入して係止される係止部材(1)である。
【0021】
鰐口クリップ(5)を構成する一対の顎部材間(6と7の間)の内部に一方の吸着部材(14)を設け、かつ、係止部材(1)の前方に他方の吸着部材(2)を設けている。吸着部材(14)は、一対の顎部材のいずれか一方(ここでは顎部材7)に設置されていて、かつ、鰐口クリップ(5)の内部に設けた吸着部材(14)の前方には、係止部材(1)の吸着部材(2)が挿入できるホルダー(13)を備えている。なお、本実施形態の説明において、正しい係止位置に誘導できる部位とは、凹部(5)と凸部(1)が、確実に係止できる位置に双方の吸着部材を配置する事を意味する。また、吸着部材(2)及び(14)は例えばS極N極から成る一対の磁石材である。
【0022】
ここでホルダー(13)の構成に関して
図3及び
図4を参照し、より詳細に説明する。ホルダー(13)は、円柱状の係止部材(1)を嵌挿可能な円筒ホルダー(13)であり、図面に示すように鰐口クリップ(5)の挿入口(10)を横方向とした場合、その開口面が横方向を向くように配置されている。円筒ホルダー(13)は図示するように一定の肉厚を有し、一方の開口面は吸着部材(14)に当接し(若しくは一体形成され)、他方の開口面の下側略半分が一対の顎部材の一方の顎部材(7)に形成された半円形の挿入口(10)に連続している。この構造により、外側から嵌入される係止部材(1)を水平方向(またはおよそ水平方向、又は下側の顎部材(7)の長軸方向に対して平行な方向)に移動させて円筒ホルダー(13)の内部空間(16)に誘導するためのガイド面(G)が形成される。また、円筒ホルダー(13)の当該他方の開口面の上側略半分が一対の顎部材の他方の顎部材(6)と係脱して、他方の顎部材(6)の端部には止め部(12)が形成されている。
【0023】
上述のガイド面(G)は、
図2及び
図3に示すように、円筒ホルダー(13)の内周面と、一対の顎部材の一方の顎部材(7)に形成された半円形の挿入口(10)の切欠き面7aと、から構成される連続面である。なお、この連続面は、円筒ホルダー(13)の内周面と顎部材7の切欠き面7aとの連接面又は一体形成面のどちらでもよい。この構成により、鰐口クリップ(5)が係止部材(1)の吸着部材(2)の直径の長さ分だけ開口した際に、吸着部材(2)が何等の障害物に接触することなく、確実に円筒ホルダー(13)の内部空間(16)に嵌挿される。この結果、極めてスムーズに凸部の係止部材(1)と凹部の鰐口クリップ(5)とを係合できる。
【0024】
次に、装身具の止め具(F)の挿入に関して
図3を参照しながら説明する。凸部(1)及び凹部(5)の離脱状態では、凹部でなる鰐口クリップ(5)の後部側を押圧することで挿入口(10)を開口させて、凸部となる係止部材(1)を鰐口クリップ5の挿入口10の付近にロケーションする。その後は、磁石の力を利用して係止部材(1)が鰐口クリップ(5)に嵌挿される。
【0025】
次に、装身具の止め具(F)の係合状態に関して
図4を参照しながら説明する。鰐口クリップ(5)が閉口状態にある時バネ手段の付勢力に抗して鰐口クリップ(5)の後部を内方に押圧することにより、鰐口クリップ(5)が開口状態となる。係止部材(2)の前方には、吸着部材(2)を備えていて、吸着部材(2)の後部には、吸着部材(2)より細径のネック部(3)が形成される。本図に示す凸部(1)及び凹部(5)の係合状態では、凹部の鰐口クリップ(5)と凸部の係止部材(1)が双方の磁力の影響を受け挿入され係合される。係止部材(1)の吸着部材(2)は、ホルダー(13)の内部空間(16)に収納されて、指で摘まんでいた鰐口クリップ(5)の後部の押圧を開放する事で、顎部材(6)の端部の止め部(12)は、係止部材1のネック部(3)に食い込み係合した状態となる。
【0026】
尚、ホルダー(13)の内部空間(16)の大きさは、吸着部材(2)より少し大きくして、隙間はあった方が良い。また、止め部(12)は、係止部材(1)を係止できる形状であれば良く、鰐口クリップ(5)との間の隙間は、あっても、無くても良い。図面では、止め部(12)は、一方の顎部材(6)の一端部付近のみ設け、内部空間(16)の直径と吸着部材(2)の直径をほぼ同じにして、内部空間(16)の直径と吸着部材(2)の隙間をできる限り小さくしているが、止め部(12)を顎部材(6)と顎部材(7)の両方の先端部付近に設けて、内部空間(16)の直径を吸着部材(2)の直径より大きくして、内部空間(16)の直径と吸着部材(2)の隙間を大きく開けても良い。
【0027】
係止状態においては、凸部(1)の吸着部材(2)の一部又は全部は、ホルダー(13)の中の内部空間(16)に収納される。吸着部材(2)とホルダー(13)の内側には、僅かな隙間があった方が良い。
【0028】
以上の説明のように、本実施形態では、装身具の片方の鎖状の端部に設けた凹部(5)と、他方の鎖状の端部に設けた凸部(1)とを噛合わせて係止する方式の装身具の止め具(F)において、凹部(5)と凸部(1)には、これらを正しい係止位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材(2,14)として設け、凹部(5)は、一対の顎部材(6,7)を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップ(5)であり、かつ、凸部(1)が一対の開口状態の顎部材(6,7)間に嵌入して係止される係止部材(1)であり、鰐口クリップ(5)を構成する一対の顎部材(6,7)間の内部に一方の吸着部材(14)を設け、かつ、係止部材(1)の前方に他方の吸着部材(2)を設け、鰐口クリップ(5)の内部に設けた吸着部材(14)が、一対の顎部材(6,7)のいずれか一方(本実施形態では顎部材(7))に設けられ、かつ、吸着部材(14)の前方には、係止部材(1)の吸着部材(2)が挿入できるホルダーを備える。
【0029】
この構成により、本実施形態に係る装身具の止め具(F)では、吸着部材(2)に対してあらゆる方向の係合離脱する力が働いたとしても鰐口クリップ(5)のホルダー(13)は、拡径しない。この構成により、凸部(1)の吸着部材(2)が、係止状態の鰐口クリップ(5)の顎部材(6)の先端部の止め部(12)又は挿入口(10)を押し広げて、凸部(1)及び凹部(5)の係合状態が意図せずに解除されることがない。すなわち、凸部となる係止部材(1)がどんな方向に引っ張られても凹部となる鰐口クリップ(5)から意図せず抜ける事がない。
【0030】
また、装身具の止め具(F)の顎部材の一方の顎部材(7)には、係止部材(1)を円筒ホルダー(13)の内部空間(16)に確実に誘導するためのガイド面(G)が形成される。この構成により、首の後ろ側など人の目視に頼ることが難しい場面においても、ガイド面(G)が凸部である係止部材(1)を確実に凹部である鰐口クリップ(5)の内部に保持された円筒ホルダー(13)の内部空間(16)にガイドし、その結果、極めてスムーズに係合できる。更に係合離脱時においても、同様に係止部材(1)の吸着部材 (2)の直径の長さ分だけ開口すれば、いかなる方向へ引っ張られても、止め部(13)に接触することなくスムーズに係合離脱できる。
【0031】
さらに、鰐口クリップ(5)は、閉口する状態へ移行するように付勢するバネ材(15)を設けているが、強力なバネ材(15)を備えなくても係止できる。このため、鰐口クリップ(5)の後部を閉じる方向に軽い力で動作を行う事で挿入口(10)は開口でき、非常に操作性が良く、また小型化を図ることができる。すなわち、鰐口クリップ(5)内に備えられるバネ材の力を弱くした状態で、凸部の係止部材(1)をどんな方向に引いても意図せず抜けなくなり、更に、鰐口クリップ(5)の後方を軽い力で閉じる動作をしても、容易に係合離脱出来るようになる。ここで鰐口クリップ(5)とは、係止部材(1)の噛合い部分を挟着する為の一対の顎部材(6と7)を備えていて、一対の顎部材(6と7)は支軸によって回転可能に拘束され、これらの顎部材(6と7)間に設けたバネ手段により顎部材(6と7)の先端部(係止部材(2)に対する挟着部)同士が開いた状態から閉じた状態へ移行するように付勢されている。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、係止部材(1)の前方に設けられる吸着部材(2)は、係止部材(1)の最先端部分でなくても良くて、吸着部材(14)の磁力の影響を受ける先端付近に設けてあれば良い。つまり、係止部材(2)は、ホルダー(13)の内部空間(16)に一部又は全部を挿入できる形状であって、確実に係止できる形状であれば良い。また、ホルダー(13)の形状も同様に円筒に限定されるものではなく、係止部材(2)の一部又は全部を挿入できる形状であれば良い。
【符号の説明】
【0033】
1 凸部(係止部材)
2 磁石(吸着部材)
3 ネック部
4 鎖状の先端
5 凹部(鰐口クリップ)
6,7 顎部材
7a 切欠き面
8 鎖状と接する接続部
9 軸
10 挿入口(開口部)
11 鎖状の先端
12 止め部
13 ホルダー(円筒ホルダー)
14 吸着部材(磁石)
15 バネ材
16 ホルダーの内部空間(凸部の磁石又は吸着部材を収納する空間)
17 ホルダーの一部又はガイド部又は基盤
F 装身具の止め具
G ガイド面
【要約】
装身具の止め具(F)は、凸部(1)及び凹部(5)を備える。凹部(5)は、一対の顎部材(6と7)を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップ(5)である。凸部(1)は、一対の開口状態の顎部材間(6と7の間)に嵌入して係止される係止部材(1)である。鰐口クリップ(5)を構成する一対の顎部材間(6と7の間)の内部に一方の吸着部材(14)を設け、かつ、係止部材(1)の前方に他方の吸着部材(2)を設けている。吸着部材(14)は、一対の顎部材のいずれか一方(ここでは顎部材7)に設置されていて、かつ、鰐口クリップ(5)の内部に設けた吸着部材(14)の前方には、係止部材(1)の吸着部材(2)が挿入できるホルダー(13)を備える。これにより、凸部となる係止部材がどんな方向に引っ張られても凹部となる鰐口クリップから意図せず抜ける事がなく、操作性がよく、且つ係合時には係止部材を鰐口クリップに確実に嵌挿できる装身具の止め具を提供する。
【選択図】
図1