特許第6876384号(P6876384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876384
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】柱梁の接合部構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20210517BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   E04B1/21 B
   E04B1/58 508A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-117388(P2016-117388)
(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公開番号】特開2017-222995(P2017-222995A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕次
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−163082(JP,A)
【文献】 特開2010−185231(JP,A)
【文献】 実開昭63−023402(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/037775(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/21
E04B 1/22
E04B 1/38−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製柱の柱主筋と鉄筋コンクリート製梁の梁主筋とが配筋された接合部と、
前記接合部に設けられ、前記接合部を立面視したとき前記接合部の隅部を対角上に結んだ対角線と交差し、両端部が前記接合部の外側に定着された定着筋と、
を有し、
前記定着筋は、前記梁主筋又は前記柱主筋と平行に配置され、前記接合部を立面視して、前記接合部の中央部及び前記中央部以外の複数箇所に配筋された補強鉄筋であり、長さが前記梁主筋又は前記柱主筋の必要定着長さの2倍以上である、柱梁の接合部構造。
【請求項2】
前記定着筋は、前記接合部内にX字状に交差して配置された前記柱主筋又は前記梁主筋をさらに含む、請求項1に記載の柱梁の接合部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁の接合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された柱梁仕口部構造では、柱梁仕口部(柱梁接合部)に打設されるコンクリートに繊維補強材を混入してコンクリートの強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−8551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コンクリートの強度を向上させても、柱と梁の曲げ耐力比が小さい場合、梁の曲げ降伏が早期に発生し、その後接合部内まで主筋降伏が進展し、接合部を立面視したとき接合部の隅部を対角上に結んだ対角線に沿って斜めひび割れが発生し、接合部が破壊されることがある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、柱梁の接合部の斜めひび割れの進行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の柱梁の接合部構造は、鉄筋コンクリート製柱の柱主筋と鉄筋コンクリート製梁の梁主筋とが配筋された接合部と、前記接合部に設けられ、前記接合部を立面視したとき前記接合部の隅部を対角上に結んだ対角線と交差し、両端部が前記接合部の外側に定着された定着筋と、を有し、前記定着筋は、前記梁主筋又は前記柱主筋と平行に配置され、前記接合部を立面視して、前記接合部の中央部及び前記中央部以外の複数箇所に配筋された補強鉄筋であり、長さが前記梁主筋又は前記柱主筋の必要定着長さの2倍以上である。
【0007】
請求項1に記載の柱梁の接合部構造では、接合部の対角線と交差する定着筋を配置することで、接合部破壊時に接合部の対角線に沿って生じる斜めひび割れを低減することができる。また、定着筋の両端部が接合部の外側に定着されているため、定着筋の中央部が降伏するまで、接合部の斜めひび割れの進行を抑制することができる。
【0008】
なお、接合部の対角線とは、接合部を立面視したときに、柱の一方の側面と梁の上面とが交差する隅部と柱の他方の側面と梁の下面とが交差する隅部とを結んだ直線のことを指す。
【0009】
一態様に記載の柱梁の接合部構造は、前記定着筋は、梁主筋又は柱主筋と平行に配置された補強鉄筋である。
【0010】
一態様の柱梁の接合部構造では、梁主筋又は柱主筋を補強する補強鉄筋を配置することで、梁主筋又は柱主筋の降伏強度や鉄筋径を大きくすることなく、接合部の対角線に沿って生じる斜めひび割れを抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の柱梁の接合部構造は、前記定着筋は、前記接合部内にX字状に交差して配置された前記柱主筋又は前記梁主筋とされている。
【0012】
請求項2に記載の柱梁の接合部構造では、柱主筋又は梁主筋が接合部内にX字状に交差して配置されている。このため、接合部の対角線に沿って生じる斜めひび割れと柱主筋又は梁主筋が交差し、斜めひび割れを効率よく抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、柱梁の接合部の斜めひび割れの進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る柱梁の接合部構造が適用された柱梁の接合部を示す断面図であり、(B)は梁主筋の端部が接合部内に配置された参考例における梁主筋の定着長さを示す断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る柱梁の接合部構造が適用された柱梁の接合部を示す断面図である。
図3】(A)は本発明の第3実施形態に係る柱梁の接合部構造が適用された柱梁の接合部を示す断面図であり、(B)は梁主筋の端部が接合部内に配置された参考例における梁主筋の定着長さを示す断面図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る柱梁の接合部構造が適用された柱梁の接合部を示す断面図である。
図5】(A)は本発明の第5実施形態に係る柱梁の接合部構造が適用された柱梁の接合部を示す断面図であり、(B)は梁主筋が接合部内にX字状に交差して配置された変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
(構成)
図1(A)に示すように、第1実施形態に係る柱梁の接合部構造は、鉄筋コンクリート製の柱20と鉄筋コンクリート製の梁30との接合部(仕口部)10に適用される。接合部10、柱20及び梁30を形成するコンクリートはそれぞれ現場打ちコンクリートとされ、接合部10には柱主筋22及び梁主筋32が配筋されている。
【0016】
具体的には、柱20の柱主筋22が接合部10を上下方向(略鉛直方向)に貫通し、梁30の梁主筋32が接合部10を左右方向(略水平方向)に貫通している。
【0017】
なお、接合部10とは柱20における梁30の上端面から下端面までの部分のことであり、以下の説明において柱20における接合部10以外の部分は柱部20Aと称する。
【0018】
梁30のせいH1は柱20の幅W1以上とされ(H1≧W1)、梁30と柱20との接合部10には梁主筋32と平行に複数の補強鉄筋40が埋設されている。この補強鉄筋40の両端部には機械式定着具50が接合されている。また、補強鉄筋40の両端部は接合部10から突出しており、機械式定着具50は梁30に埋設されている。このため、補強鉄筋40は、接合部10の隅部CEを結んだ対角線Kと交差して設けられている。
【0019】
機械式定着具50は、円筒状の本体部50Aの軸方向端部からフランジ50Bが径方向に張出した形状とされており、ねじ節鉄筋又は異形鉄筋とされた補強鉄筋40に固定されている。機械式定着具50と補強鉄筋40とは、補強鉄筋40と本体部50Aとの隙間に注入されたグラウト材により固定されている。なお、機械式定着具50のフランジ50Bの本体部50A側の端面を支圧面50Cとする。
【0020】
図1(B)の参考例に示すように、仮に梁主筋320の端部を接合部10に配置し、この梁主筋320の端部に機械式定着具50を固定した場合の必要定着長さ(境界面10VEから支圧面50Cまでの水平投影長さ)をLnとすると、図1(A)に示すように、柱20の中心線CLから補強鉄筋40に固定された機械式定着具50の支圧面50Cまでの水平投影長さL1はLn以上とされ(L1≧Ln)、補強鉄筋40に固定された機械式定着具50の支圧面50C間の水平投影長さ、すなわち補強鉄筋40の定着長さL2(=2・L1)はLnの2倍以上(L2≧2・Ln)とされている。
【0021】
柱主筋22にはフープ筋(せん断補強筋)24が所定のピッチで巻き付けられており、図示しない結束線で互いに固定されている。フープ筋24は接合部10の内部にも配設されており、接合部10の外部(柱部20A)と同ピッチとされている。なお、接合部10の内部と外部におけるフープ筋24のピッチは変更してもよい。
【0022】
同様に、梁主筋32にはあばら筋(せん断補強筋)34が所定のピッチで巻き掛けられており、図示しない結束線で互いに固定されている。
【0023】
(作用・効果)
第1実施形態に係る柱梁の接合部構造によると、図1(A)に示すように、接合部10には、接合部10から突出した両端部に機械式定着具50が固定された補強鉄筋40が埋設されている。また、補強鉄筋40は接合部10の隅部CEを結んだ対角線Kと交差して設けられている。このため、梁30に曲げモーメントMが加わった際に、接合部10の対角線Kに沿って発生する斜めひび割れCRにより、補強鉄筋40に引張力が作用する。これにより、接合部10における斜めひび割れCRの進行が抑制される。
【0024】
また、補強鉄筋40の定着長さL2は、梁主筋32の必要定着長さLnの2倍以上とされている。このため、補強鉄筋40とコンクリートCの当接面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋40は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0025】
なお、本実施形態においては補強鉄筋40の両端部が接合部10から突出しており、機械式定着具50は梁30に埋設されているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば接合部10の寸法が大きい場合において、接合部10内で必要定着長さLnの2倍以上の定着長さを確保できる場合は、補強鉄筋40の両端部を接合部10から突出させず、機械式定着具50を接合部10に埋設してもよい。
【0026】
この場合、補強鉄筋40の両端部は、補強鉄筋40が接合部10の対角線Kと交わるように、接合部10と梁30との境界面10VE寄りに配置されていればよい。補強鉄筋40の両端部をこのように形成しても、補強鉄筋40とコンクリートCの境界面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋40は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0027】
このように、本発明における「接合部の外側」とは、接合部10の外部のほか、接合部10の内部において梁30との境界面10VE寄りの部分も含むものとする。
【0028】
また、本実施形態においては梁30のせいH1が柱20の幅W1「以上」とされた梁30と柱20との接合部10に、梁主筋32と平行な補強鉄筋40が埋設されているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、梁30のせいH1が柱20の幅W1「以下」とされた梁30と柱20との接合部10に、梁主筋32と平行な補強鉄筋40を埋設してもよい。
【0029】
[第2実施形態]
(構成)
第1実施形態に係る柱梁の接合部構造においては梁30のせいH1は柱20の幅W1以上とされ(H1≧W1)、接合部10には梁主筋32と平行に補強鉄筋40が埋設されているものとしたが、第2実施形態に係る柱梁の接合部構造においては、図2に示すように、梁30のせいH2が柱20の幅W2以下(H2≦W2)とされ、接合部10には柱主筋22と平行な補強鉄筋42が埋設されている。
【0030】
この補強鉄筋42の両端部には機械式定着具50が接合されている。また、補強鉄筋40の両端部は接合部10から突出しており、機械式定着具50は柱部20Aに埋設されている。このため、補強鉄筋42は、接合部10の隅部CEを結んだ対角線Kと交差して設けられている。
【0031】
また、仮に柱主筋22の端部を接合部10に形成し、この梁主筋32の端部に機械式定着具50を固定した場合の必要定着長さをLmとすると、図2に示すように、梁30の中心線CLから補強鉄筋42に固定された機械式定着具50の支圧面50Cまでの鉛直投影長さL3はLm以上とされ(L3≧Lm)、補強鉄筋42に固定された機械式定着具50の支圧面50C間の鉛直投影長さ、すなわち補強鉄筋42の定着長さL4(=2・L3)はLmの2倍以上(L4≧2・Lm)とされている。
【0032】
(作用・効果)
このような構成によっても、柱20に曲げモーメントMが加わった際に、接合部10の隅部CEを結んだ対角線Kに沿って発生する斜めひび割れCRにより、補強鉄筋40に引張力が作用するため、接合部10における斜めひび割れCRの進行が抑制される。
【0033】
また、補強鉄筋42の定着長さL4が必要定着長さLmの2倍以上とされているため、補強鉄筋42とコンクリートCの境界面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋42は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0034】
なお、接合部10に柱主筋22と平行な補強鉄筋42を埋設した場合は、柱20の片側のみに梁30を設けることができる。この場合、梁主筋32は接合部10を貫通せず、端部に機械式定着具やフックを設けて適宜固定すればよい。
【0035】
また、補強鉄筋42は、接合部10内で必要定着長さLmの2倍以上の定着長さを確保できる場合は、補強鉄筋42が接合部10の対角線Kと交わるように、補強鉄筋42の両端部が接合部10と柱部20Aとの境界面10HE寄りに配置してもよい。補強鉄筋42をこのように形成しても、補強鉄筋42とコンクリートCの当接面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋42は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0036】
このように、本発明における「接合部の外側」とは、接合部10の外部のほか、接合部10の内部において柱部20Aとの境界面10HE寄りの部分も含むものとする。
【0037】
また、本実施形態においては梁30のせいH2が柱20の幅W2「以下」とされた梁30と柱20との接合部10に、柱主筋22と平行な補強鉄筋42が埋設されているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、梁30のせいH2が柱20の幅W2「以上」とされた梁30と柱20との接合部10に、柱主筋22と平行な補強鉄筋42を埋設してもよい。
【0038】
また、第1、第2実施形態において、補強鉄筋40及び補強鉄筋42は複数設けられているが、これらの本数は特に限定されるものではなく、求められる補強強度に応じて適宜設定可能であり、例えば1本でもよい。
【0039】
[第3実施形態]
(構成)
第3実施形態に係る柱梁の接合部構造では図3(A)に示すように、第1実施形態に係る柱梁の接合部構造における補強鉄筋40(図1(A)参照)に代えて、補強鉄筋60が用いられている。
【0040】
この補強鉄筋60の両端部にはフック部60Aが設けられており、フック部60Aは接合部10から突出して、梁30に埋設されている。このため、補強鉄筋60は、接合部10の隅部を結んだ対角線Kと交差して設けられている。
【0041】
図3(B)の参考例に示すように、仮に梁主筋322の端部を接合部10に配置し、この梁主筋322の端部にフック部322Fを設けた場合の必要定着長さ(境界面10VEからフック部32Fの端部までの水平投影長さ)をLaとすると、図3(A)に示すように、柱20の中心線CLから補強鉄筋60のフック部60Aの端部までの水平投影長さL5はLa以上とされ(L5≧La)、補強鉄筋60のフック部60Aの端部間の水平投影長さ、すなわち補強鉄筋60の定着長さL6(=2・L5)はLaの2倍以上(L6≧2・La)とされている。
【0042】
その他の構成は図1(A)に示した第1実施形態に係る柱梁の接合部構造と等しく、説明は省略する。
【0043】
(作用・効果)
第3実施形態に係る柱梁の接合部構造によると、図3(A)に示すように、接合部10には、両端にフック部60Aが形成された補強鉄筋60が埋設されている。また、補強鉄筋60は接合部10の隅部CEを結んだ対角線Kと交差して設けられている。このため、梁30に曲げモーメントMが加わった際に、接合部10の対角線Kに沿って発生する斜めひび割れCRにより、補強鉄筋60に引張力が作用する。これにより、接合部10における斜めひび割れCRの進行が抑制される。
【0044】
また、補強鉄筋60の定着長さL6は、必要定着長さLaの2倍以上とされている。このため、補強鉄筋60とコンクリートCの当接面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋60は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0045】
[第4実施形態]
(構成)
第3実施形態に係る柱梁の接合部構造では、接合部10に梁主筋32と平行に補強鉄筋60が埋設されているものとしたが、第4実施形態に係る柱梁の接合部構造では、図4に示すように、接合部10には柱主筋22と平行に補強鉄筋62が埋設されている。
【0046】
この補強鉄筋62の両端部にはフック部62Aが形成されている。フック部62Aは接合部10から突出して、柱部20Aに埋設されている。このため、補強鉄筋62は、接合部10の隅部CEを結んだ対角線Kと交差して設けられている。
【0047】
また、仮に柱主筋22の端部を接合部10に配置し、柱主筋22の端部に機械式定着具50を固定した場合の必要定着長さをLbとすると、図4に示すように、梁30の中心線CLから補強鉄筋62のフック部62Aの端部までの鉛直投影長さL7はLb以上とされ(L7≧Lb)、補強鉄筋62のフック部62A間の鉛直投影長さ、すなわち補強鉄筋62の定着長さL8(=2・L7)はLbの2倍以上(L8≧2・Lb)とされている。
【0048】
(効果)
このような構成によっても、柱20に曲げモーメントMが加わった際に、接合部10の対角線Kに沿って発生する斜めひび割れCRにより、補強鉄筋62に引張力が作用する。これにより、斜めひび割れCRの進行が抑制される。
【0049】
また、補強鉄筋62の定着長さL8が必要定着長さLbの2倍以上とされているため、補強鉄筋62とコンクリートCの境界面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋62は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0050】
なお、第3、第4実施形態において補強鉄筋60、62のフック部60A、62Aはそれぞれ梁30、柱部20Aに埋設されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。補強鉄筋60、62がそれぞれ接合部10内で必要定着長さLa、Lbの2倍以上の定着長さを確保できる場合は、フック部60A、62Aは、接合部10内の境界面10VE、10HE寄りに埋設してもよい。フック部60A、62Aをこのように形成しても、補強鉄筋60、62とコンクリートCの当接面に十分な付着応力度が発生し、補強鉄筋42は降伏強度に達するまで耐力を発揮することができる。
【0051】
[第5実施形態]
(構成)
第1〜第4実施形態に係る柱梁の接合部構造では、柱主筋22及び梁主筋32は接合部10の内部において直線状に配置されているが、第5実施形態に係る柱梁の接合部構造では、図5(A)に示すように、柱20の一方の側面寄りの柱主筋22Aと他方の側面寄りの柱主筋22Bとが、接合部10の内部においてX字状に交差している。また、補強鉄筋60が梁主筋32と平行に設けられている。
【0052】
(効果)
このような構成にすることで、例えば梁30に曲げモーメントMが加わり、梁主筋32に引張力Nが作用した際に、接合部10の隅部CEの対角線Kに沿って発生しようとする斜めひび割れCRの方向に対して、柱主筋22Bが交差する。このため、斜めひび割れCRの発生を抑制することができる。
【0053】
あるいは、図5(B)に示すように、補強鉄筋62が柱主筋22と平行に設けられている場合は、梁30の上面寄りの梁主筋32Aと下面寄りの梁主筋32Bとを接合部10の内部においてX字状に交差させてもよい。
【0054】
このような構成にすることで、例えば柱主筋22に引張力Nが作用した際に、接合部10の隅部CEの対角線Kに沿って発生しようとする斜めひび割れCRの方向に対して、梁主筋32Aが交差する。このため、斜めひび割れCRの発生を抑制することができる。
【0055】
なお、このように柱主筋22A、22B又は梁主筋32A、32BをX字状に交差させる構成は、第1〜第4実施形態に係る柱梁の接合部構造に適用してもよい。
【0056】
さらに、柱主筋22A、22B又は梁主筋32A、32BをX字状に交差させることにより斜めひび割れCRの発生を抑制することができるので、第1、第2実施形態における補強鉄筋40、42及び第3、第4、第5実施形態における補強鉄筋60、62を設けない構成とすることもできる。補強鉄筋40、42、60、62を設けない場合の柱主筋22A、22B又は梁主筋32A、32Bは、本発明における定着筋の一例であり、柱主筋22A、22B又は梁主筋32A、32Bの端部は、それぞれ柱部20A又は梁30の内部に定着される。このように、本発明における第1〜第5実施形態に示した構成は、適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 接合部
20 柱(鉄筋コンクリート製柱)
22 柱主筋
22A、22B 柱主筋(定着筋)
20 梁(鉄筋コンクリート製梁)
32 梁主筋
32A、32B 梁主筋(定着筋)
40、42 補強鉄筋
60、62 補強鉄筋
CE 隅部
K 対角線
図1
図2
図3
図4
図5