(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
低位面部と高位面部とを有する頂面部の幅方向で且つ前記低位面部側外方に第1垂下状側部が形成され、前記高位面部側外方に第2垂下状側部が形成され、前記頂面部,前記第1垂下状側部,前記第2垂下状側部は、金属板から一体形成された本体と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第1垂下状側部に締付具を介して連結される第1係止部材と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第2垂下状側部に、前記第1垂下状側部と前記第1係止部材とを連結する前記締付具とは別体としたそれぞれの締付具を介して連結される第2係止部材とを備え、前記本体,前記第1係止部材及び前記第2係止部材をそれぞれ独立した3部材とし、前記本体と前記第1係止部材と前記第2係止部材によって固定される折板屋根の馳締部の上端と前記低位面部とは近接し、前記第1係止部材は前記本体に対して前記締付具にて左右方向に移動自在且つ固定自在とし、前記第2係止部材は別体とした前記締付具にて前記本体と共に不動とし、前記第1係止部材の前記係止部の先端と、前記第2係止部材の前記係止部の先端とで、前記馳締部の首部を挟持固定可能としてなることを特徴とする建築用支持具。
請求項1において、何れか一方を移動自在とした前記第1係止部材又は前記第2係止部材に対応する前記第1垂下状側部又は前記第2垂下状側部には補強折返し部が形成されてなることを特徴とする建築用支持具。
請求項1又は2において、何れか一方を不動とした前記第1係止部材の又は前記第2係止部材の連結側部は、対応する前記第1垂下状側部又は前記第2垂下状側部の内方側に位置して配置されてなることを特徴とする建築用支持具。
幅方向一方側に下馳部を,他方側に上馳部を有する折板屋根板材が複数並設され、隣接する両該折板屋根板材同士の前記下馳部と前記上馳部とが馳締連結されてなる下層屋根と、該下層屋根と同等の構成を有する上層屋根とからなる二層屋根と、低位面部と高位面部とを有する頂面部の幅方向で且つ前記低位面部側外方に第1垂下状側部が形成され、前記高位面部側外方に第2垂下状側部が形成され、前記頂面部,前記第1垂下状側部,前記第2垂下状側部は、金属板から一体形成された本体と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第1垂下状側部に締付具を介して連結される第1係止部材と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第2垂下状側部に、前記第1垂下状側部と前記第1係止部材とを連結する前記締付具とは別体としたそれぞれの締付具を介して連結される第2係止部材とを備え、前記本体,前記第1係止部材及び前記第2係止部材をそれぞれ独立した3部材とし、前記本体と前記第1係止部材と前記第2係止部材によって固定される折板屋根の馳締部の上端と前記低位面部とは近接し、前記第1係止部材は前記本体に対して前記締付具にて左右方向に移動自在且つ固定自在とし、前記第2係止部材は別体とした前記締付具にて前記本体と共に不動とし、前記第1係止部材の前記係止部の先端と、前記第2係止部材の前記係止部の先端とで、前記馳締部の首部を挟持固定可能としてなる建築用支持具とを備え、前記下層屋根の馳締部は前記建築用支持具の前記第1係止部材と前記第2係止部材とで挟持固定され、前記建築用支持具上部側にて前記上層屋根が支持されてなることを特徴とする二層屋根。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、二層タイプの屋根では、その建築物が施工される地域の環境において寒暖差が激しい場所では、上下の屋根の間に繊維状の断熱材が充填されることがある。しかし、上記のような気候の厳しい地域以外の寒暖差の小さい温暖な地域では、二層屋根における上層屋根と下層屋根との間には断熱材が不要となり、それゆえに下層屋根と上層屋根との上下方向(高さ方向)における間隔も小さくなる。つまり、断熱材等を備えていない簡単な構造とした廉価版の二層屋根が存在する。
【0006】
このような廉価版の簡易な構成の二層屋根では、構成する下層屋根と上層屋根との上下方向(高さ方向)の間隔も小さいものであり、これに応じて支持具のサイズも小さくしたものが必要となる。また、断熱材等の内装材を不要とした二層屋根は、それ自体の構造が極めて簡単になり、いわゆる廉価版の二層屋根として提供されるため、これらに対応する支持具とも簡易な構造とし、且つ低価格に提供できるものとしなければならない。
【0007】
上記要件を備えたものに比較的近い内容のものとして特許文献1が存在する。しかし、この特許文献1における支持具(折板用取付金具)では、第1部材と第2部材とは、スライド案内部によって、相互にスライド自在としている。このとき円滑にスライド自在とするためには、前記スライド案内部の成形精度は比較的高いものとなる。
【0008】
したがって、特許文献1における支持具は、簡易な構造とはいえず、製造コストも高くなる。さらに、構造が複雑となれば、その外形も大きくなり易く、よって特許文献1にて開示されている支持具(折板用取付金具)は、廉価版の二層屋根には、必ずしも好適なものとはいえない。さらに、特許文献1においては、上下方向における必要な耐荷重が不足するおそれもあり、このような種々の未解決の課題が存在する。そこで、本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、極めて簡単な構成にて、二層タイプの屋根における建築用支持具及びその支持具を備えた二層屋根を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、低位面部と高位面部とを有する頂面部の幅方向で且つ前記低位面部側外方に第1垂下状側部が形成され、前記高位面部側外方に第2垂下状側部が形成され、前記頂面部,前記第1垂下状側部,前記第2垂下状側部は、金属板から一体形成された本体と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第1垂下状側部に締付具を介して連結される第1係止部材と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第2垂下状側部に
、前記第1垂下状側部と前記第1係止部材とを連結する前記締付具とは別体としたそれぞれの締付具を介して連結される第2係止部材とを備え、前記本体,前記第1係止部材及び前記第2係止部材をそれぞれ独立した3部材とし、前記本体と前記第1係止部材と前記第2係止部材によって固定される折板屋根の馳締部の上端と前記低位面部とは近接し、前記第1係止部材は前記本体に対して前記締付具にて左右方向に移動自在且つ固定自在とし、
前記第2係止部材は別体とした前記締付具にて前記本体と共に不動とし、前記第1係止部材の前記係止部の先端と、前記第2係止部材の前記係止部の先端とで、前記馳締部の首部を挟持固定可能としてなる建築用支持具としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項2の発明を、請求項1において、何れか一方を移動自在とした前記第1係止部材又は前記第2係止部材に対応する前記第1垂下状側部又は前記第2垂下状側部には補強折返し部が形成されてなる建築用支持具としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、何れか一方を不動とした前記第1係止部材の又は前記第2係止部材の連結側部は、対応する前記第1垂下状側部又は前記第2垂下状側部の内方側に位置して配置されてなる建築用支持具としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項に記載の建築用支持具において、前記第1係止部材及び前記第2係止部材のそれぞれの前記連結
側部には直角となる補強立上り片が前後方向両端に形成されてなる建築用支持具としたことにより上記課題を解決した。
【0011】
請求項5の発明を、幅方向一方側に下馳部を,他方側に上馳部を有する折板屋根板材が複数並設され、隣接する両該折板屋根板材同士の前記下馳部と前記上馳部とが馳締連結されてなる下層屋根と、該下層屋根と同等の構成を有する上層屋根とからなる二層屋根と、低位面部と高位面部とを有する頂面部の幅方向で且つ前記低位面部側外方に第1垂下状側部が形成され、前記高位面部側外方に第2垂下状側部が形成され、前記頂面部,前記第1垂下状側部,前記第2垂下状側部は、金属板から一体形成された本体と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第1垂下状側部に締付具を介して連結される第1係止部材と、連結側部と係止部とを有すると共に前記本体の前記第2垂下状側部に
、前記第1垂下状側部と前記第1係止部材とを連結する前記締付具とは別体としたそれぞれの締付具を介して連結される第2係止部材とを備え、前記本体,前記第1係止部材及び前記第2係止部材をそれぞれ独立した3部材とし、前記本体と前記第1係止部材と前記第2係止部材によって固定される折板屋根の馳締部の上端と前記低位面部とは近接し、前記第1係止部材は前記本体に対して前記締付具にて左右方向に移動自在且つ固定自在とし、
前記第2係止部材は別体とした前記締付具にて前記本体と共に不動とし、前記第1係止部材の前記係止部の先端と、前記第2係止部材の前記係止部の先端とで、前記馳締部の首部を挟持固定可能としてなる建築用支持具とを備え、前記下層屋根の馳締部は前記建築用支持具の前記第1係止部材と前記第2係止部材とで挟持固定され、前記建築用支持具上部側にて前記上層屋根が支持されてなる二層屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、二層屋根において上層屋根と下層屋根との間に断熱材を使用しないタイプで且つ下層屋根と上層屋根との上下方向(高さ方向)の間隔が小さいものに使用する支持具として極めて好適なものにできる。つまり、本発明における建築用支持具は、本体と前記第1係止部材と前記第2係止部材とは、全て独立した部材である。そして、第1係止部材と第2係止部材との何れか一方が締付具を介して本体の左右方向(本体の幅方向に等しい)に移動自在とし、移動自在とした側の係止部を不動とした側の係止部に対して近接するようにして折板屋根等の馳締部を挟持固着しようとうするものである。
【0013】
上記のように、本体,第2係止部材及び第2係止部材をそれぞれ独立した部材としたので、通常は建築用部品は、金属製であることから、本発明における建築用支持具もプレス加工により形成されることが多い。そのために本体,第1係止部材,第2係止部材は、全て独立した小さい部品として製造することができる。
【0014】
したがって、これらを組み合わせた建築用支持具全体も小型且つ単純な構成にでき、建築用支持具はその上下方向(高さ方向)におけるサイズを最小限にすることができる。これによって、特に高さ方向(上下方向)に小さい二層屋根の下層屋根と上層屋根との間に設置されるに好適な支持具にできる。また、本発明における建築用支持具は、本体,第1係止部材及び第2係止部材は、それぞれが簡単な形状とすることができ、金属板材からプレス加工によって製造でき、大量生産に好適であり、低価格に提供することができる。
【0015】
請求項2の発明では、移動自在とした第1係止部材又は第2係止部材に対してこれを支持する第1垂下状側部又は第2垂下状側部に設けた補強折返し部が設けられているので、第1垂下状側部又は第2垂下状側部の力学的強度をより一層向上させ、これによって建築用支持具全体の剛性を向上することができる。したがって、折板屋根の馳締部に対する取付強度をより一層強固にすることができる。
【0016】
請求項3の発明では、何れか一方を不動とした前記第1係止部材の又は前記第2係止部材に対応する前記第1垂下状側部又は前記第2垂下状側部の内方側に配置される構成としたことにより、不動側に位置する第2係止部材又は第1係止部材は極めて簡単な構成にて力学的強度を向上させることができる。請求項4の発明では、極めて簡単な構成にて力学的強度を向上させることができる。
【0017】
請求項5の発明では、馳締部を有する下層屋根と上層屋根とから構成され、且つ前記下層屋根と前記上層屋根との上下方向(高さ方向)における間隔が特に小さい二層屋根に対して、極めて好適な建築用支持具が使用され、その施工も簡易且つ迅速にできしかも低価格にて施工できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。まず、本発明における建築用支持具Aの説明を行い、次に該建築用支持具Aを備えて施工される二層屋根Bについて説明する。また、本発明では方向を示す文言が使用される。具体的には、上下方向(高さ方向),幅方向(左右方向),前後方向である。これらの方向は、図中の適所に示す。
【0020】
前記本発明における二層屋根Bは、特に廉価版の簡易タイプのものである。建築用支持具Aには、複数の実施形態が存在し、全実施形態において、主な構成は、
図1,
図2に示すように、主に本体1と、第1係止部材2と、第2係止部材3と、締付具4及び締付具5等を備えたものである。
【0021】
第1実施形態の建築用支持具Aは、
図1乃至
図4に示されている。本体1は、
図1乃至
図3等に示すように、頂面部11の幅方向(左右方向)の一端側に第1垂下状側部12が形成され、他端側に第2垂下状側部13が形成されている。前記頂面部11は、略平坦状の低位面部11aと略平坦状の高位面部11bとが存在する(
図3参照)。
【0022】
低位面部11aには、後述する吊子8が配置固着され、また高位面部11bには、後述する上層屋根B2の山形頂部の裏面側が配置され、この部分を支持する役目をなすものである。低位面部11aと高位面部11bとの間は、略垂直状の立上り部11cとなっており、低位面部11aと高位面部11bと立上り部11cとで略階段状の段差構造となっている。
【0023】
前記第1垂下状側部12及び第2垂下状側部13は、共に頂面部11に対して略直角に形成されている。第1垂下状側部12又は第2垂下状側部13の何れか一方には補強折返し部14が形成されている。該補強折返し部14は、第1垂下状側部12又は第2垂下状側部13の何れか一方の下端の位置から、その外方側に向かって折り返し形成されたものである。補強折返し部14が形成される第1垂下状側部12又は第2垂下状側部13の何れか一方側と、補強折返し部14とによって、その断面形状は略U字形状となる〔
図1(C),
図3(B)参照〕。
【0024】
また、前記高位面部11b及び立上り部11cには、補強リブ15が形成されている(
図3参照)。低位面部11aには、螺子軸部16が前記低位面部11aに対して垂直状に装着されている。螺子軸部16は、後述する吊子8を低位面部11aに装着する役目をなしている。
【0025】
螺子軸部16の装着構造としては、例えば、低位面部11aに貫通孔が形成され、該貫通孔に螺子軸部16が圧入手段によって固着されたものである。また、螺子軸部16は低位面部11a上に溶接等にて固着されるものであってもよい。螺子軸部16には、ナットが備わっており、螺子軸部16とナットを使用して吊子8を低位面部11aに固着する。
【0026】
前記頂面部11,第1垂下状側部12,第2垂下状側部13及び補強折返し部14は、金属板から一体形成されている〔
図1(C),
図2(B)参照〕。また、第1実施形態の変形例として、前記低位面部11aには、前記螺子軸部16の代わりに、単に貫通孔11dが形成される構成も存在する〔
図7(A)参照〕。該貫通孔11dは、吊子8を低位面部11aに装着する役目をなすものである。
【0027】
低位面部11aに吊子8を装着する際に、貫通孔11dには、ボルト61・ナット62による固着具6のボルト61が貫通される。また、低位面部11aの下面側で貫通孔11dには、ナット62が溶接等に固着されることもある〔
図7(A)参照〕。また貫通孔11dの内周側には前記ナット62の代わりとして内螺子が形成されることもあり、該内螺子に前記ボルト61が螺合して、吊子8を固定する構成とすることもできる〔
図7(B)参照〕。
【0028】
本体1の第1垂下状側部12側には、第1係止部材2が連結される。また、第2垂下状側部13には、第2係止部材3が連結される〔
図1(C),
図2(A),
図3等参照〕。第1係止部材2は、連結側部21と係止部22とを有する。同様に、第2係止部材3は連結側部31と係止部32とを有する。
【0029】
第1係止部材2の連結側部21と係止部22とは、直角又は直角よりも僅かに小さい鋭角状となっている〔
図1(C)参照〕。係止部22の先端は、係止立上り端縁22aが形成されている。また前記連結側部21と前記係止部22の前後方向両端には補強立上り片23,23が形成されることもある〔
図3(B)参照〕。
【0030】
第2係止部材3も前記第1係止部材2と略同様の構成であり、連結側部31と係止部32とは、直角よりも僅かに小さい鋭角状となっている。係止部32の先端は、係止立上り端縁32aが形成されている。また前記連結側部31と前記係止部32の前後方向両端には補強立上り片33,33が形成されることもある〔
図1(B),(C),
図2等参照〕。
【0031】
第1係止部材2と第2係止部材3の何れか一方は、本体1に対して締付具4,締付具5にて左右方向(本体1の幅方向)に移動しつつ締付固定自在とし、他方は前記本体1と共に不動となる構成つまり、本体1に固定される状態としている〔
図1(C)参照〕。以下、第1係止部材2側を本体1の幅方向(左右方向)に対して締付具4にて移動自在とし、第2係止部材3を本体1と共に不動つまり固定する構造として説明する。
【0032】
本体1の第1垂下状側部12には、本体1の外方側に向かって補強折返し部14が形成されており、第1垂下状側部12と補強折返し部14とで断面略U字形状を形成する〔
図1(C)参照〕。第1垂下状側部12と補強折返し部14には、螺子孔17が形成されている。
【0033】
該螺子孔17は、貫通孔17aに内螺子17bが形成されたものである〔
図3(B)参照〕。また、特に図示しないが、螺子孔17の代わりにナットを使用することも可能である。螺子孔17としてナットが使用される場合には、螺子孔17は、単なる貫通孔でよく、ナットは前記第1垂下状側部12の内面側に溶接等にて固着される。第1垂下状側部12と第1係止部材2とを連結する締付具4は、ボルトである。ボルトとした締付具4の螺子部は、ボルト頭部を本体1の外方側に位置させて、螺子部を前記螺子孔17に螺合させる〔
図1(C),
図3(B)参照〕。
【0034】
第1係止部材2は、本体1に対して左右方向(本体1の幅方向)に前記締付具4を介して移動自在とする構成である〔
図1(C)参照〕。そして、第1係止部材2の連結側部21は、本体1の第1垂下状側部12の外面側に位置するようにして前記締付具4にて連結される。
【0035】
ここで、第1係止部材2が本体1の幅方向(左右方向)に対して移動自在となる構成とは、本発明における建築用支持具Aを、下層屋根B1の馳締部Jに装着するときに、第1係止部材2を本体1の幅方向(左右方向)に移動させ、本体1を基準にして第1係止部材2と第2係止部材3との内端同士の間隔を拡げたり又は狭めたりすると共に、所望の位置、つまり馳締部Jを第1係止部材2と第2係止部材3とで挟持した位置で第1係止部材2を固定できることをいう。
【0036】
まず、第1係止部材2の連結側部21には貫通孔21aが形成されており、該貫通孔21aにボルトとした前記締付具4の螺子部が貫通し、前記本体1の螺子孔17に螺合する。そして、ボルトとした締付具4を緩めて、ボルト頭部を第1垂下状側部12から離間させた状態のときに、第1係止部材2の連結側部21は、ボルトとした締付具4の螺子軸の軸方向に沿って移動自在となる構成としている。
【0037】
第1係止部材2の本体1に対する移動によって、第1係止部材2の内端と、第2係止部材3の内端との間隔が大きくなったり、又は小さくするものである。また、前記第1係止部材2の内端とは、係止立上り端縁22aのことであり、第2係止部材3の内端とは、係止立上り端縁32aのことである。
【0038】
つまり、本体1に対して第1係止部材2と第2係止部材3との間隔が大きくなるとは両前記係止立上り端縁22aと係止立上り端縁32aとの間隔が大きくなることであり、また本体1に対して第1係止部材2と第2係止部材3との間隔が小さくなるとは両前記係止立上り端縁22aと係止立上り端縁32aとの間隔が小さくなることである。
【0039】
また、第2係止部材3は、本体1の第2垂下状側部13に締付具5によって不動に固定される〔
図1(C)参照〕。ここで、締付具5はボルト51とナット52から構成されるものである。第2係止部材3の連結側部31は、本体1の内方側で且つ第2垂下状側部13の内面側に接合され、締付具5のボルト51とナット52とによって本体1に固着される〔
図1(C)参照〕。
【0040】
また、第2係止部材3が第2垂下状側部13に締付具5によって不動に固着された状態では、第2係止部材3の両補強立上り片33,33が、本体1の第2垂下状側部13の前後方向両側を挟持する構成となる(
図2参照)。つまり、本体1に対して不動に固定される第2係止部材3は、本体1の第2垂下状側部13の内方に位置して固定されるものであり、下層屋根B1の馳締部Jに装着したときには、第2係止部材3は、締付具5と共に第2垂下状側部13からも補強されることとなる。これによって、第2係止部材3は、本体1の第2垂下状側部13に対して締付具5と共に、正確且つ振れの無い、より一層強固な連結状態にすることができる。
【0041】
このように、第2係止部材3の連結側部31を、本体1の内側で且つ第2垂下状側部13の内面側に接合することで、第1係止部材2と第2係止部材3によって、後述する二層屋根Bにおける下層屋根B1の馳締部Jを締め付けたときに、第2垂下状側部13と第2係止部材3が相互に押圧する状態となり、建築用支持具の強度を相乗的に向上させることができる〔
図1(B),(C)参照〕。以上、本発明における建築用支持具Aは、本体1に対して第1係止部材2側を移動且つ締付自在とし、第2係止部材3を本体1と共に不動となるように固着したものである。
【0042】
次に、第2実施形態における建築用支持具Aについて説明する。この第2実施形態では、本体1に対して第1係止部材2を不動とし、第2係止部材3を移動且つ締付自在としたものである〔
図6(A)参照〕。まず、第1係止部材2が本体1の第1垂下状側部12に、締付具4のボルト41及びナット42にて固着される。そして、本体1の第2垂下状側部13側に補強折返し部14が形成され、第2垂下状側部13と補強折返し部14には螺子孔17が形成される。第2係止部材3の連結側部31の貫通孔31aに締付具5のボルト51が挿通し、且つは該ボルト51が螺子孔17に螺合される。
【0043】
ボルト51の締付により、第2係止部材3の内端は、本体1の内方側に向かって移動し、本体1に固定された第1係止部材2の内端に近接し、下層屋根B1の馳締部Jを第2係止部材3と第1係止部材2の内端同士、つまり係止立上り端縁32aと係止立上り端縁22aとで挟持固着するものである。
図6(B),(C)は、第2実施形態の建築用支持具Aを下層屋根B1の馳締部Jに装着する工程を示す。
【0044】
図7(B)は、第2実施形態の変形例であって、第1実施形態の変形例と略同様の構成であり、前記低位面部11aに貫通孔11dが形成され、低位面部11aに吊子8を装着する際に、貫通孔11dには、ボルト・ナットによる固着具6のボルト61が貫通され、ナット62と共に吊子8を固定するものである。
【0045】
次に、本発明における建築用支持具Aによって施工される二層屋根Bについて説明する。二層屋根Bは、下層屋根B1と上層屋根B2とから構成される〔
図1(A),(B),
図5等参照〕。下層屋根B1は、複数の折板屋根板材71,71,…から構成される。該折板屋根板材71は、主板71aの幅方向両側より立上り側部71b,71bが形成されている。該立上り側部71b,71bの上端には略平坦状とした上片部71c,71c形成されている。該上片部71cは外方上向きに僅かな角度にて傾斜している。
【0046】
そして、両上片部71c,71cには、連結部71d,71eがそれぞれ設けられている。該連結部71d,71eは、種々のタイプが存在するが、具体的には、71d,71eとして馳締タイプの下馳部と上馳部が存在する。以下、連結部71d,71eは、馳締タイプの下馳部71d及び上馳部71eとして説明する。下馳部71d及び上馳部71eは、円弧状をなしている(
図1参照)。また、特に図示しないが,下馳部71d及び上馳部71eが共に略三角形状に折曲形成されたタイプも存在する。また、前記下馳部71dと上馳部71eには、略垂直状に形成された部位を有している。
【0047】
この垂直状部位は、下馳部71d及び上馳部71eの下部と前記上片部71cとの間に位置しており、首部71fと称する。そして、前記下馳部71d及び上馳部71eとが馳締めされて馳締部Jが構成される。該馳締部Jでは、前記下馳側の首部71fと、上馳側の首部71fとが略当接状態となる。
【0048】
母屋,胴縁等の構造材100上に複数の受金具200,200,…が所定間隔をおいて配置固着され、該受金具200を介して折板屋根板材71,71,…が複数並設され、隣接する折板屋根板材71,71同士の下馳部71d及び上馳部71eとが共に馳締されて連結され、屋根又は壁等が施工される(
図1参照)。
【0049】
次に、上層屋根B2は、
図1(A),(B)に示すように、前記下層屋根B1と同等の構成であり、同様の折板屋根板材72,72,…が使用される。折板屋根板材72,72,…は下層屋根B1を構成する折板屋根板材71と同等又は略同等の構造を有する。つまり
、主板72aの幅方向両側より立上り側部72b,72bが形成されている。
【0050】
該立上り側部72b,72bの上端には略平坦状とした上片部72c,72cが形成されている。該上片部72cは外方上向きに僅かな角度にて傾斜している。さらに、両上片部72cには連結部として下馳部72d及び上馳部72eを有している。また、両上片部72cと、下馳部72d或いは上馳部72eとの間に首部72f,72fが形成されている。
【0051】
上記のように、下層屋根B1又は上層屋根B2の折板屋根板材71(72),71(72),…における連結部は、馳締タイプの下馳部71d(72d)及び上馳部71e(72e)として説明したが、本発明においては、連結部が馳締タイプに限定されるものではなく、例えば、特に、図示しないが、山形部同士を嵌合するタイプ又はキャップ材を使用した嵌合タイプ、或いは山形部同士を重合させる重合タイプ等、本発明における建築用支持具Aに装着可能なものであれば、どのようなタイプの連結部であっても構わない。
【0052】
次に、本発明の建築用支持具Aを二層屋根Bにおける下層屋根B1の馳締部Jに装着する工程について説明する。まず、本発明の建築用支持具Aの本体1の締付具4を緩めて第1係止部材2を本体1の外方側に移動させ、該本体1の第1垂下状側部12から離間させる。そして、第1係止部材2の係止部22と、第2係止部材3の係止部32の先端同士、つまり係止立上り端縁22aと係止立上り端縁32aとを離間させて、間隔を拡げ、両先端の間を馳締部Jが挿通可能となるようにする〔
図4(A)参照〕。
【0053】
第1係止部材2の係止部22と、第2係止部材3の係止部32の先端(係止立上り端縁22aと係止立上り端縁32a)間に馳締部Jを通過させて、本体1内に馳締部Jを配置させる〔
図4(B)参照〕。このとき、馳締部Jの上端と本体1の低位部11aとは上下方向(高さ方向)において近接した状態となる。
【0054】
次いで、締付具4を締め付けて、第1係止部材2を本体1内方側に移動させる。これによって、第1係止部材2の係止部22の先端の係止立上り端縁22aと、第2係止部材3の係止部32の先端の係止立上り端縁32aとで、馳締部Jの首部71fと上馳側の首部71fを挟持固定する。
【0055】
そして、さらに締付具4を締め付けることで、係止立上り端縁22aと係止立上り端縁32aが馳締部Jを構成する首部71f,71fを挟持押圧し、建築用支持具Aが下層屋根B1の馳締部Jに固着される。そして、建築用支持具Aの低位面部11aに吊子8を装着し、該吊子8を介して上層屋根B2を構成する折板屋根板材72,72,…を施工してゆくものである。
【0056】
吊子8は座金部81と舌片部82とから構成される。吊子8の座金部81が建築用支持具Aの低位面部11aに螺子軸部16とナットとによって固着される。そして、吊子8の舌片部82によって上層屋根B2を構成する折板屋根板材72,72の下馳部72dと上
馳部72eとが馳締され、これが順次繰り返されて上層屋根B2が施工される。
【0057】
本発明では、建築用支持具Aを二層屋根Bの施工に使用することで、下層屋根B1の馳
締部Jの上端と、建築用支持具Aの低位面部11aとが上下方向(高さ方向)に近接する構成のため、二層屋根Bにおける下層屋根B1と上層屋根B2との上下方向(高さ方向)の間隔を、従来技術〔
図8(B)参照〕における支持具を使用した場合よりも小さくすることができる。
【0058】
これは、特に二層屋根Bにおいて廉価版タイプであって、下層屋根B1と上層屋根B2との間に断熱材等の内装材を使用しないタイプで、且つ下層屋根B1と上層屋根B2との上下方向(高さ方向)の間隔が小さいものに使用する支持具として極めて好適なものにできる。つまり、本発明における建築用支持具Aは、本体1と第1係止部材2と第2係止部材3によって固定される折板屋根の馳締部Jの上端と前記低位面部11aとが近接するようにした構成である。したがって、建築用支持具Aは、その上下方向(高さ方向)におけるサイズH1を最小限にすることができる〔
図8(A)参照〕。
【0059】
参考として、従来技術における支持具が使用された二層屋根を
図8(B)に示す。この従来技術における支持具aにより、二層屋根bの下層屋根b1と上層屋根b2の上下方向(高さ方向)の間隔はH2である。従来技術における支持具aは、本体a1と移動する係止部a2の二部材とし、該係止部a2がボルトを介して締付自在となる構成としたものである。
【0060】
従来技術における二層屋根bの下層屋根b1と上層屋根b2との上下方向(高さ方向)の間隔H2は、本発明における建築用支持具Aを備えた二層屋根Bにおける下層屋根B1と上層屋根B2との間隔H1よりも大きくなっている。
すなわち、
となる。
つまり、本発明における建築用支持具Aが簡易な構成の二層屋根Bに使用されることで、従来のものよりも上下方向(高さ方向)に極めてコンパクトな屋根を施工することができる(
図8参照)。