特許第6876395号(P6876395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876395
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】位置特定装置及び位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/48 20060101AFI20210517BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   F16L55/48
   G01B7/00 101E
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-177320(P2016-177320)
(22)【出願日】2016年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-44555(P2018-44555A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】501429531
【氏名又は名称】株式会社マトリックス
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】久田 英貴
(72)【発明者】
【氏名】南原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】川原 武
(72)【発明者】
【氏名】前川 泰光
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102005059023(DE,A1)
【文献】 特開2001−235089(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第2525937(DE,A)
【文献】 特開2006−003110(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0052382(KR,A)
【文献】 特開平09−061376(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10338952(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/48
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出している継手部により連結された導電性の複数の管を有する配管と、
前記配管内で前記配管の長手方向に移送されるとともに、所定の無線信号を送信する移動体と、
前記継手部近傍の前記配管の外面に設けられたアンテナと、
前記アンテナに接続され、前記移動体によって送信された前記所定信号を前記アンテナを介して受信する受信器と、を備え、
前記継手部が前記管の端面同士の間に挟持された絶縁体を有し、前記所定信号を前記アンテナで受信することによって前記移動体の位置を特定することを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
前記アンテナが、前記絶縁体を間に置いて前記絶縁体の両側の前記管の外側にそれぞれ設けられた一対のアンテナ素子を有することを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
前記継手部近傍の前記配管の外側に設けられた報知器と、
前記受信器が前記所定信号を受信した場合に前記報知器を作動させる処理部と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置特定装置。
【請求項4】
前記アンテナの近傍において前記配管の外側に設けられ、磁界を発生する磁界発生部を更に備え、
前記移動体が、
前記配管内で前記配管の長手方向に移送される移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、所定信号を送信する送信器と、
前記移動体本体に設けられた電源と、
前記移動体本体に設けられ、磁界強度を電気信号に変換してその電気信号を出力する磁気センサと、
前記移動体本体に設けられ、前記磁気センサによって出力される電気信号を入力し、前記磁気センサによって出力される電気信号のレベルが所定閾値を超える場合に前記電源から前記送信器に給電する検出部と、を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の位置特定装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記磁気センサによって出力される電気信号のレベルが前記所定閾値以下である状態が継続された場合に前記電源と前記送信器を遮断することを特徴とする請求項4に記載の位置特定装置。
【請求項6】
前記絶縁体は前記管よりも透磁率が低いことを特徴とする請求項4又は5に記載の位置特定装置。
【請求項7】
少なくとも一周巻かれた第一ループと、前記第一ループに続くとともに前記第一ループと反対巻きに少なくとも一周巻かれた第二ループと、を有したケーブルを更に備え、
前記第一ループと前記第二ループが前記配管の長手方向に並べられて前記配管に巻き付けられた状態であり、前記第一ループと前記第二ループの互いに近接する部分が前記磁界発生部としてコイル状に設けられていることを特徴とする請求項4から6の何れか一項に記載の位置特定装置。
【請求項8】
移動体を配管内で前記配管の長手方向に移送し、前記移動体から送信された所定の無線信号を、前記配管の外面に設けられたアンテナで受信することによって前記移動体の位置を特定する位置特定方法において、
前記配管は、露出している継手部により連結された導電性の複数の管を有し、
前記アンテナは前記継手部近傍の前記配管の外面に設けられ、
前記継手部は前記管の端面同士の間に挟持された絶縁体を有することを特徴とする位置特定方法。
【請求項9】
前記移動体には磁気センサ、検出部、送信器及び電源が設けられ、
前記アンテナの近傍において前記配管の外側に設けられた磁界発生部により磁界を発生させ、
前記磁気センサにより前記移動体本体の周辺の磁界強度を検出し、
前記移動体本体が前記磁界発生部に近づくことによって前記磁気センサにより検出された磁界強度が所定閾値を超えることを前記検出部により検出した場合に、前記検出部により前記電源から前記送信器に給電することによって前記送信器により前記所定の無線信号を送信し、
前記移動体本体が前記磁界発生部に離れることによって前記磁気センサにより検出された磁界強度が前記所定閾値以下である状態が継続された場合に、前記検出部により前記電源と前記送信器を遮断することを特徴とする請求項8に記載の位置特定方法。
【請求項10】
ケーブルを少なくとも一周巻くことで第一ループを形成し、前記ケーブルの前記第一ループに続く部位を前記第一ループと反対巻きに少なくとも一周巻くことで第二ループを形成し、前記第一ループと前記第二ループを前記配管の長手方向に並べて前記配管に巻き付けることによって、前記第一ループと前記第二ループの互いに近接する部分をコイル状の前記磁界発生部に形成することを特徴とする請求項9に記載の位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の長手方向に移送されるピグ等の移動体の位置を特定する位置特定装置に関するとともに、その移動体の位置を特定する位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタル等の硬化性流動材料を配管により移送すると、硬化性流動材料が配管の内面に付着して固化することがある。そのため、配管の内面の付着物を除去するべく、ピグと呼ばれる移動体が用いられる。具体的には、移動体を配管に挿入して、高圧流体を配管に供給することによって移動体を圧送し、移動体により付着物を配管から剥離させる。ところが、移動体の圧送を継続していると、配管の内面に固着した硬化性流動材料によって移動体が配管に詰まることがある。その場合、配管内の移動体の位置を早急に特定して、移動体を配管から取り出さなければならない。
【0003】
特許文献1には、移動体であるピグの位置を特定する技術が開示されている。具体的には、電磁波の送信器がピグに設けられ、ピグロケーターと呼ばれる受信器が配管の外側に設けられており、ピグとともに移動する送信器によって出力された電磁波を受信器によって検出することによってピグの位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−235089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配管が導電性材料からなる場合、電磁波が配管によって遮蔽されてしまう。そのため、送信器によって送信された電磁波が受信器に到達せず、受信器によりピグの位置を特定することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、配管が導電性材料からなる場合であっても、配管内を移動する移動体から発せられる信号を配管の外側の受信器で受信できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するべく、本発明は、露出している継手部により連結された導電性の複数の管を有する配管と、前記配管内で前記配管の長手方向に移送されるとともに、所定の無線信号を送信する移動体と、前記継手部近傍の前記配管の外面に設けられたアンテナと、前記アンテナに接続され、前記移動体によって送信された前記所定信号を前記アンテナを介して受信する受信器と、を備え、前記継手部が前記管の端面同士の間に挟持された絶縁体を有し、前記所定信号を前記アンテナで受信することによって前記移動体の位置を特定することを特徴とする位置特定装置である。
【0008】
また、本発明は、移動体を配管内で前記配管の長手方向に移送し、前記移動体から送信された所定の無線信号を、前記配管の外面に設けられたアンテナで受信することによって前記移動体の位置を特定する位置特定方法において、前記配管は、露出している継手部により連結された導電性の複数の管を有し、前記アンテナは前記継手部近傍の前記配管の外面に設けられ、前記継手部は前記管の端面同士の間に挟持された絶縁体を有することを特徴とする位置特定方法である。
【0009】
本発明によれば、管の端面同士の間に絶縁体が挟持されることにより配管の継手部が構成されるので、移動体が継手部を通過する際には、移動体によって送信される信号のキャリア(電波)が絶縁体を通過して配管の外に漏れる。そのため、そのキャリアを配管の外側のアンテナで捕捉して、その信号を受信器で受信することができる。移動体から送信された信号を受信器により受信すれば、移動体の位置を特定することができる。
【0010】
好ましくは、前記アンテナが、前記絶縁体を間に置いて前記絶縁体の両側の前記管の外側にそれぞれ設けられた一対のアンテナ素子を有する。
【0011】
以上によれば、一対のアンテナ素子が絶縁体の両側の管の外側にそれぞれ設けられているので、移動体から送信された信号を受信しやすくなる。
【0012】
前記位置特定装置が、前記継手部近傍の前記配管の外側に設けられた報知器と、前記受信器が前記所定信号を受信した場合に前記報知器を作動させる処理部と、を更に備える。
【0013】
以上によれば、移動体が継手部を通過する際に移動体により送信された信号がアンテナを介して受信器に受信されると、報知器が処理部により作動するので、報知器の周囲の作業員に移動体の位置を知らしめることができる。
【0014】
好ましくは、前記位置特定装置が、前記アンテナの近傍において前記配管の外側に設けられ、磁界を発生する磁界発生部を更に備え、前記移動体が、前記配管内で前記配管の長手方向に移送される移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、所定信号を送信する送信器と、前記移動体本体に設けられた電源と、前記移動体本体に設けられ、磁界強度を電気信号に変換してその電気信号を出力する磁気センサと、前記移動体本体に設けられ、前記磁気センサによって出力される電気信号を入力し、前記磁気センサによって出力される電気信号のレベルが所定閾値を超える場合に前記電源から前記送信器に給電する検出部と、を有する。
好ましくは、前記検出部は、前記磁気センサによって出力される電気信号のレベルが前記所定閾値以下である状態が継続された場合に前記電源と前記送信器を遮断する。
好ましくは、前記位置特定方法において、前記移動体には磁気センサ、検出部、送信器及び電源が設けられ、前記アンテナの近傍において前記配管の外側に設けられた磁界発生部により磁界を発生させ、前記磁気センサにより前記移動体本体の周辺の磁界強度を検出し、前記移動体本体が前記磁界発生部に近づくことによって前記磁気センサにより検出された磁界強度が所定閾値を超えることを前記検出部により検出した場合に、前記検出部により前記電源から前記送信器に給電することによって前記送信器により前記所定の無線信号を送信し、前記移動体本体が前記磁界発生部に離れることによって前記磁気センサにより検出された磁界強度が前記所定閾値以下である状態が継続された場合に、前記検出部により前記電源と前記送信器を遮断する。
【0015】
以上によれば、配管の長手方向に移送される移動体本体が磁気発生部から離れていれば、磁界発生部によって発生された磁界が磁気センサによって検出されず、磁気センサによって出力される電気信号のレベルが所定閾値以下と低いので、電源と送信器が遮断される。そのため、電源の消費電力を抑えることができ、電源の長寿命化を図ることができる。一方、移動体本体が磁気発生部に近づくと、磁界発生部によって発生された磁界が磁気センサによって検出されて、磁気センサによって出力される電気信号のレベルが所定閾値を超えるので、電源から送信器に給電されて、送信器が所定信号を送信するようになる。その信号がアンテナを介して受信器に受信されるので、移動体本体の位置を特定することができる。
【0016】
好ましくは、前記絶縁体は前記管よりも透磁率が低い。
【0017】
管の透磁率が高いと、磁界発生部により生じる磁界の磁束密度は管自体つまり管の厚肉部で高く、管の内側で低くなる。こうした場合でも、以上のように、管よりも透磁率の低い絶縁体が管の端面同士の間に挟持されているので、管の厚肉部の磁束が絶縁体を通じて管の内側にも漏れる。それゆえ、配管内の移動体に設けられた磁気センサによって磁界強度を検出することができる。よって、磁界を利用して送信器と電源との間の給電・遮断を行うことができ、電源の消費電力を抑えることができる。
【0018】
好ましくは、前記位置特定装置が、少なくとも一周巻かれた第一ループと、前記第一ループに続くとともに前記第一ループと反対巻きに少なくとも一周巻かれた第二ループと、を有したケーブルを更に備え、前記第一ループと前記第二ループが前記配管の長手方向に並べられて前記配管に巻き付けられた状態であり、前記第一ループと前記第二ループの互いに近接する部分が前記磁界発生部としてコイル状に設けられている。
好ましくは、前記位置特定方法において、ケーブルを少なくとも一周巻くことで第一ループを形成し、前記ケーブルの前記第一ループに続く部位を前記第一ループと反対巻きに少なくとも一周巻くことで第二ループを形成し、前記第一ループと前記第二ループを前記配管の長手方向に並べて前記配管に巻き付けることによって、前記第一ループと前記第二ループの互いに近接する部分をコイル状の前記磁界発生部に形成する。
【0019】
以上によれば、配管に巻き線を多重に巻き付けずに済み、配管の外側に簡単にコイル状の磁界発生部を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁体により配管が電気的に分離されるので、移動体によって送信される信号を絶縁体を介して受信器で受信することができ、それにより移動体の位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、施工中のシールドトンネルに設けられたピグ移送装置を示した図である。
図2図2は、配管の継手部の断面図である。
図3図3は、ピグの断面図である。
図4図4は、配管の継手部の斜視図である。
図5図5は、アンテナの展開図である。
図6図6は、ピグ検出装置のブロック図である。
図7図7は、ピグに設けられた通信ユニットのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
1. トンネル掘削工事について
図1は、トンネル掘削工事に用いるピグ移送装置10を示した概略側面図である。
【0024】
このピグ移送装置10はトンネル掘削工事の際に利用される。トンネル掘削工事では、シールドマシン2によって切羽を掘削しつつ、シールドマシン2を逐次前進させ、シールドマシン2の後方にセグメント3を組み立ててセグメント3によりトンネルの内周面を覆工する。覆工の際には、組み立てたセグメント3と地盤との間に裏込材4を注入する。具体的には、坑口又は縦坑の外にモルタル供給機5を設置し、シールドマシン2のシールドテール部近傍に注入装置6を設置し、モルタル供給機5から注入装置6まで配管11を配管した後、モルタル供給機5によってモルタル(A液)を注入装置6に供給しつつ、別の配管によって水ガラス(B液)を注入装置6に供給する。こうして、注入装置6においてモルタルと水ガラスを混合し、その混合物(裏込材4)を注入装置6からセグメント3の裏側に注入する。
【0025】
2. 清掃の概要
裏込材4の注入の中断後又は終了後に、ピグ移送装置10を用いて、配管11内に残留したモルタルを取り除いて、配管11の詰まりを防止する。配管11の清掃の際には、配管11を注入装置6及びモルタル供給機5から切り離した上、配管11の一端の開口にピグ(移動体)20を嵌め込む。そして、配管11の一端を圧送機31に接続し、配管11の他端を槽32に接続する。その後、圧送機31によって水等の高圧流体を配管11に圧送し、高圧流体の圧力によりピグ20を他端に向けて移送する。ピグ20が配管11の内面に圧接しているので、配管11内面に付着したモルタルがピグ20によって掻き取られて、押し流される。これにより、配管11の内部が清掃される。本実施形態のピグ移送装置10は移送中のピグ20の位置を特定できる位置特定装置であり、ピグ移送装置10によるピグ20の位置の特定について以下に詳述する。
【0026】
3. ピグ移送装置について
ピグ移送装置10は、配管11、圧送機31、槽32、ピグ20、複数の検出装置40、複数の第一報知器50、複数の第二報知器60及び管理コンピュータ70等を備える。
【0027】
4. 配管及び継手部について
配管11は、連結された複数の管12を有する。管12は導体且つ磁性体であり、例えば鋼管である。図2は配管11の継手部16の断面図である。隣り合う管12の端面同士はこれらの間に非磁性の絶縁体13を挟み込んだ上で突き合わせられて、ジョイント14によってこれら管12が接合された状態にある。ジョイント14は、隣り合う管12の端部に設けられたフランジ15を外周側から挟み込むように拘束することで、これら管12を接続した状態にするものである。ジョイント14と管12は電気的に絶縁されている。具体的には、ジョイント14の表面には絶縁性の塗膜が形成されているとともに、ジョイント14とフランジ15との間に絶縁性の防水ゴムパッキン17が挟み込まれ、このゴムパッキン17によってジョイント14の内周と管12の外周との間にすき間18が形成されている。
ジョイント14は管12に対して着脱可能であり、ジョイント14を取り外してフランジ15の拘束を解除することで、隣り合う管12を切り離すことができる。
【0028】
絶縁体13は、例えばゴムシート、樹脂シート、セラミックシート、塗膜又はパッキンである。絶縁体13は、管12の端面の全周に亘って設けられている。管12よりも電気抵抗率が高い絶縁体13が隣り合う管12の端面同士の間に挟持されているので、配管11は絶縁体13の部分に電気的抵抗率の不連続性(ギャップ)を有する。それゆえ、電波が絶縁体13を通過して、電波をキャリアとした信号の送受を管12の内側と外側との間で行うことができる。
【0029】
5. ピグ
図3は、ピグ20の断面図である。ピグ20は、ピグ本体(移動体本体)21と、ピグ本体21に埋め込まれた通信ユニット22と、を備える。ピグ本体21は樹脂(例えば発泡ウレタン、ポリエチレン)又はゴム(例えば発泡ゴム)等からなり、弾性を有する。図3の例では、ピグ本体21が砲弾型であるが、球型、楕円体型又はシリンドリカル型であってもよい。通信ユニット(RFタグ)22は樹脂23等によってコーティングされた状態でピグ本体21に埋め込まれている。
【0030】
通信ユニット22は、磁界をキャリアとした信号受信機能を有する。更に、通信ユニット22は、通常時にオフ状態であり、磁界を検出することによってオン状態となるノーマリーオフ型の無線信号送信機能(電波をキャリアとする)を有する。通信ユニット22については後に詳述する。
【0031】
6. ピグ検出装置、第一報知器及び第二報知器
図1に示すように、複数のピグ検出装置40は配管11に沿って間隔を置いて配列されている。これらピグ検出装置40は配管11の継手部16の周辺にそれぞれ配置されている。ピグ検出装置40の筐体には第一報知器50及び第二報知器60が設けられている。第一報知器50は灯具であり、第二報知器60はスピーカーである。
【0032】
ピグ検出装置40は、配管11の継手部16内に磁界を生成して、磁界により通信ユニット22を無線信号送信可能な状態に起動する。また、ピグ検出装置40は、磁界をキャリアとして位置情報(ピグ検出装置40に一意の識別情報)を送信する。また、ピグ検出装置40は、無線通信可能な範囲内にあるピグ20の通信ユニット22によって送信された位置情報及びピグ20の識別情報(電波をキャリアとする)を受信した場合に、第一報知器50及び第二報知器60を作動させるとともに、それらの情報を管理コンピュータ70に送信する。
【0033】
ピグ検出装置40は、コイル(磁界発生部)41、電磁誘導式の遠隔起動部42、アンテナ43及びリーダー44等を備える。コイル41は配管11の継手部16及びその周辺部において配管11に巻回されている。このコイル41が遠隔起動部42に接続され、遠隔起動部42がコイル41に磁界を発生させることによってコイル41近傍の通信ユニット22(特に、後述の復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22h)を起動させる。アンテナ43は配管11の継手部16及びその周辺部において配管11の外面に設けられている。このアンテナ43がリーダー44に接続されている。このリーダー44は、無線によりアンテナ43近傍の通信ユニット22から位置情報及び識別情報を読み取った場合に、第一報知器50及び第二報知器60を作動させるとともに、位置情報及び識別情報を管理コンピュータ70に出力する。
【0034】
図4を参照して、コイル41及びアンテナ43の設置状態について説明する。
アンテナ43はアンテナ素子43a及びアンテナ素子43bを有し、これらアンテナ素子43a,43bはこれらの間に絶縁体13を置いて並列されている。アンテナ素子43aは隣り合う管12のうち一方の管12の継手部16近傍に巻かれた状態でその管12の外面に貼着され、アンテナ素子43bは他方の管12の継手部16近傍に巻かれた状態でその管12の外面に貼着されている。ここで、継手部16近傍に配されたアンテナ素子43a,43bと継手部16との距離は、ピグ20が継手部16に位置している場合に、ピグ20の通信ユニット22によって放射される電波が絶縁体13を介してアンテナ素子43a,43bに捕捉可能な範囲内である。
アンテナ素子43a,43bが管12に巻かれる前の状態では、アンテナ素子43a,43bが帯状に形成されている。そして、アンテナ素子43aには面ファスナが設けられており、アンテナ素子43aを一部重ねるようにして管12に巻いて、アンテナ素子43aの重なり合った部分を面ファスナによって結合する。アンテナ素子43bについても同様である。面ファスナを用いたので、アンテナ素子43a,43bの着脱が容易となっている。
【0035】
コイル41はコイル素子41a及びコイル素子41bを有し、これらコイル素子41a及びコイル素子41bはこれらの間に絶縁体13を置いて並列されている。コイル素子41aは隣り合う管12のうち一方の管12の継手部16近傍に巻かれており、コイル素子41bはコイル素子41aと同一の向きに他方の管12の継手部16近傍に巻かれている。ここで、継手部16近傍に配されたコイル素子41a,41bと継手部16との距離は、ピグ20が継手部16に位置している場合に、コイル素子41a,41bによって発生された磁界の強度がピグ20の通信ユニット22の後述の磁気センサ22bが検出可能な範囲内である。
【0036】
コイル素子41a,41bは1本のケーブル41cの一部である。この1本のケーブル41cは、遠隔起動部42の一方の端子から遠隔起動部42の他方の端子に向かって配線部41e、第一半巻き部41f、引込部41g、第二半巻き部41h、跨ぎ部41i、第三半巻き部41j、引込部41k、第四半巻き部41m、配線部41nの順に連なったものである。
配線部41eは、遠隔起動部42の一方の端子から導出された状態にある。
第一半巻き部41fは、配線部41eから続くとともに、一方の管12の継手部16近傍に半巻きされた状態にある。この第一半巻き部41fはコイル素子41aの一部である。
引込部41gは、第一半巻き部41fから続くとともに、継手部16から離れた位置において一方の管12に一巻きされて第一半巻き部41fに折り返された状態にある。
第二半巻き部41hは、引込部41gから続くとともに、第一半巻き部41fの巻きに続くように一方の管12の継手部16近傍に半巻きされた状態にある。この第二半巻き部41hはコイル素子41aの一部であり、第二半巻き部41hと第一半巻き部41fが周方向に設けられることによってコイル素子41aが設けられている。
跨ぎ部41iは、一方の管12から他方の管12へ継手部16を跨ぐように第二半巻き部41hから続いた状態にある。
第三半巻き部41jは、跨ぎ部41hから続くとともに、第一半巻き部41f及び第二半巻き部41hと同一の向きに他方の管12の継手部16近傍に半巻きされた状態にある。この第三半巻き部41jはコイル素子41bの一部である。
引込部41kは、第三半巻き部41jから続くとともに、継手部16から離れた位置において他方の管12に一巻きされて第三半巻き部41jに折り返された状態にある。
第四半巻き部41mは、引込部41kから続くとともに、第三半巻き部41jの巻きに続くように他方の管12の継手部16近傍に半巻きされた状態にある。この第四半巻き部41mはコイル素子41bの一部であり、第四半巻き部41mと第三半巻き部41jが周方向に設けられることによってコイル素子41bが設けられている。
配線部41nは、第四半巻き部41mから続いて、遠隔起動部42の他方の端子にまで導かれている。なお、配線部41nが遠隔起動部42の他方の端子に接続され、配線部41eが遠隔起動部42の一方の端子に接続されるものとしてもよい。
【0037】
ケーブル41cの設置前の状態では、図5の展開図に示すように、ケーブル41cの中間部、つまり、第一半巻き部41fから第四半巻き部41mまでの部分が8の字型に曲がった状態にある。具体的には、第一半巻き部41f、引込部41g及び第二半巻き部41hが一重のループ41pを形作っているとともに、第三半巻き部41j、引込部41k及び第四半巻き部41mがループ41pと逆巻きの一重のループ41qを形作っており、跨ぎ部41iがループ41pとループ41qを連接する。このケーブル41cの設置の際には、跨ぎ部41iを継手部16に当てて、一方のループ41pを一方の管12に巻き付け、ループ41qを他方の管12に巻き付けることによって、継手部16の両側にコイル素子41a,41bをそれぞれ形成する。第一半巻き部41fと第二半巻き部41hがそれぞれ半巻き状態で配管11を取り囲んでおり、第三半巻き部41jと第四半巻き部41mについても同様であり、更に引込部41k,41kが一巻きであるので、ケーブル41cを配管11から取り外しやすい。なお、ループ41p,41qは2重巻き以上のループであってもよい。
アンテナ素子43a,43b及びループ41p,41qが管12に巻かれる前の状態では、帯状のアンテナ素子43aが図5において配線部41eと第一半巻き部41fとの間に配置されるようにして跨ぎ部41iに対して交差した状態で、且つ、帯状のアンテナ素子43bが配線41nと第三半巻き部41jとの間に配置されるようにして跨ぎ部41iに対して交差した状態で、アンテナ素子43a,43bがケーブル41cに結束されて一体となっていてもよい。そうすると、アンテナ素子43a,43bとループ41p,41qを一緒に管12に巻き付けることができる。
【0038】
なお、コイル素子41a,41bを別形態に変更してもよい。例えば、コイル素子41aが隣り合う管12のうち一方の管12の継手部16近傍に多重に巻回されたものであり、コイル素子41bがコイル素子41aと同一の向きに多重に巻回されたものであってもよい。
【0039】
コイル素子41a,41bに電流が印加されると、コイル素子41a,41bの内側には同一向きの磁界が生成される。ここで、管12が空気よりも透磁率の十分に高い磁性体であるため、管12自体つまり管12の厚肉部分には高密度の磁束が生成されるが、管12の内部空間には磁束が殆ど生成されない。ところが、絶縁体13が透磁率の低い非磁性体であるので、配管11は絶縁体13の部分に透磁率の不連続性(ギャップ)を有する。それゆえ、管12自体つまり管12の厚肉部分に生じる磁束線が絶縁体13を通じて管12の内部空間に漏れ、管12の内部空間であっても絶縁体13近傍には磁界が生成される。
【0040】
以下、図6を参照して、ピグ検出装置40の遠隔起動部42及びリーダー44について詳細に説明する。
遠隔起動部42は電源回路42a、オンオフ変調器42b及びメモリ42cを有する。メモリ42cには、ピグ検出装置40の設置箇所を表す位置情報(ピグ検出装置40に一意の識別情報)が記録されている。電源回路42aは、オンオフ変調器42bに高周波電流を供給する。オンオフ変調器42bは、メモリ42cに記録された位置情報に基づいて、電源回路42aの高周波電流を位置情報となるパルスコードでオンオフ変調して、コイル41に直列コンデンサで同調させて給電する。コイル41はこれを高周波磁界として出力し、その高周波磁界はそれよりも低周波数でオンオフ変調されたものである。つまり、コイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号はオンオフ変調信号である。
【0041】
リーダー44はRF受信器44a、処理部44b、インターフェース44c、駆動回路44d及び音源回路44eを備える。
RF受信器44aは、復調回路、フィルタ回路及び増幅器等を有する。RF受信器44aは、通信ユニット22によって送信された信号をアンテナ43を介して受信し、その信号を復調する。RF受信器44aは、通信ユニット22によって送信された信号の復調により得られた位置情報及び識別情報を処理部44bに出力する。
【0042】
処理部44bは例えばプロセッサである。この処理部44bは、位置情報と識別情報のどちらか一方又は両方をRF受信器44aから入力した場合に、駆動回路44dを駆動して駆動回路44dにより第一報知器(灯具)50を点灯又は点滅させる。更に、処理部44bは、音源回路44eを駆動して音源回路44eにより第二報知器60に音声を出力させる。更に、処理部44bは、位置情報及び識別情報をインターフェース44cを介して管理コンピュータ70に転送する。
【0043】
7. 通信ユニット
図7は、ピグ20の内部に設けられた通信ユニット22の構成を示したブロック図である。図7に示すように、通信ユニット22は、電池(電源)22a、磁気センサ22b、検出回路(検出部)22c、スイッチ22d、復調器22e、制御部22f、メモリ22g、RF送信器22h及び送信アンテナ22jを備える。
【0044】
メモリ22gには、ピグ20に一意の識別情報が記録されている。
電池22aが検出回路22cに導通しており、検出回路22cは電池22aにより常に給電されて動作している。
復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hから電池22aまでの電路にはスイッチ22dが設けられており、電路がスイッチ22dによって開閉される。スイッチ22dによって電路が閉じられると、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hが電池22aにより給電されて動作する。一方、スイッチ22dによって電路が開かれると、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hが電池22aから遮断されて停止する。スイッチ22dがノーマリーオープン型(ノーマリーオフ型)のスイッチであり、通常時に復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに電力が供給されないので、電池22aの長寿命化を図ることができる。
【0045】
磁気センサ22bは例えばコイル、ホール素子又は磁気抵抗効果素子である。磁気センサ22bは、それに印加される周囲の磁界の強度を検出する。つまり、磁気センサ22bは、検出する磁界強度を電気信号に変換することによって、検出強度を表す電気信号を検出回路22c及び復調器22eに出力する。なお、ピグ20が継手部16の近傍に位置する場合、コイル41によって出力された高周波磁界が磁気センサ22bによって電気信号に変換され、これによりコイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号が磁気センサ22bに受信される。
【0046】
検出回路22cは、コイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号が磁気センサ22bに受信される場合にスイッチ22dを閉じ、コイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号が磁気センサ22bに受信されない場合にスイッチ22dを開く。具体的には、検出回路22cは例えばコンパレータ及びラッチ等から構成されており、磁気センサ22bの出力電気信号のレベルが所定閾値を超えた場合に検出回路22cがスイッチ22dを閉じてその状態を維持し、磁気センサ22bの出力電気信号のレベルが所定閾値以下の状態が所定時間維持されたら検出回路22cがスイッチ22dを開く。なお、磁気センサ22bの出力電気信号のレベルは、磁気センサ22bによって検出される磁界強度を表す。
【0047】
ピグ20が継手部16の近傍に位置すると、コイル41によって出力された高周波磁界の強度が所定値よりも大きくなるので、その高周波磁界に基づく磁気センサ22bの出力電気信号のレベルが所定閾値を超えるので、スイッチ22dが検出回路22cによって閉じられる。これにより、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに給電される。
【0048】
復調器22eは、磁気センサ22bから入力した電気信号を復調する。ピグ20が継手部16の近傍に位置する場合、コイル41及びオンオフ変調器42bによって送信されて磁気センサ22bによって受信された信号(オンオフ変調信号)が復調器22eによって復調されるので、復調により得られた位置情報が復調器22eから制御部22fに出力される。
【0049】
制御部22fは例えばプロセッサである。この制御部22fは、位置情報を復調器22eから入力した場合に、メモリ22gから識別情報を読み取る。更に、制御部22fは、位置情報及び識別情報をRF送信器22hに出力する。
【0050】
RF送信器22hは、制御部22fから入力した位置情報及び識別情報をデジタルコードで変調して、その変調された信号を送信アンテナ22jを介して送信する。RF送信器22hによって送信された信号がリーダー44のRF受信器44aによって受信されるので、位置情報及び識別情報がピグ検出装置40のリーダー44により読み取られることになる。
【0051】
8. 管理コンピュータ
図1に示すように、管理コンピュータ70はCPU、GPU、ROM、RAM及びハードウェアインタフェース等を有するコンピュータである。この管理コンピュータ70には、記憶部71及び表示部72が接続されている。記憶部71は、半導体メモリ又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置である。表示部72は例えば液晶ディスプレイ装置である。この管理コンピュータ70は、有線ネットワーク、無線ネットワーク或いは信号ケーブル等の情報伝送媒体を介してピグ検出装置40と通信可能である。
【0052】
管理コンピュータ70は、各ピグ検出装置40のリーダー44の処理部44bから位置情報及び識別情報を入力したら、位置情報及び識別情報を互いに対応づけて記憶部71に記録する。更に、管理コンピュータ70は、位置情報及び識別情報を入力した時刻を位置情報及び識別情報に対応づけて記憶部71に記録する。また、管理コンピュータ70は、位置情報を入力する毎に、その位置情報に基づいてピグ20の現在位置を表す画像を識別情報とともに表示部72に表示する。識別情報はピグ20の一意のものであるので、表示部72を見れば、どのピグ20がどこを通過したかを認識することができる。
【0053】
9. 使用方法及び動作
ピグ移送装置10の使用方法について説明する。
まず、各継手部16の近傍にアンテナ43を設置する。つまり、絶縁体13を挟んだ一対の管12のうち一方の管12の絶縁体13近傍にアンテナ素子43aを巻き付けるように取り付け、他方の管12の絶縁体13近傍にアンテナ素子43bを巻き付けるように取り付ける。
【0054】
次に、各継手部16の近傍にコイル41を設置する。つまり、ケーブル41cの8字型の中間部のうち跨ぎ部41iを継手部16に当てて、ループ41pを一方の管12に1周巻き付け、ループ41qを他方の管12に1周巻き付ける。こうすることで、第一半巻き部41f及び第二半巻き部41hを一方の管12の絶縁体13近傍に巻き付け、第三半巻き部41j及び第四半巻き部41mを巻き付ける。このような取付方法によれば、巻き線を多重に配管11に巻き付けることなく、コイル素子41a,41bを簡単に設置することができる。
【0055】
次に、各継手部16の周辺に遠隔起動部42、リーダー44、第一報知器50及び第二報知器60を設置し、コイル41を遠隔起動部42に接続するとともに、アンテナ43をリーダー44に接続する。また、リーダー44と管理コンピュータ70をケーブルにより接続する。そして、リーダー44、遠隔起動部42及び管理コンピュータ70を起動する。そうすると、コイル41によって継手部16近傍に磁界が発生して、信号がオンオフ変調器42b及びコイル41によって変調されて送信される。また、リーダー44がアンテナ43を通じてピグ20の通信ユニット22と通信可能な状態になる。ここで、継手部16において非磁性の絶縁体13が管12の端面同士の間に挟まれているので、絶縁体13により磁気漏洩及び電波漏洩が生じる。
【0056】
一方、配管11を注入装置6及びモルタル供給機5から切り離す。そして、配管11の一端の開口にピグ20を嵌め込んだ後、配管11の一端を圧送機31に接続し、配管11の他端を槽32に接続する。
【0057】
次に、圧送機31によって高圧流体を配管11に供給し、高圧流体の圧力によりピグ20を他端に向けて移送する。そうすると、配管11内のモルタルがピグ20によって押し流される。
【0058】
ピグ20の移送中、ピグ20が継手部16を通過すると、その継手部16の近傍に設置された第一報知器50が点灯又は点滅するとともに、第二報知器60から音声が出力される。また、現在のピグ20の位置を表す画像が管理コンピュータ70により表示部72に表示される。これにより、作業員がピグ20の位置を認識することができる。
【0059】
ピグ20が継手部16を通過する際の動作について詳細に説明する。
継手部16へのピグ20の到達前では、ピグ20から継手部16までの距離が長いと、ピグ20周辺の磁界が弱い。そのため、コイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号が磁気センサ22bに受信されず、磁気センサ22bから検出回路22cに出力される電気信号が非常に弱いので、スイッチ22dがオフ状態である。従って、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hは動作していない。なお、電池22aから検出回路22cに常に給電されているので、検出回路22cは常に動作している。
【0060】
ピグ20が継手部16に近づいて、ピグ20が絶縁体13の近傍に到達すると、ピグ20周辺の磁界が強くなって、ピグ検出装置40のコイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号が磁気センサ22bに受信される。そのため、磁気センサ22bから検出回路22cに出力される電気信号のレベルが所定閾値を超えて、スイッチ22dが検出回路22cによって閉じられる(オン状態にされる)。従って、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに電力が供給されて、これらが動作する。その後、検出回路22cはスイッチ22dの閉状態を保持するので、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hへの電力供給が継続される。
【0061】
そうすると、ピグ検出装置40のコイル41及びオンオフ変調器42bから磁気センサ22bに受信された信号(その信号は位置情報を表す)が復調器22eによって復調される。復調により得られた位置情報が復調器22eから制御部22fに出力される。これにより、制御部22fはメモリ22gから識別情報を読み取って、位置情報及び識別情報をRF送信器22hに出力する。
【0062】
位置情報及び識別情報がRF送信器22hに入力されると、RF送信器22hがそれら位置情報及び識別情報に基づいて信号を変調して、その変調された信号を送信アンテナ22jを介して送信する。その信号がアンテナ43を介してRF受信器44aに受信され、RF受信器44aによる信号の復調によって位置情報及び識別情報がRF受信器44aから処理部44bに出力される。そうすると、処理部44bは、第一報知器(灯具)50を点灯又は点滅させるとともに、第二報知器60に音声を出力させる。更に、処理部44bは、位置情報及び識別情報を管理コンピュータ70に転送する。そして、管理コンピュータ70は、位置情報、識別情報及びそれらの入力時刻を互いに対応づけて記憶部71に記録する。また、管理コンピュータ70は、その位置情報に基づいてピグ20の現在位置を表す画像を識別情報とともに表示部72に表示する。
【0063】
ピグ20が継手部16を通過して継手部16から離れると、ピグ20周辺の磁界が弱くなって、ピグ検出装置40のコイル41及びオンオフ変調器42bによって送信された信号が磁気センサ22bに受信されなくなる。そうすると、磁気センサ22bから検出回路22cに出力される電気信号が所定閾値以下の状態が所定時間維持されるので、スイッチ22dが検出回路22cによって開かれる(オフ状態にされる)。従って、ピグ20が下流側の次の継手部16の近傍に移動するまでの間、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに給電されない。よって、消費電力の削減を図れて、電池22aの長寿命化を図ることができる。
【0064】
10. 効果
以上の実施形態によれば、次のような効果を奏する。
(1) 隣り合う管12の端面同士の間に絶縁体13が挟持されているので、通信ユニット22のRF送信器22hの出力が低くても、RF送信器22hによってアンテナ22jから放射された電波が絶縁体13を通じて配管11の外に伝播する。それゆえ、ピグ20が継手部16又はその近傍に位置した時には、RF送信器22hによって送信された信号がアンテナ43を介してRF受信器44aに受信されるので、ピグ20の位置を特定することができる。また、RF送信器22hの出力が低いので、省電力化を図ることができる。
【0065】
(2) 一対のアンテナ素子43a,43bが絶縁体13の両側の管12にそれぞれ設けられているので、RF送信器22hによって送信された信号をアンテナ素子43a,43bを介してRF受信器44aによって受信しやすい。具体的には、ピグ20がアンテナ素子43aの内側を通過する時には、アンテナ22jから放射された電波がアンテナ素子43aよりもアンテナ素子43bに伝播しやすく、ピグ20がアンテナ素子43bの内側を通過する時には、アンテナ22jから放射された電波がアンテナ素子43bよりもアンテナ素子43aに伝播しやすいので、RF送信器22hによって送信された信号がアンテナ素子43a,43bを介してRF受信器44aによって受信する機会が2回ある。
【0066】
(3) ピグ20が継手部16から離れている場合には、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに給電されないので、電池22aの消耗を抑えることができる。一方、ピグ20が継手部16に近づいた場合には、磁気センサ22bから検出回路22cに出力される電気信号のレベルが一旦所定閾値を超えれば、その後に電気信号が所定閾値以下になっても、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに給電された状態が維持される。そのため、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hが動作して、RF送信器22hによって送信された信号がRF受信器44aに受信され、これによりピグ20の位置を特定することができる。
【0067】
(4) ピグ20が継手部16に近づいた後に継手部16から離れると、磁気センサ22bから検出回路22cに出力される電気信号のレベルが所定閾値以下の状態で所定時間維持されることで、復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hが電池22aから遮断される。よって、電池22aの消耗を抑えることができる。
【0068】
(5) 隣り合う管12の端面同士の間に非磁性の絶縁体13が挟まれているので、管12が磁性体であっても、コイル41によって発生された磁界強度を磁気センサ22bによって検出することができる。また、一対のコイル素子41a,41bが絶縁体13の両側の管12にそれぞれ設けられているので、継手部16における配管11内の磁界が強くなる。
【0069】
(6) ピグ20が配管11に詰まった時には、ピグ20を配管11から取り出す必要がある。具体的には、最後に報知(点灯・点滅・音声出力)した報知器50,60に接続されたピグ検出装置40(以下、最終検出済みピグ検出装置40という)のコイル41及びアンテナ43を配管11から取り外した上で、ジョイント14を取り外して隣り合う管12を切り離し、最終検出済みピグ検出装置40から次の報知していない報知器50,60に接続されたピグ検出装置40までの管12からピグ20を取り出す。上述したようにコイル41及びアンテナ43を配管11から簡単に取り外せるので、早急にピグ20を配管11から取り出すことができる。その後のコイル41及びアンテナ43の再設置も容易に早く行える。
【0070】
11. 変形例
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。以上の実施形態からの変更点について以下に説明する。以下に説明する変更点は、可能な限り組み合わせて適用してもよい。
【0071】
(1) 上記実施形態では、通信ユニット22がセミアクティブ型のRFタグであった。つまり、通信ユニット22には電池22aが内蔵され、通信ユニット22が継手部16に近接した場合に、電池22aから復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに供給されるようになっていた。それに対して、通信ユニット22がアクティブ型又はパッシブ型のRFタグであってもよい。通信ユニット22がアクティブ型のRFタグである場合、検出回路22c及びスイッチ22dが設けられず、電池22aから復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに常に電力が供給されてもよい。通信ユニット22aがパッシブ型のRFタグである場合、電池22a及び検出回路22cの代わりにコイルが通信ユニット22に設けられ、通信ユニット22が継手部16に近接した場合に、通信ユニット22のコイルがコイル41により電磁誘電し、それにより生じた電力が復調器22e、制御部22f、メモリ22g及びRF送信器22hに供給される。
【0072】
(2) 配管11の管12は、導電性を有する材料からなるのであれば、鋼管以外の管であってもよい。例えば、配管11の管12が銅製、アルミ製又はカーボン製であれば、非常に弱い反磁性の導電体であるので、ピグ20の通信ユニット22によって放射される電波が管12の内側から外側に通過しにくいものの、絶縁体13の内側から外側に通過してアンテナ素子43a,43bに受信される。
【0073】
(3) 上記実施形態では、配管11がトンネルに設けられているものであるが、配管11の設置箇所はトンネルに限るものではない。例えば、配管11が建物、構造物、屋外、水中等に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ピグ移送装置(移送装置), 11…配管, 12…管, 13…絶縁体, ピグ20(移動体), 21…ピグ本体(移動体本体), 22b…磁気センサ, 22c…検出回路(検出部),41…コイル(磁界発生部), 41a…コイル素子, 41b…コイル素子 41c…ケーブル 41p…ループ(第一ループ), 41q…ループ(第二ループ), 43…アンテナ, 43a…アンテナ素子, 43b…アンテナ素子, 44a…RF受信器(受信器), 44b…処理部, 50…第一報知器(報知器), 60…第二報知器(報知器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7