【実施例】
【0019】
以下、本発明の一実施例に係る振動制御装置を組み込んだ座席装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係る振動制御装置を組み込んだ座席装置のブロック図である。
図2は、
図1に示す座席装置を構成する座席の斜視図である。この
図1及び
図2に示されている座席装置1は、車両の運転席等に用いられる座席装置である。座席装置1は、シートとしての座席10と、この座席10の4箇所に内蔵された振動発生手段としての振動ユニット20と、振動ユニット20を制御する制御手段としての制御装置30と、を備えている。座席10は、着座部11及び背凭れ部12を有している。着座部11には、左右方向中央を挟んだ左右それぞれ1箇所ずつ振動ユニット20が内蔵されている。背凭れ部12にも、左右方向中央を挟んだ左右にそれぞれ1箇所ずつ振動ユニット20が内蔵されている。
【0021】
図3は、
図1に示されている振動ユニットを示す斜視図であり、
図4は、
図3(A)中のV1−V1切断線に沿った断面を示す断面図である。
【0022】
振動ユニット20は、ケース210内に磁気回路220が収容されたものである。ケース210は、背の低い円筒フレーム211の一端側の開口が、中央部に複数の貫通孔212が設けられた円形の第1板壁213で塞がれ、他端側の開口が円形の第2板壁214で塞がれたものである。
図3(A)には貫通孔212が設けられた第1板壁213側から見た振動ユニット20が示されており、
図3(B)にはその反対側から見た振動ユニット20が示されている。
【0023】
第1板壁213の略中央からは、複数の貫通孔212を囲むように円筒状のボビン215が第2板壁214に向かって立設されており、そのボビン215の外周にボイスコイル216が設けられている。このように、ボイスコイル216は、ボビン215を介して第1板壁213に固定されている。また、複数の貫通孔212は、第1板壁213と交差する方向から見たときの平面視でボイスコイル216の内側に相当する領域213aに設けられている。
【0024】
磁気回路220は、各々がリング状のプレート221及びマグネット222と円盤状のヨーク223とを備えている。プレート221及びマグネット222が、ボイスコイル216に対してギャップを開けて同軸に配置されている。プレート221、即ち磁気回路220は、ダンパ230を介して円筒フレーム211の内壁面に、第1板壁213に対する接離方向D1に振動可能に支持されている。
【0025】
ボイスコイル216に交流信号が通電されると、磁気回路220が、第1板壁213に対する接離方向D1に振動する。また、その振動のダンパ230を介した反作用でケース210も振動する。このように、振動ユニット20では、ボイスコイル216への通電によりケース210と磁気回路220との間に相対振動が生じる。この相対振動により、振動ユニット20は、ケース210ごと振動する。また、ケース210においては、磁気回路220からの反作用を受けるボイスコイル216が固定されている第1板壁213が局部的に振動する。この第1板壁213の振動により音が発生する。このように、振動ユニット20は、ケース210と磁気回路220との、ボイスコイル216への通電による相対振動によりケース210ごと振動して放音する。
【0026】
本実施例では、このような振動ユニット20が、背凭れ部12及び着座部11に次のように内蔵されている。
【0027】
図5は、振動ユニット20が背凭れ部12及び着座部11に内蔵されている様子を示す模式図である。
図5(A)には、振動ユニット20が背凭れ部12に内蔵されている様子が示され、
図5(B)には、振動ユニット20が着座部11に内蔵されている様子が示されている。
【0028】
図5(A)に示されているように、振動ユニット20は、背凭れ部12に、ケース210の第1板壁213が着座者(ユーザ)側を向くように内蔵されている。つまり、上記のように音を発する第1板壁213が着座者側を向いている。他方、着座部11には、ケース210の第2板壁214が着座者側を向くように、即ち、音を発する第1板壁213が着座者側とは反対側を向くように振動ユニット20が内蔵されている。
【0029】
ここで、本実施例の座席装置1では、例えば、運転者たる着座者が居眠り運転や漫然運転しているような場合に、振動ユニット20を用いてその旨を報知するといった制御が
図1に示す制御装置30により行われる。
【0030】
制御装置30は、心拍センサ310と、振動ユニット20を駆動する信号を出力する制御部(=出力手段)320と、アンプ330と、を備えている。
【0031】
心拍センサ310は、着座者に装着され、着座者の心拍を検出して、制御部320に対して供給する。
【0032】
制御部320は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの目盛を備えたCPU(Central Processing Unit)を含んで構成されている。制御部320は、座席装置1全体の制御を司り、心拍センサ310の検出結果に基づいて、眠気や漫然状態を検出すると、振動ユニット20を駆動する駆動信号を出力する。また、制御部320は、眠気や漫然状態が検出されなければ、振動ユニット20を駆動する駆動信号を出力しない。アンプ330は、制御部320から出力された信号を増幅して、4つの振動ユニット20のボイスコイル216に供給する。なお、漫然状態とは、考え事をしたり、ぼんやりしている状態のほか、体調が悪くて運転に集中できない、運転そのものが困難な状態を含むものである。
【0033】
また、制御部320内のROMなどのメモリには、下記の表1に示すような振動パターンテーブルが格納されている。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示す振動パターンテーブルは、複数の振動パターンP1〜P15を有している。振動パターンP1〜P15には各々、再生時間(振動の継続時間)、周波数、ゲイン(振幅)が設定されている。また、最後の振動パターンP15を除く振動パターンP1〜P14には、次の振動パターンP2〜P14までの休止時間が設定されている。本実施例の制御部320は、振動パターンP1〜P15に従った駆動信号を順次、振動ユニット20に対して出力する。
【0036】
具体的に説明すると、制御部320は、眠気や漫然状態を検出すると、表1の最上段を参照して、
図6に示すように、周波数200kHz、ゲイン5.2dBの駆動信号を再生時間7s継続して出力し、その後休止時間3sだけ駆動信号の出力を停止する。これにより、制御部320からは、振動パターンP1の駆動信号が出力される。休止時間3sが経過すると、制御部320は、周波数40Hz、ゲイン5.1dBの駆動信号を再生時間10s継続して出力し、その後休止時間6sだけ駆動信号の出力を停止する。これにより、制御部320からは、振動パターンP2の駆動信号が出力される。以下、これを繰り返し、制御部320は、振動パターンP1〜P15の駆動信号を順次出力する。
【0037】
上記表1に示すように出力順が隣り合う振動パターンP1〜P15は、周波数及びゲインの少なくとも一方が大きく異なっている。例えば、出力順が隣り合う振動パターンP1及びP2は、周波数及びゲインの双方が異なり、特に周波数が大きく異なる。また、出力順が隣り合う振動パターンP4及びP5は、周波数は同じであるが、ゲインが異なる。また、出力順が隣り合う振動パターンP11及びP12は、ゲインが同じであるが、周波数が異なる。
【0038】
また、出力順が隣り合う振動パターンP1〜P15は、再生時間が異なっている。また、複数の振動パターンP1〜P14に対応する休止時間としては、複数の異なる時間が設定されている。本実施例では、3s、4s、6s、7s、8s、9s、10sの7つの異なる時間が設定されている。
【0039】
上述した実施例によれば、出力順が隣り合う振動パターンP1〜P15は、周波数及び振幅の少なくとも一方が異なる。これにより、周波数又は振幅の少なくとも一方が異なる複数の振動パターンP1〜P15が順次出力されるため、振動刺激に対する覚醒効果を維持乃至向上することができる。
【0040】
また、上述した実施例によれば、出力順が隣り合う振動パターンP1〜P15は、再生時間が異なっている。これにより、より一層、振動刺激に対する覚醒効果を維持乃至向上することができる。
【0041】
また、上述した実施例によれば、複数の振動パターンP1〜P14には各々、次に出力される振動パターンP2〜P15までの休止時間が設定され、複数の振動パターンP1〜P14に対応する休止時間としては、複数の異なる時間が設定されている。これにより、より一層、振動刺激に対する覚醒効果を維持乃至向上することができる。
【0042】
なお、上述した実施例によれば、出力順が隣り合う振動パターンP1〜P15は、再生時間が異なっていたが、これに限ったものではない。振動パターンP1〜P15の再生時間は全て同じであってもよい。
【0043】
また、上述した実施例によれば、複数の振動パターンP1〜P14に対応する休止時間としては、複数の異なる時間が設定されていたが、これに限ったものではない。休止時間としては、全て同じ時間が設定されていてもよい。
【0044】
また、上述した実施例によれば、制御部320は、振動パターンP1〜P14を予め定めた順番で出力していたが、これに限ったものではない。例えば、乱数発生器を用いるなどして、振動パターンP1〜P15をランダムに出力するようにしてもよい。
【0045】
また、振動パターンテーブルを第1振動パターンテーブルと第2振動パターンテーブルとの2つ用意してもよい。この場合、第1振動パターンテーブルを構成する振動パターンの各々と、第2振動パターンテーブルを構成する振動パターンの各々と、は振幅又はゲインの少なくとも一方が大きく異なるようにしておく。そして、第1振動パターンテーブルからランダムに選択された振動パターンを出力した後、第2の振動パターンテーブルからランダムに選択された振動パターンを出力する。その後、再び第1振動パターンテーブルからランダムに選択された振動パターンを出力し、これを繰り返すようにしてもよい。このように、第1、第2振動パターンテーブルから交互に振動パターンを出力することにより、ランダムに振動パターンを出力しても出力順が隣り合う振動パターンを大きく異ならせることができる。
【0046】
また、上述した実施例によれば、再生時間だけ連続する振動を1つの振動パターンとしていたが、これに限ったものではない。例えば、例えば、
図7に示すように、間欠振動を1つの振動パターンとしてもよい。同図に示すように、制御部320は、再生時間中、振動パターンテーブルに格納された周波数及びゲインの駆動信号を間欠的に出力している。もちろん、
図8に示すように、再生時間だけ連続する振動パターンと、再生時間中、間欠的に出力される振動パターンと、を組み合わせてもよい。
【0047】
また、上述した実施例によれば、複数の振動ユニット20に対して同じ駆動信号を供給していたが、これに限ったものではない。例えば、複数の振動パターンP1〜P15を背凭れ部12に設けた振動ユニット20と着座部11に設けた振動ユニット20とに交互に出力するようにしてもよい。具体的に説明すると、振動パターンP1の駆動信号を背凭れ部12に設けた振動ユニット20に出力した後、振動パターンP2の駆動信号を着座部11に設けた振動ユニット20に出力するようにする。その後、振動パターンP3の駆動信号を再び背凭れ部12に設けた振動ユニット20に出力し、以下これを繰り返す。
【0048】
また、複数の振動ユニット20のうち少なくとも一組は、各々出力する複数の振動パターンが互いに異なるようにしてもよい。例えば、背凭れ部12に設けた2つの振動ユニット20が出力する複数の振動パターンを同一、着座部11に設けた2つの振動ユニット20が出力する複数の振動パターンを同一にする。そして、背凭れ部12に設けた振動ユニット20が出力する複数の振動パターンと着座部11に設けた2つの振動ユニット20が出力する複数の振動パターンとが異なるようにしてもよい。
【0049】
この場合、互いに異なる背凭れ用振動パターンテーブル及び着座部用振動パターンテーブルを用意する。そして、背凭れ部12に設けた振動ユニット20には、背凭れ用振動パターンテーブルに応じた複数の振動パターンを順次出力し、着座部11に設けた振動ユニット20には着座部用振動パターンテーブルに従って複数の振動パターンを順次出力するようにしてもよい。この場合、背凭れ用振動パターンテーブル及び着座部用振動パターンテーブルは、全ての振動パターンが同じ、かつ、振動パターンの出力順が同一でなければよく、一部同じ振動パターンを採用してもよい。また、全ての振動パターンが同じであっても、出力順が異なっていればよい。また、4つの振動ユニット20が出力する複数の振動パターンが互いに異なっていてもよい。
【0050】
また、着座者がシートに着座する毎、又は、眠気又は漫然状態が検出される毎に、制御部320が、振動パターンテーブルが変更するようにしてもよい。この場合、例えば、複数の異なる振動パターンテーブルを用意する。そして、制御部320は、着座者がシートに着座する毎、又は、眠気又は漫然状態が検出される毎に、振動パターンテーブルを切り替える。これにより、着座者がシートに着座する毎、又は、眠気又は漫然状態が検出される毎に、複数の振動パターンが変更できる。
【0051】
また、着座者がシートに着座する毎、又は、眠気又は漫然状態が検出される毎に、制御部320は、乱数発生器を用いるなどして振動パターンP1〜P15をランダムに出力したものを振動パターンテーブルとして生成するようにしてもよい。
【0052】
また、上述した実施例によれば、心拍センサ310の出力により眠気又は漫然状態を検出していたが、これに限ったものではない。例えば、眼球の動きや顔の動きなど他の生体情報に基づいて眠気又は漫然状態を検出するようにしてもよい。また、ハンドル操作や、車両に搭載したカメラが撮影した画像から白線検出した結果に基づいて蛇行運転を検出することにより、眠気又は漫然状態を検出するようにしてもよい。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。