特許第6876414号(P6876414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876414
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】流体貯留容器の流体注入通路封止装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20210517BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20210517BHJP
   F16J 15/04 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B41J2/175 131
   B65D83/00 G
   F16J15/04 Z
   B41J2/175 119
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-226789(P2016-226789)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-83317(P2018-83317A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
(72)【発明者】
【氏名】成尾 元彰
(72)【発明者】
【氏名】足立 智大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 翔
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−153672(JP,A)
【文献】 特開2000−337541(JP,A)
【文献】 特開2012−172731(JP,A)
【文献】 特開2005−246782(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3053801(JP,U)
【文献】 実開昭55−028656(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01
B41J2/165−2/20
B41J2/21−2/215
E03C1/00−1/10
F16K27/00−27/12
B65D1/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯留容器が再使用することを想定しない使い捨て容器である場合であって、
貫通孔である流体注入通路を形成してある流体貯留容器の周壁に形成された封止孔と、当該封止孔に挿入可能な封止栓と、当該封止孔にねじ込まれた押込み体とを具備しており、
封止孔は、流体注入通路に交差する状態で当該流体注入通路を貫通して、一端部が閉塞されると共に他端部が流体貯留容器外に開口されたものであって、流体注入通路と交差する通路交差部と、当該通路交差部に連なって前記一端部側に設けられた第1嵌合部と、当該通路交差部に連なって前記他端部側に設けられた第2嵌合部と、第2嵌合部と前記他端部との間に形成された雌ねじ部とからなり、交差する流体注入通路の断面を包含する断面円形の直線状孔であり、
封止栓は、封止孔の通路交差部に嵌合された通路遮断栓部と、当該通路遮断栓部に連なって封止孔の第1嵌合部にシール状態で嵌合された第1栓部と、当該通路遮断栓部に連なって封止孔の第2嵌合部にシール状態で嵌合された第2栓部とからなる円柱形状をなすものであり、
押込み体は、封止栓を第2栓部側から押圧する状態で、封止孔の雌ねじ部にねじ込まれた雄ねじ体であって、封止栓を、第1栓部が流体注入通路内に突入することなく封止孔の第2嵌合部にシール状態で嵌合する注水位置から第1栓部及び第2栓部が封止孔の第1嵌合部及び第2嵌合部に夫々シール状態で嵌合すると共に通路遮断栓部が封止孔の通路交差部に嵌合して流体注入通路を遮断する封止位置へと押し込むものであることを特徴とする流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項2】
前記封止孔が前記流体注入通路に直交する状態で当該流体注入通路を貫通していることを特徴とする、請求項1に記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項3】
前記封止栓とこれを押圧する前記押込み体との接触面に、その中心部において凹凸係合する芯出し用の凹凸部が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項4】
前記流体貯留容器の周壁及び前記封止栓がプラスチック製のものであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項5】
前記封止栓がプラスチック製のものであり、当該封止栓の第1栓部が、当該第1栓部が前記封止孔の第1嵌合部の内周面に接触されたシール状態で、当該第1嵌合部に嵌合されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項6】
前記封止栓がプラスチック製のものであり、当該封止栓の第1栓部が、外周面に環状のヒレを一体形成してなるものであり、当該第1栓部が、当該ヒレが前記封止孔の第1嵌合部の内周面に接触されたシール状態で、当該第1嵌合部に嵌合されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項7】
前記封止栓の第1栓部が外周面にOリングを係合保持してなるものであって、当該第1栓部が、当該Oリングを介して前記封止孔の第1嵌合部にシール状態で嵌合されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項8】
前記封止栓がプラスチック製のものであり、当該封止栓の第2栓部が、当該第2栓部が前記封止孔の第2嵌合部の内周面に接触されたシール状態で、当該第2嵌合部に嵌合されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項9】
前記封止栓の第2栓部と前記封止孔の第2嵌合部との嵌合面が、当該封止孔の開口部に向かって漸次拡大するテーパ面に形成されていることを特徴とする、請求項8に記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項10】
前記封止栓の第2栓部が外周面にOリングを係合保持してなるものであって、当該第2栓部が、当該Oリングを介して前記封止孔の第2嵌合部にシール状態で嵌合されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【請求項11】
前記押込み体が、前記封止孔の他端部である開口部から露出しない状態で、封止孔の雌ねじ部にねじ込まれていることを特徴とする、請求項1〜10の何れかに記載する流体貯留容器の流体注入通路封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液やインクジェットプリンター用インク等の流体を貯留する流体貯留容器に装備され、流体の注入後において流体注入通路を封止しておくための流体貯留容器の流体注入通路封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液やインクジェットプリンター用インク等の流体を貯留する流体貯留容器にあっては、当該流体貯留容器にその周壁に貫通状に形成した流体注入通路から流体を注入、貯留させた後、当該流体注入通路の開口部を、例えば、特許文献1の図2又は特許文献2の図2に開示される如く、キャップや栓等で構成される流体注入通路封止装置により封止しておくことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−237650号公報
【特許文献2】特開2007−326256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような流体注入通路封止装置にあっては、流体注入通路の開口部をキャップや栓等により封止するため、流体貯留容器への流体注入完了後に当該開口部にキャップや栓等を装着する際に、流体注入用チューブ等を当該開口部から取り外す必要があるため、注入した流体が当該開口部を通じて大気に晒されてしまうことになる。したがって、空気との接触を嫌う流体である場合には、流体貯留容器内の流体が変質、劣化する等の問題が生じる虞れがあった。
【0005】
また、流体貯留容器の搬送時又は当該容器を装備する機器への取り付け、取り外し時において、キャップや栓等が流体注入通路の開口部から不測に外れて封止機能が低下、喪失する虞れがあった。
【0006】
また流体貯留容器が流体消耗後は再使用しない使い捨て容器である場合にあっては、ユーザがキャップや栓等を容易に取り外すことができるため、流体が消耗したときに不適正な代替流体を補充するような不正な再利用を行う虞れがあった。
【0007】
本発明は、このような問題を生じることなく、流体を適切に封入することができる流体貯留容器の流体注入通路封止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成すべく、
貫通孔である流体注入通路を形成してある流体貯留容器の周壁に形成された封止孔と、当該封止孔に挿入可能な封止栓と、当該封止孔にねじ込まれた押込み体とを具備しており、
封止孔は、流体注入通路に交差する状態で当該流体注入通路を貫通して、一端部が閉塞されると共に他端部が流体貯留容器外に開口されたものであって、流体注入通路と交差する通路交差部と、当該通路交差部に連なって前記一端部側に設けられた第1嵌合部と、当該通路交差部に連なって前記他端部側に設けられた第2嵌合部と、第2嵌合部と前記他端部との間に形成された雌ねじ部とからなり、交差する流体注入通路の断面を包含する断面円形の直線状孔であり、
封止栓は、封止孔の通路交差部に嵌合された通路遮断栓部と、当該通路遮断栓部に連なって封止孔の第1嵌合部にシール状態で嵌合された第1栓部と、当該通路遮断栓部に連なって封止孔の第2嵌合部にシール状態で嵌合された第2栓部とからなる円柱形状をなすものであり、
押込み体は、封止栓を第2栓部側から押圧する状態で、封止孔の雌ねじ部にねじ込まれた雄ねじ体であることを特徴とする流体貯留容器の流体注入通路封止装置を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体貯留容器の流体注入通路封止装置によれば、流体注入通路が封止孔の通路交差部に嵌合した封止栓の通路遮断栓部で遮断されると共に通路交差部の両側に位置する封止孔の第1及び第2嵌合部がこれらに嵌合する封止栓の第1及び第2栓部によってシールされることから、流体を流体貯留容器に適切に封入することができる。すなわち、流体注入通路をその開口部とは異なる位置で封止栓により遮断することから、当該開口部にキャップや栓等を装着する際に、流体注入用チューブ等を当該開口部から取り外す場合にも、流体注入通路が封止栓で閉塞されているため、注入した流体を大気に晒さずに流体貯留容器に封入することができる。また、封止栓が封止孔内に没入していて、押込み体が封止栓とは別体であることから、流体貯留容器の搬送時又は当該容器を装備する機器への取り付け、取り外し時において、仮に押込み体が脱離するようなことがあっても封止栓が封止孔から不測に脱離することがなく、封止栓による封止機能が低下、喪失することがない。さらに、流体貯留容器が使い捨て容器である場合にも、ユーザが容易に封止栓を取り外すことができないため、流体注入通路から流体貯留容器への新たな流体補充が封止栓により妨げられ、ユーザによって流体貯留容器が不正に再利用されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置の一例を示す断面図である。
図2図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3図3図1のIII −III 線に沿う断面図である。
図4図4は当該流体注入通路封止装置による封止作業の開始状態を示す図1対応の断面図である。
図5図5は当該流体注入通路封止装置による封止作業完了後において流体の再注入を試みた状態を示す図1対応の断面図である。
図6図6は本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置の変形例を示す図1相当の断面図である。
図7図7図6のVII −VII 線に沿う断面図である。
図8図8図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図9図9は本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置の他の変形例を示す図6相当の断面図である。
図10図10は本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置の更に他の変形例を示す図6相当の断面図である。
図11図11は本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置の更に他の変形例を示す図6相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置を図面に基づいて具体的に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置の一例を示す断面図であり、図2図1のII−II線に沿う断面図であり、図3図1のIII −III 線に沿う断面図であり、図4は当該流体注入通路封止装置による封止作業の開始状態を示す図1対応の断面図であり、図5は当該流体注入通路封止装置による封止作業完了後において流体の再注入を試みた状態を示す図1対応の断面図である。なお、以下の説明において、上下とは図1図2及び図4における上下をいい、左右とは図1図3及び図4における左右をいうものとする。
【0013】
図1に示す如く、本発明に係る流体貯留容器の流体注入通路封止装置は、流体注入通路1を形成してある流体貯留容器2の周壁3に形成された封止孔4と、封止孔4に挿入可能な封止栓5と、封止孔4にねじ込まれた押込み体6とを具備するものである。
【0014】
流体貯留容器2は薬液やインクジェットプリンター用インク等の流体Fを貯留するプラスチック製の密閉容器であり、流体Fを消耗した使用後は再利用されることなく廃棄処分される使い捨て容器である。流体貯留容器2の周壁(この例では上部壁3)には、図1及び図2に示す如く、上部壁3を上下方向に貫通して直線状に延びる貫通孔である流体注入通路1が形成されている。この例では、流体注入通路1が断面円形の貫通孔であり、流体注入通路1の開口部(容器外側開口部)3aが上部壁3に突出形成された円筒状部で構成されている。この開口部3aの内周部には、図1又は図4に示す如く、流体注入通路1を閉塞するキャップ体7(図1参照)又は流体注入用チューブ(PFA製チューブ等)8の先端部及びこれに差し込んだチューブ固定用スリーブ9(図4参照)が嵌合されるようになっており、当該開口部3aの外周部には、当該キャップ体7又は流体注入用チューブ8の先端部(及びチューブ固定用スリーブ9)を開口部3aに連結、固定するためのユニオンナット10が螺合されるようになっている。
【0015】
すなわち、流体貯留容器2に流体Fを注入、貯留する場合には、図4に示す如く、流体注入用チューブ8の先端部にチューブ固定用スリーブ9を圧入させた上、当該先端部及びチューブ固定用スリーブ9を開口部3aの内周部に嵌合させた状態でユニオンナット10を締め付けることにより、流体注入用チューブ8を流体注入通路1の開口部3aにシール状態で接続し、流体Fを流体注入用チューブ8から流体貯留容器2内に注入する。そして、流体Fの流体貯留容器2への注入、貯留が完了した後は、ユニオンナット10を外して、流体注入用チューブ8及びこれに嵌合させたチューブ固定用スリーブ9を開口部3aから引き抜いた上、図1に示す如く、開口部3aにキャップ体7を嵌合させると共にユニオンナット10を締め付けることにより流体注入通路1を閉塞しておくのである。
【0016】
封止孔4は、図1及び図2に示す如く、流体注入通路1に交差する状態で当該流体注入通路1を左右に貫通して、一端部(右端部)4aが閉塞されると共に他端部(左端部)4bが流体貯留容器2外に開口されたものであって、交差する流体注入通路1の断面を包含する断面円形の直線状孔である。この例では、封止孔4は、内径(孔径)を流体注入通路1の内径(流路径)と同一径又はこれより大径とする断面円形の直線状孔であり、図1に示す如く、流体注入通路1に直交する状態で流体注入通路1を貫通している。
【0017】
而して、封止孔4は、流体注入通路1と交差する通路交差部41と、通路交差部41に連なって一端部4a側に設けられた第1嵌合部42と、通路交差部41に連なって他端部4b側に設けられた第2嵌合部43と、第2嵌合部43と他端部(開口部)4bとの間に形成された雌ねじ部44とからなる。
【0018】
通路交差部41は、図1図3に示す如く、流体注入通路1の内径より大径をなす円柱状孔である。第1嵌合部42は、図1及び図3に示す如く、通路交差部41の前記一端部4a側(右端部側)に同心状に連なっており、通路交差部41と同一径をなす断面円形の凹部である。第2嵌合部43は、図1及び図3に示す如く、通路交差部41の前記他端部4b側(左端部側)に同心状に連なる円柱状孔であって、通路交差部41に連なって通路交差部41(及び第1嵌合部42)と同一径をなす第1円柱状孔部43aと、第1円柱状孔部43aに同心状に連なって内周面を封止孔4の開口部4b方向(左方向)に漸次拡径するテーパ面とするシール孔部43bと、シール孔部43bと雌ねじ部44とに連らなって両者43b,44間に設けられる第2円柱状孔部43cとからなる。第2円柱状孔部43cの内径は、シール孔部43bの最大径(シール孔部43bの左端部の径)より若干大径とされている。雌ねじ部44は、図1及び図3に示す如く、第2嵌合部43の第2円柱状孔部43cと同一径又はこれより大径をなして第2嵌合部43に同心状に連なる雌ねじ孔である。
【0019】
封止栓5は、図1及び図3に示す如く、封止孔4の第1嵌合部42及び第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aにシール状態で嵌合しうる第1栓部51と、第1栓部51に同心状に連なって封止孔4の通路交差部41に密に嵌合しうる通路遮断栓部52と、通路遮断栓部52に同心状に連なって封止孔4の第2嵌合部43に密に嵌合しうる第2栓部53とを具備するプラスチック製の円柱形状をなすものである。
【0020】
封止栓5の第1栓部51は、図1図3及び図4に示す如く、外径を封止孔4の第1嵌合部42及び第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aの内径と同一又はこれより僅かに大径に設定した円柱形状をなすもので、後述する如く、押込み体6により封止栓5を封止孔4に押し込むことにより、第1栓部51がその素材(プラスチック)の弾性により第1嵌合部42及び第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aの内周面に密に接触(圧接)したシール状態で、第1嵌合部42又は第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aに嵌合しうるようになっている。
【0021】
封止栓5の通路遮断栓部52は、図1図3に示す如く、外径を第1栓部51と同一径に設定した円柱形状をなすもので、流体注入通路1を遮断する状態で、封止孔4の通路交差部41に密に嵌合しうるようになっている。
【0022】
封止栓5の第2栓部53は、図1図3に示す如く、通路遮断栓部52に連なって封止孔4の第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aに嵌合しうる第1円柱状部53aと、第1円柱状部53aに連なって外周面を当該第2嵌合部43のシール孔部43bの内周面と同様のテーパ面となす截頭円錐形状のシール部53bと、シール部53bに連なって当該第2嵌合部43の第2円柱状孔部43cにこれと接触することなく嵌合する第2円柱状部53cとからなり、後述する如く、押込み体6により封止栓5を封止孔4に押し込むことにより、第2栓部53のシール部53bがその素材(プラスチック)の弾性により封止孔4の第1嵌合部42のシール孔部43cの内周面に密に接触(圧接)したシール状態で、封止孔4の第2嵌合部43に嵌合されるようになっている。すなわち、封止栓5の第2栓部53と封止孔4の第2嵌合部43との嵌合面(第2栓部53のシール部53bと第2嵌合部43のシール孔部43bとの嵌合面)が封止孔4の開口部4bに向かって漸次拡大するテーパ面に形成されていることによって、両部43,53がシール状態で嵌合するようになっている。
【0023】
押込み体6は、基端面にドライバー、六角レンチ等の回転操作具の先端部を係合させるマイナス溝、プラス溝又は六角孔等の係合凹部6aが形成された止めねじである。この例では、押込み体6として、図1図3に示す如く、基端面にマイナス溝6aが形成されたすりわり付止めねじを使用している。
【0024】
押込み体6は、封止栓5の第2栓部53に接触させた状態でマイナス溝6aに係合させたマイナスドライバーにより封止栓5の雌ねじ部44にねじ込んでいくことにより、封止栓5を、図4に示す如く、第1栓部51が流体注入通路1内に突入することなく封止孔4の第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aにシール状態で嵌合する位置(以下「注入位置」という)へと押込むことができ、更に図1及び図3に示す如く、第1及び第2栓部51,53が封止孔4の第1及び第2嵌合部42,43にシール状態で嵌合すると共に通路遮断栓部52が封止孔4の通路交差部41に嵌合して流体注入通路1を遮断する位置(以下「封止位置」という)へと押し込むことができる。すなわち、押込み体6の雌ねじ部44へのねじ込み量を調節することにより、封止栓5を押込み体6による押圧作用により当該注入位置又は封止位置に保持させておくことができるようになっている。
【0025】
この例では、押込み体6の軸線方向長さは封止孔4の雌ねじ部44の軸線方向長さより小さく設定されていて、封止栓5を前記封止位置に押し込んだ状態においては、図1及び図3に示す如く、押込み体6が封止孔4の開口部4bから露出しないように工夫されている。
【0026】
また、この例では、封止栓4とこれを押圧する押込み体6との接触面に、その中心部において凹凸係合する芯出し用の凹凸部6b,53dが形成されている。すなわち、図1図3に示す如く、封止栓5の基端面(左端面)の中心部に円柱状の凸部53dを一体形成すると共に押込み体6の先端面(右端面)の中心部に当該凸部53dが係合する断面円形の凹部6bを形成してある。而して、図4に示す如く、押込み体6を、その凹部6bに封止栓5の凸部53dを係合させた状態で封止孔4にねじ込んでいくことにより、封止栓5を押込み体6及び封止孔4と同心に保持した状態で移動させることができ、封止栓5を前記注入位置及び封止位置に円滑且つ容易に押し込むことができるように工夫されている。
【0027】
以上のように構成された本発明の封止装置にあっては、流体Fを大気と接触させることなく流体貯留容器2に適正に封入させることができる。
【0028】
すなわち、図4に示す如く、流体注入通路1の開口部3aにこれに締め付けたユニオンナット10により流体注入用チューブ8の先端部をシール状態で接続し、流体注入用チューブ8から流体貯留容器2に流体Fを大気に触れない状態で注入する。
【0029】
このとき、封止栓5を押込み体6により前記注入位置に押し込んでおくことによって、流体Fの流体貯留容器2への注入を、流体Fが当該容器2外に漏れたり、大気と接触することなく、円滑且つ良好に行うことができる。すなわち、封止栓5が、図4に示す如く、注入位置に位置された状態では、第1栓部51が流体注入通路1内に突入していないため、流体注入通路1から流体貯留容器2への流体Fの注入が封止栓5によって妨げられることなく円滑に行われると共に、封止栓5の第1栓部51が封止孔4の第2嵌合部43の第1円柱状孔部43aにシール状態で嵌合していることから、流体Fが流体注入通路1から封止孔4を介して流体貯留容器2外に漏れたり、大気と接触することがない。
【0030】
そして、流体Fの注入が完了すると、封止栓5を押込み体6により前記注入位置から前記封止位置へと押し込んだ上で、ユニオンナット10を外して流体注入通路1の開口部3aから流体注入用チューブ8(及びチューブ固定用スリーブ9)を引き抜き、更にキャップ体7を流体注入通路1の開口部3aに嵌合させた上、ユニオンナット10を当該開口部3aに再び螺合させて締め付けることにより、当該開口部3aをキャップ体7により閉塞する。
【0031】
このとき、封止栓5が押込み体6により前記封止位置に押し込まれていることにより、流体注入通路1の開口部3aがユニオンナット10、流体注入用チューブ8及びキャップ体7の取付け、取外し時において大気に開放されるにも拘わらず、流体貯留容器2内の流体Fが大気と接触することがない。
【0032】
すなわち、封止栓5が、図1図3に示す如く、封入位置に位置された状態では、封止栓5の通路遮断栓部52が封止孔4の通路交差部41に密に嵌合して、流体注入通路1を完全に遮断すると共に、当該通路交差部41の両側に位置する封止孔4の第1及び第2嵌合部42,43が封止栓5の第1及び第2栓部51,53によってシールされていることから、流体注入通路1はその開口部3aから離れた位置で封止栓5によって封止され、上記したユニオンナット10、流体注入用チューブ8及びキャップ体7の取付け、取外し時において流体注入通路1の開口部3aが開放されても、流体貯留容器2内の流体Fが大気と接触することがない。したがって、流体Fが大気との接触により変質、劣化する虞れのある液体等である場合にも、流体Fの注入、封入を適正に行うことができる。
【0033】
また、封止栓5が前記封止位置に位置された状態では、封止栓5がこれとは別体の押込み体6により封止孔4の開口部4bから離れた位置に没入されていることから、流体貯留容器2の搬送時又は当該容器2を装備する機器への取り付け、取り外し時において、仮に押込み体6が図5に示す如く封止孔4から脱離するようなことがあっても封止栓5が封止孔4から不測に脱離することがなく、封止栓4による封止機能が低下、喪失することがない。特に、封止栓5を前記封止位置に押し込んだ状態において、図1及び図3に示す如く、押込み体6が封止孔4の開口部4bから露出しないように工夫されている場合には、押込み体6が封止孔4から容易に離脱することがなく、封止栓5による封止機能がより確実に発揮される。
【0034】
また流体貯留容器2が再使用することを想定しない使い捨て容器である場合にあって、ユーザが流体Fの消耗した当該容器2に不適正な代替流体を補充するような不正な再利用を試みた場合にも、かかる不正な再利用を防止することができる。すなわち、キャップ体7(及びユニオンナット10)を取り外した場合は勿論、図5に示す如く、押込み体6を封止孔4から取り外した場合にも、封止栓5が封止孔4の奥深くに位置していて封止孔4から取り出すことができないため、流体注入通路1から流体貯留容器2への流体補充が封止栓5により妨げられ、流体Fが消耗した流体貯留容器2を不正に再利用することはできない。
【0035】
なお、本発明の流体貯留容器の流体注入通路封止装置は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良、変更することができる。
【0036】
例えば、本発明の流体貯留容器の流体注入通路封止装置は、図6図8図9図10又は図11に示す如く構成しておくことができる。
【0037】
すなわち、図6図8に示す流体注入通路封止装置にあっては、封止栓5の通路遮断栓部52(及び第2栓部53の第2円柱状部53a)の外径を封止孔4の通路交差部41(及び第2嵌合部43の第1円柱状孔部43a)の内径より小径として、封止孔4における封止栓5の前記封止位置への押込みをより容易ならしめるように図っている。勿論、封止栓5の通路遮断栓部52の外径は流体注入通路1の内径と同一又はこれより大径とされている。なお、かかる点以外の構成については、図1図5に示す流体注入通路封止装置と同一である。
【0038】
また、図9に示す流体注入通路封止装置にあっては、封止栓5の第1栓部51を外周面に環状のヒレ51aを一体形成してなるものに構成してある。ヒレ51aは、外径を封止孔4の第1嵌合部42の内径より若干大きくしたもので、第12栓部51を第1嵌合部42に押し込んだ場合に、素材(プラスチック)の弾性により第1嵌合部42の内周面に接触(圧接)すべく縮径変形して、第1栓部51が第2嵌合部43にシール状態で嵌合されるものである。なお、かかる点以外の構成については、図6図8に示す流体注入通路封止装置と同一である。
【0039】
また、図10に示す流体注入通路封止装置にあっては、封止栓5の第1栓部51が、外周面にOリング51bを係合保持してなるものに構成されていて、当該Oリング51bを介して封止孔4の第1嵌合部42にシール状態で嵌合されるようになっている。なお、かかる点以外の構成は、図9に示す流体注入通路封止装置と同一である。
【0040】
また、図11に示す流体注入通路封止装置にあっては、封止栓5の第2栓部53が、外周面にOリング53eを係合保持してなるものに構成されていて、当該Oリング53eを介して封止孔4の第2嵌合部43にシール状態で嵌合されるようになっている。なお、かかる点以外の構成は、図10に示す流体注入通路封止装置と同一である。
【0041】
また、封止栓5の第1及び第2栓部51,52は、図1図6及び図9図11に示すものを適宜に組み合わせた形状とすることができる。例えば、図11に示す流体注入通路封止装置において、第1栓部51を図9に示すヒレ51aを有するものに構成しておくことができる。
【0042】
また、封止孔4の通路交差部41の内径(孔径)及び封止栓5の通路遮断栓部52の外径は、流体注入通路1の内径(流路径)以上であればよく、流体注入通路1の内径と同一としておくこともできる。
【0043】
また、流体注入通路1の断面形状は、円形に限られるものではなく、矩形等の他の形状であってもよい。この場合に、封止孔4の通路交差部41の内径及び封止栓5の通路遮断栓部52の外径は、流体注入通路1の断面を包含する内径以上とする。
【0044】
また、封止栓5はプラスチックで構成しておくことが好ましいが、図11に示す流体注入通路封止装置のように、第1及び第2栓部51,53を係止孔4の第1及び第2嵌合部42,43にシール状態で嵌合させておく手段として、素材の弾性を利用しないOリング51b,53eを使用する場合には、封止栓5をプラスチック以外の金属等で構成しておくことが可能である。また、流体貯留容器2ないし流体注入通路1を形成する周壁3もプラスチックで構成されたものであることが好ましいが、Oリング51b,51eを使用する場合には、これらをプラスチック以外の金属等で構成しておくことが可能である。また、流体注入通路1が形成される流体貯留容器2の周壁は、上記した上部壁3に限定されず、容器形状ないし容器装備機器の構造、形態によっては上部壁3以外であってもよい。さらに、容器形状ないし容器装備機器の構造、形態によっては、封止孔4を流体注入通路1と直交以外の角度で交差するものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 流体注入通路
2 流体貯留容器
3 流体貯留容器の上部壁(流体注入通路が形成された周壁)
4 封止孔
4a 封止孔の一端部
4b 封止孔の開口部(封止孔の他端部)
5 封止栓
6 押込み体(雄ねじ体)
41 通路交差部
42 第1嵌合部
43 第2嵌合部
44 雌ねじ部
51 第1栓部
52 通路遮断栓部
53 第2栓部
F 流体
図1
図2
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図11