特許第6876421号(P6876421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876421
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】折板屋根改修工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/00 20060101AFI20210517BHJP
   E04D 3/36 20060101ALI20210517BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   E04D3/00 T
   E04D3/36 A
   E04G23/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-239597(P2016-239597)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-96062(P2018-96062A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】福原 正
(72)【発明者】
【氏名】北村 雄
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−038248(JP,A)
【文献】 特開2016−003487(JP,A)
【文献】 特開2016−006271(JP,A)
【文献】 特開平07−018793(JP,A)
【文献】 特開平06−277936(JP,A)
【文献】 実開平04−089617(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0094926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00
E04D 3/36
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造材上に所定間隔に配置された二本の脚部と頂部とを有する台形状の既設タイトフレームと、該既設タイトフレームに支持された既設の折板屋根板材とを備えた既設折板屋根において、前記既設タイトフレームから既設の前記折板屋根板材を取り外し、固定刃が装着された受け部を有するホルダ部と、可動刃を有し且つ前記ホルダ部に装着される油圧シリンダ部とを備え該油圧シリンダ部の作動にて往復動する前記可動刃が前記固定刃に対して噛合い且つ離間する切断機を使用して、前記既設タイトフレームの両脚部を切断し、前記既設構造材上には前記既設タイトフレームの残存部分を残し、前記既設構造材のフランジ上に残された前記残存部分の両脚部間には、空隙が形成され、前記既設構造材上の前記既設タイトフレームの高さ方向を低くなるように修め、前記既設構造材上の前記空隙には無溶接手段にて装着可能な改修タイトフレームを装着し、該改修タイトフレームを介して改修用の折板屋根板材を装着して改修折板屋根を施工してなることを特徴とする折板屋根改修工法。
【請求項2】
請求項1において、前記切断機の前記ホルダ部は、前記油圧シリンダ部の軸方向に平行状に並設される構成としてなることを特徴とする折板屋根改修工法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記既設タイトフレームの両前記脚部を切断して前記頂部を撤去し、前記既設構造材上には両前記脚部の一部を残してなることを特徴とする折板屋根改修工法。
【請求項4】
請求項1,2又は3の何れか1項において、前記既設タイトフレームの切断箇所は前記脚部の前記既設構造材との付根付近としてなることを特徴とする折板屋根改修工法。
【請求項5】
請求項1,2又は3の何れか1項において、前記既設タイトフレームの切断箇所は前記脚部の上端付近とし、該脚部切断後に対向する前記脚部を前記既設構造材上に倒してなることを特徴とする折板屋根改修工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設屋根を撤去しつつ改修屋根又は新設折板屋根を効率的に施工することができる折板屋根改修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、過去に建設した多くの建築物が一斉に老朽化し、このような老朽化した建築物が増加する傾向にある。特に、屋根は、最も過酷な条件に晒されているため、他の部分に比較して特に老朽化の度合いが激しいものである。そこで、今後、このような老朽化した建築物の改修工事の増加が見込まれている。
【0003】
特に、老朽化した金属製の折板屋根が増加しており、その改修が必要とされている。その改修には、種々の工法が存在している。改修工事は、一般的に、既設の屋根の上にそのまま新たな屋根を施工したり、或いは既設屋根を撤去してから改修折板屋根(新設折板屋根)を施工するものである。例えば、既設の屋根の上にそのまま新たな屋根を施工するタイプとして、特許文献1が存在する。
【0004】
既設屋根の上に改修(新設)屋根を葺成するタイプは、簡単且つ低価格にできることから多く使用されている。このように既設屋根上に改修(新設)屋根を葺成することが多く採用され、この種の技術開発も多く行われている。しかし、改修工事を行うための条件として、既設屋根を支持する既設のタイトフレームが長年にわたる使用であっても、まだ継続して十分に使用できるものであるか否か等の種々の条件がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−40720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対して、極めて老朽化した既設屋根全体又は一部撤去したまま、該既設屋根上に改修(新設)屋根を葺成することが危険且つ不都合な場合も存在する。例えば、工場,倉庫等における既設屋根の下に天井板等が備わっていない建築物では、老朽化した既設屋根を構成する金属製の折板屋根板材或いはこれに関連する部品等が腐食し、その一部が室内に落下するおそれがある。
【0007】
このような状態では、建築物内部で作業員は危険な状況で作業することになる。そこで、既設の折板屋根板材だけを取り外し、改修(新設)折板屋根板材を葺く方法と、既設タイトフレームごと取り外し、改修する方法が存在する。既設タイトフレームの老朽化により、再利用が不可能であることが確認された場合は、後者の方法を選択することになる。
【0008】
しかし、金属製屋根を有する古い建物では、金属屋根板を支持するタイトフレームは梁又は母屋等の鉄骨既設構造材に対して溶接にて固着されていることが多い。そのため、タイトフレームを既設構造材から撤去する作業は、溶接部分を外すための切断時に火花が発生したり、撤去物が高所から落下する等のことで、作業員及び周辺の人々に対して極めて危険で安全確保が極めて困難となり、またコストも高くなるものであった。そこで、本発明の目的は、既設の金属折板屋根を構成する部材の撤去を必要最小限に抑え、改修屋根(新設折板屋根と称してもよい)を効率的に葺成することができる改修折板屋根工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、既設構造材上に所定間隔に配置された二本の脚部と頂部とを有する台形状の既設タイトフレームと、該既設タイトフレームに支持された既設の折板屋根板材とを備えた既設折板屋根において、前記既設タイトフレームから既設の前記折板屋根板材を取り外し、固定刃が装着された受け部を有するホルダ部と、可動刃を有し且つ前記ホルダ部に装着される油圧シリンダ部とを備え該油圧シリンダ部の作動にて往復動する前記可動刃が前記固定刃に対して噛合い且つ離間する切断機を使用して、前記既設タイトフレームの両脚部を切断し、前記既設構造材上には前記既設タイトフレームの残存部分を残し、前記既設構造材のフランジ上に残された前記残存部分の両脚部間には、空隙が形成され、前記既設構造材上の前記既設タイトフレームの高さ方向を低くなるように修め、前記既設構造材上の前記空隙には無溶接手段にて装着可能な改修タイトフレームを装着し、該改修タイトフレームを介して改修用の折板屋根板材を装着して改修折板屋根を施工してなる折板屋根改修工法としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項2の発明を、請求項1において、前記切断機の前記ホルダ部は、前記油圧シリンダ部の軸方向に平行状に並設される構成としてなる折板屋根改修工法としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記既設タイトフレームの両前記脚部を切断して前記頂部を撤去し、前記既設構造材上には両前記脚部の一部を残してなる折板屋根改修工法としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項において、前記既設タイトフレームの切断箇所は前記脚部の前記既設構造材との付根付近としてなることを特徴とする折板屋根改修工法としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項5の発明を、既設タイトフレームの切断箇所は前記脚部の上端付近とし、該脚部切断後に対向する前記脚部を前記既設構造材上に倒してなる折板屋根改修工法としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、既設構造材上に所定間隔に配置された二本の脚部と頂部とを有する台形状の既設タイトフレームから折板屋根板材を取り外した後、既設タイトフレームの少なくとも一箇所を切断して、両脚部を互いに相手側に向かって押し倒す等の処理を行い、既設タイトフレームを高さ方向に低く修める。前記既設タイトフレームの少なくとも一箇所を切断する切断機は、受け部を有するホルダ部と、可動刃を有し且つ前記ホルダ部に装着される油圧シリンダ部とを備え該油圧シリンダ部が油圧にて往復動することにより前記可動刃が前記受け部に対して噛合い且つ離間する構造としたものである。
【0014】
したがって、前記既設タイトフレームに対する前記切断機による切断法は剪断となり、切断工程において切り屑,騒音及び火花を生じないようにすることができる。これによって、既設タイトフレームの切断作業を無騒音且つ安全に行うことができる。さらに、既設タイトフレームは、切断機の可動刃の往復動による固定刃との噛み合いにより剪断されることになるので、切断部分は比較的整然とした形状となり、既設タイトフレームの撤去部位は安全に廃棄することができる。
【0015】
そして、既設構造材上には無溶接手段(溶接を使用しない装着手段)にて装着可能な改修タイトフレームを装着し、該改修タイトフレームを介して改修折板屋根板材を装着してなる折板屋根改修工法とした。これにより、前記既設タイトフレームは、その一部を切断して撤去するものであり、既設タイトフレームは、最小限の撤去作業にて改修(新設)折板屋根を施工することができる。これにより、改修工事を簡単にすると共に、この工事に係る作業員の負担を大幅に減少し、安全性についてもより一層確保することができる。
【0016】
さらに、請求項1の発明では、前記改修タイトフレームは前記既設タイトフレームの対向する両前記脚部間となる位置に装着されることにより、改修(新設)折板屋根を構成する改修(新設)折板屋根板材と、既設折板屋根の既設折板屋根板材との位置は略同一位置とすることができ、撤去前の既設折板屋根と略同等の構成とした改修(新設)折板屋根の施工を簡単にすることができる。
【0017】
またさらに、請求項1の発明では、記既設タイトフレームの対向する両前記脚部間となる位置に無溶接手段により装着可能な改修タイトフレームを設置するものである。そのため、既設タイトフレームの切断された両脚部の間の空隙部の位置においては、既設構造材のフランジ上には既設タイトフレームの残部は存在せず、改修タイトフレームのフランジ上への設置は極めて簡単且つ迅速にできる。
【0018】
請求項2の発明では、前記切断機の前記ホルダ部は、前記油圧シリンダ部の軸方向に平行状に並設される構成としたことにより、既設構造材上の既設タイトフレームの任意の箇所を切断するときに、ホルダ部を既設構造材の長手方向(Y方向)に沿って平行に配置しつつ切断することにより、作業員は切断機を既設構造材に極めて近い位置で使用できるので作業の安全を確保し、且つ既設タイトフレームの切断作業の効率をより一層向上させることができる。
【0019】
請求項3の発明では、前記既設タイトフレームの両前記脚部を切断して前記頂部を撤去し、前記既設構造材上には両前記脚部の一部を残してなる折板屋根改修工法により、既設タイトフレームの頂部箇所が完全に撤去されるものであり、既設タイトフレームの切断後における高さ位置を低く修める作業を簡単にできる。
【0020】
請求項4の発明では、既設タイトフレームの切断箇所は前記脚部の前記既設構造材との付根付近としたことにより、タイトフレームは既設構造材上から略全体が撤去されることになり、切断と同時に既設タイトフレームを低く修める処理を完了することができ、施工効率を向上させることができる。
【0021】
請求項5の発明では、前記既設タイトフレームの切断箇所は前記脚部の上端付近とし、該脚部切断後に対向する前記脚部を前記既設構造材上に倒したことにより、両脚部の切断を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)乃至(E)は本発明の切断の第1実施形態に基づいて馳締タイプの改修折板屋根を施工する工程を示す正面図である。
図2】(A)は既設タイトフレームの両脚部を第1実施形態の切断方法にて切断した拡大正面図、(B)は既設タイトフレームの両脚部が切断された状態を示す拡大正面図、(C)は既設構造材のフランジに改修タイトフレームを装着した状態の拡大正面図である。
図3】(A)は既設タイトフレームの両脚部が本発明の第2実施形態の切断方法にて切断された状態を示す拡大正面図、(B)は既設構造材のフランジに改修タイトフレームを装着すると共に残存する両脚部を少し押し倒した状態の拡大正面図、(C)は本発明の第2実施形態に基づいて改修した改修折板屋根の正面図である。
図4】(A)は改修タイトフレームの斜視図、(B)は改修タイトフレームの側面図、(C)は改修タイトフレームを既設構造材のフランジに装着した状態の一部断面を有する要部側面図である。
図5】(A)乃至(D)は本発明の切断の第1実施形態に基づいて重合タイプの改修折板屋根を施工する工程を示す正面図である。
図6】(A),(B)は本発明の第3実施形態の切断方法にて切断した正面図、(B)は既設構造材のフランジに改修タイトフレームを装着した状態の正面図である。
図7】本発明において撤去された既設タイトフレームで且つ既設構造材上に残存する脚部下端の脚座板の一部上に改修タイトフレームが設置された実施形態の正面図。
図8】(A)は切断機装置の構成を示す側面図、(B)は切断機の構成を示す平面図、(C)は切断機の構成を示す斜視図である。
図9】(A)は切断機にて既設構造材上の既設タイトフレームの脚部を切断する状態の斜視図、(B)は切断機にて既設構造材上の既設タイトフレームの脚部を切断している状態の要部平面図、(C)は切断機にて既設構造材上の既設タイトフレームの脚部を切断完了した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本発明には、複数の実施形態が存在する。本発明は、既設の既設折板屋根Aの解体工程と改修折板屋根Bの施工工程の二つの工程を備えたものである(図1参照)。ここで、改修折板屋根Bは、新設折板屋根Bと称してもかまわない。
【0024】
既設折板屋根Aは、既設の折板屋根板材1,既設タイトフレーム2を備えている。改修折板屋根Bは、無溶接(溶接を使用しない装着手段)にて既設構造材4に装着できる改修タイトフレームB1と、改修(新設)用の折板屋根板材5とを備えたものである。既設構
造材4は、既設折板屋根Aの撤去後、改修折板屋根Bの施工に使用される(図1参照)。
【0025】
既設折板屋根A及び改修折板屋根Bは、種々の折板タイプが存在するものであり、馳締タイプ(図1参照)及び台形状の山形部同士を重合して連結する重合タイプ(図5参照)等が存在する。既設折板屋根Aを構成する折板屋根板材1と、改修折板屋根Bを構成する折板屋根板材5とは、共に同一構造である。
【0026】
ここでは、既設折板屋根Aと改修折板屋根Bとを構成するそれぞれの折板屋根板材を区別するために、既設折板屋根Aを構成する既設の折板屋根板材を単に折板屋根板材1と称し、改修折板屋根Bを構成する改修用又は新設用の折板屋根板材を単に折板屋根板材5と称する。
【0027】
既設折板屋根Aは、母屋等の既設構造材4上に既設タイトフレーム2と吊子3とを介して馳締タイプの屋根として施工されたものである。ここで、折板屋根板材1及び折板屋根板材5は、その長手方向をX方向とし、長手方向に直交する方向をY方向と称する。本発明においては、折板屋根板材1及び折板屋根板材5のY方向は、幅方向となる(図1乃至図3等参照)。
【0028】
主板11のY方向(幅方向)両側部分より立上り側部12,12が形成され、両立上り側部12,12の両端より頂部13,13が形成され、該頂部13,13の一方の端から下馳部14aが形成され,他方の頂部13の端には上馳部14bが形成されている(図1参照)。
【0029】
また、改修折板屋根Bを構成する折板屋根板材5は、主板51のY方向(幅方向)両側部分より立上り側部52,52が形成され、両立上り側部52,52の両端より頂部53,53が形成され、該頂部53,53の一方の端から下馳部54aが形成され,他方の頂部53の端には上馳部54bが形成されている〔図1(E),図3(C)等参照〕。
【0030】
既設構造材4のフランジ41のY方向に沿って所定間隔をおいて既設タイトフレーム2が装着されている。そして、既設タイトフレーム2,2,…に既設の折板屋根板材1,1…が複数並設される。隣接する折板屋根板1,1同士の下馳部14aと上馳部14bと
は、吊子3と共に馳締され、既設タイトフレーム2上に固定されている。このような構成にて既設折板屋根Aが構成されている〔図1(A)参照〕。既設構造材4は、型鋼であり、H形鋼,I型鋼又は溝形鋼等が使用される。
【0031】
重合タイプの既設折板屋根Aは、折板屋根板材1の主板11のY方向両側端に台形半山形状の山形部15,15を有している。そして、隣接する折板屋根板材1,1の山形部15,15同士を重合させて既設折板屋根Aが構成されている(図5参照)。この場合には、既設タイトフレーム2の頂部は平坦状に構成され、ボルト軸部23が設けられている。そして、山形部15,15の山頂部同士が重合されると共に、その山頂部同士に前記ボルト軸部23が貫通し、ナットがボルト軸部23に締め付けられて固定されている。
【0032】
同様に、改修折板屋根Bにおける折板屋根板材5についてもY方向両側に山形部55,55を有している。そして、隣接する折板屋根板材5,5の山形部55,55同士を重合させて改修折板屋根Bを施工するものである(図5参照)。この場合には、既設タイトフレーム2の頂部73は平坦状に構成され、該頂部73上にはボルト軸部74が設けられている。そして、山形部55,55の山頂部同士が重合されると共に、その山頂部同士に前記ボルト軸部74が貫通し、ナットがボルト軸部74に締め付けられて固定されている〔図5(D)参照〕。
【0033】
次に、既設折板屋根Aの解体工程と、改修折板屋根Bの施工工程との二つの工程について説明する。既設折板屋根Aの解体は、まず隣接する折板屋根板材1,1の下馳部14aと上馳部15bとを分離する〔図1(A),(B)参照〕。このとき、下馳部14a或いは上馳部14bから吊子3も分離される。既設構造材4のフランジ41上には多数の既設タイトフレーム2,2,…が残った状態にある〔図1(C)参照〕。
【0034】
既設タイトフレーム2は、2個の脚部21,21と、頂部22とから構成され、該頂部22,両脚部21,21とにより略台形状に構成されている。脚部21の下端には脚座板21aが形成されており、該脚座板21aが既設構造材4上に溶接にて固着されている〔図1(A),(B)参照〕。なお、既設タイトフレーム2は、単体としたものや、或いは複数個が前記脚座板21aにて連続する実施形態も存在する。
【0035】
既設タイトフレーム2は、少なくとも一部分が切断され、その切断と共に、既設タイトフレーム2を元の高さからその高さ方向において低くする処理が行われる。この高さ方向に低くする処理とは、既設タイトフレーム2が切断されて、既設構造材4上に残った既設タイトフレーム2の残存部分を、既設構造材4のフランジ41上に押し倒す等の変形手段にて、前記残存部分が高さ方向に低くなるようにすることをいう。既設タイトフレーム2に対する切断は、1箇所以上である。
【0036】
切断に使用される切断機9は、手持ちタイプで、小型且つ軽量であることが好ましい。切断機9の切断動作(手段)は、剪断とする。切断機9は、相互に可動する刃部材又は、一方を可動とし、他方を固定とした刃部材を備えたものが使用される。切断に使用する動力は、油圧機構,電動機構或いは手動によるものである。ここで、切断作業において、高速回転する円板状の砥石,鋸,ガスによる溶断等の高温、火花,切粉発生のあるものは、火災防止の観点から採用しない。
【0037】
以上の条件を満たす切断機9の構成は、受け部92を有するホルダ部91と、可動刃94を有し、且つ前記ホルダ部91に装着される油圧シリンダ部93と、可動刃94とを備えたものである(図8参照)。該油圧シリンダ部93はシリンダ筐体93aと該シリンダ筐体93aから出没するピストン93bとからなり、ピストン93bの先端に可動刃94が装着されている。ここで、切断機9において、ホルダ部91の長手方向をY方向とする。また、切断機9を上面つまり平面より見てY方向と直交する方向をX方向とする〔図8(B)参照〕。
【0038】
そして、前記油圧シリンダ部93の作動、つまりピストン93bが油圧にて往復動することにより前記可動刃94が前記受け部92に対して噛合い且つ離間する構造となっている。また、受け部92側には固定刃95が装着される。また、受け部92には固定刃95が装着されず、受け部92のみで前記可動刃94を受けつつ既設タイトフレーム2の切断しようとする箇所を切断することもある。
【0039】
切断機9は、ポンプ9P及びが該ポンプ9pを動作させる電動モータ9mが具備されており、これらがセットになって切断機装置となる〔図8(A)参照〕。該切断機装置において、切断機9は電動モータ9mを始動して、ポンプ9pを制御し、油圧シリンダ部93のピストン93bの出入を操作する。また、油圧シリンダ部93とポンプ9pとは油圧ホース96にて油圧作動ができるように連結されている。前記可動刃94及び前記固定刃95は、それぞれ切断機9に対して着脱自在であり、前記可動刃94は、ピストン93bの先端に設けた装着部93cにビス等の固着具にて装着され、固定刃95は受け部92に設けた装着部92aにビス等の固着具にて装着される。
【0040】
切断機9による既設タイトフレーム2への切断工程は、該既設タイトフレーム2の切断所望箇所が、切断機9の受け部92と可動刃94との間に位置するように設置し、電動モータ9mを始動させ、ピストン93bと共に可動刃94を受け部92に近接させることにより、既設タイトフレーム2の所望の箇所を切断する〔図9(A)参照〕。
【0041】
また、受け部92に固定刃95を装着し、可動刃94が固定刃95に近接したときに、両者の歯先同士が交差可能な構成つまり噛合わせることにより、既設タイトフレーム2の所定箇所の切断作業効率をより一層向上させ、切断作業を迅速にすることができる。上記構成の切断機9は、特に、既設タイトフレーム2の脚部21,21に補強リブ21bが形成されたタイプのように、通常のハサミタイプの切断機では切断し難い形状のものでも、瞬時に切断することができるものである〔図9(A),(B)参照〕。
【0042】
また、ホルダ部91は、油圧シリンダ部93の軸方向、つまりピストン93bが出没する方向に対して平行となるように油圧シリンダ部93に並設されている〔図8(A),(C)参照〕。これによって、切断機9にて既設構造材4上の既設タイトフレーム2の任意の箇所(所望する切断箇所)を切断するときに、ホルダ部91の長手方向を既設構造材4の長手方向(Y方向)と一致させることができる〔図9(B)参照〕。
【0043】
切断機9を以上のような構成としたことにより、該切断機9を使用して既設タイトフレーム2の脚部21を切断する作業のときにおいて、切断機9のホルダ部91のY方向と、既設構造材4のY方向とを一致させると、ホルダ部91と既設構造材4とは平行に配置することができる。さらに、切断機9を既設構造材4のフランジ41上から極めて近い位置に配置して既設タイトフレーム2の脚部21の切断作業をすることにより、作業員は極めて安定した姿勢をとりながら安全を確保しつつ作業することができ、作業効率も向上させることができる(図9参照)。
【0044】
既設タイトフレーム2に対する切断機9による切断工程には、3通りの実施形態が存在する。まず、切断工程の第1実施形態としては、既設タイトフレーム2の両脚部21,21のそれぞれを、既設構造材4との付根箇所付近で切断するものである。つまり、脚部21の下端付近を切断するものである〔図1(B),(C),図2参照〕。
【0045】
これによって、既設構造材4のフランジ41上に残る既設タイトフレーム2は、両脚部21,21の下方の一部となる。既設構造材4のフランジ41上に残された両脚部21,21間には、空隙Sが形成されることとなり、該空隙Sは、後述する改修タイトフレームB1の装着位置となる〔図1(C)乃至(E),図2(B),(C)参照〕。
【0046】
また、既設構造材4のフランジ41上に残された既設タイトフレーム2の両脚部21,21は、下方の部分しか残らず、既設タイトフレーム2の本来の高さから相当低くなっており、高さ方向に低くする処理は、両脚部21,21の切断と共に完了したことになる〔図1(C)参照〕。換言すると、この実施形態では、既設タイトフレーム2を高さ方向に低くする処理は、省略できるといえる。
【0047】
切断の第2実施形態は、既設タイトフレーム2の両脚部21,21の上方位置の切断である(図3参照)。この両脚部21,21の上方位置は、既設構造材4のフランジ41の位置から離れた位置となり、切断作業において、切断機9が既設構造材4のフランジ41に接触し難く、干渉されず、切断作業が行い易いという利点がある〔図3(A)参照〕。
【0048】
フランジ41上に残された既設タイトフレーム2の両脚部21,21の部分はその上方付近まで存在するので、両脚部21,21を互いに相手側に向かって少し押した倒すことによって高さ方向を低くする〔図3(B)参照〕。つまり、フランジ41上に残された両脚部21,21を少し押し倒すことによって、残存部分を低くする処理が行われたことになる。
【0049】
ここで、それぞれの既設タイトフレーム2の上方を切断された両脚部21,21の間には、押し倒したときに相互に上端部分同士が干渉しないような倒し角度とし、両脚部21,21間に改修タイトフレームB1が設置できるような隙間を設ける必要がある。また、両脚部21,21は、改修タイトフレームB1に近接するように少しだけ押し倒すことが好ましい〔図3(B),(C)参照〕。
【0050】
切断の第3実施形態は、既設タイトフレーム2の頂部22を切断することである(図6参照)。頂部22の切断では、既設構造材4のフランジ41上に両脚部21,21全体が残り、高さを低くする処理が必要となる。このとき、両脚部21,21と共に頂部22の一部が両脚部21,21の上端にそれぞれ残ることになる。したがって、既設タイトフレーム2の残存部分を低くする処理は、両脚部21,21を押し倒すことになり、この押し倒しにより、両脚部21,21の上端或いは切断された頂部22の一部同士が重なり合うことになる〔図6(A)参照〕。
【0051】
この場合、既設タイトフレーム2の両脚部21,21間は、その高さを低く修めると、両脚部21,21が相互に重なり合う状態となる。したがって、両脚部21,21間への改修折板屋根Bの設置が行い難い状態となる。そのために、改修タイトフレームB1の設
置位置は、隣接する既設タイトフレーム2,2の間とする〔図6(B)参照〕。また、改修タイトフレームB1は、上記のような場合以外であっても、隣接する既設タイトフレーム
2,2間で且つ脚部21の下端の脚座板21a上に跨るようにして設置されることもある(図7参照)。
【0052】
以上の既設タイトフレーム2の切断作業及び高さ方向を低くする処理が完了すると、既設構造材4のフランジ41上に改修タイトフレームB1を設置する〔図1(D)参照〕。改修タイトフレームB1については後述するが、既設構造材4に対して装着設置に際して
溶接手段は採用しないものである。つまり、改修タイトフレームB1は、無溶接タイプの
ものである。第1及び第2実施形態における既設タイトフレーム2の切断では、フランジ41上に残された両脚部21,21間に存在する空隙Sの位置に改修タイトフレームB1
を設置する。
【0053】
このとき、切断撤去前の既設タイトフレーム2に装着された吊子3の位置と、改修タイトフレームB1の頂部73に装着される改修用の吊子3の位置が一致することが好ましい
。次いで、改修タイトフレームB1の頂部73に改修用の折板屋根板材5を配置し、吊子
3を介して下馳部54aと上馳部54bとを馳締して隣接する折板屋根板材5,5同士を連結し、これを順次繰り返すことにより改修折板屋根Bを施工する〔図1(E)参照〕。
【0054】
次に改修タイトフレームB1の具体的な実施形態について説明する。まず、この説明に
おいて方向を示す文言として、既設の折板屋根板材1と同様に、X方向及びY方向を使用する。したがって、施工される改修折板屋根Bを構成する折板屋根板材5,5,…が並列される方向をY方向とし、各折板建築用板材5の長手方向となる方向をX方向とする。よって、既設構造材4の長手方向はY方向となる。
【0055】
改修タイトフレームB1は、前述したように、既設構造材4に対して溶接を使用しない
で装着される無溶接タイプのものである。このような改修タイトフレームB1は、種々存
在するものであり、その一例を図4に基づいて以下に示す。改修タイトフレームB1は、
台座6と、受部本体7と、係止部材8とからなる。台座6は、略長方形状のベース板61と、垂下状側部62,62とからなる。前記ベース板61には、長手方向に沿って2個の貫通孔63,63が所定間隔をおいて形成されている。
【0056】
受部本体7は、板状且つ柱形状に形成され、前記台座6のベース板61の長手方向(X方向)の中心位置に設置される。受部本体7の柱状部71には、基部72と頂部73とが存在する。柱状部71は、ベース板61上に垂直に立ち上がる。頂部73の形状は段差状又は平坦状であり、馳締タイプの改修用の折板屋根板材5を使用する場合には吊子3を必要とするので段差状が好適である。頂部73には必要に応じてボルト軸部74が装着されており、吊子3の装着に使用される。
【0057】
係止部材8は、断面略コ字形状の係止本体81と締付螺子部82とから構成されている。係止本体81は、金属板材を断面略コ字形状に形成した部材であり、既設構造材4のフランジ部41のX方向両端がコ字形状の係止部材3に対して挿入可能となっている。係止本体81の上片には、締付螺子部82が装着され、該締付螺子部82は、螺子軸部82aと、ナット82bとから構成され、螺子軸部82aにナット82bが螺合する構成となっている。
【0058】
台座6の幅方向(Y方向)両側の両垂下状側部62,62内に、係止部材8の係止本体81の幅方向(Y方向)が収納できる〔図4(A)参照〕。前記係止部材8は、一つの台座6に対して2個備えられ、それぞれの係止部材8の締付螺子部82aの螺子軸部82bが、台座1のベース板11の下面側よりそれぞれの貫通孔63に挿入され、ベース板11の上面側から前記螺子軸部82bにナット82bが螺合される。
【0059】
改修タイトフレームB1は、二つの係止部材8,8の断面略コ字形状の係止本体81,
81とで、既設構造材4のフランジ部41のX方向両端を挟持すると共に係止する〔図4(C)参照〕。そして、締付螺子部82の螺子軸部82aに対してナット82bを締め付けることにより、既設構造材4のフランジ41が台座6の垂下状側部62の下端と係止部材8,8とによって締め付けられ、台座6の垂下状側部62が既設構造材4のフランジ41に固定されることにより、改修タイトフレームB1が既設構造材4に装着される〔図1(C),図2(C),図4(C)等参照〕。
【符号の説明】
【0060】
A…既設折板屋、1…既設の折板屋根板材、21…脚部、22…頂部、
2…既設タイトフレーム、4…既設構造材、B…改修折板屋根、
B1…改修タイトフレーム、5…改修用の折板屋根板材、9…切断機、91…ホルダ部、
92…受け部、93…油圧シリンダ部、94…可動刃、95…固定刃。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9