特許第6876424号(P6876424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876424単一の主要反応器と小さいサイズの保護反応器とを用いるオレフィン供給原料の選択的水素化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876424
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】単一の主要反応器と小さいサイズの保護反応器とを用いるオレフィン供給原料の選択的水素化方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/32 20060101AFI20210517BHJP
   B01J 38/48 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C10G45/32
   B01J38/48 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-246069(P2016-246069)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2017-115143(P2017-115143A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】1563022
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】シプリアン チャラ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン メッキ−ベラーダ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック バザー−バチ
(72)【発明者】
【氏名】ベアトリス フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ヒリー
【審査官】 三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0165711(US,A1)
【文献】 特表2014−507519(JP,A)
【文献】 特開2002−053873(JP,A)
【文献】 特表2005−530911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
B01J 38/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個の炭素原子を含む多価不飽和分子を含む炭化水素供給原料の選択的水素化方法であって、前記供給原料と、水素を含む気相とが、水素化条件下で、少なくとも2個の触媒床を含む単一の固定床主要反応器内、および少なくとも1個の触媒床を含むより小さいサイズの固定床保護反応器内において、水素化触媒上を通過させられ、これらの反応器は、直列に配置され、以下に規定される工程a)、b)、c)、c’)、d)、およびd’)を連続的に繰り返すことによりサイクル方式で用いられる:
‐工程a)、この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床の全てを連続的に通過し、
‐主要反応器の第1触媒床が失活し始めると、工程b)、この工程中、供給原料は、保護反応器に導入され、次いで、主要反応器の部分的に失活した第1触媒床を迂回することにより、前記主要反応器の、供給原料の移動方向に関してすぐ下流に位置する次の失活していない触媒床へと導かれ、
‐工程c)、この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床の全てを、専らかつ連続的に、通過し、
‐工程c’)、工程c)と同時進行で、この工程中、保護反応器の触媒床(単数または複数)の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられ、
‐工程d)、この工程中、供給原料は、保護反応器のみを通過し、
‐工程d’)、工程d)と同時進行で、この工程中、主要反応器の少なくとも2個の触媒床の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられる、選択的水素化方法
【請求項2】
保護反応器の触媒床(単数または複数)に含まれる触媒の全体積は、主要反応器の触媒床に含まれる触媒の全体積の最大60%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭化水素供給原料は、水蒸気分解からのC3留分、水蒸気分解からのC4留分、水蒸気分解からのC5留分、および熱分解ガソリン、ならびにそれらの混合物によって構成される群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a’)が、工程a)と同時に行われ、この工程中、保護反応器の触媒床(単数または複数)の工程d)の間中に失活した触媒が、再生されるかまたは新鮮な触媒と取り替えられる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程a)、b)、c)、およびd)の各操作期間(操作期間は、各工程の最長操作期間tmaxに対して規定され、最長操作期間は、所与の供給原料について、温度または水素化選択性が最大許容値に達する時間である)は、以下の通りである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法:
・工程a)は、tAmaxの10〜70%、
・工程b)は、tBmaxの40〜100%、
・工程c)は、tCmaxの90〜100%、
・工程d)は、tDmaxの70〜100%。
【請求項6】
・C3供給原料の最大許容値は、反応器の入口と出口の間で等しいプロピレン組成に達することに相当する水素化選択性であり、
・C4供給原料の最大許容値は、160℃の最高温度であり、
・C5供給原料の最大許容値は、160℃の最高温度であり、
・熱分解ガソリンの供給原料の最大許容値は、200℃の最高温度である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各反応器は、温度0〜200℃、圧力1〜6.5MPaの範囲、全体的な毎時空間速度(15℃における新鮮な供給原料の体積流量の、用いられる一連の反応器中に存在する触媒の全体積に対する比として定義される)1〜100h−1の範囲で操作される、請求項
1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
主要反応器または保護反応器から得られる流出物の一部が、水素化されるべき供給原料との混合物として、再循環させられる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
工程a)、b)、c)、およびd)の間中、水素化のための操作条件は、同一である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程a)の始まりに用いられる温度、流れ、流量(単数または複数)のそれぞれに対して、工程d)の間中、保護反応器の温度は上げられ、および/または水素を含む相の流れは増大させられ、および/または保護反応器への再循環流量は増大させられ、および/または保護反応器に導入される供給原料の流量は低減させられる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程a)の始まりに対して、工程d)の始まりにおける、保護反応器の温度上昇は、反応器の頭部で、0.5〜40℃の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程a)の始まりにおける再循環流量に対する、工程d)の始まりにおける保護反応器の再循環流量の増加は、0.5〜100%の範囲である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
クエンチが、主要反応器または保護反応器中の2個の触媒床の間で導入され、前記クエンチは、液体クエンチおよび/または気体クエンチであってよい、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
1基以上の熱交換器(単数または複数)が、保護反応器と主要反応器の間に用いられる、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
用いられる水素化触媒は、主要反応器および/または保護反応器の触媒床(単数または複数)において、同一であるかまたは異なっている、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3個の炭素原子を含む多価不飽和分子を含む炭化水素供給原料の選択的水素化方法に関する。該方法は、少なくとも2個の触媒床を含む単一の固定床水素化主要反応器と、より小さいサイズの固定床水素化保護反応器とを用いる。これらの水素化反応器は、直列に接続されて配置され、一連の工程に従ってサイクル方式(cyclic manner)で用いられ、これら一連の工程は、該方法を連続的に操作することを確実なものとしつつ、保護反応器を用いて、少なくとも部分的に失活した主要反応器の触媒床(単数または複数)を迂回する(short-circuit)ために用いられ得る。
【0002】
一価不飽和有機化合物、例えばエチレンおよびプロピレン等は、ポリマー、プラスチック材料、および付加価値を伴うその他の化学製品の製造のソースである。これらの化合物は、水蒸気分解方法または接触分解方法によって処理された、天然ガス、ナフサ、またはガスオイルから得られる。これらの方法は、高温で操作され、様々な種類の所望の一価不飽和分子、例えば、エチレン、プロピレン、線状ブテン、イソブテン、ペンテン、ならびに約15個までの炭素原子を含む不飽和分子を生じさせる。
【0003】
同時に、多価不飽和化合物、例えば、アセチレン、プロパジエン、およびメチルアセチレン(またはプロピン)、1,2−ブタジエンおよび1,3−ブタジエン、ビニルアセチレンおよびエチルアセチレン、ならびにガソリンフラクションC5+(5個以上の炭素原子を含む炭化水素化合物を含むガソリン)に相当する沸点を有するその他の多価不飽和化合物(特にスチレンまたはインデン化合物)をも生じさせる。これらの多価不飽和化合物は、非常に活性であり、重合装置内に望まれていない反応をもたらす。従って、これらの留分のアップグレーディング(upgrading)を行う前に、多価不飽和化合物を除去する必要がある。これらの化合物の除去は、従来は水素化脱硫処理の後に行われるが、熱分解ガソリン供給原料の場合、水素化脱硫処理の前に、除去されなければならない。
【0004】
選択的水素化は、特に、これらの炭化水素供給原料から不要な多価不飽和化合物を除去するために開発された主要な処理である。
【0005】
不飽和炭化水素の選択的水素化は、処理されるべき供給原料中に存在する多価不飽和化合物を選択的に水素化するために用いられ得る。該選択的水素化により、ジオレフィンまたはアセチレン化合物が、部分的に水素化されモノオレフィンとなり、ガソリン留分中に存在するスチレンおよびインデン化合物が、部分的に水素化され対応する芳香族化合物となるようになされて、これにより完全な飽和が回避され、したがって対応するアルカンまたはナフテンの形成が回避される。
【背景技術】
【0006】
不飽和炭化水素を選択的水素化するための従来の装置は、一般に、固定床触媒反応器を含む主要水素化セクションを含む。固定床触媒反応器内で、液体炭化水素供給原料が、気体水素と接触させられる(二相反応器、または、水素が全て供給原料中に溶解され得る場合、単相反応器)。
【0007】
これらの選択的水素化反応と同時に、二次反応によりオリゴマーが形成されるに至ることもある。オリゴマーの形成により、触媒の表面にゴム状物が堆積されるに至る可能性があり、これにより、徐々に触媒の失活がもたらされる。加えて、供給原料中に含まれる不純物により、触媒の失活がもたらされる可能性がある。このことは、触媒が、その有効性を再び取り戻すために、再生されなければならないことを意味する。この理由により、従来の選択的水素化装置は、一般に第2の固定床反応器を備えている。第1の反応器が再活性化または再生されなければならない時、水素化反応は、第2の固定床反応器に向けられる。
【0008】
特許文献1には、3または4個の炭素原子を含む不飽和オレフィン供給原料の選択的水素化方法が記載されている。該方法は、少なくとも2基の固定床主要反応器を用い、これらは入れ替え可能である。固定床主要反応器はそれぞれ、少なくとも1個の触媒床を含み、前記オレフィン供給原料は、反応器の全てを連続して通過し、一方の反応器が失活すると、供給原料の導入口の位置が下流に移動させられる。特許文献1には、触媒再生プロセスを中断させることを決して必要とせず、主要水素化セクション内に直列に接続して配置され得る反応器を用いることによって、不飽和炭化水素を選択的水素化するための設備を最適化することが提案されている。
【0009】
しかし、特許文献1に記載された方法では、同一サイズの主要反応器が少なくとも2基必要となり、第2(「スペア」とも称される)の反応器が再生されている間、一方の反応器のみが水素化を行うこととなる。この第2の反応器は、設備内で存在するものの、第1の反応器の触媒が失活していない間は、供給原料の水素化のために使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許発明第2984915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、単一の主要反応器と、より小さいサイズの保護反応器とを用いることにより、不飽和炭化水素の選択的水素化方法を最適化することを提案している。これら2基の反応器は、直列に接続されて配置され、一連の工程に従ってサイクル方式で用いられる。これは、該方法の連続的操作を確実なものとしながら、保護反応器を用いることにより、少なくとも部分的に失活した主要反応器の触媒床が迂回され得ることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも3個の炭素原子を含む多価不飽和分子を含む炭化水素供給原料の選択的水素化方法に関する。前記供給原料と、水素を含む気相とは、水素化条件下で、単一の固定床主要反応器中および固定床保護反応器中の、水素化触媒上を通過させられる。単一の固定床主要反応器は、少なくとも2個の触媒床を含む。固定床保護反応器は、サイズがより小さく、少なくとも1個の触媒床を含む。前記2基の反応器は、直列に接続されて配置され、以下に規定される工程a)、b)、c)、c’)、d)、およびd’)を連続して繰り返すことによりサイクル方式で用いられる:
‐工程a)、この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床の全てを連続して通過し、
‐主要反応器の第1触媒床が失活し始めると、工程b)、この工程中、供給原料は、保護反応器に導入され、次いで、主要反応器の部分的に失活した第1触媒床を迂回することにより、前記主要反応器の、供給原料の移動方向に関してすぐ下流に位置する次の失活していない触媒床へと導かれ、
‐工程c)、この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床の全てを、専ら(uniquely)かつ連続的に、通過し、
‐工程c’)、 この工程中、工程c)と同時進行で、保護反応器の触媒床(単数または複数)の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられ、
‐工程d)、この工程中、供給原料は、保護反応器のみを通過し、
‐工程d’)、 この工程中、工程d)と同時進行で、主要反応器の少なくとも2個の触媒床の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられる。
【0013】
本発明による選択的水素化方法は、したがって、第2の主要反応器を必要としない。このことは、投資コストおよび操作コストが削減されることを表している。実際、本発明の方法は、保護反応器を必要とし、これは、第2の主要反応器と比較してサイズが低減されている。
【0014】
(低減されたサイズの保護反応器を用いずに)単一の主要反応器を用いて機能する選択的水素化方法に対し、本発明による方法は、供給原料の処理キャパシティを増大させるため、ならびに、同じ触媒体積に対するサイクルタイムを増大させるために用いられ得る。加えて、一方の反応器の触媒を再生する間中、本方法を停止する必要がない。したがって、安価に、既存の装置のキャパシティを増大させること(「改良」)が望まれる場合に、本方法は特に有用である。本発明による方法は、サイクルタイムを増大させるために、用いられ得る。これは、触媒の失活を促すこととなる、オリゴマー(またはゴム状物)形成の速度を抑制することにより可能となる。
【0015】
加えて、本発明による選択的水素化方法は、処理がより困難な留分という点と、キャパシティの変更(change)という点の両方の観点から、操作の間中フレキシビリティを提供するために用いられ得る。
【0016】
変形例によると、保護反応器の触媒床(単数または複数)に含まれる触媒の全体積は、主要反応器の触媒床に含まれる触媒の全体積の最大60%である。
【0017】
変形例によると、炭化水素供給原料は、水蒸気分解からのC3留分、水蒸気分解からのC4留分、水蒸気分解からのC5留分、および熱分解ガソリン、ならびにそれらの混合物によって構成される群より選択される。
【0018】
変形例によると、各工程a)、b)、c)、およびd)の操作期間(操作期間は、各工程の最長操作期間tmaxに対して規定され、最長操作期間は、所与の供給原料について、温度または選択性が最大許容値に達する時間である)は、以下の通りである:
・工程a)は、tAmaxの10〜70%、
・工程b)は、tBmaxの40〜100%、
・工程c)は、tCmaxの90〜100%、
・工程d)は、tDmaxの70〜100%。
【0019】
変形例によると、C3供給原料の最大許容値は、現行の規格に従った選択性であり、C4供給原料の最大許容値は、160℃の最高温度であり、C5供給原料の最大許容値は、160℃の最高温度であり、熱分解ガソリンの供給原料の最大許容値は、200℃の最高温度である。
【0020】
変形例によると、各反応器は、温度が0〜200℃、圧力が1〜6.5MPaの範囲、全体的な毎時空間速度(15℃における新鮮な供給原料の体積流量の、用いられる一連の反応器中に存在する触媒の全体積に対する比として定義される)が1〜100h−1の範囲で操作される。
【0021】
変形例によると、主要反応器または保護反応器から得られる流出物の一部が、水素化されるべき供給原料との混合物として、再循環させられる。
【0022】
変形例によると、工程a)、b)、c)、およびd)の間中、水素化のための操作条件は、同一である。
【0023】
別の変形例によると、工程a)の始まりに用いられる温度、流れ、流量(単数または複数)のそれぞれに対して、工程d)の間中、保護反応器の温度は上げられ、および/または水素を含む相の流れは増大させられ、および/または保護反応器への再循環流量は増大させられ、および/または保護反応器に導入される供給原料の流量は低減させられる。
【0024】
変形例によると、工程a)の始まりに対して、工程d)の始まりにおける、保護反応器の温度上昇は、反応器の頭部で、0.5〜40℃の範囲である。
【0025】
変形例によると、工程a)の始まりにおける再循環流量に対する、工程d)の始まりにおける保護反応器の再循環流量の増加は、0.5〜100%の範囲である。
【0026】
変形例によると、クエンチ(quench)が、主要反応器または保護反応器中の2個の触媒床の間で導入され、前記クエンチは、場合によっては液体クエンチおよび/または気体クエンチである。
【0027】
変形例によると、1基以上の熱交換器(単数または複数)が、保護反応器と主要反応器の間に用いられる。
【0028】
変形例によると、用いられる水素化触媒は、主要反応器および/または保護反応器の触媒床(単数または複数)において、同一であるかまたは異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は従来の選択的水素化方法を示す系統図である。
図2図2は本発明の選択的水素化方法の例を示す系統図である。発明の詳細な説明 本発明は、少なくとも3個の炭素原子を含む多価不飽和分子を含む炭化水素供給原料の選択的水素化方法に関する。該方法において、少なくとも2個の触媒床を含む単一の固定床主要反応器と、より小さいサイズの固定床保護反応器とが用いられる。前記2基の反応器は、直列に接続されて配置され、以下に記載される一連の工程に従ってサイクル方式で用いられる。
【0030】
図1からわかるように、従来の選択的水素化方法は、2基の水素化反応器(すなわち、第1主要反応器R1、およびこれに並列して接続された第2主要反応器R2)を含む。第1主要反応器R1は、触媒床A1およびA2を含む。これと同一サイズの第2主要反応器R2は、触媒床C1およびC2を含む。
【0031】
この従来の方法では、炭化水素供給原料が、水素を含む気相と混合され、この混合物1が、水素化条件下で操作される水素化反応器R1の頭部に導入される。したがって、弁V1が開にされて、弁V2が閉にされる。供給原料は、触媒床A1およびA2を連続して通過し、選択的に水素化された流出物2が、反応器R1の底部から回収される。
【0032】
水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部が、場合により冷却された後、弁V9を介して反応器R1の入口へと再循環させられてもよく、水素化されるべき供給原料と共に、水素を含む気相と混合される。
【0033】
反応器R1が失活し始めると、供給原料は、第2反応器R2に向けられる。この目的のために、弁V2は開にされて、弁V1は閉にされる。このようにして、供給原料は、反応器R2内で処理され、触媒床C1およびC2を連続的に通過する。これにより、反応器R2の底部から、選択的に水素化された流出物2が回収される。その間に、R1は洗浄され、R1の触媒が再生される。同様の方法で、水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部が、場合により冷却された後、弁V9を介して反応器R2の入口へと再循環させられてもよく、水素化されるべき供給原料および水素を含む気相と混合される。
【0034】
本発明による選択的水素化方法に関連して、図2に示すように、少なくとも3個の炭素原子を含む不飽和分子を含む炭化水素供給原料と、水素を含む気相とが、水素化条件下で、少なくとも2個の触媒床を含む単一の固定床主要反応器と、少なくとも1個の触媒床を含む、より小さいサイズの固定床保護反応器との中の、水素化触媒上を通過させられる。これら2基の反応器は、直列に接続されて配置され、以下に規定する工程a)、b)、c)、c’)、d)、およびd’)を連続して繰り返すことにより、サイクル方式で用いられる:
‐工程a)、この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床の全てを連続して通過し、
‐主要反応器の第1触媒床が失活し始めると、工程b)、この工程中、供給原料は、保護反応器に導入され、次いで、主要反応器の部分的に失活した第1触媒床を迂回することにより、前記主要反応器の、供給原料の移動方向に関してすぐ下流に位置する次の失活していない触媒床へと導かれ、
‐工程c)、この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床の全てを、専らかつ連続的に、通過し、
‐工程c’)、工程c)と同時に、この工程中、保護反応器の触媒床(単数または複数)の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられ、
‐工程d)、この工程中、供給原料は、保護反応器のみを通過し、
‐工程d’)、工程d)と同時進行で、この工程中、主要反応器の少なくとも2個の触媒床の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられる。
【0035】
本方法の工程a)の間中、水素を含む気相と既に混合された供給原料は、開とされた弁V2を含むラインを介して、反応器R1に導入される。この期間中、弁V1、V3、V4、V5、V6、およびV7は、閉とされる。供給原料は、触媒床A1およびA2を連続して通過し、選択的水素化された流出物2が、反応器R1の底部から回収されて、開とされた弁V8を含むラインを介して排出される。
【0036】
水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却された後、弁V9を介して反応器R1の入口へと再循環させられてもよく、水素化されるべき供給原料と共に、水素を含む気相と混合される。
【0037】
別の変形例によると、水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却された後、弁V10を介して触媒床A2の入口へと再循環させられてもよい。
【0038】
徐々に時間を経て、触媒床、特に第1触媒床A1は、工程a)の間に失活してくることとなる。第1触媒床A1が失活し始めると、工程a)は、工程b)に向かって切り替え(swing)され始める。この切り替えは、工程a)の操作期間の後に行われる。工程a)の操作期間は、工程a)の最長操作期間tAmaxの10〜70%、好ましくは20〜60%である。この最長操作期間tAmaxは、以下に規定される、最大許容値に達する期間である。
【0039】
本方法の工程b)の間中、水素を含む気相と既に混合された供給原料は、開とされた弁V1を含むラインを経て、保護反応器Bに導入される。部分的に水素化された保護反応器からの流出物は、次いで、開とされた弁V5を含むラインを介して、触媒床A2の上流にて主要反応器に導入される。この期間中、弁V2、V3、V4、およびV6は閉とされる。工程a)の間中、部分的に失活した触媒床A1は、このように迂回される。次いで、供給原料は、触媒床A2を通過し、選択的に水素化された流出物2は、主要反応器R1の底部から回収され、開とされた弁V8を含むラインを介して排出される。
【0040】
水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却されたあと、弁V7を介して、または弁V9を介して、保護反応器Bの入口へと再循環させられてもよく、水素化されるべき供給原料と共に、水素を含む気相と混合される。
【0041】
別の変形例によると、水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却された後、弁V10を介して、触媒床A2の入口に再循環させられてもよい。
【0042】
徐々に時を経て、保護反応器Bは、供給原料と接触させられてきたため、工程b)の間に失活してくることとなる。保護反応器の触媒床(単数または複数)の触媒が、完全に失活すると、工程b)は、工程c)に向かって切り替えされ始める。この切り替えは、工程b)の操作期間の後に行われる。工程b)の操作期間は、工程b)の最長操作期間tBmaxの40〜100%、好ましくは70〜100%である。この最長操作期間tBmaxは、以下に規定される、最大許容値に達する期間である。
【0043】
本方法の工程c)の間中、水素を含む気相と既に混合された供給原料は、開とされた弁V2を含むラインを介して、反応器R1へと導入される。この期間中、弁V1、V3、V4、V5、V6、およびV7は閉とされる。供給原料は、触媒床A1およびA2を連続的に通過し、選択的水素化された流出物2は、反応器R1の底部から回収され、開とされた弁V8を含むラインを介して排出される。徐々に時を経て、触媒床、特に、供給原料と接触させられてきた第1触媒床A1は、失活し続ける。
【0044】
変形例によると、水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却された後、弁V9を介して反応器R1の入口へと再循環させられてもよく、水素化されるべき供給原料と共に、水素を含む気相と混合される。
【0045】
別の変形例によると、水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却された後、弁V10を介して触媒床A2の入口へと再循環させられてもよい。
【0046】
徐々に時を経て、主要反応器の触媒床、特に第1触媒床A1は、工程c)の間中失活してくることとなる。第1触媒床A1が完全に失活すると、工程c)は、工程d)に向かって切り替えされ始める。この切り替えは、工程c)の操作期間の後行われる。工程c)の操作期間は、工程c)の最長操作期間tCmaxの90〜100%、好ましくは100%である。この最長操作期間tCmaxは、以下に規定される、最大許容値に達する期間である。
【0047】
本方法の工程c’)の間中(工程c’)は工程c)と同時に行われる)、保護反応器Bの触媒床(単数または複数)の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられる。
【0048】
該方法の工程d)の間中、水素を含む気相と既に混合された供給原料は、開とされた弁V1を含むラインを介して、保護反応器Bに導入される。選択的水素化された流出物2は、保護反応器Bの底部から回収され、開とされた弁V4を含むラインを介して排出される。供給原料は、このようにして保護反応器のみを通過する。この期間の間中、弁V2、V3、V5、V6、V7、V8、およびV10は閉にされる。
【0049】
変形例によると、水素化されたオレフィン供給原料を含む液相の一部は、場合により冷却された後、弁V9を介して、保護反応器の入口へと再循環させられてもよく、水素化されるべき供給原料と共に、水素を含む気相と混合される。
【0050】
この工程の間中、反応器Bの触媒床(単数または複数)中、低減した体積の触媒での選択的水素化を確実なものとするために、操作条件は、好ましくは、工程a)の始まりにおいて用いられる操作条件(または、工程a)の操作条件と一般的に同一である、工程b)およびc)の始まりにおいて用いられる操作条件)よりも過酷である。修正(modify)の必要性、あるいは、修正が必要でない場合の操作条件は、特に供給原料の性質に依存する。例として、供給原料がより重質である程、または、供給原料に不純物がより多く含まれている程、操作条件はより過酷とされる必要があるであろう。
【0051】
変形例によると、また、操作条件をより過酷なものにするため、および/または、熱制御を向上させるために、以下のことが可能である:
・工程d)の間中、保護反応器Bの温度を上昇させること、および/または
・工程d)の間中、水素を含む相の流れを増大させること、および/または
・供給原料の流量を低減させること、および/または
・再循環量を増大させること。
【0052】
変形例によると、保護反応器Bの温度は、上昇させられる。この場合、工程a)の始まりに対して、工程d)の始まりにおける、保護反応器Bの温度上昇は、反応器の頭部で、0.5〜40℃の範囲、好ましくは3〜20℃の範囲である。
【0053】
別の変形例によると、工程d)の間中、保護反応器に導入される供給原料の流量を低減させることも可能である。
【0054】
更に別の変形例によると、再循環流量を増大させて、熱制御を向上させることが可能である。工程d)の始まりにおける再循環流量の増大は、工程a)の始まりおける主要反応器への再循環量に対して、0.5〜100%の範囲、好ましくは3〜50%の範囲である。再循環流量の増大は、温度の上昇等、操作条件をより過酷なものとするための他の手段無しで、行われてもよい。
【0055】
好ましくは、温度が上昇させられ、および/または再循環流量が増大させられる。
【0056】
保護反応器Bの触媒が完全に失活してくると、工程d)は、工程a)に向かって切り替えされ始める。この切り替えは、工程d)の操作期間の後に行われる。工程d)の操作期間は、工程d)の最長操作期間tDmaxの70〜100%、好ましくは85〜100%である。この最長操作期間tDmaxは、以下に規定される、最大許容値に達する期間である。
【0057】
本方法の工程d’)の間中(工程d’)は、工程d)と同時行われる)、主要反応器R1の少なくとも2個の触媒床A1およびA2の失活した触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられる。
【0058】
変形例によると、工程a’)は、工程a)と同時に行われてもよく、その工程中、工程d)の間中に失活した保護反応器の触媒床(単数または複数)の触媒は、再生され、および/または新鮮な触媒と取り替えられる。次いで、サイクルが再び開始させられる。装置の弁の操作は、主要反応器R1および保護反応器Bの操作が、以下の表に示す通りであることを意味している:
【0059】
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0060】
保護反応器のサイズ
本発明による方法の利点から利益を得るためには、少なくとも1個の触媒床を含む保護反応器Bが、主要反応器よりサイズが小さいことが重要である。
【0061】
より具体的には、保護反応器の触媒床(単数または複数)に含まれる触媒の全体積は、主要反応器の触媒床に含まれる触媒の全体積の、最大60%、好ましくは最大50%、特に好ましくは最大40%である。
【0062】
保護反応器Bは、1個以上の触媒床を含んでよい。保護反応器Bが、複数の触媒床を含む場合、保護反応器Bは、2個の触媒床の間に、クエンチボックスを備えていてもよく、備えていなくてもよい。
【0063】
このクエンチボックスは、液体クエンチ(例えば、新鮮なあるいは再循環させられた供給原料)、および/または気体クエンチ(例えば、水素を含む気相)を備えていてもよい。希釈剤(通常は再循環物)の流量は、供給原料の流量と同等であるか、あるいは実際、供給原料の流量より多くてもよく、このことは、その発熱性が低減させられ得ることを意味する。
失活時間
本発明に関連して、主要反応器または保護反応器の触媒床(単数または複数)、特に、供給原料の移動方向において一番目の触媒床に含まれる触媒(単数または複数)は、徐々に失活してくる。触媒(単数または複数)が、失活あるいは、部分的に失活すると、1つの工程から別の工程への切り替えが開始される。
【0064】
各工程a)、b)、c)、およびd)の操作期間は、各工程の最長操作期間に対して規定される。各工程の最長操作期間は、温度または選択性についての最大許容値に対して規定される。最大許容値は、当業者によって既に規定されたものとし、特に、処理されるべき供給原料の性質だけでなく、操作条件および選択される触媒の性質に依存する。最大許容値に達すると、その工程は切り替えされなければならず、すなわち触媒床を迂回するか、あるいは、反応器の非接続および/または別の反応器への接続を行わなければならない。
【0065】
より具体的には、サイクルの間中、温度変化が少ししか観察されないか、あるいは全く観察されないC3供給原料について、最大許容値は、サイクルの終わりにおける規格(一般に、反応器の入口・出口間におけるプロピレンに等しい組成に達することに相当する)によって要求される選択性である。実際、触媒が失活してくると、選択性が徐々に低下していくのが観察される(ますます多くのプロパンの形成、および反応器出口におけるプロピレンの純度の低下)。
【0066】
供給原料がC4供給原料である場合、最大許容値は温度であり、それは、サイクルの終わりにおける反応器出口において、160℃、好ましくは120℃である。実際、この温度を越えると、水素化反応の選択性の低下(オリゴマー形成)が観察される。この温度範囲もまたC5供給原料に対して許容され得る最大値であり、これも選択性の低下に起因する。
【0067】
供給原料が熱分解ガソリン供給原料である場合、最大許容値は温度であり、それは、サイクルの終わりにおける反応器出口において、約200℃、好ましくは180℃である。実際、この温度を超えると、選択性の低下(芳香族の水素化)が観察され、このことはまたランナウィ(runaway)の危険性が高いことをも伴っている。
【0068】
各工程a)、b)、c)、およびd)の最長操作期間tmaxは、このように、温度または選択性が最大許容値に達する時間として規定される。例として、熱分解ガソリン供給原料の場合、工程a)の最長操作期間tAmaxは、最大許容値である180℃に達するために必要な時間であり、工程b)の最長操作期間tBmaxは、最大許容値である180℃に達するために必要な時間であり、以下同様である。各工程の最長操作期間は、互いに異なってもよい。なぜなら、それらは、設備の構成、および工程の始まりにおける触媒の失活に依存するからである。
【0069】
各工程a)、b)、c)、およびd)の操作期間は、このように、それぞれ以下の通りである:
・工程a)は、tAmaxの10〜70%、好ましくは20〜60%であり、
・工程b)は、tBmaxの40〜100%、好ましくは70〜100%であり、
・工程c)は、tCmaxの90〜100%、好ましくは100%であり、
・工程d)は、tDmaxの70〜100%、好ましくは85〜100%である。
【0070】
したがって、例えば、工程a)(この工程中、供給原料は、主要反応器の触媒床A1およびA2を通過する)は、工程b)(この工程中、供給原料は、保護反応器Bを通過し、次いで主要反応器の触媒床A2を通過する)へと切り替えされる。この切り替えが行われるのは、この工程a)の間中、最大許容値(例えば、熱分解ガソリンの供給原料については、180℃)に達するための最長操作期間tAmaxの10〜70%の範囲、好ましくは20〜60%の範囲である、工程a)の操作期間の後である。実際、工程a)から工程b)への切り替えが行われるのは、第1触媒床A1が部分的に失活した時であり、これは、tAmaxの10〜70%である工程a)の操作期間によって表されている。
【0071】
好ましい実施形態において、主要反応器に含まれる触媒床の体積は互いに異なっていてもよく同一であってもよいが、好ましい条件は、最終床の体積が、その他の床それぞれの体積より大きくあるべきことである。主要反応器中の各触媒床は、流れ方向に向かって体積が増加していくことが好ましい。実際、水素化反応の発熱性による温度上昇は、一般に第1触媒床上で起こるため、この第1の床の体積を最小限にすることが有利である。
水素化条件
本発明による方法に関連して、多価不飽和供給原料は、水素化を可能とする条件、特に温度、圧力、および毎時空間速度(HSV)の下、水素化触媒の存在下に、水素を含む気相と接触させられる。
【0072】
特に、選択的水素化方法は、圧力下、混合された気/液相中、水素の存在下で、有利に行われる。
【0073】
本発明による選択的水素化方法は、好ましくは、各反応器内で、0〜200℃の温度で行われる。
【0074】
各反応器内の圧力は、好ましくは1〜6.5MPaの範囲、より好ましくは1.5〜5MPaの範囲、より一層好ましくは1.5〜3.5MPaの範囲である。
【0075】
全体的な毎時空間速度(HSV)は、15℃での新鮮な供給原料の体積流量の、用いられる全ての反応器中に存在する触媒の全体積に対する比として定義され、これは、一般に1〜100h−1、好ましくは1〜50h−1である。
【0076】
供給原料がC3供給原料である場合、選択的水素化方法は、通常、気相中または混合された気/液相中でのプロセスとして、全体的な毎時空間速度が5〜30h−1、温度が0〜70℃、圧力が1.5〜5MPaの範囲で行われる。再循環比は、再循環物の質量流量の、反応器に入る供給原料の質量流量に対する比として定義され、特に0〜5の範囲であってよい。
【0077】
供給原料がC4供給原料である場合、選択的水素化方法は、通常、混合された気/液相プロセスとして、全体的な毎時空間速度が2〜15h−1、温度が30〜160℃、圧力が1.5〜5MPaの範囲で行われる。再循環比は、再循環物の質量流量の、反応器に入る供給原料の質量流量に対する比として定義され、特に0〜30の範囲であってよい。
【0078】
供給原料がC5供給原料である場合、選択的水素化方法は、通常、混合された気/液相プロセスとして、全体的な毎時空間速度が1〜10h−1、温度が30〜160℃、圧力が1.5〜5MPaの範囲で行われる。再循環比は、再循環物の質量流量の、反応器に入る供給原料の質量流量に対する比として定義され、特に0〜15の範囲、好ましくは0.5〜15の範囲であってよい。
【0079】
一層好ましくは、選択的水素化方法は、以下の条件で行われる:供給原料は、多価不飽和化合物を含む水蒸気分解ガソリンであり、(水素)/(水素化されるべき多価不飽和化合物)モル比は、一般に、1〜2の範囲であり、温度は、一般に40〜200℃の範囲、好ましくは50〜180℃の範囲であり、毎時空間速度(HSV)は、一般に1〜6h−1の範囲であり、圧力は、一般に2〜6MPaの範囲である。水素の流量は、理論上、全ての多価不飽和化合物を水素化しかつ反応器出口で過剰の水素を維持するために十分な量を提供するように調整される。再循環比は、再循環物の質量流量の、反応器に入る供給原料の質量流量に対する比として定義されるが、特に0〜5の範囲、好ましくは0.5〜5の範囲であってよい。
【0080】
主要反応器および保護反応器内の操作条件は、工程a)、b)、c)、およびd)間で同一であっても異なっていてもよく;好ましくは、それらは、特に工程a)、b)、およびc)間で同一である。
【0081】
同様に、主要反応器内の操作条件は、工程a)およびc)間で同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
供給原料が保護反応器のみを通過し、主要反応器の触媒が取り替えられ、および/または、再生される工程d)の間中、反応器Bの触媒床(単数または複数)の、低減された体積の触媒中での選択的水素化を確実なものとするために、工程d)の操作条件は、好ましくは、上記規定の選択的水素化のための工程を含む工程a)(または工程b)およびc))の始まりにおいて用いられる操作条件よりも過酷である。
供給原料
前記炭化水素供給原料は、少なくとも3個の炭素原子を含む少なくとも1個の多価不飽和分子を含む。より具体的には、前記処理される供給原料中に存在する前記多価不飽和炭化水素は、特に、少なくとも1種のアセチレン基(すなわち、少なくとも1つの三重結合)、および/または少なくとも1種のジエン基(すなわち、少なくとも2つの二重結合)、および/または少なくとも1種のアルケニル−芳香族基(すなわち、少なくとも1種のオレフィンリガンドを含む少なくとも1種の芳香環)を含む化合物である。特に、多価不飽和炭化水素の前記供給原料は、分子当たりアセチレン基およびジエン基の両方を含む少なくとも1種の化合物を含んでよい。
【0083】
より具体的には、炭化水素供給原料は、水蒸気分解からのC3留分、水蒸気分解からのC4留分、水蒸気分解からのC5留分、および水蒸気分解ガソリン(熱分解ガソリンとしても知られている)によって構成される群より選択される。熱分解ガソリン供給原料は、アルケニル芳香族を含んでもよい。
【0084】
本発明による選択的水素化方法を行うために有利に用いられる水蒸気分解からのC3留分は、一般に、プロピレン、プロパジエン、メチルアセチレン、およびプロパンを含む。C3留分は、例えば、以下の平均組成を有する:プロピレン90重量%程度、プロパジエンおよびメチルアセチレン2〜8重量%程度、残りは本質的にプロパンである。所定のC3留分において、0.1〜2重量%のC2化合物およびC4化合物も存在し得る。
【0085】
本発明による選択的水素化方法を行うために有利に用いられる水蒸気分解からのC4留分は、一般に、ブタン、ブテン、ブタジエン、ビニルアセチレン、およびブチンを含む。C4留分は、例えば、以下の平均組成を有する:ブタン1重量%、ブテン46.5重量%、ブタジエン51重量%、ビニルアセチレン(VAC)1.3重量%、ブチン0.2重量%。所定のC4留分において、0.1〜2重量%のC3化合物およびC5化合物も存在し得る。
【0086】
本発明による選択的水素化方法を行うために有利に用いられる水蒸気分解からのC5留分は、一般に、ペンタン、ペンテン、およびペンタジエンを含む。C5留分は、例えば、以下の組成を有する:ペンタン21重量%、ペンテン45重量%、ペンタジエン34重量%。
【0087】
本発明による選択的水素化方法を行うために有利に用いられる水蒸気分解ガソリンまたは熱分解ガソリンは、一般に0〜250℃の範囲、好ましくは10〜220℃の範囲の沸点を有する炭化水素留分に相当する。前記水蒸気分解ガソリン中に存在する水素化されるべき多価不飽和炭化水素は、特に、ジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等)、スチレン化合物(スチレン、アルファメチルスチレン等)、およびインデン化合物(インデン等)である。水蒸気分解ガソリンは、一般的に、C5−C12留分と、痕跡量のC3、C4、C13、C14、C15(例えば、これらの各留分について0.1〜3重量%)を含む。例として、熱分解ガソリンから形成される供給原料は、一般的に、以下の組成(重量%)を有する:パラフィン5〜15重量%、芳香族化合物50〜65重量%、モノオレフィン5〜15重量%、15〜25重量%のジオレフィン、2〜8重量%のアルケニル芳香族化合物、および20〜300重量ppm(百万分率)の硫黄、あるいはさらには所定の異なる供給原料については2000ppmの硫黄であって、これらの化合物で全体が100%となる。
【0088】
好ましくは、本発明の選択的水素化方法に従って処理される多価不飽和炭化水素供給原料は、水蒸気分解ガソリンである。
【0089】
前記供給原料がC3留分である場合、本発明による選択的水素化方法の目的は、プロパジエンおよびメチルアセチレンを選択的に水素化することである。C4留分の場合、その目的はブタジエン、ビニルアセチレン(VAC)、およびブチンを除去することである。C5留分の場合、その目的は、ペンタジエンを除去することである。前記供給原料が、水蒸気分解ガソリンである場合、本発明による選択的水素化方法の目的は、処理されるべき前記供給原料中に存在する前記多価不飽和炭化水素を選択的に水素化することであり、ジオレフィン化合物が部分的に水素化されてモノオレフィンとなるように、かつ、スチレンおよびインデン化合物が部分的に水素化されて対応する芳香族化合物となるようになされる。
気相
本発明による方法に関連して、炭化水素供給原料は、水素を含む気相と接触させられる。
【0090】
気相は、しばしば、水素と少なくとも1種のその他の気体との混合物からなり、用いられる精製方法に応じて反応に不活性である。上記その他の気体は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、窒素、アルゴン、一酸化炭素(数ppm)、および二酸化炭素によって形成される群より選択されてよい。上記その他の気体は、好ましくは、メタンまたはプロパンであり、より好ましくは、一酸化炭素を含まない。
【0091】
水素の量は、好ましくは、炭化水素供給原料中に存在する多価不飽和化合物の選択的水素化を可能とする、化学量論量の値に対して僅かに過剰である。本実施形態において、過剰の水素は、一般に1〜50重量%の範囲、好ましくは1〜30重量%の範囲である。
【0092】
気相中の水素の割合は、特に60〜100重量%、通常80〜99.99重量%の範囲であり、100%への補足物質は、上に記載の1種以上の不活性な気体である。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態によると、気相は、100重量%の水素からなる。
【0094】
水素を含む気相は、好ましくは、供給原料が通過する第1の反応器の頭部に少なくとも導入され、有利には、各触媒床の頭部にも導入されてよい。
【0095】
このように、各反応器に、水素を含む気相を段階的に導入することにより、より少量の水素を各反応器の頭部に導入することが可能であり、これにより、各反応器における二次反応のリスクが制限される。更に、周囲温度(約20℃)に近い温度で、各反応器の頭部に、水素を含む気相を導入することは、下流の反応器に導入される供給原料の温度が低下され得る(水素化反応は発熱性であるため)ことを意味する。これにより、オレフィン供給原料の蒸発が制限され、このことは、より良好な選択性に有利に働く。少量の水素が導入されることと、オレフィン供給原料が液体で維持されることとの組み合わせにより、供給原料中の水素のより良好な溶解がもたらされ、これにより、反応器は、単相の液体状態(monophase liquid conditions)に近づく。この単相状態に近い状態は、水素化反応の選択性が、更に向上させられ得ることを意味する。
【0096】
水素を含む気相は、炭化水素供給原料との混合物として、部分的に、第1触媒床の前に、かつ部分的に、前記反応器内に含まれる後続の床(単数または複数)の前に導入されてもよく(「クエンチ」とも称される)、これにより反応器内の発熱性水素化反応の温度勾配が制限される。
水素化触媒
以下の化学元素の群は、CAS分類(CRC Handbook of Chemistry and Physics, published by CRC press, editor-in-chief D.R. Lide, 81stedition, 2000-2001)に準拠している。例として、CAS分類に準拠した第VIII族は、新IUPAC分類の第8、9、および10欄の金属に対応する。
【0097】
本発明による方法において用いられる触媒は、選択的水素化方法における当業者に知られた触媒である。それは、好ましくは、少なくとも1種の第VIII族金属を含んでいてよく、より好ましくは、パラジウムまたはニッケルである。
【0098】
第VIII族金属、好ましくはパラジウムは、好ましくは、担体(ビーズ、押出物)の周囲に、シェル(shell)として担持されてもよい。このようなシェルの分布は、当業者に周知であり、触媒の選択性を向上させるために用いられ得る。これは、多価不飽和分子は実際転化されてモノオレフィンとなるが、モノオレフィンはアルカンへと水素化されないという意味合いによるものである。
【0099】
第VIII族金属がパラジウムである場合、パラジウム含有率は、触媒の質量の0.01〜2重量%の範囲、好ましくは0.03〜0.8重量%の範囲である。
【0100】
第VIII族金属がニッケルである場合、ニッケル含有率は、触媒の質量の1〜50重量%の範囲、好ましくは5〜40重量%の範囲、より好ましくは7〜30重量%の範囲である。
【0101】
「重量%」の値は、第VIII族金属の元素の形態に基づく。.
触媒は、特に、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、酸化チタン(TiO)、セリア(CeO)、およびジルコニア(ZrO)から選択される少なくとも1つの単純な酸化物によって形成される多孔質担体を含む。好ましくは、前記担体は、アルミナ、シリカ、およびシリカ−アルミナから選択される。特に好ましくは、多孔質担体は、アルミナである。
【0102】
多孔質担体は、特に、ビーズ、押出物の形態であってよく、例えば、三葉状物または四葉状物、ペレットまたは不規則な非球状凝集体の形態であってよく、この特定の形状は、粉砕工程から得られ得る。
【0103】
一層有利には、担体は、ビーズまたは押出物の形態である。
【0104】
好ましくは、用いられる触媒は、周期表の第IB欄に属する、少なくとも1種のドーパントを含んでもよい。それは、好ましくは、金、銀、および銅によって形成される群より選択されてもよく、より好ましくは、銀である。それはスズを含んでもよい。
【0105】
好ましくは、選択的水素化触媒は更に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属によって構成される群より選択される少なくとも1種の金属を含んでもよい。
【0106】
選択的水素化方法において使用される前に、選択的水素化触媒は、一般に、少なくとも1回の還元処理を経る。その後場合により、一般に硫黄を用いた不動態化(passiveation)が行われる。
【0107】
各触媒床は、1個以上の触媒を含む少なくとも1個の触媒床を含み、場合により、触媒床の頭部に少なくとも1つの不活性層が補足されている。反応器の触媒床(単数または複数)において用いられる触媒は、同一であっても異なっていてもよい。保護反応器内で用いられる触媒は、主要反応器中に用いられる触媒と同一であってもなくてもよい。
再生/再活性化
1つの反応器内の触媒が失活してくると、それは再生され、および/または再活性化される(rejuvenated)。
【0108】
触媒の再生は、特に、200〜480℃の温度で、温度を徐々に段階的に上昇させて、窒素下、かつ水蒸気(水蒸気ストリッピング)および酸素(燃焼)を連続的に追加させながら行われてよい。次いで、触媒は、場合により硫黄含有分子の添加を伴って、水素下で再活性化させられる。これにより、触媒は、当初の状態に回復する。
【0109】
触媒の再活性化(高温水素ストリッピングとして知られる)は、特に、200〜450℃の温度で、温度を徐々に段階的に上昇させて、窒素および水素下で行われてよい。
【0110】
このタイプの手順により、金属粒子の焼結および担体の劣化を制限することができる場合がある。
【0111】
考慮される工程a)〜d)によって、再生と再活性化との間の選択は、当業者によってなされてよい。例として、工程d’)の間中、当業者は、触媒の再生を優先的に選択するであろう。
【0112】
本明細書で用いられる用語「再生触媒」あるいは「触媒が再生される工程」は、「再生および/または再活性化された触媒」あるいは「触媒が再生および/または再活性化される工程」を意味することを意図されている。
再循環
本発明の好ましい実施形態によると、主要反応器または保護反応器から得られる気体/液体流出物の一部は、水素化されるべき供給原料との混合物として、戻されてもよい(すなわち、再循環させられてもよい)。
【0113】
本発明の別の好ましい実施形態によると、主要反応器または保護反応器から得られる気体/液体流出物の一部は、前記反応器の入口、および/または、上流に位置する反応器または触媒床、好ましくは、すぐ上流に位置する反応器または触媒床に戻されてもよい(すなわち、再循環させられてもよい)。
【0114】
これらの再循環の目的は、反応器の入口で供給原料を希釈することであり、これにより、温度上昇が制限され、それ故に、オリゴマー(またはゴム状物)の形成が制限される。
【0115】
主要反応器または保護反応器から得られる流出物は、再循環させられる前に、気相(未反応水素)の分離を経てもよく、これにより液相のみが再循環させられる。
【0116】
本発明による方法が再循環物(recycle)を用いる場合、水素を含む気相は、再循環物を導入する前および/または後に導入されてよい。
【0117】
別の実施形態によると、クエンチは、主要反応器または保護反応器内の2個の触媒床の間に導入されてよく、これにより、下流の触媒床の温度が低下させられる。このクエンチは、液体クエンチ、例えば新鮮な供給原料または再循環物および/または気体クエンチ、例えば水素を含む気相であってもよい。
【0118】
更に別の実施形態によると、本発明による方法は、下降流様式または上昇流様式で操作されてよい。上昇流様式で操作される場合、主要反応器の触媒床A1は、したがって、触媒床A2の下方に位置させられる。
熱交換器(チラー)
好ましい実施形態によると、本発明による方法は、特に、各反応器の間に1基以上の熱交換器(単数または複数)(チラー)を用いてよく、これにより、特に、保護反応器と主要反応器の間で、すぐ上流に位置する反応器からの流出物が冷却される。流出物の温度は低下されて、これにより保護反応器Bで蒸発したオレフィンが液化される。この中間の熱交換器は、したがって発熱性を制御するために用いられ得る。
【0119】
本発明による方法が、1基以上の熱交換器(単数または複数)を用いる場合、水素を含む気相は、前記熱交換器の上流および/または下流に導入されてよい。
【0120】
別の実施形態によると、再循環物はそれぞれ、反応器に導入される前に、熱交換器によって冷却されてもよい。
他の実施形態
本発明の方法の他の実施形態もまた、より困難な供給原料の処理のために、または図2に示すように、様々な工程の間中、触媒床を解放(relieve)するために想定されてよい。
【0121】
1つの実施形態によると、保護反応器は、工程a)の間中、主要反応器の上流で用いられてよく、これにより、より困難な供給原料が処理される。供給原料は従って、弁V1を介して保護反応器Bに導入され、次いで、弁V6を介して主要反応器の2個の触媒床A1およびA2を通過する。この場合、工程a)の間中、弁V2は、閉にされている。
【0122】
別の実施形態により、かつ、工程a)の間中、第1触媒床A1を解放し、および/または、より困難な供給原料を処理するために、供給原料の一部は、工程a)の間中、弁V2を介して、第1触媒床に導入されるのに加えて、弁V1を介して保護反応器に導入されてもよい。供給原料は、このように、保護反応器と、主要反応器の第1触媒床に、並行して導入される。弁V1、V2、およびV5は開にされ、弁V4は閉にされる。
【0123】
別の実施形態により、かつ、工程a)の間中、主要反応器の第2触媒床A2の触媒キャパシティ全てを用いるために、供給原料の一部は、工程a)の間中、弁V2を介して第1触媒床A1に導入されるのに加えて、弁V3を介して、第2触媒床A2に導入されてもよい。供給原料は、このように、主要反応器の2個の触媒床A1およびA2に並行して導入される。弁V2およびV3は、開とされる。この実施形態によると、主要反応器からの流出物の一部が、弁V7を介して保護反応器Bへと再循環させられてもよく、これにより、供給原料の一部が触媒床A1を迂回することを補っている。
【0124】
更に別の実施形態によると、工程b)の間中、供給原料が、保護反応器B、次いで、主要反応器の第2触媒床を連続して通過する場合、供給原料の一部は、主要反応器の、部分的に失活した第1触媒床A1上に導入されてもよい。供給原料は、このように、保護反応器と、主要反応器の第1触媒床へと、並行して導入されてもよい。弁V1、V2、およびV5は開にされ、弁V4は閉にされる。
【0125】
別の実施形態によると、水素化の選択性は、10〜15%にとどまるまでオレフィンを飽和させるために、低下されてもよい。
【実施例】
【0126】
実施例1(従来技術に合致する)
MAV(MAVは、無水マレイン酸値(Maleic Anhydride Value)を表し、ジオレフィン含有量を測定する)が210であり、臭素価(臭素価はオレフィン含有量を測定する)が81であり、3%のスチレン(および8%のC9+スチレン化合物)を含有する、熱分解ガソリン「PyGas」の供給原料を、以下の操作条件下、図1に示す水素化方法を用いて処理した:
‐供給原料の流量:17t/h
‐水素を含む気相の組成:Hが95%、CHが5%
‐全水素流量:0.4t/h(H+CH
‐HSV(15℃での新鮮な供給原料の体積流量の、触媒の体積に対する比として定義される):1.5h−1
‐触媒の体積:直径1000mmの反応器中、17m(第1主要反応器、活性触媒)
‐触媒の量:直径1000mmの反応器中、17m(第2主要反応器、不活性触媒)
‐再循環流量:30t/h
‐反応器入口での絶対圧:3MPa(30バール)
‐反応器入口での温度:60℃
この実施例の目的は、反応器出口におけるスチレン含有率(ならびに、結果的に、水素化がより容易であるジオレフィンの大部分)を0.5重量%に低下させることであった。
【0127】
この実施形態において、水素化のために単一の反応器を用いた。この反応器内で、スチレンの所望の転化率100%を実現する必要があった。
【0128】
したがって、6ヶ月と推定されるサイクルタイムの間、熱分解ガソリン供給原料を水素化するために、この実施例による方法を用いることが出来た。このことは、第2の
主要反応器を用いて、12ヶ月の期間にわたり、触媒体積の全てを用いることが出来たことを意味する。
【0129】
【表2】
実施例2(本発明に合致する)
実施例1(比較例)で処理したものと同じオレフィン供給原料を、本発明による水素化方法を用いて処理した。本方法では、図2で示すように、直列および並列で接続された2基の(クエンチボックスを有するかまたは有しない)反応器を用いた。実施例1の2基の反応器内で用いた触媒と比較して、15体積%低減させた触媒の質量(34mに代わって28m)を、主要反応器中に70%の程度まで(第1床において30%、第2床において40%)、保護反応器中に30%の程度まで分布させた。実施例1(比較例)の方法と実施例2(本発明に合致する)の方法とを、等しい流量(30t/h)ならびに供給原料およびガスの品質(0.4t/h、H95%、CH5%)で比較した。操作条件は、以下の通りであった:
‐主要反応器のHSV(15℃での新鮮な供給原料の体積流量の、主要反応器の触媒の体積に対する比として定義される):1.5h−1
‐触媒の体積:直径1000mmの反応器中20m(主要反応器、活性触媒)
‐触媒の体積:直径1000mmの反応器中8m(保護反応器、活性触媒)
‐反応器の直径:1000mm
‐再循環流量:30t/h
‐反応器中の絶対圧:3MPa(30バール)
‐第1反応器における入口温度:60℃
本実施例の目的は、参照用の方法より長い期間にわたり、プロセス出口においてスチレン転化率を0.5重量%に維持することである。このことを、触媒床の再構成、および触媒床の最適な順序付け(optimized sequencing)によって実現する一方、触媒の全体積(主要反応器および保護反応器の体積の合計として計算される)を低減させた。以下の表に、触媒全てを使ったサイクルの工程を記録する。
【0130】
【表3】
以下の表には、各工程の、最長操作期間tmaxと操作期間(百分率として)と実際の期間とが記録されている:
【0131】
【表4】
工程a)およびc)の間中、保護反応器Bの触媒を再生し、工程d)の間中、主要反応器R1(A1+A2)の触媒を再生した。この実施例における工程a)の期間を、最長操作期間tAmaxに対して求めたところ、サイクルの終わりにおける180℃の温度については、7ヶ月であった。実際、床A1およびA2の体積は、比較例のものより20%超であったため、失活の速度は、より遅いと推定し、このことは、工程a)について3.5ヶ月の期間を得ることができたことを意味していた。
【0132】
工程b)の期間は、工程a)の期間と同等であった。なぜなら、この場合、保護反応器B内の触媒の体積が、A1のものと等しかったからである。床A2の僅かな失活を考慮に入れて、再び、3.5ヶ月と評価されたこの工程の期間を得た。
【0133】
工程b)の間中のA2の失活が、工程c)の期間に与える影響は、僅かであった。また、工程a)およびc)を組み合わせた期間を、参照例(実施例1)の従来のサイクルの期間として評価した。これは、この体積の触媒について7ヶ月に相当しており、したがって、工程c)の期間である3.5ヶ月に相当していた。
【0134】
工程c)の間中、反応器Bの触媒を、再生あるいは取り替えて、工程d)を、最大の活性を有する触媒上で開始した。これらの条件下で、63℃の出発温度では、より少ない体積の触媒で、期待された転化率(出口において0.5重量%のスチレン)を得た。発熱性の制御を向上させるために、希釈材の量を修正する(modify)こと、およびBにクエンチボックスを備えることが可能であった。工程d)の期間を3〜3.5ヶ月に制限する流出物温度で、その転化率を得た。
【0135】
したがって、本発明による方法(実施例2)を用いることにより、触媒の体積が15体積%低減し、かつ、関連する設備のサイズをも低減しつつ、触媒の全耐用サイクルの期間が12〜15%(12ヶ月ではなく、13.5ヶ月)増加した。
図1
図2