特許第6876441号(P6876441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876441
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】揮散装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20210517BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D83/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-2580(P2017-2580)
(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公開番号】特開2018-110684(P2018-110684A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129057
【氏名又は名称】株式会社カナエ
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】水中 幹士
(72)【発明者】
【氏名】藤井 沙織
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4998671(US,A)
【文献】 特開2013−78348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成され、揮発性を有する薬剤を前記2枚のフィルムに接触させた状態で収容した収容部と、
前記2枚のフィルムの一方に前記収容部とは別に設けた前記薬剤を排出する排出口と、
前記収容部と前記排出口の間で前記2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、前記収容部と前記排出口を非連通状態に区画するとともに、前記収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに前記収容部を前記排出口に連通させる易連通部と、
前記排出口に対向し、該排出口から排出された前記薬剤を吸収して揮散させる吸収材と、
を有することを特徴とする揮散装置。
【請求項2】
前記易連通部を介して前記収容部と連通可能に設けられ、前記2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成された薬剤受部をさらに有し、
前記排出口は、前記薬剤受部に連通している、
ことを特徴とする請求項1に記載の揮散装置。
【請求項3】
少なくとも1つの揮散孔、および前記収容部の少なくとも一部を外部に露出する押込み孔を有するケースであって、前記収容部、前記排出口、および前記易連通部を有する本体と、前記吸収材と、を収容したケースをさらに有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の揮散装置。
【請求項4】
2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成され、揮発性を有する薬剤を前記2枚のフィルムに接触させた状態で収容した収容部と、
前記収容部とは別に前記2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成された薬剤受部と、
前記収容部と前記薬剤受部の間で前記2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、前記収容部と前記薬剤受部を非連通状態に区画するとともに、前記収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに前記収容部を前記薬剤受部に連通させる易連通部と、
前記2枚のフィルムの一方に前記収容部及び前記薬剤受部とは別に設けた前記薬剤を排出する複数の排出口と、
前記2枚のフィルムの間に設けられ、前記薬剤受部を前記複数の排出口にそれぞれ連通した所定の長さを有する複数の流路と、
を有することを特徴とする揮散装置。
【請求項5】
前記複数の排出口に対向し、該排出口から排出された前記薬剤を吸収して揮散させる吸収材をさらに有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の揮散装置。
【請求項6】
前記複数の流路は、前記収容部から前記薬剤受部につながる連通路と交差する方向に延設されている、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の揮散装置。
【請求項7】
少なくとも1つの揮散孔、および前記収容部の少なくとも一部を外部に露出する押込み孔を有するケースであって、前記収容部、前記薬剤受部、前記易連通部、前記複数の排出口、および前記複数の流路を有する本体と、前記吸収材と、を収容したケースをさらに有する、
ことを特徴とする請求項5または請求項5に従属した請求項6に記載の揮散装置。
【請求項8】
2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成され、揮発性を有する薬剤を前記2枚のフィルムに接触させた状態で収容した収容部と、
前記収容部とは別に前記2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成された薬剤受部と、
前記薬剤受部内に配置した吸収材と、
前記薬剤受部に連通して前記2枚のフィルムの一方に設けた前記薬剤を揮散させるための揮散孔と、
前記収容部と前記薬剤受部の間で前記2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、前記収容部と前記薬剤受部を非連通状態に区画するとともに、前記収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに前記収容部を前記薬剤受部に連通させる易連通部と、
を有することを特徴とする揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芳香剤などの薬剤を揮散させる揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚のフィルムの間に互いに分離した2つの空間を設けて、一方の空間に薬液を収容し、もう一方の空間に塗布棒を収容した包装体が知られている。この包装体は、使用時において、薬液を収容した一方の空間を外部から押圧し、塗布棒を収容した他方の空間と連通して、薬液を塗布棒に浸透させる。このため、2つの空間の間のシール部分は、容易に剥離可能なシール構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−62682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上述した包装体の原理を利用して、簡易的な芳香剤の揮散装置を製造しようとした場合、包装体のどこかに薬液を揮散させるための揮散孔を設ける必要がある。しかし、例えば、薬液を収容した一方の空間に連通する揮散孔を設けてしまうと、当該空間を外部から押したときに、薬液が揮散孔から単に漏れてしまい、薬液の揮散状態を所望する状態にコントロールすることができない。また、この場合、空間を押した指に薬液が付着してしまう。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、簡単な装置構成により薬剤を良好に揮散させることができる揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の揮散装置の一態様は、2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成され、揮発性を有する薬剤を2枚のフィルムに接触させた状態で収容した収容部と、2枚のフィルムの一方に収容部とは別に設けた薬剤を排出する排出口と、収容部と排出口の間で2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、収容部と排出口を非連通状態に区画するとともに、収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに収容部を排出口に連通させる易連通部と、排出口に対向し、排出口から排出された薬剤を吸収して揮散させる吸収材と、を有する。
【0007】
本発明の揮散装置の一態様は、2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成され、揮発性を有する薬剤を2枚のフィルムに接触させた状態で収容した収容部と、収容部とは別に2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成された薬剤受部と、収容部と薬剤受部の間で2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、収容部と薬剤受部を非連通状態に区画するとともに、収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに収容部を薬剤受部に連通させる易連通部と、2枚のフィルムの一方に収容部及び薬剤受部とは別に設けた薬剤を排出する複数の排出口と、2枚のフィルムの間に設けられ、薬剤受部を複数の排出口にそれぞれ連通した所定の長さを有する複数の流路と、を有する。
【0008】
本発明の揮散装置の一態様は、2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成され、揮発性を有する薬剤を2枚のフィルムに接触させた状態で収容した収容部と、収容部とは別に2枚のフィルムを部分的に貼り合わせて周囲を封止して形成された薬剤受部と、薬剤受部内に配置した吸収材と、薬剤受部に連通して2枚のフィルムの一方に設けた薬剤を揮散させるための揮散孔と、収容部と薬剤受部の間で2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、収容部と薬剤受部を非連通状態に区画するとともに、収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに収容部を薬剤受部に連通させる易連通部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の揮散装置の一態様によれば、簡単な装置構成により薬剤を良好に揮散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る揮散装置を示す外観斜視図である。
図2図2は、図1の揮散装置に組み込まれた本体を示す外観斜視図である。
図3図3は、図1の揮散装置をF3−F3に沿って見た断面図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る揮散装置の本体を上面側から見た外観図である。
図5図5は、図4の本体を収容するケースを上面側から見た外観図である。
図6図6は、図5のケースを裏面側から見た外観図である。
図7図7は、図5のケースの変形例を示す外観図である。
図8図8は、図6のケースの変形例を示す外観図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る揮散装置を示す外観斜視図である。
図10図10は、図9の揮散装置を上面側から見た外観図である。
図11図11は、図10の揮散装置をF11−F11に沿って見た断面図である。
図12図12は、図10の揮散装置の変形例を示す外観図である。
図13図13は、図12の揮散装置をF13−F13に沿って見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る揮散装置10は、略矩形ブロック状の偏平なケース2を有する。ケース2の外形はいかなるものであってもよい。ケース2は、例えば樹脂などにより形成されている。ケース2の長手方向の寸法は、例えば、2〜6cm程度であり、厚みは、例えば、5mm〜20mm程度である。ケース2は、樹脂に限らず例えば金属や紙など他の材料を用いて形成してもよい。
【0012】
ケース2内には、図2に示す本体1が収容配置されている。本体1の外周形状は、ケース2の内周形状に合わせて略決められている。本体1は、図3に示すように、例えば2枚の樹脂製のフィルム1a、1bを部分的に貼り合せたものであり、2枚のフィルム1a、1bの間に、互いに分離した大小2つの空間4、6を有する。言い換えると、各空間4、6は、それぞれ、2枚のフィルム1a、1bの間のシール部分1cによって周りを囲まれて封止されている。本体1は、樹脂に限らず他の材料を用いて形成してもよい。
【0013】
2枚のフィルム1a、1bは、例えば、共押出し加工の柔らかい成形シートであり、50〜600μm程度の厚みを有する。本実施形態では、加熱成形ができ、後述する押圧部11を完全に押し潰すことができ、押し潰した際に指が痛くなく、製膜時にバリア層を積層できるように、フィルム1a、1bの厚みを180〜200μmに設計した。なお、ここで言う「フィルム」とは、JIS規格によるところの「厚さが0.2ミリメートル以上の軟質性のシート」を含むものであり、以下の説明では、これらフィルムおよびシートを総称してフィルム1a、1bとする。
【0014】
本体1内の大きい方の空間4は、例えば、芳香剤などの揮発性を有する薬剤Yを収容する収容部として機能する。薬剤Yは、芳香剤に限らず、例えば消臭剤や殺虫剤などであってもよい。本体1内の小さい方の空間6は、大きい方の空間4から流れ込む薬剤Yを受ける薬剤受部として機能する。以下の説明では、大きい方の空間4を収容部4と称し、小さい方の空間6を薬剤受部6と称する場合もある。2枚のフィルム1a、1bは、収容部4内に薬剤Yを収容した状態で貼り合わされる。
【0015】
上述したように、収容部4と薬剤受部6の間は、シール部分1cによって区画されている。よって、通常(収容部4を外から加圧していない状態)は、収容部4内の薬剤Yが薬剤受部6に流れ込むことはない。収容部4と薬剤受部6の間のシール部分1cは、加圧により2枚のフィルム1a、1bが容易に剥離するシール構造を有し、本発明の易連通部8として機能する。シール部分1cの幅は、少ない力で2枚のフィルム1a、1bを剥離しやすくするため狭くすることが好ましく、本実施形態では1〜3mmに設計した。
【0016】
この易連通部8は、例えば、2枚のフィルム1a、1bを容易に剥離可能なイージーピールにて貼り合せた部分であり、2枚のフィルム1a、1bを熱溶着する際の温度や時間を調整することで、剥離の容易度を適切な度合いに調整したものである。易連通部8は、これ以外に、空間4内の圧力が所定のしきい値を超えたときに容易に剥離可能な構造であればいかなるものであってもよい。
【0017】
収容部4と易連通部8の間には、収容部4内の薬剤Yを薬剤受部6(易連通部8)に向かわせるための比較的薄い指向空間9が設けられている。指向空間9は、2枚のフィルム1a、1bがわずかに離間した部位であり、薬剤受部6に沿って湾曲して凹んだ縁部9aを有する。指向空間9内には、収容部4内の薬剤Yが流入していてもよい。
【0018】
以下の説明では、本体1内の大きい方の空間4を包囲するフィルム1aの膨出部分を押圧部11と称する。押圧部11を外から押圧することで、収容部4内の圧力が上昇する。2つの空間4、6は、2枚のフィルム1a、1bを貼り合せない部位で上面側のフィルム1aを膨出させることで形成されている。下面側のフィルム1bは、平らであり、小さい方の空間6に連通する排出孔7(排出口)を有する。押圧部11は、略半球状である。
【0019】
ケース2は、その上面2aに比較的大きな円形の孔3を有する。この孔3は、本体1の押圧部11を少なくとも部分的に外部に露出するための押込み孔として機能する。本実施形態では、押圧部11の略全部を孔3を介して外部に露出させている。
【0020】
また、ケース2は、その裏面2b側に、内部に連通した少なくとも1つの揮散孔5を有する。本実施形態では、ケース2の裏面2b側に複数の揮散孔5を設けた。揮散孔5の形状や個数は任意に設計可能であり、ケース2の裏面2b側に限らず、上面2a側や側面側に設けてもよい。
【0021】
また、ケース2内には、本体1のフィルム1b側に重ねて、例えば不織布により形成した吸収材12が収容配置されている。吸収材12の材質は、不織布に限らず、薬剤Yを吸収して揮散可能な材料であればいかなるものであってもよい。本実施形態では、複数の揮散孔5を備えたケース2の裏面2bに対向して吸収材12を配置したため、複数の揮散孔5は吸収材12によって覆われている。
【0022】
上述した揮散装置10は、例えば、図示しないネックストラップなどを用いて首にかけて使用される。揮散装置10を使用する場合、ユーザーは、ケース2の孔3から突出した押圧部11を指で押圧する。これにより、収容部4内の圧力が上昇し、指向空間9内の加圧された薬剤Yが、指向空間9の縁部9aを押して、易連通部8の2枚のフィルム1a、1bを押し広げる。このとき、指向空間9の縁部9aが薬剤受部6の外周に沿って湾曲しているため、易連通部8の2枚のフィルム1a、1bが薬剤受部6に向けて徐々に剥離される。
【0023】
そして、指向空間9の縁部9aが薬剤受部6に徐々に近づいて両者がつながると、指向空間9を介して収容部4内の薬剤Yが薬剤受部6内に流れ込む。薬剤受部6に流入した薬剤Yは、薬剤受部6に一旦溜まった後、薬剤受部6に連通したフィルム1bの排出孔7を介して本体1から流出し、排出孔7に対向した吸収材12によって吸収される。吸収材12によって吸収された薬剤Yは、ケース2の複数の揮散孔5を介して揮散装置10の外部へ揮散される。
【0024】
以上のように、本実施形態によると、収容部4に連通した指向空間9の縁部9aが薬剤受部6の外周縁に沿って湾曲しているため、押圧部11を所定のしきい値を超える押圧力で押圧したとき、収容部4を薬剤受部6(排出孔7)に確実に連通させることができる。このため、例えば、薬剤Yが本体1の外周部から漏れる心配がなく、薬剤Yの揮散状態を良好に制御することができる。
【0025】
また、本実施形態によると、押圧部11を押したとき、収容部4を排出孔7に直接つなげるのではなく、薬剤受部6に一旦溜めるようにしているため、排出孔7を介して薬剤Yが勢いよく吐出することがない。このため、排出孔7を介して排出した薬剤Yを確実に吸収材12に浸透させることができ、薬剤Yの飛び散りを防止することができる。
【0026】
また、本実施形態によると、押圧部11を一度押圧するだけで、収容部4内の薬剤Yを略全量使用することができ、薬剤Yを無駄なく使用することができる。なお、本実施形態では、押圧部11の略全体がケース2の孔3から外に突出しているため、個人差を生じることなく、押圧部11を最後まで確実に押し込むことができる。
【0027】
また、本実施形態では、本体1の排出孔7に対向(接触)して吸収材12を配置したため、排出孔7に到達した薬剤Yを吸収材12の毛管作用により吸い出すことができ、薬剤Yを無駄なく吸収材12に吸収させることができる。
【0028】
さらに、本実施形態によると、押圧部11を指で押圧するだけで、揮散装置10の使用を開始することができ、薬剤Yが漏れて指に付着する不具合を生じることがなく、利便性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
以下、図4乃至図8を参照して、第2の実施形態に係る揮散装置20について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態の揮散装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、揮散装置20の本体21は、左右に長い略長円形の外周縁を有する収容部4、および略三角形の外周縁を有する薬剤受部6を有する。薬剤受部6は、その1つの角部が収容部4に対向する向きで、収容部4から離間して設けられている。収容部4の周りには、収容部4の全周を囲むように比較的薄い指向空間9が設けられている。指向空間9の薬剤受部6に対向する縁部9aは、薬剤受部6に沿って湾曲して凹んでいる。
【0030】
また、薬剤受部6の周りには、比較的薄い流通空間24が設けられている。流通空間24は、薬剤受部6の全周を囲んで設けられ、左右に離間して設けた排出孔7a、7bに薬剤受部6を連通する薬剤Yの流路として機能する。流通空間24と指向空間9の間にはシール部分1cが設けられており、指向空間9の縁部9aと流通空間24との間のシール部分1cが、易連通部8として機能する。
【0031】
収容部4、および薬剤受部6は、2枚のフィルム1a、1bを貼り合せていない部位で上面側のフィルム1aを膨出させて形成されている。指向空間9、および流通空間24は、2枚のフィルム1a、1bを貼り合せないことで形成されている。これらの空間4、6、9、24以外の部位では、2枚のフィルム1a、1bが貼り合わされている。この貼り合わされた部分がシール部分1cとなる。
【0032】
排出孔7a、7bは、本体21の裏面側のフィルム1bを貫通して設けられている。本実施形態では、排出孔7a、7bを薬剤受部6に対向して設けるのではなく、薬剤受部6から遠くに離間させて設けている。このため、薬剤受部6と左右それぞれの排出孔7a、7bをつなぐ薬剤Yの流路は、所定長さを有して比較的長く形成されている。
【0033】
薬剤受部6からつながる左右2つの流路は、易連通部8を通る薬剤Yの連通路(収容部4内の薬剤Yが薬剤受部6に向けて流れ込む流路)と交差する方向に延びている。また、左右2つの流路は、薬剤受部6からそれぞれの排出孔7a、7bに向けて真っ直ぐ延びておらず、少なくとも1箇所で屈曲している。
【0034】
図5および図6に示すように、揮散装置20のケース22は、その上面22a側に本体21の押圧部11を露出させるための孔3を有する。孔3の形状は、押圧部11の形状に合わせて長円形に形成されている。孔3は、押圧部11の略全部を外部に露出させる。また、ケース22の裏面22b側には、複数の揮散孔5が設けられている。
【0035】
ケース22内には、ここでは図示省略した吸収材12が収容配置されている。吸収材12は、本体21の裏面側のフィルム1bと裏面22b側のケースとの間に配置されている。このため、吸収材12は、本体21の2つの排出孔7a、7bに対向し、且つ複数の揮散孔5を覆うように設けられている。
【0036】
図7および図8は、第2の実施形態の変形例に係るケース26を示す。変形例のケース26も、ケース22の上面26a側に孔3を有し、裏面26b側に複数の揮散孔5を有する。ケース26の表面の模様やデザインは、図5乃至図8に例示したものに限らず、種々変更および選択が可能である。また、揮散孔5の個数やサイズ、形成位置や形状なども任意に変更可能である。
【0037】
本実施形態の揮散装置20を使用する場合、ユーザーは、ケース22の孔3から突出した押圧部11を指で押圧する。これにより、収容部4内の圧力が上昇し、指向空間9内の加圧された薬剤Yが、指向空間9の縁部9aを押して、易連通部8の2枚のフィルム1a、1bを押し広げる。このとき、指向空間9の縁部9aが薬剤受部6の外周に沿って湾曲しているため、易連通部8の2枚のフィルム1a、1bが薬剤受部6に向けて徐々に剥離される。
【0038】
そして、指向空間9の縁部9aが薬剤受部6に徐々に近づいて流通空間24につながると、指向空間9を介して収容部4内の薬剤Yが薬剤受部6内に流れ込む。薬剤受部6に流入した薬剤Yは、薬剤受部6を概ね満たした後、左右2つの流路に分岐される。各流路を通って流れた薬剤Yは、フィルム1bの排出孔7a、7bを介して本体1から流出し、排出孔7a、7bに対向した吸収材12によって吸収される。吸収材12によって吸収された薬剤Yは、ケース2の複数の揮散孔5を介して揮散装置10の外部へ揮散される。
【0039】
以上のように、本実施形態によると、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、以下の効果を奏することができる。
【0040】
例えば、本実施形態では、押圧部11を押圧したとき、収容部4内の薬剤Yが薬剤受部6に一旦溜まり、薬剤受部6に流れ込んだ薬剤Yが左右2方向に分岐される。このため、押圧部11と排出孔7a、7bの間に薬剤Yの圧力を逃がす空間を設けることができ、排出孔7a、7bを介して薬剤Yが急激に吐出されて吸収材12にうまく吸収されなくなる不具合を防止することができ、薬剤Yの漏れの問題を防止することができる。
【0041】
特に、本実施形態によると、押圧部11を押したとき、薬剤受部6に流れ込んだ薬剤Yが左右2方向に分岐されるため、流通空間24を流れる薬剤Yの圧力が分散され、薬剤Yを左右の排出孔7a、7bに向けて確実に導くことができる。このように、薬剤Yを2方向に分岐させることにより、薬剤Yを広範囲に拡散させることができ、薬剤Yの拡散スピードを向上させることができ、吸収材12に対する薬剤Yの吸収スピードを向上させることができる。また、薬剤Yを2方向に分岐させることにより、薬剤Yを均一に拡散させることができる。
【0042】
言い換えると、薬剤Yを一旦溜める薬剤受部6を設けるとともに、易連通部8を通る薬剤Yの方向と、薬剤受部6から左右の排出孔7a、7bに向かう流路が交差しているため、この交差部位(すなわち薬剤受部6)において一旦溜めた薬剤Yを方向を変えて左右の排出孔7a、7bに向かわせることができ、薬剤Yの流速を遅くすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、薬剤受部6から左右の排出孔7a、7bに向かう流路が少なくとも1箇所で屈曲しているため、この部位で薬剤Yの流路抵抗を生じさせることができ、流路の形状を変更することで、薬剤Yの流速を所望する速度にコントロールすることができる。
【0044】
このため、本実施形態によると、上述した第1の実施形態と比較して、薬剤Yの不所望な漏れなどをより効果的に抑制することができ、利便性をさらに向上させることができる。
(第3の実施形態)
以下、図9乃至図13を参照して、第3の実施形態に係る揮散装置30について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態の揮散装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
図9乃至図11に示すように、揮散装置30は、2枚のフィルム1a、1bを部分的に貼り合せた本体31を有し、本体31の薬剤受部36内に吸収材12を収容配置した構造を有し、ケースを有していない。つまり、上面側のフィルム1aを貫通して薬剤受部36に連通する複数(本実施形態では3つ)の揮散孔5を設けて、本体31だけで揮散装置30を構成している。
【0046】
この揮散装置30を使用する際には、押圧部11を押圧して、上述した第1の実施形態の揮散装置10と同様に薬剤受部36に薬剤Yを流し込む。本実施形態では、薬剤受部36内に吸収材12があるので、収容部4から流れ込んだ薬剤Yは、吸収材12に吸収されて、複数の揮散孔5を介して揮散される。
【0047】
図12および図13に示すように、第3の実施形態の変形例に係る揮散装置30’は、上面側のフィルム1aを貫通して薬剤受部36に連通する複数の揮散孔5を設ける代わりに、薬剤受部36の周囲のシール部分1cを部分的に剥離(或いは部分的にシールしない)して、薬剤受部36に連通する複数(本変形例では4つ)の揮散孔35を設けている。この位置に揮散孔35を設けることで、第3の実施形態と比較して、吸収材12に吸収された薬剤Yが指に付着し難くすることができる。
【0048】
以上のように、第3の実施形態によると、ケースを省略して、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。よって、本実施形態によると、より安価な揮散装置を提供することができる。
【0049】
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
揮発性を有する薬剤を収容した収容部と、
前記薬剤を排出する排出口と、
前記収容部と前記排出口を非連通状態に区画するとともに、前記収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに前記収容部を前記排出口に連通させる易連通部と、
前記排出口に対向し、該排出口から排出された前記薬剤を吸収して揮散させる吸収材と、
を有することを特徴とする揮散装置。
[2]
前記易連通部を介して薬剤受部をさらに有し、
前記排出口は、前記薬剤受部に連通している、
ことを特徴とする[1]に記載の揮散装置。
[3]
少なくとも1つの揮散孔、および前記収容部の少なくとも一部を外部に露出する押込み孔を有するとともに、前記収容部、前記排出口、および前記易連通部を有する本体と、前記吸収材と、を収容したケースをさらに有する、
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の揮散装置。
[4]
揮発性を有する薬剤を収容した収容部と、
前記薬剤を受ける薬剤受部と、
前記収容部と前記薬剤受部を非連通状態に区画するとともに、前記収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに前記収容部を前記薬剤受部に連通させる易連通部と、
前記薬剤を排出する複数の排出口と、
前記薬剤受部を前記複数の排出口にそれぞれ連通した所定の長さを有する複数の流路と、
を有することを特徴とする揮散装置。
[5]
前記複数の排出口に対向し、該排出口から排出された前記薬剤を吸収して揮散させる吸収材をさらに有する、
ことを特徴とする[4]に記載の揮散装置。
[6]
前記複数の流路は、前記収容部から前記薬剤受部につながる連通路と交差する方向に延設されている、
ことを特徴とする[4]または[5]に記載の揮散装置。
[7]
少なくとも1つの揮散孔、および前記収容部の少なくとも一部を外部に露出する押込み孔を有するとともに、前記収容部、前記薬剤受部、前記易連通部、前記複数の排出口、および前記複数の流路を有する本体と、前記吸収材と、を収容したケースをさらに有する、
ことを特徴とする[5]または[5]に従属した[6]に記載の揮散装置。
[8]
揮発性を有する薬剤を収容した収容部と、
前記薬剤を受ける薬剤受部と、
前記薬剤受部内に配置した吸収材と、
前記薬剤受部に設けた前記薬剤を揮散させるための揮散孔と、
前記収容部と前記薬剤受部を非連通状態に区画するとともに、前記収容部内の圧力が所定のしきい値を超えたときに前記収容部を前記薬剤受部に連通させる易連通部と、
を有することを特徴とする揮散装置。
【符号の説明】
【0050】
1…本体、 1a、1b…フィルム、 1c…シール部分、 2、22…ケース、 3…孔、 4…収容部、 5、35…揮散孔、 6、36…薬剤受部、 7…排出孔、 8…易連通部、 9…指向空間、 9a…縁部、 10、20、30…揮散装置、 11…押圧部、 12…吸収材、 24…流通空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13