(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876443
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】金属製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 25/38 20060101AFI20210517BHJP
B65D 6/02 20060101ALI20210517BHJP
B65D 6/40 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
B65D25/38
B65D6/02
B65D6/40
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-5361(P2017-5361)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-114990(P2018-114990A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064382
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ワイ・ケイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 吉明
【審査官】
内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−233396(JP,A)
【文献】
実開昭58−094631(JP,U)
【文献】
特開2010−274958(JP,A)
【文献】
実開昭55−123441(JP,U)
【文献】
特開平09−002467(JP,A)
【文献】
特開平09−278082(JP,A)
【文献】
実開昭52−135510(JP,U)
【文献】
特開2005−043937(JP,A)
【文献】
特開2002−192146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/38
B65D 6/02
B65D 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部形状が略直方体の金属製容器であって、
前面、底板部、側壁部及び天井部を有し、
前記底板部の内面が、平面視における前記底板部の略中心位置であって、前記底板部における最も低い地点に向かって傾斜する曲面形状に形成され、前記底板部における最も低い地点に排水口が形成されており、
前記底板部は、内部に格納する液体について、斜め下方向へ向かう水流を生じさせる第一の水流発生手段として機能する形状に構成され、
前記側壁部の内面が、前記天井部から前記底板部に向かって延在する複数の曲面突出部を有し、前記側壁部は、前記液体について、前記金属製容器の上下方向と平面視において略直交し、かつ、前記金属製容器の略中心方向へ向かって互いに対向する異なる方向の水流を生じさせる第二の水流発生手段として機能する形状に構成されている、
金属製容器。
【請求項2】
前記底板部の内面の曲率半径は、前記曲面突出部の曲率半径よりも大きく形成されており、
前記前面には、前記底板部における最も低い地点よりも高い位置に取水口が形成されている、
る請求項1に記載の金属製容器。
【請求項3】
前記底板部の内面の曲面の曲率半径(R1)に対する前記金属製容器の内面の幅(B)の比率A1(B/R1)は、0.5以上0.7以下に規定されている、請求項1または請求項2に記載の金属製容器。
【請求項4】
前記比率A1に対する前記曲面突出部の曲率半径R2の比率A2(R2/A1)は、16以上66以下に規定されている、
請求項3に記載の金属製容器。
【請求項5】
前記曲面突出部において、基部の曲率半径R3が突出端部の曲率半径R4よりも大きく規定されている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の金属製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用途に使用される液体貯蔵用のタンクとして、金属製の容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−158069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、容器の形状によっては、容器内部において、静止状態の流体領域が生じる。静止状態の流体領域は、容器に格納する液体の品質を劣化させる場合がある。これに対して、容器の内部に攪拌機構を配置して、静止状態の流体領域を解消することは可能であるが、容器の構造が複雑化する。
【0005】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、駆動機構を用いずに、格納した液体を攪拌することができる金属製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、外部形状が略直方体の金属製容器であって、底板部、側壁部及び天井部を有し、前記底板部における最も低い地点の近傍に排水口が形成されており、前記底板部は、内部に格納する液体について、斜め下方向へ向かう水流を生じさせる第一の水流発生手段として機能する形状に構成され、前記側壁部は、前記液体について、前記金属製容器の上下方向と直交し、かつ、前記金属製容器の中心方向へ向かう水流を生じさせる第二の水流発生手段として機能する形状に構成されている、金属製容器である。
【0007】
第一の発明の構成によれば、金属製容器の内面形状が第一の水流発生手段及び第二の水流発生手段として機能する。内部に格納した液体を排水口から排出するときに、これらの水流発生手段によって、異なる方向の水流が発生し、金属製容器の内部に格納した液体は攪拌される。すなわち、駆動機構を用いずに、格納した液体を攪拌することができる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記底板部の内面が、前記底板部における最も低い地点に向かって傾斜する曲面形状に形成され、前記側壁部の内面が、前記天井部から前記底板部に向かって延在する複数の曲面突出部を有する金属製容器である。
【0009】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の構成において、前記底板部の内面の曲率半径は、前記曲面突出部の曲率半径よりも大きく形成されている金属製容器である。
【0010】
第四の発明は、第一の発明乃至第三の発明のいずれかの構成において、前記底板部の内面の曲面の曲率半径(R1)に対する前記金属製容器の内面の幅(B)の比率A1(B/R1)は、0.5以上0.7以下に規定されている、金属製容器である。
【0011】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかの構成において、前記比率A1に対する前記曲面突出部の曲率半径R2の比率A2(R2/A1)は、16以上66以下に規定されている、金属製容器である。
【0012】
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明のいずれかの構成において、前記曲面突出部において、基部の曲率半径R3が突出端部の曲率半径R4よりも大きく規定されている、金属製容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動機構を用いずに、格納した液体を攪拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る金属製容器を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0016】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る金属製容器1(以下、「容器1」という。)を示す概略図である。
図2は、容器の要部を示す概略図である。容器1は、内部に液体を貯蔵する金属製の容器であり、その外部形状は略直方体に形成されている。液体は、例えば、飲料水である。前面2には取水口4が形成されており、内部の液体を排出することができるようになっている。取水口4からは、比較的澄んだ液体が排出される。底板部6が容器1の内部形状の底部を構成している。底板部6の内面は、底板部6における最も低い位置に向かって傾斜する曲面形状に形成されており、底板6の最も低い位置、すなわち、底部には、排水口8aが形成されている。排水口8aから排出された液体は、底板部6の下方に配置される排水経路8bを通過して、排水出口8cから容器1の外部に排出される。排水口8aは、バルブ(図示せず)によって開閉可能になっている。底部6近傍の液体中に沈殿物等がある場合には、排水出口8cからは、比較的濁った液体が排出される。
【0017】
容器1の側壁部の内面10は、天井部12から底板部6に向かって延在する複数の曲面突出部10a(
図2参照)を有する。
【0018】
図3に示すように、底板部6の内面の曲率半径R1は、側壁部の内面10の曲面突出部10aの曲率半径R2よりも大きく形成されている。底板部6の内面の曲率半径R1に対する容器1の内面の幅Bの比率A1(B/R1)は、0.5以上0.7以下に規定されており、本実施形態において、比率A1は、0.6である。そして、比率A1に対する曲面突出部10aの曲率半径R2の比率A2(R2/A1)は、16以上66以下に規定されており、本実施形態において、30である。
【0019】
容器1の内面、すなわち、液体を格納する部分の形状が、上記のように構成されていることによって、容器1に液体を格納した状態で、排水口8aを開くと、
図5に示すように、底板部6の曲面形状によって、斜め下方へ向かう水流F1及びF2を生じさせ、測壁部の内面10の曲面突出部10a(
図2参照)によって、容器1の上下方向に略直交し、かつ、容器1の略中心方向へ向かう水流F3及びF4を生じさせる。すなわち、底板部6の曲面形状は第一の水流発生手段として機能し、曲面突出部10aは第二の水流発生手段として機能する。これにより、容器1に格納した液体が攪拌される。
【0020】
取水口4を開いたときには、
図4に示すように、主として、曲面突出部10a(
図2参照)による水流F3及びF4が生じる。このため、容器1に格納した液体は、適度に攪拌された状態であり、かつ、取水口4よりも下方の液体とはほとんど交わらずに取水口4から排出される。容器1に格納する液体の種類によっては、底板部6の近傍に濁りの原因になる物質や固形物が沈殿する場合があるが、取水口4からは、そのような濁りの原因となる物質や固形物をほとんど含まない液体を排出することができる。これに対して、排水口8aを開いたときには、
図5に示すように、曲面突出部10a(
図2参照)による水流F3及びF4に加えて、底板部6の曲面形状による水流F1及びF2が生じる。すなわち、排水口8aを開いた時には、異なる方向の水流が生じるから、静止状態の流体領域をより強力に低減することができ、濁りの原因になる物質や固形物も液体中に攪拌させ、排出することができる。
【0021】
<第二の実施形態>
次に、第二の実施形態について説明する。なお、第一の実施形態と共通の構成は説明を省略する。
【0022】
図6に示すように、第二の実施形態の側壁部の内面10の曲面突出部10aにおいて、突出部の基部の曲率半径R3は、先端部の曲率半径R4よりも大きく形成されている。本発明の発明者は、基部の曲率半径R3が先端部の曲率半径R4よりも小さい場合には、前面2へ向かう方向(矢印X方向)で、かつ、中心に向かう曲線的な水流が生じずらいことを見出し、突出部の基部の曲率半径R3は、先端部の曲率半径R4よりも大きく形成する技術思想に想到した。
【0023】
なお、本発明は上述の第一実施形態または第二の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 金属製容器
2 前面
4 取水口
6 底板部
8 排水手段
8a 排水口
10 側壁部の内面
10a 曲面突出部