特許第6876453号(P6876453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876453金属酸化物微粒子の水系分散剤、及びそれを含有する分散体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876453
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】金属酸化物微粒子の水系分散剤、及びそれを含有する分散体
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/44 20060101AFI20210517BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20210517BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20210517BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210517BHJP
   C09D 7/45 20180101ALI20210517BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20210517BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20210517BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210517BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210517BHJP
   C09D 5/24 20060101ALN20210517BHJP
   C09D 11/52 20140101ALN20210517BHJP
【FI】
   B01F17/44
   C09D17/00
   C09C3/10
   C09D201/00
   C09D7/45
   C09D11/03
   C09C1/00
   C08L71/02
   C08K3/22
   !C09D5/24
   !C09D11/52
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-19055(P2017-19055)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-122281(P2018-122281A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南 愛弓
(72)【発明者】
【氏名】保田 亮二
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−328123(JP,A)
【文献】 特開平07−268009(JP,A)
【文献】 特開2012−251113(JP,A)
【文献】 特開2007−261911(JP,A)
【文献】 特開昭62−001713(JP,A)
【文献】 特開昭49−128995(JP,A)
【文献】 特開2014−005369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/00−17/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルであることを特徴とする酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物微粒子の水系分散剤。
(式中、EOはエチレンオキサイドを表し、k、l、mはエチレンオキサイドの付加モル数であり、0以上の整数で、且つ、k+l+m=1〜150である。nは水酸基価から算出される(ポリ)グリセリンの平均重合度を示し、1〜20の整数である。Ra、Rb、Rcは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数4のジカルボン酸の残基である。但し、全てが水素原子であることはない。)
【請求項2】
前記ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルの酸価が20mgKOH/g〜130mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物微粒子の水系分散剤。
【請求項3】
請求項1から2何れかに記載の水系分散剤、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物微粒子、及び、水を含有することを特徴とする金属酸化物微粒子の分散体。
【請求項4】
水系分散剤の配合量が0.01重量%〜10重量%であることを特徴とする請求項3に記載の金属酸化物微粒子の分散体。
【請求項5】
金属酸化物微粒子の配合量が0.1重量%〜60重量%であることを特徴とする請求項3から4の何れかに記載の金属酸化物微粒子の分散体。
【請求項6】
請求項3から何れかに記載の分散体を含有することを特徴とする塗料、又は、インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系分散剤、及びこの水系分散剤を含有する分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物微粒子は、その特徴的な化学的性質、物理的性質から、顔料、紫外線・赤外線吸収剤、触媒、帯電防止剤、透明導電膜などの多種多様な材料に用いられている。例えば、金属酸化物微粒子として知られる酸化インジウムスズは、優れた導電性と赤外線吸収能を有することから、透明導電膜、導電性インク、帯電防止剤などの電子材料や熱線遮蔽用の塗料、フィルムなどに利用されている。酸化インジウムスズは、粒子径の小さいものほど導電性が高く、
さらには透明性に優れることが知られ、ナノオーダーに微細化したものが使用される。
【0003】
近年の技術の流れとして、金属酸化物微粒子を含有した分散体の水性化の動きがある。これは作業環境の問題及び地球環境の保全からくるVOC削減対策等により、金属酸化物微粒子を含有した分散体の分散媒体を有機溶剤系から水系に移行しようとするものである。しかし、金属酸化物微粒子を水に分散させた場合、有機溶媒系の分散体に比べて粒子の凝集や沈降が生じやすく、分散性や分散安定性が低下するといった問題が生じる。そのため、金属酸化物微粒子の分散性と分散安定性に優れた水分散体を提供する技術が強く要望されている。
【0004】
一般に、金属酸化物微粒子の水に対する分散性を向上させるために、高分子分散剤を添加する方法が用いられる。高分子分散剤には、ポリカルボン酸系、ポリアクリル酸系、ポリビニルピロリドンなどが汎用される。例えば、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との共重合体の塩が高濃度のアルミナの水系分散剤として開示されている(特許文献1)。また、イミダゾリウムカチオンを有する高分子分散剤が金属酸化物のナノ分散体の水系分散剤として開示されている(特許文献2)。しかし、これら高分子分散剤は、充分な分散性が得られない場合があった。
【0005】
また、製造工程の効率化から、高濃度の金属酸化物微粒子を分散させた分散体が求められている。しかし、金属酸化物微粒子を高濃度に配合した場合では、粒子間の距離が近くなるため、相互作用により凝集が生じやすいといった問題があった。したがって、高濃度の金属酸化物微粒子を水に対して微細に分散させることは極めて困難であった。
【0006】
これに対して、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの混合粉末に、ポリカルボン酸系の高分子分散剤、又は、オキシアルキレン基を有するノニオン性の高分子分散剤を使用した例が開示されている(特許文献3)。さらに、セラミックス原料粉末の水系分散剤として、分子内にオキシアルキレン基を有するポリカルボン酸系共重合体を用いた水性スラリー組成物が開示されている(特許文献4)。これらの分散剤は、金属酸化物の分散に効果を示すものの、より微細な分散が求められる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−299783号公報
【特許文献2】特開2007−254245号公報
【特許文献3】特開平09−235156号公報
【特許文献4】特開2007−261911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属酸化物微粒子を水に対して微細に分散させ、且つ経時的な粒子の沈降を抑制する水系分散剤、及び分散性と分散安定性に優れた金属酸化物微粒子の分散体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、式(1)で表されるポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルを金属酸化物微粒子の水系分散剤として配合することにより、本発明を完成するに至った。
【0010】
【化1】
(式中、EOはエチレンオキサイドを表し、k、l、mはエチレンオキサイドの付加モル数であり、0以上の整数で、且つ、k+l+m=1〜150である。nは、水酸基価から算出される(ポリ)グリセリンの平均重合度を示し、1〜20の整数である。R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数4のジカルボン酸の残基である。但し、全てが水素原子であることはない。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の水系分散剤を配合することにより、粒子の再凝集や沈降を抑制することができ、金属酸化物微粒子の分散性と分散安定性に優れた分散体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本説明を実施するための形態をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、変更等が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す「〜」は、上限と下限を含むものである。
【0013】
本発明で使用される(ポリ)グリセリンは、グリセリン、又は、水酸基価から算出される平均重合度が2〜20のポリグリセリンであり、グリセリン、又は、平均重合度が2〜10のポリグリセリンがより好ましい。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式2)、及び(式3)から平均重合度が算出される。
(式2)分子量=74n+18
(式3)水酸基価=56110(n+2)/分子量
上記(式3)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編集、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2013年版」に準じて算出される。
【0014】
前記の水酸基価から算出される平均重合度が2〜20のポリグリセリンにおいては、一般的には、分子量分布を有する組成物が使用されるが、これらの異なる分子量分布を有するポリグリセリンを2種以上混合してもよく、ポリグリセリン混合物の水酸基価から算出される平均重合度が2〜20であれば、平均重合度が20を超えるポリグリセリンも使用できる。
【0015】
本発明で使用されるポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテルの原料であるポリグリセリンは、グリセリンの脱水縮合反応、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン等のグリセリン類縁物質を用いての合成、あるいは合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの回収等によって得られる。
【0016】
本発明で使用されるポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数は、1〜150モルであり、好ましくは20〜150モルである。エチレンオキサイドの付加モル数が20〜150モルのものでは、立体障害効果が向上するため、より良好な分散性が得られる。
【0017】
本発明で使用される炭素数4のジカルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、及び、これらの無水物である。これらは、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0018】
本発明のポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルは、酸価が20mgKOH/g〜130mgKOH/gであることが望ましく、好ましくは60mgKOH/g〜125mgKOH/gであり、さらに好ましくは80mgKOH/g〜120mgKOH/gである。酸価が20mgKOH/g〜130mgKOH/gのものでは、金属酸化物微粒子の再凝集を抑制する効果が向上し、より良好な分散性が得られる。ここで、酸価とは、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステル1g中に含まれているカルボキシ基を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編集、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2013年版」に準じて測定し、次式(式4)を用いて算出される。
(式4)酸価=(5.611×A×F)/B
A:0.1モル/L水酸化カリウム標準液の使用量(mL)
F:0.1モル/L水酸化カリウム標準液のファクター
B:試料採取量(g)
【0019】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体は、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステル、金属酸化物微粒子及び水を含有する。ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.1重量%〜6重量%であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体は、液状又は固形状であっても良く、固形状である場合は、強い撹拌もしくは振とうによって液性が回復するものであれば良い。
【0021】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体に含まれる金属酸化物微粒子は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化銀などが挙げられる。これらを単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。金属酸化物微粒子としては、導電性、透明性、紫外線・赤外線吸収能の観点から、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモンが好ましい。
【0022】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体に含まれる金属酸化物微粒子の一次粒径は、通常、100nm以下であることが好ましい。金属酸化物微粒子の一次粒径が100nm以下であると、透明導電膜に用いた場合に導電性や透明性に優れる。
【0023】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体に含まれる金属酸化物微粒子は、体積基準で算出した粒度分布の累積50%径(D50径)が120nm以下であることが望ましく、好ましくは90nm以下、さらに好ましくは75nm以下である。なお、金属酸化物微粒子のD50径は動的光散乱法などの粒度分布測定装置によって測定することが出来る。
【0024】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体における金属酸化物微粒子の含有量は、通常、0.1重量%〜60重量%であり、好ましくは1重量%〜50重量%である。金属酸化物微粒子の含有量が60重量%以下であると、金属酸化物微粒子と水とのぬれ性が向上し、分散性又は分散安定性に優れた分散体が得られる。また、金属酸化物微粒子の含有量が0.1重量%以上であると、透明導電膜に用いた場合に導電性が得られる。
【0025】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体に含まれる水系分散剤と水との割合は、分散体に対する水系分散剤の溶解性の観点から、通常、重量比で1:3〜1:10000であり、好ましくは1:4〜1:1000である。
【0026】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体には、その目的が損なわれない範囲で、他の分散剤、他の界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤などの各種添加剤やアルコールなどの水溶性の有機溶媒を配合させることが出来る。
【0027】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体は、従来公知の調製方法に準じて調製することが出来る。例えば、本発明の水系分散剤を溶解した水溶液中に金属酸化物微粒子を添加した後、室温下にて撹拌、混合、分散する方法が挙げられる。例えば、分散機には、ロッキングミル、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、ジェットミル、ホモジナイザー、自転公転型ミキサー、超音波分散機などが挙げられるが、これらの分散方法に限定されるものではない。また、必要に応じてジルコニアビーズ、アルミナビーズなどのビーズを使用してもよい。
【0028】
本発明の金属酸化物微粒子の分散体は、分散性と分散安定性に優れることから、透明導電膜、導電性インク、帯電防止剤などの電子材料や熱線遮蔽用の塗料やインクなどの用途に利用できる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
【0030】
(水系分散剤(A〜H)の合成)
EO付加モル数が26のポリオキシエチレングリセリルエーテル48.5gと、マレイン酸無水物11.5gを反応容器に入れた後、触媒として酢酸ナトリウムを添加し、窒素気流下にて70℃から85℃に段階的に昇温して反応させ、酸価が110mgKOH/gであるポリオキシエチレングリセリルエーテルマレイン酸エステル(水系分散剤A)を得た。以下同様に、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテルと二塩基酸の種類を変化させて水系分散剤B〜Hを製造した。各々の水系分散剤を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例1)
50mLポリ容器に水系分散剤Aを0.3g及びイオン交換水を11.7g加えて溶解した後、酸化インジウムスズ粉末(E−ITO、一次粒径50nm、三菱マテリアル電子化成株式会社製)を3gとジルコニアビーズ(φ1mm)を30g加えた。これをロッキングミル(RM−05、株式会社セイワ技研製)を用いて、600rpmで15時間分散した後、ろ過によりジルコニアビーズを除去し、酸化インジウムスズの分散体を得た。さらに、得られた分散体を酸化インジウムスズの濃度が2重量%となるようイオン交換水を用いて希釈し、評価用試料を調製した。
【0033】
(実施例2から10、及び比較例1)
実施例2から10および比較例1では、水系分散剤の種類、及び配合量を変えた以外は、実施例1と同様の方法で分散体及び評価用試料を調製した。
【0034】
(比較例2及び3)
比較例2及び3では、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルの代わりに、水系分散剤としてポリカルボン酸系高分子分散剤(イソブチレンと無水マレイン酸の共重合体)、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で分散体及び評価用試料を調製した。
【0035】
(粒子径の測定)
評価用試料をディスポセルに入れ、測定温度を25℃とし、動的光散乱法を用いた粒度分布測定装置(ナノサイザーZS−100、株式会社マルバーン製)を用いて粒度分布を測定した。測定は各3回行い、体積基準で算出した粒度分布の累積50%径(D50径)の平均値を用いて、粒子径を比較した。結果を表2に示した。
【0036】
(分散安定性の評価)
評価用試料を測定用のサンプル管に5g入れて密栓し、タービスキャン(MA2000、英弘精機株式会社製)を用いて、室温にて24時間静置した後のサンプル管上部の透過率を測定した。なお、金属酸化物微粒子の沈降が経時的に生じた場合、サンプル管上部の最大透過率が上昇することから、最大透過率の低いものほど分散安定性が高いと判断し、下記の基準にて評価した。結果を表2に示した。
◎:最大透過率2.0%未満
○:最大透過率2.0%以上5.0%未満
△:最大透過率5.0%以上8.0%未満
×:最大透過率8.0%以上
【0037】
【表2】
※1:E−ITO(一次粒径50nm、三菱マテリアル電子化成(株)製)
【0038】
実施例1から10では金属酸化物微粒子の分散効果を示し、D50径が120nm以下となり、比較例1〜3に比べて微細に分散することが明らかとなった。また、実施例1〜5、7〜10では、最大透過率が5.0%未満であることから、経時的な粒子の沈降を抑制し、分散性と分散安定性に優れた分散体が得られることが明らかとなった。特に、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルの酸価が80mgKOH/g〜120mgKOH/gである、実施例1、2、4、7、8では、D50径が75nm以下、且つ、透過率が2.0%未満となり、酸化インジウムスズの分散効果に非常に優れるものであった。さらに、酸化インジウムスズを高濃度に配合した実施例9及び10においても分散性と分散安定性に優れた分散体が得られた。これらのことから、特定のポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル二塩基酸エステルを水系分散剤として用いた金属酸化物微粒子の分散体は、金属酸化物微粒子の分散性と分散安定性に優れるものであった。