(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記寸法規制具は、前記基材の長手方向又は短手方向の両端内部に設けた移動規制部と前記移動規制部同士を移動規制部の両端部にて連結する連結部とを有する環状の形態であることを特徴とする請求項1に記載の長尺の発泡部品。
前記基材は、JIS K7221−2(2006)の曲げ試験における曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nである請求項1〜3のいずれかに記載の長尺の発泡部品。
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の基材樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびこれらの複合樹脂から選択されるいずれかの樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の長尺の発泡部品。
【背景技術】
【0002】
一般に熱可塑性樹脂発泡体からなる成形品は軽量であり、柔軟性を有するが一定の剛性も有し、衝撃吸収性にも優れているため自動車部品や梱包資材、生活雑貨等非常に広い分野で多用されている。しかし、樹脂発泡体は一般に樹脂が多量の空気あるいはガスを内包する独立気泡の無数の気泡から構成されており、そのため線膨張率が大きく周囲の温度変化による伸縮が大きい。このため、小型部品であれば寸法変化量も小さいため問題とはなりにくいが、長尺発泡部品では線膨張等による寸法変化量が大きくなる問題があった。
【0003】
また、樹脂発泡体の中でも自由な形状に容易に成形できる熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、金型中へ発泡粒子を充填した後、スチーム等で加熱し発泡粒子を溶着し、その後冷却して取り出す工程を経て成形される。しかし、発泡粒子の発泡倍率の僅かな差異、スチームの温度や圧力、冷却水の温度、成形機の個体差、金型から取り出す際の外気温の影響、気泡内外のガス透過速度の影響等により発泡粒子成形体からなる成形品の寸法バラツキが他の樹脂部品に比べ大きいという問題があった。従って、発泡粒子成形体が、周囲の温度変化による伸縮に加え、成形時の成形寸法のバラツキによる寸法差が加わるため、特に長尺の発泡粒子成形体からなる成形品では、他部品との組み付け上の問題、すなわち実用上好ましくない大きな隙間が生じたり、あるいは他部品に干渉し変形してしまう等の問題があった。
【0004】
そこで、長尺発泡部品の寸法精度確保のために、従来においては第一の方法として、寸法精度を維持するために、後加工で切断仕上げする方法、あるいは長尺となることを避けるため、複数に分割する等の手段がやむなく講じられてきた。
【0005】
第二の方法として、発泡粒子成形体からなる成形品の伸縮を抑制しようとする方法であって、補強や部品としての取付け手段を付加する目的も兼ね、線膨張係数が小さく剛性のある素材、例えば金属製のワイヤーフレームを予め金型中へセットし、その後、金型中に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填しワイヤーフレームをインサート成形する方法がある。この方法は自動車のサンバイザー、リアシートクッションの軽量化を目的とした部品等で一部用いられている。金属製のワイヤーフレーム等の温度変化による伸縮が小さい材料からなる枠体に囲まれた内側に位置する発泡粒子成形体は、温度変化による伸縮を前記枠体によって強制的に抑制されるため、発泡粒子成形体の部品全体としての温度変化による寸法変化は、主に枠体によって囲まれた範囲の外側に位置する合成樹脂発泡体の伸縮だけとなるため、部品全体としての寸法安定性を多少良化することができる。
【0006】
また、特許文献1には、発泡ポリプロピレンシートの両面に、ガラス繊維シートの両面をポリプロピレンシートによってラミネートしたガラス繊維シートラミネ−ト構造体が、それぞれ積層されて形成された7層構造のポリプロピレンフォーム積層体を有してなる自動車内装天井成形用部材が開示されている。ガラス繊維を使用することによって寸法精度を確保しようとする方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第一の方法の場合は、合成樹脂型内発泡体からなるトラックの仮眠ベッド、乗用車の一体型後席用シートバック、家具用のクッション材等発泡部品の場合に見られるが、後加工や分割によりコストアップとなり、後加工可能又は分割可能な用途に限定しなければならないという問題があった。
【0009】
第二の方法の場合は、ワイヤーフレームの強度が、当該フレームを設ける本来の目的が達成できる範囲、かつ軽量化も達成できる範囲の曲げ強度や引張強度に設定されている場合、あるいは形状や設置位置に偏りがあった場合には、発泡部品を得ようとすると、型内成形直後において発泡粒子成形体が金型から取り出され外気に触れた際に生じる強い収縮力に負け、合成樹脂型内発泡体の部品全体に反り等の変形が生じ、その反り等が残留してしまう問題があった。
【0010】
特許文献1の発明は、ポリプロピレンフォーム積層体の構造が複雑であるため製造コストが高価になるという問題があった。また、用途として自動車内装天井成形部材としては適するが、乗用車の一体型後席用シートバックコアやシートクッションコア、建屋の柱間に埋め込む断熱材には適さないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、用途として乗用車の後席用シートバックコアやシートクッションコア、家具、トラック用仮眠ベッド、それらの芯材などとしての使用に適し、軽量で優れた寸法精度が確保できる合成樹脂発泡体からなる発泡部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の長尺の発泡部品1は、
(1)長手方向Lと短手方向Sと厚み方向Tを有する熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる基材2と、前記基材の長手方向又は短手方向の対向する両端内部に設けた一対の移動規制部22と、前記移動規制部同士を連結する連結部23とを有する寸法規制具3と、を備え、前記基材は、前記基材を前記連結部と交差する方向に複数の基材部分に離隔する1つ以上の継手構成部12を有し、該継手構成部は、隣接する2つの基材部分を連結する単数又は複数の継手部5により構成されているとともに、
該継手部の両端に位置する基材部分とのそれぞれの連結部位の位置を長手方向、短手方向及び/又は厚み方向にてずれた状態とする、又は、前記連結部位の位置を長手方向、短手方向及び厚み方向で正対させて前記継手部を屈曲形体とすることで、該継手部の各々は、該基材が収縮もしくは膨張したときに、該隣接する2つの基材部分の間の相対移動を許すように変形可能であり、前記寸法規制具が前記基材の内部にインサート成形にて一体に設けられていることを特徴とする長尺の発泡部品1、
(2)前記寸法規制具3は、前記基材の長手方向L又は短手方向Sの両端内部に設けた移動規制部22,22と前記移動規制部同士を移動規制部の両端部にて連結する連結部23,23とを有する環状の形態であることを特徴とする上記(1)に記載の長尺の発泡部品、
(3)前記寸法規制具3は、金属製のワイヤーフレームであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の長尺の発泡部品、
(4)前記基材2は、JIS K7221−2(2006)の曲げ試験における曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の長尺の発泡部品1、
(5)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の基材樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびこれらの複合樹脂から選択されるいずれかの樹脂である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の長尺の発泡部品
1。
【発明の効果】
【0013】
本発明の寸法規制具がインサート成形されている発泡粒子成形体からなる長尺の発泡部品は、該成形体を得る際の発泡粒子型内成形直後の成形体収縮による寸法規制具の変形、長尺の発泡部品の変形や、型内成形後の温度変化による発泡粒子成形体の伸縮を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の長尺の発泡部品1は、長手方向と短手方向と厚み方向を有する熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなり、好ましくはシートクッションコア、シートバックコアとして車両用の座席部材として使用できる。該発泡部品1は、車両用のシートクッションコアとして使用する場合は、車幅方向が長手方向、車両前後方向が短手方向、車幅方向と車両前後方向とに直交する方向が厚み方向に相当し、シートバックコアとして使用する場合は、車幅方向が長手方向、車両シートバックの上下方向が短手方向、車幅方向と車両シートバックの上下方向とに直交する方向が厚み方向に相当する。なお、本発明における長尺とは、長手方向Lの寸法が概ね650mm以上のものである。更に、本発明の発泡部品1は、例えば
図1に示すように、平面視において直交する長手方向Lと短手方向Sを有する概ね矩形形状の基材2と、前記基材2の長手方向Lの両端内部にインサート成形されて一体に設けられている移動規制部22を有し、かつ前記規制部22同士を連結部23で連結させた、温度変化による寸法収縮が基材2よりも小さく剛性を有する材料からなる寸法規制具3と、を備え、前記基材2は、前記基材2の長手方向Lの両端側を構成する離隔状態の基材部分10、11と、連結部23と交差する任意の位置で前記離隔状態の両端側の基材部分10、11を連結する継手構成部12とにより構成され、例えば、前記継手構成部12の継手部5と前記両端側の基材部分10、11とのそれぞれの連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tでずれた状態とし、又は、前記連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させている場合は前記継手部5を屈曲形体とし、前記継手部5が長手方向Lに曲げ変形することによって前記基材2の長手方向の全長寸法が安定して一定の範囲内の値となる長尺の発泡部品である。なお、寸法規制具3は、基材2内にインサート成形されて基材2と一体に設けられている。また、離隔状態の基材部分は、断続的に形成された継手部5にて連結されていてもよい。本発明において継手構成部12は、基材2の伸縮に伴う応力を吸収部分として機能する。
【0016】
本発明は、第一に熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる基材2が、長手方向L又は短手方向Sの圧縮又は引張に対して柔軟に長さを変えることができるように継手構成部12を有するようにし、第二に前記合成樹脂発泡体からなる発泡部品1に、剛性を有するフレーム、ワイヤー又はプレート状等の寸法規制具3の移動規制部22を、基材2内にインサート成形して基材2と一体に設けたものであっても、前記発泡粒子成形体からなる発泡部品1の長手方向および/又は短手方向の寸法精度を確保できる長尺の発泡部品を提供する発明である。
【0017】
本発明の長尺発泡部材には、熱可塑性樹脂発泡粒子の型内成形体が使用される。該発泡粒子は、多量の空気、またはガスを内包するセルから構成された材料であるため、型内成形に使用するスチームの温度、圧力、冷却水の温度、成形機の個体差、外気温、原料発泡粒子の発泡倍率のバラツキ等、非常に多くの因子により発泡粒子成形体の寸法バラツキを生じる。例えばポリプロピレン発泡粒子成形体の場合、一般に製品寸法に対し±0.7~1.2%程度の寸法バラツキを生じる。そのバラツキは例えば発泡粒子成形体の長さ1,000mmである場合±10mm前後に相当する。したがって、長尺の発泡粒子成形体に寸法規制具3をインサート成形すると型内成形後において発泡粒子成形体の強い収縮力に負け、寸法規制具3が変形して合成樹脂型内発泡体の部品全体にソリなどの変形が生じ残留してしまう現象が見られる。
本発明の発泡部品1は、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の寸法精度がバラツキやすい性質を折り込みながら寸法精度を確保できる構造を提供するものである。
【0018】
まず、基材2について説明する。基材2を構成している熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、熱可塑性樹脂発泡粒子を金型へ充填した後、加熱することで発泡粒子を相互に融着させ一体化させて形成される。具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との複合樹脂(改質ポリスチレン樹脂)等を基材樹脂とする熱可塑性樹脂発泡粒子成形体であり、特にポリプロピレン基材樹脂とする熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が好ましい。ただし、上記の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体としては、曲げ変形によって容易に破断、あるいは不可逆性の変形を生じる脆性の高い材料は適さない。なお、基材2を構成する発泡粒子成形体の密度は、本発明の発泡部材を車両用座席の芯材やシートバックの芯材等として使用する場合は、発泡粒子成形体の寸法精度を維持することが難しくはなるが、軽量性、剛性などの必要物性の観点から0.015〜0.3g/cm
3、更に0.02〜0.2g/cm
3、特に0.025〜0.1g/cm
3であることが好ましい。上記発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体の質量を該成形体の体積で除することにより算出される。
【0019】
基材2は、JIS K7221−2(2006)の曲げ試験における曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの物性を満足する熱可塑性樹脂発泡粒子成形体であることが、所期の目的を十分に達成する観点から、特に好ましい。
【0020】
更に、前記基材2は長手方向L又は短手方向Sの隣接する2つの基材部分10、11と、前記基材部分10、11を連結する1つ以上の継手構成部12から構成されている。隣接する2つの基材部分10、11の連結部位Kは、継手構成部12の単数又は複数の継手部5で連結されている。基材部分10、11同士が継手部5で連結していることにより、発泡部品1が発泡粒子成形体の伸縮する力を受けても継手部がその力を効率的に吸収、分散することにより発泡部品1の寸法精度のバラツキ、変形を抑制することができる。なお、継手部5の両側の基材部分10、11同士は、継手部5のみで連結していることが上記観点から好ましい。
【0021】
次に、寸法規制具3について説明する。寸法規制具3は、基材2と一体成形する場合において、基材2の長手方向L又は短手方向Sの両端内部に位置するように形成された移動規制部22,22と、前記移動規制部同士を連結部23で連結させている。連結部23で連結させたことによって移動規制部22同士の両端間の寸法が安定して一定の値となる。
【0022】
また、寸法規制具3は、温度変化による寸法収縮が基材2よりも小さく剛性を有する材料からなる。線膨張率が小さく(通常、5×10
−6/℃〜30×10
−6/℃)剛性に富む(通常、JIS G3532に基づく引張強さが200N/mm
2〜2000N/mm
2、好ましくは引張強さが250N/mm
2〜1300N/mm
2)寸法規制具3の材料としては、具体的には鉄、アルミ等の金属、木材、または、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維等で補強された樹脂等が挙げられ、中でも金属製のものが好ましい。また、寸法規制具は、直径が2〜8mm、JIS G3532に基づく引張強さが200N/mm
2以上のワイヤー材にて構成することが、軽量性、基材の補強の観点から好ましい。
【0023】
寸法規制具3は、移動規制部22や連結部23の形態として、略板状構造体、棒状構造体の形態や、
図2に示すようにワイヤーフレーム状の線状構造体等の形態がある。前記移動規制部22の形態と前記連結部23の形態との組み合わせは任意に選択することができ、例えば、
図2に示すように寸法規制具3の全体形状としては、環状の形態や
図3に示すようにH字状の形態が挙げられる。なお、寸法規制具3は、軽量性、基材の補強の観点から、
図2に示すように、前記基材2の長手方向L又は短手方向Sの両端部に設けられる移動規制部22,22と前記移動規制部22,22同士を移動規制部の両端部にて連結する連結部23,23とを有する環状の形態であることが好ましく、略矩形の環状の形態であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の発泡部品1は、基材2と寸法規制具3との組み合わせで構成される。例えば、
図1に示すように基材2に、
図2に示すような環状の寸法規制具3を埋設されている。基材2と寸法規制具3との組み合わせは、
図1、
図7に示すような形態に限らず、長尺の基材2の長手方向L又は短手方向Sの寸法のばらつきを、後述する継手構成部12の構成と合わせることにより抑制可能な基材2と寸法規制具3との一体成形構造であれば、どのような形態であってもよい。なお、基材2に寸法規制具3を埋設した一体成形構造の発泡部品は、従来公知の発泡粒子の金型インサート成形方法にて得られる。具体的には、金型内のインサート部材支持部に寸法規制具3を配置し、型締めして金型内に発泡粒子を充填し、スチーム加熱を行い、発泡粒子を相互に融着させると共に発泡粒子成形体と寸法規制具とを一体化させる型内成形方法を採用すればよい。
【0025】
次に、継手構成部12について説明する。継手構成部12は、
図1、
図6(a)、
図6(b)、
図7に示すように、基材2の長手方向L又は短手方向Sの隣接する2つの離隔状態の基材部分10、11を、連結部23と交差する任意の位置で前記離隔状態の基材部分10、11を連結する単数又は複数の継手構成部12とにより構成される。
【0026】
単数の継手構成部12の基材2に対する配設形態の例としては、
図1に示すように、継手構成部12が長手方向Lに1か所で、かつ短手方向Sの両端にわたって形成している形態や、
図7に示すように、継手構成部12が短手方向Sに1か所で、かつ長手方向Lの両端にわたって形成している形態がある。また、複数の継手構成部12の基材2に対する配設形態の例としては、
図6(a)に示すように、長手方向Lに2か所で、かつ短手方向Sの両端にわたって形成している形態や、
図6(b)に示すように、長手方向Lに1か所で、かつ短手方向Sの両端にそれぞれ形成している形態や、図示しないが、長手方向L又は短手方向Sに離隔状態の基材部分を、断続的に複数設けた継手部5を有する継手型構造部12にて連結する形態等がある。継手型構造部12の基材2に対する配設形態は、寸法規制具3の連結部23と交差する任意の位置に配置され、継手型構造部12が曲げ変形可能となる配設形態であればいずれの形態であってもよい。
【0027】
次に、継手構成部12の構成について説明する。継手構成部12は、
図4、
図5、
図8乃至
図11に示すように、継手構成部12の両側の基材部分10、11同士を連結する継手部5を構成している。前記継手部5は、
図4等に示すように、基材部分10、11とのそれぞれの連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向Sおよび厚み方向Tの少なくともいずれかでずれた状態で連結し又は、
図5等に示すように、前記連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させて前記継手部5自体を屈曲形体としていることが好ましい。また、図示のように、継手部5の両側には継手部5を曲げ変形可能にするための空隙6又は開口型空隙6aが設けられていることが好ましい。
【0028】
隣接する2つの基材部分10、11とのそれぞれの連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tでずれた状態で連結させたり、前記連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させている場合は前記継手部5自体を屈曲形体とすることにより、継手部5を曲げ変形させることができる。基材2が温度変化等によって伸縮する際、継手部5が柔軟に曲げ変形することによって伸縮を吸収する。このことにより基材2全体が伸縮により反る等の変形を起こすことを防止できる。
【0029】
また、好ましい態様として、継手構成部12の継手部5の両側の連結部位Kは、継手部5のみで基材部分10、11と連結させて両側の基材部分10、11同士を直接連結させないようにするために、例えば、
図6(b)に示すように、長手方向Lに対する前記継手構成部12の範囲であって短手方向Sで継手部5が存在しない範囲には両側の基材部分10、11同士を離隔させるための空隙6を設けている。
【0030】
継手部5の形態の例を、継手部5と両側の基材部分10、11との連結部位Kの形態別に説明する。継手部5の形態は、継手部5の基材部材10、11との厚み関係、連結部位Kの長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tの位置関係によって異なる。
【0031】
まず、
図4、
図5、
図8に示すように、継手部5の厚みが基材部分10、11の厚みと同じ場合と、
図9乃至
図11に示すように、継手部5の厚みを基材部分10、11の厚みより薄くして異なる場合とがある。
【0032】
継手部5の厚みが基材部分10、11の厚みと同じ場合で、連結部位Kを長手方向L又は短手方向Sでずらした継手部5の形態は、例えば、
図4に示すように連結部位Kを短手方向Sでずらして開口型空隙6aを両側に配設した形態、
図8(a)に示すように
図4に示す継手部5を変形させて連結部位Kを短手方向Sでずらして開口型空隙6aを両側に配設した形態、
図8(c)に示すように連結部位Kを短手方向Sでずらした継手部5をX字型に形成して開口型空隙6aと空隙6とを両側に配設した形態がある。これらの形態は例であって、継手部5の形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な形態であればよい。
【0033】
次に、継手部5の厚みが基材部分10、11の厚みと同じ場合で、連結部位Kを長手方向L及び短手方向S及び厚み方向Tで正対させている継手部5の形態は、例えば、
図5に示すように連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで一致させて平面視で屈曲部を設けて略U字型とし開口型空隙6aを両側に配設した形態、
図8(b)に示すように連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで一致させて平面視で屈曲部を設けて略V字型とし開口型空隙6aを両側に配設した形態がある。これらの形態は例であって、継手部5の形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な形態であればよい。
【0034】
次に、継手部5の厚みが基材部分10、11の厚みと異なる場合で、連結部位Kを長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tでずらした継手部5の形態は、例えば、
図10に示すように継手部5の厚みを基材部分10、11の厚みより薄くし、連結部位Kを短手方向S及び厚み方向Tでずらして開口型空隙6aを両側に配設した形態、
図11に示すように継手部5の厚みを基材部分10、11の厚みより薄くし、連結部位Kを基材部材10の方を2ケ所とし基材部材11の方を1か所とした平面視略V字型とし、連結部位Kを短手方向S及び厚み方向Tでずらして、開口型空隙6aと空隙6とを両側にそれぞれ配設した形態がある。これらの形態は例であって、継手部5の形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な形態であればよい。
【0035】
次に、継手部5の厚みが基材部分10、11の厚みと異なる場合で、連結部位Kを長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させている継手部5の形態は、例えば、
図9に示すように継手部5の厚みを基材部分10、11の厚みより薄くし、連結部位Kを長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させて、平面視で屈曲部を設けて略V字型とし開口型空隙6aを両側に配設した形態がある。これらの形態は例であって、継手部5の形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な形態であればよい。
【0036】
次に、前記継手型構造部12の継手部5の曲げ変形について
図4又は
図5で説明する。
図4(a)及び
図5(a)に熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる基材部分10、11の設計時の形態を示し、
図4(b)及び
図5(b)に発泡粒子成形体からなる基材部分10、11が寸法的に拡張してきた場合の継手部5の曲げ変形状態を示し、
図4(c)及び
図5(c)に発泡粒子成形体からなる基材部分10、11が寸法的に縮小してきた場合の継手部5の曲げ変形状態を示している。このように、継手部5の曲げ変形によって、発泡粒子成形体からなる基材部分10、11の拡張又は縮小を寸法的に吸収することができる。これにより、基材部分10、11の変形を防ぐことができ、発泡粒子成形体からなる長尺発泡部品1の寸法精度を安定化させることができる。
【0037】
次に、空隙6、6aの幅ついて説明する。空隙6、6aの幅は、基材2の内部に寸法規制具3をインサート成形にて埋設した後の基材2の収縮による寸法変化等を抑制、緩和する観点から、予測される基材2の型内成形後の寸法バラツキの最大寸法と同等以上とすることが好ましい。空隙6、6aの幅は、具体的には、3mm〜70mm、更に5mm〜50mm、特に10〜25mmであることが好ましい。また継手型構造部12は発泡粒子成形体からなる長尺発泡部品1に複数設けることができるため、空隙6、6aの幅はその数に応じて按分することもできる。また、空隙6、6aの周縁を形成する継手部5や基材部分10、11のコーナー部には、応力の集中を避けるためRを付加することがより望ましい。
【0038】
次に本発明を実施例にて説明する。実施例として想定した部品は乗用車に取り付けられるリアシートクッションの芯材である。
図1に示すように長手方向に分割された離隔状態の2つの基材部分からなる発泡部品形状の金型(なお、継手構成部はインサート成形された寸法規制具を覆うように短手方向に2箇所に
図5(c)で示す形状の継手部を設けた。)を用意し、該金型内に
図2に示すような環状形状の直径4.5mm、引張強さ(JIS G3532 SWM−B)500N/mm
2の鉄製ワイヤー材からなるワイヤーフレームを寸法規制具として金型に挿入、支持し、続いて型締め後、該金型内に嵩密度が0.03g/cm
3、発泡粒子径が約4mmのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填した。次いで、金型内をスチームにより加熱する型内成形を行った。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、0.22MPa(G)の成形蒸気圧で一方加熱を行い、さらに0.04MPa(G)の成形蒸気圧で逆方向から一方加熱を行った後、0.3MPa(G)の成形蒸気圧で、両面から本加熱を行った。加熱終了後、放圧し、30秒間空冷し、240秒間水冷して、寸法規制具が発泡粒子成形体の周縁に沿って一体成形されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を得た。次いで、発泡粒子成形体を60℃の雰囲気下で24時間乾燥して養生した後、長さ1300mm、幅450mm、厚み100〜150mm、空隙6aの幅が10mmの長手方向に2等分された離隔状態の2つの基材部分が2箇所の継手部にて連結された長尺発泡部品を得た。なお、寸法規制具は、発泡粒子成形体からなる基材の周縁から50mm内側、成形体の底面から厚み方向に50mmの高さの位置に発泡粒子成形体の周縁に沿って埋め込まれていた。なお、発泡粒子成形体の厚みは、リアシートクッションの芯材として使用される際に前部となる端部が150mmであり、後部となる端部が100mmとなるように傾斜して形成されていた。
【0039】
上記インサート成形後の本発明の長尺発泡部品は、継手構成部において離隔状態の2つの基材部分の間隔が金型寸法よりも15mm広がっており、長尺発泡部品の上方への反りが3mmであった。なお、継手構成部を有していない以外は同様の比較例に相当する長尺発泡部材は、同様の測定において長尺発泡部品の上方への反りが10mmであった。
【0040】
また、得られた長尺発泡部品を摂氏80度及び−30度の環境下へ一定時間放置し、温度変化により生じる寸法の変化を観察した。上記本発明の実施例の長尺発泡部品は、温度変化による伸縮も±3mm以下であった。なお、寸法規制具および継手構成部を有していない以外は同様の他の比較例に相当する長尺発泡部材は、同様の測定において温度変化による伸縮が約±8mmであった。
【0041】
上記のとおり本発明の発泡部品は、型内成形後の反りによる底面の浮き上がり、温度変化による寸法変化が抑制されており十分な寸法安定性を示した。