(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876469
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】電気融着用固定装置
(51)【国際特許分類】
F16L 47/03 20060101AFI20210517BHJP
F16L 21/06 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
F16L47/03
F16L21/06
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-42363(P2017-42363)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-172793(P2017-172793A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-54657(P2016-54657)
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
【審査官】
黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−194295(JP,A)
【文献】
特開昭61−099709(JP,A)
【文献】
特開2015−021537(JP,A)
【文献】
特開2007−155064(JP,A)
【文献】
実開平06−071118(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/03
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気融着継手とこの電気融着継手の端部の受口に差し込まれた樹脂管とを囲むようにして、これら電気融着継手と樹脂管を仮固定する固定装置において、
周方向の両端に位置する第1,第2保持部材と、周方向の中間に位置する少なくとも1つの中間保持部材と、
上記第1保持部材、上記中間保持部材、上記第2保持部材をこの順序で互いに離間した状態で連結する可撓性を有する連結部材と、
上記第1保持部材と上記第2保持部材との間に掛け渡され、上記第1保持部材と上記第2保持部材を着脱可能にかつ弾性力を伴って互いに近づけるように締結する締付具とを備え、
上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材が、軸方向に隣り合う継手保持部と管保持部とをそれぞれ有し、上記仮固定の際には、上記継手保持部が上記電気融着継手の外周に当接し、上記管保持部が上記樹脂管の外周に当接し、
上記連結部材が帯形状をなして、上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材の上記継手保持部の外面に固定され、上記連結部材が上記第1、第2保持部材と上記中間保持部材との間で上記電気融着継手の外面に接するように、上記第1、第2保持部材と上記中間保持部材とが周方向に離間していることを特徴とする電気融着用固定装置。
【請求項2】
上記連結部材が上記第1保持部材から上記中間保持部材を経て上記第2保持部材に至るまで連続していることを特徴とする請求項1に記載の電気融着用固定装置。
【請求項3】
電気融着継手とこの電気融着継手の端部の受口に差し込まれた樹脂管とを囲むようにして、これら電気融着継手と樹脂管を仮固定する固定装置において、
周方向の両端に位置する第1,第2保持部材と、周方向の中間に位置する少なくとも1つの中間保持部材と、
上記第1保持部材、上記中間保持部材、上記第2保持部材をこの順序で互いに離間した状態で連結する可撓性を有する連結部材と、
上記第1保持部材と上記第2保持部材との間に掛け渡され、上記第1保持部材と上記第2保持部材を着脱可能にかつ弾性力を伴って互いに近づけるように締結する締付具とを備え、
上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材が、軸方向に隣り合う継手保持部と管保持部とをそれぞれ有し、上記仮固定の際には、上記継手保持部が上記電気融着継手の外周に当接し、上記管保持部が上記樹脂管の外周に当接し、
上記連結部材が第1、第2の連結部材を含み、上記第1の連結部材が上記第1、第2保持部材と上記中間保持部材の上記継手保持部の外面に固定され、上記第2の連結部材が上記第1、第2保持部材と上記中間保持部材の上記管保持部の外面に固定されており、
上記第1の連結部材が上記第1、第2保持部材と上記中間保持部材との間において、上記電気融着継手の外面に接し、上記第2の連結部材が上記第1、第2保持部材と上記中間保持部材との間において、上記第1の連結部材より、径方向、内側寄りに位置していることを特徴とする電気融着用固定装置。
【請求項4】
電気融着継手とこの電気融着継手の端部の受口に差し込まれた樹脂管とを囲むようにして、これら電気融着継手と樹脂管を仮固定する固定装置において、
周方向の両端に位置する第1,第2保持部材と、周方向の中間に位置する少なくとも1つの中間保持部材と、上記第1保持部材、上記中間保持部材、上記第2保持部材をこの順序で互いに離間した状態で連結する可撓性を有する連結部材と、上記第1保持部材と上記第2保持部材を着脱可能に締結する締付具とを備え、
上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材が、軸方向に隣り合う継手保持部と管保持部とをそれぞれ有し、上記仮固定の際には、上記継手保持部が上記電気融着継手の外周に当接し、上記管保持部が上記樹脂管の外周に当接し、
上記中間保持部材の上記継手保持部と上記管保持部が分離しており、
上記連結部材が上記軸方向に離れて複数配置され、上記複数の連結部材は、上記第1、第2保持部材および上記中間保持部材の上記継手保持部に固定された第1連結部材と、上記第1、第2保持部材および上記中間保持部材の上記管保持部に固定された第2連結部材を含むことを特徴とする電気融着用固定装置。
【請求項5】
上記中間保持部材の上記継手保持部と上記管保持部が、軸方向の相対移動を禁じ径方向の相対移動を許容する連結手段で連結されていることを特徴とする請求項4に記載の電気融着用固定装置。
【請求項6】
上記連結手段がネジを有し、このネジは上記中間保持部材の上記管保持部に形成された径方向に細長い断面形状の長穴を貫通して上記中間保持部材の上記継手保持部にねじ込まれていることを特徴とする請求項5に記載の電気融着用固定装置。
【請求項7】
上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材のいずれか1つには径方向に貫通する貫通穴が形成されており、上記仮固定の際には、上記電気融着継手の外周から径方向に突出する端子部が上記貫通穴に入り込むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気融着用固定装置。
【請求項8】
電気融着継手とこの電気融着継手の端部の受口に差し込まれた樹脂管とを囲むようにして、これら電気融着継手と樹脂管を仮固定する固定装置において、
周方向の両端に位置する第1,第2保持部材と、周方向の中間に位置する少なくとも1つの中間保持部材と、上記第1保持部材、上記中間保持部材、上記第2保持部材をこの順序で互いに離間した状態で連結する可撓性を有する連結部材と、上記第1保持部材と上記第2保持部材を着脱可能に締結する締付具とを備え、
上記連結部材が上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材の外面に固定されており、上記第1,第2保持部材と上記中間保持部材が、軸方向に隣り合う継手保持部と管保持部とをそれぞれ有し、上記仮固定の際には、上記継手保持部が上記電気融着継手の外周に当接し、上記管保持部が上記樹脂管の外周に当接し、
さらに張力付与構造を備え、この張力付与構造は、上記連結部材を上記電気融着継手および上記樹脂管の径方向外側に押すことにより、上記連結部材に張力を付与し、
上記張力付与構造は、受け部材と変位手段とを備え、
上記受け部材は、上記第1,第2保持部材および上記中間保持部材のうちから選択された保持部材の外周と上記連結部材との間に配置され、
上記変位手段は、上記受け部材を上記選択された保持部材の外周から浮かすことにより、上記受け部材に掛けられた上記連結部材に張力を付与することを特徴とする電気融着用固定装置。
【請求項9】
上記受け部材は、上記電気融着継手および上記樹脂管の径方向に貫通するねじ穴を有しており、
上記変位手段は、上記受け部材のねじ穴にねじ込まれるねじ部材を有し、
上記ねじ部材の先端が上記選択された保持部材の外周に当たり上記受け部材を上記選択された保持部材の外周から浮かすことを特徴とする請求項8に記載の電気融着用固定装置。
【請求項10】
上記受け部材が、上記電気融着継手および上記樹脂管の軸線方向に沿って同一断面形状を有し、上記電気融着継手および上記樹脂管の径方向外側に凸曲面をなす掛け面を有しており、
上記連結部材が帯形状をなして上記受け部材の掛け面に掛けられるとともに、上記ねじ穴に対応した位置に挿通穴を有しており、
上記ねじ部材が、上記連結部材の挿通穴を通って上記受け部材のねじ穴にねじ込まれていることを特徴とする請求項9に記載の電気融着用固定装置。
【請求項11】
上記受け部材が上記連結部材の幅と同寸法の長さを有し、上記受け部材が上記選択された保持部材と上記連結部材との間に配置された状態で、上記受け部材の両端面が上記連結部材の両側縁と一致しており、
上記張力付与構造がさらに回り止め部材を有し、この回り止め部材は、上記連結部材の幅と同じ長さの主板部と、この主板部の両端に連なり主板部と直角をなす係止板部とを有し、上記主板部に挿通穴が形成されており、
上記回り止め部材の上記主板部が、上記連結部材を介して上記受け部材の掛け面に乗り、上記一対の係止板部が上記連結部材の両側縁と上記受け部材の両端面に係止された状態で、上記ねじ部材が、上記主板部の挿通穴および上記連結部材の挿通穴を介して上記受け部材のネジ穴にねじ込まれていることを特徴とする請求項10に記載の電気融着用固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管と電気融着継手とを電気融着する際に用いられる固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂管同士を連結する際に電気融着継手(以下、継手と言う)を用いることは公知である。この継手は、両端部に受口を有し、これら受口に樹脂管の端部が差し込まれる。継手の各受口内周には発熱体が埋め込まれており、継手の外周から突出する端子部を介して発熱体に通電すると、継手の内周と樹脂管の外周が溶融し、継手と樹脂管が融着される。
【0003】
上記継手への通電開始から溶融樹脂が冷却固化するまでの間、外力が作用しないように、樹脂管と継手を固定装置により仮固定している。
特許文献1に開示された固定装置は、一対の保持部材と、これら保持部材の一方の端部同士を連結するヒンジと、これら保持部材の他方の端部同士を着脱可能に締結する締付具とを備えている。
【0004】
各保持部材は、軸方向(継手および樹脂管の軸方向)に隣り合う継手保持部と管保持部とを一体に有している。これら継手保持部と管保持部の内周は、半円筒面をなしている。上記締付具で一対の保持部材を締結した状態で、継手保持部に設けられた貫通穴に対し継手の端子部が貫通することにより、また管保持部が樹脂管外周に当接することにより、これら継手と樹脂管が仮固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4936716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の固定装置は、締付具で保持部材を締め付けるだけの簡単な作業で配管(継手とこの継手の両端受口に差し込まれた樹脂管)に装着できるが、特に対象口径が大きくなると広い作業スペースを必要とする。そのため、配管周囲のスペースに制約がある場合、例えば集合住宅のパイプシャフト内等では、この固定装置を配管に装着することが困難になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、電気融着継手とこの電気融着継手の端部の受口に差し込まれた樹脂管とを囲むようにして、これら電気融着継手と樹脂管を仮固定する固定装置において、周方向の両端に位置する第1,第2の保持部材と、周方向の中間に位置する少なくとも1つの中間保持部材と、上記第1保持部材、上記中間保持部材、第2保持部材をこの順序で互いに離間した状態で連結する可撓性を有する連結部材と、上記第1保持部材と上記第2保持部材を着脱可能に締結する締付具とを備え、上記第1,第2保持部材と中間保持部材が、軸方向に隣り合う継手保持部と管保持部とをそれぞれ有し、上記仮固定の際には、上記継手保持部が上記電気融着継手の外周に当接し、上記管保持部が上記樹脂管の外周に当接することを特徴とする。
上記構成によれば、保持部材が周方向に少なくとも3つに分割されており、これら保持部材が可撓性の連結部材で連結されているので、作業スペースが狭くて済み、周囲のスペースに制約がある場合でも、固定装置を装着することができる。
【0008】
好ましくは、上記連結部材が帯形状をなして、上記第1,第2の保持部材と上記中間保持部材の外面に固定されている。
上記構成によれば、連結部材が帯形状をなして良好な可撓性を有するとともに、各保持部材にその外面から締付具の締付力を付与できるので、確実な仮固定が可能である。
【0009】
好ましくは、上記連結部材が第1保持部材から中間保持部材を経て第2保持部材に至るまで連続している。
上記構成によれば、連結部材の構成を簡略化することができる。
【0010】
好ましくは、上記連結部材が上記軸方向に離れて複数配置されている。
上記構成によれば、連結部材は良好な可撓性を保持しながら、締付具の締付力を各保持部材に付与することができる。
【0011】
好ましくは、上記中間保持部材の上記継手保持部と上記管保持部が分離しており、上記複数の連結部材は、上記第1、第2保持部材および上記中間保持部材の上記継手保持部に固定された第1連結部材と、上記第1、第2保持部材および上記中間保持部材の上記管保持部に固定された第2連結部材を含む。
上記構成によれば、中間保持部材の継手保持部と管保持部が径方向に相対移動可能であるため、電気融着継手の外径と樹脂管の外径に成形誤差があっても、これを吸収することができる。
【0012】
好ましくは、上記中間保持部材の上記継手保持部と上記管保持部が、軸方向の相対移動を禁じ径方向の相対移動を許容する連結手段で連結されている。
上記構成によれば、中間保持部材の継手保持部と管保持部が分離しても軸方向の相対移動が禁じられているので、固定装置の装着時において中間保持部材の継手保持部と管保持部を円滑に位置決めすることができるとともに、継手受口から樹脂管が抜け出すのを防止できる。
【0013】
好ましくは、上記連結手段がネジを有し、このネジは上記中間保持部材の上記管保持部に形成された径方向に細長い断面形状の長穴を貫通して上記中間保持部材の上記継手保持部にねじ込まれている。
【0014】
好ましくは、上記第1,第2の保持部材と上記中間保持部材のいずれか1つには径方向に貫通する貫通穴が形成されており、上記仮固定の際には、上記電気融着継手の外周から径方向に突出する端子部が上記貫通穴に入り込む。
【0015】
好ましくは、さらに張力付与構造を備え、この張力付与構造は、上記連結部材を上記電気融着継手および上記樹脂管の径方向外側に押すことにより、上記連結部材に張力を付与する。
上記構成によれば、連結部材に張力を付与することにより、電気融着工程において電気融着継手と樹脂管とを確実に仮固定することができる。
【0016】
好ましくは、上記連結部材が上記第1,第2の保持部材と上記中間保持部材の外面に固定されており、上記張力付与構造は、受け部材と変位手段とを備え、上記受け部材は、上記第1,第2の保持部材および上記中間保持部材のうちから選択された保持部材の外周と上記連結部材との間に配置され、上記変位手段は、上記受け部材を上記選択された保持部材の外周から浮かすことにより、上記受け部材に掛けられた上記連結部材に張力を付与する。
上記構成によれば、受け部材を浮かすことにより比較的容易に連結部材に張力を付与することができる。
【0017】
好ましくは、上記受け部材は、上記電気融着継手および上記樹脂管の径方向に貫通するねじ穴を有しており、上記変位手段は、上記受け部材のねじ穴にねじ込まれるねじ部材を有し、上記ねじ部材の先端が上記選択された保持部材の外周に当たり上記受け部材を上記選択された保持部材の外周から浮かす。
上記構成によれば、変位手段の構成を簡略化することができる。
【0018】
好ましくは、上記受け部材が、上記電気融着継手および上記樹脂管の軸線方向に沿って同一断面形状を有し、上記電気融着継手および上記樹脂管の径方向外側に凸曲面をなす掛け面を有しており、上記連結部材が帯形状をなして上記受け部材の掛け面に掛けられるとともに、上記ねじ穴に対応した位置に挿通穴を有しており、上記ねじ部材が、上記連結部材の挿通穴を通って上記受け部材のねじ穴にねじ込まれている。
上記構成によれば、帯形状の連結部材を受け部材の掛け面に安定して掛けることができる。
【0019】
好ましくは、上記受け部材が上記連結部材の幅と同寸法の長さを有し、上記受け部材が上記選択された保持部材と上記連結部材との間に配置された状態で、上記受け部材の両端面が上記連結部材の両側縁と一致しており、上記張力付与構造がさらに回り止め部材を有し、この回り止め部材は、上記連結部材の幅と同じ長さの主板部と、この主板部の両端に連なり主板部と直角をなす係止板部とを有し、上記主板部に挿通穴が形成されており、上記回り止め部材の上記主板部が、上記連結部材を介して上記受け部材の掛け面に乗り、上記一対の係止板部が上記連結部材の両側縁と上記受け部材の両端面に係止された状態で、上記ねじ部材が、上記主板部の挿通穴および上記連結部材の挿通穴を介して上記受け部材のネジ穴にねじ込まれている。
上記構成によれば、ねじ部材をねじ込んで受け部材を浮かす際に、受け部材の連れ回転を回り止め部材により禁じることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、周囲のスペースが狭くても、固定装置を継手と樹脂管に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)は電気融着継手に樹脂管の端部を差し込んだ状態を示す縦断面図であり、(B)は
図1(A)におけるI―I矢視横断面図である。
【
図2】(A)は本発明の第1実施形態に係る固定装置を上記電気融着継手と樹脂管に装着した状態を示す縦断面図であり、(B)は
図2(A)におけるII-II矢視横断面図である。
【
図3】上記固定装置を開いた状態で示す正面図である。
【
図4】上記固定装置の中間保持部材を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る固定装置を示す
図2(B)相当図である。
【
図6】同第2実施形態の固定装置の要部を示す拡大斜視図である。
【
図8】同要部の構成要素である受け部材と回り止め部材を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態を
図1〜
図4を参照しながら説明する。
図1において、符号10は電気融着継手(以下、継手と言う)を示す。この継手10は、例えばポリエチレン製で筒形状をなし、両端部に受口11を有している。これら受口11の内周には、それぞれ電熱線からなる発熱体12が埋め込まれている。継手10の両端部には、その外周から径方向,外方向に突出する端子部13が設けられている。各端子部13は、継手10と一体に形成された座ぐり穴を有する凸部13aと、内端が発熱体12の端に接続され、外端が凸部13aの座グリ穴に臨む端子13bとを有している。
【0023】
上記継手10の両端部の受口11に、例えばポリエチレン製の樹脂管20の端部が差し込まれる。
【0024】
図2に示すように、継手10に樹脂管20を差し込んだ状態で、継手10の両端部に固定装置30がそれぞれ装着される。
図2、
図3に示すように、固定装置30は、周方向に分離された3つの保持部材、すなわち周方向の両端に位置する第1保持部材31および第2保持部材32と、周方向の中間に位置する中間保持部材33とを備えている。
【0025】
上記保持部材31,32,33はそれぞれ、軸方向に隣り合う継手保持部31a,32a,33aと、管保持部31b,32b,33bと、を有している。第1保持部材31の継手保持部31aと管保持部31bは一体をなして連なり、第2保持部材32の継手保持部32aと管保持部32bも一体をなして連なっているが、中間保持部材33の継手保持部33aと管保持部33bは、
図2(A)、
図4に示すように分離しており別部材となっている。
【0026】
中間保持部材33の継手保持部33aと管保持部33bは、ネジ34(連結手段)により、軸方向の相対移動を禁じられ径方向に相対移動可能に連結されている。
図2(A)に示すように、このネジ34は軸方向に延び、管保持部33bに形成された径方向に細長い断面形状の長穴33xを貫通し、継手保持部33aにねじ込まれている。継手保持部33aと管保持部33bの互いに対向する側面は、径方向の相対移動を妨げないように平坦面となっている。
【0027】
継手保持部31a,32a,33aの内周は、継手10の外周面と等しい曲率の円弧面となっており、管保持部31b,32b,33bの内周は、樹脂管20の外周面と等しい曲率の円弧面となっている。継手保持部31a,32a,33aの内周と、管保持部31b,32b,33bの内周には、周方向に延びる突条39が軸方向に多数配列されている。
第1保持部材31の継手保持部31aには、後述の作用をなす貫通穴31xが形成されている。
【0028】
固定装置30はさらに、第1保持部材31と中間保持部材33と第2保持部材32とをこの順序で互いに離間した状態で連結する薄い2本(複数)の金属帯35、36(可撓性を有する帯形状の連結部材)と、第1保持部材31と第2保持部材32を着脱可能に締結する締付具37とを有している。金属帯35,36は弾性も有しており、引張応力が加わるとごくわずか伸びる。
【0029】
金属帯35,36は軸方向に離れて配置されている。金属帯35(第1連結部材)の両
端部は、第1保持部材31の継手保持部31aと第2保持部材32の継手保持部32aの周方向一端部の外面にそれぞれ固定されており、その中間部は中間保持部材33の継手保持部33aの外面に沿うとともに固定されている。
【0030】
上記金属帯36(第2連結部材)の両端部は、第1保持部材31の管保持部31bと第2保持部材32の管保持部32bの周方向一端部の外面にそれぞれ固定されており、その中間部は中間保持部材33の管保持部33bの外面に沿うとともに固定されている。
【0031】
上記締付具37は周知の構造であるが、
図3を参照しながら簡単に説明する。第2保持部材32の他方の端部の外面にブラケット37aが固定されている。このブラケット37aにリンク37bの基端部が回動可能に連結されており、このリンク37bの先端部にクランプ37cの基端部が回動可能かつリンク37bの長手方向にスライド可能に連結されている。
ブラケット37aとリンク37bを連結する回動軸を符号37xで示し、クランプ37cの基端部に固定された回動軸を符号37yで示す。回動軸37yは、リンク37bの先端部に形成された長穴(図示しない)に挿入支持されている。この長穴はリンク37bの長手方向に延びている。リンク37bには圧縮スプリング(図示しない)が内蔵されており、この圧縮スプリングにより、上記回動軸37yは回動軸37xから離れる方向に付勢されている。
第1保持部材31の他方の端部の外周には、上記クランプ37cの先端が着脱可能に係止されるクランプ受け37dが設けられている。
【0032】
図3に示すように第1保持部材31と第2保持部材32が分離した状態の固定装置30を、樹脂管20を差し込んだ状態の継手10の各端部に回し、保持部材31〜33の継手保持部31a〜33aを継手10の外周に当て、管保持部31b〜33bを樹脂管20の外周に当てた状態で、第2保持部材32のクランプ37cの先端を、第1保持部材31のクランプ受け37dに引っ掛け、リンク37bの回動を伴ってクランプ37cをブラケット37aにセットする。
【0033】
上記のようにして固定装置30が継手10と樹脂管20からなる配管に装着されるが、保持部材31〜33が周方向に3つに分離されていて周方向寸法が短く、しかもこれら保持部材31〜33が可撓性の金属帯35,36で連結されているので、配管回りのスペースが狭くても簡単に固定装置30を装着することができる。
【0034】
上記装着状態において、第1保持部材31に形成された貫通穴31xに、継手10の端子部13が挿通され、端子13bが外部に露出している。
【0035】
クランプ37cに働く圧縮スプリングの力で、第1保持部材31と第2保持部材32が互いに引き付けられる方向に締め付けられ、固定装置30全体が縮径方向の力を受けるため、保持部材31〜33の継手保持部31a〜33aが継手10の外周に圧接され、保持部材31〜33の管保持部31b〜33bが樹脂管20の外周に圧接される。その結果、継手10と樹脂管20を仮固定することができる。なお、これら継手保持部31a〜33aおよび管保持部31b〜33bの内周には、周方向に延びる突条39が形成されているので、継手10と樹脂管20の仮固定をより強固にすることができる。
【0036】
本実施形態では、中間保持部材33の継手保持部33aと管保持部33bが、分離されているので、継手10の外径と樹脂管20の外径に成形誤差があっても、継手保持部32aと管保持部32bが径方向に相対的に移動することにより吸収することができる。さらには、金属帯35,36はごくわずか伸びることができるので、成形誤差を吸収することができる。
【0037】
上記仮固定状態で、継手10の一対の端子16に電源からのコードを接続して発熱体15に通電すると、継手10の内周と樹脂管20の外周が溶融し、両者が融着する。この溶融樹脂の冷却固化により、継手10と樹脂管20の連結が完了する。その後で、固定装置30の締付具37による締付状態を解除し、固定装置30を配管から取り外す。
【0038】
本実施形態では、継手保持部31a,32aと継手保持部
33aとの間を繋ぐ金属帯35は継手10の外面に接して湾曲しているが、管保持部31b,32bと管保持部33bとの間を繋ぐ金属帯36は樹脂管20の外周から離れて真直状態にある。この装着状態での金属帯35,36の形状の相違を吸収するため、金属帯36は金属帯35より若干短く形成するか、金属帯35,36を等しい長さにして中間保持部材
33の管保持部33bを、継手保持部33aの外周から径方向に若干突出させるのが好ましい。
【0039】
次に本発明の第2実施形態に係る固定装置30Aについて
図5〜
図8を参照しながら説明する。本実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
固定装置30Aは、第1実施形態の固定装置30に張力付与構造40を付加することにより構成されている。
【0040】
第1保持部材31の外周において、締付具37の反対側の端部には、継手10、樹脂管20の径方向と直交する平坦な受面31sが形成されている。金属帯35の端部は、第1保持部材31の外周において、この受面31sを越えて受面31sに隣接した部位に固定されている。金属帯36の端部はこの受面31sに固定されている。
【0041】
張力付与構造40は、金属帯35に張力を付与するものであり、受け部材41と、蝶ねじ42(ねじ部材;変位手段)と、回り止め部材43とを備えている。
受け部材41はかまぼこ形状をなし、継手10、樹脂管20の軸線方向に沿って同一断面形状をなし、継手10、樹脂管20の径方向内側に平坦な当接面41aを有し、径方向外側に円筒面(凸曲面)からなる掛け面41bを有している。受け部材41の上記軸線方向の長さ、換言すれば両端面41c間の距離は、金属帯35の幅と等しい。
受け部材41の中央には、継手10、樹脂管20の径方向に貫通するねじ穴41xが形成されている。
【0042】
受け部材41は、上記第1保持部材31の受面31sと金属帯35の間にセットされる。このセット状態で、受け部材41の掛け面41bに金属帯35が掛けられており、受け部材41の両端面41cが金属帯35の両側縁と一致している。
金属帯35には、受け部材41のねじ穴41xに対応した位置に、その長手方向に細長い挿通穴35xが形成されている。
【0043】
回り止め部材43は金属板からなり、主板部43aと、この主板部43aの両端に連なり、主板部43aと直交する一対の係止板部43bとを有してコ字形をなしている。主板部43aは金属帯35の幅と等しい長さを有している。
回り止め部材43のセット状態では、主板部43aが金属帯35を介して受け部材41の掛け面41bに乗り、一対の係止板部43bが、金属帯35の両側縁と受け部材41の両端面41cに係止されている。
主板部43aの中央には受け部材41のねじ穴41xより大径の挿通穴43xが形成されている。
【0044】
上記のように受け部材41と回り止め部材43をセットした状態で、蝶ねじ42の雄ねじ部42aが回り止め部材43の挿通穴43xと金属帯35の挿通穴35xを通り、受け部材41のねじ穴41xにねじ込まれる。
【0045】
雄ねじ部42aの先端が受け部材41の当接面41aに到達する前は、この当接面41aが第1保持部材31の受面31sに当たっている。蝶ねじ42のねじ込みが進み、雄ねじ部42aが当接面41aから突出すると、この雄ねじ部42aの先端面が受面31sに当たり、受け部材41が受面31sから浮く。この浮いた量に応じて金属帯35に張力が付与される。これにより、電気溶着時の継手10と樹脂管20を、より強固に仮固定することができる。
【0046】
上記蝶ねじ42のねじ込みに際して受け部材41は連れ回転を禁じられる。回り止め部材43の一対の係止板部43bが金属帯35の両側縁に係止されるとともに、受け部材41の両端面41cに係止されているため、受け部材41の金属帯35に対する相対回動が禁じられているからである。
【0047】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
固定装置の中間保持部材は複数例えば2個または3個あってもよい。この場合には、これら中間保持部材同士も可撓性の連結部材で連結される。
中間保持部材において継手保持部と管保持部を分離せずに一体に形成してもよい。この場合、連結部材は1本であってもよい。
第1保持部材と中間部材を繋ぐ連結部材と、第2保持部材と中間部材を繋ぐ連結部材とが別部材であってもよい。
第2実施形態において、張力付与構造は第2保持部材や中間保持部材にセットしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電気融着継手と樹脂管を仮固定する固定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 電気融着継手
11 受口
12 発熱体
13 端子部
20 樹脂管
30 固定装置
31 第1保持部材
32 第2保持部材
33 中間保持部材
31a,32a,33a 継手保持部
31b,32b,33b 管保持部
31x 貫通穴
33x 長穴
34 ネジ(連結手段)
35 金属帯(第1連結部材)
35x 挿通穴
36 金属帯(第2連結部材)
37 締付具
40 張力付与構造
41 受け部材
41b 掛け面
41c 端面
41x ねじ穴
42 蝶ねじ(ねじ部材;変位手段)
42a 雄ねじ部
43 回り止め部材
43a 主板部
43b 係止板部
43x 挿通穴