(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
NMR測定用の試料管の導入時に、試料管が収容された収容部と前記収容部内に前記試料管を保持するためのロック機構とを含む試料管用キャリアを、管状の形状を有しNMRプローブ装置へ通じる試料管用通路の一方端部に設置することで、前記一方端部を前記ロック機構に接触させて前記ロック機構を解除し、
前記ロック機構が解除した状態で、前記試料管用通路を介して前記収容部から前記NMRプローブ装置へ前記試料管を導入し、
前記試料管の回収時に、前記試料管用キャリアが前記一方端部に設置されて前記ロック機構が解除された状態で、前記試料管用通路内において前記試料管用通路の他方端部側から前記一方端部に向けてガスを噴出し、そのガス圧によって、前記試料管用通路を介して前記NMRプローブ装置から前記収容部に前記試料管を排出する、
ことを特徴とするNMR試料管導入回収方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載されたMASプローブ装置においては、作業者が試料管を手で掴んで試料投入口から試料管を導入することが想定されており、その作業によってゴミが混入したり汚染する場合がある。また、試料管の回収時には、ガス圧によって試料管が上部に押し出され、その勢いを保った状態で試料投入口から排出される。この場合、試料投入口を覆うゲージ(容器)等に試料管が衝突し、試料管が損傷する可能性がある。また、試料管は非常に細い容器であるため、他の試料管との識別が困難である。
【0009】
本発明の目的は、試料管をNMRプローブ装置へ導入する際、及び、NMRプローブ装置から試料管を回収する際の、試料管の取り扱いや管理を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、NMR測定用の試料管が収容される収容部と、前記収容部内に前記試料管を保持するためのロック機構と、を含む試料管用キャリアと、管状の形状を有しNMRプローブ装置へ通じる試料管用通路であって、一方端部に前記試料管用キャリアが設置された場合、前記一方端部が前記ロック機構に接して前記ロック機構を解除する試料管用通路と、前記試料管用通路内において前記試料管用通路の他方端部側から前記一方端部に向けてガスを噴出する噴出部材と、を含み、試料管導入時に、前記試料管用キャリアが前記一方端部に設置されて前記ロック機構が前記一方端部に接することで前記ロック機構が解除され、これにより、前記試料管が前記試料管用通路を介して前記収容部から前記NMRプローブ装置に導入され、試料管回収時に、前記試料管用キャリアが前記一方端部に設置されて前記ロック機構が解除された状態で、前記噴出部材によって前記他方端部側から前記一方端部に向けてガスが噴出され、そのガス圧によって、前記試料管が前記試料管用通路を介して前記NMRプローブ装置から前記収容部に排出される、ことを特徴とするNMR試料管導入回収装置である。
【0011】
上記の構成によれば、試料管導入時に、試料管用キャリアが試料管用通路の一方端部に設置されると、ロック機構が解除されて、試料管がNMRプローブ装置に搬送される。また、試料管回収時に、試料管用通路内にガスが供給されることで、NMRプローブ装置から試料管用キャリアに試料管が排出される。これにより、作業者は、試料管自体を直接扱わなくても、試料管をNMRプローブ装置に導入し、また、試料管をNMRプローブ装置から回収することができる。そのため、例えば、手作業に起因するゴミの混入と汚染を防止することが可能となる。また、試料管用キャリアによって試料管を管理できるため、試料管の管理が容易となる。試料管用通路は、試料管をNMRプローブ装置に導入し、また、試料管をNMRプローブ装置から回収するための通路として機能するとともに、ロック機構を解除又はロックするためのスイッチとしても機能する。試料管用キャリアは、例えば、試料管用通路の一方端部にて固定されずに設置される。これにより、試料管用キャリアはガス圧によって試料管用通路から離れる方向へ移動し易くなるため、試料管が収容部に排出されたときに衝撃が発生しても、試料管用キャリア自体の移動によって、その衝撃を緩和し、試料管の損傷を抑制又は防止することが可能となる。試料管用キャリアは、作業者による手作業によって試料管用通路の一方端部に設置されてもよいし、自動試料交換装置(オートサンプルチェンジャー)等の装置によって自動的にその一方端部に設置されてもよい。
【0012】
前記試料管用キャリアは、前記収容部と前記試料管用キャリア外部との間を繋ぐ通路であって、前記試料管用キャリアが前記一方端部に設置された場合、前記試料管用通路の前記一方端部が挿入される通路を更に有し、前記ロック機構は、前記通路内に設けられた開閉可能な弁であり、前記試料管用キャリアが前記一方端部に設置された場合、前記一方端部が前記通路内に挿入されて前記弁に接することで、前記一方端部によって前記弁が押されて開状態となり、これにより、前記収容部と前記試料管用通路とが繋がり、この状態で、前記収容部から前記NMRプローブ装置への前記試料管の導入、及び、前記NMRプローブ装置からの前記収容部への前記試料管の排出が行われる。
【0013】
上記の構成において、弁は、例えばバネ等の弾性部材から付勢力を受けて通路を閉じる。試料管用通路の一方端部が弁に接触すると、付勢力に勝る力が弁に与えられて、弁が開状態となる。このように、試料管用通路は、弁を開閉するためのスイッチとして機能する。試料管用通路がスイッチとして機能するため、そのスイッチとして機能する構成を、試料管用キャリア自体に設けずにすむため、簡易な構成によってロック機構を構成することが可能となる。
【0014】
前記収容部に前記試料管が収容された状態で、前記試料管用キャリアが前記一方端部から取り外されることで、前記一方端部と前記弁との接触が解除されて前記弁が閉じて前記試料管が前記収容部内に保持される。
【0015】
上記の構成によれば、試料管用キャリアが一方端部から取り外されることで、自動的に弁が閉じるため、その取扱いが容易となる。
【0016】
前記収容部を構成する壁面に開口部が形成されており、試料管回収時に、前記噴出部材から供給されたガス圧によって前記試料管が前記収容部内に排出されて前記開口部を塞ぎ、これにより、ガス圧によって前記試料管用キャリアが前記一方端部から離れる方向へ移動し、前記一方端部と前記弁との接触が解除されて前記弁が閉じる。
【0017】
上記の構成によれば、ガス圧によって試料管用キャリアが自動的に取り外されるので、その取り扱いが容易となる。また、試料管が開口部を塞いでいない状態では、ガスは開口部を介して収容部の外部に排出されるため、ガス圧によって試料管用キャリアが一方端部から離れる方向へ移動することを抑制又は防止することが可能となる。これにより、試料管が収容部に排出されるまでの間、試料管用キャリアを一方端部に留めておき、試料管が収容部に排出されないという事態を回避することが可能となる。
【0018】
前記弁は、前記通路に対して斜めに配置されている。
【0019】
試料管回収時に、ガス圧によって前記試料管が前記収容部内に排出された際の衝撃によって、前記試料管用キャリアが前記一方端部から離れる方向へ移動する。
【0020】
上記の構成によれば、試料管用キャリアが移動することで衝撃が緩和されるので、衝撃に起因する試料管の損傷を防止又は抑制することが可能となる。
【0021】
前記収容部の外周部に、前記噴出部材から外部に噴出されたガスを通すための1又は複数の貫通孔が形成されている。
【0022】
前記試料管は、固体試料を収容する固体NMR用試料管であり、前記試料管用キャリアは、前記収容部に前記固体NMR用試料管を収容して保持する部材であり、溶液試料を収容する溶液NMR用試料管を保持する保持部材と共通の外形形状を有する。
【0023】
上記の構成によれば、溶液NMR用試料管を扱う装置によって、試料管用キャリアを扱うことが可能となる。
【0024】
前記試料管用キャリアと、前記保持部材に保持された前記溶液NMR用試料管は、共通の搬送装置によって、前記試料管用キャリアと前記溶液NMR用試料管とを保管する保管容器からNMR装置へ搬送される。
【0025】
前記保管容器は、試料管の温度を調整する機能を備えている。試料管は試料管用キャリア内に収容されているため、試料管が試料管用キャリアに収容されずにNMR装置へ搬送される場合と比べて、試料管の温度変化を抑制又は防止することができる。
【0026】
また、本発明は、NMR測定用の試料管の導入時に、試料管が収容された収容部と前記収容部内に前記試料管を保持するためのロック機構とを含む試料管用キャリアを、管状の形状を有しNMRプローブ装置へ通じる試料管用通路の一方端部に設置することで、前記一方端部を前記ロック機構に接触させて前記ロック機構を解除し、前記ロック機構が解除した状態で、前記試料管用通路を介して前記収容部から前記NMRプローブ装置へ前記試料管を導入し、前記試料管の回収時に、前記試料管用キャリアが前記一方端部に設置されて前記ロック機構が解除された状態で、前記試料管用通路内において前記試料管用通路の他方端部側から前記一方端部に向けてガスを噴出し、そのガス圧によって、前記試料管用通路を介して前記NMRプローブ装置から前記収容部に前記試料管を排出する、ことを特徴とするNMR試料管導入回収方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、試料管をNMRプローブ装置へ導入する際、及び、NMRプローブ装置から試料管を回収する際の、試料管の取り扱いや管理が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明の実施形態に係るNMR装置の一例が示されている。NMR装置10は、試料中の観測核により生じたNMR信号を測定する装置である。
【0030】
静磁場発生装置12は静磁場を発生させる装置であり、その中央部には、垂直方向に延びる空洞部としてのボア14が形成されている。NMRプローブ装置16は、それ全体として垂直方向に延びる円筒形状を有し、静磁場発生装置12のボア14内に挿入される。本実施形態に係るNMRプローブ装置16は、MAS法を実施するための装置であり、試料管支持装置18と、方向転換装置20と、送信用及び受信用の検出コイルと、を含む。試料管支持装置18は、試料管をマジック角に傾斜して支持する装置である。試料管は例えば円柱状の形状を有し、固体試料を収容する。試料管は、試料管支持装置18内で、静磁場に対してマジック角をもって傾斜した回転軸上で、その周囲を精密な気体軸受によって支持され、測定中は高速で回転する。方向転換装置20は、NMRプローブ装置16に導入された試料管の円柱軸の方向を試料管支持装置18の回転軸に平行な方向に転換して、試料管を試料管支持装置18に導入する装置である。
【0031】
ボア14内には、ボア14に沿って、ボア14の上部からNMRプローブ装置16にかけてプローブガイド22が設けられている。プローブガイド22は、例えば金属製の筒状の部材であり、静磁場発生装置12内においてNMRプローブ装置16の軸方向の位置決めを行う部材である。
【0032】
プローブガイド22内には、試料管をNMRプローブ装置16に導入し、また、試料管をNMRプローブ装置16から回収するための試料管導入回収装置が設置される。本実施形態に係る試料管導入回収装置は、通路としての試料管用通路部材24と、試料管を保持する試料管用キャリア26と、噴出部材としてのアダプタ28と、を含む。
【0033】
試料管用通路部材24は、例えば金属製の管状の部材であり、ボア14の上部からNMRプローブ装置16にかけて設けられ、NMRプローブ装置16に接続されてNMRプローブ装置16に通じる装置である。より詳しく説明すると、試料管用通路部材24は、アダプタ28を介して、NMRプローブ装置16内の方向転換装置20に接続される。試料管の導入時においては、試料管用通路部材24の上端部から試料管用通路部材24内に試料管が導入され、試料管用通路部材24を通って試料管がNMRプローブ装置16に導入される。NMRプローブ装置16内においては、試料管が試料管用通路部材24から方向転換装置20に導入され、試料管の方向が方向転換装置20によって転換される。方向が転換された試料管は、方向転換装置20から試料管支持装置18に導入される。試料管の回収時においては、試料管用通路部材24を通って試料管がNMRプローブ装置16から外部に排出される。
【0034】
本実施形態では、内部に試料管を収容する試料管用キャリア26を用いて、NMRプローブ装置16への試料管の導入、及び、NMRプローブ装置16からの試料管の回収が行われる。試料管用キャリア26は、試料管用通路部材24の一方端部(上端部)に設置可能な部材であり、その一端部から取り外し可能な部材である。試料管導入時においては、内部に試料管が収容された試料管用キャリア26を試料管用通路部材24の上端部に設置すると、試料管用キャリア26から試料管用通路部材24に試料管が導入され、試料管用通路部材24を通って試料管がNMRプローブ装置16に導入される。試料管回収時においては、NMRプローブ装置16から試料管用通路部材24の上端部に試料管が搬送され、その上端部に設けられた試料管用キャリア26内に試料管が排出される。その排出は、試料管用通路部材24内へのガスの供給によって行われる。試料管用キャリア26は例えばテフロン(登録商標)等の樹脂によって構成されている。
【0035】
アダプタ28は、試料管用通路部材24の他方端部(下端部)に設置され、図示しない高圧ガス供給装置から供給されたガスを試料管用通路部材24内に噴出するガス流分配装置として機能する。試料管回収時には、そのガスによって、試料管が試料管支持装置18から試料管用キャリア26へ排出される。
【0036】
以下、本実施形態に係る試料管導入回収装置について詳しく説明する。
【0037】
まず、
図2を参照して、試料管用通路部材24の外観について説明する。
図2は、試料管用通路部材24の全体構成を示す斜視図である。試料管用通路部材24は、垂直方向に延びる管状の通路部材30と、通路部材30の一方端部に設けられた管状の挿入部材32と、を含む。後述するように、試料管導入時及び試料管回収時に、挿入部材32が試料管用キャリア26内に挿入される。通路部材30の他方端部にはアダプタ28が設けられている。
【0038】
図3及び
図4には、試料管用通路部材24の一部とアダプタ28が示されている。
図3は、挿入部材32とアダプタ28を示す斜視図であり、
図4は、挿入部材32とアダプタ28を側面から見た図である。アダプタ28の側面には、アダプタ28の外部から内部に通じる通路としてのガス導入孔34が形成されている。ガス導入孔34を介して、図示しない高圧ガス供給装置からアダプタ28内にガスが供給される。また、アダプタ28の側面には、ガス導入孔34よりも通路部材30側(上方側)に、内部のガスを外部に漏らす(逃がす)ための1又は複数の孔36が形成されている。孔36については後で詳しく説明する。
【0039】
次に、
図5を参照して、試料管用通路部材24及びアダプタ28の内部構造について説明する。
図5は、試料管用通路部材24の一部とアダプタ28を示す断面図である。
【0040】
通路部材30の一方端部としての上端部30a及び他方端部としての下端部30bは開口しており、上端部30aから下端部30bにかけて、通路部材30内に通路部材30に沿って通路38が形成されている。試料管はその通路38内を移動する。
【0041】
挿入部材32の一方端部としての上端部32a及び他方端部としての下端部32bは開口しており、上端部32aから下端部32bにかけて、挿入部材32内に挿入部材32に沿って通路40が形成されている。試料管はその通路40内を移動する。試料管導入時に、上端部32aから挿入部材32内の通路40に試料管が導入され、試料管回収時に、上端部32aから外部(後述するように試料管用キャリア26内)に試料管が排出される。
【0042】
通路部材30の上端部30aは、挿入部材32の下端部32bから挿入部材32内の通路40に挿入され、これにより、通路部材30内の通路38と挿入部材32内の通路40とが通じる。
【0043】
アダプタ28の一方端部としての上端部28a及び他方端部としての下端部28bは開口しており、上端部28aから下端部28bにかけて、アダプタ28内に通路42が形成されている。試料管はその通路42内を移動する。また、アダプタ28の側面には、ガス導入孔34とアダプタ28の上端部28aとの間に、1又は複数の孔36が形成されている。各孔36は、アダプタ28内の通路42に通じている。通路42内に供給されたガスの一部は、孔36からアダプタ28の外部に排出される。
【0044】
通路部材30の下端部30bは、アダプタ28の上端部28aからアダプタ28内の通路42に挿入され、これにより、通路部材30内の通路38とアダプタ28内の通路42とが通じる。また、アダプタ28の下端部28bは、NMRプローブ装置16内の方向転換装置20に接続される。
【0045】
通路部材30、挿入部材32及びアダプタ28を連結することで、通路部材30内の通路38、挿入部材32内の通路40、及び、アダプタ28内の通路42が繋がる。これらの通路内を試料管が移動して、NMRプローブ装置16への試料管の導入、及び、NMRプローブ装置16からの試料管の回収が行われる。つまり、試料管導入時には、試料管は、主に重力によって、挿入部材32の上端部32aから挿入部材32内の通路40に導入され、更に、挿入部材32内の通路40から通路部材30内の通路38に移動し、アダプタ28内の通路42を移動して、アダプタ28の下端部28bからNMRプローブ装置16内に導入される。試料回収時には、試料管は、ガス圧によって、NMRプローブ装置16内からアダプタ28の下端部28bを介してアダプタ28内の通路42に排出され、更に、アダプタ28内の通路42から通路部材30内の通路38に排出され、挿入部材32内の通路40を移動して、挿入部材32の上端部32aから外部(後述するように試料管用キャリア26内)に排出される。
【0046】
アダプタ28の側面に形成されたガス導入孔34は、アダプタ28内の通路42と繋がっており、高圧ガス供給装置からガス導入孔34に供給されたガスは、ガス導入孔34を介して通路42に供給される。これにより、通路部材30内の通路38と挿入部材32内の通路40にガスが供給される。
【0047】
以下、
図6から
図9を参照して、試料管用キャリア26の外観について説明する。
図6は、試料管用キャリア26の全体構成を示す斜視図である。
図7は、試料管用キャリア26を側面側から見た図である。
図8は、試料管用キャリア26を上方から見た図である。
図9は、試料管用キャリア26の下方から見た図である。
【0048】
図6及び
図7に示すように、試料管用キャリア26は、筒状の下側キャリア44と、下側キャリア44の上部に設けられた筒状の上側キャリア46と、を含む。上側キャリア46の外周は下側キャリア44の外周よりも大きい。下側キャリア44と上側キャリア46は、例えば一体化された部材である。
【0049】
後述するように、上側キャリア46内には、試料管が収容される空間としての収容部が形成されている。
図6及び
図8に示すように、試料管用キャリア26の一方端部としての上端部26a(上側キャリア46の上端部)には、その収容部に通じる1又は複数の開口部48が形成されている。
【0050】
図6、
図8及び
図9に示すように、上側キャリア46には、開口部48よりも外側の領域に、下側キャリア44及び上側キャリア46が延在する方向に沿って上側キャリア46を貫通する1又は複数の貫通孔50が形成されている。この貫通孔50については後で詳しく説明する。
【0051】
また、上側キャリア46には、その内部に形成された収容部に通ずる空間としてのロック機構収容部52が形成されている。後述するように、そのロック機構収容部52にロック機構が配置される。
【0052】
次に、
図10及び
図11を参照して、試料管用キャリア26の内部構造について説明する。
図10及び
図11は、試料管用キャリア26を示す断面図である。
図10には、ロック機構が閉じた状態の試料管用キャリア26が示されており、
図11には、ロック機構が開いた状態の試料管用キャリア26が示されている。
【0053】
図10に示すように、試料管用キャリア26の他方端部としての下端部26b(下側キャリア44の下端部)は開口している。試料管用キャリア26内には、下端部26bから上端部26aにかけて順に、空間としての通路54と収容部56が形成されている。通路54は収容部56に通じている。収容部56には試料管58が収容される。試料管58内には固体試料が収容される。上述したように、上端部26aには開口部48が形成されており、その開口部48は収容部56に通じている。開口部48の大きさは試料管58の大きさよりも小さく、つまり、開口部48の幅は、試料管58の長さ及び幅(円柱状の試料管58の柱の長さ及び直径)よりも狭く、試料管58が開口部48を通過できないようになっている。
【0054】
また、上側キャリア46の側面に形成された空間としてのロック機構収容部52は、通路54の上部及び収容部56の下部と通じており、ロック機構収容部52内には、ロック機構を構成する部品として、開閉可能な弁60と弾性部材としてのバネ62(例えば板バネ)とが配置されている。バネ62の一方端部はロック機構収容部52内に固定されており、他方端部は弁60の側面に接している。これにより、バネ62は、ロック機構収容部52から通路54及び収容部56の方向に向けて付勢力を弁60に与えている。バネ62の付勢力が弁60に与えられると、
図10に示すように、弁60が、通路54の上部と収容部56の下部との境界部分に押し出されて、その部分に配置される。これにより、通路54と収容部56とが遮断される。この状態が、弁60が閉じた状態(ロック機構によってロックされている状態)である。収容部56に試料管が収容されている状態で弁60が閉じると、試料管は収容部56内に保持される。
【0055】
一方、バネ62の付勢力を超える力が、その付勢力が加わる方向とは反対の方向から弁60に与えられると、
図11に示すように、弁60は、通路54及び収容部56からロック機構収容部52内に退避する。これにより、通路54と収容部56とが通じた状態となる。この状態が、弁60が開いた状態(ロック機構によるロックが解除された状態)である。弁60が開状態になると、収容部56内に収容されていた試料管58が、主に重力によって、収容部56から通路54側へ移動する。
【0056】
後述するように、試料管導入時には、試料管用キャリア26が試料管用通路部材24の上部(挿入部材32)に設置され、試料管用キャリア26の通路54内には、下端部26bに形成された開口を介して、試料管用通路部材24の挿入部材32が挿入される。そうすると、その挿入部材32が、閉じた状態の弁60(バネ62の付勢力によって通路54側に押し出された状態の弁60)に接触して弁60を上方へ押し上げ、その押し上げによって、弁60はロック機構収容部52内に退避する。これにより、試料管58が、収容部56から通路54を介して試料管用通路部材24内に移動する。試料管導入時に、試料管用キャリア26が試料管用通路部材24の上端(挿入部材32)に設置され、弁60はロック機構収容部52内に退避する。この状態で、試料管が、ガス圧によって、NMRプローブ装置16から試料管用キャリア26内の収容部56内に排出される。
【0057】
図12には、ロック機構によるロックが解除された試料管用キャリア26を下方から見た状態が示されている。弁60がロック機構収容部52内に退避しているため、通路54と収容部56とが通じている。
【0058】
試料管導入時と試料管回収時には、試料管用キャリア26は試料管用通路部材24に装着される。この点について、
図13から
図15を参照して詳しく説明する。
図13は、試料管用キャリア26と試料管用通路部材24を示す斜視図である。
図14は、試料管用キャリア26と試料管用通路部材24を側面側から見た図である。
図15は、試料管用キャリア26と試料管用通路部材24を示す断面図である。
図14及び
図15においては、通路部材30の一部が省略されている。
【0059】
図13及び
図14に示すように、試料管用キャリア26は試料管用通路部材24の上部(挿入部材32)に設置される。
図15には、このときの各部の配置が示されている。試料管用キャリア26の通路54内には、試料管用キャリア26の下端部26bに形成された開口を介して、試料管用通路部材24の挿入部材32が挿入されている。挿入部材32は、通路54と収容部56との境界部分まで挿入される。挿入部材32が通路54内に挿入されることで、挿入部材32の上端部32aが、閉じた状態の弁60(
図10参照)に接触し、弁60を押し上げる。挿入部材32が、通路54と収容部56との境界部分まで挿入されると、弁60が完全に押し上げられてロック機構収容部52内に退避させられる。つまり、弁60が開状態となり、ロック機構のロックが解除される。これにより、挿入部材32の上端部32aを介して、収容部56と、挿入部材32内の通路40とが通じる。
【0060】
試料管導入時には、ロック機構のロックが解除された状態で、試料管58は、主に重力によって、収容部56から挿入部材32側に移動し、挿入部材32の上端部32a(開口)から挿入部材32内の通路40へ移動する。試料管58は、更に、挿入部材32内の通路40から通路部材30内の通路38に移動し、アダプタ28内の通路42を移動して、アダプタ28の下端部28bからNMRプローブ装置16内に導入される。
【0061】
試料管回収時には、ロック機構のロックが解除された状態で、試料管58は、ガス圧によって、NMRプローブ装置16内からアダプタ28内の通路42に排出され、更に、通路部材30内の通路38、及び、挿入部材32内の通路40を通って、挿入部材32の上端部32aから、試料管用キャリア26内の収容部56に排出される。このようにして、試料管58が、NMRプローブ装置16から試料管用キャリア26に回収される。
【0062】
以下、
図16を参照して、ガスによる試料管58の排出動作について詳しく説明する。
図16には、ガスの供給に関する機構が示されている。
【0063】
試料管用通路部材24の下端部に設けられたアダプタ28は、通路部材64によって方向転換装置20に接続されており、方向転換装置20は、通路部材66によって試料管支持装置18に接続されている。試料管は、試料管用通路部材24及び通路部材64,66内を移動することで、試料管用キャリア26と試料管支持装置18との間を移動することができる。
【0064】
試料管支持装置18は、静磁場に対してマジック角をもって傾斜した回転軸上で試料管を高速に回転させるように構成されている。
【0065】
アダプタ28には、ガスボンベ、ガスタンク、コンプレッサ、減圧弁、流量調整弁等によって構成された高圧ガス供給装置68、弁70、ガス配管72等を介して、高圧ガスが供給される。上述したように、高圧ガスは、ガス導入孔34を介して、アダプタ28内の通路42に供給される。
【0066】
アダプタ28内に高圧ガスを噴射すると、その慣性により、試料管用通路部材24内では試料管用キャリア26に向かう方向に対してガス流が発生する。また、高速で噴出したガスはベルヌーイ効果によって局所的に負圧を発生させて周囲のガスを引き寄せる。すなわち、アダプタ28は、上流からガスを吸い込み下流へとガスを噴出するポンプと同様の動作を行う。上流では、このポンプの作用により負圧が発生する。
【0067】
試料管用通路部材24に対するガス配管72の取り付け角度を調整することで、吸引力と噴出力との割合を調整することができる。また、試料管用通路部材24の内径とガス配管72の内径との比率を調整することによっても、吸引力と噴出力との割合を調整することができる。
【0068】
高圧ガスは、空気、窒素、ヘリウム等が用いられる。測定の目的に応じた特定種類の気体が用いられてもよい。
【0069】
ガス配管72は、例えば0〜0.5MPaの圧力に耐え得る配管であり、耐圧ウレタン管等によって構成されてもよい。
【0070】
試料管回収時、高圧ガス供給装置68からアダプタ28に高圧ガスを供給することで、試料管用通路部材24内に試料管用キャリア26に向かう方向にガス流が発生する。このとき、ガス流の上流側(試料管支持装置18及び方向転換装置20)にて負圧が発生する。その負圧によって、試料管支持装置18内に配置された試料管が、試料管支持装置18から方向転換装置20を介してアダプタ28内に吸い込まれ、更に、試料管用通路部材24を介してアダプタ28から試料管用キャリア26内に排出される。
【0071】
試料管導入時、高圧ガス供給装置68からの高圧ガスの供給が停止した状態で、試料管用キャリア26内に収容された試料管は、主に重力によって、試料管用キャリア26から試料管支持装置18へ移動する。急激な落下を避けるために、試料管の移動時に、試料管用通路部材24内で試料管用キャリア26に向かう方向にガス流を発生させておき、その後、徐々にガス圧を低下させて試料管を降下させてもよい。もちろん、試料管用キャリア26から試料管支持装置18に向かう方向にガス流を発生させ、重力によらずに能動的に試料管を移動させてもよい。
【0072】
以下、本実施形態に係る試料管導入回収装置の動作について説明する。
【0073】
試料管導入時においては、
図13から
図15に示すように、試料管用通路部材24の上部に試料管用キャリア26が設置される。これにより、挿入部材32によって試料管用キャリア26内の弁60が押されて開状態となり(ロック解除)、試料管用キャリア26の収容部56に収容されていた試料管58が、主に重力によって、試料管用通路部材24及びアダプタ28を介して、NMRプローブ装置16内の試料管支持装置18に導入される。
【0074】
試料管回収時においては、試料管導入時と同様に、試料管用通路部材24の上部に試料管用キャリア26が設置され、弁60が開状態となる(ロック解除)。この状態で、高圧ガス供給装置68からアダプタ28に高圧ガスが供給されると、アダプタ28及び試料管用通路部材24内に試料管用キャリア26に向かう方向にガス流が発生し、そのガス流の上流に負圧が発生する。本実施形態では、
図5に示すように、アダプタ28の側面に形成されたガス導入孔34を介してアダプタ28内に高圧ガスが供給され、ガスの上流に相当するアダプタ28の下端部28b側に負圧が発生する。その負圧によって、試料管58が、試料管支持装置18からアダプタ28内に吸い込まれる。また、試料管用キャリア26に向かうガス流によって、試料管58が、試料管用通路部材24を介してアダプタ28から試料管用キャリア26の収容部56内に排出される(
図15参照)。
【0075】
なお、アダプタ28内に供給されるガスの流量とそのガス圧との関係によっては、試料管58を試料管支持装置18からアダプタ28へ吸い込むための適切な負圧が形成されない場合がある。例えば、ガスの流量が過多の場合、試料管58をアダプタ28へ吸い上げるための負圧が形成されない場合がある。これに対処するために、アダプタ28の側面には、ガス導入孔34とアダプタ28の上端部28aとの間、つまり、ガスの下流側に、1又は複数の孔36が形成されている(
図5参照)。アダプタ28内の通路42に供給されたガスの一部は、孔36からアダプタ28の外部に排出される。これにより、ガスの流量が適切に調整されて、試料管58を試料管支持装置18からアダプタ28へ吸い込むための適切な負圧が形成される。
【0076】
試料管回収時に収容部56内に排出された試料管58は、ガスの供給によって、収容部56内で上方(上端部26a)側へ移動する。
図17には、そのときの試料管58の状態が示されている。
図17は、試料管用キャリア26と試料管用通路部材24の一部を示す断面図である。試料管58は、ガス圧によって収容部56の上方に排出され、試料管用キャリア26の上端部26aの内側の面に接触する。これにより、上端部26aに形成された開口部48の一部又は全部が試料管58によって塞がれる。開口部48が試料管58によって塞がれると、試料管用通路部材24を介して収容部56内に供給されたガスの逃げ場がなくなり、そのガス圧によって、試料管用キャリア26が上方へ移動する。つまり、試料管用キャリア26は、試料管用通路部材24から離れる方向へ移動する。
【0077】
図18には、上方へ移動した試料管用キャリア26が示されている。
図18は、試料管用キャリア26と試料管用通路部材24の一部を示す断面図である。試料管用キャリア26がガス圧によって上方(
図18中の矢印の方向)へ移動すると、挿入部材32の上端部30aが弁60に接触しなくなるため、弁60を押し上げる力が弁60に与えられず、弁60は、バネ62の付勢力によって通路54と収容部56との境界部分に押し出されて閉じた状態となる。これにより、通路54と収容部56との境界部分が弁60によって塞がれるので、試料管58が収容部56内に保持される。
【0078】
試料管用キャリア26はガス圧によって浮上し、NMR装置10から取り出される。作業者が手作業によって試料管用キャリア26を取り出してもよいし、自動交換装置が試料管用キャリア26を自動的に取り出してもよい。例えば、ガス圧によって試料管用キャリア26が試料管用通路部材24から自動的に取り外されて、NMR装置10から取り出される。
【0079】
なお、試料管用キャリア26に開口部48が形成されていない場合、試料管用通路部材24を介して収容部56内に供給されたガスの逃げ場がなくなる。そのため、そのガス圧の大きさによっては、試料管58を回収する前に、試料管用キャリア26が上方(試料管用通路部材24から離れる方向)へ移動してしまい、試料管用通路部材24から外れてしまう可能性がある。これに対処するために、試料管用キャリア26の上端部26aに、収容部56に通ずる開口部48が形成されている。ガスが収容部56内に供給されると、ガスは開口部48を通って試料管用キャリア26の外部に排出されるので、試料管用キャリア26を浮上させるほどのガス圧が試料管用キャリア26に加わらなくなる。その結果、試料管58が開口部48を塞ぐまでの間、試料管用キャリア26の浮上を防止することが可能となる。また、開口部48は、試料管58がガス流によって収容部56に排出されたときに当接する場所(具体的には試料管用キャリア26の上端部26a)に形成されているため、試料管58が収容部56に排出されると、開口部48は試料管58によって自動的に塞がれるようになっている。
【0080】
以上のように、本実施形態によると、試料管58の導入時や回収時には、試料管用キャリア26を試料管用通路部材24に設置することで、NMRプローブ装置16への試料管58の導入、及び、NMRプローブ装置16からの試料管58の回収が可能となる。試料管58の導入時及び回収時のいずれにおいても、試料管58は試料管用キャリア26内に収容されているため、その導入時や回収時における試料管58の取り扱いや管理が容易となる。
【0081】
例えば、作業者は、試料管58自体を手で掴んで導入作業や回収作業を行う必要がない。そのため、手作業に起因するNMRプローブ装置16内へのゴミの混入と試料管の汚染を防止することができる。
【0082】
また、試料管用キャリア26は試料管用通路部材24に固定されておらず、ガス圧によって浮上可能に設置されている。そのため、試料管58の回収時に、ガス圧によって試料管58が収容部56内の壁面(具体的には上端部26a)に接触しても、試料管用キャリア26も試料管58と共に上方に移動するので、その接触による衝撃が緩和されて、試料管58が損傷を受けにくい。
【0083】
また、試料管58自体は非常に細い容器であるため、仮に試料管58自体に識別のための文字列やマーク等を記述したとしても、その文字列やマークの読み取り自体が困難であり、他の試料管58との識別が難しい。試料管58はNMRプローブ装置16内に導入されるものであるため、NMRプローブ装置16内の汚染を防止する観点から、試料管58自体に文字列やマーク等を記述することは好ましいものではない。これに対して本実施形態では、試料管用キャリア26自体に文字列やマーク等の識別情報を付しておくことで、試料管用キャリア26内に収容された試料管の識別が容易となる。試料管用キャリア26自体はNMRプローブ装置16内に導入されないため、試料管用キャリア26の外面に識別情報を付したとしても、NMRプローブ装置16が汚染されることはない。
【0084】
また、複数の試料管用キャリア26を用いることで、複数の試料管58の管理が容易となる。つまり、試料管58毎に試料管用キャリア26を用意しておき、各試料管58を、自身用の試料管用キャリア26内に収容しておくことで、試料管58そのものを管理する場合と比べて、その管理が容易となる。
【0085】
また、試料管回収時には、ガス圧によって試料管用キャリア26自体が上方に移動して弁60が自動的に閉じ、更に、試料管用キャリア26が試料管用通路部材24から自動的に取り外される。作業者が手作業で試料管用キャリア26を取り外す必要がないため、作業者の負担が軽減される。もちろん、作業者が、試料管用通路部材24に設置されている試料管用キャリア26を手作業で取り外してもよい。
【0086】
本実施形態に係る試料管用通路部材24は、試料管58をNMRプローブ装置16へ導入し、試料管58をNMRプローブ装置16から回収するための通路として機能すると共に、弁60を開閉するためのスイッチとして機能する。試料管用通路部材24をスイッチとして機能させることで、簡易な構成を有するロック機構を採用することが可能となる。つまり、弁60とバネ62という簡易な部材によってロック機構(開閉機構)を構成することが可能となる。
【0087】
なお、
図10及び
図18に示すように、弁60が閉じているとき、弁60は、通路54に対して斜めに配置されている。試料管回収時、試料管用通路部材24の挿入部材32の上端部32aが弁60に接することで、弁60は開状態となり、試料管58が収容部56に排出される。ところが、ガス圧の大きさによっては、上端部32aが弁60に接しない位置まで、試料管用キャリア26がガス圧によって上方に移動して弁60が閉じてしまう可能性がある。この場合、ガス流によって弁60の位置まで移動した試料管58が弁60に衝突し、その衝突の勢いによって弁60を自ら押し上げて、収容部56内に排出される。通路54に対して弁60が斜めに配置されていると、試料管58の衝突によって弁60が開き易くなるので、試料管58が収容部56に排出され易くなる。
【0088】
また、弁60が閉じているときにガス圧によって開かないように、閉じた状態において、弁60は、上側から下側にかけて先細りとなる形状を有していてもよい。これにより、ガス流が下方から上方へ流れやすくなり、ガス圧によって弁60が開き難くなる。試料管58が収容部56内に排出されて弁60が閉じた後に、弁60がガス圧によって開くことを防止して、試料管58を収容部56内に保持し続けることが可能となる。
【0089】
以下、
図6と
図19を参照して、試料管用キャリア26に形成された貫通孔50の作用について説明する。
図19は、プローブガイド22と試料管導入回収装置の一部を示す断面図である。試料管用通路部材24とアダプタ28は、プローブガイド22内に配置される。アダプタ28に形成された孔36からアダプタ28の外部に噴出したガスは、プローブガイド22と試料管用通路部材24との間に形成された空間内において、試料管用キャリア26に向けて流れ、アダプタ28から試料管用キャリア26に向かうガス流が発生する。そのガス流によって、試料管用キャリア26を上方へ移動させる力が試料管用キャリア26に作用する。本実施形態では、試料管用キャリア26の周辺部に貫通孔50が形成されているため(
図6,9,12参照)、試料管用キャリア26に吹き付けられたガス流は、その貫通孔50を通過する。そのため、試料管用キャリア26に加えられる力が低下し、ガス圧による試料管用キャリア26の浮上を防止することができる。仮に試料管用キャリア26に貫通孔50が形成されていない場合、試料管58を回収する前に、試料管用キャリア26が上方(試料管用通路部材24から離れる方向)へ移動してしまい、試料管用通路部材24から外れてしまう可能性がある。本実施形態では、貫通孔50によってガスを逃がすことで、試料管用キャリア26を上方へ移動させる力を低下させることができるので、そのような問題を回避することができる。
【0090】
また、貫通孔50の側面にはネジ溝が形成されており、ネジを貫通孔50に締め付けることで、ネジによって貫通孔50を塞ぐことができる。貫通孔50を塞ぐことで、ガスの通り道を塞ぐことになるので、試料管用キャリア26に加えられるガス圧が増大する。塞がれる貫通孔50の数を調整することで、試料管用キャリア26に加えられるガス圧を調整することができる。例えば、試料管用キャリア26の浮上を補助するためや、不必要に試料管用キャリア26が浮上することを防止するため等に、塞がれる貫通孔50の数を調整することが想定される。
【0091】
(変形例1)
以下、変形例1について説明する。本実施形態に係る試料管用キャリア26は、例えば、溶液NMR用試料管を保持する保持部材としての溶液NMR用ロータと共通の外形形状(同一又は類似の形状)を有していてもよい。
図20には、その溶液NMR用ロータの一例が示されている。溶液NMR用試料管74は、例えば、一方の端部が開口し、他方の端部が閉じた円筒状の細長い形状を有する。溶液試料は、溶液NMR用試料管74内に収容される。溶液NMR用試料管74は、保持部材としての溶液NMR用ロータ76を貫通して溶液NMR用ロータ76によって保持されている。試料管用キャリア26が、この溶液NMR用ロータ76と同一又は類似の外形形状を有していてもよい。この場合、溶液NMR測定で一般的に使用される自動試料交換装置(オートサンプルチェンジャー)や搬送装置や保管装置等を用いて、NMR装置10への試料管用キャリア26の自動設置、試料管用キャリア26の自動交換、試料管の保管、等を行うことが可能となる。つまり、試料管用キャリア26の外形形状として、一般的に使用されている溶液NMR用ロータの外形形状と同一又は類似の形状を採用することで、溶液NMR測定にて一般的に使用されている自動試料交換装置や搬送装置や保管装置等を用いた試料交換や保管等を行うことが可能となる。
【0092】
図21には、自動試料交換装置が設置された状態のNMR装置10が示されている。自動試料交換装置78は、NMR装置10のボア14の上部に取り付けられる。自動試料交換装置78は、例えば溶液NMR測定にて一般的に使用される装置であり、溶液NMR用ロータ76によって保持された状態の溶液NMR用試料管74を複数個保持することができる。また、1又は複数の試料管用キャリア26も、自動試料交換装置78に保持される。試料管用キャリア26は、自動試料交換装置78によって自動的に試料管用通路部材24の上部に設置され、また、自動的に交換される。自動試料交換装置78を用いることで、作業者が手作業で試料管用キャリア26を設置、交換を行う必要がないので、その手間が省ける。
【0093】
図22には、保管装置と搬送装置とを含むNMRシステムが示されている。保管装置80は、複数の試料管用キャリア26や、複数の溶液NMR用試料管74(溶液NMR用ロータ76で保持された状態の試料管)を保管する装置である。保管装置80は、例えば温度調整機能を備えており、固体試料や溶液試料を設定された温度に維持することができる。搬送装置82は、保管装置80とNMR装置10のボア14の上部との間で、試料管を搬送する装置である。固体試料の測定時には、搬送装置82は、測定対象の試料管用キャリア26を保管装置80からボア14の上部に搬送し、その試料管用キャリア26を試料管用通路部材24の上部に設置する。この搬送の間、試料管用キャリア26が保温容器として機能するため、所望温度に調整された固体試料の温度変化を抑制することが可能となる。測定が終了すると、搬送装置82は、ボア14の上部から試料管用キャリア26を取り出し、その試料管用キャリア26を保管装置80に搬送する。溶液NMR測定が行われる場合も、搬送装置82は同様の動作を行う。このように、保管装置80及び搬送装置82を用いることで、固体試料の温度変化を抑制することが可能となる。搬送装置82を用いずに手作業で試料管用キャリア26を試料管用通路部材24の上部に設置する場合も、試料管用キャリア26が保温容器として機能するので、固体試料の温度変化を抑制することが可能となる。
【0094】
(変形例2)
以下、
図23を参照して変形例2に係るNMR装置について説明する。
図23には、変形例2に係るNMR装置10Aが示されている。変形例2に係るNMR装置10Aにおいては、プローブガイド22が用いられていない。この場合も、試料管の導入及び回収の動作は、上述した実施形態に係るNMR装置10の動作と同じである。
【0095】
(変形例3)
以下、
図24を参照して変形例3に係るNMR装置について説明する。
図24には、変形例3に係るNMR装置10Bが示されている。変形例3に係るNMR装置10Bにおいては、プローブガイド22が用いられておらず、アダプタ28がNMRプローブ装置16内に配置されている。この場合も、試料管の導入及び回収の動作は、上述した実施形態に係るNMR装置10の動作と同じである。