特許第6876473号(P6876473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876473
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   G03G15/20 535
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-44201(P2017-44201)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-146895(P2018-146895A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一寿
【審査官】 小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−090064(JP,A)
【文献】 実開平02−030961(JP,U)
【文献】 特開2003−295672(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0169819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源によって加熱される第1の回転体と、
前記第1の回転体の外周面に対向するベルト、前記ベルトが外周面に架け回される第2の回転体、前記ベルトが外周面に架け回されるベルト支持部材、および、前記ベルトを前記第1の回転体に向けて押圧する押圧領域を有して前記第2の回転体と前記ベルト支持部材との間に配置された押当て部材を備え、
前記第1の回転体から離れた位置にある回動支点を中心として回動することにより、前記第2の回転体によって前記ベルトを前記第1の回転体に押し付ける押付位置と、前記第2の回転体による押し付けが解除される解除位置とを切り替え可能であり、
前記第1の回転体の軸方向から見て、前記第1の回転体の中心と前記回動支点の中心とを結ぶ線が、前記押付位置および前記解除位置のいずれにおいても前記押当て部材の前記押圧領域を通る押圧ユニットと、
前記押圧ユニットを、前記第2の回転体が前記第1の回転体に近づく第1方向に付勢する付勢部材と、
前記第1の回転体に取り付けられる第1回転体保持部材と、前記押圧ユニットに回動自在に支持されて当接箇所で前記第1回転体保持部材の外周面に当接可能な離間アームとを有し、前記離間アームを、前記第1回転体保持部材を押圧する方向に回動させることによって、前記当接箇所を支点として、前記押圧ユニットを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる移動機構と、
を備えた定着装置。
【請求項2】
請求項に記載の定着装置であって、
前記第1回転体保持部材の外周面は、中心軸が前記第1の回転体の中心軸と一致する円筒面である定着装置。
【請求項3】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記押圧ユニットが前記解除位置にあることを検知する検知機構をさらに備える定着装置。
【請求項4】
請求項に記載の定着装置であって、
前記押圧ユニットが前記解除位置にあるときに、普通紙の給紙を停止する信号を出力する停止機構をさらに備える定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置は、加熱ローラと、押圧ユニットとを持つ。押圧ユニットは、加圧ベルトと、加圧ローラとを持つ。押圧ユニットは、シート等の記録媒体を加熱ローラに押し付けることによって、トナーをシートに熱定着する。前記定着装置は、記録媒体にシワが生じるのを防ぐため、押圧ユニットによる押圧を弱くすることがある。
前記定着装置は、押圧ユニットによる押圧を弱くすると、加圧ベルトが加熱ローラに従動せず、記録媒体の搬送がしにくくなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−119600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、押圧ユニットによる押圧を弱くした場合でも記録媒体の搬送に支障が生じにくい定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の定着装置は、第1の回転体と、押圧ユニットと、付勢部材と、移動機構と、を持つ。前記第1の回転体は、熱源によって加熱される。前記押圧ユニットは、ベルト、第2の回転体、ベルト支持部材、および押当て部材を備える。前記ベルトは、前記第1の回転体の外周面に対向する。前記第2の回転体は、前記ベルトが外周面に架け回される。前記ベルト支持部材は、前記ベルトが外周面に架け回される。前記押当て部材は、前記ベルトを前記第1の回転体に向けて押圧する押圧領域を有する。前記押当て部材は、前記第2の回転体と前記ベルト支持部材との間に配置される。前記押圧ユニットは、回動支点を中心として回動することにより、押付位置と、解除位置とを切り替え可能である。前記回動支点は、前記第1の回転体から離れた位置にある。前記押圧ユニットは、前記押付位置では、前記第2の回転体によって前記ベルトを前記第1の回転体に押し付ける。前記押圧ユニットは、前記解除位置では、前記第2の回転体による押し付けが解除される。線は、前記第1の回転体の軸方向から見て、前記第1の回転体の中心と前記回動支点の中心とを結ぶ。前記線は、前記押付位置および前記解除位置のいずれにおいても前記押当て部材の前記押圧領域を通る。前記付勢部材は、前記押圧ユニットを、前記第2の回転体が前記第1の回転体に近づく第1方向に付勢する。前記移動機構は、第1回転体保持部材と、離間アームとを持つ。前記第1回転体保持部材は、前記第1の回転体に取り付けられる。前記離間アームは、前記押圧ユニットに回動自在に支持されて当接箇所で前記第1回転体保持部材の外周面に当接可能である。前記移動機構は、前記離間アームを、前記第1回転体保持部材を押圧する方向に回動させることによって、前記当接箇所を支点として、前記押圧ユニットを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の定着装置を用いた画像形成装置を示す外観図。
図2】実施形態の定着装置を用いた画像形成装置の概略構成を示す図。
図3】実施形態の定着装置の概略構成を示す図。
図4】実施形態の定着装置の概略構成を示す図。
図5】実施形態の定着装置を示す斜視図。
図6】実施形態の定着装置を示す正面図。
図7】実施形態の定着装置を示す正面図。
図8】実施形態の定着装置の一部を示す斜視図。
図9】実施形態の定着装置の一部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の定着装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の定着装置を用いた画像形成装置200の全体構成例を示す外観図である。例えば、画像形成装置200は、複合機である。画像形成装置200は、ディスプレイ210、コントロールパネル220、プリンタ部230、シート収容部240及び画像読取部300を備える。
【0009】
画像形成装置200は、トナー等の現像剤を用いてシート等の記録媒体上に画像を形成する。例えば、シートは、紙やラベル用紙である。シートは、その表面に画像形成装置200が画像を形成できる物であれば特に限定されない。記録媒体は、単独のシートに限らず、封筒などのように、複数のシートを重ね合わせて少なくとも一部を互いに接着固定した構造を有していてもよい。複数のシートを重ね合わせて少なくとも一部を互いに接着固定した構造の記録媒体(封筒など)を、「積層記録媒体」という。
【0010】
ディスプレイ210は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ210は、画像形成装置200に関する種々の情報を表示する。
コントロールパネル220は、複数のボタンを有する。コントロールパネル220は、ユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル220は、ユーザによって行われた操作に応じた信号を、画像形成装置200の制御部に出力する。なお、ディスプレイ210とコントロールパネル220とは一体のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0011】
プリンタ部230は、画像読取部300によって生成された画像情報又は通信路を介して受信された画像情報に基づいて、シート上に画像を形成する。例えば、プリンタ部230は、以下のような処理によって画像を形成する。プリンタ部230の画像形成部は、画像情報に基づいて感光体ドラム上に静電潜像を形成する。プリンタ部230の画像形成部は、静電潜像に現像剤を付着させることによって可視像を形成する。現像剤の具体例として、トナーがある。プリンタ部230の転写部は、可視像をシート上に転写する。プリンタ部230の定着部は、シートに対して加熱及び加圧を行うことによって、可視像をシート上に定着させる。なお、画像が形成されるシートは、シート収容部240に収容されているシートであってもよいし、手指しされたシートであってもよい。
シート収容部240は、プリンタ部230における画像形成に用いられるシートを収容する。
【0012】
画像読取部300は、読み取り対象の画像情報を光の明暗として読み取る。画像読取部300は、読み取られた画像情報を記録する。記録された画像情報は、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。記録された画像情報は、プリンタ部230によってシート上に画像形成されてもよい。
【0013】
図2は、実施形態の画像形成装置200の概略構成の一例を示す図である。図2に示す画像形成装置200は、電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置200は、中間転写体10、ブレード11(トナー除去部)、画像形成部12〜15、二次転写ローラ16、制御部17、給紙部18及び定着装置20を持つ。
中間転写体10は、無端状のベルトであり、図2中に示す矢印の方向に回転している。
ブレード11は、中間転写体10上に付着している余分なトナーを除去する。
画像形成部12〜15は、各色(図2に示す例では4色)のトナーを用いて中間転写体10に画像を形成する。
二次転写ローラ16は、中間転写体10上に形成されたトナーによる画像をシートに転写する。
制御部17は、画像形成部12〜15及び定着装置20を制御する。
給紙部18は、シートを給紙する。
定着装置20は、シート上に転写されたトナーによる画像を加熱及び加圧して、シートに定着させる。
【0014】
画像形成装置200は、形成する画像データを、画像処理によって各色の画像データに変換する。例えば、画像形成装置200は、画像データを、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像データに変換する。
画像形成装置200では、第一転写工程及び第二転写工程を実行する。第一転写工程において、各画像形成部12〜15は、中間転写体10上に各色のトナーによる画像を重ね合わせるように多重転写する。第二転写工程において、二次転写ローラ16は、中間転写体10上のトナーによる画像をシート上に一括転写する。シートは、給紙部18から送り出され、用紙搬送路を搬送される。シートは、二次転写ローラ16及び定着装置20を通り、排紙トレイに排紙される。
【0015】
図3および図4は、図2に示す定着装置20の概略構成を示す図である。
図3に示すように、定着装置20は、ヒートローラ21(第1の回転体)と、押圧ユニット22と、付勢部材23とを備える。
ヒートローラ21は、アルミニウム、鉄などの金属からなる筒体である。ヒートローラ21の外周面は、離型層(被覆層)によって被覆されている。例えば、離型層は、フッ素樹脂、シリコンゴム等の弾性材料などからなる。ヒートローラ21は、ランプ24(熱源)を内蔵する。ヒートローラ21は、ランプ24によって加熱される。例えば、ランプ24は、ハロゲンランプ、IHヒータ等である。
【0016】
押圧ユニット22は、加圧ベルト25(ベルト)と、加圧ローラ26(第2の回転体)と、加圧パッド27(押当て部材)と、加圧ベルトヒートローラ28(ベルト支持部材)と、を備える。
加圧ベルト25は、無端状のベルトである。加圧ベルト25は、加圧ローラ26の外周面と、加圧ベルトヒートローラ28の外周面とに架け回されている。加圧ベルト25は、ヒートローラ21に従動して回転する。加圧ベルト25は、ヒートローラ21の外周面21aに対向する。加圧ベルト25は、加圧ローラ26および加圧パッド27によってヒートローラ21に加圧接触される。この加圧接触によって、加圧ベルト25とヒートローラ21との間に定着ニップ部が形成される。
【0017】
加圧ローラ26は、ステンレス鋼などの金属からなる筒体である。例えば、加圧ローラ26の外周面は、被覆層が形成されている。被覆層は、フッ素樹脂、シリコンゴム等の弾性材料などからなる。加圧ローラ26は、加圧ベルト25をヒートローラ21に向けて押圧する。加圧ローラ26の中心軸C2は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行である。加圧ローラ26は、加圧ベルト25をヒートローラ21に加圧接触させる。加圧ローラ26によって、定着ニップ部の出口が形成される。
【0018】
加圧パッド27は、加圧ローラ26に比べてシートの搬送方向の上流であって、加圧ベルトヒートローラ28に比べてシートの搬送方向の下流にある。そのため、加圧パッド27は、シートの搬送方向に関して、加圧ローラ26と加圧ベルトヒートローラ28の間に配置されている。加圧パッド27は、台座31と、パッド体32と、加圧機構29とを備える。パッド体32は、シリコンゴムなどの軟質材料からなる。パッド体32は、台座31の一方の面に設けられる。加圧パッド27は、パッド体32によって加圧ベルト25を押圧する。加圧パッド27と加圧ベルト25との間には、摩擦低減のための滑りシートが備えられていてもよい。加圧機構29は、加圧パッド27を、ヒートローラ21に向けて付勢する。例えば、加圧機構29は、コイルスプリングである。
【0019】
加圧パッド27は押圧領域30を有する。押圧領域30は、パッド体32の一部領域である。例えば、押圧領域30は、ヒートローラ21の外周面21aに沿う円筒面である。押圧領域30は、加圧ベルト25を介してヒートローラ21の外周面21aに対面する。押圧領域30は、加圧ベルト25を介してヒートローラ21の外周面21aに当接する。押圧領域30は、加圧ベルト25をヒートローラ21の外周面21aに向けて押圧する。
【0020】
加圧ベルトヒートローラ28は、アルミニウム、鉄などの金属からなる筒体である。加圧ベルトヒートローラ28の外周面は、離型層(被覆層)によって被覆されている。離型層は、フッ素樹脂、シリコンゴム等の弾性材料などからなる。加圧ベルトヒートローラ28は、ランプ33(熱源)を内蔵する。加圧ベルトヒートローラ28は、ランプ33によって加熱される。例えば、ランプ33は、ハロゲンランプ、IHヒータ等である。加圧ベルトヒートローラ28は、加圧ベルト25を加熱する。加圧ベルトヒートローラ28の中心軸C3は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行である。加圧ベルトヒートローラ28は、加圧パッド27に比べてシートの搬送方向の上流に配置される。
加圧ベルトヒートローラ28は、加圧ローラ26に対して接近および離間する方向に移動可能であってもよい。これにより、加圧ベルト25の張力を容易に調整できる。
【0021】
押圧ユニット22は、回動支点35を中心として回動可能である。回動支点35は、ヒートローラ21から離れた位置にある。回動支点35の中心軸C4は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行である。
第1方向D1は、回動支点35の軸周り方向の一方向である。第1方向D1は、加圧ローラ26がヒートローラ21に近づく方向である。第2方向D2は、回動支点35の軸周り方向のうち、第1方向D1とは反対の方向である。第2方向D2は、加圧ローラ26がヒートローラ21から離れる方向である。
【0022】
押圧ユニット22は、回動支点35を中心とした回動によって、図3に示す押付位置P1と、図4に示す解除位置P2とを切り替え可能である。押付位置P1は、加圧ローラ26によって加圧ベルト25をヒートローラ21に押し付ける位置である。解除位置P2は、加圧ローラ26による押し付けが解除される位置である。解除位置P2において、加圧ローラ26は、加圧ベルト25を介してヒートローラ21に接していてもよいし、ヒートローラ21から離れていてもよい。
【0023】
付勢部材23は、押圧ユニット22を第1方向D1に付勢する。例えば、付勢部材23は、コイルスプリングである。付勢部材23は、加圧ローラ26を第1方向D1に付勢する。
【0024】
仮想線L1は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行な方向から見て、ヒートローラ21の中心軸C1と、回動支点35の中心軸C4とを結ぶ線である。
仮想線L1は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行な方向から見て、押圧ユニット22が図3に示す押付位置P1にあるとき、加圧パッド27の押圧領域30を通る。仮想線L1は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行な方向から見て、押圧ユニット22が図4に示す解除位置P2にあるときにおいても、加圧パッド27の押圧領域30を通る。
【0025】
仮想線L1は、押付位置P1および解除位置P2において押圧領域30の一部を通っていればよく、押圧領域30を通る位置は特に限定されない。例えば、仮想線L1が押圧領域30を通る位置は、シート搬送方向の中央であってもよいし、シート搬送方向の端部であってもよい。
ヒートローラ21の中心軸C1と平行な方向から見て、仮想線L1は押圧領域30に交差している。押圧領域30は仮想線L1をまたぐ位置にあるともいえる。ヒートローラ21の中心軸C1と平行な方向から見て、中心軸C4は、中心軸C1から押圧領域30に向けた投影範囲内にある。
【0026】
図3に示すように、定着装置20は、未定着のトナーによる画像(未定着現像剤像)が転写されているシートを図中の矢印の方向に通す。シート及びシート上のトナーによる画像は、ヒートローラ21及び加圧ベルト25の間のニップを通って、加熱及び加圧される。ニップを通るシートは、ヒートローラ21及び加圧ベルト25から加熱される。トナーによる画像は、シート上に定着する。
【0027】
定着装置20では、押圧ユニット22が押付位置P1(図3参照)、解除位置P2(図4参照)のいずれにあっても、ヒートローラ21の中心と回動支点35の中心とを結ぶ仮想線L1が、加圧パッド27の押圧領域30を通る。そのため、押付位置P1と解除位置P2との間で加圧パッド27の変位(ヒートローラ21と加圧パッド27との距離の変化)が小さくなる。よって、押圧ユニット22が解除位置P2にあるときも、押圧ユニット22が押付位置P1にあるときに比べて、ヒートローラ21に対する加圧パッド27の押圧力は大きく低下しない。
【0028】
普通紙(単独のシート)とは異なり、積層記録媒体(封筒など)を対象とする場合には、押圧ユニット22が押付位置P1(図3参照)にあると、曲げが加えられることにより積層記録媒体にシワが発生しやすい。そのため、押圧ユニット22を解除位置P2(図4参照)とする。これにより、加圧ローラ26による押圧力が低くなって積層記録媒体の曲げが小さくなるため、シワの発生が抑制される。この場合、加圧ローラ26によらず主に加圧パッド27で記録媒体を押圧する。そこで、積層記録媒体の搬送速度を低くする。これにより、トナーが積層記録媒体に定着する。
【0029】
定着装置20によれば、押圧ユニット22が解除位置P2にあるときも加圧パッド27の押圧力が低下しないため、加圧ベルト25はヒートローラ21に従動して回転する。よって、シート等の記録媒体(積層記録媒体)の搬送に支障は生じない。
【0030】
次に、図5図9を参照して、定着装置20の具体例である定着装置120について説明する。
図5は、実施形態の定着装置を示す斜視図である。図6は、実施形態の定着装置を示す正面図である。図7は、実施形態の定着装置を示す正面図である。図8は、実施形態の定着装置の一部を示す斜視図である。図9は、実施形態の定着装置の一部を示す斜視図である。
図6に示すように、ヒートローラ121の中心軸C1と、回動支点135の中心軸C4とを結ぶ線をL1とする。仮想線L1に沿って第1回動支点135からヒートローラ121に向かう方向を前方Fといい、その反対方向を後方Bという。
【0031】
図5に示すように、定着装置120は、ヒートローラ121(第1の回転体)と、押圧ユニット122と、付勢部材123と、移動機構141(図6参照)と、検知機構142(図8参照)と、停止機構143(図8参照)とを備える。
【0032】
ヒートローラ121は、図3に示すヒートローラ21と同様の構成である。
押圧ユニット122は、加圧ベルト125と、加圧ローラ126(第2の回転体)と、加圧パッド127(押当て部材)(図6参照)と、加圧ベルトヒートローラ128(ベルト支持部材)と、一対の支持フレーム151と、連結具156(図6参照)と、を備える。
加圧ベルト125は、図3に示す加圧ベルト25と同様の構成である。加圧ベルト125は、ヒートローラ121の外周面121aに対向する。
加圧ローラ126は、図3に示す加圧ローラ26と同様の構成である。
加圧パッド127は、図3に示す加圧パッド27と同様の構成である。130は加圧パッド127の押圧領域である。押圧領域130は、加圧ベルト125を介してヒートローラ121に対面する。押圧領域130は、加圧ベルト125をヒートローラ121に向けて押圧する。
加圧ベルトヒートローラ128は、図3に示す加圧ベルトヒートローラ28と同様の構成である。
【0033】
支持フレーム151は、本体部152と、加圧アーム153とを備える。
本体部152は、上部フレーム157と、下部フレーム158とを備える。上部フレーム157と下部フレーム158とは、互いに連結されている。例えば、上部フレーム157は、加圧ローラ126および加圧パッド127を支持する。例えば、下部フレーム158は、加圧ベルトヒートローラ128を支持する。これにより、一対の支持フレーム151は、加圧ローラ126の両端部および加圧ベルトヒートローラ128の両端部を支持する。
【0034】
本体部152のうち、加圧ローラ126および加圧ベルトヒートローラ128を支持する部分を主部152Aという。
加圧アーム153は、主部152Aから、概略、前方Fに向けて延出している。加圧アーム153の先端部154には、付勢部材123の一端部123aが連結されている。
連結具156は、一対の支持フレーム151の間に架け渡されている。連結具156は、一対の支持フレーム151を互いに連結している。
【0035】
図6に示すように、押圧ユニット122は、支持フレーム151の本体部152に設けられた第1回動支点135を中心として回動可能である。第1回動支点135は、ヒートローラ121から離れた位置にある。
第1方向D1は、第1回動支点135の軸周り方向のうち、加圧ローラ126がヒートローラ121に近づく方向である。第2方向D2は、第1回動支点135の軸周り方向のうち、第2方向D2は、加圧ローラ126がヒートローラ121から離れる方向である。
【0036】
押圧ユニット122は、第1回動支点135を中心とした回動によって、図6に示す押付位置P1と、図7に示す解除位置P2とを切り替え可能である。
図6に示す押付位置P1は、加圧ローラ126によって加圧ベルト125をヒートローラ121に押し付ける位置である。
図7に示す解除位置P2は、加圧ローラ126による押し付けが解除される位置である。
【0037】
図6および図7に示すL1は、ヒートローラ121の中心軸C1と平行な方向から見て、ヒートローラ121の中心軸C1と、第1回動支点135の中心軸C4とを結ぶ仮想線である。
仮想線L1は、ヒートローラ121の中心軸C1と平行な方向から見て、押圧ユニット122が図6に示す押付位置P1にあるとき、加圧パッド27の押圧領域130を通る。仮想線L1は、ヒートローラ21の中心軸C1と平行な方向から見て、押圧ユニット122が図7に示す解除位置P2にあるときにおいても、加圧パッド127の押圧領域130を通る。
【0038】
付勢部材123は、押圧ユニット122を第1方向D1に付勢する。例えば、付勢部材123は、コイルスプリングである。付勢部材123の一端部123aは加圧アーム153の先端部154に連結され、他端部123bは図示しない固定点に固定される。
移動機構141は、ローラ保持部材145(第1回転体保持部材)と、離間アーム146とを備える。
【0039】
ローラ保持部材145は、環状のボールベアリングである。環状のボールベアリングは、内輪(図示略)と外輪148とを有する。ローラ保持部材145は、ヒートローラ121の端部の外周に設けられる。ローラ保持部材145は、ヒートローラ121とともに回転可能である。
外輪148の外周面148aは、中心軸が、ヒートローラ121の中心軸C1と一致する円周面である。外輪148の外周面148aは、研磨加工が施されることによって平滑に形成されている。外周面148aは熱処理が施されており、硬度が高いため、摩耗しにくい。
【0040】
離間アーム146は、長板状に形成されている。離間アーム146の厚さ方向は、ヒートローラ121の中心軸C1に平行である。
離間アーム146の側縁の一部には、側方(離間アーム146の幅方向)に突出する当接凸部149(当接箇所)(図6参照)が形成されている。当接凸部149は、ローラ保持部材145の外周面148aに当接可能である。
離間アーム146は、支持フレーム151に設けられた第2回動支点155に支持されている。第2回動支点155は、離間アーム146の一端部146aに近い位置にある。第2回動支点155の中心軸C5は、ヒートローラ121の中心軸C1と平行である。離間アーム146は、第2回動支点155の中心軸C5周りに、支持フレーム151に対して回動可能である。離間アーム146は、第2回動支点155から当接凸部149までの距離に比べ、第2回動支点155から他端部146bまでの距離の方が十分に長い。
【0041】
図8および図9に示すように、検知機構142は、押圧ユニット122が解除位置P2にあることを検知する。
検知機構142は、検知センサ160と、遮光板163と、制御部164とを備える。検知センサ160は、光源161と、受光部162とを備える光学式センサである。例えば、光源161は、レーザ光源である。例えば、受光部162は、フォトダイオードである。光源161および受光部162は、図示しない固定フレームに取り付けられている。光源161および受光部162は、ヒートローラ121の中心軸C1に沿う方向に並んで、かつ互いに間隔をおいて設けられている。
【0042】
受光部162は、光源161からの光を受光しないときに検知信号を出力する。なお、受光部162は、光源161からの光を受光するときに検知信号を出力してもよい。
遮光板163は、連結板165を介して本体部152(上部フレーム157)または加圧アーム153に取り付けられている。
遮光板163は、押圧ユニット122が図8に示す押付位置P1にあるとき、光源161から受光部162に向かう光を遮らない位置にある。遮光板163は、押圧ユニット122が図9に示す解除位置P2にあるとき、光源161から受光部162に向かう光を遮る位置にある。
【0043】
押圧ユニット122が押付位置P1から解除位置P2に移行すると、光源161から受光部162に向かう光が遮光板163によって遮られるため、受光部162は検知信号を出力する。
【0044】
検知機構142では、受光部162からの検知信号に基づいて、制御部164が制御信号を出力し、ディスプレイ210(図1参照)に、押圧ユニット122が解除位置P2にあることを表示することができる。これによって、利用者は、押圧ユニット122が解除位置P2にあることを認識できる。
【0045】
停止機構143は、受光部162からの検知信号が入力される制御部166を備える。制御部166は、検知信号に基づいて制御信号を出力し、画像形成装置200の一部の動作を停止させることができる。例えば、制御部166からの制御信号は、普通紙(単独のシート)の給紙を停止する信号である。前記制御信号によって、図2に示す給紙部18において、普通紙(単独のシート)の給紙を停止させることができる。一方、積層記録媒体(封筒など)の供給のための給紙部は動作可能である。
この構成によれば、押圧ユニット122が解除位置P2にあるときには、積層記録媒体(封筒など)は供給されるが、普通紙(単独のシート)は供給されない。そのため、解除位置P2にある押圧ユニット122に普通紙(単独のシート)が供給されることによってそのシートにおけるトナー定着が不十分となるのを回避できる。
【0046】
停止機構143は、押圧ユニット122が押付位置P1にあるときに、積層記録媒体(封筒など)が供給されるのを停止する制御信号を出力してもよい。この場合、図2に示す給紙部18によって普通紙(単独のシート)は供給可能であるが、積層記録媒体(封筒など)の供給のための給紙部は停止する。これにより、押圧ユニット122が押付位置P1にあるときには、普通紙(単独のシート)は供給されるが、積層記録媒体(封筒など)は供給されない。
なお、解除検知機構の検知センサの光源としては光電管を用いてもよい。また、光学式センサに代えて、機械式スイッチを用いてもよい。
【0047】
次に、定着装置120の動作について説明する。
図6で示す状態では、押圧ユニット122は押付位置P1にあり、離間アーム146の当接凸部149(当接箇所)はローラ保持部材145の外周面148aに当接している。
図7に示すように、離間アーム146の他端部146b(操作部)を、ローラ保持部材145を押圧する方向(図7における右回り方向)に回動させる。離間アーム146は、当接凸部149を支点として、第2回動支点155にローラ保持部材145から離れる方向の力を作用させる。そのため、押圧ユニット122は、付勢部材123の付勢力に抗して第2方向D2に回動し、解除位置P2に移行する。
【0048】
離間アーム146は、第2回動支点155から当接凸部149までの距離に比べ、第2回動支点155から他端部146bまでの距離が長いため、てこの原理を利用して、わずかな押圧力で、押圧ユニット122に対して大きな力を作用させることができる。よって、容易な操作で、押圧ユニット122を動作させることができる。
【0049】
離間アーム146の当接凸部149はローラ保持部材145の外周面148aに対して摺動する。外周面148aは、上述のように、平滑であり、硬度が高く摩耗しにくいため、当接凸部149と外周面148aとの間の摩擦は小さい。そのため、外周面148aを離間アーム146が摺動する際の抵抗を小さくできる。よって、離間アーム146を回動させるのに要する力を小さくできる。また、外周面148aは中心軸がヒートローラ121の中心軸C1と一致する円筒面であるため、当接凸部149と外周面148aとの間の摩擦は小さくなる。よって、容易な操作で、押圧ユニット122を押付位置P1から解除位置P2に移行させることができる。
【0050】
離間アーム146を、ローラ保持部材145から離れる方向に回動させると、押圧ユニット122は、付勢部材123の付勢力により、図6で示す押付位置P1に戻る。
定着装置120では、押圧ユニット122が押付位置P1(図6参照)、解除位置P2(図7参照)のいずれにあっても、ヒートローラ121の中心と第1回動支点135の中心とを結ぶ仮想線L1が、加圧パッド127の押圧領域130を通る。そのため、押付位置P1と解除位置P2との間で加圧パッド127の変位(ヒートローラ21と加圧パッド27との距離の変化)を小さくすることができる。よって、押圧ユニット122が解除位置P2にあるときも、ヒートローラ121に対する加圧パッド127の押圧力は大きく低下しない。
【0051】
積層記録媒体(封筒など)を対象とする場合には、押圧ユニット122が押付位置P1(図6参照)にあると、曲げが加えられることにより記録媒体にシワが発生しやすい。そのため、押圧ユニット122を解除位置P2(図7参照)とする。その場合、加圧ローラ126による押圧力が低くなって記録媒体の曲げが小さくなるため、シワの発生が抑制される。
【0052】
定着装置120によれば、押圧ユニット122が解除位置P2にあるときも加圧パッド127の押圧力が低下しないため、加圧ベルト125はヒートローラ121に従動して回転する。よって、シート等の記録媒体(積層記録媒体)の搬送に支障は生じない。
【0053】
定着装置120は、移動機構141を有するため、上述のように、容易な操作で、押圧ユニット122を押付位置P1から解除位置P2に移行させることができる。
ローラ保持部材145はボールベアリングであるため、ローラ保持部材145の外周面148aを離間アーム146が摺動する際の抵抗を小さくできる。
ローラ保持部材145の外周面148aは、中心軸がヒートローラ121の中心軸C1と一致する円筒面であるため、離間アーム146が摺動する際の抵抗を小さくできる。
【0054】
定着装置120は、検知機構142を備えるため、押圧ユニット122が解除位置P2にあることを利用者が認識できる。そのため、解除位置P2にある押圧ユニット122に誤って普通紙(単独のシート)が供給されるのを防ぐことができる。よって、トナー定着が不十分なシートによる装置内の汚れ付着などの問題が生じにくい。
【0055】
定着装置120は、停止機構143を備えるため、押圧ユニット122が解除位置P2にあるときに、画像形成装置200の一部の動作を停止させることができる。例えば、給紙部18(図2参照)において、普通紙(単独のシート)の給紙を停止させることができる。そのため、前述のトナー定着が不十分となる問題を防ぐことができる。
検知センサ160は光学式であるため、他の方式のセンサに比べて誤作動が起こりにくい。よって、押圧ユニット122が解除位置P2となったことを精度よく検知できる。
【0056】
付勢部材123は、コイルスプリングであると、その弾性によって加圧アーム153に十分な力を作用させることができる。そのため、押圧ユニット122の動作性能を高めることができる。
【0057】
図6および図7で示すように、支持フレーム151の下部フレーム158は、第3回動支点170において上部フレーム157に対して回動可能であってもよい。第3回動支点170の中心軸C6は、ヒートローラ121の中心軸C1と平行である。
【0058】
この構成では、第3回動支点170を中心とする下部フレーム158の回動によって、加圧ベルトヒートローラ128は、加圧ローラ126に対して接近および離間する方向に移動可能である。これにより、加圧ベルト125の張力を容易に調整できる。
【0059】
実施形態の定着装置20において、離間アーム146は、次のように構成してもよい。図7において、第2回動支点155の中心軸C5とヒートローラ121の中心軸C1とを結ぶ仮想線を想定する。離間アーム146は、図7の右回りに大きく回動させたときに、当接凸部149が前記仮想線より前方に位置するように形成してもよい。これにより、付勢部材123の付勢力は、離間アーム146の回動姿勢を維持するように作用するため、利用者が、離間アーム146に対する押圧を解除しても、離間アーム146はその姿勢を維持することになる。よって、利用者が離間アーム146から手を放しても、押圧ユニット122の解除位置P2を維持できる。
実施形態の定着装置は、加圧ローラ、加圧パッド、加圧ベルトヒートローラに加えて、テンションローラを設けてもよい。
【0060】
定着装置120では、離間アーム146は手動で操作されるが、実施形態の定着装置は、離間アームを回動操作するための機構を備えていてもよい。その場合には、コントロールパネル220において、取り扱う記録媒体が普通紙(単独のシート)であるか、積層記録媒体であるかを入力することができる構成が可能である。この構成の定着装置では、入力内容に基づいて、前記機構により離間アームが操作され、押圧ユニットが押付位置、解除位置のいずれかとされる。
実施形態では、ベルト支持部材として加圧ベルトヒートローラを採用したが、ベルト支持部材はローラに限らず、非回転体であってもよい。
【0061】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、押圧ユニット22が押付位置P1(図3参照)、解除位置P2(図4参照)のいずれにあっても、ヒートローラ21の中心と回動支点35の中心とを結ぶ仮想線L1が、加圧パッド27の押圧領域30を通る。そのため、押付位置P1と解除位置P2との間で加圧パッド27の変位が小さくなる。よって、押圧ユニット22が解除位置P2にあるときも、ヒートローラ21に対する加圧パッド27の押圧力は大きく低下しない。そのため、加圧ベルト25はヒートローラ21に従動して回転する。よって、シート等の記録媒体(積層記録媒体)の搬送に支障は生じない。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
12〜15…画像形成部、20,120…定着装置、21,121…ヒートローラ(第1の回転体)、21a,121a…ヒートローラの外周面、22,122…押圧ユニット、23,123…付勢部材、24…ランプ(熱源)、25,125…加圧ベルト(ベルト)、26,126…加圧ローラ(第2の回転体)、27,127…加圧パッド(押当て部材)、28,128…加圧ベルトヒートローラ(ベルト支持部材)、30,130…押圧領域、35,135…回動支点、141…移動機構、142…検知機構、143…停止機構、145…ローラ保持部材(第1回転体保持部材)、146…離間アーム、149…当接凸部(当接箇所)、200…画像形成装置、D1…第1方向、D2…第2方向、C1…中心軸、P1…押付位置、P2…解除位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9