特許第6876485号(P6876485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876485
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】差動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/40 20120101AFI20210517BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   F16H48/40
   F16H48/08
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-67252(P2017-67252)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168962(P2018-168962A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 裕之
【審査官】 鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−009108(JP,A)
【文献】 実開昭59−063251(JP,U)
【文献】 特開2012−112516(JP,A)
【文献】 特開2016−109297(JP,A)
【文献】 特開2008−261491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/40
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の差動ギヤ(30)と、
前記複数の差動ギヤ(30)の各々と噛合する一対の出力ギヤ(31,32)と、
前記複数の差動ギヤ(30)の各々を支持する複数の差動ギヤ支持体(33)と、
前記複数の差動ギヤ支持体(33)の各々の両端部を支持する複数の両端支持部(8)を有する支持部材(7)と、
一方の前記出力ギヤ(31)の背面(31f)を覆うと共に、前記支持部材(7)と結合可能な第1カバー部材(21)と、
他方の前記出力ギヤ(32)の背面(32f)を覆うと共に、前記支持部材(7)と結合可能な第2カバー部材(22)と、を備え、
各々の前記両端支持部(8)の、前記出力ギヤ(31,32)における径方向外方側で前記差動ギヤ支持体(33)の一方の端部を支持する外方側支持部(81)には、各々の前記差動ギヤ(30)の背面(30f)に臨む凹部(81o)が形成され、
各々の前記外方側支持部(81)は、前記出力ギヤ(31,32)における軸方向側が前記第1,第2カバー部材(21,22)で覆われている、差動装置。
【請求項2】
各々の前記外方側支持部(81)は、前記出力ギヤ(31,32)の周方向に互いに間隔をおいて並ぶ第1,第2壁部(81a,81b)と、前記第1,第2壁部(81a,81b)の間に挟まれ且つ該第1,第2壁部(81a,81b)よりも前記出力ギヤ(31,32)における径方向外方側に位置する第3壁部(81c)と、を有し、
前記第1壁部(81a)、前記第2壁部(81b)及び前記第3壁部(81c)により前記凹部(81o)が形成される、請求項1に記載の差動装置。
【請求項3】
前記凹部(81o)は、該凹部(81o)の底面(81ob)の少なくとも一部に、前記差動ギヤ支持体(33)の中心軸線(X2)に向かって前記出力ギヤ(31,32)における径方向外方側に傾斜する斜面(81obcc)を有している、請求項2に記載の差動装置。
【請求項4】
各々の前記外方側支持部(81)は、前記第1,第2壁部(81a,81b)の間を接続して、前記凹部(81o)の、前記出力ギヤ(31,32)における軸方向で少なくとも一方側の内側面を形成する第4壁部(81d)を有する、請求項2または3に記載の差動装置。
【請求項5】
各々の前記外方側支持部(81)と前記第1,第2カバー部材(21,22)との当接面の何れか一方の面には突出部(81t1,81t2)が設けられると共に、各々の前記外方側支持部(81)と前記第1,第2カバー部材(21,22)との当接面の何れか他方の面には前記突出部(81t1,81t2)に係合する溝部(21t,22t)が設けられる、請求項1〜4の何れか1項に記載の差動装置。
【請求項6】
前記支持部材(7)は、中心部に空洞(O)を有しており、
各々の前記両端支持部(8)の、前記出力ギヤ(31,32)における径方向内方側で前記差動ギヤ支持体(33)の他方の端部を支持する内方側支持部(82)は、前記空洞(O)に一端が開口し且つ他端が前記差動ギヤ(30)側に開口する貫通孔(82h)を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などの車両に好適な差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差動装置として、複数のピニオンギヤ(差動ギヤ)を各々支持する短いピニオン軸(差動ギヤ支持体)を支持部材で両持ち支持する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また差動装置において、デフケース(入力部材)の内面に、デフケースの回転軸線周りの円弧状の凹部よりなる潤滑油貯溜部を設け、ピニオンギヤ(差動ギヤ)の外周部や側部の被支持面に潤滑油を供給する技術が知られている(例えば特許文献2を参照)。
【0004】
また差動装置において、デフケースの、サイドギヤ(出力ギヤ)及びピニオンギヤを装入するための開口の縁に、潤滑油を保持するための内向きのリップを設け、デフケース内に保持される潤滑油量、延いてはサイドギヤ及びピニオンギヤの相互の噛合部への潤滑油量を増やすようにした技術が知られている(例えば特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国実用新案CNY202441834号公報
【特許文献2】特許第4784444号公報
【特許文献3】特開2008−128265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが特許文献1の差動装置では、ピニオンギヤの背面とデフケースとの回転摺動面に対する潤滑に関して何も開示されていない。
【0007】
また特許文献2の差動装置では、ピニオンギヤの外周部や側部の被支持面に対する潤滑油量を増やすことができても、ピニオンギヤの背面とデフケースとの回転摺動面に対する潤滑に関しては対策されておらず、ピニオンギヤの背面とデフケースとの回転摺動面に対しては潤滑油を十分に供給できるとは限らない。
【0008】
また特許文献3の差動装置では、サイドギヤ及びピニオンギヤの相互の噛合部への潤滑油量を増やすことができても、ピニオンギヤの背面とデフケースとの回転摺動面に対する潤滑に関しては対策されておらず、ピニオンギヤの背面とデフケースとの回転摺動面に対しては潤滑油を十分に供給できるとは限らない。
【0009】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、ピニオンギヤ(差動ギヤ)の背面と、支持部材又はデフケース(入力部材)との回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る1つの差動装置は、複数の差動ギヤと、前記複数の差動ギヤの各々と噛合する一対の出力ギヤと、前記複数の差動ギヤの各々を支持する複数の差動ギヤ支持体と、前記複数の差動ギヤ支持体の各々の両端部を支持する複数の両端支持部を有する支持部材と、一方の前記出力ギヤの背面を覆うと共に、前記支持部材と結合可能な第1カバー部材と、他方の前記出力ギヤの背面を覆うと共に、前記支持部材と結合可能な第2カバー部材と、を備え、各々の前記両端支持部の、前記出力ギヤにおける径方向外方側で前記差動ギヤ支持体の一方の端部を支持する外方側支持部には、各々の前記差動ギヤの背面に臨む凹部が形成され、各々の前記外方側支持部は、前記出力ギヤにおける軸方向側が前記第1,第2カバー部材で覆われている。
【0011】
好適には、各々の前記外方側支持部は、前記出力ギヤの周方向に互いに間隔をおいて並ぶ第1,第2壁部と、前記第1,第2壁部の間に挟まれ且つ該第1,第2壁部よりも前記出力ギヤにおける径方向外方側に位置する第3壁部と、を有し、前記第1壁部、前記第2壁部及び前記第3壁部により前記凹部が形成される。
【0012】
また好適には、前記凹部は、該凹部の底面の少なくとも一部に、前記差動ギヤ支持体の中心軸線に向かって前記出力ギヤにおける径方向外方側に傾斜する斜面を有している。
【0013】
また好適には、各々の前記外方側支持部は、前記第1,第2壁部の間を接続して、前記凹部の、前記出力ギヤにおける軸方向で少なくとも一方側の内側面を形成する第4壁部を有する。
【0014】
また好適には、各々の前記外方側支持部と前記第1,第2カバー部材との当接面の何れか一方の面には突出部が設けられると共に、各々の前記外方側支持部と前記第1,第2カバー部材との当接面の何れか他方の面には前記突出部に係合する溝部が設けられる。
【0015】
また好適には、前記支持部材は、中心部に空洞を有しており、各々の前記両端支持部の、前記出力ギヤにおける径方向内方側で前記差動ギヤ支持体の他方の端部を支持する内方側支持部は、前記空洞に一端が開口し且つ他端が前記差動ギヤ側に開口する貫通孔を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、差動ギヤの背面と、支持部材又は入力部材との回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る差動装置の全体構成を模式的に示す断面図(図2の1−1線断面図)
図2図1の2−2線断面図
図3図2の3矢視部拡大図
図4】本発明の第1実施形態に係る差動装置の支持部材を示す斜視図
図5】本発明の第2実施形態に係る差動装置の全体構成を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0021】
先ず、図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る差動装置11について説明する。自動車は、自動車に搭載される動力源としてのエンジン(図示しない)の横に配置されて、トランスミッション(図示しない)や差動装置11を収容するミッションケース12を備える。ミッションケース12には、車軸にそれぞれ連なり且つ第1軸線X1回りに回転可能な左右の第1,第2出力軸13a,13bの内端部が挿入される。第1,第2出力軸13a,13bの内端部は、差動装置11の一対の出力部(後述する第1,第2サイドギヤ31,32)に結合される。
【0022】
ミッションケース12と第1,第2出力軸13a,13bとの間には、例えば環状のシール部材14a,14bが装着される。シール部材14a,14bは、ミッションケース12に対し相対回転する第1,第2出力軸13a,13bとの間を液密にシールする。本実施形態では、ミッションケース12の底部に、ミッションケース12の内部空間に臨んで所定量の潤滑油を貯留するオイルパン(図示しない)が形成される。オイルパンに貯留された潤滑油は、ミッションケース12の内部空間で、後述するデフケース16の回転や、デフケース16に動力源からの動力を伝達する減速歯車機構15の可動要素の回転等によって周辺に掻き上げられて飛散する。そして、ミッションケース12内を飛散する潤滑油で、後述するデフケース16の内外に存在する機械運動部分は潤滑される。
【0023】
差動装置11は、例えば、第1,第2軸受61,62を介して第1軸線X1回りで回転自在にミッションケース12に支持されるデフケース(入力部材)16と、デフケース16内に収容される差動ギヤ機構17と、を備える。
【0024】
デフケース16は、例えば、第1軸線X1に沿う方向、即ちデフケース16の軸方向(後述するサイドギヤ31,32の軸方向)で差動ギヤ機構17を挟む第1,第2カバー部材21,22と、第1,第2カバー部材21,22の外周端部に結合されるリング部材(ドリブン部材)20と、を備える。
【0025】
第1カバー部材21は、例えば、第1軸線X1を中心とする円形リング状に形成される扁平な第1側壁部21aと、第1側壁部21aの内周端部より後述するサイドギヤ31,32における軸方向外方側(即ち第2カバー部材22と向き合う面とは反対側)に延びる第1ボス部21bと、を有する。
【0026】
第2カバー部材22は、例えば、第1軸線X1を中心とする円形リング状に形成される扁平な第2側壁部22aと、第2側壁部22aの内周端部より後述するサイドギヤ31,32における軸方向外方側(即ち第1カバー部材21と向き合う面とは反対側)に延びる第2ボス部22bと、を有する。
【0027】
また、第1カバー部材21及び第2カバー部材22は、例えば、差動ギヤ機構17を、デフケース16の軸方向で一方側及び他方側よりそれぞれ覆っている。また、第1,第2カバー部材21,22の少なくとも一方には、例えば、デフケース16内をミッションケース12内に連通する潤滑油が流通可能な貫通孔(不図示)が設けられる。また、第1,第2ボス部21b,22bは、第1,第2軸受61,62を介してそれぞれミッションケース12に支持される。
【0028】
リング部材20は、差動ギヤ機構17を、デフケース16の径方向外方側(後述するサイドギヤ31,32の径方向外方側)から覆っている。また、リング部材20は、例えば外周面に外向きのギヤ歯20gが設けられている。またギヤ歯20gは、減速歯車機構15のドライブギヤ23と噛み合う。そのため、エンジンの動力がトランスミッションからデフケース16に伝達される。
【0029】
尚、リング部材20と第1,第2カバー部材21,22との結合は、本実施形態では溶接が採用されるが、本発明はこれに限らず、その他の結合手段(例えばネジ止め、圧入等)を用いてもよい。
【0030】
また、差動ギヤ機構17は、例えば、第1軸線X1に直交する第2軸線X2,X2′回りで回転自在に支持される複数(例えば、4個)のピニオンギヤ(差動ギヤ)30と、第1軸線X1回りに回転自在に支持されて、複数のピニオンギヤ30に各々噛み合う一対のサイドギヤ(出力ギヤ)31,32(即ち第1サイドギヤ(一方の出力ギヤ,他方の出力ギヤ)31および第2サイドギヤ(他方の出力ギヤ,一方の出力ギヤ)32)と、第2軸線X2,X2′回りに各々のピニオンギヤ30を回転自在に支持する複数のピニオン軸(差動ギヤ支持体,差動ギヤ支持部材)33と、各々のピニオン軸33の両端部を支持する環状の支持部材と、を有する。
【0031】
第1サイドギヤ31は、例えば、第1軸線X1を中心とする円形リング状に形成される扁平な第1側壁部31aと、第1側壁部31aの内周端部より、第1サイドギヤ31の軸方向外方側(即ち第2サイドギヤ32と向き合う面とは反対側)に延びる第1ボス部31bと、を有する。
【0032】
また、第1側壁部31aは、例えば、外周部のサイドギヤ31,32における軸方向内方側(第2サイドギヤ32との対向面側)にギヤ歯31agが形成される。ギヤ歯31agは、例えばベベルギヤで構成される。また、第1側壁部31aのサイドギヤ31,32における軸方向外方側(第2サイドギヤ32との対向面とは反対側)となる第1側壁部31aの背面31fは、第1カバー部材21(より具体的には第1側壁部21a)に覆われ且つサイドギヤ用ワッシャ(ワッシャ)41を介して回転摺動可能に支持される。
【0033】
また、第1ボス部31bの外周部は、第1カバー部材21の第1ボス部21bの内周部に相対回転自在に嵌合して支持される。また、第1ボス部31bの内周部は、第1出力軸13aの内端部の外周と相対回転不能に嵌合(例えば本実施形態ではスプライン嵌合S1)される。
【0034】
第2サイドギヤ31は、例えば、第1軸線X1を中心とする円形リング状に形成される扁平な第2側壁部32aと、第2側壁部32aの内周端部より、第2サイドギヤ32の軸方向外方側(即ち第1サイドギヤ31と向き合う面とは反対側)に延びる第2ボス部32bと、を有する。
【0035】
また、第2側壁部32aは、例えば、外周部のサイドギヤ31,32における軸方向内方側(第1サイドギヤ31との対向面側)にギヤ歯32agが形成される。ギヤ歯32agは、例えばベベルギヤで構成される。また、第2側壁部32aのサイドギヤ31,32における軸方向外方側(第1サイドギヤ31との対向面とは反対側)となる第2側壁部32aの背面32fは、第2カバー部材22(より具体的には第2側壁部22a)に覆われ且つサイドギヤ用ワッシャ(ワッシャ)42を介して回転摺動可能に支持される。
【0036】
また、第2ボス部32bの外周部は、第2カバー部材22の第2ボス部22bの内周部に相対回転自在に嵌合して支持される。また、第2ボス部32bの内周部は、第2出力軸13bの内端部の外周と相対回転不能に嵌合(例えば本実施形態ではスプライン嵌合S2)される。
【0037】
尚、サイドギヤ用ワッシャ41,42を省略して、第1,第2サイドギヤ31,32の背面31f,32fを対応する第1,第2カバー部材21,22(より具体的には第1,第2側壁部21a,22a)の内側面に直接、回転摺動可能に支持させてもよい。
【0038】
個々のピニオンギヤ30は、例えば、ピニオン軸33を相対回転自在に挿通させる軸孔30mhを中心部に有するギヤ本体部30mと、ギヤ本体部30mの外周面に形成されるとともに、第1軸線X1に向かって先細りするギヤ歯部30mgと、を有する。ギヤ歯30mgは、例えばベベルギヤで構成される。
【0039】
また、ピニオンギヤ30の背面30f(より具体的には、ギヤ本体部30mのサイドギヤ31,32における径方向外方側の端面)は、ピニオンギヤ30の回転軸線(即ち第2軸線X2,X2′)と直交する環状の平面に形成される。尚、ピニオンギヤ30の背面30fは、環状の平面に代えて、ピニオンギヤ30の回転軸線上に中心を有する球面の一部、或いはテーパ面で形成されてもよい。
【0040】
支持部材7は、例えば、複数のピニオン軸33の各々の両端部を支持すると共にサイドギヤ31,32の周方向に等間隔に並ぶ複数の支持体(両端支持部)8と、支持体8よりもサイドギヤ31,32の軸方向で薄肉に形成されて、サイドギヤ31,32の周方向で隣り合う2つの支持体8の相互間を一体に結合する複数の略円弧状の連結体9と、を備える。
【0041】
複数の支持体8及び連結体9の各々は第1軸線X1を中心とする円環状に交互に配列される。そのため、支持部材7は、全体としてリング状に形成される。従って、支持部材7は、中心部に複数の支持体8及び連結体9の各々で取り囲まれた空洞Oが形成される。
【0042】
尚、本実施形態では、支持体8をサイドギヤ31,32の周方向に等間隔で4個配設したが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、後述するピニオンギヤ30の数に合わせて、2もしくは3個、又は5個以上配設してもよい。
【0043】
各々の支持体8は、例えば、ピニオン軸33の、サイドギヤ31,32における径方向外方側の端部(一方の端部,他方の端部)を挿通して支持する第1支持孔81hを有する第1支持部(外方側支持部)81と、ピニオン軸33の、サイドギヤ31,32における径方向内方側の端部(他方の端部,一方の端部)を挿通して支持する第2支持孔82hを有する第2支持部(内方側支持部)82と、を備える。
【0044】
第1支持部81と第2支持部82の間には、ピニオンギヤ30を収容可能な空間90が形成される。また、空間90は、サイドギヤ31,32の軸方向における両端側が開放されている。そのため、空間90はデフケース16の内部に直接連通する。また第2支持孔82hは、一端が支持部材7の中心部の空洞Oに開口し、他端がピニオンギヤ30側(即ち空間90)に開口する貫通孔の一例である。
【0045】
尚、第2支持部82には、第2支持孔82hとは別に、一端が空洞Oに開口して他端がピニオンギヤ30側(即ち空間90)に開口する貫通孔(不図示)が形成されていてもよい。
【0046】
支持体8の、サイドギヤ31,32における径方向外方側の端部、即ち第1支持部81は、例えば、サイドギヤ31,32における径方向内方側に、サイドギヤ31,32の周方向で互いに間隔をおいて並ぶ第1,第2壁部81a,81bと、第1,第2壁部81a,81bの相互間に挟まれ且つ第1,第2壁部81a,81bよりもサイドギヤ31,32における径方向外方側に位置する第3壁部81cと、サイドギヤ31,32における軸方向で互いに間隔をおいて並び且つ相互間に第3壁部81cを挟む第4,第5壁部81d,81eと、を有する。そして、第1,第2,第3壁部81a,81b,81cにより支持体8の内面に、ピニオンギヤ30の背面30fに対向する凹部81oが形成され、前記背面30fは凹部81o内に配置される。また、第4,第5壁部81d,81eは、凹部81oの、サイドギヤ31,32の軸方向における内側面を形成する。尚、第4,第5壁部81d,81eの少なくとも一方は省略可能である。つまり、本発明では、凹部81oの、サイドギヤ31,32の軸方向における少なくとも一方の内側面は形成されていなくてもよい。即ち、凹部81oは、第3壁部81cによって底面81obが形成され、第1,第2壁部81a,81bによってサイドギヤ31,32の周方向での側面が形成される。また、凹部81oの底面81obは、ピニオンギヤ30の背面30fをピニオンギヤ用ワッシャ(ワッシャ)40を介して回転摺動可能に支持する。凹部81oの深さは、ピニオンギヤ用ワッシャ40の厚みより深い。尚、ピニオンギヤ用ワッシャ40を省略して、凹部81oの底面81obでピニオンギヤ30の背面30fを直接、回転摺動可能に支持させてもよい。
【0047】
また、凹部81oの底面81obの少なくとも一部(本実施形態では底面81obの中央部81obc)には、例えば、ピニオン軸33の中心軸線(第2軸線X2,X2′)に向かって、サイドギヤ31,32における径方向外方側に傾斜する(ピニオン軸33の中心軸線側に下り勾配の)円錐面(斜面)81obccが形成される。
【0048】
尚、本実施形態では、ピニオンギヤ30の背面30f(より具体的には、ピニオンギヤ用ワッシャ40)の外径よりも円錐面81obccの開口端の内径を小径としたものを示したが、本発明は、これに限らない。本発明では、例えば、ピニオンギヤ30の背面30fの外径を円錐面81obccの開口端の内径と同径又は略同径としてもよい。この場合、円錐面81obccの勾配は、例えば、円錐面81obccがピニオンギヤ30の背面30fと実質的に面接触する程度の微小勾配に設定することが望ましい。
【0049】
また第1支持部81は、サイドギヤ31,32の軸方向で第1,第2カバー部材21,22により挟持される。即ち、第1支持部81の、サイドギヤ31,32における軸方向の両側面が、第1支持部81のサイドギヤ31,32における軸方向の両側面と相対向する第1,第2カバー部材21,22の外周端部の内側面にそれぞれ当接している。
【0050】
また、第1支持部81と第1カバー部材21との相互の当接面の何れか一方(本実施形態では第1支持部81の一側面)には、例えば、サイドギヤ31,32の周方向に沿って円弧状に延びる第1凸部(凸部,突出部)81t1が一体に形成される。また、第1支持部81と第1カバー部材21との相互の当接面の何れか他方(本実施形態では第1カバー部材21の外周端部の内側面)には、例えば、第1凸部81t1に係合して支持部材7に対し第1カバー部材21を同心状に位置決めする、サイドギヤ31,32の周方向に沿って円弧状(本実施形態では円環状)に延びる溝状の第1溝部(溝部)21tが設けられる。
【0051】
また、第1支持部81と第2カバー部材22との相互の当接面の何れか一方(本実施形態では第1支持部81の他側面)には、例えば、サイドギヤ31,32の周方向に沿って円弧状に延びる第2凸部(凸部,突出部)81t2が一体に形成される。また、第1支持部81と第2カバー部材22との相互の当接面の何れか他方(本実施形態では第2カバー部材22の外周端部の内側面)には、例えば、第2凸部81t2に係合して支持部材7に対し第2カバー部材22を同心状に位置決めする、サイドギヤ31,32の周方向に沿って円弧状(本実施形態では円環状)に延びる溝状の第2溝部(溝部)22tが設けられる。
【0052】
支持体8は、例えば、第1カバー部材21を貫通して第1支持部81に螺挿されるボルト50で第1カバー部材21に結合される。またピニオン軸33は、例えば、第1支持部81及びピニオン軸33を横切るように貫通するピン51により第1支持部81に抜け止めされる。また、ピン51は、両端が第1,第2カバー部材21,22の内側面に対向しているため、第1,第2カバー部材21,22が支持体8に結合された状態では、第1,第2カバー部材21,22により、ピン51の第1支持部81からの抜け止めがなされる。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。本実施形態の差動装置11は、エンジンから減速歯車機構15を介してデフケース16に回転力を受けた場合に、ピニオンギヤ30がピニオン軸33回りに自転しないで、デフケース16と共にデフケース16の中心軸線、即ち第1軸線X1回りに公転するときは、デフケース16からピニオンギヤ30を介して第1,第2サイドギヤ31,32が同速度で回転駆動されて、第1,第2サイドギヤ31,32の駆動力が均等に左右の第1,第2出力軸13a,13bに伝達される。また、自動車の旋回走行等により第1,第2出力軸13a,13bに回転速度差が生じるときは、ピニオンギヤ30が自転しつつ第1軸線X1回りに公転することで、ピニオンギヤ30から第1,第2サイドギヤ31,32に対して差動回転を許容しつつ回転駆動力が伝達される。以上は、従来周知の差動装置の作動と同様である。
【0054】
このような差動装置11の作動中、ミッションケース12内で飛散する潤滑油は、例えば、第1,第2出力軸13a,13bと第1,第2サイドギヤ31,32とのスプライン嵌合部S1,S2や、第1,第2カバー部材21,22に設けられた貫通孔(不図示)を通して、デフケース16の内外を流通する。そして、第1,第2サイドギヤ31,32の相対向面間(例えば支持部材7の空洞O)に入った潤滑油の一部は、遠心力により、サイドギヤ31,32における径方向外方側に向かい、例えば支持体8の第2支持部82の支持孔82hとピニオン軸33との嵌合面間や、ピニオンギヤ30とピニオン軸33との嵌合面間を流れて、ピニオンギヤ30の背面30f付近に達し、第1支持部81の凹部81oに溜められる。また第1,第2サイドギヤ31,32の相対向面間に流入した潤滑油の他の一部は、遠心力により、例えば第1,第2サイドギヤ31,32とピニオンギヤ30との噛合部に向かい、更にピニオンギヤ30の背面30f付近に達して第1支持部81の凹部81oに溜められる。
【0055】
本実施形態の差動装置11の組み立てに当たっては、例えば、まず支持部材7の各支持体8の第1,第2支持部81,82の間に形成される空間90にピニオンギヤ30及びピニオンギヤ用ワッシャ40を装入すると共に、ピニオンギヤ30及びピニオンギヤ用ワッシャ40並びに第1,第2支持部81,82にピニオン軸33を挿通させ、ピン51でピニオン軸33を抜け止めして得られるサブアセンブリ(即ち、図4に示す状態のもの)を予め組立ておく。
【0056】
そして、サブアセンブリと、第1,第2サイドギヤ31,32と、サイドギヤ用ワッシャ41,42と、を、適切な配置構成で並べる。そして、適切に並べられたサブアセンブリと、第1,第2サイドギヤ31,32と、サイドギヤ用ワッシャ41,42とを、第1,第2カバー部材21,22で挟み込む。そして、第1カバー部材21及び支持部材7(より具体的には第1支持部81)をボルト50で結合する。
【0057】
また、第2カバー部材22及び支持部材7(より具体的には第1支持部81)を溶接する。これにより、差動ギヤ機構17と第1,第2カバー部材21,22との結合体が形成される。そして、差動ギヤ機構17と第1,第2カバー部材21,22との結合体に、リング部材20を嵌め込む。そして、第1,第2カバー部材21,22の外周面とリング部材20を溶接する。これにより、差動装置11が製造される。
【0058】
本実施形態によれば、第1支持部81の凹部81oは、サイドギヤ31,32における径方向内方側に開口していて、ピニオンギヤ30の背面30f(本実施形態ではピニオンギヤ用ワッシャ40)に臨んでおり、サイドギヤ31,32における軸方向の両側から第1,第2カバー部材21,22で覆われている。そのため、差動装置11の作動中は、第1支持部81の凹部81oに潤滑油が溜まり易くなり、溜まった潤滑油でピニオンギヤ30の背面30f及びピニオンギヤ用ワッシャ40を効率よく潤滑可能となる。即ち、凹部81oに溜まった潤滑油を、背面30f及びピニオンギヤ用ワッシャ40の相互の回転摺動面に十分に供給でき、差動装置11の潤滑性を高めることができる。これにより、ピニオンギヤ30の背面30fと支持部材7との回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。
【0059】
尚、ピニオンギヤ用ワッシャ40を省略してピニオンギヤ30の背面30fを凹部81oの底面81obに直接接触させる場合でも、凹部81oに溜まった潤滑油を、背面30及び底面81obの相互の回転摺動面に十分に供給でき、差動装置11の潤滑性を高めることができる。これにより、ピニオンギヤ30の背面30fと支持部材7との回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、凹部81oの底面81obの少なくとも一部(本実施形態では中央部81obc)が、ピニオン軸33の中心軸線(第2軸線X2,X2′)に向かって、サイドギヤ31,32における径方向外方に傾斜する(ピニオン軸33の中心軸線側に下り勾配の)円錐面(斜面)81obccで形成されている。これにより、凹部81oでの潤滑油の貯溜量を、凹部81oの底面81obのピニオンギヤ用ワッシャ40に対する支持強度を大きく損なうことなく十分に確保することができる。
【0061】
また本実施形態によれば、第1支持部81及び第1カバー部材21の互いの当接面の一方と他方にそれぞれ設けた第1凸部81t1及び第1溝部21tの相互の係合により、支持部材7に対し第1カバー部材21を同心状に容易に位置決めすることができる。これにより、支持部材7及び第1カバー部材21の間の結合強度を高めることができる。
【0062】
また第2支持部82及び第2カバー部材22の互いの当接面の一方と他方にそれぞれ設けた第2凸部81t2及び第2溝部22tの相互の係合により、支持部材7に対し第2カバー部材22を同心状に容易に位置決めすることができる。これにより、支持部材7及び第2カバー部材22の間の結合強度を高めることができる。
【0063】
従って、本実施形態によれば、サブアセンブリを第1,第2カバー部材21,22の間に挟持する際の位置決め作業を容易且つ的確に行うことができる。そのため、差動装置11の組立作業性が高められる。
【0064】
次に、本発明の参考形態に係る差動装置111について図5を参照して説明する。実施形態では、デフケース16の両側壁となる第1,第2カバー部材21,22をそれぞれ扁平化することで、デフケース16の軸方向に対する扁平化が図られるものを示したが、参考形態では、デフケースが概ね球体状に形成された場合の差動装置111について説明する。
【0065】
差動装置111は、例えば、概ね球体状に形成されるデフケース116と、デフケース116内に収容される差動ギヤ機構117と、を備える。
【0066】
尚、デフケース116は、参考形態に示すように一体型に形成してもよいし、或いは複数のケース要素に分割してケース要素の相互間を締結することで構成してもよい。また、デフケース116が少なくとも一体型の場合には、デフケース116の周壁に、差動ギヤ機構117の要素(例えば、後述する第1,第2サイドギヤ131,132やピニオンギヤ130等)を出入れするための組立作業用の貫通孔(不図示)が形成される。
【0067】
デフケース116は、例えば、内部に差動ギヤ機構117を収容可能な空間が形成されるとともに、内面116iが球面状に形成される本体部116aと、本体部116aの右側端部に一体に突設されるとともに、第1軸線X1上に形成される第1ボス116bと、本体部116aの左側端部に一体に突設されるとともに、第1軸線X1上に形成される第2ボス116b′と、を有する。また、第1,第2ボス116b,116b′の外周は軸受161,162を介してミッションケース112に第1軸線X1回りに回転自在に支承される。また第1,第2ボス116b,116b′の内周には、車軸にそれぞれ連なる左右の第1,第2出力軸113a,113bが第1軸線X1回りで回転自在に嵌合して、支持される。
【0068】
また、第1,第2出力軸113a,113bの外周面と第1,第2ボス116b,116b′の内周面との嵌合面の少なくとも一方(本実施形態では第1,第2ボス116b,116b′の内周面)には螺旋状の溝116s,116s′が形成される。溝116s,116s′は、自動車の前進走行時における第1,第2出力軸113a,113bと第1,第2ボス116b,116b′との相対回転に伴い螺子ポンプ作用を発揮する。これにより、ミッションケース112内の潤滑油をデフケース116内に引き込むことができる。
【0069】
またデフケース116の外周部には、リングギヤ(ドリブンギヤ)120が結合(例えばネジ止め)される。また、リングギヤ120は、エンジンに連なる減速歯車機構115のドライブギヤ123と噛合する。これにより、デフケース116には、エンジンより減速歯車機構115及びリングギヤ120を介して回転力が入力される。尚、リングギヤ120をデフケース116に一体に形成してもよい。また、デフケース116は、入力部材の一例である。
【0070】
差動ギヤ機構117は、例えば、デフケース116内で第1軸線X1上に一対で配列される第1,第2サイドギヤ(出力ギヤ,一方の出力ギヤ,他方の出力ギヤ)131,132と、第1,第2サイドギヤ131,132の相対向面間で、第1軸線X1と直交する第2軸線X2上に配置される単一のピニオン軸(差動ギヤ支持体,差動ギヤ支持部材)133と、ピニオン軸133に回転自在に嵌合して支持され、第1,第2サイドギヤ131,132の各々に噛合する複数の(例えば、2つの)ピニオンギヤ(差動ギヤ)130と、を備える。ピニオンギヤ130及び第1,第2サイドギヤ131,132のギヤ歯130g,131g,132gは、例えばベベルギヤで構成される。
【0071】
尚、図5では、差動ギヤ機構117及び第1,第2出力軸113a,113bを、第1軸線X1を挟んで上半部のみ図示する一方、下半部は、図示を省略して、デフケース116の内面116iの形状や第1,第2ボス116b,116b′の内周面の形状を判り易く図示している。尚、図示を省略した下半部の差動ギヤ機構117及び第1,第2出力軸113a,113bの構造は、第1軸線X1に関して上半部と対称である。
【0072】
第1,第2サイドギヤ131,132の内周面には、第1,第2出力軸113a,113bの外周面が相対回転不能に嵌合(本参考形態ではスプライン嵌合S1′,S2′)される。これにより、第1,第2サイドギヤ131,132は、第1,第2出力軸113a,113bを介してデフケース116に第1軸線X1回りに回転自在に支持される。
【0073】
第1サイドギヤ131の背面131fおよび第2サイドギヤ132の背面132fは、デフケース116の球面状に形成された内面116iに倣って、第1軸線X1回りに環状の球面に形成される。そして、第1サイドギヤ131の背面131f側のデフケース116の内面116iおよび第2サイドギヤ132の背面132f側のデフケース116の内面116iには、第1,第2サイドギヤ131,132の各々の背面131f,132fに臨む凹部201,202が、サイドギヤ131,132における軸方向外方側に窪んだ形で形成される。凹部201,202の各々の底面201b,202bは、対応する背面131f,132fをサイドギヤ用ワッシャ(ワッシャ)141,142を介して回転摺動可能に支持する。
【0074】
尚、ワッシャ141,142を省略して、凹部201,202の各々の底面201b,202bで対応する第1,第2サイドギヤ131,132の背面131f,132fを直接に、回転摺動可能に支持させてもよいが、その場合には、背面131f,132fを、底面201b,202bと直接接触するように形成する必要がある。
【0075】
また、凹部201,202の各々の内径は、本実施形態では背面131f,132f(従ってサイドギヤ用ワッシャ141,142)の各々の外径と略同じに設定されるが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、凹部201,202の各々の内径を背面131f,132f(従ってサイドギヤ用ワッシャ141,142)の各々の外径よりも大きく設定してもよい。
【0076】
また凹部201,202の各々の底面201b,202bの曲率は、本実施形態では背面131f,132f(従ってサイドギヤ用ワッシャ141,142)の各々の曲率と同じに設定されるが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、凹部201,202の各々の底面201b,202bの少なくとも一部に、第1,第2サイドギヤ131,132の回転軸線(即ち第1軸線X1)に向かってサイドギヤ131,132における軸方向外方側に傾斜する(第1軸線X1側に下り勾配の)円錐面(斜面)を形成してもよい。この場合、円錐面(斜面)の勾配は、例えば、円錐面が背面131f,132f(従ってサイドギヤ用ワッシャ141,142)と実質的に面接触する程度の微小勾配に設定することが望ましい。
【0077】
また、ピニオン軸133の両端部(ピニオン軸133のサイドギヤ131,132における径方向外方側の端部)は、デフケース116に第2軸線X2上に設けた一対の支持孔116hにそれぞれ挿通して支持される。ピニオン軸133の一端部は、ピニオン軸133及びデフケース116を貫通するピン151で抜け止めされる。また、ピン151の一端部は、デフケース116のピン取付孔116cに結合(例えば圧入、カシメ等)される。
【0078】
ピニオンギヤ130の背面130fは、デフケース116の球面状に形成された内面116iに倣って、第2軸線X2回りに環状の球面に形成される。そして、ピニオンギヤ130の背面130f側のデフケース116の内面116iには、ピニオンギヤ130の背面130fに臨む凹部200が、サイドギヤ131,132における径方向外方側に窪んだ形で形成される。また、凹部200の底面200bは、ピニオンギヤ130の背面130fをピニオンギヤ用ワッシャ(ワッシャ)140を介して回転摺動可能に支持する。
【0079】
尚、ピニオンギヤ用ワッシャ140を省略して、凹部200の底面200bでピニオンギヤ130の背面130fを直接、回転摺動可能に支持させてもよいが、その場合には、背面130を、凹部200の底面200bと直接接触するように形成する必要がある。
【0080】
また、凹部200の内径は、本実施形態では背面130f(従ってピニオンギヤ用ワッシャ140)の外径と略同じに設定されるが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、凹部200の内径を背面130f(従ってピニオンギヤ用ワッシャ140)の外径よりも大きく設定してもよい。
【0081】
また、凹部200の底面200bの曲率は、本実施形態では背面130f(従ってピニオンギヤ用ワッシャ140)の曲率と同じに設定されるが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、凹部200の底面200bの少なくとも一部に、ピニオンギヤ130の回転軸線(即ち第2軸線X2)に向かってサイドギヤ131,132における径方向外方側に傾斜する(ピニオンギヤ130の回転軸線側に下り勾配の)円錐面(斜面)を形成してもよい。この場合、円錐面(斜面)の勾配は、例えば円錐面が背面130f(従ってピニオンギヤ用ワッシャ140)と実質的に面接触する程度の微小勾配に設定することが望ましい。
【0082】
参考形態においては、ピニオンギヤ130及び第1,第2サイドギヤ131,132の各背面130f,131f,132fに対応するデフケース116の内面116iに、内面116iより窪んだ凹部200,201,202が形成される。また、凹部200,201,202の各々の底面200b,201b,202bに、対応するピニオンギヤ用ワッシャ140またはサイドギヤ用ワッシャ141,142を介して各背面130f,131f,132fが回転摺動可能に支持される。
【0083】
また、差動装置111の作動中は、デフケース116の内面116iを伝ってピニオンギヤ130及び第1,第2サイドギヤ131,132の各背面130f,131f,132fの付近に到達した潤滑油が、デフケース116の内面116iに対して窪んだ凹部200,201,202に溜まり易くなる。
【0084】
そのため、凹部200,201,202に溜まった潤滑油を、各背面130f,131f,132f並びに対応するピニオンギヤ用ワッシャ140およびサイドギヤ用ワッシャ141,142の相互の回転摺動面に十分に供給できる。これにより、各背面130f,131f,132f並びに対応するピニオンギヤ用ワッシャ140およびサイドギヤ用ワッシャ141,142を効率よく潤滑することができる。
【0085】
従って、参考形態によれば、ピニオンギヤ130の背面130fとデフケース116との回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。また、第1,第2サイドギヤ131,132の背面131f,132fとデフケース116との回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。
【0086】
尚、ピニオンギヤ用ワッシャ140およびサイドギヤ用ワッシャ141,142を省略して、ピニオンギヤ130及び第1,第2サイドギヤ131,132の背面130f,131f,132fを対応する凹部200,201,202の底面200b,201b,202bに直接接触させる場合においても、凹部200,201,202に溜まった潤滑油を、背面130f,131f,132f及び対応する底面200b,201b,202bの相互の回転摺動面に十分に供給することができる。これにより、ピニオンギヤ130の背面130fとデフケースとの回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。また、第1,第2サイドギヤ131,132の背面131f,132fとデフケースとの回転摺動面に対する潤滑性能を向上させることができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態および参考形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0088】
例えば、実施形態では、差動装置を自動車のミッションケース内に収容しているが、本発明はこれに限らない。本発明の差動装置は、自動車用の差動装置に限定されるものではなく、種々の機械装置用の差動装置として実施可能である。
【0089】
また、実施形態では、差動装置を、車両の左・右輪の伝動系に適用して、左右の駆動軸に対し差動回転を許容しつつ動力を分配するものを示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、差動装置を、前後輪駆動の車両における前・後輪の伝動系に適用して、前後の駆動輪に対し差動回転を許容しつつ動力を分配するようにしてもよい。
【0090】
た実施形態では、支持部材7と第1,第2カバー部材21,22の各々との間での結合手段として、ボルト及び溶接を組み合わせたものを例示したが、本発明はこれに限らない。本発明は、例えば、支持部材7と第1,第2カバー部材21,22の各々との間を、何れもボルトで結合してもよいし、或いは、何れも溶接結合してもよい。尚また、支持部材7と第1,第2カバー部材21,22の各々との間を、ボルト又は溶接以外の結合手段で結合してもよい。
【0091】
また、参考形態では、単一のピニオン軸で構成したが、本発明では、ピニオンギヤの数に合わせてピニオン軸を複数設けるようにしてもよい。
【0092】
た実施形態では、デフケース16,116の外周部に、動力源からの動力を受ける被入力部として外周面にギヤ歯を設けたリング部材(ドリブン部材)20またはリングギヤ(ドリブンギヤ)120を備えるものを例示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、被入力部としてリングギヤ以外の被動輪(例えば被動スプロケット、被動プーリ等)をデフケース(入力部材)に結合してもよい。また、本発明では、例えば、実施形態の第1,第2カバー部材21,22のうちの何れか一方のカバー部材の外側面に、動力源に連なる種々の動力伝達機構や減速歯車機構(例えば遊星歯車式減速機構)の出力部材を結合してもよい。
【符号の説明】
【0093】
O・・・・・空洞
X2・・・・第2軸線(中心軸線)
7・・・・・支持部
8・・・・・支持体(両端支持部)
11,111・・差動装置
21,22・・第1,第2カバー部材
21t,22t・・第1,2溝部(溝部)
30f,31f,32f,130f・・背面
30,130・・ピニオンギヤ(差動ギヤ)
31,131・・第1サイドギヤ(一方の出力ギヤ,他方の出力ギヤ,出力ギヤ)
32,132・・第2サイドギヤ(他方の出力ギヤ,一方の出力ギヤ,出力ギヤ)
33,133・・ピニオン軸(差動ギヤ支持体,差動ギヤ支持部材)
81・・・・第1支持部(外方側支持部)
81o・・・凹部
81ob・・底面
81obcc・・円錐面(斜面)
81a,81b,81c,81d・・第1,第2,第3,第4壁部
81t1,81t2・・第1,2凸部(凸部,突出部)
82・・・・第2支持部(内方側支持部)
82h・・・支持孔(貫通孔)
116・・・デフケース(入力部材)
116i・・内面
140・・・ピニオンギヤ用ワッシャ(ワッシャ)
200・・・凹部
図1
図2
図3
図4
図5