特許第6876490号(P6876490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本トムソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000002
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000003
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000004
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000005
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000006
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000007
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000008
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000009
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000010
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000011
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000012
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000013
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000014
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000015
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000016
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000017
  • 特許6876490-直動案内ユニット 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876490
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-71808(P2017-71808)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173132(P2018-173132A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】林 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 祥司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 匡裕
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−164424(JP,A)
【文献】 特開2010−185517(JP,A)
【文献】 特開2001−227541(JP,A)
【文献】 特開2011−021712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向両側面に沿って第1軌道面がそれぞれ形成された軌道レール,前記軌道レールに跨架して前記第1軌道面に対向して第2軌道面がそれぞれ形成され且つ前記第1軌道面と前記第2軌道面とから成る軌道路を転走する転動体であるローラを介して相対移動するスライダから成り,
前記スライダは,前記第2軌道面と前記第2軌道面に平行に伸びるリターン路を備えたケーシング,前記ケーシングの長手方向の両端面にそれぞれ固着されたエンドキャップ,前記軌道路,前記リターン路及び前記軌道路と前記リターン路とを連通する前記エンドキャップに形成された方向転換路から構成される循環路を転走する前記ローラ,並びに前記軌道路に沿って配置され且つ前記ローラを前記スライダに保持する保持板を有していることから成る直動案内ユニットにおいて,
前記ケーシングには,前記ローラの一方の端面を案内する第1案内面が前記長手方向に延びる前記軌道路に沿って形成されていると共に,前記第2軌道面の両端部に前記ローラが前記軌道路の無負荷路から負荷路に滑らかに侵入可能になる緩やかなカーブで形成されたクラウニング部がそれぞれ形成されており,
前記保持板には,前記ローラの他方の端面を案内する第2案内面が形成されると共に,前記ケーシングの前記クラウニング部に対向する前記保持板の両端部に前記第2案内面より突出した突出部がそれぞれ形成されており,
前記方向転換路から前記軌道路へ転走する前記ローラは,前記突出部によって前記第1案内面の方向に押圧されて,前記ローラの軸心が前記ケーシングの前記クラウニング部の入口側で前記第1案内面に対して直交状態の姿勢にそれぞれ整列させて前記ローラのスキューの発生を防止することを特徴とする直動案内ユニット。
【請求項2】
前記保持板の上下の前記第2案内面間の前記長手方向に沿って形成された前記保持板の断面V字形状の凸部でなる尖端部は,前記ケーシングの上下の前記第2軌道面間に前記長手方向に沿って形成された断面V字状の凹状係止溝に嵌入されており,前記ケーシングの袖部の取付け孔に挿通した固定ボルトを前記保持板に形成された取付けねじ孔に螺入して前記保持板が前記ケーシングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記保持板は,前記ローラの他方の前記端面をガイドする前記第2案内面が形成されている合成樹脂製の保持部材,前記保持部材の前記第2案内面の背面側に形成された凹溝に嵌入して前記保持部材を前記ケーシングに固定する金属製の固定部材,及び前記保持部材の長手方向の予め決められた複数の位置が切り欠かれた切欠き部に配置され且つ前記固定部材と前記ケーシングとの間を予め決められた所定の間隔に設定する金属製のこま部材から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記保持部材は長手方向に直交する断面が山型に形成され,前記山型の傾斜面は平面状に形成された前記第2案内面を構成しており,前記山型の頂部が前記ケーシングの前記凹状係止溝に嵌入されており,前記固定部材には長手方向に隔置して複数のねじ孔が形成されており,前記ねじ孔に対応する位置の前記保持板と前記ケーシングには貫通孔が形成され,前記ケーシングの外側から前記貫通孔に固定ボルトを嵌挿して前記ねじ孔に螺入して前記保持板が前記ケーシングに固定されることを特徴とする請求項3に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記保持部材の前記端部の中間位置に長手方向に延びるスリットが形成され,前記スリットの両側に一対の弾性変形可能な片持梁状保持部が形成されており,前記軌道路を転走する上下の前記ローラがそれぞれの前記片持梁状保持部を通過する際に,前記片持梁状保持部が前記ローラの端面を前記ケーシングの前記第1案内面へとそれぞれ押圧して前記ローラの前記姿勢にそれぞれ整列させることを特徴とする請求項3又は4に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記スリットは,前記保持板の端部から前記軌道路の負荷域に達しており,前記クラウニング部よりも長く形成されていることを特徴とする請求項5に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記保持部材には,前記片持梁状保持部を拡開方向にそれぞれ押圧するばね部材が前記片持梁状保持部間に配設されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記第2案内面に沿って延びる前記突出部の長さは,前記ローラのローラ径の2〜3倍に設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項9】
前記突出部の前記端部は,前記第2案内面と前記突出部の頂部を結ぶ傾斜面がそれぞれ形成されて長手方向の断面形状が台形状に形成されており,前記突出部の前記第1案内面に対向する部分が前記第1案内面と平行な平面に形成され,前記傾斜面の前記方向転換路側の第1傾斜面の傾斜角度が前記軌道路側の第2傾斜面の傾斜角度よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項10】
前記第1傾斜面の長手方向の長さは前記ローラのローラ径の1.5倍以上に形成され,前記第2傾斜面の長手方向の長さは前記ローラのローラ径の0.5倍以上に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の直動案内ユニット。
【請求項11】
前記突出部は,前記ケーシングに形成された前記クラウニング部の端部側の無負荷域から負荷域に達する領域まで延びて形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項12】
前記突出部は前記ケーシングの前記第2軌道面側に形成され,前記保持板の長手方向に対して直交する方向の前記突出部の幅は,前記ローラのローラ径の0.5倍に形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,軌道路へと転走するローラの軸芯がケーシングの案内面に直交するように整列させるため,保持板にローラ端面を押圧する手段を設けたローラタイプの直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,直動案内ユニットとして,保持板自体を軽量に構成すると共に,エンドキャップに簡潔に容易に保持することができ,スライダを小形化に構成したものが知られている。該直動案内ユニットは,軌道レールとその上を転動体であるローラを介して相対移動するスライダを備えたものであり,スライダは,ケーシング,及びその両端にそれぞれ固定されるエンドキャップを有している。ケーシングの軌道面側に位置するローラは,保持板によってケーシングに保持されている。保持板は,ケーシングに形成されている挿通孔に通した固定ボルトを保持板の背面に配設したナットに螺入してケーシングに固定するように構成されている。また,保持板は,薄板を長手方向に沿って断面V字形状に折り曲げた一対の平板部から成り,一対の平板部は,ケーシングの長さより長く形成されて両端部がエンドキャップに形成された嵌合溝に支持固定されると共に,ケーシングの上下の軌道面をそれぞれ転走するそれぞれのローラの端面をそれぞれ案内してケーシングの軌道面側に保持している。また,保持板をスライダに保持するために,ケーシングにボルトが挿通される挿通孔を形成し,ボルトを保持板の背面のナットに螺入して保持板を固定する構造が示されている(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
また,直動転がり案内ユニットについて,円筒ころを保持する保持手段がスライダにワンタッチで固定され,スライダの定格荷重をアップさせるものが知られている。該直動転がり案内ユニットは,ケーシングの上側軌道面と下側軌道面に配置される円筒ころの間に保持板が配置され,保持板の係合溝とエンドキャップの係合溝に固定バンドの保持部を係止させ,エンドキャップに形成された係止穴に固定バンドの屈曲部の先端の係止爪を係合させる。円筒ころを保持する保持手段は,スライダに組み込まれ,軌道レールとケーシングとで形成される軌道路に円筒ころを保持している(例えば,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−234858号公報
【特許文献2】特開平7−91446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,従来,転動体としてローラを使用している直動案内ユニットでは,軌道路内を転走するローラの軸芯が進行方向に対して傾くことがある。転走中の傾いたローラは,すべり摩擦を伴って転走するスキューが発生する場合がある。従来の直動案内ユニットでは,保持板の係止爪によって転動体であるローラをケーシングに形成された軌道面に対して保持して,保持板の案内面でローラの端面を案内し,スキューの発生を防止している。しかし,ローラをスムーズに循環させるためには,ローラの端面と案内面との間に僅かな隙間が必要である。そのスキューを防止する対策として,ローラとその案内面との間の隙間を小さくするために,循環路を構成する個々の部品を高精度に製造することで対応していたが,製造コストがかかり,それでスキューの発生を防止するための安価な対策が望まれていた。
【0006】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,循環路における無負荷域で傾いたローラの姿勢を軸芯がケーシングの案内面に直交するように整列させて正しい姿勢で負荷域に転走させ,摺動抵抗の変動や発熱を抑制するため,保持板を構成する保持部材にその端部にスリットを設けて二股状の弾性変形可能な片持梁状保持部に形成し,該片持梁状保持部に突出部を設けて,該突出部の両端に設けた傾斜面でローラの姿勢を徐々にその軸芯がケーシングの案内面に直交するように整列させることができる直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は,長手方向両側面に沿って第1軌道面がそれぞれ形成された軌道レール,前記軌道レールに跨架して前記第1軌道面に対向して第2軌道面がそれぞれ形成され且つ前記第1軌道面と前記第2軌道面とから成る軌道路を転走する転動体であるローラを介して相対移動するスライダから成り,前記スライダは,前記第2軌道面と前記第2軌道面に平行に伸びるリターン路を備えたケーシング,前記ケーシングの長手方向の両端面にそれぞれ固着されたエンドキャップ,前記軌道路,前記リターン路及び前記軌道路と前記リターン路とを連通する前記エンドキャップに形成された方向転換路から構成される循環路を転走する前記ローラ,並びに前記軌道路に沿って配置され且つ前記ローラを前記スライダに保持する保持板を有していることから成る直動案内ユニットにおいて,
前記ケーシングには,前記ローラの一方の端面を案内する第1案内面が前記長手方向に延びる前記軌道路に沿って形成されていると共に,前記第2軌道面の両端部に前記ローラが前記軌道路の無負荷路から負荷路に滑らかに侵入可能になる緩やかなカーブで形成されたクラウニング部がそれぞれ形成されており,
前記保持板には,前記ローラの他方の端面を案内する第2案内面が形成されると共に,前記ケーシングの前記クラウニング部に対向する前記保持板の両端部に前記第2案内面より突出した突出部がそれぞれ形成されており,
前記方向転換路から前記軌道路へ転走する前記ローラは,前記突出部によって前記第1案内面の方向に押圧されて,前記ローラの軸心が前記ケーシングの前記クラウニング部の入口側で前記第1案内面に対して直交状態の姿勢にそれぞれ整列させて前記ローラのスキューの発生を防止することを特徴とする直動案内ユニットに関する。
【0008】
また,この直動案内ユニットにおいて,前記保持板の上下の前記第2案内面間の前記長手方向に沿って形成された前記保持板の断面V字形状の凸部でなる尖端部は,前記ケーシングの上下の前記第2軌道面間に前記長手方向に沿って形成された断面V字状の凹状係止溝に嵌入されており,前記ケーシングの取付け孔に挿通した固定ボルトを前記保持板に形成した取付けねじ孔に螺入して前記保持板が前記ケーシングに固定されている。
【0009】
また,前記保持板は,前記ローラの他方の前記端面をガイドする前記第2案内面が形成されている合成樹脂製の保持部材,前記保持部材の前記第2案内面の背面側に形成された凹溝に嵌入して前記保持部材を前記ケーシングに固定する金属製の固定部材,及び前記保持部材の長手方向の予め決められた複数の位置が切り欠かれた切欠き部に配置され且つ前記固定部材と前記ケーシングとの間を予め決められた所定の間隔に設定する金属製のこま部材から構成されているものである。
【0010】
また,前記保持部材は,長手方向に直交する断面が山型に形成され,前記山型の傾斜面は,平面状に形成された前記第2案内面を構成しており,前記山型の頂部が前記ケーシングの前記凹状係止溝に嵌入されており,前記固定部材には,長手方向に隔置して複数のねじ孔が形成されており,前記ねじ孔に対応する位置の前記保持板と前記ケーシングには貫通孔が形成され,前記ケーシングの袖部の外側から前記貫通孔に固定ボルトを嵌挿して前記ねじ孔に螺入して前記保持板が前記ケーシングに固定されるものである。
【0011】
また,この直動案内ユニットは,前記保持部材の前記端部の中間位置に長手方向に延びるスリットが形成され,前記スリットの両側に一対の弾性変形可能な片持梁状保持部が形成されており,前記軌道路を転走する上下の前記ローラがそれぞれの前記片持梁状保持部を通過する際に,前記片持梁状保持部が前記ローラの端面を前記ケーシングの前記第1案内面へとそれぞれ押圧して前記ローラの前記姿勢にそれぞれ整列させるものである。更に,前記スリットは,前記保持板の端部から前記軌道路の負荷域に達しており,前記クラウニング部よりも長く形成されている。
【0012】
また,この直動案内ユニットは,前記保持部材には,前記片持梁状保持部を拡開方向にそれぞれ押圧するばね部材が前記片持梁状保持部間に配設されている。また,前記第2案内面に沿って延びる前記突出部の長さは,前記ローラのローラ径の実質的に2〜3倍に設定されている。
【0013】
また,前記突出部の前記端部は,前記第2案内面と前記突出部の頂部を結ぶ傾斜面がそれぞれ形成されて長手方向の断面形状が台形状に形成されており,前記突出部の前記第1案内面に対向する部分が前記第1案内面と平行な平面に形成され,前記傾斜面の前記方向転換路側の第1傾斜面の傾斜角度が前記軌道路側の第2傾斜面の傾斜角度よりも小さく形成されている。更に,前記第1傾斜面の長手方向の長さは,ローラ径の実質的に1.5倍以上に形成され,前記第2傾斜面の長手方向の長さは,ローラ径の実質的に0.5倍以上に形成されている。
【0014】
また,前記突出部は,前記ケーシングに形成された前記クラウニング部の端部側の無負荷域から負荷域に達する領域まで延びて形成されている。更に,前記突出部は,前記ケーシングの前記第2軌道面側に形成され,前記保持板の長手方向に対して直交する方向の前記突出部の幅は,前記ローラ径の実質的に0.5倍に形成されている。
【発明の効果】
【0015】
この直動案内ユニットは,上記のように,保持板を構成する樹脂製の保持部材の端部に設けた突出部をローラの一方の端面に当接させ,ローラの他方の端面をケーシングの案内面に押し付けることによって,ローラの両端面を突出部と案内面とで押さえて,傾いたローラの姿勢をその軸芯がケーシングの案内面に直交するように転走させ,正しい姿勢にする整列させることができる。即ち,この直動案内ユニットは,循環路の無負荷域で転走して傾いたローラの姿勢をその軸芯がケーシングの案内面に直交するように整列させて正しい姿勢に整列させて負荷域に導入することができるので,スキューによる摺動の引っ掛かりや早期摩耗,摺動抵抗の変動や発熱を抑制することができる。更に,保持部材に設けた突出部の両端部に形成した傾斜面でローラの姿勢を徐々にその軸芯がケーシングの案内面に直交するように整列させることができるので,スムーズにローラを循環路で転動させることを実現することができる。また,この直動案内ユニットは,ローラが保持部材に形成した突出部を通過する際,保持部材の片持梁状保持部が撓むことを利用して突出部をローラの端面に押圧しているので,傾いたローラの姿勢を確実にその軸芯がケーシングの案内面に直交するように整列させることができる。この直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,個々の部品精度を上げる必要なく,また,ローラと循環路との間の厳密な隙間管理を必要としないので,コストを低減できる。更に,保持部材の端部の片持梁状保持部に弾性変形を付勢するばね部材を設け,突出部をローラ端面に確実に押し付けることができる。また,保持板をケーシングにねじ止めする構成は,固定ボルトの締結力で保持板を構成する樹脂の保持部材が変形する恐れがあるので,保持部材のねじ止めする位置に金属製のこま部材を配設し,こま部材を介して保持板をケーシングに固定するので,固定ボルトの締結力が保持部材に直接加わらないので,ねじ止めによる保持部材の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明による直動案内ユニットの一実施例を一部破断して断面を示す斜視図である。
図2図1の直動案内ユニットの線分A−Aにおける断面図である。
図3】この直動案内ユニットの線分E−Eにおける転動体であるローラが転走する循環路を示す断面図である。
図4図1の直動案内ユニットに組み込まれている保持板を示す斜視図である。
図5図4の保持板における符号Cの領域を示す拡大斜視図である。
図6図4の保持板を分解して示す分解斜視図である。
図7図4の保持板を示す平面図である。
図8図5に示す線分B−Bにおける断面図を含んだ図4の保持板を示す背面図である。
図9図6の保持板を構成する保持部材を示す平面図である。
図10図6の保持板を構成する保持部材を示す背面図である。
図11図6の保持板を構成する固定部材を示し,(A)は固定部材を示す平面図であり,(B)は(A)の線分C−Cにおける固定部材を示す断面図である。
図12】この直動案内ユニットにおけるケーシングと保持板との端面側から軌道路の入口側を見た正面図である。
図13】この発明による直動案内ユニットにおけるローラが方向転換路から軌道路に転走する動きを示しており,図14のローラ端面側から見た平面を示す概念図である。
図14】この直動案内ユニットにおけるローラが方向転換路から軌道路に転走する状態の概念を示す説明図である。
図15】この直動案内ユニットにおけるケーシングに保持板を取り付け状態を示す拡大斜視図である。
図16図6に示す保持板を構成するこま部材を示す斜視図である。
図17図1の線分D−Dにおける固定ボルトによって保持板をケーシングに固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を参照して,この発明による直動案内ユニットの実施例について説明する。図1に示すように,この発明による直動案内ユニットは,概して,長手方向両側面23に沿って軌道面21(第1軌道面)がそれぞれ形成された軌道レール1,軌道レール1に両袖部が跨架して軌道面21に対向して軌道面22(第2軌道面)がそれぞれ形成され且つ軌道面21と軌道面22とから成る軌道路14を転走する複数の転動体であるローラ5を介して相対移動するスライダ2から構成されている。スライダ2は,主として,軌道面22とそれに平行に伸びるリターン路15を備えた断面逆U字状のケーシング3,ケーシング3の長手方向の両端面26にそれぞれ固着されたエンドキャップ4,エンドキャップ4の端面に配設されたエンドシール8,軌道路14,リターン路15及び軌道路14とリターン路15とを連通するエンドキャップ4に形成された方向転換路16から構成される無限循環路17を転走するローラ5,並びに軌道路14に沿って配置され且つローラ5をスライダ2に保持する保持板7を有している。軌道レール1には,軌道レール1をベース,ベッド,機台等の相手部材に取り付ける際にボルト(図示せず)が挿入される取付け用孔58が形成されている。また,ケーシング3には,その上面にワーク,機器等の相手部材に取り付けるための取付け用ねじ孔57が形成されている。エンドキャップ4には,方向転換路16内に潤滑剤を供給可能な給油孔61が設けられている。給油孔61には,エンドキャップ4内の潤滑剤が漏れないように止栓62が装着されている。ケーシング3には,エンドキャップ4,貯油板29及びエンドシール8が固定ボルト60によって固定されている。
【0018】
図2に示すように,この直動案内ユニットは,例えば,軌道路14を4つ備えた四条列タイプの直動案内ユニットに構成されている。ケーシング3は,ねじ孔57が設けられて本体部64と,本体部64の両端から垂下する一対の袖部65を備えている。ケーシング3の両袖部65には,ローラ5が無負荷で転走させるリターン路15が形成されている。リターン路15は,ケーシング3の袖部65に形成された嵌挿孔56に嵌挿されたスリーブ19に形成されている。軌道レール1の側面23には,逃げ溝66が長手方向に沿って形成されている。ケーシング3の袖部65には,上下の軌道面22の間に凹状係止溝36が形成されており,凹状係止溝36には,ローラ5をスライダ2に保持するための保持板7が配置されている。ケーシング3の袖部65には,ローラ5の一方の端面25を案内する案内面31(第1案内面)が形成され,また,案内面31に対向する位置の保持板7には,ローラ5の他方の端面25を案内する案内面32(第2案内面)が形成されている。袖部65の下面と軌道レール1との間には,下面シール59が配設されている。エンドキャップ4は,方向転換路16の外周面が形成されたエンドキャップ本体6,及びエンドキャップ本体6のケーシング側端面に形成された凹部に嵌入したスペーサ9(図3)から構成されている。図3に示すように,エンドキャップ本体6には,エンドシール8側に形成された凹部24に潤滑剤含浸部材である貯油板29が嵌入して配設されている。図3に示すように,潤滑プレートである貯油板29に設けた突出部は,エンドキャップ本体6の外周面に形成された開口20から方向転換路16内に露出しており,該突出部に接触して方向転換路16を転走するローラ5に潤滑剤が供給される。貯油板29は,例えば,超高分子量の合成樹脂微粒子を押し固めた状態で加熱成形され,合成樹脂微粒子間が連通して多孔になる多孔質構造の焼結樹脂で形成されている。ケーシング3は,それに形成された軌道面22の両端部には,緩やかな曲面形状に形成されたクラウニング部10が形成されている。クラウニング部10は,図13及び図14に示すように,端面側の無負荷路44を形成する領域と,軌道面22へとに続く負荷路43を形成する領域とから構成されている。ケーシング3の端部のクラウニング部10によって,ローラ5が軌道路14にスムーズの転動して進入できるように構成されている。
【0019】
この発明による直動案内ユニットは,ケーシング3には,ローラ5の一方の端面25を案内する案内面31が長手方向に延びる軌道路14に沿って形成されていると共に,軌道面22の両端部にローラ5が軌道路14の無負荷路44から負荷路43に滑らかに侵入可能になる緩やかなカーブで形成されたクラウニング部10がそれぞれ形成されている。また,図4及び図5に示すように,保持板7には,ローラ5の他方の端面25を案内する案内面32が形成されると共に,ケーシング3のクラウニング部10に対向する保持板7を構成する保持部材12の両端部27に案内面32より突出した突出部30がそれぞれ形成されている。この直動案内ユニットは,特に,ローラ5が方向転換路16から軌道路14へ転走し,保持板7の突出部30によってローラ5がケーシング3の案内面31の方向に押圧され,ローラ5の軸心がケーシング3のクラウニング部10の無負荷路44即ち入口側で案内面31に対して直交状態の姿勢にそれぞれ整列させられ,ローラ5のスキューの発生が防止されることを特徴としている。
【0020】
また,この直動案内ユニットにおいて,図4及び図5に示すように,保持板7の断面V字形状の凸部でなる尖端部33は,保持板7の上下の案内面32間の長手方向に沿って形成され,図2に示すように,ケーシング3の上下の軌道面22間に長手方向に沿って形成された断面V字状の凹状係止溝36に嵌入されている。図17に示すように,固定ボルト41は,ケーシング3の取付け孔である貫通孔34に挿通し,保持板7の固定部材13に形成された取付けねじ孔42に螺入され,それによって,保持板7がケーシング3に固定されている。この実施例では,スライダ2が高剛性で高精度を実現するために効率的に実施可能な長さに形成されたものが使用されており,ケーシング3の全長を軌道レール1の幅寸法の略4倍に相当する長さに長く形成した超ロングタイプである。また,図13及び図14に示すように,ケーシング3に形成されたクラウニング部10の長さLは,ローラ5の直径の実質的に4±0.5倍に形成されている。ケーシング3は,軌道レール1の取付け用孔58が3個〜4個が掛かる長さに形成されており,また,エンドキャップ4の移動方向長さの6.3〜8.3倍の長さに形成されている。ケーシング3の全長に応じて,クラウニング部10の長さが異なる場合でも,保持板7に形成されている突出部30は,クラウニング部10の無負荷路44の領域から負荷路43の領域に達するように形成されている。
【0021】
この直動案内ユニットにおいて,図4図11に示すように,保持板7は,主として,ローラ5の他方の端面25をガイドする案内面32が形成されている合成樹脂製の保持部材12,保持部材12の案内面32の背面側に形成された凹溝50に嵌入して保持部材12をケーシング3に固定する金属製の固定部材13,及び保持部材12の長手方向の予め決められた複数の位置が切り欠かれた切欠き部51に配置され且つ固定部材13とケーシング3との間を予め決められた所定の間隔に設定する金属製のこま部材18から構成されている。また,この直動案内ユニットは,保持板7を構成する保持部材12の端部27の幅方向中間位置に長手方向に延びるスリット45が形成され,スリット45の両側には,一対の弾性変形可能な片持梁状保持部11が形成されている。軌道路14を転走する上下のローラ5がそれぞれの片持梁状保持部11を通過する際に,片持梁状保持部11がローラ5の端面25をケーシング3の案内面31へとそれぞれ押圧して,ローラ5の姿勢にそれぞれ整列させることができる。また,保持部材12には,ローラ5の転動面の角部を支持してローラ5を保持する爪部55が形成されている。保持部材12に形成された凹溝50は,ばね部材40を配設するスペースを形成する凹部35の手前までの領域に形成されている。
【0022】
図15には,ケーシング3に取り付いた保持板7の端部27を拡大した斜視図が示されている。保持部材12には,固定部材13が収容される凹溝50の両端部には,撓みによって変形した片持梁状保持部11が,固定部材13が干渉しないように逃がし部となる切欠き部51が形成されている。図12に示すように,保持部材12は,ローラ端面25から案内面32を押すような方向の力を受けるが,図15に示すように,固定部材13によってバックアップされている。保持部材12の両端部27に形成された一対の片持梁状保持部11は,スリット45の間隔が狭くなる方向に弾性変形する。また,一対の片持梁状保持部11は,独立してそれぞれ弾性変形できるように形成されている。また,スリット45を保持部材12の断面形状において,中央の位置に設定することにより,突出部30をローラ端面25に確実に押し付けることができる。また,図13及び図14に示すように,軌道路14のクラウニング部10の無負荷路44の領域から負荷路43の領域まで突出部30を延在することにより,突出部30でローラ軸芯がケーシング3の案内面31に直交するように整列させ正しい姿勢になったローラ5を負荷路43に確実に導入することができる。また,負荷路43における摺動抵抗の増加を軽減するため,軌道路14の負荷路43までスリット45を形成することができる。クラウニング部10が形成されている場合,クラウニング部10を超える位置までスリット45を形成することにより,負荷路43における摺動抵抗を低減できる。
【0023】
また,スリット45は,保持部材12の端部27から軌道路14の負荷路43に達しており,クラウニング部10よりも長く形成されている。更に,この直動案内ユニットは,保持板7には,片持梁状保持部11を拡開方向にそれぞれ押圧するばね部材40が片持梁状保持部11間に配設されている。また,案内面32に沿って延びる突出部30の長さは,ローラ5のローラ径の実質的に2〜3倍に設定されているものである。また,保持部材12に形成された案内面32は,一対に形成されており,各案内面32には,突出部30がそれぞれ設けられている。そして,各案内面32の端部が片持梁状保持部11にそれぞれ形成されている。保持部材12の端部27は,スリット45により片持梁状保持部11に形成されているので,ローラ5が突出部30を通過する際に,片持梁状保持部11の撓みを利用して突出部30をローラ5の一方の端面25に当接させることができ,ローラ5の他方の端面25をケーシング3の案内面31に確実に押し当てることができる。更に,片持梁状保持部11の撓みに加えて,ばね部材40の弾性力により突出部30をローラ端面25に当接させているので,ローラ5の他方の端面25をケーシング3の案内面31に一層確実に押し当てることができる。この直動案内ユニットは,上記によって正しい姿勢のローラ5を軌道路14の負荷路43の領域に導入することができる。
【0024】
この直動案内ユニットでは,図14に示すように,ケーシング3の案内面31と保持部材12の案内面32との間隙は,ローラ5の高さ(軸心長さ)よりも大きく形成されている。これにより,案内面31,32とローラ5の端面25との間には,隙間が形成されることになる。保持部材12の案内面32に形成された突出部30は,ローラ5の一方の端面25に当接してローラ5の他方の端面25をケーシング3の案内面31に押し付ける寸法に突出部30が形成されている。図12に示すように,突出部30は,ケーシング3の軌道面22側に寄った位置に形成されており,ローラ5の端面25の中心である軸芯位置に対向する位置に形成されている。また,突出部30は,ローラ5の端面25の中心を押圧する機能を有している。軸芯が傾いたローラ5を,ケーシング3の案内面31に直交する姿勢になるように安定して整列させることができる。従って,ローラ5が突出部30を通過する時に,2つの片持梁状保持部11は,ローラ5をケーシング3の案内面31に押し当てながら,スリット45間が狭くなる方向に撓んで変形する。
【0025】
また,保持部材12に形成した突出部30の端部は,案内面32と突出部30の頂部48を結ぶ傾斜面37,38がそれぞれ形成されて長手方向の断面形状が台形状に形成されている。また,突出部30の長手方向の両側に一対の傾斜面37,38を備えているので,傾いたローラ5を傾斜面37,38で徐々に姿勢を,ローラ軸芯がケーシング3の案内面31に直交するように整列させることができ,ローラ5のスムーズな転走と確実にローラ軸芯がケーシング3の案内面31に直交するように整列させることができる。特に,方向転換路16側に形成された傾斜面37の傾斜角度を小さくして傾斜面の長さを長くすることで,徐々にローラ5の姿勢をその軸芯がケーシング3の案内面31に直交するように整列させることができる。また,軌道路14の負荷域側に傾斜面38を形成することにより,負荷域から転走するローラ5がスムーズに突出部30を通過できる。また,ケーシング3の案内面31に対向する突出部30の部分は,案内面31と平行な平面に形成され,傾斜面37の方向転換路16側の傾斜面37(第1傾斜面)の傾斜角度は,軌道路14側の傾斜面38(第2傾斜面)の傾斜角度よりも小さく形成されている。更に,この直動案内ユニットは,傾斜面37の長手方向の長さL1はローラ径の実質的に1.5倍以上に形成され,傾斜面38の長手方向の長さL2はローラ径の実質的に0.5倍以上に形成されている。また,案内面32に形成された突出部30の長さL3は,ローラ径の実質的に2倍以上に形成されている。突出部30は,ケーシング3の案内面31と共に,ローラ端面25の回転軸芯位置を押さえる位置に形成されている。更に,傾斜面37,38は,長手方向の断面形状が曲面形状に形成されてもよいものである。
【0026】
この直動案内ユニットは,保持部材12の端部27に長手方向に沿って形成されたスリット45により,保持部材12の端部27は,一対の片持梁状保持部11が形成されている。保持部材12には,それに形成されたスリット45の基部に保持部材12を貫通する孔63が形成されている。図5に示すように,スリット45の基部の孔63は,スリット45側を切り欠いた丸孔に形成されている。孔63は,スリット45の幅よりも丸孔を大きく形成されており,スリット45の基部に応力集中するのを防止している。保持部材12の端部27に形成されたスリット45によって形成される一対の片持梁状保持部11は,撓みにより,孔63によって根元の肉厚が薄くなり,弾性変形し易くなるように形成されている。片持梁状保持部11は,保持部材12の端部27に組み込んだばね部材40の弾性力に依存するように構成されている。
【0027】
また,突出部30は,ケーシング3に形成されたクラウニング部10の端部側の無負荷路44を形成する領域から負荷路43を形成する領域に達するまで延びて形成されている。更に,図12に示すように,突出部30は,ケーシング3の軌道面22側に形成され,保持板7の長手方向に対して直交する方向の突出部30の幅は,ローラ径の実質的に0.5倍に形成されている。この直動案内ユニットでは,突出部30の長さと幅は,例えば,ローラ径をDaとした場合に,長さは2Da〜3Daに形成し,幅は,0.5Da程度の寸法に設定することができる。
【0028】
また,図17に示すように,保持部材12は,長手方向に直交する断面が山型に形成され,山型の傾斜面46は平面状に形成された案内面32を構成しており,山型の頂部47がケーシング3の凹状係止溝36に嵌入されている。図11に示すように,固定部材13には,長手方向に隔置して複数の取付けねじ孔42が形成されており,取付けねじ孔42に対応する位置の保持板7とケーシング3には貫通孔34が形成され,ケーシング3の外側から貫通孔34に固定ボルト41を嵌挿して取付けねじ孔42に螺合させることによって,保持板7がケーシング3に固定される。この際,保持部材12の取付け部は,金属製のこま部材18を介してケーシング3に固定されるので,固定ボルト41の締結力が保持部材12に直接伝わることを避けることができ,保持部材12の変形を抑制することができる。また,保持部材12には,図16に示すようなこま部材18が挿入される切欠き部51が形成されている。こま部材18は,貫通孔53と保持部材12の山型に対応する形状の凸部即ち尖端部33が形成されている。更に,保持部材12には,ケーシング3の袖部65の給油孔61から供給された潤滑剤を軌道路14に導入する機能(図示せず)を備えている。
【0029】
この直動案内ユニットは,上記のように構成されており,図13及び図14に示すように,方向転換路16やクラウニング部10の無負荷路44の領域では,ローラ5に負荷が加わっていないので,ローラ5が傾き易い状態になっている。ローラ5が傾いてスキューした状態で転走すると,スライダ2がすべりを伴うような動きをする。傾いたローラ5が負荷路43の領域に侵入すると,ローラ5は軌道路21,22を滑りながら転走するので,摩擦が増え,端面25で案内面31,32を押し,摺動抵抗が重くなり,発熱の問題が生じる可能性がある。そこで,傾いたローラ5の姿勢をその軸芯がケーシング3の案内面31に直交した正しい姿勢に整列させるため,軌道路14の無負荷域44から負荷43の領域にかけて保持部材12に突出部30を設けている。図13に示すように,軌道路14の両端部には,緩やかな曲面形状のクラウニング部10が形成したので,方向転換路16から軌道路14へローラ5をスムーズに案内することができる。クラウニング部10の深さは,例えば,スライダ2に基本静定格荷重の半分の荷重の負荷によって生じるローラ5と軌道面21及び軌道面22との弾性変形量に相当する深さに形成されている。クラウニング部10の曲面形状は,長手方向に沿って単一曲率半径Rで形成されている。クラウニング部10は,ケーシング3の軌道面22の平面部と同時加工で連続して形成されている。ケーシング3の端面26とクラウニング部10の端部は曲面形状のR面取り部が形成されている。図14に示すように,符号a,bで示すように方向転換路16内で傾いたローラ5は,突出部30の第1傾斜面37に沿って徐々にローラ軸芯がケーシング3の案内面32に直交するように整列させることができ,ローラ5が符号cで示すような状態になり,突出部30に案内され,符号d,eで示すような正常な状態になる。符号d,eで示すローラ5の一方の端面25を突出部30に当接させ,ローラ5の他方の端面25をケーシング3の案内面31に押し付けることにより,傾いたローラ5の姿勢が正しい姿勢になり,ローラ5の軸芯がケーシング3の案内面31に直交した正しい姿勢に整列させることができる。ローラ軸心が突出部30によってケーシング3の案内面31に直交するように整列させたローラ5は,次いで,軌道路14の負荷路43の領域に進入し,符号fで示すような状態になり,第2傾斜面38を介して軌道路14の負荷路43に進入することによって,ローラ5は,スムーズに転走案内されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この直動案内ユニットは,工作機械,半導体製造装置,精密測定装置等の相対摺動部材を備えた各種装置の摺動部材に使用できるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 軌道レール
2 スライダ
3 ケーシング
4 エンドキャップ
5 ローラ(転動体)
7 保持板
10 クラウニング部
11 片持梁状保持部
12 保持部材
13 固定部材
14 軌道路
15 リターン路
16 方向転換路
17 循環路
18 こま部材
21 軌道面(第1軌道面)
22 軌道面(第2軌道面)
23 側面
25,26 端面
27 端部
30 突出部
31 案内面(第1案内面)
32 案内面(第2案内面)
33 尖端部
34,53 貫通孔
36 凹状係止溝
37 傾斜面(第1傾斜面)
38 傾斜面(第2傾斜面)
40 ばね部材
41 固定ボルト
42 取付けねじ孔
43 負荷路
44 無負荷路
45 スリット
46 傾斜面
47 頂部
50 凹溝
51 切欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17